植物の環境耐性促進剤およびそれを用いた促進方法
【課題】 環境条件に対する植物の耐性能を促進する新たな環境耐性促進剤および植物を提供する。
【解決手段】 本発明の環境耐性促進剤は、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とし、さらに、セレンを含んでもよい。本発明の環境耐性促進剤の原料としては、例えば、フライアッシュ等の石炭灰が使用できる。本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、乾燥、寒冷、高温等の環境条件下においても、これらの環境に対する植物の耐性能を促進できるため、効率よく植物を育成することが可能である。
【解決手段】 本発明の環境耐性促進剤は、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とし、さらに、セレンを含んでもよい。本発明の環境耐性促進剤の原料としては、例えば、フライアッシュ等の石炭灰が使用できる。本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、乾燥、寒冷、高温等の環境条件下においても、これらの環境に対する植物の耐性能を促進できるため、効率よく植物を育成することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の環境耐性促進剤およびそれを用いた促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動による冷害、干ばつ、猛暑等が深刻化しており、これが食糧生産に与える影響が世界的に問題視されている。これに並行して世界人口が増加傾向にあるため、前述の問題は、飢餓に直結することが懸念されている。この問題を解決する手段として、その一つに、植物に環境ストレス耐性を付与し、過酷な条件下でも生育可能とする方法が試みられている。
【0003】
前記環境ストレス耐性の付与は、一般に、育種による方法が用いられている。従来では、前記環境ストレスに強い野生種と栽培種を交雑し、環境耐性作物が作製されていた。しかしながら、この方法では、目的の形質の導入に長期間を要するという問題があった。そこで、近年では、遺伝子組換えを利用した育種方法が多く報告されている(特許文献1)。この方法によると、育種に要する期間は、短縮可能である。しかしながら、食用としての安全性を考慮した場合、現状、育種に長期間を要するという問題がある。さらに、遺伝子組換え植物については、その拡散による遺伝子汚染と生態系への影響が、消費者にとっての懸念事項となっている。このため、育種によらない方法が、求められている。このような方法としては、例えば、化学物質により、植物が本来有する抵抗性を増強させる方法がある。前記化学物質は、例えば、微生物の代謝物(特許文献2)、揮発性物質、および糖(特許文献3)等の有機化合物が多く報告されている。しかし、これらの化学物質は、例えば、生産の困難性、高コスト、処理方法の煩雑さ等が課題となっている。
【0004】
一方、石炭火力発電所では、粉砕した石炭を燃焼させ、その熱で水蒸気を発生させ、前記水蒸気により発電機に連結したタービンを回転させることで、発電を行っている。この際、膨大な量の石炭灰が廃棄物として発生する。前記石炭灰は、一般に、ボイラーの下部に落下して集積した、比較的粒度の大きなクリンカアッシュと、ボイラーの燃焼ガスから煙道の電気集塵器に吸着する、比較的粒度の小さいフライアッシュに大別される。前記石炭灰は、主に、セメントおよびコンクリートの混和剤として、建築に使用されている。
【0005】
また、前記石炭灰は、農業分野において、土壌改良材として使用されている。前記石炭灰はアルカリ性であるため、この性質を利用して、土壌のpH矯正、土壌の排水性等の物理性の改善が目的とされている(非特許文献1)。具体的に、例えば、前記フライアッシュにより、酸性土壌を改良する方法(特許文献4)、廃培土への前記クリンカアッシュの混合により、土壌の物理性を改善して前記廃培土を再利用する方法(特許文献5)、前記クリンカアッシュを養液栽培培地に混合して、培地の排水性および保水性を改善する方法(非特許文献2)等が報告されている。
【0006】
前記石炭灰は、肥料取締法により、「微粉炭燃焼灰(火力発電所において微粉炭を燃焼する際に生ずるよう融された灰で煙道の気流中及び燃焼室の底の部分から採取されるものをいう。ただし、燃焼室の底の部分から採取されるものにあっては、3mmの網ふるいを全通するものに限る。(農林省告示第177号))」として、特殊肥料に定められている。前記石炭灰において、肥料成分として期待されるのはケイ素とホウ素であり、これらはいずれも、細胞壁を強固にする作用を有することが報告されている(非特許文献3)。
【0007】
特に、ケイ素については、最近の研究により、植物の細胞壁を強固にする他、病虫害の軽減効果、窒素利用効率の向上効果、ミネラルストレス軽減効果、水分ストレス軽減効果が公知となっている(非特許文献4)。具体的に、水分ストレスの軽減については、例えば、イネの育成において、土壌中の可溶性ケイ酸濃度を100ppmに増加させる方法(非特許文献5)、ソルガムの育成において、前記濃度を25ppmに増加させる方法(非特許文献6)が報告されている。このように、土壌中のケイ酸濃度が数十ppm以上での報告しかなされていない。しかしながら、前記石炭灰は、通常、50〜75v/v%のケイ酸を含んでいるが、そのほとんどが不溶性ケイ酸であり、可溶性ケイ酸は、数十ppmに過ぎない。このため、無加工の前記石炭灰を用いて、前述のようなケイ酸による効果を発揮させるには、土壌の大部分を前記石炭灰に置き換える必要がある。しかしながら、このような利用方法は、操作面、前記石炭灰中の他の成分による過剰障害の発生等の点からも、現実的ではない。このため、現在では、マグネシウム成分およびリン酸成分等を添加することで、ケイ酸を可溶化する技術が開発されており、「ケイ酸加里肥料」として実用化されている。しかしながら、このような肥料は、加工を伴うために高価である(非特許文献1、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/058975号国際公開パンフレット
【特許文献2】特開2007−45709号公報
【特許文献3】特開2009−73826号公報
【特許文献4】特開2008−279349号公報
【特許文献5】特開2006−271222号公報
【特許文献6】特開2006−111486号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】環境技術協会・日本フライアッシュ協会編(2000)、石炭灰ハンドブック第4版、環境技術協会・日本フライアッシュ協会、I-18−I-27,-II-174-II-190.
【非特許文献2】垣渕ら(2005)、クリンカアッシュの土壌改良材および養液栽培培地への適用試験(第2報)、四国電力・四国総合研究所研究期報、85,1-6.
【非特許文献3】渡辺和彦(1988)、野菜の要素欠乏と過剰症、タキイ種苗、87-119.
【非特許文献4】高橋英一(2003)、ケイ酸の吸収と生理作用、農業技術大系土壌施肥編2、農文協、作物栄養III 77-83.
【非特許文献5】間藤ら(1991)、イネへのケイ酸施用が有用である理由、土肥学雑、62(3)、248-251.
【非特許文献6】服部ら(2003)、ソルガムの水ストレス耐性に対するケイ酸の施用効果、日本作物学会記事、72(別1)、248-249.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、例えば、乾燥、寒冷、高温等の環境条件に対する植物の耐性能を促進する新たな環境耐性促進剤および植物の環境耐性促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の環境耐性促進剤は、植物の環境耐性促進剤であって、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の促進方法は、植物の環境耐性能を促進する方法であって、前記本発明の環境耐性促進剤を植物に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、乾燥、寒冷、高温等の厳しい環境条件下においても、これらの環境条件に対する植物の耐性能を促進できる。このため、本発明の環境耐性促進剤を植物の育成に利用することで、厳しい環境条件下でも、植物の生育を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの収量を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの蒸散量を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの含水率を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの新葉の発生率を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの被害率を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの最大葉長を示すグラフである。
【図7】図7(A)は、実施例4における、石炭灰存在下で育成したイネの含水率を示すグラフであり、図7(B)は、石炭灰存在下で育成したイネの健全株率を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例5における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの重量を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例6における、石炭灰中の成分と、前記石炭灰存在下で育成したイネの根長との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例6における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成したイネの含水率を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例6における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成したイネの健全株率を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例7における、石炭灰存在下および石灰灰非存在下で育成したイネの結果であり、(A)は、被害率を示すグラフであり、(B)は、全長を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例8における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成したイネの葉幅を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例9における、石炭灰存在下で育成した各種植物の含水率を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例10における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成した各種植物の含水率を示すグラフであり、(A)がジャガイモ、(B)がトマト、(C)がホウレンソウ、(D)がブロッコリーの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、さらに、セレンを含むことが好ましい。
【0016】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素とケイ素との重量比が、1:0.1〜1:10であり、ホウ素とアルミニウムとの重量比が、1:0.1〜1:10であることが好ましい。
【0017】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素とセレンとの重量比が、1:0.001〜1:0.1であることが好ましい。
【0018】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含む原料として、フライアッシュを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、前記環境耐性が、乾燥耐性、水分蒸散耐性および温度耐性からなる群から選択された少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、前記植物が、陸上植物であることが好ましく、前記陸上植物が、例えば、種子植物、コケ植物およびシダ植物からなる群から選択された少なくとも一つであることが好ましい。
【0021】
本発明の促進方法は、例えば、前記環境耐性促進剤を、前記植物を生育させる培地に含有させることが好ましい。
【0022】
本発明の促進方法は、例えば、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有量が、それぞれ、0.1×10−4〜10×10−4w/v%であることが好ましい。
【0023】
本発明の促進方法は、例えば、前記環境耐性促進剤が、さらにセレンを含み、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のセレンの含有量が、0.001×10−4〜1×10−4w/v%であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明について、例をあげて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の説明によって限定及び制限されない。
【0025】
<環境耐性促進剤>
本発明の環境耐性促進剤は、前述のように、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とする。本発明の環境耐性促進剤は、これら3つの成分を必須の成分として含むことが特徴であって、その他の構成は何ら制限されない。
【0026】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムからなる促進剤でもよいし、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムの他に、任意成分として、さらにセレンを含むことが好ましい。
【0027】
本発明の環境耐性促進剤において、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有割合は、特に制限されない。ホウ素(B)とケイ素(Si)の割合は、重量比(B:Si)で表わした場合、その下限が、例えば、1:0.1であり、好ましくは1:0.5であり、その上限が、例えば、1:10であり、好ましくは1:5であり、より好ましくは1:2であり、その範囲が、例えば、1:0.1〜1:10であり、好ましくは1:0.1〜1:5であり、より好ましくは1:0.5〜1:5であり、さらに好ましくは1:0.5〜1:2である。ホウ素(B)とアルミニウム(Al)の割合は、重量比(B:Al)で表わした場合、その下限が、例えば、1:0.1であり、好ましくは1:0.5であり、その上限が、例えば、1:10であり、好ましくは1:5であり、より好ましくは1:2であり、その範囲が、例えば、1:0.1〜1:10であり、好ましくは1:0.1〜1:5であり、より好ましくは1:0.5〜1:5であり、さらに好ましくは1:0.5〜1:2である。
【0028】
本発明の環境耐性促進剤が、さらにセレンを含む場合、セレンの含有割合は、特に制限されない。ホウ素(B)とセレン(Se)の割合は、重量比(B:Se)で表わした場合、その下限が、例えば、1:0.001であり、好ましくは1:0.005であり、より好ましくは1:0.01であり、さらに好ましくは1:0.03であり、その上限が、例えば、1:1であり、好ましくは1:0.1であり、より好ましくは0.05であり、その範囲が、例えば、1:0.001〜1:1または1:0.001〜1:0.1であり、好ましくは1:0.005〜1:0.1であり、より好ましくは1:0.01〜1:0.05であり、さらに好ましくは1:0.03〜1:0.05である。
【0029】
本発明の環境耐性促進剤において、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよび任意のセレンは、それぞれ、そのものでもよいし、これらを含む化合物でもよい。本発明の環境耐性促進剤が前記化合物を含む場合、例えば、前記化合物の状態で存在してもよいし、水等の水性液の共存によって、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよび任意のセレンが、イオン化した状態で存在してもよい。前記ホウ素含有化合物は、例えば、ホウ素、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸鉄、ホウ酸銅、ホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、有機ホウ素化合物等があげられる。前記ケイ素含有化合物は、例えば、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムマグネシウム、ケイ酸鉄、ケイ酸銅、ケイ酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、有機ケイ素化合物等があげられる。前記アルミニウム含有化合物は、例えば、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、セレン酸アルミニウム、亜セレン酸アルミニウム等があげられる。前記セレン含有化合物は、例えば、金属セレン、セレン酸、セレン酸ナトリウム、セレン酸カリウム、セレン酸カルシウム、セレン酸マグネシウム、セレン酸鉄、セレン酸銅、セレン酸バリウム、セレン酸アルミニウム、亜セレン酸、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸カルシウム、亜セレン酸水素ナトリウム、亜セレン酸鉄、亜セレン酸銅、亜セレン酸バリウム、亜セレン酸アルミニウム、有機セレン化合物等があげられる。
【0030】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、さらに、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブテン、塩素、ナトリウム、糖類、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン類、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸、ビオチン等があげられる。
【0031】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素またはホウ素含有化合物、ケイ素またはケイ素含有化合物、およびアルミニウムまたはアルミニウム含有化合物、さらに、任意でセレンまたはセレン含有化合物を、混合して調製してもよいし、これらの成分を含む原料を使用してもよい。
【0032】
前者の場合、前記成分に、さらに、前述したさらにその他の成分を混合してもよい。前記混合物は、例えば、各成分を混合したドライ系の混合物(乾燥混合物)でもよいし、各成分を分散媒中で混合したウエット系の混合物(液体混合物)でもよい。前記分散媒は、特に制限されず、例えば、水系媒が使用でき、具体例としては、水、生理食塩水、緩衝液、生理緩衝液、肥料養液等があげられる。前記緩衝液は、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等があげられ、前記肥料養液は、例えば、園芸試験場処方、山崎処方、大塚化学処方等の肥料養液があげられる。
【0033】
後者の場合、前記原料として、例えば、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよびセレンを含むことから、石炭灰が使用できる。石炭火力発電所では、通常、粉砕した石炭を燃焼させ、その熱で水蒸気を発生させ、前記水蒸気により発電機に連結したタービンを回転させることで、電気を発生させている。この際に生じる前記石炭の廃棄物が、前記石炭灰である。前記石炭灰は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とし、クリンカアッシュとフライアッシュがあげられる。一般に、前記フライアッシュは、例えば、平均粒径100μm以下の粒子からなり、前記クリンカアッシュは、それより大きな平均粒径の粒子からなる。前記石炭灰は、例えば、JISにより規格が設定されている。前記フライアッシュは、例えば、微粉炭燃焼ボイラの燃焼ガスから集塵機で採取されたものであり、主成分は二酸化ケイ素であり、粒径は、例えば、0.001〜0.1mmである。前記フライアッシュは、JIS A6201改正(1999年)により、I種、II種、III種、IV種に分類されており、これらの種別は、前記集塵機で採取された原灰を篩い分けすることで選別される。前記フライアッシュは、前記原灰、I種、II種、III種、IV種のいずれを使用することもできるが、IV種が好ましい(石炭灰ハンドブック、第4版、平成17年5月、環境技術協会・日本フライアッシュ協会発行)。前記クリンカアッシュは、例えば、微粉炭燃焼ボイラの炉底に落下採取されたものであり、粒径は、例えば、0.001〜10mmであり、3mmの篩いを全通できるものが望ましい。本発明の環境耐性促進剤において、前記原料は、例えば、前記フライアッシュが好ましい。
【0034】
前記石炭灰は、例えば、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよびセレンの他に、さらに、リン、窒素、カリウム、マグネシウム、銅、硫黄、硫酸イオン、鉄、亜鉛、銀、カドミウム、鉛、ヒ素、クロム、フッ素、ナトリウム、カルシウム、および/またはこれらの原子またはイオンを含む化合物等を含む。本発明の環境耐性促進剤は、前記原料として前記石炭灰を含む場合、例えば、これらの成分をさらに含んでもよい。
【0035】
前記石炭灰は、例えば、さらに、前述したその他の成分を混合してもよい。前記原料は、例えば、前記石炭灰をそのままドライ系の混合物(乾燥混合物)として使用してもよいし、前記石炭灰を前記分散媒に混合して、ウエット系の混合物(液体混合物)として使用してもよい。また、前記原料は、例えば、前記石炭灰を前記分散媒に分散し、前記石炭灰に含まれる成分を溶出させた溶出液でもよい。前記分散媒は、特に制限されず、前述と同様のものが使用できる。
【0036】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ドライ系(乾燥物)でもよいし、ウエット系(液体物)でもよい。前者の場合、前述のような、乾燥混合物があげられ、後者の場合、前述のような、液体混合物があげられる。前記液体混合物は、例えば、植物の育成に使用する際、前記各種成分の飛散を防止でき、取扱上好ましい。
【0037】
本発明の乾燥耐性促進剤は、前記必須成分を含んでいればよく、その形状は、特に制限されない。本発明の環境耐性促進剤の形状は、例えば、粒状体、焼成体、発泡体、シート等があげられる。これらの形状は、例えば、植物の育成に使用する際、前記各種成分の飛散を防止できることが、取扱上好ましい。前記粒状体および前記発泡体は、例えば、それぞれ、前記混合物を、公知の方法で加工することによって製造できる。前記焼成体は、例えば、前記混合物を、公知の焼成方法で加工することによって製造できる。前記本発明の環境耐性促進剤の形状は、例えば、前記必須成分を含む栽培シートおよび栽培ポット等でもよい。前記栽培シートは、例えば、シート状基材に、前記各種成分を保持させることで形成できる。前記栽培シートは、例えば、前記各種成分を含む前記分散剤に、前記シート状基材に含浸させて製造でき、また、前記シート状基材用の原料に前記各種成分を含有させて、シートを成型することで製造することもできる。前記栽培ポットは、例えば、樹脂に前記各種成分を含有させて、ポットを成型することで製造できる。前記樹脂の種類は、特に制限されず、従来公知の樹脂が使用でき、好ましくは、植物の栽培時において、前記ポット内の前記各種成分を放出するものが好ましい。
【0038】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、前記環境耐性が、乾燥耐性、水分蒸散耐性、温度耐性であることが好ましい。前記温度耐性は、例えば、耐寒冷性、耐高温性等があげられる。本発明の環境耐性促進剤は、例えば、乾燥耐性促進剤、水分蒸散耐性促進剤または温度耐性促進剤ということもできる。本発明の乾燥耐性促進剤、水分蒸散耐性促進剤または温度耐性促進剤は、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とし、詳細は、前述の環境耐性促進剤の説明を引用できる。
【0039】
<環境耐性促進方法>
本発明の促進方法は、前述のように、植物の環境耐性能を促進する方法であって、前記本発明の環境耐性促進剤を植物に供給することを特徴とする。本発明の促進方法は、前記本発明の環境耐性促進剤を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0040】
本発明の促進方法において、育成対象の植物は、特に制限されない。前記植物は、例えば、陸上植物であり、種子植物、コケ植物およびシダ植物等があげられる。前記種子植物の具体例を以下に示す。
イネ科:イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、ソルガム、シバ、イタリアンライグラス
アブラナ科:キャベツ、ハクサイ、ナタネ、ダイコン、カブ、ブロッコリー、カリフラワー
キク科:レタス、シュンギク
ナス科:トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ
ウリ科:キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ
ユリ科:ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、アスパラガス
マメ科:ダイズ、エンドウ、インゲンマメ、ソラマメ、ニセアカシア
シソ科:シソ、ミント
アカザ科:ホウレンソウ、テンサイ
ミカン科:ウンシュウミカン、オレンジ、レモン
バラ科:リンゴ、ナシ、モモ、オウトウ、イチゴ、サクラ
ブドウ科:ブドウ
マタタビ科:キウイフルーツ
ヒルガオ科:サツマイモ
サトイモ科:サトイモ
ヤマノイモ科:ヤマイモ
セリ科:ニンジン、セルリー、パセリ、ミツバ
ショウガ科:ショウガ、ミョウガ
スギ科:スギ
ヒノキ科:ヒノキ
クスノキ科:クスノキ
ブナ科:アラカシ、ウバメガシ、シラカシ、クヌギ、クリ
カエデ科:オオカエデ、イロハモミジ
ニレ科:アキニレ、ケヤキ、エノキ
フトモモ科:ユーカリ
マツ科:アカマツ、クロマツ、カラマツ、モミ
カバノキ科:ヤシャブシ、シラカバ、ハンノキ
イチョウ科:イチョウ
ヤナギ科:ポプラ、ヤナギ
ベンケイソウ科:セダム
前記コケ植物の具体例を以下に示す。
キボウシゴケ科:スナゴケ
スギゴケ科:スギゴケ
ハイゴケ科:ハイゴケ
前記シダ植物の具体例を以下に示す。
コバノイシカグマ科:ワラビ
ゼンマイ科:ゼンマイ
イワデンダ科:クサソテツ
チャセンシダ科:オオタニワタリ
マツバラン科:マツバラン
【0041】
本発明の促進方法において、前記植物に対する、前記環境耐性促進剤の供給方法は、何ら制限されない。本発明の促進方法において、前記環境耐性促進剤は、例えば、前記植物を生育させる環境条件下に存在させればよく、培地に含有させることが好ましい。
【0042】
前記培地の種類は、何ら制限されず、例えば、前記植物の種類に応じて、従来のものが使用できる。前記培地は、例えば、土を含む培地、液体培地があげられる。前記培地は、例えば、微生物等により発酵させたものでもよいし、未発酵のものでもよい。前記土を含む培地は、例えば、培土でもよいし、微生物により発酵させた培養土でもよい。前記液体培地は、例えば、未発酵の液体培地、微生物により発酵させた養液、無機物の肥料養液等があげられる。
【0043】
前記培地は、例えば、前記環境耐性促進剤の他に、さらにその他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブテン、塩素、ナトリウム、糖類、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン類、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸、ビオチン等があげられる。
【0044】
前記植物に対する前記環境耐性促進剤の供給のタイミングは、特に制限されず、生育開始時から供給してもよいし、生育途中において供給してもよい。また、前記環境耐性促進剤の供給回数は、特に制限されず、1回でもよいし、2回以上の複数回でもよい。後者の場合、前記環境耐性促進剤は、例えば、連続的に供給してもよいし、断続的に供給してもよい。前記環境耐性促進剤は、例えば、前記培地に、予め添加してもよいし、生育途中に添加してもよい。
【0045】
植物の育成は、例えば、まず、苗床で苗を育苗した後、前記苗を土壌等に定植することによって行われる。本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、前記育苗時に前記環境耐性促進剤を添加することによって、前記定植後、前記環境耐性促進剤の非存在下であっても、環境耐性能の促進が実現できる。このため、前記本発明の環境耐性促進剤は、例えば、育苗時に使用することが好ましい。
【0046】
前記環境耐性促進剤は、例えば、そのまま前記培地に添加してもよいし、その溶出液を添加してもよい。後者の場合、ドライ系の前記環境耐性促進剤を前記分散媒に分散し、前述の必須成分を溶出させ、この溶出液を、前記培地に含有させてもよい。
【0047】
本発明の促進方法において、前記培地における前記環境耐性促進剤の含有割合は、特に制限されない。前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有量は、それぞれ、下限が、例えば、0.1×10−4w/v%であり、好ましくは0.5×10−4w/v%であり、より好ましくは1×10−4w/v%であり、上限が、例えば、10×10−4w/v%であり、好ましくは5×10−4w/v%であり、より好ましくは3×10−4w/v%であり、範囲が、例えば、0.1×10−4〜10×10−4w/v%であり、好ましくは0.5×10−4〜5×10−4w/v%であり、より好ましくは1×10−4〜3×10−4w/v%である。なお、10−4w/v%は、例えば、ppmで表わすこともできる。また、前記環境耐性促進剤がセレンを含む場合、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のセレンの含有量は、下限が、例えば、0.001×10−4w/v%であり、好ましくは0.005×10−4w/v%であり、より好ましくは0.01×10−4w/v%であり、上限が、例えば、1×10−4w/v%であり、好ましくは0.1×10−4w/v%であり、より好ましくは0.05×10−4w/v%であり、範囲が、例えば、0.001×10−4〜1×10−4w/v%であり、好ましくは0.005×10−4〜0.1×10−4w/v%であり、より好ましくは0.01×10−4〜0.05×10−4w/v%である。前記ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよびセレンの割合は、特に制限されず、例えば、本発明の環境耐性促進剤において述べた割合があげられる。
【0048】
本発明の促進方法において、前記環境耐性促進剤が前記石炭灰を原料として含む場合、前記培地における前記石炭灰の含有割合は、特に制限されない。前記培地において、前記石炭灰の含有量は、下限が、例えば、0.1v/v%であり、好ましくは1v/v%であり、より好ましくは3v/v%であり、上限が、例えば、100v/v%であり、好ましくは10v/v%であり、範囲が、例えば、0.1〜100v/v%であり、好ましくは1〜10v/v%であり、より好ましくは3〜10v/v%である。前記環境耐性促進剤を育苗で使用する場合、例えば、前記培地における前記石炭灰の含有割合は、下限が、例えば、3v/v%であり、好ましくは6v/v%であり、上限が、例えば、100v/v%であり、好ましくは10v/v%であり、より好ましくは8v/v%であり、範囲が、例えば、3〜100v/v%であり、好ましくは6〜10v/v%であり、より好ましくは6〜8v/v%である。前記環境耐性促進剤を栽培で使用する場合、例えば、前記培地における前記石炭灰の含有割合は、下限が、例えば、1v/v%であり、好ましくは3v/v%であり、上限が、例えば、10v/v%であり、好ましくは5v/v%であり、より好ましくは4v/v%であり、範囲が、例えば、1〜10v/v%であり、好ましくは3〜5v/v%であり、より好ましくは3〜4v/v%である。
【0049】
本発明の促進方法は、前述のように、前記本発明の環境耐性促進剤を植物に供給すればよく、この点以外は、例えば、前記植物の種類に応じた条件で、前記植物を育成すればよい。
【0050】
<植物の製造方法>
本発明の製造方法は、植物の製造方法であって、前記本発明の促進方法により前記植物の環境耐性を促進する工程を含むことを特徴とする。また、本発明の製造方法は、例えば、前記本発明の環境耐性促進剤の存在下、植物を育成する工程を含むことを特徴とする。
【0051】
本発明の製造方法は、前記本発明の環境耐性促進剤を用いて、植物の環境耐性を促進することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の製造方法において、植物は、例えば、前記本発明の環境耐性促進剤の存在下で育成すればよく、前記育成方法は、従来と同様に行うことができる。本発明の製造方法は、例えば、前記本発明の環境耐性促進剤および促進方法における記載を引用できる。
【実施例】
【0052】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されない。
【0053】
[実施例1]
本例では、環境耐性促進剤による耐乾燥性の促進を、イネの収量により評価した。
【0054】
(1)収量による評価
前記環境耐性促進剤として、石炭灰(フライアッシュ:JIS IV種灰)を使用した。前記石炭灰は、四国電力株式会社 橘湾発電所(石炭火力発電所)から入手した。前記石炭灰について、溶出成分組成を下記表1に示す。前記溶出成分組成は、前記石炭灰を5倍体積量の純水を添加し、前記混合液を室温で24時間振とうして溶出処理を行い、その液体画分について分析した結果である。下記表1は、前記石炭灰1kgあたりの重量(mg)を示す(以下、同様)。
【0055】
【表1】
【0056】
前記石炭灰を、培土(商品名くみあい粒状培土SD、カサネン工業社製、窒素0.9g/5L、リン酸3.1g/5L、カリウム0.9g/5L)に添加した。前記石炭灰の添加割合は、体積割合1v/v%および3v/v%とした。そして、1/5000aワグネルポットに、これらの培土を入れ、実施例区1%および実施例区3%とした。また、前記石炭灰を添加していない培土を入れ、対照区とした。前記実施例区および前記対照区について、土壌の乾燥状態を、以下の3つの処理区に分割した。
湿潤区(湛水:水ポテンシャル 0kPa以上)
弱乾燥区(水ポテンシャル −5〜−20kPa)
強乾燥区(水ポテンシャル −20kPa以下)
【0057】
そして、雨水等の混入を防ぐために、ビニールハウス内で、イネ「コシヒカリ」の栽培を行った。具体的には、平成20年6月11日、前記各処理区に、コシヒカリの苗を1ポットあたり5株定植した。1つの処理区あたりの反復数は、10株とした。そして、同年9月30日に、全株を刈り取って、収量を確認した。
【0058】
これらの結果を図1に示す。図1は、各処理区における1株あたりの収量(g)を示すグラフである。図1において、縦軸は、1株あたりの収量(g)を示し、各処理区において、左のバーが、前記石炭灰混合率0%の対照区、真ん中のバーが、前記石炭灰混合率1%の実施例区1%、右のバーが、前記石炭灰混合率3%の実施例区3%の結果である。
【0059】
図1に示すように、湿潤区の場合、前記実施例区および前記対照区のいずれにおいても同等の収量が得られた。しかしながら、前記弱乾燥区および前記強乾燥区については、前記対照区と比較して、前記実施例区が有意に高い収量を示した。特に、より厳しい乾燥条件である強乾燥区においては、前記対照区と比較して、前記実施例区が著しい収量の増加を示し、前記培土における前記石炭灰の含有量の増加により、高い収量を達成できた。これらの結果から、前記石炭灰は、乾燥が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐乾燥性を促進できることがわかった。
【0060】
(2)蒸散量および含水率による評価
蒸散量測定装置(商品名スーパーポロメーターLI−1600、Li−cor社製)を用いて、前記弱乾燥区から収穫したイネについて、葉の蒸散量を測定した。また、採取した葉身を70℃で24時間風乾して、乾燥前後の重量を測定し、含水率を算出した。これらの結果を、図2および図3に示す。図2は、蒸散量を示すグラフであり、縦軸は、蒸散量を示す。図3は、葉身中の含水率を示すグラフであり、縦軸は、含水率を示す。図2および図3において、0%のバーは、前記対照区、1%のバーは、前記実施例区1%、3%のバーは、前記実施例区3%の結果を、それぞれ示す。図3において、aとbとの間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。
【0061】
図2および図3に示すように、その結果、前記実施例区のイネは、前記対照区のイネと比較して、前記葉からの蒸散量が低下し、前記葉身の含水率が有意に上昇していることがわかった。この結果から、前記石炭灰を混合した培土を使用した場合、蒸散量の抑制により水分が保持された結果、耐乾燥性が向上されたと考えられる。なお、このメカニズムの推定によって、本発明は制限されるものではない。
【0062】
[実施例2]
本例では、環境耐性促進剤による耐寒冷性の促進を、新葉の発生率により評価した。
【0063】
前記石炭灰の添加割合を、体積割合1v/v%および5v/v%とした以外は、前記実施例1と同様にして、培土を準備した。そして、黒色ポリポット(直径12cm)に、これらの培土を入れ、実施例区1%および実施例区5%とした。また、前記石炭灰を添加していない培土を前記ポットに入れ、対照区とした。
【0064】
20℃で展開葉2枚まで育苗したイネ「コシヒカリ」および「ヒノヒカリ」の苗を、前記各ポットに定植し、平均気温が10℃以下の栽培ハウスで2週間育成した。前記育成後、前記イネの新葉(第4葉)の発生率を確認した。前記発生率は、2週目の全苗数に対する第4葉の出現苗数の百分率として算出した。各実施例区および対照区の反復数は、10個体とした。
【0065】
これらの結果を図4に示す。図4は、前記各実施例区および対照区における前記イネの新葉(第4葉)の発生率を示すグラフである。図4において、縦軸は、前記イネの新葉(第4葉)の発生率(%)を示し、0%は、前記対照区、1%は、前記実施例区1%、5%は、前記実施例区5%の結果であり、前記各実施例区および対照区において、左のバーが、「コシヒカリ」、右のバーが、「ヒノヒカリ」の結果である。
【0066】
図4に示すように、「コシヒカリ」について、前記対照区では、第4葉発生率が74%であった。これに対し、前記実施例区1%および前記実施例区5%では、全ての個体において、第4葉の発生が確認された(第4葉発生率100%)。また、「ヒノヒカリ」について、前記対照区では、第4葉発生率が66%であった。これに対し、前記実施例区1%では第4葉発生率が82%、前記実施例区5%では第4葉発生率が100%であった。イネは高温性の作物であるため、10℃以下の低温では細胞分裂が抑制され、新葉の発生が遅延する。しかしながら、これらの結果に示すように、前記石炭灰を使用することによって、低温下でも新葉の発生が促進されたことから、寒冷が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐寒冷性を促進できることがわかった。
【0067】
[実施例3]
本例では、環境耐性促進剤による耐暑性の促進を、被害率および最大葉長により評価した。
【0068】
前記実施例1と同じ石炭灰に、5倍体積量の純水を添加し、この混合液を、室温で24時間振とうし、前記石炭灰の成分を前記純水に溶出させた。前記混合液をろ過し、液体画分を溶出液として回収した。
【0069】
他方、以下の方法により、肥料養液を調製した。まず、下記表2に示す原液A〜D液を調製し、前記各原液1mLを混合し、全量1Lとなるように純水で希釈し、HClによって、pH5.5〜6.5に調製した。これを、石炭灰未添加の肥料養液(0%)とした。また、前記各原液1mLに前記石炭灰溶出液を150mL混合し、同様の手順で希釈およびpH調整した。これを、石炭灰添加の肥料養液(3%)とした。すなわち、後者の肥料養液(3%)は、前記肥料養液全体の体積に対して、前記石炭灰の溶出液を、石炭灰そのものに換算して3%混合したことになる。
【0070】
【表2】
【0071】
プラスチックトレイに、細めのバーミキュライト(商品名バーミキュライトS、旭工業社製)を充填し、発芽処理したイネ「コシヒカリ」の種子を播種した。そして、前記プラスチックトレイに、前記溶出液を添加した肥料養液(3%)を添加し、実施例区とした。また、前記溶出液を添加していない肥料養液(0%)を添加し、対照区とした。
【0072】
前記播種から10日目、前記実施例区および前記対照区の苗を、25℃のグロースチャンバーに搬入した。そして、前記グロースチャンバー内の温度を上昇させながら、前記イネの苗を育成した。前記温度は、2日毎に2℃ずつ上昇させ、25℃から40℃まで上昇させた。イネは、極度の高温条件に曝されると、高温障害によって、葉の先端から白化もしくは褐変した被害部分が伸長する。そこで、前記育成後に、前記イネの葉の全長を100%として、被害部分の長さ(被害葉長)が占める割合を、被害率(%)として求めた。また、前記育成の指標として、前記イネの最大葉長を測定した。前記実施例区および前記対照区の反復数は、20個体とした。
【0073】
これらの結果を図5および図6に示す。図5は、被害率(%)を示すグラフである。図6は、最大葉長(mm)を示すグラフである。図5において、縦軸は、被害率を示し、図6において、縦軸は、最大葉長を示す。図5および図6において、0%は、前記対照区、3%は、前記実施例区3%の結果を、それぞれ示す。図5および図6において、aとbとの間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。
【0074】
図5および図6に示すように、前記実施例区のイネは、前記対照区のイネと比較して、被害率が有意に低下するとともに、最大葉長が有意に増加していることがわかった。これらの結果から、前記石炭灰は、高温が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐暑性を促進できることがわかった。
【0075】
[実施例4]
本例では、環境耐性促進剤による耐乾燥性および耐寒冷性の促進を、含水率および健全株率により評価した。
【0076】
(1)耐乾燥性の向上
前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、体積比が3v/v%となるように、後述する実施例5の石炭灰(D)の溶出液を添加し、培養液(3%)を調製した。前記溶出液は、以下のように、調製した。まず、前記石炭灰に、5倍体積量の純水を添加し、この混合液を、室温で24時間放置し、前記石炭灰の成分を前記純水に溶出させた。そして、前記混合液をろ過し、得られた液体画分を溶出液とした。また、ネガティブコントロールとして、前記溶出液を添加していない前記肥料養液(0%)を使用した。
【0077】
イネ「コシヒカリ」の苗を、25℃のグロースチャンバー内で、10日間、前記培養液(3%)および培養液(0%)を使用して水耕栽培した。そして、16個体について、前記実施例1と同様にして含水率を測定した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、前記培養液(3%)を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0078】
この結果を、図7(A)に示す。図7(A)は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図7(A)において、縦軸は、含水率の相対値を示した結果である。
【0079】
図7(A)に示すように、前記培養液(3%)を使用することによって、ネガティブコントロールよりも、優れた含水率を示した。この結果から、環境耐性能の促進に、石炭灰が有効であることがわかった。
【0080】
(2)耐寒冷性の向上
前記(1)により前記培養液(3%)を用いて水耕栽培されたイネを、5℃の低温庫に搬入し、さらに2週間放置した。放置後のイネについて、全株のうち、低温によって白化しなかった株の百分率を、健全株率として算出した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、前記培養液(3%)を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0081】
この結果を、図7(B)に示す。図7(B)は、健全株率(相対値)を示すグラフであり、図7(B)において、縦軸は、健全株率の相対値を示した結果である。
【0082】
図7(B)に示すように、前記培養液(3%)を使用することによって、ネガティブコントロールよりも優れた健全株率を示した。この結果から、環境耐性能の促進に、石炭灰が有効であることがわかった。
【0083】
[実施例5]
本例では、育苗時に環境耐性促進剤を使用し、定植後における耐寒冷性の促進を評価した。
【0084】
前記石炭灰の添加割合を、体積割合6v/v%および10v/v%とした以外は、前記実施例1と同様にして、培土を準備した。そして、イネ育苗用トレイに、これらの培土を充填し、実施例区6%および実施例区10%とした。また、前記石炭灰を添加していない培土を前記トレイに充填し、対照区とした。
【0085】
発芽処理したイネ「コシヒカリ」の種子を、前記トレイに播種し、25℃条件で1ヶ月育苗した。前記育苗後、15℃の低温温室において、培土を充填した1/5000aワグネルポットに、前記育苗後のイネを定植した。前記培地は、前記石炭灰を添加していない、培土(商品名くみあい粒状培土SD、カサネン工業社製)を使用した。前記定植後、15℃で8週間育成し、地上部および地下部の重量(新鮮重)を確認した。各実施例区および対照区の反復数は、10個体とした。前記新鮮重は、採取したそのままの重量を意味する。
【0086】
これらの結果を図8に示す。図8は、各実施例区および対照区における地上部の重量および地下部の重量を示すグラフである。図8において、縦軸は、地上部および地下部の新鮮重(g/株)を示し、0%は前記対照区、6%は前記実施例区6%、10%は前記実施例区10%の結果であり、各実施例区および対照区において、左のバーが、地上部、右のバーが、地下部の結果である。図8において、aとb、a’とb’の間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。
【0087】
図8に示すように、前記実施例区6%および前記実施例区10%で育苗したイネは、定植後、前記石炭灰非存在下であっても、低温下での著しい生長が確認された。特に、前記実施例区10%は、前記対照区と比較して、地上部重が約2倍、地下部重が約3倍の生長量となった。これらの結果から、育苗時に前記石炭灰を施用することによって、定植後のイネについても、耐寒冷性を促進できることがわかった。
【0088】
[実施例6]
本例では、環境耐性促進剤における有効成分を特定した。
【0089】
(1)石炭灰における有効成分の特定
前記環境耐性促進剤として、4種類の石炭灰A〜D(フライアッシュ:JIS IV種灰)を使用した。前記石炭灰は、四国電力株式会社 橘湾発電所(石炭火力発電所)および西条発電所(石炭火力発電所)から入手した。前記石炭灰A〜Dについて、溶出成分組成を下記表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
前記石炭灰を、前記実施例1の培土(商品名くみあい粒状培土SD、カサネン工業社製)に、体積割合が3v/v%となるように添加した。この培土を使用し、イネ「コシヒカリ」を5℃で育成した以外は、前記実施例2と同様にしてイネを育成した。前記育成後、前記イネの根長を測定した。
【0092】
これらの結果を図9に示す。図9は、前記石炭灰の溶出成分と前記イネの根長との関係を示すグラフである。図9において、縦軸は、前記イネの根長(cm)を示し、横軸は、前記石炭灰の溶出成分量(ppm=1×10−4w/v%)を示す。図9において、丸(●)は、ケイ素(Si)、三角(▲)はホウ素(B)を、菱形(◆)はアルミニウム(Al)を示す。図9において、溶出成分量0ppmにおける結果は、石炭灰を添加していない前記培土の結果である。図9に示すように、前記イネの根長に対して、前記石炭灰の溶出成分のうち、アルミニウム、ケイ素およびホウ素の3成分の間に、重相関関係があることが分かった。このときの重相関式は、Y=(3.031×Si濃度)+(1.87×B濃度)+(2.33×Al濃度)+7.23であり、決定係数は、r2=0.34であり、決定係数の信頼度は、99%であった。
【0093】
(2)前記3成分による耐乾燥性の向上
上記(1)の結果に基づき、前記3成分による環境耐性促進効果を含水率により評価した。
【0094】
まず、前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸を、それぞれ、ケイ素元素、アルミニウム元素、ホウ素元素として、各1ppm(1×10−4w/v%)となるように混合し、培養液を調製した。前記培養液における前記各元素の組成を下記表4に示す。下記表4において、アルミニウム、ケイ素、ホウ素の濃度は、ppm(10−4w/v%)である。前記各元素の濃度1ppm(1×10−4w/v%)は、前述した石炭灰Dを、体積比が約6v/v%となるように前記肥料養液に添加した場合の元素濃度に対応する。また、ネガティブコントロールとして、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸を添加していない前記肥料養液を使用した。
【0095】
【表4】
【0096】
イネ「コシヒカリ」の苗を、前記実施例4(1)と同様の条件下で、前記各種培養液および前記肥料養液(0%)を使用して水耕栽培した。そして、各培養液を使用した処理区において、16個体について、前記実施例1と同様にして含水率を測定した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0097】
これらの結果を、図10に示す。図10は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図10において、縦軸は、含水率の相対値を示し、前記表4の各種培養液を使用した結果である。
【0098】
図10に示すように、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した培養液(Si+Al+B)を使用することによって、ネガティブコントロールよりも、優れた含水率を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果において、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の混合物が有効成分であることがわかった。
【0099】
(3)前記3成分による耐寒冷性の向上
前記(2)により前記培養液「Si+Al+B(各1ppm)」を用いて、前記実施例4(2)と同様条件下において、水耕栽培されたイネの健全株率を算出した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0100】
これらの結果を、図11に示す。図11は、健全株率(相対値)を示すグラフである。図11において、縦軸は、健全株率を示し、(Si+Al+B)は、前記表4の培養液「Si+Al+B(各1ppm)」を使用した結果である。
【0101】
図11に示すように、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した培養液「Si+Al+B(各1ppm)」を使用することによって、ネガティブコントロールよりも優れた健全株率を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果において、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の混合物が有効成分であることがわかった。
【0102】
(4)セレンによる耐寒冷性の向上
前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウムおよびホウ酸を、それぞれケイ素元素、アルミニウム元素およびホウ素元素として、各0.5ppm(0.5×10−4w/v%)となるように混合し、培養液「Si+Al+B」を調製した。また、前記培養液「Si+Al+B」に、さらに、セレンナトリウムを、セレン元素0.03ppm(0.03×10−4w/v%)となるよう混合して、培養液「Si+Al+B+Se」を調製した。これらの培養液を使用した以外は、前記(2)と同様にして、25℃で10日間の水耕栽培を行い、続いて、前記(3)と同様にして、5℃で2週間放置した。放置後のイネについて、全株のうち、低温によって白化しなかった株の百分率を、健全株率として算出した。そして、セレン無添加の培養液「Si+Al+B」を使用した結果と、セレン添加の培養液「Si+Al+B+Se」を使用した結果とを比較した。
【0103】
その結果、「Si+Al+B」と「Si+Al+B+Se」との健全株率の比は、1:4となった。この結果から、セレンを併用することによって、セレン未添加の培養液よりも、さらに耐寒冷性を促進できることがわかった。
【0104】
[実施例7]
本例では、環境耐性促進剤による耐暑性の促進を、全長および被害率により評価した。
【0105】
前記実施例3と同様にして、石炭灰添加の肥料養液(3%)および石炭灰未添加の肥料養液(0%)を調製し、同一条件で、前記イネの苗を育成した。そして、前記育成後のイネについて、前記実施例3と同様にして、被害率(%)を求めた。また、前記育成の指標として、前記イネの全長(cm)を測定した。前記実施例区の反復数は、11個体とした。
【0106】
これらの結果を図12に示す。図12(A)は、被害率(%)を示すグラフであり、図12(B)は、全長(cm)を示すグラフである。図12(A)において、縦軸は、被害率を示し、図12(B)において、縦軸は、全長を示す。図12において、0%は、肥料養液(0%)を用いた対照区、3%は、肥料養液(3%)を用いた実施例区3%の結果をそれぞれ示す。Tukey検定により、aとbとの間で、図12(A)は、有意水準5%、図12(B)は、有意水準1%を示した。
【0107】
図12に示すように、前記実施例区のイネは、前記対照区のイネと比較して、被害率が有意に低下するとともに、全長が有意に増加していた。これらの結果から、前記石炭灰は、高温が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐暑性を促進できることがわかった。
【0108】
[実施例8]
本例では、ケイ素、ホウ素およびアルミニウムの併用による耐暑性の促進を、葉幅により評価した。
【0109】
前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸および/または、セレン酸ナトリウムを添加して、ケイ素元素、アルミニウム元素、ホウ素元素および/または、セレン元素を含む培養液を調製した。前記培養液における前記各元素の組成を下記表5に示す。そして、前記各培養液を用いて、前記実施例6と同様にして、前記イネの苗を育成した。前記各培養液を使用した、それぞれの処理区において、育成後のイネ11個体について、前記実施例6と同様にして、前記育成の指標として、葉幅(cm)を測定した。
【0110】
【表5】
【0111】
これらの結果を図13に示す。図13は、イネの葉幅を示すグラフであり、縦軸は、前記イネの葉幅(cm)を示し、各バーは、前記表5の各培養液を使用した結果である。
【0112】
図13に示すように、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した培養液「Si+Al+B」を使用することによって、各成分単独添加よりも大きな葉幅を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果において、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の混合物が有効成分であることがわかった。そして、さらに、セレンを添加した培養液「Si+Al+B+Se」を使用することによって、葉幅がより大きくなった。この結果から、耐暑性能の促進は、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素だけでなく、さらに、セレンを併用することで、より向上することがわかった。
【0113】
[実施例9]
本例では、環境耐性促進剤による各種植物の耐乾燥性の促進を、含水率により評価した。
【0114】
前記実施例4(1)と同様に、前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(石炭灰0%)に、体積比が3v/v%となるように、前記石炭灰(D)の溶出液を添加し、培養液(石炭灰3%)を調製した。また、ネガティブコントロールとして、前記溶出液を添加していない前記肥料養液(石炭灰0%)を使用した。
【0115】
そして、下記表6に示す5品目の苗を使用した以外は、前記実施例6(2)と同様にして、水耕栽培を行った。そして、前記各培養液および前記肥料養液を使用したそれぞれの処理区において、前記実施例1と同様にして含水率を測定した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0116】
【表6】
【0117】
これらの結果を、図14に示す。図14は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図14において、縦軸は、含水率の相対値を示す。
【0118】
図14に示すように、培養液(石炭灰3%)を添加した培養液を使用することによって、ネガティブコントロールよりも優れた含水率を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果は、植物種にかかわらず,培養液(石炭灰3%)の添加により、向上することがわかった。
【0119】
[実施例10]
本例では、ケイ素、ホウ素およびアルミニウムの併用による各種植物の耐乾燥性の促進を、含水率により評価した。
【0120】
前記表6に示すジャガイモ、トマト、ホウレンソウおよびブロッコリーの苗を使用した以外は、前記実施例6(2)と同様にして、水耕栽培を行い、含水率を測定し、ネガティブコントロールを「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0121】
これらの結果を図15に示す。図15は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図15(A)は、ジャガイモの、図15(B)は、トマトの、図15(C)は、ホウレンソウの、図15(D)は、ブロッコリーの結果である。図15において、縦軸は、含水率の相対値を示す。
【0122】
図15(A)から(D)に示すように、いずれの植物も、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した「Si+Al+B」を使用することによって、対照区よりも高い含水率を実現し、かつ各成分単独使用よりも、環境耐性能の促進効果をもたらすことがわかった。環境耐性能の促進効果は、植物種にかかわらず、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の併用により、向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、乾燥、寒冷、高温等の厳しい環境条件下においても、これらの環境条件に対する植物の耐性能を促進できる。このため、本発明の環境耐性促進剤を植物の育成に利用することで、厳しい環境条件下でも、植物の生育を促進できる。このため、例えば、環境の影響を受けやすい地域における食用等の植物の栽培等に、極めて有効である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の環境耐性促進剤およびそれを用いた促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動による冷害、干ばつ、猛暑等が深刻化しており、これが食糧生産に与える影響が世界的に問題視されている。これに並行して世界人口が増加傾向にあるため、前述の問題は、飢餓に直結することが懸念されている。この問題を解決する手段として、その一つに、植物に環境ストレス耐性を付与し、過酷な条件下でも生育可能とする方法が試みられている。
【0003】
前記環境ストレス耐性の付与は、一般に、育種による方法が用いられている。従来では、前記環境ストレスに強い野生種と栽培種を交雑し、環境耐性作物が作製されていた。しかしながら、この方法では、目的の形質の導入に長期間を要するという問題があった。そこで、近年では、遺伝子組換えを利用した育種方法が多く報告されている(特許文献1)。この方法によると、育種に要する期間は、短縮可能である。しかしながら、食用としての安全性を考慮した場合、現状、育種に長期間を要するという問題がある。さらに、遺伝子組換え植物については、その拡散による遺伝子汚染と生態系への影響が、消費者にとっての懸念事項となっている。このため、育種によらない方法が、求められている。このような方法としては、例えば、化学物質により、植物が本来有する抵抗性を増強させる方法がある。前記化学物質は、例えば、微生物の代謝物(特許文献2)、揮発性物質、および糖(特許文献3)等の有機化合物が多く報告されている。しかし、これらの化学物質は、例えば、生産の困難性、高コスト、処理方法の煩雑さ等が課題となっている。
【0004】
一方、石炭火力発電所では、粉砕した石炭を燃焼させ、その熱で水蒸気を発生させ、前記水蒸気により発電機に連結したタービンを回転させることで、発電を行っている。この際、膨大な量の石炭灰が廃棄物として発生する。前記石炭灰は、一般に、ボイラーの下部に落下して集積した、比較的粒度の大きなクリンカアッシュと、ボイラーの燃焼ガスから煙道の電気集塵器に吸着する、比較的粒度の小さいフライアッシュに大別される。前記石炭灰は、主に、セメントおよびコンクリートの混和剤として、建築に使用されている。
【0005】
また、前記石炭灰は、農業分野において、土壌改良材として使用されている。前記石炭灰はアルカリ性であるため、この性質を利用して、土壌のpH矯正、土壌の排水性等の物理性の改善が目的とされている(非特許文献1)。具体的に、例えば、前記フライアッシュにより、酸性土壌を改良する方法(特許文献4)、廃培土への前記クリンカアッシュの混合により、土壌の物理性を改善して前記廃培土を再利用する方法(特許文献5)、前記クリンカアッシュを養液栽培培地に混合して、培地の排水性および保水性を改善する方法(非特許文献2)等が報告されている。
【0006】
前記石炭灰は、肥料取締法により、「微粉炭燃焼灰(火力発電所において微粉炭を燃焼する際に生ずるよう融された灰で煙道の気流中及び燃焼室の底の部分から採取されるものをいう。ただし、燃焼室の底の部分から採取されるものにあっては、3mmの網ふるいを全通するものに限る。(農林省告示第177号))」として、特殊肥料に定められている。前記石炭灰において、肥料成分として期待されるのはケイ素とホウ素であり、これらはいずれも、細胞壁を強固にする作用を有することが報告されている(非特許文献3)。
【0007】
特に、ケイ素については、最近の研究により、植物の細胞壁を強固にする他、病虫害の軽減効果、窒素利用効率の向上効果、ミネラルストレス軽減効果、水分ストレス軽減効果が公知となっている(非特許文献4)。具体的に、水分ストレスの軽減については、例えば、イネの育成において、土壌中の可溶性ケイ酸濃度を100ppmに増加させる方法(非特許文献5)、ソルガムの育成において、前記濃度を25ppmに増加させる方法(非特許文献6)が報告されている。このように、土壌中のケイ酸濃度が数十ppm以上での報告しかなされていない。しかしながら、前記石炭灰は、通常、50〜75v/v%のケイ酸を含んでいるが、そのほとんどが不溶性ケイ酸であり、可溶性ケイ酸は、数十ppmに過ぎない。このため、無加工の前記石炭灰を用いて、前述のようなケイ酸による効果を発揮させるには、土壌の大部分を前記石炭灰に置き換える必要がある。しかしながら、このような利用方法は、操作面、前記石炭灰中の他の成分による過剰障害の発生等の点からも、現実的ではない。このため、現在では、マグネシウム成分およびリン酸成分等を添加することで、ケイ酸を可溶化する技術が開発されており、「ケイ酸加里肥料」として実用化されている。しかしながら、このような肥料は、加工を伴うために高価である(非特許文献1、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/058975号国際公開パンフレット
【特許文献2】特開2007−45709号公報
【特許文献3】特開2009−73826号公報
【特許文献4】特開2008−279349号公報
【特許文献5】特開2006−271222号公報
【特許文献6】特開2006−111486号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】環境技術協会・日本フライアッシュ協会編(2000)、石炭灰ハンドブック第4版、環境技術協会・日本フライアッシュ協会、I-18−I-27,-II-174-II-190.
【非特許文献2】垣渕ら(2005)、クリンカアッシュの土壌改良材および養液栽培培地への適用試験(第2報)、四国電力・四国総合研究所研究期報、85,1-6.
【非特許文献3】渡辺和彦(1988)、野菜の要素欠乏と過剰症、タキイ種苗、87-119.
【非特許文献4】高橋英一(2003)、ケイ酸の吸収と生理作用、農業技術大系土壌施肥編2、農文協、作物栄養III 77-83.
【非特許文献5】間藤ら(1991)、イネへのケイ酸施用が有用である理由、土肥学雑、62(3)、248-251.
【非特許文献6】服部ら(2003)、ソルガムの水ストレス耐性に対するケイ酸の施用効果、日本作物学会記事、72(別1)、248-249.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、例えば、乾燥、寒冷、高温等の環境条件に対する植物の耐性能を促進する新たな環境耐性促進剤および植物の環境耐性促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の環境耐性促進剤は、植物の環境耐性促進剤であって、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の促進方法は、植物の環境耐性能を促進する方法であって、前記本発明の環境耐性促進剤を植物に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、乾燥、寒冷、高温等の厳しい環境条件下においても、これらの環境条件に対する植物の耐性能を促進できる。このため、本発明の環境耐性促進剤を植物の育成に利用することで、厳しい環境条件下でも、植物の生育を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの収量を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの蒸散量を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの含水率を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの新葉の発生率を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの被害率を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの最大葉長を示すグラフである。
【図7】図7(A)は、実施例4における、石炭灰存在下で育成したイネの含水率を示すグラフであり、図7(B)は、石炭灰存在下で育成したイネの健全株率を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例5における、石炭灰存在下および石炭灰非存在下で育成したイネの重量を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例6における、石炭灰中の成分と、前記石炭灰存在下で育成したイネの根長との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例6における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成したイネの含水率を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例6における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成したイネの健全株率を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例7における、石炭灰存在下および石灰灰非存在下で育成したイネの結果であり、(A)は、被害率を示すグラフであり、(B)は、全長を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例8における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成したイネの葉幅を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例9における、石炭灰存在下で育成した各種植物の含水率を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例10における、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の存在下で育成した各種植物の含水率を示すグラフであり、(A)がジャガイモ、(B)がトマト、(C)がホウレンソウ、(D)がブロッコリーの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、さらに、セレンを含むことが好ましい。
【0016】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素とケイ素との重量比が、1:0.1〜1:10であり、ホウ素とアルミニウムとの重量比が、1:0.1〜1:10であることが好ましい。
【0017】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素とセレンとの重量比が、1:0.001〜1:0.1であることが好ましい。
【0018】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含む原料として、フライアッシュを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、前記環境耐性が、乾燥耐性、水分蒸散耐性および温度耐性からなる群から選択された少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、前記植物が、陸上植物であることが好ましく、前記陸上植物が、例えば、種子植物、コケ植物およびシダ植物からなる群から選択された少なくとも一つであることが好ましい。
【0021】
本発明の促進方法は、例えば、前記環境耐性促進剤を、前記植物を生育させる培地に含有させることが好ましい。
【0022】
本発明の促進方法は、例えば、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有量が、それぞれ、0.1×10−4〜10×10−4w/v%であることが好ましい。
【0023】
本発明の促進方法は、例えば、前記環境耐性促進剤が、さらにセレンを含み、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のセレンの含有量が、0.001×10−4〜1×10−4w/v%であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明について、例をあげて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の説明によって限定及び制限されない。
【0025】
<環境耐性促進剤>
本発明の環境耐性促進剤は、前述のように、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とする。本発明の環境耐性促進剤は、これら3つの成分を必須の成分として含むことが特徴であって、その他の構成は何ら制限されない。
【0026】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムからなる促進剤でもよいし、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムの他に、任意成分として、さらにセレンを含むことが好ましい。
【0027】
本発明の環境耐性促進剤において、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有割合は、特に制限されない。ホウ素(B)とケイ素(Si)の割合は、重量比(B:Si)で表わした場合、その下限が、例えば、1:0.1であり、好ましくは1:0.5であり、その上限が、例えば、1:10であり、好ましくは1:5であり、より好ましくは1:2であり、その範囲が、例えば、1:0.1〜1:10であり、好ましくは1:0.1〜1:5であり、より好ましくは1:0.5〜1:5であり、さらに好ましくは1:0.5〜1:2である。ホウ素(B)とアルミニウム(Al)の割合は、重量比(B:Al)で表わした場合、その下限が、例えば、1:0.1であり、好ましくは1:0.5であり、その上限が、例えば、1:10であり、好ましくは1:5であり、より好ましくは1:2であり、その範囲が、例えば、1:0.1〜1:10であり、好ましくは1:0.1〜1:5であり、より好ましくは1:0.5〜1:5であり、さらに好ましくは1:0.5〜1:2である。
【0028】
本発明の環境耐性促進剤が、さらにセレンを含む場合、セレンの含有割合は、特に制限されない。ホウ素(B)とセレン(Se)の割合は、重量比(B:Se)で表わした場合、その下限が、例えば、1:0.001であり、好ましくは1:0.005であり、より好ましくは1:0.01であり、さらに好ましくは1:0.03であり、その上限が、例えば、1:1であり、好ましくは1:0.1であり、より好ましくは0.05であり、その範囲が、例えば、1:0.001〜1:1または1:0.001〜1:0.1であり、好ましくは1:0.005〜1:0.1であり、より好ましくは1:0.01〜1:0.05であり、さらに好ましくは1:0.03〜1:0.05である。
【0029】
本発明の環境耐性促進剤において、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよび任意のセレンは、それぞれ、そのものでもよいし、これらを含む化合物でもよい。本発明の環境耐性促進剤が前記化合物を含む場合、例えば、前記化合物の状態で存在してもよいし、水等の水性液の共存によって、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよび任意のセレンが、イオン化した状態で存在してもよい。前記ホウ素含有化合物は、例えば、ホウ素、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸鉄、ホウ酸銅、ホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、有機ホウ素化合物等があげられる。前記ケイ素含有化合物は、例えば、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムマグネシウム、ケイ酸鉄、ケイ酸銅、ケイ酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、有機ケイ素化合物等があげられる。前記アルミニウム含有化合物は、例えば、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、セレン酸アルミニウム、亜セレン酸アルミニウム等があげられる。前記セレン含有化合物は、例えば、金属セレン、セレン酸、セレン酸ナトリウム、セレン酸カリウム、セレン酸カルシウム、セレン酸マグネシウム、セレン酸鉄、セレン酸銅、セレン酸バリウム、セレン酸アルミニウム、亜セレン酸、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸カルシウム、亜セレン酸水素ナトリウム、亜セレン酸鉄、亜セレン酸銅、亜セレン酸バリウム、亜セレン酸アルミニウム、有機セレン化合物等があげられる。
【0030】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、さらに、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブテン、塩素、ナトリウム、糖類、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン類、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸、ビオチン等があげられる。
【0031】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ホウ素またはホウ素含有化合物、ケイ素またはケイ素含有化合物、およびアルミニウムまたはアルミニウム含有化合物、さらに、任意でセレンまたはセレン含有化合物を、混合して調製してもよいし、これらの成分を含む原料を使用してもよい。
【0032】
前者の場合、前記成分に、さらに、前述したさらにその他の成分を混合してもよい。前記混合物は、例えば、各成分を混合したドライ系の混合物(乾燥混合物)でもよいし、各成分を分散媒中で混合したウエット系の混合物(液体混合物)でもよい。前記分散媒は、特に制限されず、例えば、水系媒が使用でき、具体例としては、水、生理食塩水、緩衝液、生理緩衝液、肥料養液等があげられる。前記緩衝液は、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等があげられ、前記肥料養液は、例えば、園芸試験場処方、山崎処方、大塚化学処方等の肥料養液があげられる。
【0033】
後者の場合、前記原料として、例えば、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよびセレンを含むことから、石炭灰が使用できる。石炭火力発電所では、通常、粉砕した石炭を燃焼させ、その熱で水蒸気を発生させ、前記水蒸気により発電機に連結したタービンを回転させることで、電気を発生させている。この際に生じる前記石炭の廃棄物が、前記石炭灰である。前記石炭灰は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とし、クリンカアッシュとフライアッシュがあげられる。一般に、前記フライアッシュは、例えば、平均粒径100μm以下の粒子からなり、前記クリンカアッシュは、それより大きな平均粒径の粒子からなる。前記石炭灰は、例えば、JISにより規格が設定されている。前記フライアッシュは、例えば、微粉炭燃焼ボイラの燃焼ガスから集塵機で採取されたものであり、主成分は二酸化ケイ素であり、粒径は、例えば、0.001〜0.1mmである。前記フライアッシュは、JIS A6201改正(1999年)により、I種、II種、III種、IV種に分類されており、これらの種別は、前記集塵機で採取された原灰を篩い分けすることで選別される。前記フライアッシュは、前記原灰、I種、II種、III種、IV種のいずれを使用することもできるが、IV種が好ましい(石炭灰ハンドブック、第4版、平成17年5月、環境技術協会・日本フライアッシュ協会発行)。前記クリンカアッシュは、例えば、微粉炭燃焼ボイラの炉底に落下採取されたものであり、粒径は、例えば、0.001〜10mmであり、3mmの篩いを全通できるものが望ましい。本発明の環境耐性促進剤において、前記原料は、例えば、前記フライアッシュが好ましい。
【0034】
前記石炭灰は、例えば、ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよびセレンの他に、さらに、リン、窒素、カリウム、マグネシウム、銅、硫黄、硫酸イオン、鉄、亜鉛、銀、カドミウム、鉛、ヒ素、クロム、フッ素、ナトリウム、カルシウム、および/またはこれらの原子またはイオンを含む化合物等を含む。本発明の環境耐性促進剤は、前記原料として前記石炭灰を含む場合、例えば、これらの成分をさらに含んでもよい。
【0035】
前記石炭灰は、例えば、さらに、前述したその他の成分を混合してもよい。前記原料は、例えば、前記石炭灰をそのままドライ系の混合物(乾燥混合物)として使用してもよいし、前記石炭灰を前記分散媒に混合して、ウエット系の混合物(液体混合物)として使用してもよい。また、前記原料は、例えば、前記石炭灰を前記分散媒に分散し、前記石炭灰に含まれる成分を溶出させた溶出液でもよい。前記分散媒は、特に制限されず、前述と同様のものが使用できる。
【0036】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、ドライ系(乾燥物)でもよいし、ウエット系(液体物)でもよい。前者の場合、前述のような、乾燥混合物があげられ、後者の場合、前述のような、液体混合物があげられる。前記液体混合物は、例えば、植物の育成に使用する際、前記各種成分の飛散を防止でき、取扱上好ましい。
【0037】
本発明の乾燥耐性促進剤は、前記必須成分を含んでいればよく、その形状は、特に制限されない。本発明の環境耐性促進剤の形状は、例えば、粒状体、焼成体、発泡体、シート等があげられる。これらの形状は、例えば、植物の育成に使用する際、前記各種成分の飛散を防止できることが、取扱上好ましい。前記粒状体および前記発泡体は、例えば、それぞれ、前記混合物を、公知の方法で加工することによって製造できる。前記焼成体は、例えば、前記混合物を、公知の焼成方法で加工することによって製造できる。前記本発明の環境耐性促進剤の形状は、例えば、前記必須成分を含む栽培シートおよび栽培ポット等でもよい。前記栽培シートは、例えば、シート状基材に、前記各種成分を保持させることで形成できる。前記栽培シートは、例えば、前記各種成分を含む前記分散剤に、前記シート状基材に含浸させて製造でき、また、前記シート状基材用の原料に前記各種成分を含有させて、シートを成型することで製造することもできる。前記栽培ポットは、例えば、樹脂に前記各種成分を含有させて、ポットを成型することで製造できる。前記樹脂の種類は、特に制限されず、従来公知の樹脂が使用でき、好ましくは、植物の栽培時において、前記ポット内の前記各種成分を放出するものが好ましい。
【0038】
本発明の環境耐性促進剤は、例えば、前記環境耐性が、乾燥耐性、水分蒸散耐性、温度耐性であることが好ましい。前記温度耐性は、例えば、耐寒冷性、耐高温性等があげられる。本発明の環境耐性促進剤は、例えば、乾燥耐性促進剤、水分蒸散耐性促進剤または温度耐性促進剤ということもできる。本発明の乾燥耐性促進剤、水分蒸散耐性促進剤または温度耐性促進剤は、ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とし、詳細は、前述の環境耐性促進剤の説明を引用できる。
【0039】
<環境耐性促進方法>
本発明の促進方法は、前述のように、植物の環境耐性能を促進する方法であって、前記本発明の環境耐性促進剤を植物に供給することを特徴とする。本発明の促進方法は、前記本発明の環境耐性促進剤を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0040】
本発明の促進方法において、育成対象の植物は、特に制限されない。前記植物は、例えば、陸上植物であり、種子植物、コケ植物およびシダ植物等があげられる。前記種子植物の具体例を以下に示す。
イネ科:イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、ソルガム、シバ、イタリアンライグラス
アブラナ科:キャベツ、ハクサイ、ナタネ、ダイコン、カブ、ブロッコリー、カリフラワー
キク科:レタス、シュンギク
ナス科:トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ
ウリ科:キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ
ユリ科:ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、アスパラガス
マメ科:ダイズ、エンドウ、インゲンマメ、ソラマメ、ニセアカシア
シソ科:シソ、ミント
アカザ科:ホウレンソウ、テンサイ
ミカン科:ウンシュウミカン、オレンジ、レモン
バラ科:リンゴ、ナシ、モモ、オウトウ、イチゴ、サクラ
ブドウ科:ブドウ
マタタビ科:キウイフルーツ
ヒルガオ科:サツマイモ
サトイモ科:サトイモ
ヤマノイモ科:ヤマイモ
セリ科:ニンジン、セルリー、パセリ、ミツバ
ショウガ科:ショウガ、ミョウガ
スギ科:スギ
ヒノキ科:ヒノキ
クスノキ科:クスノキ
ブナ科:アラカシ、ウバメガシ、シラカシ、クヌギ、クリ
カエデ科:オオカエデ、イロハモミジ
ニレ科:アキニレ、ケヤキ、エノキ
フトモモ科:ユーカリ
マツ科:アカマツ、クロマツ、カラマツ、モミ
カバノキ科:ヤシャブシ、シラカバ、ハンノキ
イチョウ科:イチョウ
ヤナギ科:ポプラ、ヤナギ
ベンケイソウ科:セダム
前記コケ植物の具体例を以下に示す。
キボウシゴケ科:スナゴケ
スギゴケ科:スギゴケ
ハイゴケ科:ハイゴケ
前記シダ植物の具体例を以下に示す。
コバノイシカグマ科:ワラビ
ゼンマイ科:ゼンマイ
イワデンダ科:クサソテツ
チャセンシダ科:オオタニワタリ
マツバラン科:マツバラン
【0041】
本発明の促進方法において、前記植物に対する、前記環境耐性促進剤の供給方法は、何ら制限されない。本発明の促進方法において、前記環境耐性促進剤は、例えば、前記植物を生育させる環境条件下に存在させればよく、培地に含有させることが好ましい。
【0042】
前記培地の種類は、何ら制限されず、例えば、前記植物の種類に応じて、従来のものが使用できる。前記培地は、例えば、土を含む培地、液体培地があげられる。前記培地は、例えば、微生物等により発酵させたものでもよいし、未発酵のものでもよい。前記土を含む培地は、例えば、培土でもよいし、微生物により発酵させた培養土でもよい。前記液体培地は、例えば、未発酵の液体培地、微生物により発酵させた養液、無機物の肥料養液等があげられる。
【0043】
前記培地は、例えば、前記環境耐性促進剤の他に、さらにその他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブテン、塩素、ナトリウム、糖類、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン類、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸、ビオチン等があげられる。
【0044】
前記植物に対する前記環境耐性促進剤の供給のタイミングは、特に制限されず、生育開始時から供給してもよいし、生育途中において供給してもよい。また、前記環境耐性促進剤の供給回数は、特に制限されず、1回でもよいし、2回以上の複数回でもよい。後者の場合、前記環境耐性促進剤は、例えば、連続的に供給してもよいし、断続的に供給してもよい。前記環境耐性促進剤は、例えば、前記培地に、予め添加してもよいし、生育途中に添加してもよい。
【0045】
植物の育成は、例えば、まず、苗床で苗を育苗した後、前記苗を土壌等に定植することによって行われる。本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、前記育苗時に前記環境耐性促進剤を添加することによって、前記定植後、前記環境耐性促進剤の非存在下であっても、環境耐性能の促進が実現できる。このため、前記本発明の環境耐性促進剤は、例えば、育苗時に使用することが好ましい。
【0046】
前記環境耐性促進剤は、例えば、そのまま前記培地に添加してもよいし、その溶出液を添加してもよい。後者の場合、ドライ系の前記環境耐性促進剤を前記分散媒に分散し、前述の必須成分を溶出させ、この溶出液を、前記培地に含有させてもよい。
【0047】
本発明の促進方法において、前記培地における前記環境耐性促進剤の含有割合は、特に制限されない。前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有量は、それぞれ、下限が、例えば、0.1×10−4w/v%であり、好ましくは0.5×10−4w/v%であり、より好ましくは1×10−4w/v%であり、上限が、例えば、10×10−4w/v%であり、好ましくは5×10−4w/v%であり、より好ましくは3×10−4w/v%であり、範囲が、例えば、0.1×10−4〜10×10−4w/v%であり、好ましくは0.5×10−4〜5×10−4w/v%であり、より好ましくは1×10−4〜3×10−4w/v%である。なお、10−4w/v%は、例えば、ppmで表わすこともできる。また、前記環境耐性促進剤がセレンを含む場合、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のセレンの含有量は、下限が、例えば、0.001×10−4w/v%であり、好ましくは0.005×10−4w/v%であり、より好ましくは0.01×10−4w/v%であり、上限が、例えば、1×10−4w/v%であり、好ましくは0.1×10−4w/v%であり、より好ましくは0.05×10−4w/v%であり、範囲が、例えば、0.001×10−4〜1×10−4w/v%であり、好ましくは0.005×10−4〜0.1×10−4w/v%であり、より好ましくは0.01×10−4〜0.05×10−4w/v%である。前記ホウ素、ケイ素、アルミニウムおよびセレンの割合は、特に制限されず、例えば、本発明の環境耐性促進剤において述べた割合があげられる。
【0048】
本発明の促進方法において、前記環境耐性促進剤が前記石炭灰を原料として含む場合、前記培地における前記石炭灰の含有割合は、特に制限されない。前記培地において、前記石炭灰の含有量は、下限が、例えば、0.1v/v%であり、好ましくは1v/v%であり、より好ましくは3v/v%であり、上限が、例えば、100v/v%であり、好ましくは10v/v%であり、範囲が、例えば、0.1〜100v/v%であり、好ましくは1〜10v/v%であり、より好ましくは3〜10v/v%である。前記環境耐性促進剤を育苗で使用する場合、例えば、前記培地における前記石炭灰の含有割合は、下限が、例えば、3v/v%であり、好ましくは6v/v%であり、上限が、例えば、100v/v%であり、好ましくは10v/v%であり、より好ましくは8v/v%であり、範囲が、例えば、3〜100v/v%であり、好ましくは6〜10v/v%であり、より好ましくは6〜8v/v%である。前記環境耐性促進剤を栽培で使用する場合、例えば、前記培地における前記石炭灰の含有割合は、下限が、例えば、1v/v%であり、好ましくは3v/v%であり、上限が、例えば、10v/v%であり、好ましくは5v/v%であり、より好ましくは4v/v%であり、範囲が、例えば、1〜10v/v%であり、好ましくは3〜5v/v%であり、より好ましくは3〜4v/v%である。
【0049】
本発明の促進方法は、前述のように、前記本発明の環境耐性促進剤を植物に供給すればよく、この点以外は、例えば、前記植物の種類に応じた条件で、前記植物を育成すればよい。
【0050】
<植物の製造方法>
本発明の製造方法は、植物の製造方法であって、前記本発明の促進方法により前記植物の環境耐性を促進する工程を含むことを特徴とする。また、本発明の製造方法は、例えば、前記本発明の環境耐性促進剤の存在下、植物を育成する工程を含むことを特徴とする。
【0051】
本発明の製造方法は、前記本発明の環境耐性促進剤を用いて、植物の環境耐性を促進することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の製造方法において、植物は、例えば、前記本発明の環境耐性促進剤の存在下で育成すればよく、前記育成方法は、従来と同様に行うことができる。本発明の製造方法は、例えば、前記本発明の環境耐性促進剤および促進方法における記載を引用できる。
【実施例】
【0052】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されない。
【0053】
[実施例1]
本例では、環境耐性促進剤による耐乾燥性の促進を、イネの収量により評価した。
【0054】
(1)収量による評価
前記環境耐性促進剤として、石炭灰(フライアッシュ:JIS IV種灰)を使用した。前記石炭灰は、四国電力株式会社 橘湾発電所(石炭火力発電所)から入手した。前記石炭灰について、溶出成分組成を下記表1に示す。前記溶出成分組成は、前記石炭灰を5倍体積量の純水を添加し、前記混合液を室温で24時間振とうして溶出処理を行い、その液体画分について分析した結果である。下記表1は、前記石炭灰1kgあたりの重量(mg)を示す(以下、同様)。
【0055】
【表1】
【0056】
前記石炭灰を、培土(商品名くみあい粒状培土SD、カサネン工業社製、窒素0.9g/5L、リン酸3.1g/5L、カリウム0.9g/5L)に添加した。前記石炭灰の添加割合は、体積割合1v/v%および3v/v%とした。そして、1/5000aワグネルポットに、これらの培土を入れ、実施例区1%および実施例区3%とした。また、前記石炭灰を添加していない培土を入れ、対照区とした。前記実施例区および前記対照区について、土壌の乾燥状態を、以下の3つの処理区に分割した。
湿潤区(湛水:水ポテンシャル 0kPa以上)
弱乾燥区(水ポテンシャル −5〜−20kPa)
強乾燥区(水ポテンシャル −20kPa以下)
【0057】
そして、雨水等の混入を防ぐために、ビニールハウス内で、イネ「コシヒカリ」の栽培を行った。具体的には、平成20年6月11日、前記各処理区に、コシヒカリの苗を1ポットあたり5株定植した。1つの処理区あたりの反復数は、10株とした。そして、同年9月30日に、全株を刈り取って、収量を確認した。
【0058】
これらの結果を図1に示す。図1は、各処理区における1株あたりの収量(g)を示すグラフである。図1において、縦軸は、1株あたりの収量(g)を示し、各処理区において、左のバーが、前記石炭灰混合率0%の対照区、真ん中のバーが、前記石炭灰混合率1%の実施例区1%、右のバーが、前記石炭灰混合率3%の実施例区3%の結果である。
【0059】
図1に示すように、湿潤区の場合、前記実施例区および前記対照区のいずれにおいても同等の収量が得られた。しかしながら、前記弱乾燥区および前記強乾燥区については、前記対照区と比較して、前記実施例区が有意に高い収量を示した。特に、より厳しい乾燥条件である強乾燥区においては、前記対照区と比較して、前記実施例区が著しい収量の増加を示し、前記培土における前記石炭灰の含有量の増加により、高い収量を達成できた。これらの結果から、前記石炭灰は、乾燥が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐乾燥性を促進できることがわかった。
【0060】
(2)蒸散量および含水率による評価
蒸散量測定装置(商品名スーパーポロメーターLI−1600、Li−cor社製)を用いて、前記弱乾燥区から収穫したイネについて、葉の蒸散量を測定した。また、採取した葉身を70℃で24時間風乾して、乾燥前後の重量を測定し、含水率を算出した。これらの結果を、図2および図3に示す。図2は、蒸散量を示すグラフであり、縦軸は、蒸散量を示す。図3は、葉身中の含水率を示すグラフであり、縦軸は、含水率を示す。図2および図3において、0%のバーは、前記対照区、1%のバーは、前記実施例区1%、3%のバーは、前記実施例区3%の結果を、それぞれ示す。図3において、aとbとの間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。
【0061】
図2および図3に示すように、その結果、前記実施例区のイネは、前記対照区のイネと比較して、前記葉からの蒸散量が低下し、前記葉身の含水率が有意に上昇していることがわかった。この結果から、前記石炭灰を混合した培土を使用した場合、蒸散量の抑制により水分が保持された結果、耐乾燥性が向上されたと考えられる。なお、このメカニズムの推定によって、本発明は制限されるものではない。
【0062】
[実施例2]
本例では、環境耐性促進剤による耐寒冷性の促進を、新葉の発生率により評価した。
【0063】
前記石炭灰の添加割合を、体積割合1v/v%および5v/v%とした以外は、前記実施例1と同様にして、培土を準備した。そして、黒色ポリポット(直径12cm)に、これらの培土を入れ、実施例区1%および実施例区5%とした。また、前記石炭灰を添加していない培土を前記ポットに入れ、対照区とした。
【0064】
20℃で展開葉2枚まで育苗したイネ「コシヒカリ」および「ヒノヒカリ」の苗を、前記各ポットに定植し、平均気温が10℃以下の栽培ハウスで2週間育成した。前記育成後、前記イネの新葉(第4葉)の発生率を確認した。前記発生率は、2週目の全苗数に対する第4葉の出現苗数の百分率として算出した。各実施例区および対照区の反復数は、10個体とした。
【0065】
これらの結果を図4に示す。図4は、前記各実施例区および対照区における前記イネの新葉(第4葉)の発生率を示すグラフである。図4において、縦軸は、前記イネの新葉(第4葉)の発生率(%)を示し、0%は、前記対照区、1%は、前記実施例区1%、5%は、前記実施例区5%の結果であり、前記各実施例区および対照区において、左のバーが、「コシヒカリ」、右のバーが、「ヒノヒカリ」の結果である。
【0066】
図4に示すように、「コシヒカリ」について、前記対照区では、第4葉発生率が74%であった。これに対し、前記実施例区1%および前記実施例区5%では、全ての個体において、第4葉の発生が確認された(第4葉発生率100%)。また、「ヒノヒカリ」について、前記対照区では、第4葉発生率が66%であった。これに対し、前記実施例区1%では第4葉発生率が82%、前記実施例区5%では第4葉発生率が100%であった。イネは高温性の作物であるため、10℃以下の低温では細胞分裂が抑制され、新葉の発生が遅延する。しかしながら、これらの結果に示すように、前記石炭灰を使用することによって、低温下でも新葉の発生が促進されたことから、寒冷が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐寒冷性を促進できることがわかった。
【0067】
[実施例3]
本例では、環境耐性促進剤による耐暑性の促進を、被害率および最大葉長により評価した。
【0068】
前記実施例1と同じ石炭灰に、5倍体積量の純水を添加し、この混合液を、室温で24時間振とうし、前記石炭灰の成分を前記純水に溶出させた。前記混合液をろ過し、液体画分を溶出液として回収した。
【0069】
他方、以下の方法により、肥料養液を調製した。まず、下記表2に示す原液A〜D液を調製し、前記各原液1mLを混合し、全量1Lとなるように純水で希釈し、HClによって、pH5.5〜6.5に調製した。これを、石炭灰未添加の肥料養液(0%)とした。また、前記各原液1mLに前記石炭灰溶出液を150mL混合し、同様の手順で希釈およびpH調整した。これを、石炭灰添加の肥料養液(3%)とした。すなわち、後者の肥料養液(3%)は、前記肥料養液全体の体積に対して、前記石炭灰の溶出液を、石炭灰そのものに換算して3%混合したことになる。
【0070】
【表2】
【0071】
プラスチックトレイに、細めのバーミキュライト(商品名バーミキュライトS、旭工業社製)を充填し、発芽処理したイネ「コシヒカリ」の種子を播種した。そして、前記プラスチックトレイに、前記溶出液を添加した肥料養液(3%)を添加し、実施例区とした。また、前記溶出液を添加していない肥料養液(0%)を添加し、対照区とした。
【0072】
前記播種から10日目、前記実施例区および前記対照区の苗を、25℃のグロースチャンバーに搬入した。そして、前記グロースチャンバー内の温度を上昇させながら、前記イネの苗を育成した。前記温度は、2日毎に2℃ずつ上昇させ、25℃から40℃まで上昇させた。イネは、極度の高温条件に曝されると、高温障害によって、葉の先端から白化もしくは褐変した被害部分が伸長する。そこで、前記育成後に、前記イネの葉の全長を100%として、被害部分の長さ(被害葉長)が占める割合を、被害率(%)として求めた。また、前記育成の指標として、前記イネの最大葉長を測定した。前記実施例区および前記対照区の反復数は、20個体とした。
【0073】
これらの結果を図5および図6に示す。図5は、被害率(%)を示すグラフである。図6は、最大葉長(mm)を示すグラフである。図5において、縦軸は、被害率を示し、図6において、縦軸は、最大葉長を示す。図5および図6において、0%は、前記対照区、3%は、前記実施例区3%の結果を、それぞれ示す。図5および図6において、aとbとの間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。
【0074】
図5および図6に示すように、前記実施例区のイネは、前記対照区のイネと比較して、被害率が有意に低下するとともに、最大葉長が有意に増加していることがわかった。これらの結果から、前記石炭灰は、高温が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐暑性を促進できることがわかった。
【0075】
[実施例4]
本例では、環境耐性促進剤による耐乾燥性および耐寒冷性の促進を、含水率および健全株率により評価した。
【0076】
(1)耐乾燥性の向上
前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、体積比が3v/v%となるように、後述する実施例5の石炭灰(D)の溶出液を添加し、培養液(3%)を調製した。前記溶出液は、以下のように、調製した。まず、前記石炭灰に、5倍体積量の純水を添加し、この混合液を、室温で24時間放置し、前記石炭灰の成分を前記純水に溶出させた。そして、前記混合液をろ過し、得られた液体画分を溶出液とした。また、ネガティブコントロールとして、前記溶出液を添加していない前記肥料養液(0%)を使用した。
【0077】
イネ「コシヒカリ」の苗を、25℃のグロースチャンバー内で、10日間、前記培養液(3%)および培養液(0%)を使用して水耕栽培した。そして、16個体について、前記実施例1と同様にして含水率を測定した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、前記培養液(3%)を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0078】
この結果を、図7(A)に示す。図7(A)は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図7(A)において、縦軸は、含水率の相対値を示した結果である。
【0079】
図7(A)に示すように、前記培養液(3%)を使用することによって、ネガティブコントロールよりも、優れた含水率を示した。この結果から、環境耐性能の促進に、石炭灰が有効であることがわかった。
【0080】
(2)耐寒冷性の向上
前記(1)により前記培養液(3%)を用いて水耕栽培されたイネを、5℃の低温庫に搬入し、さらに2週間放置した。放置後のイネについて、全株のうち、低温によって白化しなかった株の百分率を、健全株率として算出した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、前記培養液(3%)を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0081】
この結果を、図7(B)に示す。図7(B)は、健全株率(相対値)を示すグラフであり、図7(B)において、縦軸は、健全株率の相対値を示した結果である。
【0082】
図7(B)に示すように、前記培養液(3%)を使用することによって、ネガティブコントロールよりも優れた健全株率を示した。この結果から、環境耐性能の促進に、石炭灰が有効であることがわかった。
【0083】
[実施例5]
本例では、育苗時に環境耐性促進剤を使用し、定植後における耐寒冷性の促進を評価した。
【0084】
前記石炭灰の添加割合を、体積割合6v/v%および10v/v%とした以外は、前記実施例1と同様にして、培土を準備した。そして、イネ育苗用トレイに、これらの培土を充填し、実施例区6%および実施例区10%とした。また、前記石炭灰を添加していない培土を前記トレイに充填し、対照区とした。
【0085】
発芽処理したイネ「コシヒカリ」の種子を、前記トレイに播種し、25℃条件で1ヶ月育苗した。前記育苗後、15℃の低温温室において、培土を充填した1/5000aワグネルポットに、前記育苗後のイネを定植した。前記培地は、前記石炭灰を添加していない、培土(商品名くみあい粒状培土SD、カサネン工業社製)を使用した。前記定植後、15℃で8週間育成し、地上部および地下部の重量(新鮮重)を確認した。各実施例区および対照区の反復数は、10個体とした。前記新鮮重は、採取したそのままの重量を意味する。
【0086】
これらの結果を図8に示す。図8は、各実施例区および対照区における地上部の重量および地下部の重量を示すグラフである。図8において、縦軸は、地上部および地下部の新鮮重(g/株)を示し、0%は前記対照区、6%は前記実施例区6%、10%は前記実施例区10%の結果であり、各実施例区および対照区において、左のバーが、地上部、右のバーが、地下部の結果である。図8において、aとb、a’とb’の間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。
【0087】
図8に示すように、前記実施例区6%および前記実施例区10%で育苗したイネは、定植後、前記石炭灰非存在下であっても、低温下での著しい生長が確認された。特に、前記実施例区10%は、前記対照区と比較して、地上部重が約2倍、地下部重が約3倍の生長量となった。これらの結果から、育苗時に前記石炭灰を施用することによって、定植後のイネについても、耐寒冷性を促進できることがわかった。
【0088】
[実施例6]
本例では、環境耐性促進剤における有効成分を特定した。
【0089】
(1)石炭灰における有効成分の特定
前記環境耐性促進剤として、4種類の石炭灰A〜D(フライアッシュ:JIS IV種灰)を使用した。前記石炭灰は、四国電力株式会社 橘湾発電所(石炭火力発電所)および西条発電所(石炭火力発電所)から入手した。前記石炭灰A〜Dについて、溶出成分組成を下記表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
前記石炭灰を、前記実施例1の培土(商品名くみあい粒状培土SD、カサネン工業社製)に、体積割合が3v/v%となるように添加した。この培土を使用し、イネ「コシヒカリ」を5℃で育成した以外は、前記実施例2と同様にしてイネを育成した。前記育成後、前記イネの根長を測定した。
【0092】
これらの結果を図9に示す。図9は、前記石炭灰の溶出成分と前記イネの根長との関係を示すグラフである。図9において、縦軸は、前記イネの根長(cm)を示し、横軸は、前記石炭灰の溶出成分量(ppm=1×10−4w/v%)を示す。図9において、丸(●)は、ケイ素(Si)、三角(▲)はホウ素(B)を、菱形(◆)はアルミニウム(Al)を示す。図9において、溶出成分量0ppmにおける結果は、石炭灰を添加していない前記培土の結果である。図9に示すように、前記イネの根長に対して、前記石炭灰の溶出成分のうち、アルミニウム、ケイ素およびホウ素の3成分の間に、重相関関係があることが分かった。このときの重相関式は、Y=(3.031×Si濃度)+(1.87×B濃度)+(2.33×Al濃度)+7.23であり、決定係数は、r2=0.34であり、決定係数の信頼度は、99%であった。
【0093】
(2)前記3成分による耐乾燥性の向上
上記(1)の結果に基づき、前記3成分による環境耐性促進効果を含水率により評価した。
【0094】
まず、前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸を、それぞれ、ケイ素元素、アルミニウム元素、ホウ素元素として、各1ppm(1×10−4w/v%)となるように混合し、培養液を調製した。前記培養液における前記各元素の組成を下記表4に示す。下記表4において、アルミニウム、ケイ素、ホウ素の濃度は、ppm(10−4w/v%)である。前記各元素の濃度1ppm(1×10−4w/v%)は、前述した石炭灰Dを、体積比が約6v/v%となるように前記肥料養液に添加した場合の元素濃度に対応する。また、ネガティブコントロールとして、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸を添加していない前記肥料養液を使用した。
【0095】
【表4】
【0096】
イネ「コシヒカリ」の苗を、前記実施例4(1)と同様の条件下で、前記各種培養液および前記肥料養液(0%)を使用して水耕栽培した。そして、各培養液を使用した処理区において、16個体について、前記実施例1と同様にして含水率を測定した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0097】
これらの結果を、図10に示す。図10は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図10において、縦軸は、含水率の相対値を示し、前記表4の各種培養液を使用した結果である。
【0098】
図10に示すように、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した培養液(Si+Al+B)を使用することによって、ネガティブコントロールよりも、優れた含水率を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果において、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の混合物が有効成分であることがわかった。
【0099】
(3)前記3成分による耐寒冷性の向上
前記(2)により前記培養液「Si+Al+B(各1ppm)」を用いて、前記実施例4(2)と同様条件下において、水耕栽培されたイネの健全株率を算出した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0100】
これらの結果を、図11に示す。図11は、健全株率(相対値)を示すグラフである。図11において、縦軸は、健全株率を示し、(Si+Al+B)は、前記表4の培養液「Si+Al+B(各1ppm)」を使用した結果である。
【0101】
図11に示すように、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した培養液「Si+Al+B(各1ppm)」を使用することによって、ネガティブコントロールよりも優れた健全株率を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果において、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の混合物が有効成分であることがわかった。
【0102】
(4)セレンによる耐寒冷性の向上
前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウムおよびホウ酸を、それぞれケイ素元素、アルミニウム元素およびホウ素元素として、各0.5ppm(0.5×10−4w/v%)となるように混合し、培養液「Si+Al+B」を調製した。また、前記培養液「Si+Al+B」に、さらに、セレンナトリウムを、セレン元素0.03ppm(0.03×10−4w/v%)となるよう混合して、培養液「Si+Al+B+Se」を調製した。これらの培養液を使用した以外は、前記(2)と同様にして、25℃で10日間の水耕栽培を行い、続いて、前記(3)と同様にして、5℃で2週間放置した。放置後のイネについて、全株のうち、低温によって白化しなかった株の百分率を、健全株率として算出した。そして、セレン無添加の培養液「Si+Al+B」を使用した結果と、セレン添加の培養液「Si+Al+B+Se」を使用した結果とを比較した。
【0103】
その結果、「Si+Al+B」と「Si+Al+B+Se」との健全株率の比は、1:4となった。この結果から、セレンを併用することによって、セレン未添加の培養液よりも、さらに耐寒冷性を促進できることがわかった。
【0104】
[実施例7]
本例では、環境耐性促進剤による耐暑性の促進を、全長および被害率により評価した。
【0105】
前記実施例3と同様にして、石炭灰添加の肥料養液(3%)および石炭灰未添加の肥料養液(0%)を調製し、同一条件で、前記イネの苗を育成した。そして、前記育成後のイネについて、前記実施例3と同様にして、被害率(%)を求めた。また、前記育成の指標として、前記イネの全長(cm)を測定した。前記実施例区の反復数は、11個体とした。
【0106】
これらの結果を図12に示す。図12(A)は、被害率(%)を示すグラフであり、図12(B)は、全長(cm)を示すグラフである。図12(A)において、縦軸は、被害率を示し、図12(B)において、縦軸は、全長を示す。図12において、0%は、肥料養液(0%)を用いた対照区、3%は、肥料養液(3%)を用いた実施例区3%の結果をそれぞれ示す。Tukey検定により、aとbとの間で、図12(A)は、有意水準5%、図12(B)は、有意水準1%を示した。
【0107】
図12に示すように、前記実施例区のイネは、前記対照区のイネと比較して、被害率が有意に低下するとともに、全長が有意に増加していた。これらの結果から、前記石炭灰は、高温が生育に与える影響を抑制できる、つまり、耐暑性を促進できることがわかった。
【0108】
[実施例8]
本例では、ケイ素、ホウ素およびアルミニウムの併用による耐暑性の促進を、葉幅により評価した。
【0109】
前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(0%)に、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸および/または、セレン酸ナトリウムを添加して、ケイ素元素、アルミニウム元素、ホウ素元素および/または、セレン元素を含む培養液を調製した。前記培養液における前記各元素の組成を下記表5に示す。そして、前記各培養液を用いて、前記実施例6と同様にして、前記イネの苗を育成した。前記各培養液を使用した、それぞれの処理区において、育成後のイネ11個体について、前記実施例6と同様にして、前記育成の指標として、葉幅(cm)を測定した。
【0110】
【表5】
【0111】
これらの結果を図13に示す。図13は、イネの葉幅を示すグラフであり、縦軸は、前記イネの葉幅(cm)を示し、各バーは、前記表5の各培養液を使用した結果である。
【0112】
図13に示すように、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した培養液「Si+Al+B」を使用することによって、各成分単独添加よりも大きな葉幅を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果において、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の混合物が有効成分であることがわかった。そして、さらに、セレンを添加した培養液「Si+Al+B+Se」を使用することによって、葉幅がより大きくなった。この結果から、耐暑性能の促進は、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素だけでなく、さらに、セレンを併用することで、より向上することがわかった。
【0113】
[実施例9]
本例では、環境耐性促進剤による各種植物の耐乾燥性の促進を、含水率により評価した。
【0114】
前記実施例4(1)と同様に、前記実施例3の前記石炭灰未添加の肥料養液(石炭灰0%)に、体積比が3v/v%となるように、前記石炭灰(D)の溶出液を添加し、培養液(石炭灰3%)を調製した。また、ネガティブコントロールとして、前記溶出液を添加していない前記肥料養液(石炭灰0%)を使用した。
【0115】
そして、下記表6に示す5品目の苗を使用した以外は、前記実施例6(2)と同様にして、水耕栽培を行った。そして、前記各培養液および前記肥料養液を使用したそれぞれの処理区において、前記実施例1と同様にして含水率を測定した。そして、ネガティブコントロールの結果を「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0116】
【表6】
【0117】
これらの結果を、図14に示す。図14は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図14において、縦軸は、含水率の相対値を示す。
【0118】
図14に示すように、培養液(石炭灰3%)を添加した培養液を使用することによって、ネガティブコントロールよりも優れた含水率を示した。この結果から、環境耐性能の促進効果は、植物種にかかわらず,培養液(石炭灰3%)の添加により、向上することがわかった。
【0119】
[実施例10]
本例では、ケイ素、ホウ素およびアルミニウムの併用による各種植物の耐乾燥性の促進を、含水率により評価した。
【0120】
前記表6に示すジャガイモ、トマト、ホウレンソウおよびブロッコリーの苗を使用した以外は、前記実施例6(2)と同様にして、水耕栽培を行い、含水率を測定し、ネガティブコントロールを「1」として、各培養液を使用した処理区の結果の相対値を求めた。
【0121】
これらの結果を図15に示す。図15は、含水率(相対値)を示すグラフであり、図15(A)は、ジャガイモの、図15(B)は、トマトの、図15(C)は、ホウレンソウの、図15(D)は、ブロッコリーの結果である。図15において、縦軸は、含水率の相対値を示す。
【0122】
図15(A)から(D)に示すように、いずれの植物も、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素を添加した「Si+Al+B」を使用することによって、対照区よりも高い含水率を実現し、かつ各成分単独使用よりも、環境耐性能の促進効果をもたらすことがわかった。環境耐性能の促進効果は、植物種にかかわらず、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素の併用により、向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明の環境耐性促進剤によれば、例えば、乾燥、寒冷、高温等の厳しい環境条件下においても、これらの環境条件に対する植物の耐性能を促進できる。このため、本発明の環境耐性促進剤を植物の育成に利用することで、厳しい環境条件下でも、植物の生育を促進できる。このため、例えば、環境の影響を受けやすい地域における食用等の植物の栽培等に、極めて有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とする植物用環境耐性促進剤。
【請求項2】
さらに、セレンを含む、請求項1記載の環境耐性促進剤。
【請求項3】
ホウ素とケイ素との重量比が、1:0.1〜1:10であり、ホウ素とアルミニウムとの重量比が、1:0.1〜1:10である、請求項1または2記載の環境耐性促進剤。
【請求項4】
ホウ素とセレンとの重量比が、1:0.001〜1:0.1である、請求項2または3記載の環境耐性促進剤。
【請求項5】
ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含む原料として、フライアッシュを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤。
【請求項6】
前記環境耐性が、乾燥耐性、水分蒸散耐性および温度耐性からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から5のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤。
【請求項7】
前記植物が、陸上植物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤。
【請求項8】
前記陸上植物が、種子植物、コケ植物およびシダ植物からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項7記載の環境耐性促進剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤を植物に供給することを特徴とする植物の環境耐性能の促進方法。
【請求項10】
前記環境耐性促進剤を、前記植物を生育させる培地に含有させる、請求項9記載の促進方法。
【請求項11】
前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有量が、それぞれ、0.1×10−4〜10×10−4w/v%である、請求項10記載の促進方法。
【請求項12】
前記環境耐性促進剤が、さらに、セレンを含み、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のセレンの含有量が、0.001×10−4〜1×10−4w/v%である、請求項10または11記載の促進方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の促進方法により、植物の環境耐性を促進する工程を含むことを特徴とする植物の製造方法。
【請求項1】
ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含むことを特徴とする植物用環境耐性促進剤。
【請求項2】
さらに、セレンを含む、請求項1記載の環境耐性促進剤。
【請求項3】
ホウ素とケイ素との重量比が、1:0.1〜1:10であり、ホウ素とアルミニウムとの重量比が、1:0.1〜1:10である、請求項1または2記載の環境耐性促進剤。
【請求項4】
ホウ素とセレンとの重量比が、1:0.001〜1:0.1である、請求項2または3記載の環境耐性促進剤。
【請求項5】
ホウ素、ケイ素およびアルミニウムを含む原料として、フライアッシュを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤。
【請求項6】
前記環境耐性が、乾燥耐性、水分蒸散耐性および温度耐性からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から5のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤。
【請求項7】
前記植物が、陸上植物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤。
【請求項8】
前記陸上植物が、種子植物、コケ植物およびシダ植物からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項7記載の環境耐性促進剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の環境耐性促進剤を植物に供給することを特徴とする植物の環境耐性能の促進方法。
【請求項10】
前記環境耐性促進剤を、前記植物を生育させる培地に含有させる、請求項9記載の促進方法。
【請求項11】
前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のホウ素、ケイ素およびアルミニウムの含有量が、それぞれ、0.1×10−4〜10×10−4w/v%である、請求項10記載の促進方法。
【請求項12】
前記環境耐性促進剤が、さらに、セレンを含み、前記培地において、前記環境耐性促進剤由来のセレンの含有量が、0.001×10−4〜1×10−4w/v%である、請求項10または11記載の促進方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の促進方法により、植物の環境耐性を促進する工程を含むことを特徴とする植物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−254978(P2012−254978A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114603(P2012−114603)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
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