説明

水槽の排水口蓋およびそれを備えた水槽付き流し台

【課題】水槽の底部と一体感がある排水口蓋と、調理器具で開口部を塞がれ難い排水口蓋を備える水槽付き流し台を、排水口蓋を簡易な構造で提供する。
【解決手段】 水槽の排水口蓋であって、開口部は平面視で横長偏平の略長円形状であって、上面から前記開口部へ掛けて滑らかな下向きの傾斜がつき、且つひとつの曲面で形成され、且つ前記開口部の端部は滑らかな小さなR状に形成されていることを特徴とする、水槽の排水口蓋。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流し台等の排水口蓋およびそれを備えた流し台に関する。
【背景技術】
【0002】
流し台の排水口蓋は、従来から排水口蓋の開口部分から中が見え難いようにするためと、排水口蓋の開口部を調理器具で塞いでしまわないように、流しの底面に段部を設け、排水口蓋の開口部が該段部の立面に臨むようにした、略半円形の開口部を有する丸型の排水口蓋がよく使われている。これは材質を樹脂とすることが多いが、これは成型が容易であることにもよる。
【0003】
しかし、これら排水口蓋は水槽の略中央に位置した場合、その大きさは直径約180mmもあり、平面視で該排水口蓋の面積の約1/3から1/2が開口部であるため、排水口蓋自体がとても目立つという欠点があった。また排水口蓋の材質は樹脂とされることが多く、ステンレス製流しにあっては異材質の組合せとなり、これも目立つ大きな要因となっていた。
【0004】
特許文献1には水槽の底面に段部を有し、この段部の略立面部に開口部が臨む丸型の排水口蓋を有する水槽が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−7909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水槽の底部と一体感がある排水口蓋と、調理器具で開口部を塞がれ難い排水口蓋を簡易な構造とすることが可能な、水槽付き流し台を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、水槽の排水口蓋であって、平面視で開口部輪郭は滑らかな曲線をなし、更に上面から開口部へ掛けて滑らかな下向きの傾斜がつき、且つひとつの連続した曲面で形成されていることを特徴とする、水槽の排水口蓋。
【0008】
この発明によれば、1.排水口蓋上面から開口部にいたるまで稜線(山状および谷状を含む)があらわれないため、すっきりした意匠となる。2.平面視で、開口部周囲の領域から開口部へ向け下がっているため、調理器具と前記開口部は上下方向にも隙間が生じるため、通水路が確保でき、調理器具で排水口を塞ぎ難くなる。3.上面が滑らかな曲面のため、排水の流れも該曲面にそって滑らかに流れるという質感を演出できる。4.開口部を下方に滑らかな連続したひとつの曲面で構成し、その末端に開口部を設けるのみでよく構造を簡易にできる。5.平面視で開口部輪郭は滑らかな曲線であるため、鋭利な部分はなく、該開口部に手を挿入しても安全である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記排水口蓋の周縁近傍は水槽底面と略面一であることを特徴とする請求項1に記載の水槽の排水口蓋。
【0010】
この発明によれば、該排水口蓋の上に調理器具などをのせても、傾くことなく安定させて置ける。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、前記開口部は平面視で横長偏平の略長円形状であって、前記下向きの傾斜は漸次大きくなることを特徴とする請求項1乃至2に記載の排水口蓋。
【0012】
この発明によれば、上面から開口部にかけて漸次傾斜が大きくなることで、曲面が更にふくよかで滑らかになり、排水の流れも該曲面にそって流れるという質感を更に演出できる。
【0013】
請求項4に記載の本発明は、前記水槽は平面視で奥側に膨出する膨出部を備え、前記排水口蓋は該膨出部の手前側で、その後部が該膨出部近傍に配置され、該膨出部には収納容器が備わり、該収納容器の下端と前記水槽の底面との間に空間を有し、平面視において前記排水口蓋の後部が前記収納容器と重なることを特徴とする請求項1乃至3に記載の排水口蓋を備えた水槽付き流し台。
【0014】
この発明によれば、前記開口部の上面に調理器具が置かれた場合、該調理器具が寸胴なべなど高さのある調理器具では、奥側への移動が前記収納容器に妨げられるため、該調理器具により完全に排水口蓋を塞いでしまうことがなくなる。また、該調理器具が中華なべなどでは、大径であっても高さがないため、前記収納容器の下端と前記水槽の底面との間の空間を利用すれば水槽内に収めることができ、更に前記中華なべなどの底面は球状をなしていることから、通水路は常に確保できるため、洗浄水などをよどみなく排出することができる。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、少なくとも前記排水口蓋の上面と、前記水槽の材質が同じであることを特徴とする請求項4に記載の排水口蓋を備えた水槽付き流し台。
【0016】
この発明によれば、前記排水口蓋を前記水槽の排水口に装着した際に、該排水口蓋と該水槽の質感が統一できる。
【0017】
請求項6に記載の本発明は、少なくとも前記排水口蓋の上面と、前記水槽の材質がステンレス製であることを特徴とする請求項5に記載の排水口蓋を備えた水槽付き流し台。
【0018】
この発明によれば、前記排水口蓋を前記水槽の排水口に装着した際に該排水口蓋と該水槽の質感がステンレスで統一できる。

【発明の効果】
【0019】
これらの発明によれば、水槽の底部と一体感がある排水口蓋と、調理器具で開口部を塞ぎ難い排水口蓋を備える水槽付き流し台を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は実施例1における排水口蓋の側断面図である。
【図2】図2は実施例1における排水口蓋の平面図である。
【図3】図3は排水口蓋の開口部に流れる水の様子を示した説明図である。
【図4】図4は排水口蓋の構造を実施例と他の例で比較した説明図であり、(1)は実施例1の排水口蓋を示し、(2)は稜線のある排水口蓋を示し、(3)は開口部に向けて下向きの傾斜のない排水口蓋を示す。
【図5】図5は排水口蓋の上に調理器具を配置した側面視した場合の実施例と他の例で比較した説明図であり、(1)は実施例1の排水口蓋を示し、(2)は稜線のある排水口蓋を示し、(3)は開口部に向けて下向きの傾斜のない排水口蓋を示す。
【図6】図6は実施例におけるステンレス製水槽に排水口蓋を備えた使用状態を示した図である。
【図7】図7は実施例における収納容器の斜視図である。
【図8】実施例における作業者が水槽の排水口を俯瞰する、立面における視点を表した図である。
【図9】実施例1における寸胴なべを置いた場合の側断面図である。
【図10】実施例1における中華なべを置いた場合の側断面図である。
【図11】実施例2における排水口蓋の平面図である。
【図12】実施例2における排水口蓋の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
排水口蓋が水槽の中央に位置していても目立つことない排水口蓋と、調理器具で開口部を塞ぎ難い排水口蓋を備える水槽付き流し台を提供する目的を、簡易な構造の排水口蓋で実現した。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1における排水口蓋の側断面図であって、図の左側を手前方向とする。図2は排水口蓋の平面図であって、図の左側を手前方向とする。符号1は排水口蓋を、符号2は周縁部を、符号4は該周縁部の更に外側の外縁部を、符号3は開口部を、符号5は角部をあらわす。図6は本発明の使用状態をあらわし、図の上を奥方向、図の下を手前方向とする。
【0023】
図8は、側面視で調理作業者が立位で排水口蓋1の開口部3を俯瞰する姿勢を表している。調理作業者の身長は165cm程度あり、流し台のすぐ前方に立っている。流し台の天板までの床からの高さは85cm程度あり、流し台は水槽の深さが約20cm程度である本発明の水槽付き流し台である。
【0024】
図1において、開口部3にかけて連続した傾斜がついている。また開口部3は手前側から奥側にかけて下がっている。図8の姿勢から排水口蓋1を見下ろした場合、実際の開口部3の大きさより見かけの大きさは小さいため、開口部3の大きさを目立たなくしながら、十分な排水ができる。従って、排水口蓋1の下方に位置するゴミ収納器(図示せず)にたまった厨芥を、開口部3から見え難くできる。
【0025】
図2において排水口蓋1は角部5を丸くした、略四角形状をなしている。開口部3は横長長円形状で排水口蓋の中心より後退している。図1において略水平な周縁部2から開口部3にかけて、開口部へ近づくしたがって勾配が急になり、またなめらかな曲面で構成されている。この曲面は周縁部2から開口部3にかけて連続したひとつの曲面で構成されている。
【0026】
図3は排水口蓋1の開口部3に流れる水の様子を示したもので、水は開口部3にかけて連続したひとつの曲面に沿うように、なめらかに流れていることがわかる。連続したひとつの曲面であっても、曲面と曲面をつなぐ曲面の曲率が小さいとなめらかには流れない。
【0027】
図4は本実施例と他の形状例の比較であり、(2)において例A21は、排水口蓋21の上面は図示しない水槽底面と略面一で、更に排水口213の周囲から排水口213に掛けて傾斜した面をなしているが、連続した面ではなく、複数の面により構成されている。(3)において例B22の上面は、図示しない水槽底面と略面一で、前記上面に単純に開口部223を設けただけの場合である。(2)は開口部213へ水の流れを導く傾斜がついているが、傾斜と水平部の稜線211が目だってしまう。一方(3)は単純な構造ではあるが、開口部223が水槽底面と同一面にあり、排水口蓋1のように開口部がすぼまって水槽底面より下方に位置する場合に比べて、開口部223が大きく見えてきてしまい、従って排水口蓋の下方にあるごみ収納容器(図示せず)の中などが見えやすくなってしまう。
【0028】
図5は図4において、(1)乃至(3)の場合の排水口蓋上に調理器具を載置したときの側断面視図で、排水口蓋21、1、及び22の周縁部(排水口1であれば周縁部2に当る部位。排水口21及び22においても同じ部位)近傍は、水槽31の略平面な底面と略面一である。(3)に関しては、調理器具で開口部223を塞いでしまい水の流れる経路を確保できないが、(2)は開口部213に掛けて漏斗状の傾斜をなしており、更に該排水口蓋上面の開口面積は、開口部213より大きく、更にまた傾斜面の奥側は調理器具より外側に形成されているため調理器具で開口部213の上部を完全には塞がず、水の流れる経路を確保できる。(1)における本発明の排水口蓋1も(2)同様に水の流れる経路を確保できる。
【0029】
このように排水口蓋1は周縁部2から開口部3にかけて一つの曲面で構成され、構造が簡易になり、排水口蓋1を生産するときは、ステンレスなどの鋼板であれば、単一の材料から開口部をあけたのち、絞り成型をおこなうなどの簡単な工程で生産可能である。
【0030】
図6はステンレス製水槽に排水口蓋1を備えた使用状態を示している。水槽31は奥側へ膨出部32を備え、平面視で膨出部32に一部望む排水口(図示せず)を備える。排水口上部には排水口蓋1を備える。排水口蓋1は角部が丸められた、略四角形状をなし、また横方向の大きさと奥行き方向の大きさは等しくしている。該排水口蓋1の上面には、上面視横長な開口部3を該排水口蓋1の中心から奥側よりに配置してなる。
【0031】
前記膨出部32内の上方には、スポンジや洗剤を収納する収納容器40が備わる。該収納容器40は、上面視で横長の長円を略への字状に屈曲した形状をなしている。図7は収納容器40の上方からの斜視図であり、ステンレス製の線材で構成されている。該収納容器40は上面視で左右は手前側に全体が張り出し、中央は全体が後退した形状をなす。
【0032】
図6は水槽31の中央に中華なべ50を配置した場合を示している。中華なべ50を洗浄する場合を想定して配置したものである。中華なべ50の直径は、水槽31の奥行き寸法(膨出部含まず)の略2/3程度あり、直径36cm相当の大型の調理器具を想定している。
【0033】
中華なべ50は上面視で排水口蓋1に一部臨んでいるが、開口部3は排水口蓋の中心より後退しているため、中華なべ50で開口部3を塞ぐことがなく、水の流れる経路を確保できる。また、上面視で前記収納容器40の中央が後退しているため、中華なべ50と干渉することがなく、洗浄作業を容易におこなえる。更に図10において、中華なべ50が更に大きな径であっても収納容器40の底部と水槽底面との間に空間が確保されていることから、水槽内に大きな径であっても、中華なべ50を収容することができる、また中華なべ50の底面は球状であることから、略平面状の水槽31の底面と該中華なべ50の底面との間には空間が存し、水の流れる経路は常に確保される。
【0034】
図9は水槽31に寸胴なべ51を排水口蓋1の上部へ配置したときの側断面図である。該寸胴なべ51は、底部から上部にかけて略等しい径をなし、底面は平面であって、該底面と側面とは小さなR形状をなす曲面でつながる。該寸胴なべ51は高さが高いため収納容器40に当接し、それ以上奥側へ移動させることはできない。従って該寸胴なべ51の底面は平面であっても、該寸胴なべ51の底面で排水口蓋1の開口部3を完全に塞ぐことがなく、水の流れる経路を確保できる。
【0035】
以上説明したように、本実施例には限られず、排水口蓋1の少なくとも上面、および水槽31は、材質を合わせれば人造大理石などの耐熱性樹脂でもよい。
【実施例2】
【0036】
開口部3の形状は、実施例1に限らず、円形や角部を滑らかに丸めた矩形などでもよい。図11および図12は排水口蓋1の開口部3が上面視で円形の場合を示す。図12は、本発明の実施例2における排水口蓋の側断面図であって、図の左側を手前方向とする。図11は排水口蓋の平面図であって、図の左側を手前方向とする。符号1は排水口蓋を、符号2は周縁部を、符号3は開口部を、符号5は角部をあらわす。
【0037】
図11において排水口蓋1は角部5を丸くした、略四角形状をなしている。開口部3は円形状で排水口蓋の中心より後退している。図12において略水平な周縁部2から開口部3にかけて、開口部へ近づくしたがって勾配が急になり、またなめらかな曲面で構成されている。この曲面は周縁部2から開口部3にかけて連続したひとつの曲面で構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の水槽の排水口蓋は、水槽底面に排水口を有する、物品を洗浄するための水槽など、流し台の水槽や洗面化粧台の水槽に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 排水口蓋
2 周縁部
3 開口部
4 外縁部
5 角部
21 例A
211 稜線
213 開口部
22 例B
223 開口部
31 水槽
32 膨出部
40 収納容器
50 中華なべ
51 寸胴なべ
61 作業者
62 天板
63 流し
64 水切りプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の排水口蓋であって、平面視で開口部輪郭は滑らかな曲線をなし、更に上面から開口部へ掛けて滑らかな下向きの傾斜がつき、且つひとつの連続した曲面で形成されていることを特徴とする、水槽の排水口蓋。
【請求項2】
前記排水口蓋の周縁近傍は水槽底面と略面一であることを特徴とする請求項1に記載の水槽の排水口蓋。
【請求項3】
前記開口部は平面視で横長偏平の略長円形状であって、前記下向きの傾斜は漸次大きくなることを特徴とする請求項1乃至2に記載の排水口蓋。
【請求項4】
前記水槽は平面視で奥側に膨出する膨出部を備え、前記排水口蓋は該膨出部の手前側で、その後部が該膨出部近傍に配置され、該膨出部には収納容器が備わり、該収納容器の下端と前記水槽の底面との間に空間を有し、平面視において前記排水口蓋の後部が前記収納容器と重なることを特徴とする請求項1乃至3に記載の排水口蓋を備えた水槽付き流し台。
【請求項5】
少なくとも前記排水口蓋の上面と、前記水槽の材質が同じであることを特徴とする請求項4に記載の排水口蓋を備えた水槽付き流し台。
【請求項6】
少なくとも前記排水口蓋の上面と、前記水槽の材質がステンレス製であることを特徴とする請求項5に記載の排水口蓋を備えた水槽付き流し台。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62743(P2012−62743A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257894(P2010−257894)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】