緩衝部材を備えたシューズ
【課題】薄型でも足を安定した状態で保持しつつ、特にヒール部の緩衝機能と反発機能を向上させた緩衝部材を備えたシューズを提供する。
【解決手段】粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズであって、粘弾性体(a)は、針入度(JIS K2207)が5〜250又はアスカー硬度(C型)が0〜40の硬度を有するとともに、波板体(b)は、粘弾性体(a)より高い硬度と、波形連続方向に延伸変形する弾性とを有し、着地時の緩衝部材の受圧方向に波形山頂部へ向けて、粘弾性体(a)に、全体または全体の一部を埋設されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズなど。
【解決手段】粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズであって、粘弾性体(a)は、針入度(JIS K2207)が5〜250又はアスカー硬度(C型)が0〜40の硬度を有するとともに、波板体(b)は、粘弾性体(a)より高い硬度と、波形連続方向に延伸変形する弾性とを有し、着地時の緩衝部材の受圧方向に波形山頂部へ向けて、粘弾性体(a)に、全体または全体の一部を埋設されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズなど。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝部材を備えたシューズに関し、特にヒール部の緩衝機能を向上させた緩衝部材を備えたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
アスリート用スポーツシューズをはじめ、ウォーキングシューズからビジネスシューズに至る広い範囲で、履物、特にスポーツシューズには、軽量であることや、足を安定・快適な状態に保持するフィット感があること、その他に、着地の衝撃を吸収して緩和する緩衝機能が高いこと等が要求され、中でも最適な衝撃吸収の追求が求められている。
特にスポーツ用、ウォーキング用等のシューズにあっては、その用途に応じた最適な衝撃吸収の追求を図るべく、鋭意多くの研究開発がなされている。例えば、ゲル状素材等の柔軟な素材をソール部に組み込んで、緩衝機能を向上させ、着地時の足への負担軽減を両立させようとすることが行われている。この技術的追求は、シューズの目的に応じた使用者の挙動や、衝撃の実態分析等をふまえながら、素材そのものの開発から、緩衝部材の形状面の工夫等に及んでいる。
【0003】
このような要請に応えたものとして、例えば、本出願人が提案した発明が先行技術として存在する(特許文献1〜5参照。)。
これらの技術によって、高次元で緩衝性を発揮し、且つ視覚的にもその機能を確認することのできるシューズが市場に提供されている。
しかしながら、本出願人は、このような市場の高評価に甘んずることなく、更なる改良を試行し続けている。特に、例えば踵に対する衝撃の有り様も、単に上方からの圧縮荷重だけでなく、荷重による重心の安定性とつま先方向への荷重移動を望ましい方向に補正する誘導性に着目し、それに適した構造を究明すべく、鋭意開発を試みている。
【0004】
すなわち従来は、靴のヒール部、つま先部等、比較的作用部位を大きくとらえ、例えばヒール部では、踵直下での着地衝撃を緩衝させることに専ら主眼が置かれ、より衝撃緩衝性の向上が追及されていたが、一般に緩衝性能を追及すると、緩衝部材は、柔らかくダンピング性に優れたものが適用されるため、柔らかいが故に受圧変形しやすいため足裏の重心点が不安定になり易く、また、受圧変形時の底付き防止の観点から、ある程度の厚みが必要であり、靴底が厚くなって、使用者の重心が高く、歩行(走行)しにくくなったり、靴が重くなるなどの弊害があった。一方、上記の弊害を回避するために、緩衝部材を硬くして反発機能を高めると、緩衝性能が損なわれるという、二律背反の関係にあり、着地時の重心安定性と衝撃緩衝性とを両立することは困難であった。
また、子供用シューズは、大人用シューズから相似的にシューズ自体小型化させるが、足の保護は、大人以上に配慮しなければならないため、実際にはミッドソールやその内部に入る緩衝部材を相似的に薄くすることは望ましくないので、結果として、シューズの全体高さに対して緩衝部材を厚くせざるを得ず、重心が高くなって、走行安定性が悪くなり、子供の足への負担が成人に比べて大きくなることが問題視される。他方、デザイン性の観点では、設計の自由度が制限されるため、従来より薄くて優れた緩衝性と重心安定性を確保できる緩衝部材が要望されていた。
最近では、緩衝機能等の諸機能に加え、着用者の運動能力を高めるための反発機能を備えた靴が提案されている(例えば、特許文献6参照。)が、緩衝性能は、緩衝材の厚みに依存しているため、依然として、子供用シューズなどに小型化して転用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−288907号公報
【特許文献2】特開2008−061853号公報
【特許文献3】特開2007−319394号公報
【特許文献4】特開2007−222545号公報
【特許文献5】特開2009−022449号公報
【特許文献6】国際公開WO2006/120749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、薄型でも足を安定した状態で保持しつつ、特にヒール部の緩衝機能と反発機能を向上させた緩衝部材を備えたシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シューズのヒール部において、実際の緩衝部材の変形について考察すると、従来の緩衝部材は、受圧部分の厚み方向の集中的な変形による緩衝作用が支配的であり、特に、緩衝部材が柔軟になるほど、また、緩衝部材が薄くなるほど、前記のような受圧部集中型の緩衝作用が顕著となっていることがわかった。そして、受圧部とともに受圧部以外の部分も変形させて、緩衝部材全体に緩衝作用を発現させれば、素材の柔らかさを活かしつつ薄型化できる、と想到するに至り、さらに、緩衝部材の硬さや形状に焦点を当てて、弾性変形可能な素材である低硬度ゴムやゲルなどの粘弾性素材からなる緩衝部材中に、前記粘弾性素材とは異質の波板体を埋め込んだ構造とすることにより、受圧時に緩衝部材の内部に存在する波板体が、次第に波形状が潰れるように横方向へと延伸する動きを利用して、前記波板体に接する面の粘弾性素材を前記波板体の延伸に伴わさせて、粘弾性素材外部だけでなく内部からの変形をも、衝撃吸収へと置換する機能を発現させることができ、また、波板体の内在により、緩衝部材の厚み変形に適度な張り(コシ)が付加できるので、その結果、緩衝材全体で衝撃緩衝作用されて、従来行われていた緩衝機能向上として、緩衝素材を柔らかくしたり厚くすることなく、二律背反の関係にあった薄さや重心を低くし、安定性を確保することが可能となり、もって、緩衝機能の格段の向上と、重心安定性が向上したものになり、さらに、デザイン設計の自由度が得られることを見出した。そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズであって、粘弾性体(a)は、針入度(JIS K2207)が5〜250又はアスカー硬度(C型)が0〜40の硬度を有するとともに、波板体(b)は、粘弾性体(a)より高い硬度と、波形連続方向に延伸変形する弾性とを有し、着地時の緩衝部材の受圧方向に波形山頂部へ向けて、粘弾性体(a)に、全体または全体の一部を埋設されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記緩衝部材は、受圧変形する受圧緩衝部(A)とその周辺に受圧緩衝部(A)の変形に連動して変形する連動緩衝部(B)とを有する略板状体または略円柱体であって、波板体(b)の全部または一部が、受圧緩衝部(A)と連動緩衝部(B)を貫通するように、粘弾性体(a)に埋設された構成からなり、受圧緩衝部(A)の受圧変形に連動して、受圧緩衝部(A)を起点とした波板体(b)の延伸変形によって、連動緩衝部(B)が該延伸変形の方向に変形される緩衝作用と、波板体(b)の延伸変形しない方向の粘弾性体(a)の受圧変形による緩衝作用とが共動することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、波板体(b)は、さらに、撓み変形する可撓性を有し、及び粘弾性体(a)は、着地面側に波板体湾曲誘発部を設けることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、波板体(b)の受圧下面側の凸型形状部の少なくとも一部に、粘弾性体(a)を介して、または直接隣接して、中空部分を有することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記緩衝部材が長尺形状であり、及び波板体(b)は、波板体(b)の延伸変形の方向が緩衝部材の長尺方向に倣うように配置されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、波板体(b)は、材料が樹脂であり、波形が三角波または弦波であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、波板体(b)は、JIS K6385準拠による圧縮ばね定数が1×103〜1×106N/mであり、かつ前記粘弾性体(a)の圧縮ばね定数に対する波板体の圧縮ばね定数の比が0.1〜10であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0012】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、波板体(b)は、アウトソール側が下方を向くように終了させることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、波板体(b)は、両末端が一方を上方、他方を下方に向くように終了させることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0013】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、前記緩衝部材は、連結部を介して、第2の緩衝体と一体に構成された構造を有することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、前記緩衝部材が着地部のミッドソールに配置されて、組込まれていることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0014】
本発明は、上記した如く、粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズなどに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の振幅が小さく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の振幅が大きいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図10参照。)。
(2)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の振幅が大きく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の振幅が小さいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ。
(3)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の周期が大きく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の周期が小さいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図11参照。)。
(4)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の周期が小さく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の周期が大きいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ。
(5)第2の発明において、波板体(b)は、シューズ外側のコシ(剛性)がシューズ内側のコシ(剛性)より大きいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図12参照。)。
(6)第2の発明において、波板体(b)は、各波の頂点線が平行または±30度迄の交互(ハの字状と逆ハの字状の連続)であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図13参照。)。
(7)第2の発明において、前記略板状体は、形状が環形の一部(略扇状の一部)であり、前記波板体(b)も、形状が環形の一部(略扇状、周期は外側が大きく内側が小さい。)であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図14参照。)。
(8)第2の発明において、波板体(b)は、前記略板状体内部の中央に配置されることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図7参照。)。
(9)第2の発明において、波板体(b)は、前記略板状体内部の中央より下部側に配置されることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図16参照。)。
(10)第2の発明において、波板体(b)は、前記略板状体内部のシューズ外側に配置されることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図16参照。)。
(11)第2の発明において、波板体(b)は、長尺両側のいずれか一方側に、変位し易い屈曲誘発部を有することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図17参照。)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の緩衝部材を備えたシューズは、低弾性ゴムやゲルなどの粘弾性体(a)からなる緩衝部材に、受圧/除圧に対応して延伸/復元する波板体(b)を埋設することにより、厚みが薄くても、緩衝機能と重心安定性が格段と向上し、さらに、両機能を両立させたものである。本発明によれば、特に、過剰な変形外力に対して、緩衝部材全体に応力を分散させて、高い緩衝性を確保しつつ、ヒール着地時の重心点も安定するので、理想的な重心移動が可能なシューズを提供できる。また、薄くても、上記の優れた作用効果が得られるので、上記作用効果を有した子供用シューズを提供することができる。さらに、靴底の薄型化にも貢献するので、靴の軽量化や多様なデザイン設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の緩衝部材を備えたシューズを説明する斜視図である。
【図2】本発明の緩衝部材を備えたシューズの底面を説明する平面図である。
【図3】本発明に係る緩衝部材を説明する模式図である。
【図4】本発明に係る緩衝部材の別の形態を説明する模式図である。
【図5】本発明に係る緩衝部材を説明する模式図である。
【図6】本発明の緩衝部材を備えたシューズの後面を説明する模式図である。
【図7】本発明に係る緩衝部材の応力の分散を説明する模式図である。
【図8】本発明の第1または2の発明の一態様を説明する模式図である。
【図9】本発明の第6の発明の一態様を説明する模式図である。
【図10】本発明の別の態様(その1)を説明する模式図である。
【図11】本発明の別の態様(その2)を説明する模式図である。
【図12】本発明の別の態様(その3)を説明する模式図である。
【図13】本発明の別の態様(その4)を説明する模式図である。
【図14】本発明の別の態様(その5)を説明する模式図である。
【図15】本発明の第8または9の発明の一態様を説明する模式図である。
【図16】本発明の別の態様(その6)を説明する模式図である。
【図17】本発明の別の態様(その7)を説明する模式図である。
【図18】本発明の第4の発明の態様例を説明する模式図である。
【図19】波板体3のバネ変形作用を説明する模式図である。
【図20】本発明の別の態様(その9)を説明する模式図である。
【図21】本発明の第3の発明の受圧時の応力の分散を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の緩衝部材を備えたシューズを、以下の実施例により、先ず緩衝部材について説明し、続いてこの緩衝部材を備えたシューズについて、図面を用いて説明する。
なお、以下の実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において、適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0018】
先ず、本発明に係る緩衝部材1について説明すると、緩衝部材1は、例えば、図3に示すように、弾性変形可能な素材である粘弾性材料(または粘弾性体とも称する。)からなる略板状体2または図4に示すように略円柱状体8の内部に、粘弾性材料より弾性率が大きい波板体3が封入されたものである。
【0019】
前記緩衝部材は、弾性変形可能な粘弾性体からなり、その粘弾性体は、硬度がアスカーC硬度で20〜40である。ここで、「アスカーC硬度」とは、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されているスプリング式アスカーC型のデュロメータを使用して測定した硬度を意味する。
前記粘弾性材料としては、低硬度ゴムやゲルが好ましく、シリコーン、ウレタン、ポリエチレン、アクリル、アクリルウレタン、ブタジエン、イソプレン、ブチル、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、フッ素等の各種の低高度ゴムやゲル素材を適用することができるが、優れた緩衝性の観点からゲル素材が好ましい。また、波板体の延伸変形に追従し易すく過度の変形でも破断しにくい素材として、引っ張り伸び率(JIS K6251準拠)が500%以上の熱可塑性エラストマーも好適である。具体的には、例えば、シリコーンゲルとして、東レ・ダウコーニング社製CF5056(硬度:SRIS0101準拠 アスカーC 30)を、また、熱可塑性エラストマーとして、コスモ計器社製コスモゲルなどを、用いることができる。
また、粘弾性体は、発泡体でもよく、連泡または独泡構造の発泡体や、粘弾性素材に中空フィラーを添加したものを適用してもよい。
また、硬さの異なる異種素材を複合したり、積層構造として用いたり、着色剤やラメ素材、フィラー材等を混入するようにしてもよい。
【0020】
以下、粘弾性材料として、シリコーンゲルを適用した例にて説明する。
前記緩衝部材は、図6や図8に示すように、長尺形状が好ましく、受圧緩衝部(A)4とその周辺に連動緩衝部(B)5を有する。前記連動緩衝部5は、受圧緩衝部(A)の受圧変形に連動して変形させられて緩衝作用を発揮する。そして、受圧緩衝部(A)4と連動緩衝部(B)5を貫通するように、シリコーンゲルからなる前記緩衝部材内部に、シリコーンゲルより硬い(または剛性がある)波板体3が介在し、前記波板体3の波打ち方向が前記略板状体2の長尺方向となるように配置される。
前記波板体3は、図19(a)〜(c)のように、波板体の上面からの加圧に対して、波うち方向に対して、前記波板体の波形状の振幅が小さく、周期が長くなるように延伸しながら変形し、除圧されると同(d)のように収縮変形を経て(e)のように元の形状に復元するバネ性を有するものである。
【0021】
そして、前記波板体3が緩衝部材の内部に介在することにより、図7に示すように、受圧緩衝部(A)4に、応力または圧力を受けると、受圧緩衝部(A)4のシリコーンゲルの変形に次いで(もしくはほぼ同時に)、内部の波板体3が、受圧部を起点に長尺へ延伸変形し、前記延伸変形に追従させながら、波板体の周りのシリコーンゲル全体を変形させるように作用するので、波板体3の前記伸縮変形しない方向(受圧面の短尺方向)のシリコーンゲル自体の変形との共働によって、受圧緩衝部(A)4で受けた応力を、連動緩衝部(B)5の変形として分散させて吸収することができるから、従来の受圧部での一箇所集中変形に比べて緩衝機能が向上するとともに、波板体の剛性によって、反発機能も向上し、その結果、本発明の緩衝部材は、高い緩衝機能と反発機能を兼ね備えた優れた作用効果を発揮する。
【0022】
さらに、前記略板状体2の別の形態として、波板体下側の凸形状部の少なくとも一部に、シリコーンゲルを介して/もしくは直接隣接して、中空部7を形成してもよい。これにより、受圧時に波板体が、より変形し易くなり、上記の作用が発現しやすくなるとともに、緩衝部材の軽量化にも寄与する。なお、前記中空部は、閉空間としてもよいし、緩衝部材外部に連通開放されていてもよい。前記中空部の形状は、受圧時の変形挙動に合わせて適宜調整でき、前記凸形状部ごとに異ならせてもよい。また、図18(d)や(e)のように、波板体下面を浮かす構造としてもよく、この構造とすると、ヒール接地の受圧開直後には、シリコーンゲルの変形と波板体の撓みによって衝撃緩衝性を効かし、次いで、厚み方向の受圧変形が進んで、波板体が受圧面の裏側に当たる以降に波板の延伸変形を発動させて緩衝部材全体で緩衝させるようにして、柔らかな(抵抗感の少ない)接地開始感触を確保しつつ、緩衝部材全体での衝撃緩衝作用を発揮させることができる。
【0023】
また、波板体の下側(受圧する面の裏側)に受圧によって波板体を下に凹型に撓み変形させる波板体湾曲誘発部9を設けた構造としてもよく、このようにすることによって、例えば図21のように、受圧の際に、受圧緩衝部分の波板体が、撓み変形して踵部着地部を包み込んだ後(図21(b))、次いで波板体の延伸変形に連動した緩衝作用が働く(図21(c))ので、着地時の重心安定性を確保しながら優れた緩衝効果が得られる。前記波板体湾曲誘発部9は空隙部としてもよいし、緩衝部材を構成する粘弾性体よりもさらに柔らかい第二の粘弾性体としてもよく、さらにそれらを複合して用いてもよい。また、前記波板体湾曲誘発部は、図21の例では、波板体の中央部分に設けているが、波板体を撓ませる部分に配置すればよく、少なくとも受圧緩衝部分を含むものである。
【0024】
さらに、前記緩衝部材の別の形態として、図20のように、波板体の一部をシリコーンゲルから表出させる構造としてもよい。このような構造とすることで、波板体の伸縮変形がさらに容易となり、ゲルを長尺方向に容易に変形せしめることができる。また、図20(f)のように、波板体よりもシリコーンゲルが先に受圧する構成とすれば、図18(d)や(e)と同様に、柔らかな(抵抗感の少ない)接地開始感触を確保しつつ、緩衝部材全体での衝撃緩衝作用を発揮させることもできる。
【0025】
前記波板体3は、上記の作用を発揮するならば、どのような波でもよいが、図9に示すように、1.5周期以上の三角波または弦波であることが好ましい。また、波板体の材料は、樹脂であることが好ましい。
また、前記波板体3を構成する樹脂材料としては、所望の形状を付与し得るものであれば、特に限定されるものではなく、一般にプラスチックと称される既知の合成樹脂を適宜選択して用いることができ、具体的に、例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、ポリビニルホルマール、AS樹脂(SAN)、ポリビニルプチラール、ポリオレフィン、アセチルセルロース、塩化ビニリレン樹脂、セルロースエーテル、酢酸ビニル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、シリコーン樹脂(珪素樹脂)、ポリカーボネイト及びフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0026】
前記波板体は、JIS K6385準拠による圧縮ばね定数が1×103〜1×106N/mが好ましい。波板体の圧縮ばね定数が1×103N/mよりも小さいと、波板体が容易に変形しすぎて、衝撃が加わったときの緩衝部材の厚み変形に対して適度な張り(コシ)が付加できず、一方、1×106N/mよりも大きいと、波板体の剛性が大き過ぎて波板体の延伸変形が起こりにくく、また緩衝部材全体の緩衝性も損なわれるので好ましくない。
また、波板体の圧縮ばね定数は、粘弾性体の圧縮ばね定数(JIS K6385準拠)よりも大きいことを必須条件として、緩衝材部材の性能に応じて前記圧縮ばね定数の範囲で設定されるが、前記粘弾性体の圧縮ばね定数に対する波板体の圧縮ばね定数の比が0.1〜10であることが好ましい。前記の比が0.1未満の場合には、波板体による粘弾性体を幅方向に伸張変形させる作用が小さくなり好ましくなく、一方、10を超えると、波板体の変形作用が支配的になり、本発明における波板体と粘弾性体との相乗効果が得られなくなるので好ましくない。
ここで、前記圧縮ばね定数は、静的なばね定数であって、初期厚みに対して厚み方向に30%変形させたとき(30%圧縮)のものである。また、本発明では、緩衝部材を構成する実形状の圧縮ばね定数が重要であるので、波板体および波板体を組み込む粘弾性体の圧縮ばね定数は、標準試験片による測定値ではなく、実形状におけるものであり、厚み方向(波板体において波の振幅方向)に圧縮変形させたときの測定から求められる値である。
【0027】
さらに、前記波板体3は、装着者のタイプにより、適宜、波板体の波(例えば、弦波)の振幅や周期を変更することができる。波板体の振幅や周期や形状を変えることによって、波板体の剛性や受圧時の変形挙動(波板体の変形伸縮)や反発力、さらには重心を所望の方向へ誘導するなどを、全体もしくは部分的に自由に設定できる調整できるので、良好な緩衝性を図りつつ、重心の偏りを強制するように良好な重心移動方向へ誘導できるようになる。例えば、図10に示すように、受圧緩衝部(A)における波板体の波の振幅が小さく、連動緩衝部(B)における波板体の波の振幅が大きくでき、逆に、受圧緩衝部(A)における波板体の波の振幅が大きく、連動緩衝部(B)における波板体の波の振幅が小さくできる。また、図11に示すように、受圧緩衝部(A)における波板体の波の周期(P1)が大きく、連動緩衝部(B)における波板体の波の周期(P2)が小さくでき、逆に、受圧緩衝部(A)における波板体の波の周期が小さく、連動緩衝部(B)における波板体の波の周期が大きくできる。
【0028】
また、前記波板体3の別の態様として、装着者のタイプにより、前記波板体3は、例えば、図12に示すように、シューズ外側のコシ(剛性)がシューズ内側のコシ(剛性)より大きくすることができる。図面により説明すると、図12(a)の例では、波板体の厚さをシューズ外側(t2)がシューズ内側(t1)より厚くしたもの(t2>t1)であり、また、図12(b)の例では、波板体をシューズ外側では2枚重ね(t2)、シューズ内側(t1)より厚くしたもの(t2>t1)であり、さらに、図12(c)の例では、シューズ内側の波板体にスリットを入れて、シューズ外側のコシ(剛性)がシューズ内側のコシ(剛性)より大きくしたものである。
この様態によれば、ヒール接地時の重心点は、剛性が大きい側から小さい側に偏るように作動するので、所望の重心移動方向に誘導することができる。
【0029】
さらに、同様の効果を目的に、前記波板体3の別の態様として、前記波板体3は、例えば、各波の頂点線が平行にすることもできるし、或いは、図13に示すように、±30度迄の交互(ハの字状と逆ハの字状の連続)にすることもできる。
【0030】
また、上述したように、前記緩衝部材は、形状が環形の一部(略扇状の一部)であるから、前記波板体も、図14に示すように、形状が環形の一部(略扇状、周期は外側(P1)が大きく内側(P2)が小さい。)にすることもできる。
【0031】
さらに、前記波板体3は、波板体の末端(波形状の終点)が下向きの場合には、波板体が延伸変形する際に僅かでも上側にゲルを押し上げるように両端側から作用し、逆に、波板体の末端が上向きの場合には、波板体の末端が前記延伸変形時に斜め下にシリコーンゲルを押すようにして作用するので、緩衝部材の波板体の変形挙動を調整するための別の形態として、図15(a)に示すように、両末端が下方を向くように終了させることもでき、特にアウトソール方向に両末端を下向きとすることにより、波板体が延伸変形する際に僅かでも上側にゲルを押し上げるように両端側から作用して、着地緩衝時のフィット感や安定性を持たせることができる。また、特に、人体は、足裏の外側から着地する傾向があるので、足裏の外側のほうが少しでも上側に押し上げて足を支える(密着させる)ように、アウターソールの外側の波板体末端を下向きとして、着地の状態に応じて緩衝時の安定性をさらに向上させることができる。
また、図15(b)に示すように、両末端が一方を上方、他方を下方に向くように終了させることもでき、一方にフィット感や安定性を持たせつつ、一方に踏ん張り感を付与でき、例えばトラック競技のように一方向へ周回する運動の場合、トラックのインコース側の足裏の外側(トラックに対して最内周側)とアウトコース側の足裏の内側に一定の荷重移動が多く働くので、インコース側のシューズは、内側の波板体末端が下向きで外側が上向き、さらにアウトコース側のシューズは、内側の波板体末端が上向きで外側が下向き、となる構成としてもよい。
また、別の態様として、図15(c)に示すように、末端は、角を丸くすることもでき、或いは図15(d)に示すように、末端は、角を球状にすることもできる。
【0032】
また、前記波板体3は、通常、図7に示すように、前記緩衝部材内部の中央に配置されるが、別の態様として、図16(a)に示すように、前記波板体3は、前記緩衝部材内部の中央より下部側に配置されることもできる。さらに、図16(b)に示すように、前記波板体3は、前記緩衝部材内部のシューズ外側に配置されることもできる。
また、重心移動方向を調整するために、前記略板状態の長尺および/または受圧面の短尺方向に傾斜するように配置されてもよい。
【0033】
さらに、前記波板体3は、受圧の際に、変形し易くするために、図17に示すように、長尺両側のいずれか一方側に、変位し易い屈曲誘発部を有することもできる。具体的には、例えば、図17(a)、(b)に示すように、いずれか一方側の厚さを薄くして、変位し易い屈曲誘発部を有することも、或いは長尺両側のいずれか一方側に、スリットを入れて、変位し易い屈曲誘発部を有することも、できる。
【0034】
また、緩衝部材1は、略板状体2または略円柱状体を接地緩衝部10として、さらに図5に示すように、目的形状に成型された第2の緩衝部材と前記接地緩衝部とを連結部13によって一体的に連結して成るものとすることがより好ましい。例えば、ヒール部へ適用した場合には、第2の緩衝部材は、踵緩衝部11として機能し、この様態によれば、前記接地緩衝部で接地直後の衝撃を緩衝した後に、前記接地緩衝部から連結部13を経て踵緩衝部11に向かって、衝撃緩衝しながら重心を安定に移動させて、着地開始からヒール部着地までの歩行性を向上させることができる。また、前記連結部13は、板バネとしても作用して、爪先側へ重心移行した後は、前記接地緩衝部側が、踵S側に押し付けられ踵Sへフィットさせる効果がある。
前記踵緩衝部11は、連結部13上に突出した円錐台状に形成されるものであり、後述するようにシューズ6に組み付けられた状態で、装着者の踵Sの直下に位置するように設置されるものである。一例として、図1や図5に示すように、平面視で扇形状となるように一体成形される。
【0035】
ここで前記踵緩衝部11及び連結部13の素材について説明すると、良好な緩衝性が得られるものであれば、適宜のゴム素材やゲル素材を採用できるが、例えばシリコーン系(一例として、東レ・ダウコーニング社製CF5058)、ウレタン系(一例として、日本ミラクトン社製:ミラクトランE375)、スチレン系(一例として、旭化成ケミカルズ社製:アサプレンT436)、アクリル系(一例として、日本ゼオン社製ニポールAR)等のゴム素材を、射出成型、押出成型、ブロー成型等により無垢状態で硬化させたものを用いることができる。因みに、量産性を考慮した場合、射出成型によるのが好ましい。
また、前記ゴム素材に、発泡剤や中空フィラーを混入するなどして、踵緩衝部11または連結部13の全部または一部を、発泡倍率0.1〜1.5程度の発泡状態とさせて、緩衝性と合わせて軽量化を図る構成と、してもよい。
なおこの場合、前記中空フィラーとしては、日本フィライト社製の「エクスパンセル(登録商標)551DE」等が採用されゴム素材100重量部に対して1〜3重量部程度の配合割合で用いられる。
【0036】
また、前記接地緩衝部と連結部13とは、L字状乃至T字状に連結されるものであり、ここでL字状とは、連結部13の底面が接地緩衝部の底面と連続した状態となり、接地緩衝部と連結部13との断面がL字状となる状態を意味するものである。また、前記T字状とは、連結部13の端部が接地緩衝部の高さ寸法の中心に接続された状態となり、接地緩衝部と連結部13との断面がT字状となる状態を意味するものである。
前記連結部13は、前記接地緩衝部からの重心移動を受けて変形して衝撃緩衝するとともに、踵緩衝部へ重心を安定して誘導する役目を有し、後述するように歩行時または走行時の着地の際に、接地緩衝部の変形が顕著になるとともに、後述するような連結部13を介した接地緩衝部と踵緩衝部11との共動作用を得ることができる。連結部13と接地緩衝部との接続個所は、シューズへの組み込み場所や、歩行(走行)時の重心移動のさせ方によって、適宜調整できるが、上記作用効果をより効果的に発現させるためには、接地緩衝部の最下部から高さ寸法の中心までの部分に連結とすることが好ましい。
【0037】
本発明に係る緩衝部材において、前記略板状体2または円柱状体の中に、波板体3を介在させる方法は、特に限定されないが、例えば、金型内で波板体を未硬化のシリコーンゲルとともにインモールド成形する方法や、波板の嵌め込み部が形成されたシリコーンゲル部品に波板体を嵌め込んで、さらにシリコーンゲルで封止する組立てる方法などが挙げられる。
【0038】
次に、接地緩衝部10と連結部13と踵緩衝部11とからなる前記緩衝部材1を例にして、前記緩衝部材1が組み込まれるシューズ6について説明する。
図1中、符号6で示すものがシューズの一例であるスポーツシューズであって、接地部材であるソール21に対してアッパー22が組み付けられて成るものである。
そして前記ソール21に対してヒール部21a(装着者が歩行時・走行時に最先に接地する部位の上方)に、ヒール部21aの最後端から踵直下部周辺にかけてくり抜かれるように受入空間23が形成されるものであり、この受入空間23に、緩衝部材1と踵緩衝部11と連結部13が組み込まれた状態で、ソール21とアッパー22とが組み付けられる。
なお、前記ソール21は、一般的に複数のパーツを積層状態に組み合わせて構成されるものであり、前記緩衝部材1の組み付け個所すなわち受入空間23の形成個所は、アウトソール、ミッドソールあるいはインソールとするなど、適宜の部位を選択することができる。
【0039】
本発明の緩衝部材を備えたシューズは、一例として上述したように構成されるものであるが、シューズへの組込み位置や所望の特性(緩衝性と反発性とのバランス、さらには重心誘導性等)に応じて、上述の各種形態の緩衝部材を適宜適用することができる。
【0040】
続いて、使用時の挙動について説明する。
〔着地前の状態〕
シューズ6の装着者が歩行または走行している状態において、着地前の状態では、踵緩衝部11は、特に圧力が加わっていないため、変形は生じない。また、緩衝部材1についても、特に圧力が加わっていないため、変形は生じない。
【0041】
〔着地の瞬間の状態〕
次に、着地の瞬間の状態を考察すると、図6、7に示すように、緩衝部材1の受圧部(A)4(接地緩衝部)には、装着者の体重及び接地の衝撃が加わるため、接地緩衝部が変形して接地衝撃を緩衝することになる。その際に、接地緩衝部中のシリコーンゲル2と波板体3の働きにより、変形の受圧部が一箇所に集中していたのを、内部から波板体を介在して、周囲ゲル全体に広がることによって、変形が一箇所集中から分散状態になり、その結果、緩衝機能が格段と向上し、さらに、反発性能も高いので、重心の安定性にも優れたものになる。また、図10〜18のような部分的に波板体の変形挙動を異ならせた形態の緩衝部材を適用した場合には、接地時の重心点を目的の重心移動経路に矯正するように誘導される。さらに、図18(e)や図20(f)のような構造を有する緩衝部材を適用した場合には、シリコーンゲル特有の柔らかさを活かした柔らかな感覚で着地し、波板体の凹型の撓み変形部に重心を誘導しつつ、次いで、波板体の延伸変形とシリコーンゲルの変形との共動による優れた緩衝効果が得られるとともに、波板体の反発性により重心の安定化が図られる。
【0042】
〔着地後の状態〕
次に、着地後の状態を考察すると、接地緩衝部は、着地からの歩行重心移動に連動して形状復元し、衝撃緩衝しながら重心を踵緩衝部11へスムーズに誘導するよう作用する。
この状態では、踵緩衝部11には、装着者の体重及び接地の衝撃が加わることとなるため変形が生じるが、緩衝部材1の十分な反発性により重心点の移動方向が安定確保されているので、接地緩衝部10と踵緩衝部11とが連結部13を介在させて共動することにより、重心点の安定を確保しながら衝撃を効果的に逃がすこととなる。
また、接地緩衝部は、爪先方向への重心移動に伴い、踵緩衝部11の衝撃緩衝状態と連動、共動してさらに形状が復元し、シリコーンゲルと波板体3の反発力により、爪先方向への円滑な重心移動を実現することができる。
更に、爪先側へ重心移行した後は、踵緩衝部11と連結部13とは、L字状乃至T字状に連結されているため、接地緩衝部は、連結部13の弾性により、踵S側に押し付けられ踵Sへフィットするように作用し、再度接地緩衝部が着地するタイミングや着地部位の再現性を向上させて、歩行衝撃緩衝挙動を安定化することで、衝撃緩衝性と良好な歩行性を両立させる効果を奏する。
【0043】
なお、実施例1においては、緩衝部材1をヒール部の着地開始部分に適用した様態であるが、ヒール部分の側面やつま先部の母子丘付近に、単独もしくは複数配置した様態としてもよい。
【0044】
本発明の効果を検証するために、実施例1のシューズと、比較例として実施例1において、シリコーンゲルに、波板体を封入しない以外は、実施例1と同様に、シューズ用緩衝部材とそれを組み込んだシューズを作製し、被験者10名に実履きしてもらい、緩衝性と歩行性および走行性について官能試験とした結果、比較例に比べて実施例1のほうが全ての評価において優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の緩衝部材を備えたシューズは、粘弾性体内部に、波板体を配置した緩衝部材を備えているため、優れた衝撃緩衝性を維持しつつ緩衝部材の薄型化が可能であり、また、特にヒール部の緩衝機能と重心安定性を向上させているため、アスリート用スポーツシューズをはじめ、ウォーキングシューズからビジネスシューズ、さらには、子供向けシューズに至る広い範囲で、適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 緩衝部材
2 略板状体
3 波板体
4 受圧緩衝部(A)
5 連動緩衝部(B)
6 シューズ
7 中空部
8 略円柱状体
9 波板体湾曲誘発部
10 接地緩衝部
11 踵緩衝部
13 連結部
21 ソール
22 アッパー
23 受入空間
24 アウターソール
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝部材を備えたシューズに関し、特にヒール部の緩衝機能を向上させた緩衝部材を備えたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
アスリート用スポーツシューズをはじめ、ウォーキングシューズからビジネスシューズに至る広い範囲で、履物、特にスポーツシューズには、軽量であることや、足を安定・快適な状態に保持するフィット感があること、その他に、着地の衝撃を吸収して緩和する緩衝機能が高いこと等が要求され、中でも最適な衝撃吸収の追求が求められている。
特にスポーツ用、ウォーキング用等のシューズにあっては、その用途に応じた最適な衝撃吸収の追求を図るべく、鋭意多くの研究開発がなされている。例えば、ゲル状素材等の柔軟な素材をソール部に組み込んで、緩衝機能を向上させ、着地時の足への負担軽減を両立させようとすることが行われている。この技術的追求は、シューズの目的に応じた使用者の挙動や、衝撃の実態分析等をふまえながら、素材そのものの開発から、緩衝部材の形状面の工夫等に及んでいる。
【0003】
このような要請に応えたものとして、例えば、本出願人が提案した発明が先行技術として存在する(特許文献1〜5参照。)。
これらの技術によって、高次元で緩衝性を発揮し、且つ視覚的にもその機能を確認することのできるシューズが市場に提供されている。
しかしながら、本出願人は、このような市場の高評価に甘んずることなく、更なる改良を試行し続けている。特に、例えば踵に対する衝撃の有り様も、単に上方からの圧縮荷重だけでなく、荷重による重心の安定性とつま先方向への荷重移動を望ましい方向に補正する誘導性に着目し、それに適した構造を究明すべく、鋭意開発を試みている。
【0004】
すなわち従来は、靴のヒール部、つま先部等、比較的作用部位を大きくとらえ、例えばヒール部では、踵直下での着地衝撃を緩衝させることに専ら主眼が置かれ、より衝撃緩衝性の向上が追及されていたが、一般に緩衝性能を追及すると、緩衝部材は、柔らかくダンピング性に優れたものが適用されるため、柔らかいが故に受圧変形しやすいため足裏の重心点が不安定になり易く、また、受圧変形時の底付き防止の観点から、ある程度の厚みが必要であり、靴底が厚くなって、使用者の重心が高く、歩行(走行)しにくくなったり、靴が重くなるなどの弊害があった。一方、上記の弊害を回避するために、緩衝部材を硬くして反発機能を高めると、緩衝性能が損なわれるという、二律背反の関係にあり、着地時の重心安定性と衝撃緩衝性とを両立することは困難であった。
また、子供用シューズは、大人用シューズから相似的にシューズ自体小型化させるが、足の保護は、大人以上に配慮しなければならないため、実際にはミッドソールやその内部に入る緩衝部材を相似的に薄くすることは望ましくないので、結果として、シューズの全体高さに対して緩衝部材を厚くせざるを得ず、重心が高くなって、走行安定性が悪くなり、子供の足への負担が成人に比べて大きくなることが問題視される。他方、デザイン性の観点では、設計の自由度が制限されるため、従来より薄くて優れた緩衝性と重心安定性を確保できる緩衝部材が要望されていた。
最近では、緩衝機能等の諸機能に加え、着用者の運動能力を高めるための反発機能を備えた靴が提案されている(例えば、特許文献6参照。)が、緩衝性能は、緩衝材の厚みに依存しているため、依然として、子供用シューズなどに小型化して転用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−288907号公報
【特許文献2】特開2008−061853号公報
【特許文献3】特開2007−319394号公報
【特許文献4】特開2007−222545号公報
【特許文献5】特開2009−022449号公報
【特許文献6】国際公開WO2006/120749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、薄型でも足を安定した状態で保持しつつ、特にヒール部の緩衝機能と反発機能を向上させた緩衝部材を備えたシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シューズのヒール部において、実際の緩衝部材の変形について考察すると、従来の緩衝部材は、受圧部分の厚み方向の集中的な変形による緩衝作用が支配的であり、特に、緩衝部材が柔軟になるほど、また、緩衝部材が薄くなるほど、前記のような受圧部集中型の緩衝作用が顕著となっていることがわかった。そして、受圧部とともに受圧部以外の部分も変形させて、緩衝部材全体に緩衝作用を発現させれば、素材の柔らかさを活かしつつ薄型化できる、と想到するに至り、さらに、緩衝部材の硬さや形状に焦点を当てて、弾性変形可能な素材である低硬度ゴムやゲルなどの粘弾性素材からなる緩衝部材中に、前記粘弾性素材とは異質の波板体を埋め込んだ構造とすることにより、受圧時に緩衝部材の内部に存在する波板体が、次第に波形状が潰れるように横方向へと延伸する動きを利用して、前記波板体に接する面の粘弾性素材を前記波板体の延伸に伴わさせて、粘弾性素材外部だけでなく内部からの変形をも、衝撃吸収へと置換する機能を発現させることができ、また、波板体の内在により、緩衝部材の厚み変形に適度な張り(コシ)が付加できるので、その結果、緩衝材全体で衝撃緩衝作用されて、従来行われていた緩衝機能向上として、緩衝素材を柔らかくしたり厚くすることなく、二律背反の関係にあった薄さや重心を低くし、安定性を確保することが可能となり、もって、緩衝機能の格段の向上と、重心安定性が向上したものになり、さらに、デザイン設計の自由度が得られることを見出した。そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズであって、粘弾性体(a)は、針入度(JIS K2207)が5〜250又はアスカー硬度(C型)が0〜40の硬度を有するとともに、波板体(b)は、粘弾性体(a)より高い硬度と、波形連続方向に延伸変形する弾性とを有し、着地時の緩衝部材の受圧方向に波形山頂部へ向けて、粘弾性体(a)に、全体または全体の一部を埋設されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記緩衝部材は、受圧変形する受圧緩衝部(A)とその周辺に受圧緩衝部(A)の変形に連動して変形する連動緩衝部(B)とを有する略板状体または略円柱体であって、波板体(b)の全部または一部が、受圧緩衝部(A)と連動緩衝部(B)を貫通するように、粘弾性体(a)に埋設された構成からなり、受圧緩衝部(A)の受圧変形に連動して、受圧緩衝部(A)を起点とした波板体(b)の延伸変形によって、連動緩衝部(B)が該延伸変形の方向に変形される緩衝作用と、波板体(b)の延伸変形しない方向の粘弾性体(a)の受圧変形による緩衝作用とが共動することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、波板体(b)は、さらに、撓み変形する可撓性を有し、及び粘弾性体(a)は、着地面側に波板体湾曲誘発部を設けることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、波板体(b)の受圧下面側の凸型形状部の少なくとも一部に、粘弾性体(a)を介して、または直接隣接して、中空部分を有することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記緩衝部材が長尺形状であり、及び波板体(b)は、波板体(b)の延伸変形の方向が緩衝部材の長尺方向に倣うように配置されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、波板体(b)は、材料が樹脂であり、波形が三角波または弦波であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、波板体(b)は、JIS K6385準拠による圧縮ばね定数が1×103〜1×106N/mであり、かつ前記粘弾性体(a)の圧縮ばね定数に対する波板体の圧縮ばね定数の比が0.1〜10であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0012】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、波板体(b)は、アウトソール側が下方を向くように終了させることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、波板体(b)は、両末端が一方を上方、他方を下方に向くように終了させることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0013】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、前記緩衝部材は、連結部を介して、第2の緩衝体と一体に構成された構造を有することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、前記緩衝部材が着地部のミッドソールに配置されて、組込まれていることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズが提供される。
【0014】
本発明は、上記した如く、粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズなどに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の振幅が小さく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の振幅が大きいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図10参照。)。
(2)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の振幅が大きく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の振幅が小さいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ。
(3)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の周期が大きく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の周期が小さいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図11参照。)。
(4)第2の発明において、受圧緩衝部(A)における波板体(b)の周期が小さく、連動緩衝部(B)における波板体(b)の周期が大きいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ。
(5)第2の発明において、波板体(b)は、シューズ外側のコシ(剛性)がシューズ内側のコシ(剛性)より大きいことを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図12参照。)。
(6)第2の発明において、波板体(b)は、各波の頂点線が平行または±30度迄の交互(ハの字状と逆ハの字状の連続)であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図13参照。)。
(7)第2の発明において、前記略板状体は、形状が環形の一部(略扇状の一部)であり、前記波板体(b)も、形状が環形の一部(略扇状、周期は外側が大きく内側が小さい。)であることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図14参照。)。
(8)第2の発明において、波板体(b)は、前記略板状体内部の中央に配置されることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図7参照。)。
(9)第2の発明において、波板体(b)は、前記略板状体内部の中央より下部側に配置されることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図16参照。)。
(10)第2の発明において、波板体(b)は、前記略板状体内部のシューズ外側に配置されることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図16参照。)。
(11)第2の発明において、波板体(b)は、長尺両側のいずれか一方側に、変位し易い屈曲誘発部を有することを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ(図17参照。)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の緩衝部材を備えたシューズは、低弾性ゴムやゲルなどの粘弾性体(a)からなる緩衝部材に、受圧/除圧に対応して延伸/復元する波板体(b)を埋設することにより、厚みが薄くても、緩衝機能と重心安定性が格段と向上し、さらに、両機能を両立させたものである。本発明によれば、特に、過剰な変形外力に対して、緩衝部材全体に応力を分散させて、高い緩衝性を確保しつつ、ヒール着地時の重心点も安定するので、理想的な重心移動が可能なシューズを提供できる。また、薄くても、上記の優れた作用効果が得られるので、上記作用効果を有した子供用シューズを提供することができる。さらに、靴底の薄型化にも貢献するので、靴の軽量化や多様なデザイン設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の緩衝部材を備えたシューズを説明する斜視図である。
【図2】本発明の緩衝部材を備えたシューズの底面を説明する平面図である。
【図3】本発明に係る緩衝部材を説明する模式図である。
【図4】本発明に係る緩衝部材の別の形態を説明する模式図である。
【図5】本発明に係る緩衝部材を説明する模式図である。
【図6】本発明の緩衝部材を備えたシューズの後面を説明する模式図である。
【図7】本発明に係る緩衝部材の応力の分散を説明する模式図である。
【図8】本発明の第1または2の発明の一態様を説明する模式図である。
【図9】本発明の第6の発明の一態様を説明する模式図である。
【図10】本発明の別の態様(その1)を説明する模式図である。
【図11】本発明の別の態様(その2)を説明する模式図である。
【図12】本発明の別の態様(その3)を説明する模式図である。
【図13】本発明の別の態様(その4)を説明する模式図である。
【図14】本発明の別の態様(その5)を説明する模式図である。
【図15】本発明の第8または9の発明の一態様を説明する模式図である。
【図16】本発明の別の態様(その6)を説明する模式図である。
【図17】本発明の別の態様(その7)を説明する模式図である。
【図18】本発明の第4の発明の態様例を説明する模式図である。
【図19】波板体3のバネ変形作用を説明する模式図である。
【図20】本発明の別の態様(その9)を説明する模式図である。
【図21】本発明の第3の発明の受圧時の応力の分散を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の緩衝部材を備えたシューズを、以下の実施例により、先ず緩衝部材について説明し、続いてこの緩衝部材を備えたシューズについて、図面を用いて説明する。
なお、以下の実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において、適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0018】
先ず、本発明に係る緩衝部材1について説明すると、緩衝部材1は、例えば、図3に示すように、弾性変形可能な素材である粘弾性材料(または粘弾性体とも称する。)からなる略板状体2または図4に示すように略円柱状体8の内部に、粘弾性材料より弾性率が大きい波板体3が封入されたものである。
【0019】
前記緩衝部材は、弾性変形可能な粘弾性体からなり、その粘弾性体は、硬度がアスカーC硬度で20〜40である。ここで、「アスカーC硬度」とは、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されているスプリング式アスカーC型のデュロメータを使用して測定した硬度を意味する。
前記粘弾性材料としては、低硬度ゴムやゲルが好ましく、シリコーン、ウレタン、ポリエチレン、アクリル、アクリルウレタン、ブタジエン、イソプレン、ブチル、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、フッ素等の各種の低高度ゴムやゲル素材を適用することができるが、優れた緩衝性の観点からゲル素材が好ましい。また、波板体の延伸変形に追従し易すく過度の変形でも破断しにくい素材として、引っ張り伸び率(JIS K6251準拠)が500%以上の熱可塑性エラストマーも好適である。具体的には、例えば、シリコーンゲルとして、東レ・ダウコーニング社製CF5056(硬度:SRIS0101準拠 アスカーC 30)を、また、熱可塑性エラストマーとして、コスモ計器社製コスモゲルなどを、用いることができる。
また、粘弾性体は、発泡体でもよく、連泡または独泡構造の発泡体や、粘弾性素材に中空フィラーを添加したものを適用してもよい。
また、硬さの異なる異種素材を複合したり、積層構造として用いたり、着色剤やラメ素材、フィラー材等を混入するようにしてもよい。
【0020】
以下、粘弾性材料として、シリコーンゲルを適用した例にて説明する。
前記緩衝部材は、図6や図8に示すように、長尺形状が好ましく、受圧緩衝部(A)4とその周辺に連動緩衝部(B)5を有する。前記連動緩衝部5は、受圧緩衝部(A)の受圧変形に連動して変形させられて緩衝作用を発揮する。そして、受圧緩衝部(A)4と連動緩衝部(B)5を貫通するように、シリコーンゲルからなる前記緩衝部材内部に、シリコーンゲルより硬い(または剛性がある)波板体3が介在し、前記波板体3の波打ち方向が前記略板状体2の長尺方向となるように配置される。
前記波板体3は、図19(a)〜(c)のように、波板体の上面からの加圧に対して、波うち方向に対して、前記波板体の波形状の振幅が小さく、周期が長くなるように延伸しながら変形し、除圧されると同(d)のように収縮変形を経て(e)のように元の形状に復元するバネ性を有するものである。
【0021】
そして、前記波板体3が緩衝部材の内部に介在することにより、図7に示すように、受圧緩衝部(A)4に、応力または圧力を受けると、受圧緩衝部(A)4のシリコーンゲルの変形に次いで(もしくはほぼ同時に)、内部の波板体3が、受圧部を起点に長尺へ延伸変形し、前記延伸変形に追従させながら、波板体の周りのシリコーンゲル全体を変形させるように作用するので、波板体3の前記伸縮変形しない方向(受圧面の短尺方向)のシリコーンゲル自体の変形との共働によって、受圧緩衝部(A)4で受けた応力を、連動緩衝部(B)5の変形として分散させて吸収することができるから、従来の受圧部での一箇所集中変形に比べて緩衝機能が向上するとともに、波板体の剛性によって、反発機能も向上し、その結果、本発明の緩衝部材は、高い緩衝機能と反発機能を兼ね備えた優れた作用効果を発揮する。
【0022】
さらに、前記略板状体2の別の形態として、波板体下側の凸形状部の少なくとも一部に、シリコーンゲルを介して/もしくは直接隣接して、中空部7を形成してもよい。これにより、受圧時に波板体が、より変形し易くなり、上記の作用が発現しやすくなるとともに、緩衝部材の軽量化にも寄与する。なお、前記中空部は、閉空間としてもよいし、緩衝部材外部に連通開放されていてもよい。前記中空部の形状は、受圧時の変形挙動に合わせて適宜調整でき、前記凸形状部ごとに異ならせてもよい。また、図18(d)や(e)のように、波板体下面を浮かす構造としてもよく、この構造とすると、ヒール接地の受圧開直後には、シリコーンゲルの変形と波板体の撓みによって衝撃緩衝性を効かし、次いで、厚み方向の受圧変形が進んで、波板体が受圧面の裏側に当たる以降に波板の延伸変形を発動させて緩衝部材全体で緩衝させるようにして、柔らかな(抵抗感の少ない)接地開始感触を確保しつつ、緩衝部材全体での衝撃緩衝作用を発揮させることができる。
【0023】
また、波板体の下側(受圧する面の裏側)に受圧によって波板体を下に凹型に撓み変形させる波板体湾曲誘発部9を設けた構造としてもよく、このようにすることによって、例えば図21のように、受圧の際に、受圧緩衝部分の波板体が、撓み変形して踵部着地部を包み込んだ後(図21(b))、次いで波板体の延伸変形に連動した緩衝作用が働く(図21(c))ので、着地時の重心安定性を確保しながら優れた緩衝効果が得られる。前記波板体湾曲誘発部9は空隙部としてもよいし、緩衝部材を構成する粘弾性体よりもさらに柔らかい第二の粘弾性体としてもよく、さらにそれらを複合して用いてもよい。また、前記波板体湾曲誘発部は、図21の例では、波板体の中央部分に設けているが、波板体を撓ませる部分に配置すればよく、少なくとも受圧緩衝部分を含むものである。
【0024】
さらに、前記緩衝部材の別の形態として、図20のように、波板体の一部をシリコーンゲルから表出させる構造としてもよい。このような構造とすることで、波板体の伸縮変形がさらに容易となり、ゲルを長尺方向に容易に変形せしめることができる。また、図20(f)のように、波板体よりもシリコーンゲルが先に受圧する構成とすれば、図18(d)や(e)と同様に、柔らかな(抵抗感の少ない)接地開始感触を確保しつつ、緩衝部材全体での衝撃緩衝作用を発揮させることもできる。
【0025】
前記波板体3は、上記の作用を発揮するならば、どのような波でもよいが、図9に示すように、1.5周期以上の三角波または弦波であることが好ましい。また、波板体の材料は、樹脂であることが好ましい。
また、前記波板体3を構成する樹脂材料としては、所望の形状を付与し得るものであれば、特に限定されるものではなく、一般にプラスチックと称される既知の合成樹脂を適宜選択して用いることができ、具体的に、例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、ポリビニルホルマール、AS樹脂(SAN)、ポリビニルプチラール、ポリオレフィン、アセチルセルロース、塩化ビニリレン樹脂、セルロースエーテル、酢酸ビニル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、シリコーン樹脂(珪素樹脂)、ポリカーボネイト及びフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0026】
前記波板体は、JIS K6385準拠による圧縮ばね定数が1×103〜1×106N/mが好ましい。波板体の圧縮ばね定数が1×103N/mよりも小さいと、波板体が容易に変形しすぎて、衝撃が加わったときの緩衝部材の厚み変形に対して適度な張り(コシ)が付加できず、一方、1×106N/mよりも大きいと、波板体の剛性が大き過ぎて波板体の延伸変形が起こりにくく、また緩衝部材全体の緩衝性も損なわれるので好ましくない。
また、波板体の圧縮ばね定数は、粘弾性体の圧縮ばね定数(JIS K6385準拠)よりも大きいことを必須条件として、緩衝材部材の性能に応じて前記圧縮ばね定数の範囲で設定されるが、前記粘弾性体の圧縮ばね定数に対する波板体の圧縮ばね定数の比が0.1〜10であることが好ましい。前記の比が0.1未満の場合には、波板体による粘弾性体を幅方向に伸張変形させる作用が小さくなり好ましくなく、一方、10を超えると、波板体の変形作用が支配的になり、本発明における波板体と粘弾性体との相乗効果が得られなくなるので好ましくない。
ここで、前記圧縮ばね定数は、静的なばね定数であって、初期厚みに対して厚み方向に30%変形させたとき(30%圧縮)のものである。また、本発明では、緩衝部材を構成する実形状の圧縮ばね定数が重要であるので、波板体および波板体を組み込む粘弾性体の圧縮ばね定数は、標準試験片による測定値ではなく、実形状におけるものであり、厚み方向(波板体において波の振幅方向)に圧縮変形させたときの測定から求められる値である。
【0027】
さらに、前記波板体3は、装着者のタイプにより、適宜、波板体の波(例えば、弦波)の振幅や周期を変更することができる。波板体の振幅や周期や形状を変えることによって、波板体の剛性や受圧時の変形挙動(波板体の変形伸縮)や反発力、さらには重心を所望の方向へ誘導するなどを、全体もしくは部分的に自由に設定できる調整できるので、良好な緩衝性を図りつつ、重心の偏りを強制するように良好な重心移動方向へ誘導できるようになる。例えば、図10に示すように、受圧緩衝部(A)における波板体の波の振幅が小さく、連動緩衝部(B)における波板体の波の振幅が大きくでき、逆に、受圧緩衝部(A)における波板体の波の振幅が大きく、連動緩衝部(B)における波板体の波の振幅が小さくできる。また、図11に示すように、受圧緩衝部(A)における波板体の波の周期(P1)が大きく、連動緩衝部(B)における波板体の波の周期(P2)が小さくでき、逆に、受圧緩衝部(A)における波板体の波の周期が小さく、連動緩衝部(B)における波板体の波の周期が大きくできる。
【0028】
また、前記波板体3の別の態様として、装着者のタイプにより、前記波板体3は、例えば、図12に示すように、シューズ外側のコシ(剛性)がシューズ内側のコシ(剛性)より大きくすることができる。図面により説明すると、図12(a)の例では、波板体の厚さをシューズ外側(t2)がシューズ内側(t1)より厚くしたもの(t2>t1)であり、また、図12(b)の例では、波板体をシューズ外側では2枚重ね(t2)、シューズ内側(t1)より厚くしたもの(t2>t1)であり、さらに、図12(c)の例では、シューズ内側の波板体にスリットを入れて、シューズ外側のコシ(剛性)がシューズ内側のコシ(剛性)より大きくしたものである。
この様態によれば、ヒール接地時の重心点は、剛性が大きい側から小さい側に偏るように作動するので、所望の重心移動方向に誘導することができる。
【0029】
さらに、同様の効果を目的に、前記波板体3の別の態様として、前記波板体3は、例えば、各波の頂点線が平行にすることもできるし、或いは、図13に示すように、±30度迄の交互(ハの字状と逆ハの字状の連続)にすることもできる。
【0030】
また、上述したように、前記緩衝部材は、形状が環形の一部(略扇状の一部)であるから、前記波板体も、図14に示すように、形状が環形の一部(略扇状、周期は外側(P1)が大きく内側(P2)が小さい。)にすることもできる。
【0031】
さらに、前記波板体3は、波板体の末端(波形状の終点)が下向きの場合には、波板体が延伸変形する際に僅かでも上側にゲルを押し上げるように両端側から作用し、逆に、波板体の末端が上向きの場合には、波板体の末端が前記延伸変形時に斜め下にシリコーンゲルを押すようにして作用するので、緩衝部材の波板体の変形挙動を調整するための別の形態として、図15(a)に示すように、両末端が下方を向くように終了させることもでき、特にアウトソール方向に両末端を下向きとすることにより、波板体が延伸変形する際に僅かでも上側にゲルを押し上げるように両端側から作用して、着地緩衝時のフィット感や安定性を持たせることができる。また、特に、人体は、足裏の外側から着地する傾向があるので、足裏の外側のほうが少しでも上側に押し上げて足を支える(密着させる)ように、アウターソールの外側の波板体末端を下向きとして、着地の状態に応じて緩衝時の安定性をさらに向上させることができる。
また、図15(b)に示すように、両末端が一方を上方、他方を下方に向くように終了させることもでき、一方にフィット感や安定性を持たせつつ、一方に踏ん張り感を付与でき、例えばトラック競技のように一方向へ周回する運動の場合、トラックのインコース側の足裏の外側(トラックに対して最内周側)とアウトコース側の足裏の内側に一定の荷重移動が多く働くので、インコース側のシューズは、内側の波板体末端が下向きで外側が上向き、さらにアウトコース側のシューズは、内側の波板体末端が上向きで外側が下向き、となる構成としてもよい。
また、別の態様として、図15(c)に示すように、末端は、角を丸くすることもでき、或いは図15(d)に示すように、末端は、角を球状にすることもできる。
【0032】
また、前記波板体3は、通常、図7に示すように、前記緩衝部材内部の中央に配置されるが、別の態様として、図16(a)に示すように、前記波板体3は、前記緩衝部材内部の中央より下部側に配置されることもできる。さらに、図16(b)に示すように、前記波板体3は、前記緩衝部材内部のシューズ外側に配置されることもできる。
また、重心移動方向を調整するために、前記略板状態の長尺および/または受圧面の短尺方向に傾斜するように配置されてもよい。
【0033】
さらに、前記波板体3は、受圧の際に、変形し易くするために、図17に示すように、長尺両側のいずれか一方側に、変位し易い屈曲誘発部を有することもできる。具体的には、例えば、図17(a)、(b)に示すように、いずれか一方側の厚さを薄くして、変位し易い屈曲誘発部を有することも、或いは長尺両側のいずれか一方側に、スリットを入れて、変位し易い屈曲誘発部を有することも、できる。
【0034】
また、緩衝部材1は、略板状体2または略円柱状体を接地緩衝部10として、さらに図5に示すように、目的形状に成型された第2の緩衝部材と前記接地緩衝部とを連結部13によって一体的に連結して成るものとすることがより好ましい。例えば、ヒール部へ適用した場合には、第2の緩衝部材は、踵緩衝部11として機能し、この様態によれば、前記接地緩衝部で接地直後の衝撃を緩衝した後に、前記接地緩衝部から連結部13を経て踵緩衝部11に向かって、衝撃緩衝しながら重心を安定に移動させて、着地開始からヒール部着地までの歩行性を向上させることができる。また、前記連結部13は、板バネとしても作用して、爪先側へ重心移行した後は、前記接地緩衝部側が、踵S側に押し付けられ踵Sへフィットさせる効果がある。
前記踵緩衝部11は、連結部13上に突出した円錐台状に形成されるものであり、後述するようにシューズ6に組み付けられた状態で、装着者の踵Sの直下に位置するように設置されるものである。一例として、図1や図5に示すように、平面視で扇形状となるように一体成形される。
【0035】
ここで前記踵緩衝部11及び連結部13の素材について説明すると、良好な緩衝性が得られるものであれば、適宜のゴム素材やゲル素材を採用できるが、例えばシリコーン系(一例として、東レ・ダウコーニング社製CF5058)、ウレタン系(一例として、日本ミラクトン社製:ミラクトランE375)、スチレン系(一例として、旭化成ケミカルズ社製:アサプレンT436)、アクリル系(一例として、日本ゼオン社製ニポールAR)等のゴム素材を、射出成型、押出成型、ブロー成型等により無垢状態で硬化させたものを用いることができる。因みに、量産性を考慮した場合、射出成型によるのが好ましい。
また、前記ゴム素材に、発泡剤や中空フィラーを混入するなどして、踵緩衝部11または連結部13の全部または一部を、発泡倍率0.1〜1.5程度の発泡状態とさせて、緩衝性と合わせて軽量化を図る構成と、してもよい。
なおこの場合、前記中空フィラーとしては、日本フィライト社製の「エクスパンセル(登録商標)551DE」等が採用されゴム素材100重量部に対して1〜3重量部程度の配合割合で用いられる。
【0036】
また、前記接地緩衝部と連結部13とは、L字状乃至T字状に連結されるものであり、ここでL字状とは、連結部13の底面が接地緩衝部の底面と連続した状態となり、接地緩衝部と連結部13との断面がL字状となる状態を意味するものである。また、前記T字状とは、連結部13の端部が接地緩衝部の高さ寸法の中心に接続された状態となり、接地緩衝部と連結部13との断面がT字状となる状態を意味するものである。
前記連結部13は、前記接地緩衝部からの重心移動を受けて変形して衝撃緩衝するとともに、踵緩衝部へ重心を安定して誘導する役目を有し、後述するように歩行時または走行時の着地の際に、接地緩衝部の変形が顕著になるとともに、後述するような連結部13を介した接地緩衝部と踵緩衝部11との共動作用を得ることができる。連結部13と接地緩衝部との接続個所は、シューズへの組み込み場所や、歩行(走行)時の重心移動のさせ方によって、適宜調整できるが、上記作用効果をより効果的に発現させるためには、接地緩衝部の最下部から高さ寸法の中心までの部分に連結とすることが好ましい。
【0037】
本発明に係る緩衝部材において、前記略板状体2または円柱状体の中に、波板体3を介在させる方法は、特に限定されないが、例えば、金型内で波板体を未硬化のシリコーンゲルとともにインモールド成形する方法や、波板の嵌め込み部が形成されたシリコーンゲル部品に波板体を嵌め込んで、さらにシリコーンゲルで封止する組立てる方法などが挙げられる。
【0038】
次に、接地緩衝部10と連結部13と踵緩衝部11とからなる前記緩衝部材1を例にして、前記緩衝部材1が組み込まれるシューズ6について説明する。
図1中、符号6で示すものがシューズの一例であるスポーツシューズであって、接地部材であるソール21に対してアッパー22が組み付けられて成るものである。
そして前記ソール21に対してヒール部21a(装着者が歩行時・走行時に最先に接地する部位の上方)に、ヒール部21aの最後端から踵直下部周辺にかけてくり抜かれるように受入空間23が形成されるものであり、この受入空間23に、緩衝部材1と踵緩衝部11と連結部13が組み込まれた状態で、ソール21とアッパー22とが組み付けられる。
なお、前記ソール21は、一般的に複数のパーツを積層状態に組み合わせて構成されるものであり、前記緩衝部材1の組み付け個所すなわち受入空間23の形成個所は、アウトソール、ミッドソールあるいはインソールとするなど、適宜の部位を選択することができる。
【0039】
本発明の緩衝部材を備えたシューズは、一例として上述したように構成されるものであるが、シューズへの組込み位置や所望の特性(緩衝性と反発性とのバランス、さらには重心誘導性等)に応じて、上述の各種形態の緩衝部材を適宜適用することができる。
【0040】
続いて、使用時の挙動について説明する。
〔着地前の状態〕
シューズ6の装着者が歩行または走行している状態において、着地前の状態では、踵緩衝部11は、特に圧力が加わっていないため、変形は生じない。また、緩衝部材1についても、特に圧力が加わっていないため、変形は生じない。
【0041】
〔着地の瞬間の状態〕
次に、着地の瞬間の状態を考察すると、図6、7に示すように、緩衝部材1の受圧部(A)4(接地緩衝部)には、装着者の体重及び接地の衝撃が加わるため、接地緩衝部が変形して接地衝撃を緩衝することになる。その際に、接地緩衝部中のシリコーンゲル2と波板体3の働きにより、変形の受圧部が一箇所に集中していたのを、内部から波板体を介在して、周囲ゲル全体に広がることによって、変形が一箇所集中から分散状態になり、その結果、緩衝機能が格段と向上し、さらに、反発性能も高いので、重心の安定性にも優れたものになる。また、図10〜18のような部分的に波板体の変形挙動を異ならせた形態の緩衝部材を適用した場合には、接地時の重心点を目的の重心移動経路に矯正するように誘導される。さらに、図18(e)や図20(f)のような構造を有する緩衝部材を適用した場合には、シリコーンゲル特有の柔らかさを活かした柔らかな感覚で着地し、波板体の凹型の撓み変形部に重心を誘導しつつ、次いで、波板体の延伸変形とシリコーンゲルの変形との共動による優れた緩衝効果が得られるとともに、波板体の反発性により重心の安定化が図られる。
【0042】
〔着地後の状態〕
次に、着地後の状態を考察すると、接地緩衝部は、着地からの歩行重心移動に連動して形状復元し、衝撃緩衝しながら重心を踵緩衝部11へスムーズに誘導するよう作用する。
この状態では、踵緩衝部11には、装着者の体重及び接地の衝撃が加わることとなるため変形が生じるが、緩衝部材1の十分な反発性により重心点の移動方向が安定確保されているので、接地緩衝部10と踵緩衝部11とが連結部13を介在させて共動することにより、重心点の安定を確保しながら衝撃を効果的に逃がすこととなる。
また、接地緩衝部は、爪先方向への重心移動に伴い、踵緩衝部11の衝撃緩衝状態と連動、共動してさらに形状が復元し、シリコーンゲルと波板体3の反発力により、爪先方向への円滑な重心移動を実現することができる。
更に、爪先側へ重心移行した後は、踵緩衝部11と連結部13とは、L字状乃至T字状に連結されているため、接地緩衝部は、連結部13の弾性により、踵S側に押し付けられ踵Sへフィットするように作用し、再度接地緩衝部が着地するタイミングや着地部位の再現性を向上させて、歩行衝撃緩衝挙動を安定化することで、衝撃緩衝性と良好な歩行性を両立させる効果を奏する。
【0043】
なお、実施例1においては、緩衝部材1をヒール部の着地開始部分に適用した様態であるが、ヒール部分の側面やつま先部の母子丘付近に、単独もしくは複数配置した様態としてもよい。
【0044】
本発明の効果を検証するために、実施例1のシューズと、比較例として実施例1において、シリコーンゲルに、波板体を封入しない以外は、実施例1と同様に、シューズ用緩衝部材とそれを組み込んだシューズを作製し、被験者10名に実履きしてもらい、緩衝性と歩行性および走行性について官能試験とした結果、比較例に比べて実施例1のほうが全ての評価において優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の緩衝部材を備えたシューズは、粘弾性体内部に、波板体を配置した緩衝部材を備えているため、優れた衝撃緩衝性を維持しつつ緩衝部材の薄型化が可能であり、また、特にヒール部の緩衝機能と重心安定性を向上させているため、アスリート用スポーツシューズをはじめ、ウォーキングシューズからビジネスシューズ、さらには、子供向けシューズに至る広い範囲で、適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 緩衝部材
2 略板状体
3 波板体
4 受圧緩衝部(A)
5 連動緩衝部(B)
6 シューズ
7 中空部
8 略円柱状体
9 波板体湾曲誘発部
10 接地緩衝部
11 踵緩衝部
13 連結部
21 ソール
22 アッパー
23 受入空間
24 アウターソール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズであって、
粘弾性体(a)は、針入度(JIS K2207)が5〜250又はアスカー硬度(C型)が0〜40の硬度を有するとともに、
波板体(b)は、粘弾性体(a)より高い硬度と、波形連続方向に延伸変形する弾性とを有し、着地時の緩衝部材の受圧方向に波形山頂部へ向けて、粘弾性体(a)に、全体または全体の一部を埋設されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項2】
前記緩衝部材は、受圧変形する受圧緩衝部(A)とその周辺に受圧緩衝部(A)の変形に連動して変形する連動緩衝部(B)とを有する略板状体または略円柱体であって、
波板体(b)の全部または一部が、受圧緩衝部(A)と連動緩衝部(B)を貫通するように、粘弾性体(a)に埋設された構成からなり、
受圧緩衝部(A)の受圧変形に連動して、受圧緩衝部(A)を起点とした波板体(b)の延伸変形によって、連動緩衝部(B)が該延伸変形の方向に変形される緩衝作用と、波板体(b)の延伸変形しない方向の粘弾性体(a)の受圧変形による緩衝作用とが共動することを特徴とする請求項1に記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項3】
波板体(b)は、さらに、撓み変形する可撓性を有し、及び
粘弾性体(a)は、着地面側に波板体湾曲誘発部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項4】
波板体(b)の受圧下面側の凸型形状部の少なくとも一部に、粘弾性体(a)を介して、または直接隣接して、中空部分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項5】
前記緩衝部材が長尺形状であり、及び
波板体(b)は、波板体(b)の延伸変形の方向が緩衝部材の長尺方向に倣うように配置されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項6】
波板体(b)は、材料が樹脂であり、波形が三角波または弦波であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項7】
波板体(b)は、JIS K6385準拠による圧縮ばね定数が1×103〜1×106N/mであり、かつ前記粘弾性体(a)の圧縮ばね定数に対する波板体の圧縮ばね定数の比が0.1〜10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項8】
波板体(b)は、アウトソール側が下方を向くように終了させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項9】
波板体(b)は、両末端が一方を上方、他方を下方に向くように終了させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項10】
前記緩衝部材は、連結部を介して、第2の緩衝体と一体に構成された構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項11】
前記緩衝部材が着地部のミッドソールに配置されて、組込まれていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項1】
粘弾性体(a)と波板体(b)からなる緩衝部材を備えたシューズであって、
粘弾性体(a)は、針入度(JIS K2207)が5〜250又はアスカー硬度(C型)が0〜40の硬度を有するとともに、
波板体(b)は、粘弾性体(a)より高い硬度と、波形連続方向に延伸変形する弾性とを有し、着地時の緩衝部材の受圧方向に波形山頂部へ向けて、粘弾性体(a)に、全体または全体の一部を埋設されてなることを特徴とする緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項2】
前記緩衝部材は、受圧変形する受圧緩衝部(A)とその周辺に受圧緩衝部(A)の変形に連動して変形する連動緩衝部(B)とを有する略板状体または略円柱体であって、
波板体(b)の全部または一部が、受圧緩衝部(A)と連動緩衝部(B)を貫通するように、粘弾性体(a)に埋設された構成からなり、
受圧緩衝部(A)の受圧変形に連動して、受圧緩衝部(A)を起点とした波板体(b)の延伸変形によって、連動緩衝部(B)が該延伸変形の方向に変形される緩衝作用と、波板体(b)の延伸変形しない方向の粘弾性体(a)の受圧変形による緩衝作用とが共動することを特徴とする請求項1に記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項3】
波板体(b)は、さらに、撓み変形する可撓性を有し、及び
粘弾性体(a)は、着地面側に波板体湾曲誘発部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項4】
波板体(b)の受圧下面側の凸型形状部の少なくとも一部に、粘弾性体(a)を介して、または直接隣接して、中空部分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項5】
前記緩衝部材が長尺形状であり、及び
波板体(b)は、波板体(b)の延伸変形の方向が緩衝部材の長尺方向に倣うように配置されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項6】
波板体(b)は、材料が樹脂であり、波形が三角波または弦波であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項7】
波板体(b)は、JIS K6385準拠による圧縮ばね定数が1×103〜1×106N/mであり、かつ前記粘弾性体(a)の圧縮ばね定数に対する波板体の圧縮ばね定数の比が0.1〜10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項8】
波板体(b)は、アウトソール側が下方を向くように終了させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項9】
波板体(b)は、両末端が一方を上方、他方を下方に向くように終了させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項10】
前記緩衝部材は、連結部を介して、第2の緩衝体と一体に構成された構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【請求項11】
前記緩衝部材が着地部のミッドソールに配置されて、組込まれていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の緩衝部材を備えたシューズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−177206(P2011−177206A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41591(P2010−41591)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】
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