説明

LED照明装置の配光構造

【課題】 照射光の配光特性を簡単に変更できるLED照明装置を提供する。
【解決手段】 LED照明装置1の配光構造において、複数の発光ダイオード(LED)2を配設してなる光源と、各LED2に対応して各LED2の上に配置された複数のレンズ30を有し、光源から出射された光の配光特性を変更する配光特性変更手段とを設ける。配光特性変更手段は、レンズ30とLED2との距離を可変にする距離可変機構を有している。配光特性変更手段は、例えば、レンズ20を支持する底板部31の下方に設けられたソレノイド4から構成されており、ソレノイド4のプランジャ4aの先端は、底板部31の下面に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を用いたLED照明装置に関し、詳細には、照射光の配光特性を簡単に変更できるようにするための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを光源として用いたLED照明装置として、本件出願人により、特特許第3165388号公報に示すようなものが提案されている。このLED照明装置は、LED発光素子を含むLEDユニットと、その上方に配置されたプリズムシートおよび拡散板等とから構成されている。
【0003】
この場合、LEDユニットから出射した光が、プリズムシートで分散されるとともに拡散板で拡散されており、これにより、装置の表示面全面から均一な光として出射されている。
【特許文献1】特許第3165388号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のLED照明装置は、出射される光を均一にして光量ムラや色ムラが生じるのを防止することを主眼にしており、このため、照射光の配光特性を変更することまでは考慮されていない。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、照射光の配光特性を簡単に変更できるLED照明装置を提供することにある。また、本発明は、LEDと光学部材との距離を可変にすることにより、照射光の配光特性を変更しようとしている。さらに、本発明は、LEDの光軸に対して光学部材の傾きを変更することにより、照射光の配光特性を変更しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係るLED照明装置の配光構造は、少なくとも一つ以上の発光ダイオード(LED)を配設してなる光源と、各発光ダイオードに対応して各発光ダイオードの上に配置された少なくとも一つ以上の光学部材を有し、光源から出射された光の配光特性を変更する配光特性変更手段とを備えている。
【0007】
請求項1の発明によれば、発光ダイオードの上に、光学部材を含む配光特性変更手段を設けたので、発光ダイオードから出射した光が光学部材を通して配光特性変更手段に入射されることで、出射光の配光特性を簡単に変更することができる。これにより、所望の部位に所望の照度を得ることが簡単に行えるようになる。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1において、光学部材が配光特性の異なる光学部材に変更可能である。
【0009】
この場合には、発光ダイオードからの出射光を、配光特性の異なる光学部材に入射させることで、光学部材から出射される光の配光特性を簡単に変更することができる。なお、光学部材としてレンズを用いる場合において、レンズによる配光特性を変えるには、レンズの曲率半径を変えたり、レンズの光軸を傾けて配置したり、またはレンズ体の材質を変えたりすることにより、レンズの屈折作用を変えるようにすればよい。
【0010】
請求項3の発明では、請求項1において、配光特性変更手段が、光学部材と発光ダイオードとの距離を可変にする距離可変機構を有している。
【0011】
この場合には、距離可変機構により、光学部材と発光ダイオードとの距離を変えることによって、発光ダイオードの位置を光学部材の焦点位置、またはその内側、外側のいずれの位置に配置するかにより、光学部材から出射される光の配光特性を簡単に変更することができる。
【0012】
請求項4の発明では、請求項1において、配光特性変更手段は、光学部材が発光ダイオードの光軸に対して傾斜するように、光学部材を傾斜させる傾斜機構を有している。
【0013】
この場合には、傾斜機構により、光学部材を発光ダイオードの光軸に対して傾斜させることによって、光学部材に入射する光の入射角が変化し、これにより、光学部材から出射される光の配光特性を簡単に変更することができる。
【0014】
請求項5の発明では、請求項1において、各光学部材が、相互に連結するための嵌合部を有している。
【0015】
この場合には、嵌合部を介して複数の光学部材を一体に連結できるので、装置の組立性を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係るLED照明装置の配光構造によれば、発光ダイオードの上に、光学部材を含む配光特性変更手段を設けるようにしたので、発光ダイオードから出射した光が光学部材を通して配光特性変更手段に入射されることで、出射光の配光特性を簡単に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図7は、本発明の一実施例によるLED照明装置の配光構造を説明するための図であって、図1は本発明の一実施例による配光構造を採用するLED照明装置の正面図、図2はその側面図、図3は図1のIII-III線断面図、図4は図3のIV-IV線断面図、図5は当該配光構造を構成するレンズユニットの全体斜視図、図5Aはレンズユニットの変形例を示す図、図6の(a)はレンズユニットの正面図、(b)はその側面図、(c)は端面図、図7の(a)〜(e)は各種レンズユニットによる出射光の配光特性を説明するための図である。なお、図3では、図示の便宜上、ハッチングを省略して示している。また、各図中、図1ないし図3の左右方向を装置の長手方向とし、図1の上下方向を幅方向とし、図2および図3の上下方向を上下方向とする。
【0018】
図1ないし図3に示すように、LED照明装置1は、上方に開口するとともに光源を収容する箱状の筺体10と、筺体10の上部開口を閉塞する蓋体11とを備えている。筺体10および蓋体11はいずれも長手方向に延設されている。
【0019】
筺体10の内部には、複数のLED(発光ダイオード)2が長手方向に所定の均等な間隔で配設されている。これらのLED2により、本照明装置の光源が構成されている。また、各LED2は、例えば基板上に搭載されている。各LED2の上には、LED2から出射された光を配向するためのレンズユニット3がそれぞれ設けられている。各レンズユニット3は、各LED2にそれぞれ対応して設けられた凸状のレンズ(レンズ体)30を有している。各レンズ30は、各LED2に対応して長手方向に所定の均等な間隔で配設されている。蓋体11には、当該蓋体11を上下に貫通しつつ長手方向に延びる窓孔11aが形成されている。窓孔11aの下方には、透光性のプレート12が配設されている。
【0020】
図4に示すように、蓋体11は、その幅方向両端縁から下方に垂設する垂設部15と、垂設部15の下端から筺体10の内方に折り曲げられた折曲部16とを有している。垂設部15および折曲部16は長手方向に延びている。一方、筺体10は、長手方向に延びる一対の凹溝10aを幅方向の両外側面に有しており、凹溝10aが蓋体10の折曲部16を受け入れている。また、筺体10の底面側からネジ13のネジ部が凹溝10a内に延びており、当該ネジ部が折曲部16に螺合している。筺体10の上部開口部には、パッキン14が設けられており、プレート12の外周縁部は、パッキン14により挟持されている。ネジ13の締付けにより、折曲部16および垂設部15を介して蓋体11が筺体10の側に移動し、これにより、パッキン14を介して、蓋体11が筺体10に固着されるようになっている。
【0021】
レンズユニット3は、例えば樹脂成形品であって、図5および図6に示すように、底板部31と、その両側部において底板部31と直交する上下方向に配設された一対の側板部32とを有しており、底板部31には2つのレンズ30が設けられている。なお、ここでは、各レンズユニット3にレンズ30が2個ずつ設けられた例を示しているが、本発明の適用はこれに限定されず、各レンズユニット3は、図5Aに示すように、1個のレンズ30のみを有していてもよく、または3個以上のレンズ30を有していてもよい。
【0022】
レンズユニット3の各側板部32には、長手方向に延びる長孔32aが貫通形成されている。また、各側板部32の上面には、上方に突出する一つまたは複数の突出部32bが形成されており、各側板部32の底面には、下方に突出する一つまたは複数の脚部32cが形成されている。
【0023】
レンズユニット3を筺体10内部に収容したとき、レンズユニット3の脚部32cは、例えば、LED2が搭載された基板に設けられた取付孔(図示せず)に挿入されることにより、筺体10内に取り付けられるようになっている。また、レンズユニット3を筺体10内部に収容して蓋体11を装着し、ネジ13を締め付けたとき、レンズユニット3の各側板部32の各突出部32bは、プレート12の下面で押圧される(図4参照)。すると、各側板部32の長孔32aが上下方向に圧縮されて弾性変形し、これにより、レンズユニット3が、筺体10の内部空間に弾性保持されるようになっている。このようにして、レンズユニット3のガタツキを防止できるとともに、レンズ30とLED2との相対的な位置決めを精度よく行なえるようになる。
【0024】
上述のように構成されるLED照明装置1においては、LED2とは別個にレンズユニット3が設けられるので、レンズユニット3の一部またはすべてを、屈折作用の異なるレンズ30を有する別のレンズユニットに交換することにより、LED照明装置の配光特性を簡単に変更できる。すなわち、この場合には、レンズユニット3自体がLED照明装置1の配光特性変更手段を構成している。
【0025】
図7(a)〜(e)は、各種レンズユニット3によるLED照明装置1の配光特性を示している。各図中、左側の図が各LED照明装置1からの出射光Lによる照度を表しており、右側の図がLED照明装置1を構成するLED2およびレンズユニット3の概略構成を示している。レンズ30’は、レンズ30よりも厚みの厚い凸状レンズであって、レンズ30よりも集束作用が強く、焦点距離が短くなっている。このため、レンズ30’の配光特性はレンズ30の配光特性と異なっている。
【0026】
図7(a)に示す例では、レンズユニット3が同一種類のレンズ30のみから構成されている。この場合、各LED2からの出射光がレンズユニット3の各レンズ30により均等に屈折作用を受けることにより、レンズユニット3からは、中央部の照度が最も高く、周辺部に向かうにしたがい徐々に照度が低下する出射光Lが得られているが、周辺部の照度の低下が小さくなっている。つまり、周辺部もある程度明るい出射光が得られている。
【0027】
図7(b)に示す例では、同図(a)と同様に、レンズユニット3が同一種類のレンズ30’のみから構成されているので、各LED2からの出射光はレンズユニット3の各レンズ30’により均等に屈折作用を受けて、レンズユニット3からは中央部の照度が最も高く、周辺部に向かうにしたがい徐々に照度が低下する出射光Lが得られているが、この場合、レンズ30’の方がレンズ30よりも集束作用が強くなっているため、中央部の照度は、図7(a)の場合よりも高くなっている。また、周辺部の照度の低下は、図7(a)の場合よりも顕著になっている。
【0028】
図7(c)に示す例では、同図(a)に示す例において、中央部に配置されるレンズユニット3のレンズ30をレンズ30’で置き換えている。この場合には、図7(a)および(b)の双方の長所を有する出射光が得られている。すなわち、出射光Lは、レンズ30、30’で異なる屈折作用を受けることにより、中央部の照度が高く、周辺部の照度もある程度高くなっている。
【0029】
図7(d)に示す例では、同図(a)に示す例において、一方の端部の側に配置されるレンズユニット3の複数のレンズ30を複数のレンズ30’で置き換えている。この場合には、照度の高い領域が一方の周辺部側に移動している。
【0030】
図7(e)に示す例では、複数のレンズ30’を一方の端部の側にのみ設けている。この場合には、照度の高い領域が一方の周辺部側に配置されるが、図7(d)の場合と比べると、照度のピーク値は低く、また周辺部の照度も低くなっている。
【0031】
このように、屈折作用の異なるレンズを含むレンズユニットを用意して、元のレンズユニットの一部またはすべてを交換することにより、配光特性の異なる光学部材に変更されることになるので、LED照明装置の配光特性を簡単に変更できるようになる。
【0032】
なお、前記実施例では、LED2とレンズユニット3との距離が一定の場合を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0033】
図8ないし図10は、LED2とレンズユニット3との距離を可変にするための距離可変機構を示している。前記実施例では、それぞれ2つのレンズ30を有するレンズユニット3を長手方向に複数個配設した例を示したが、ここでは、レンズユニット3を長手方向に延びる単一の部材から構成している。すなわち、この場合、レンズユニット3は、長手方向に延びる帯状の底板部31と、その上に所定間隔で配設された複数の凸状のレンズ30とから構成されている。
【0034】
図8に示す例では、底板部31の長手方向両端において、底板部31の下方にアクチュエータ(距離可変機構)4が設けられている。アクチュエータ4は、底板部31の長手方向端部において幅方向の略中央位置に配置されている。アクチュエータ4のプランジャ4aの先端は、底板部31の下面に当接している。なお、アクチュエータ4としては、例えばソレノイドやシリンダ等が用いられる。
【0035】
図9に示す例では、底板部31の長手方向両端において、底板部31の下方にアクチュエータ4、4’(距離可変機構)が設けられている。アクチュエータ4、4’は、底板部31の長手方向端部において幅方向の端部に間隔を隔てて配置されている。アクチュエータのプランジャ4a、4’aの先端は、底板部31の下面に当接している。なお、アクチュエータ4’としても、同様に、例えばソレノイドやシリンダ等が用いられる。
【0036】
図10に示す例では、底板部31の長手方向両端において、底板部31の下方にステッピングモータまたはサーボモータ40が設けられている。ステッピングモータ40の出力軸にはピニオン41が取り付けられている。また、ピニオン41の側方には、上下方向に延びるラック42が配設されており、ラック42の上端は、底板部31の下面に固着されている。ラック42のラック歯は、ピニオン41の歯と噛み合っている。この場合には、モータ40、ピニオン41およびラック42により、距離可変機構が構成されている。また、ラック42の側方には、ラック42の上下動をガイドするガイド43が設けられている。
【0037】
図8および図9の例においては、アクチュエータ4(および4’)を駆動してプラジャ4a(および4’a)の突出量を変えることにより、また図10の例においては、モータ40を駆動してラック42を昇降させることにより、底板部31のLED2からの距離が変化する(図8ないし図10一点鎖線参照)。これにより、図11(a)の上側の図に示すように、レンズ30がLED2に接近して配置されている場合と、同図(b)の上側の図に示すように、レンズ30がLED2から離れて配置されている場合とでは、LED2からの出射光のレンズ30による集束の仕方が変化して、各レンズ30からの出射光Lの集束の仕方が変化し、その結果、各図の下側の図に示すように、出射光Lの照度が変化する。
【0038】
このように、距離可変機構を用いて、LED2とレンズユニット3との距離を変化させることにより、LED照明装置の配光特性を簡単に変更できるようになる。
【0039】
前記実施例および図8ないし図10の例においては、レンズユニット3をLED2に対して平行に移動させる例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0040】
図12ないし図15は、レンズユニット3をLED2の光軸に対して傾斜させる傾斜機構を示している。この場合においても、図8ないし図10の例と同様に、レンズユニット3が、長手方向に延びる帯状の底板部31と、その上に所定間隔で配設された複数の凸状のレンズ30とから構成されている。
【0041】
図12の例では、底板部31の幅方向の一端がヒンジ50により支持されており、底板部31がヒンジ50の回りに回動自在になっている。底板部31の幅方向の他端の下方には、アクチュエータ5が設けられており、アクチュエータ5のプランジャ5aの先端は、底板部31の下面に当接している。なお、図12中、一点鎖線AはLED2の光軸を示し、一点鎖線Lはレンズ30の光軸を示している。図12(a)では、レンズ30の光軸LがLED2の光軸Aと一致しており、同図(b)では、レンズ30の光軸LがLED2の光軸Aに対して傾斜している。
【0042】
図13の例では、底板部31の下方に設けられるアクチュエータがヒンジ型ソレノイド5’から構成されている。ソレノイド5’には、ソレノイド5’の上方に延びる固定プレート51が固定されている。ソレノイド5’のアーマチュア5’aの先端は、可動プレート52に当接しており、可動プレート52の一端は、固定プレート51にヒンジ連結されている。可動プレート52は、底板部31の下面に固定されている。
【0043】
図14の例では、底板部31の下方にステッピングモータまたはサーボモータ50が設けられており、モータ50の出力軸にはウォーム51が取り付けられている。一方、底板部31の下面には、ウォーム51と噛み合うウォームホイール52の一部が固着されている。
【0044】
図15の例では、底板部31の長手方向両端において、底板部31の下方にアクチュエータ(傾斜機構)5、5が設けられている。アクチュエータ5は、底板部31の長手方向の一方の端部に配置され、アクチュエータ5は、底板部31の長手方向の他方の端部に配置されている。アクチュエータ5、5の各プランジャ5a、5aの先端は、底板部31の下面に当接している。なお、アクチュエータ4としては、例えばソレノイドやシリンダ等が用いられる。この例は、上述した図8の例と類似しているが、図8の例では、底板部31の長手方向両端の各アクチュエータ4のプランジャ4aの突出量を同じにして、底板部31をLED2に対して平行に移動させているが、この図15の例では、底板部31の長手方向両端の各アクチュエータ5、5の各プランジャ5a、5aの突出量を異ならせることにより、底板部31をLED2の光軸に対して長手方向に傾斜させようとしている。
【0045】
図12の例においては、アクチュエータ5を駆動してプランジャ5aを突出させることにより、底板部31がヒンジ50の回りを回動して、底板部31とともにレンズ30の光軸LがLED2の光軸Aに対して傾斜する(同図(b)参照)。図13の例においては、ソレノイド5’を駆動してアーマチュア5’aを突出させることにより、可動プレート52が固定プレート51の回りを回動して、底板部31(したがってレンズ30の光軸)がLED2の光軸Aに対して傾斜する(同図(b)参照)。図14の例においては、モータ50を駆動してウォーム51を回転させることにより、ウォーム51と噛み合うウォームホイール52が回転して、底板部31が回動し、底板部31(したがってレンズ30の光軸)がLED2の光軸Aに対して傾斜する(同図一点鎖線参照)。
【0046】
図12および図13の例によれば、レンズ30が取り付けられたレンズユニット3がLED2の光軸Aに対して傾斜するので(図12(b)および図13(b)参照)、図16に示すように、当該LED照明装置1が取付面100に取り付けられたとき、LED照明装置1からの照射光Lは、当該LED照明装置1の真正面の位置から外れた、例えば領域Tを照射することができ、照射光の配光特性を変更できる。また、図14の例によれば、モータ50の回転方向を変えることにより、底板部31が揺動して、レンズユニット3がLED2の光軸Aに対していずれの側にも傾斜するので(図14一点鎖線参照)、当該LED照明装置1が取付面100に取り付けられたとき、LED照明装置1からの照射光Lは、当該LED照明装置1の真正面の位置から外れた領域TおよびTの双方を照射することができ、照射光の配光特性を変更できる。
【0047】
図15の例においては、一方のアクチュエータ5のプランジャ5aの突出量を他方のアクチュエータ5のプランジャ5aの突出量よりも大きくすることにより、底板部31がLED2の光軸Aに対して長手方向に傾斜する(同図参照)。図12ないし図14では、底板部31の幅方向の一端の高さを他端の高さよりも高くすることにより、底板部31を傾斜させるようにした例を示したが、図15では、底板部31の長手方向の一端の高さを他端の高さよりも高くすることにより、底板部31を傾斜させるようにしている。
【0048】
図15の例によれば、アクチュエータ5の側に配置されたレンズ30では、例えば図11(b)の上側の図のように出射光が集束されて、同図下側の図のような照度が得られ、またアクチュエータ5の側に配置されたレンズ30では、同図(a)の上側の図のように出射光が集束されて、同図下側の図のような照度が得られることになる。このようにして、照射光の配光特性を変更できる。
【0049】
図12ないし図15の例では、底板部31が傾斜位置と非傾斜位置の双方を採り得る場合を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0050】
図17は、傾斜機構の他の例を示している。同図に示すように、このレンズユニット3は、単一のレンズ30を有しており、レンズ30は、傾斜した底板部31’に取り付けられている。この傾斜底板部31’は、レンズユニット3の底部の取付面33に対して傾斜しており、図17の紙面手前側から奥側に向かうにしたがい、その高さが徐々に高くなっている。
【0051】
図18(a)ないし(d)は、レンズユニット3をその取付面33を含む面内で種々の向きに配置した状態を示している。レンズユニット3は、同図(a)の状態から(b)→(c)→(d)の各状態に進むにしたがい、反時計回りに略90度ずつ回転している。これにより、各図に示すように、レンズ30の光軸Xが互いに異なる向きに配置されている。
【0052】
この場合においても、各レンズユニット3をLED2の光軸Aに対して傾斜させることができるので、当該LED照明装置1からの照射光の配光特性を変更できる。しかも、この場合には、駆動機構を別途必要とすることなく、筐体10内部に対するレンズユニット3の置き方を変えるだけでよいので、製造コストを低減できる。さらに、この場合には、レンズユニット3の置き方を変えるだけで、レンズユニット3を種々の向きに傾斜させることができる。
【0053】
図19および図19Aは、距離可変機構および傾斜機構の他の例を示している。図19に示すように、このレンズユニット3’は、単一のレンズ30を底板部31の上に有しており、底板部31の下面には、下方に延びる、例えば4本の脚部35が設けられている。脚部35は、上から順に、大径部35a、中間径部35bおよび小径部35cから構成されている。中間径部35bは、大径部35aと小径部35cとの間の中間の径を有している。ここでは、脚部35が段付部付の円柱形状を有している場合を示しているが、脚部35はその他の任意の形状を有していてよく、いずれの場合でも、脚部35の上から順に、大形部35a、中間部35bおよび小形部35cが設けられる。なお、中間径部35bは省略してもよく、あるいは、段付部を有する複数の中間径部を設けるようにしてもよい。
【0054】
一方、レンズユニット3’が取り付けられる筐体10の内部には、レンズユニット3’の脚部35が挿入されて係止される係止孔20が形成されている。係止孔20は、例えば、図19Aに示すように、脚部35の各中間径部35bに対応する中間径の4つの係止孔20bと、これらの間に配置され、脚部35の各小径部35cに対応する小径の4つの係止孔20cとを有している。各係止孔20bは、正方形の4つの角部に対応する位置に配置されており、同様に、各係止孔20cも、正方形の4つの角部に対応する位置に配置されている。双方の正方形の中心は一致しており、各係止孔20b、20cは、当該正方形中心の回りに互いに90度回転した位置に配置されている。このような各係止孔20b、20cの組合せが、筐体10の内部に複数組設けられている。
【0055】
図20は、レンズユニット3’の種々の設置の仕方の一例を示している。
同図(a)では、レンズユニット3’の各脚部35の各小径部35cが、筐体10の側の小径の4つの係止孔20cに挿入されて係止されている。このとき、各脚部35の高さ位置は、中間部35bの段付部の位置で決められる。この場合には、レンズユニット3’は、LED(図示せず)から最も離れた位置に配置されており、レンズ30の光軸はLEDの光軸と一致している。
【0056】
図20(b)では、レンズユニット3’の各脚部35の各中間径部35bが筐体10の側の中間径の4つの係止孔20bに挿入されて係止されている。このとき、各脚部35の高さ位置は、大径部35aの段付部の位置で決められる。この場合には、レンズユニット3’は、LEDに最も接近した位置に配置されており、レンズ30の光軸はLEDの光軸と一致している。
【0057】
図20(c)では、図19Aにおいて、隣り合う2つの係止孔20bがそれぞれ係止孔20cに置き換えられている。レンズユニット3’の2つの脚部35の各中間径部35bがそれぞれ係止孔20bに挿入されて係止され、レンズユニット3’の残りの脚部35の各小径部35cがそれぞれ係止孔20cに挿入されて係止されている。このとき、図示左側の各脚部35の高さ位置は、大径部35aの段付部の位置で決められ、図示右側の各脚部35の高さ位置は、中間径部35bの段付部の位置で決められる。この場合には、レンズユニット3’の底板部31は、傾斜して配設されており、レンズユニット3’のレンズ30の光軸はLEDの光軸に対して傾斜している。
【0058】
なお、図19Aに示すような、径の異なる複数種類の係止孔20の組合せに変えて、係止孔20の内壁に弾性を持たせ、脚部35の押し込み力の大きさに応じて、係止孔20が径の小さな係止孔20cから径の大きな係止孔20bに変化するような構成にしてもよい。
【0059】
この場合には、レンズユニット3’の各脚部35を挿入係止する係止孔20の大きさおよび位置を適宜選択して係止孔20を設けることにより、レンズユニット3’のレンズ30とLEDとの距離を変化させることができ、さらには、LEDの光軸に対してレンズ20を傾斜して配置させることでき、これにより、レンズユニット3’からの出射光の配光特性を簡単に変更できるようになる。
【0060】
図21は、本発明の別の実施例によるレンズユニットを示している。同図に示すように、このレンズユニット3”は、側板部32の側面および端面に突起36および係止孔37を有している。係止孔37は、突起36が嵌合する大きさに形成されている。一方の側板部32の側面および端面に設けられる突起36および係止孔37は、他方の側板部32の側面および端面に設けられる突起36および係止孔37に対して点対称の位置に配置されている。
【0061】
この場合には、図22に示すように、レンズユニット3”の突起36および係止穴37を利用して、複数のレンズユニット3”を直線状に相互に連結することが可能である。これにより、直線状に連結されたレンズユニット群の両端のレンズユニット3”のみを据付ネジ6、7等を用いて筐体内部に固定するだけで、レンズユニット群全体を筐体内部に固定することが可能であり、これにより、装置の組立性を向上できる。
【0062】
また、図示していないが、図22に示すレンズユニット3”は、平面状に連結することも可能である。この場合には、正面視正方形状や長方形状等の任意の形状のLED照明装置を構成できる。
【0063】
なお、本発明による光学部材としては、上述したレンズの他、全反射ミラー、ハーフミラーまたは導光体等、あるいはこれらの組合せであってもよい。また、前記各実施例では、屈折作用のレンズを示したが、本発明は、回折作用のレンズを用いたものにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例による配光構造を採用するLED照明装置の正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】本実施例による配光構造を構成するレンズユニットの全体斜視図である。
【図5A】レンズユニットの変形例を示している。
【図6】(a)はレンズユニット(図5)の正面図、(b)は側面図、(c)は端面図である。
【図7】各種レンズユニットによる出射光の配光特性を説明するための図である。
【図8】LEDとレンズユニットとの距離を可変にするための距離可変機構の例を示している。
【図9】LEDとレンズユニットとの距離を可変にするための距離可変機構の他の例を示している。
【図10】LEDとレンズユニットとの距離を可変にするための距離可変機構のさらに他の例を示している。
【図11】図8ないし図10に示す各例の作用効果を説明するための図である。
【図12】レンズユニットをLEDの光軸に対して傾斜させる傾斜機構の例を示している。
【図13】レンズユニットをLEDの光軸に対して傾斜させる傾斜機構の他の例を示している。
【図14】レンズユニットをLEDの光軸に対して傾斜させる傾斜機構のさらに他の例を示している。
【図15】レンズユニットをLEDの光軸に対して傾斜させる傾斜機構の別の例を示している。
【図16】傾斜機構を備えたLED照明装置(図12ないし図14)による照射領域を説明するための図である。
【図17】他の傾斜機構を備えたレンズユニットの全体斜視図である。
【図18】(a)〜(d)は前記レンズユニット(図17)を種々の向きに配置した状態を示している。
【図19】他の距離可変機構および傾斜機構を備えたレンズユニットの全体斜視図である。
【図19A】レンズユニットの脚部が係止される筐体内部の係止孔の一例を示す図である。
【図20】(a)〜(c)は前記レンズユニット(図19)の設置の仕方の一例を示している。
【図21】本発明の別の実施例によるレンズユニットの全体斜視図である。
【図22】前記レンズユニット(図21)の作用効果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0065】
1: LED照明装置

2: LED(発光ダイオード)
20: 係止孔(距離可変機構、傾斜機構)

3、3’、3”: レンズユニット(配光特性変更手段)
30、30’: レンズ(光学部材)
31’: 傾斜底板部(傾斜機構)
35: 脚部(距離可変機構、傾斜機構)
36: 突起(嵌合部)
37: 係止孔(嵌合部)

4、4’: アクチュエータ(距離可変機構)
40: モータ(距離可変機構)
41: ピニオン(距離可変機構)
42: ラック(距離可変機構)

5: アクチュエータ(傾斜機構)
5’: ヒンジ型ソレノイド(傾斜機構)
50: モータ(傾斜機構)
51: ウォーム(傾斜機構)
52: ウォームホイール(傾斜機構)
: アクチュエータ(傾斜機構)
: アクチュエータ(傾斜機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED照明装置の配光構造において、
少なくとも一つ以上の発光ダイオード(LED)を配設してなる光源と、
前記各発光ダイオードに対応して前記各発光ダイオードの上に配置された少なくとも一つ以上の光学部材を有し、前記光源から出射された光の配光特性を変更する配光特性変更手段と、
を備えたLED照明装置の配光構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記光学部材が配光特性の異なる光学部材に変更可能である、
ことを特徴とするLED照明装置の配光構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記配光特性変更手段が、前記光学部材と前記発光ダイオードとの距離を可変にする距離可変機構を有している、
ことを特徴とするLED照明装置の配光構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記配光特性変更手段は、前記光学部材が前記発光ダイオードの光軸に対して傾斜するように、前記光学部材を傾斜させる傾斜機構を有している、
ことを特徴とするLED照明装置の配光構造。
【請求項5】
請求項1において、
前記各光学部材が、相互に連結するための嵌合部を有している、
ことを特徴とするLED照明装置の配光構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図19A】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−92700(P2010−92700A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261149(P2008−261149)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】