説明

履物

【課題】 直立姿勢において安定することができるとともに、ソール部分の湾曲を想定したソール部分を有し、無理のない足首周辺の運動を可能にする履物を提供する。
【解決手段】 略楕円形表面の長軸方向を前後に向け、下面を接地面とし上面を足裏当接面とするソール部1と、ソール部に連続して設けられ足甲付近を被覆する被覆部2とを備えた履物において、ソール部の接地面12の長軸方向中央よりも前方に、接地面と略平行な面34を有するとともに、長手方向を接地面の短軸方向に向けて設けられた断面略台形の突起部3と、突起部に対してソール部の前方側に突起部に隣接しつつ、長手方向を接地面の短軸方向に向けて接地面を切欠いてなるスリット部4と、ソール部の前方先端付近の接地面側を隆起させてなる隆起部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関し、主として脚部および足首付近の筋肉を鍛錬するために使用する履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、強制的な運動をすることなく、履物の形状によって、それを使用する者が歩行するなど体重移動する際に自然に足首周辺の関節を屈伸させることから、シェイプアップ効果が期待される履物が考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術は、履物の裏面に突起部を設ける構成であり、この突起部を支点に揺動できるようになっており、この突起部と爪先側先端を設置して安定させるか、または突起部と踵側先端を接地させることによって安定させる状態でなければ、突起部のみが接地することとなり、非常に不安定な履物であった。そして、このような不安定な履物に構成することによって、足首周辺の筋肉は、足を安定させるように作用し、また、上記の安定した状態においても、爪先立ちの状態または踵立ちの状態となり、筋肉および腱を伸縮させるようにしたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−202128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は、足首周辺の筋肉を使用するような姿勢を強制するために、履物の裏面に突起部を設けているが、その姿勢があまりにも不安定であるために、直立姿勢の状態で足元を安定させることができないものであった。また、ソール部分をプラスチック等の合成樹脂で構成する際には、当該ソール部分が湾曲することとなるが、そのような状態が想定されていないため、ソール部分の湾曲状態によっては、本来予定している関節の曲がりを実現できないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記諸点にかんがみ、その目的とするところは、直立姿勢において安定することができるとともに、ソール部分の湾曲を想定したソール部分を有し、無理のない足首周辺の運動を可能にする履物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、略楕円形表面の長軸方向を前後に向け、下面を接地面とし上面を足裏当接面とするソール部と、このソール部に連続して設けられ足甲付近を被覆する被覆部とを備えた履物において、ソール部の接地面の長軸方向中央よりも前方に、該接地面と略平行な面を有するとともに、長手方向を該接地面の短軸方向に向けて設けられた断面略台形の突起部と、この突起部に対してソール部の前方側に該突起部に隣接しつつ、長手方向を該接地面の短軸方向に向けて該接地面を切欠いてなるスリット部と、上記ソール部の前方先端付近の接地面側を隆起させてなる隆起部とを備えたことを特徴とする履物を要旨とする。
【0008】
上記のような構成であれば、突起部の最下面はソール部の接地面と略平行に維持されることとなるから、突起部の最下面のみを接地させて使用することができる。また、突起部は断面略台形であることから、その斜辺すなわち傾斜面を接地させるような状態で使用することも可能となる。ここで、突起部に隣接する位置にスリット部が設けられていることから、上述の斜辺すなわち傾斜面を接地させる際に、当該スリット部の位置でソール部が折曲することとなり、当該スリット部よりも先端側のソール部は接地面を接地させることが可能となる。さらに、先端に隆起部を備えることにより、爪先側先端を隆起部によって持ち上げることができる。
【0009】
ここで、ソール部とは、履物の底部を構成する全体を意味し、使用者の足裏に当接する面から、地面または床面に当接(これを接地という)する面(これを接地面という)までの範囲を含んでいる。
【0010】
上記発明において、前記突起部は、前記ソール部の接地面と平行な面が部分的に設けられ、残りの部分が徐々に突出長を小さくしてなるテーパ面が設けられている突起部とすることができる。
【0011】
上記構成によれば、突起部の一部のみがソール部の接地面と平行であるため、当該平行な一部の面を接地することができるとともに、突出長が徐々に小さくなるテーパ面を接地することにより、ソール部の接地面および足裏当接面を傾斜させることができる。
【0012】
さらに、上記各発明において、前記隆起部は、前記ソール部の前方先端付近の足裏当接面側にも隆起してなる構成とすることができる。上記のような構成によれば、この履物を使用する際、使用者の爪先部分を足裏当接面から持ち上げることができる。
【0013】
また、本発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の履物において、さらに、前記ソール部の後方先端付近の接地面側を隆起させてなる後端隆起部を備えたことを特徴とする履物をも要旨としている。
【0014】
上記構成によれば、ソール部裏面に設けられた突起部と後方先端とを接地させる状態において、突起部から後方先端までの直線的な傾斜角度を緩やかにすることができるとともに、その中間に位置するソール部を下向きに湾曲させることができる。
【0015】
さらに、本発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の履物において、さらに、前記ソール部の足裏当接面には、長軸方向中央付近から後端に至る範囲を隆起してなる隆起面部を備えたことを特徴とする履物を要旨としている。
【0016】
上記構成によれば、ソール部裏面に設けられた突起部と前方先端とを接地させる状態において、前方先端の位置よりも後方側を一層高い位置にすることができる。さらに、突起部と後方先端とを接地させる状態においては、ソール部の中央付近から後端に至る範囲の低位状態を緩和させることができる。
【0017】
また、本発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の履物において、前記被覆部の内部表面のうち親指側表面には、前記ソールとの境界付近において内向きに突出する突出部を備えたことを特徴とする履物を要旨としている。
【0018】
上記構成によれば、使用者が履物を使用する際、被覆部の内側表面において足の親指側が突出部に当接することとなり、足の親指側側面の位置を矯正することができる。
【0019】
さらに、本発明は、前記被覆部は、前記ソール部の短軸側両端縁に分かれて連続されるとともに、両者を面ファスナで連続可能に設けられた被覆部である請求項1ないし6のいずれかに記載の履物を要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、被覆部を面ファスナで連続することから、足のサイズに応じた調整ができるとともに、履物に対する足のフィット感を調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の履物は、上記のような構成であるから、ソール部裏面に設けられた突起部のうち、ソール部の接地面と略平行な部分を使用することにより、直立姿勢が可能となり、しかもその姿勢が安定することとなる。
【0022】
また、上記突起部から前方先端寄りの位置にスリット部が設けられていることから、突起部と前方先端とを接地する状態では、スリット部から折曲することとなり、突起部と前方先端との部分的な接地状態ではなく、スリット部から前方の広い範囲で接地することが可能となる。これにより、当該接地状態における姿勢が安定することとなり、しかも、ソール部の湾曲または折曲の状態が一定となり、足首周辺の屈伸状態を予定される状態にすることができる。従って、足首周辺の運動が想定されたものとなり、当該周辺の筋肉および脚部の筋肉または腱を伸縮させることができるので、ストレッチ効果を与え、またはシェイプアップ効果を期待することができる。
【0023】
さらに、上記スリット部によるソール部の折曲により、使用者が爪先立ちの状態となった際であっても、接地面積が広くなることから、当該爪先立ちの状態が安定することとなる。また、ソール部裏面の前方先端部付近を隆起させた構成においては、上記のような安定した爪先立ちの状態であっても、使用者の爪先を上向きに誘導させることができるから、ストレッチ効果を十分に与えることが可能となる。
【0024】
他方、ソール部裏面の後方先端を隆起させた構成にあっては、使用者が踵立ちの状態において、爪先を上向きにするような本来的には難しい姿勢をする際、極端な傾斜を緩和させることができる。
【0025】
さらに、ソール部の足裏当接面のうち、中央付近から後方先端に至る範囲を隆起させる構成では、踵立ちの姿勢を一層緩和させることができるうえ、爪先立ちの姿勢では、踵の位置が一層高位となることから、爪先立ち状態によるストレッチ効果および運動代謝の向上が期待される。
【0026】
なお、上記の各発明は、使用者が履物を使用した状態で直立し、または歩行することによって、通常の履物(接地面が決まった角度のソール部である履物)を使用する場合に比較して、足首周辺の関節を頻繁に曲げ伸ばしすることとなり、その曲げ伸ばしに必要な筋肉を刺激することによってストレッチ効果を得ることができるのである。特に、爪先立ち姿勢において、踵側に重心を移動させると爪先立ちが解けることから、爪先立ちを継続する場合には、踵側に重心が移動しないようにバランスをとらなければならず、逆に踵立ちの姿勢を維持する場合においても爪先側に重心が移動しないようにバランスを維持しなければならず、いずれの状態においても足の周辺および脚部の筋肉を緊張させることとなるから、十分な運動による代謝が期待できることから、シェイプアップ効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態の使用態様を示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【図5】実施形態の第1の変形例を示す説明図である。
【図6】実施形態の第2の変形例を示す説明図である。
【図7】実施形態の第3の変形例およびその他の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に第1の実施形態を示す。この図に示すように、本実施形態は、ソール部1の一部に被覆部2が設けられたサンダルである。ソール部1は、所定の肉厚で構成された表面形状を略楕円形に形成されており、その表面(上面)は、足裏が当接する足裏当接面11であり、裏面(下面)は、地面または床面が当接する接地面12である。被覆部2は、足の甲付近を被覆するようにアーチ状に形成されており、使用者が履物Aを使用する際、ソール部1の足裏当接面11と被覆部2とによって足が略固定される状態となるものである。
【0029】
本実施形態のソール部1には、接地面12に突起部3が設けられるとともに、この突起部よりも前方側にスリット部4が設けられ、さらに、接地面12の前方先端には隆起部5が設けられている。
【0030】
突起部3は、断面が略台形に形成された長尺な構成であり、その長手方向がソール部1の短軸方向に向けて配置されている。ここで、突起部3の断面形状は略台形と記載しているが、台形を構成する平行な二辺のうち長辺側(通常は下底という)31を上向きにし、短辺側(通常は上底という)32を下向きにした形状であり、正確に表現すれば逆台形というべきであるが、本件では単に台形と称している。そこで、このような断面形状を有する突起部3は、略台形断面の長辺側31の面33をソール部1の接地面12に接着し、短辺側32の面34が地面または床面に接地されるように構成されている。
【0031】
ここで、短辺側表面34は、長辺側表面33と略平行であるから、当該短辺側表面34はソール部1の接地面12に略平行に設けられている。従って、この短辺側表面34を地面または床面に接地させる状態では、履物Aは全体として、一本歯下駄(または高下駄ともいう)のように、当該突起部3のみで支えられることとなる。なお、ソール部1の弾性変形および使用者の体重等により、ソール部1が湾曲して、その前後の先端が部分的に地面または床面に接することとなる場合があることは想定され得る。
【0032】
このように、一本歯下駄のような状態であるとしても、突起部3の先端に平面部34が存在することによって、使用者が直立姿勢を維持する場合、その直立状態を安定させることが可能となる。
【0033】
スリット部4は、上記突起部3に隣接して設けられており、断面形状は略半円形であって、ソール部1の短軸方向に長尺な(両側縁部間に至る範囲に)線状に切り欠かれた構成となっている。このスリット部4がソール部1の接地面12に設けられていることから、当該部分のソール部1の肉厚が薄く形成されることとなり、ソール部1の折曲を可能にするものである。
【0034】
隆起部5は、ソール部1の接地面12の前方先端に設けられており、全体的には蒲鉾状に形成された部分が接着されて隆起したように構成されたものである。なお、この実施形態では隆起部5を接着して構成しているが、ソール部1を構成する際に一体成型する方法により隆起部5を構成してもよい。隆起部と称しているが、ソール部1を膨張等させて隆起させたという意味ではなく、ソール部1から隆起したような形状に設けられていることを意味するに過ぎない。
【0035】
この隆起部5は、表面形状が略三日月状となっており、その表面51をソール部1の接地面12に密着させるように設けられ、反対側の曲面52が地面または床面に接するものである。なお、隆起部5は略蒲鉾状であるが、その肉厚は中央付近が最も厚く構成されている。このような構成の隆起部5の存在により、ソール部1がスリット部4から折曲される状態においても、スリット部4から前方先端に至る範囲が湾曲することとなるのである。
【0036】
なお、上記の突起部3の断面形状は、略台形であればその斜辺35,36の傾斜は特に限定されるものではないが、その傾斜を緩やかに構成することにより、ソール部1を傾けたとき、当該斜辺35,36を形成する面(以下、傾斜面という)37,38が、地面または床面に接することとなり、そのような状態における姿勢を安定させることができる。そして、当該略台形が略等脚台形である場合には、ソール部1を傾けることができる角度を前傾斜と後傾斜とで同様とすることができる。
【0037】
本実施形態は上記のような構成であるから、図2に示すように、使用者が履物Aを使用する際、通常の履物と同様に、被覆部2に爪先から挿入して、甲部分を被覆部2に当てるようにして装着することができる。そして、このような状態において、使用者が直立する場合には、突起部3の短辺側表面34が地面または床面に当接することとなる(図2(a)参照)。
【0038】
これに対して、使用者の重心を爪先側に移動するとき、突起部3の前方側傾斜面38が地面または床面に当接する方向に向かってソール部1が傾斜することとなり、このソール部1の傾斜に応じて、ソール部1の前方先端が地面または床面に当接することとなる。そして、このとき、ソール部1はスリット部4の位置で折曲し、ソール部1の接地面12の前方部分も同時に地面または床面に接地することとなる。この状態において、足の指関節はソール部1の形状に合わせるように屈曲されることとなる(図2(b)参照)。
【0039】
上記のように、使用者が重心を爪先側に移動することにより、使用者は必然的に爪先立ちの状態となるのである。ここで、このような爪先立ちの状態を維持させるためには、使用者の重心を爪先側に移動した状態を維持させることが必要となり、さらに、このような重心の状態を維持させるためには、足の周辺および脚部の筋肉(特に、ふくらはぎの筋肉)を使用しなければならないこととなるから、これにより、ストレッチ効果やシェイプアップ効果が期待できる。
【0040】
また、使用者が重心を踵側に移動するときには、上記爪先立ち状態とは逆に、突起部3の後方が接地するようにソール部1が傾斜することとなり、これにより踵立ちの状態となるものである。このとき、ソール部1には折曲を補助するようなスリットが設けられていないことから、ソール部1の弾性変形の範囲内で湾曲することとなる(図2(c)参照)。なお、ソール部1の剛性が高い場合には、ソール部1は湾曲せず、傾斜する状態となるものである。
【0041】
このように、ソール部1が傾斜することにより、使用者は踵立ちの状態(つまり爪先を持ち上げた状態)を強制されることとなり、踵に重心が移動している間は、踵立ちの状態を維持することができる。そして、このような踵立ちの状態においては、腱(特にアキレス腱)を伸ばすことができるうえ、その状態で立ち続けるためには、脛付近の筋肉を使用して爪先を浮かせなければならず、ストレッチ効果やシェイプアップ効果が期待できるものである。
【0042】
本実施形態を履いた状態で歩行するときは、一本歯下駄(高下駄)のように突起部3のみを接地して歩行することも可能であるが、通常の歩行のように、前側の足では踵から着地し、後ろ側の足では最後に爪先で蹴るようにしてもよい。この場合、歩行中に着している足では重心移動が行われることとなり、踵立ち状態から直立状態、さらに直立状態から爪先状態に足の角度(ソール部1の角度)を変化させながら歩行してもよい。このような歩行方法では、足首付近の関節を曲げ伸ばしすることができ、また、重心移動に脚部の筋肉をも使用することから、ストレッチ効果やシェイプアップ効果が期待できることとなる。
【0043】
次に、第2の実施形態について説明する。図3に第2の実施形態を示す。なお、図3(a)は実施形態全体の正面図、(b)は左側面図、(c)は裏面図である。これらの図に示すように、突起部103の一部にテーパ面106が形成されている。このテーパ面106は、短辺側表面134からソール部101の短軸方向に、徐々に突出長を小さくするように設けられている。そして、例えば、一対(左右を揃えた場合)の履物では、相互に対向する側にテーパ面106を形成することにより、一対の履物を履いたとき、足裏は僅かに内側に傾斜することとなり、両膝を合わせるようにしなければ直立できないようになることから、O脚の矯正効果が期待できることとなる。
【0044】
これとは、逆に、一対の履物について、相互の対向しない側にテーパ面106を形成することにより、当該一対の履物を履いたとき、両膝を離すようにしなければ直立できないこととなるから、この場合にはX脚の矯正効果が期待できることとなる。
【0045】
なお、このようなテーパ面106を形成した本実施形態においても、ソール部101の接地面112と平行な面は部分的に形成されているから、普通に直立しようとする場合には、当該平行な面のみを接地させればよいものである。また、爪先立ちの状態および踵立ちの状態については、その効果をも含めて第1の実施形態と同様である。
【0046】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、図4に示されている。この図に示すように、本実施形態は、第1の実施形態のうち、ソール部1の前方先端において、足裏当接面11の側にも隆起部53を設けたものである。このような構成により、第1に、爪先立ちの状態において、足裏が爪先を下向きにして傾斜することとなるが、この傾斜に伴う足の移動を爪先で停止させることを目的としている。また、第2の目的としては、この隆起部53に爪先部分を載せることによって、爪先の付近の湾曲状態(指関節の曲がり具合)がソール部1の傾斜よりも大きくなることである。このような指関節の曲がりによって、当該関節の可動域を拡大させるようなストレッチ効果が期待されるうえ、指先裏側のツボを刺激することが期待されるのである。
【0047】
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、これらに他の効果を得るべく、種々の変形をすることは可能である。その変形例について以下に説明する。
【0048】
図5は、第1の変形例を示している。この図に示すように、第1の変形例は、ソール部1の後方先端(踵側)に隆起部7を設ける構成としたものである。隆起部7は、ソール部1の接地面12に設けられている。このように、踵側に隆起部7を設けることにより、第1に、踵立ちの状態において、ソール部1の傾斜角度を緩やかにしている。突起部3の断面形状が略等脚台形である場合、爪先立ちに似た角度(突起部3の位置により異なる角度となる)で傾斜することになるが、基本的には人間は踵立ち状態をすることは困難であることから、その傾斜を緩和させているのである。
【0049】
第2の目的は、ソール部1の弾性変形に伴う湾曲状態を利用して、土踏まずから踵までの足裏をソール部1の湾曲に沿って伸ばすように作用させることである。土踏まずの周辺には複数の腱(または筋)が存在するため、この腱(または筋)を伸ばすことにより、足首周辺の可動域を拡大させるようなストレッチ効果が期待されるのである。
【0050】
第2の変形例としては、図6に示すように、ソール部1の肉厚を変化させた構成である。具体的には、ソール部1の足裏当接面11において、長軸方向中央付近から後端に至る範囲の全体が厚肉となるように、当該足裏当接面11を隆起させた構成である。このように中央付近から後端に至る範囲を厚肉にすることによって、ソール部1の当該部分の剛性を高めることを第1の目的としている。これにより、踵立ちの状態では、ソール部1の湾曲が緩和され、踵立ち状態におけるソール部1の傾斜も緩やかとなり、容易に踵立ちの姿勢をとることができるようになるのである。
【0051】
また、同時に踵の位置が僅かながら高い位置となるため、踵立ちの状態における踵の位置が大きく低位に移動しないことから、後方への転倒を防止できる。さらに、直立状態において、既に踵の位置が上位に、爪先の位置が下位になるため、爪先立ち状態では、逆に極端な傾斜によって爪先立ちをすることができる。これにより、第1の実施形態における状態よりも足首周辺および脚部の筋肉や腱等を伸縮させることとなるから、一層のストレッチ効果またはシェイプアップ効果が期待できるものである。
【0052】
第3の変形例としては、図7の一部に示しているように、ソール部1と被覆部2の境界付近において、その境界線に沿って長尺な突起部を設けるものである。この突起部は、左用の履物では右側に、右用の履物では左側にのみ設けられ、つまり、親指のつけ根付近の外側に当接するように設けられているのである。このように親指側にのみ設ける目的は、外反母趾の矯正効果を期待するものであって、爪先立ちの状態ではヒールを履いた状態に似ていることから、このような足の指が待った状態において、親指のつけ根付近が外向きにならないように突出部によって矯正するのである。
【0053】
なお、図7は、被覆部2を分割した2つの被覆部構成部材21,22によって構成される変形例を示しており、被覆部2は、実施形態において一体型のものを使用する場合のほか、図7のように、構成部材21,22を面ファスナ等で連続させるように設けてもよいのである。そして、このように、構成部材21,22で構成することによって、足のサイズに合わせて、被覆部2の大きさを調整することができるうえ、締め付け力をも調整することができる。そこで、ソール部1の傾斜角度に忠実に足裏を傾斜させるためには、被覆部2を強く締め付けるように装着し、緩慢な状態で足裏を傾斜させるためには、被覆部2の締め付けを弱くすればよいのである。
【0054】
また、図7に示されているように、ソール部1の足裏当接面11の後端付近(踵が当接する付近)に複数の突起部を構成してもよい。このような突起部は足裏のツボを刺激する効果を有するものであるが、この種の突起部の存在を排除するものではないのである。つまり、本発明では、足の指の周辺や足首付近、さらに脚部の筋肉や腱などを刺激してストレッチ効果やシェイプアップ効果を期待するものであるが、これらの効果と同時に足裏のツボを刺激して、同様の効果を期待し、また、異なる効果を期待することも自在なのである。
【0055】
以上のとおり、変形例について種々説明した。その説明の便宜上第1の実施形態について、変形例を付加した構成として説明しているが、これらを複合的に組み合わせた構成とするものであってもよく、第2または第3の実施形態について変形例を採用する構成としてもよい。
【0056】
また、各部を構成する部材については、材質についての説明をしていないが、プラスチック等の合成樹脂を使用する一般的な履物と同様の材料を使用することができる。さらに、実施形態および変形例では、サンダルを代表例として図示しているが、これに限定されるものではなく、履物全般について同様の構成とすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1,101 ソール部
2,102 被覆部
3,7,103 隆起部
4,104 スリット部
5,105,106 隆起部
11 足裏当接面
12 接地面
21,22 被覆部構成部材
31 台形の長辺側
32 台形の短辺側
33 長辺側表面
34 短辺側表面
35,36 台形の斜辺
37,38 傾斜面
51 隆起部の三日月状表面
52 隆起部の曲面
106 テーパ面
A 履物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略楕円形表面の長軸方向を前後に向け、下面を接地面とし上面を足裏当接面とするソール部と、このソール部に連続して設けられ足甲付近を被覆する被覆部とを備えた履物において、
ソール部の接地面の長軸方向中央よりも前方に、該接地面と略平行な面を有するとともに、長手方向を該接地面の短軸方向に向けて設けられた断面略台形の突起部と、この突起部に対してソール部の前方側に該突起部に隣接しつつ、長手方向を該接地面の短軸方向に向けて該接地面を切欠いてなるスリット部と、上記ソール部の前方先端付近の接地面側を隆起させてなる隆起部とを備えたことを特徴とする履物。
【請求項2】
前記突起部は、前記ソール部の接地面と平行な面が部分的に設けられ、残りの部分が徐々に突出長を小さくしてなるテーパ面が設けられている突起部である請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記隆起部は、前記ソール部の前方先端付近の足裏当接面側にも隆起してなる隆起部である請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の履物において、さらに、前記ソール部の後方先端付近の接地面側を隆起させてなる後端隆起部を備えたことを特徴とする履物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の履物において、さらに、前記ソール部の足裏当接面には、長軸方向中央付近から後端に至る範囲を隆起してなる隆起面部を備えたことを特徴とする履物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の履物において、前記被覆部の内部表面のうち親指側表面には、前記ソールとの境界付近において内向きに突出する突出部を備えたことを特徴とする履物。
【請求項7】
前記被覆部は、前記ソール部の短軸側両端縁に分かれて連続されるとともに、両者を面ファスナで連続可能に設けられた被覆部である請求項1ないし6のいずれかに記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234829(P2011−234829A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107643(P2010−107643)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(510126678)
【Fターム(参考)】