履物
【課題】 楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるウォーキングシューズ等の履物を提供する。
【解決手段】 踏付部31と踵部32とに分離された靴底3を有する履物であって、これら踏付部31と踵部32との間に板バネ材としてのシャンク4が架設されてなる履物とした。シャンク4はチタン、チタン合金又はABS等の樹脂製とすることが好ましく、複数個の孔、突起、溝を設けることができる。
【解決手段】 踏付部31と踵部32とに分離された靴底3を有する履物であって、これら踏付部31と踵部32との間に板バネ材としてのシャンク4が架設されてなる履物とした。シャンク4はチタン、チタン合金又はABS等の樹脂製とすることが好ましく、複数個の孔、突起、溝を設けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーキングシューズ、通勤靴及びサンダル等の履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多忙な現代人にとって健康維持は最も大きな関心事の一つである。健康を維持するためには日頃から適度な運動を行うことが重要である。過度の運動によって腰や膝を痛めてしまったのでは元も子もない。そこで、健康維持の一環として比較的足腰に負担をかけないウォーキングを楽しむ人口が増えてきている。ウォーキングは心肺機能の増進や、発汗による新陳代謝の促進、脂肪燃焼、ストレス解消などの効果がある。また、例えばマイカー通勤から電車通勤に切り替えて駅から職場まで徒歩で通勤する等、気軽に誰でも実践できる万人向けの健康法である。
【0003】
一方で、健康を維持するには継続して適度の運動を行うことが重要である。いくら手軽なウォーキングとはいえ、歩行自体が苦痛であっては長続きしない。すなわち、楽に歩行できることがウォーキングの習慣化には重要であり、そのためにはウォーキングに合った(履物)を選択することが必要となる。有酸素運動であるウォーキングは長時間続けて行うことでより脂肪燃焼効果等が高まるという側面もあり、この点からも楽に歩行できる靴が望まれている。
【0004】
このような問題に対処し、楽な歩行を可能にするものとして、下記特許文献1に記載された発明がある。特許文献1には、靴底を中空に形成し軽量化を図るとともに、上下面の対向位置にすり鉢状有底の穴を複数個有する樹脂製中空踵部材を踵部に設けることで、運動靴として安定した走りや歩行ができる旨が記載されている。
【0005】
この発明によれば、ある程度楽に歩行できるようになる。しかし、歩行が楽でありながらも、より血行を促進して新陳代謝を促すことが求められている。また、内蔵への負担を考慮すると背筋の伸びた姿勢で歩行可能な履物であることも必要である。
【0006】
また、本願発明の一構成要素である独立した踏付部と踵部とを有する履物については特許文献2や特許文献3に記載されている。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3046634号公報
【特許文献2】実公昭38−27807号公報
【特許文献3】特許第2949164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるウォーキングシューズ等の履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、踏付部と踵部とに分離された靴底を有する履物であって、これら踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されてなる履物とした。
【0010】
靴底が踏付部と踵部とに分離されていることで、履くと背筋が伸びるとともに軽量かつ歩行しやすい履物となる。また、履いて歩行することにより、足裏がマッサージされて血行が促進されるとともに、母趾球を鍛えることができる履物となる。さらに、踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されてなることで、より、歩行しやすくなるとともに足裏がよりマッサージされて血行がさらに促進されることとなる。加えて、不踏部のシワやタルミを防止することもできる。ここで、「踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されて」とは、踏付部と踵部との間(例えば、踏付部上部と踵部上部との間)にシャンクが直接架設されているだけでなく、踏付部と踵部の上側に設けられたアッパー底部(後述)を介して間接的に架設されていることも含む。また、板バネ材としてのシャンクは、外力が加えられていない自然状態のときには板状であり、歩行中に生じる履物の長手方向の撓みによって外力が加えられ、この撓みに追随して凹状や凸状に変形可能なものである。そして、弾性限界内の変形において、外力から開放されると板状に復帰するものである。
【0011】
このとき、踏付部のつま先が斜め上方を向いており、踏付部底面と、地表面とのなす角度が5〜45度である履物とすることができる。これにより、一層歩行しやすい履物となる。
【0012】
踏付部及び踵部の土踏まず側の対向面は、下方に向かって踏付部と踵部との間の空間が広がるように切り欠かれている履物とすることが好ましい。これにより、背筋が伸びた状態で一層楽に歩行できるとともに、足裏のマッサージ効果が増幅されて血行が一層促進される。
【0013】
シャンクは、チタン又はチタン合金製とすることも好ましく、樹脂製とすることも好ましい。チタンやチタン合金は軽量であり、板バネ材として用いた場合の復元力も強い。これによって、一層歩行しやすくなると同時により血行が促進される。また、歩行時の疲労も低減される。シャンクが樹脂製の場合は材料費が安価で加工もしやすい。このため、歩行しやすく血行促進効果のある履物を安価に提供できる。
【0014】
シャンクには、複数個の孔が設けられてなる履物とすることも好ましい。これによって、履物内部のムレを低減することができる。また、より軽量な履物となり一層歩行しやすくなる。
【0015】
このとき、シャンクの上側又は下側には、ポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工した連続多孔質構造膜が設けられてなる履物とすることができる。ポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工した連続多孔質構造膜は、水の浸入を防ぐ撥水特性と、水蒸気を透過させる透湿性を併せ持っており、かつ、多孔質構造を形成する空孔が連続しているために気体をよく透過するという特徴を有する。これにより、履物内部のムレを一層低減することができるとともに、履物内部に雨水等が浸入しにくくなる。
【0016】
シャンクの表面には複数個の突起が設けられており、該突起が上側を向くようにシャンクが架設されてなる履物とすることも好ましい。これによって、一層足裏がマッサージされて血行が促進される。
【0017】
シャンクには、履物の長さ方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる履物とすることも好ましい。これにより、足裏にフィットする履物となる。
【0018】
シャンクには、履物の幅方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる履物とすることも好ましい。これにより、足裏にフィットする履物になる。また、一層足裏がマッサージされて血行を促進することができる。
【0019】
シャンクの上にはインソールが載置されており、シャンクとインソールの間に設けられた空間に空気ポンプが取り付けられ、歩行により前記空気ポンプの圧縮、開放が繰り返されて、履物内部に空気が断続的に送り込まれる履物とすることも好ましい。これにより、安定した歩行を確保しつつ履物内部のムレを一層低減することができる。具体的には、シャンクとインソールの間に設けられた空間は、シャンク又はインソールに空気ポンプを収納する収納穴を設けて形成すればよく、空気ポンプは、下側に空気吸入口と逆止弁、上側に複数個の空気排出口が設けられてなり、シャンクおよび履物の底の前記空気吸入口に該当する位置ならびにインソールの前記複数個の空気排出口に該当する位置にそれぞれ貫通孔が設けられた履物とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるウォーキングシューズ等の履物を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の履物を詳細に説明する。図1は本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第一実施形態を示す外観斜視図、図2は図1のウォーキングシューズ1の分解斜視図、図3は図1のウォーキングシューズ1を地表面9に置いた状態の側面図、図4は図1のウォーキングシューズ1を人間8が履いた状態を示す側面図、図5は本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第二実施形態を示す分解斜視図である。また、図6は本発明の履物であるサンダル7の実施形態を示す分解斜視図である。図7は本発明の履物に用いるシャンク4の第一の他の例を示す斜視図、図8は本発明の履物に用いるシャンク4の第二の他の例を示す斜視図、図9は本発明の履物に用いるシャンク4の第三の他の例を示す斜視図、図10は本発明の履物に用いるシャンク4の第四の他の例を示す斜視図である。図11は本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第三実施形態を示す分解斜視図、図12は図11のウォーキングシューズ1の横断面図、図13は図12中P部の拡大横断面図、図14は図11のウォーキングシューズ1を人間8が履いて歩行している状態を示す側面図、図15は図14のQ部の拡大断面図、図16は図14のR部の拡大断面図である。
【0022】
まず、図1〜図4を用いて、本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第一実施形態について説明する。本実施形態のウォーキングシューズ1は、図1及び図2に示すように、アッパー2(21,22)と、踏付部31と踵部32とに分離された靴底と、板バネ材としてのシャンク4とからなる。図2に示すように、アッパー2は、底が開放されているアッパー上部21と、アッパー上部21の底を塞ぐアッパー底部22とからなり、ともに通気性の良いメッシュ等の布や耐久性に優れた皮革等の材料で構成することができる。アッパー上部21とアッパー底部22とは縫製によって接合されることとなる。靴底は互いに独立した踏付部31と踵部32とから構成されており、それぞれアッパー底部22の下側に固着される。土踏まず部222には靴底が存在しない。踏付部31と踵部32の材料として、合成ゴム等が使用できる。板バネ材としてのシャンク4はアッパー底部22の上面に取り付けられて、アッパー底部22を介して踏付部31と踵部32との間に間接的に架設された状態となる。その上には、ウレタンフォーム51と木綿繊維のメッシュ52とからなるインソール5が載置され、歩行等の衝撃から足を保護すると同時に、足裏からの汗を吸収するようにしている。シャンク4の材質は板バネ材としての柔軟性と復元性があれば特に制限されず、金属や樹脂等が使用できる。金属としてはチタンやチタン合金、ステンレス鋼等が使用できる。本実施の形態では、シャンク4として厚さ0.5mmのチタンを使用している。シャンク4がチタン製の場合、その厚みは0.2〜3mmが好ましい。0.2mmより厚いと板バネ材としての十分な復元力が得られ、3mmより薄いと歩行によって十分に変形することとなり、歩行しやすく、かつ、十分な血行促進効果が得られる。シャンク4の厚みはより好ましくは0.3〜1mmである。また、シャンク4が樹脂製の場合、樹脂としては、板バネ材としての柔軟性と復元性があれば特に制限されないが熱可塑性エラストマー、ゴム及び熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、飽和ポリオレフィン系ゴム、α−オレフィン・ジエン共重合体ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン・ジエン共重合体系ゴム、ブチル系ゴム、クロロプレン系ゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、ウレタン系ゴム等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS、ポリプロピレン,ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、フッ素樹脂が挙げられる。なかでも強靭で耐衝撃性・曲げ疲労特性に優れるABS樹脂がより好ましい。
【0023】
図3に示すように、踏付部31のつま先312は斜め上方を向いており、踏付部31の底面314と、地表面9とのなす角度θは20度であるがこれに限定されない。踏付部31の底面314と地表面9とのなす角度は5〜45度が好ましい。5度より大きいと楽に歩行でき、30度より小さいとウォーキングシューズを履いたときにつま先に負担をかけない。踏付部31の底面314と地表面9とのなす角度は、より好ましくは10〜30度である。また、踏付部31と踵部32との土踏まず部222側の対向面は、下に向かって踏付部31と踵部32との間の空間が広がるように切り欠き311,321が設けられている。
【0024】
このウォーキングシューズ1を人間8が履いた状態を図4に示す。土踏まず部222に靴底がないため、人間8の体重によって土踏まず部222が下がり、それに伴って踏付部31と踵部32とが外側に広がることとなる。踏付部31及び踵部32の土踏まず部222側の面、すなわち踏付部31と踵部32との対向する面を切り欠いているため、踏付部31と踵部32とが外側により広がりやすくなる。これにより、背筋が伸びた状態で一層楽に歩行できると考えられる。また、普段あまり使用しない土踏まずの筋肉を緊張、弛緩させることとなり下肢部の血行が良くなると考えられる。シャンク4は図4の状態にある土踏まず部222を、歩行時に足を上げた際、板バネ材としての復元力により図3の土踏まず部222の状態に強制的に戻す作用をすることとなる。
【0025】
上記ウォーキングシューズ1の第一実施形態では、シャンク4がアッパー底部22の上面に取り付けられていたが、これに制限されず、例えば図5に示すように、アッパー底部22の底面に取り付けられてもよい。また本発明はウォーキングシューズ1のみならず、履物全般について適用可能である。図6にはサンダル7としての実施形態を示している。本実施形態のサンダル7も、アッパー上部210と、アッパー底部220と、踏付部310と踵部320とに分離された靴底と、板バネ材としてのシャンク40とからなる。
【0026】
上記実施形態では表面が平らなシャンク4,40を使用したが、これに制限されない。シャンク4,40の他の例を図7〜図10に示す。図7のシャンク4の第一の他の例では、シャンク4に多くの貫通孔41を設けている。これにより、ウォーキングシューズ1内部のムレを改善でき、より快適な歩行が可能となる。ウォーキングシューズ1内部への雨水等の浸食を防止するため、シャンク4の上側又は下側に、アッパー底部22の全面に亘ってポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工してなる連続多孔質構造膜を設けることができる。前記連続多孔質構造膜としては、ゴアテックス(登録商標)を例示することができる。
【0027】
図8のシャンク4の第二の他の例では、シャンク4に微小の突起42を多数設けている。これにより、血行促進効果が得られより快適な歩行が可能となる。図9及び図10のシャンクは、複数個の溝43,44を設けたものであり、足裏にフィットするウォーキングシューズ1となる。
【0028】
上述した本発明の特徴を活かしつつ、さらに歩行を快適にするための本発明のウォーキングシューズ1の第三実施形態を図11〜図13に示す。図11は本発明のウォーキングシューズ1の第三実施形態を示す分解斜視図、図12は図11のウォーキングシューズ1の横断面図であり、そのP部拡大横断面図が図13である。ウォーキングシューズ1の第三実施形態では、シャンク4とインソール5の間に空気ポンプ6を設けて、歩行により前記空気ポンプ6の圧縮、開放を繰り返して、ウォーキングシューズ1内部に外部の空気を断続的に送り込むことを特徴とする。図11に示すように、空気ポンプ6はゴム製のポンプ本体部61と、その左右から突出してそれぞれの先端部の上側に複数個の排気口62を有する排気通路部63とからなる。排気通路部63は、排気通路を確保する目的から比較的硬質なプラスチック等の材料で構成されることが好ましい。また、靴底3の形状等に合わせて、踵部32側の排気通路部63をその途中から下方に折曲げて形成している。ポンプ本体部61の下側には吸引口64が設けられており、この吸引口64に接してポンプ本体部61の内側に逆止弁65が設けられている。シャンク4上面にはポンプ本体部61と左右の排気通路部63の形状に合わせた収納穴45が、インソール5下面にはポンプ本体部61の形状に合わせた収納穴53が設けられており、ポンプ本体部61がシャンク4とインソール5の間に収納されるようにしている。本実施形態では、シャンク4の材質として加工しやすくかつ強靭で耐衝撃性と曲げ疲労特性に優れたABS樹脂を採用しており、その厚みは2.5mmである。シャンク4がABS樹脂製の場合、その厚みは0.5〜5mmが好ましい。0.5mmより厚いと板バネ材としての十分な復元力が得られる。5mmより薄いと歩行によって十分に変形し、歩行の邪魔にもならないため、歩行しやすく、かつ、十分な血行促進効果が得られる。シャンク4の厚みはより好ましくは1〜3mmである。また、シャンク4およびアッパー底部22の前記空気吸引口64に該当する位置にそれぞれ貫通孔46,221を設け、インソール5(履物の底)の前記複数個の空気排気口62に該当する位置に複数個の貫通孔54を設けている。
【0029】
以下図14〜図16を使用して歩行時の空気ポンプ6の働きを説明する。図14は図11に示したウォーキングシューズ1を人間8が履いて歩行している状態を表している。右足81は地表面9を蹴り上げており、左足82は地表面9から離れ空中に位置している状態である。
【0030】
図14のQ部の拡大断面図を図15に示す。Q部は、地表面9を蹴り上げている右足81側のウォーキングシューズ1等の部分である。シャンク4とインソール5が凹形状に曲がり、かつ右足81の裏がインソール5の上側からポンプ本体部61を押すことで、ポンプ本体部61内の空気が左右の排気通路部63を通り、排気口62を経てインソール5の貫通孔54から噴出(図11参照)することとなる。このとき、逆止弁65は閉じているため吸引口64からは空気が殆ど噴出しない。図16には図14のR部の拡大断面図を示している。R部は、地表面9から離れ空中に位置している左足82側のウォーキングシューズ1の部分である。地表面9を蹴り上げて図15の拡大断面図と同様の状態であったポンプ本体部61は、地表面9から離れ空中に位置すると、左足82の圧力から開放され、シャンク4の復元力により図16の状態となる。この際、ゴム製のポンプ本体部61がもとの形に復元することで内部の気圧が低下し、逆止弁65が開いて空気がポンプ本体部61に流れ込むこととなる。この状態から左足82が着地し地表面9を蹴り上げると図15の拡大断面図と同様の状態となり、ポンプ本体部61内部の空気がインソール5の貫通孔54から噴出(図11参照)することとなる。体重がかかる踏付部31や踵部32の上にポンプ本体部61を設けた場合には、歩行が不安定になりやすい。しかし、図11のウォーキングシューズ1はあまり体重のかからない土踏まず部222にポンプ本体部61を設けているため安定した歩行ができる。また、右足81の裏がインソール5の上側からポンプ本体部61を押すことに加えて、シャンク4とインソール5が凹形状に曲がることでポンプ本体部61が圧縮され、より多くの空気を靴内部に噴出させることができるのである。
【0031】
図2のウォーキングシューズ1を使用して歩行中の生体反応を計測する実験を行った。被験者は20歳の女性で普段の生活で特別な運動は行っていない者であった。被験者に図2のウォーキングシューズ及び通常の靴底を有するウォーキングシューズを履かせてそれぞれ歩行運動を行わせた。歩行運動は、座位安静(5分)→立位安静(5分)→40m/分歩行(4分)→60m/分歩行(4分)→80m/分歩行(4分)→100m/分歩行(4分)→120m/分歩行(4分)の条件で行った。測定項目として、酸素摂取量、筋電図及びビデオ撮影による動作分析を行い両ウォーキングシューズの比較を行った。ここで、40m/分はゆっくりとした歩行、60m/分は普通の歩行速度、80m/分は少し早めの歩行、100m/分は急ぎ足、120m/分はジョギング程度の速度である。
【0032】
まず、上記運動の各段階における定常状態の酸素摂取量を測定した。測定装置として、ミナト医科学社製呼吸代謝測定装置を使用した。安静時の酸素摂取量は300mL/分以下であり、安静状態であることが立証された。上記運動の全ての歩行段階で図2のウォーキングシューズを履いたほうが通常の靴底を有するウォーキングシューズを履いた場合より低い酸素摂取量を示した。この結果から、図2のウォーキングシューズはエネルギー消費の点で運動効率の高い靴であることが判明した。
【0033】
次に筋電図を測定した。測定装置は日本光電社製8chマルチテレメーターを用いて、データレコーダに記録した。その結果、上記運動の全ての歩行段階で筋電図の振幅(筋収縮の強さの指標)は図2のウォーキングシューズを履いたほうが小さい傾向にあった。特に、歩行運動の中心となる大腿伸筋群(大腿直筋、内側広筋、外側広筋)において、図2のウォーキングシューズを履いたほうが弱い筋肉収縮で歩行している傾向であった。また、図2のウォーキングシューズを履いたほうが拮抗作用が顕著に現れ、筋の弛緩基がはっきり現れることが明らかとなった。このことは、筋ポンプ作用が十分に機能して整脈還流が滑らかに行われていること、すなわち血行が促進されていることを示している。
【0034】
ビデオ撮影による動作分析は、8mmビデオで撮影して、その画像をデイケイエイチ社製ソフト、フレームディアスでコンピュータ処理を行った。動作分析を行った結果、二種類の靴の間で被験者が運動中の動きに大きな差はなかった。したがって、図2のウォーキングシューズは、普通のウォーキングシューズと同じような使用感と考えられる。
【0035】
また任意に選択した10人の学生に図2のウォーキングシューズ及び通常の底靴を有するウォーキングシューズを履かせて、それぞれ履き心地についてアンケートをとった。その結果、10人中の7人から図2のウォーキングシューズを履くと背筋が伸びて姿勢が良くなる旨の指摘があった。
【0036】
以上の実験結果から、図2のウォーキングシューズは普通のウォーキングシューズより、楽で効率の良い運動ができること、特に下肢筋群において少ない力で歩くことができることが明らかとなった。また、筋ポンプ作用が十分機能して静脈還流を促進することがわかった。さらに、普通のウォーキングシューズと変わらない歩き方、走り方ができると同時に、履くだけで背筋が伸びることも明らかとなった。以上より、本発明のウォーキングシューズは、楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるものであることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の履物であるウォーキングシューズの第一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1のウォーキングシューズの分解斜視図である。
【図3】図1のウォーキングシューズを地表面に置いた状態の側面図である。
【図4】図1のウォーキングシューズを人間が履いた状態を示す側面図である。
【図5】本発明の履物であるウォーキングシューズの第二実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の履物であるサンダルの実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の履物に用いるシャンクの第一の他の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の履物に用いるシャンクの第二の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明の履物に用いるシャンクの第三の他の例を示す斜視図である。
【図10】本発明の履物に用いるシャンクの第四の他の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の履物であるウォーキングシューズの第三実施形態を示す分解斜視図である。
【図12】図11のウォーキングシューズの横断面図である。
【図13】図12中P部の拡大横断面図である。
【図14】図11のウォーキングシューズを人間が履いて歩行している状態を示す側面図である。
【図15】図14のQ部の拡大断面図である。である。
【図16】図14のR部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ウォーキングシューズ
2 アッパー
21 アッパー上部
22 アッパー底部
31 踏付部
32 踵部
4 シャンク
41,46 貫通孔
45 収納穴
5 インソール
53 収納穴
6 空気ポンプ
61 ポンプ本体部
63 排気通路部
65 逆止弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーキングシューズ、通勤靴及びサンダル等の履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多忙な現代人にとって健康維持は最も大きな関心事の一つである。健康を維持するためには日頃から適度な運動を行うことが重要である。過度の運動によって腰や膝を痛めてしまったのでは元も子もない。そこで、健康維持の一環として比較的足腰に負担をかけないウォーキングを楽しむ人口が増えてきている。ウォーキングは心肺機能の増進や、発汗による新陳代謝の促進、脂肪燃焼、ストレス解消などの効果がある。また、例えばマイカー通勤から電車通勤に切り替えて駅から職場まで徒歩で通勤する等、気軽に誰でも実践できる万人向けの健康法である。
【0003】
一方で、健康を維持するには継続して適度の運動を行うことが重要である。いくら手軽なウォーキングとはいえ、歩行自体が苦痛であっては長続きしない。すなわち、楽に歩行できることがウォーキングの習慣化には重要であり、そのためにはウォーキングに合った(履物)を選択することが必要となる。有酸素運動であるウォーキングは長時間続けて行うことでより脂肪燃焼効果等が高まるという側面もあり、この点からも楽に歩行できる靴が望まれている。
【0004】
このような問題に対処し、楽な歩行を可能にするものとして、下記特許文献1に記載された発明がある。特許文献1には、靴底を中空に形成し軽量化を図るとともに、上下面の対向位置にすり鉢状有底の穴を複数個有する樹脂製中空踵部材を踵部に設けることで、運動靴として安定した走りや歩行ができる旨が記載されている。
【0005】
この発明によれば、ある程度楽に歩行できるようになる。しかし、歩行が楽でありながらも、より血行を促進して新陳代謝を促すことが求められている。また、内蔵への負担を考慮すると背筋の伸びた姿勢で歩行可能な履物であることも必要である。
【0006】
また、本願発明の一構成要素である独立した踏付部と踵部とを有する履物については特許文献2や特許文献3に記載されている。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3046634号公報
【特許文献2】実公昭38−27807号公報
【特許文献3】特許第2949164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるウォーキングシューズ等の履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、踏付部と踵部とに分離された靴底を有する履物であって、これら踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されてなる履物とした。
【0010】
靴底が踏付部と踵部とに分離されていることで、履くと背筋が伸びるとともに軽量かつ歩行しやすい履物となる。また、履いて歩行することにより、足裏がマッサージされて血行が促進されるとともに、母趾球を鍛えることができる履物となる。さらに、踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されてなることで、より、歩行しやすくなるとともに足裏がよりマッサージされて血行がさらに促進されることとなる。加えて、不踏部のシワやタルミを防止することもできる。ここで、「踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されて」とは、踏付部と踵部との間(例えば、踏付部上部と踵部上部との間)にシャンクが直接架設されているだけでなく、踏付部と踵部の上側に設けられたアッパー底部(後述)を介して間接的に架設されていることも含む。また、板バネ材としてのシャンクは、外力が加えられていない自然状態のときには板状であり、歩行中に生じる履物の長手方向の撓みによって外力が加えられ、この撓みに追随して凹状や凸状に変形可能なものである。そして、弾性限界内の変形において、外力から開放されると板状に復帰するものである。
【0011】
このとき、踏付部のつま先が斜め上方を向いており、踏付部底面と、地表面とのなす角度が5〜45度である履物とすることができる。これにより、一層歩行しやすい履物となる。
【0012】
踏付部及び踵部の土踏まず側の対向面は、下方に向かって踏付部と踵部との間の空間が広がるように切り欠かれている履物とすることが好ましい。これにより、背筋が伸びた状態で一層楽に歩行できるとともに、足裏のマッサージ効果が増幅されて血行が一層促進される。
【0013】
シャンクは、チタン又はチタン合金製とすることも好ましく、樹脂製とすることも好ましい。チタンやチタン合金は軽量であり、板バネ材として用いた場合の復元力も強い。これによって、一層歩行しやすくなると同時により血行が促進される。また、歩行時の疲労も低減される。シャンクが樹脂製の場合は材料費が安価で加工もしやすい。このため、歩行しやすく血行促進効果のある履物を安価に提供できる。
【0014】
シャンクには、複数個の孔が設けられてなる履物とすることも好ましい。これによって、履物内部のムレを低減することができる。また、より軽量な履物となり一層歩行しやすくなる。
【0015】
このとき、シャンクの上側又は下側には、ポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工した連続多孔質構造膜が設けられてなる履物とすることができる。ポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工した連続多孔質構造膜は、水の浸入を防ぐ撥水特性と、水蒸気を透過させる透湿性を併せ持っており、かつ、多孔質構造を形成する空孔が連続しているために気体をよく透過するという特徴を有する。これにより、履物内部のムレを一層低減することができるとともに、履物内部に雨水等が浸入しにくくなる。
【0016】
シャンクの表面には複数個の突起が設けられており、該突起が上側を向くようにシャンクが架設されてなる履物とすることも好ましい。これによって、一層足裏がマッサージされて血行が促進される。
【0017】
シャンクには、履物の長さ方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる履物とすることも好ましい。これにより、足裏にフィットする履物となる。
【0018】
シャンクには、履物の幅方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる履物とすることも好ましい。これにより、足裏にフィットする履物になる。また、一層足裏がマッサージされて血行を促進することができる。
【0019】
シャンクの上にはインソールが載置されており、シャンクとインソールの間に設けられた空間に空気ポンプが取り付けられ、歩行により前記空気ポンプの圧縮、開放が繰り返されて、履物内部に空気が断続的に送り込まれる履物とすることも好ましい。これにより、安定した歩行を確保しつつ履物内部のムレを一層低減することができる。具体的には、シャンクとインソールの間に設けられた空間は、シャンク又はインソールに空気ポンプを収納する収納穴を設けて形成すればよく、空気ポンプは、下側に空気吸入口と逆止弁、上側に複数個の空気排出口が設けられてなり、シャンクおよび履物の底の前記空気吸入口に該当する位置ならびにインソールの前記複数個の空気排出口に該当する位置にそれぞれ貫通孔が設けられた履物とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるウォーキングシューズ等の履物を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の履物を詳細に説明する。図1は本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第一実施形態を示す外観斜視図、図2は図1のウォーキングシューズ1の分解斜視図、図3は図1のウォーキングシューズ1を地表面9に置いた状態の側面図、図4は図1のウォーキングシューズ1を人間8が履いた状態を示す側面図、図5は本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第二実施形態を示す分解斜視図である。また、図6は本発明の履物であるサンダル7の実施形態を示す分解斜視図である。図7は本発明の履物に用いるシャンク4の第一の他の例を示す斜視図、図8は本発明の履物に用いるシャンク4の第二の他の例を示す斜視図、図9は本発明の履物に用いるシャンク4の第三の他の例を示す斜視図、図10は本発明の履物に用いるシャンク4の第四の他の例を示す斜視図である。図11は本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第三実施形態を示す分解斜視図、図12は図11のウォーキングシューズ1の横断面図、図13は図12中P部の拡大横断面図、図14は図11のウォーキングシューズ1を人間8が履いて歩行している状態を示す側面図、図15は図14のQ部の拡大断面図、図16は図14のR部の拡大断面図である。
【0022】
まず、図1〜図4を用いて、本発明の履物であるウォーキングシューズ1の第一実施形態について説明する。本実施形態のウォーキングシューズ1は、図1及び図2に示すように、アッパー2(21,22)と、踏付部31と踵部32とに分離された靴底と、板バネ材としてのシャンク4とからなる。図2に示すように、アッパー2は、底が開放されているアッパー上部21と、アッパー上部21の底を塞ぐアッパー底部22とからなり、ともに通気性の良いメッシュ等の布や耐久性に優れた皮革等の材料で構成することができる。アッパー上部21とアッパー底部22とは縫製によって接合されることとなる。靴底は互いに独立した踏付部31と踵部32とから構成されており、それぞれアッパー底部22の下側に固着される。土踏まず部222には靴底が存在しない。踏付部31と踵部32の材料として、合成ゴム等が使用できる。板バネ材としてのシャンク4はアッパー底部22の上面に取り付けられて、アッパー底部22を介して踏付部31と踵部32との間に間接的に架設された状態となる。その上には、ウレタンフォーム51と木綿繊維のメッシュ52とからなるインソール5が載置され、歩行等の衝撃から足を保護すると同時に、足裏からの汗を吸収するようにしている。シャンク4の材質は板バネ材としての柔軟性と復元性があれば特に制限されず、金属や樹脂等が使用できる。金属としてはチタンやチタン合金、ステンレス鋼等が使用できる。本実施の形態では、シャンク4として厚さ0.5mmのチタンを使用している。シャンク4がチタン製の場合、その厚みは0.2〜3mmが好ましい。0.2mmより厚いと板バネ材としての十分な復元力が得られ、3mmより薄いと歩行によって十分に変形することとなり、歩行しやすく、かつ、十分な血行促進効果が得られる。シャンク4の厚みはより好ましくは0.3〜1mmである。また、シャンク4が樹脂製の場合、樹脂としては、板バネ材としての柔軟性と復元性があれば特に制限されないが熱可塑性エラストマー、ゴム及び熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、飽和ポリオレフィン系ゴム、α−オレフィン・ジエン共重合体ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン・ジエン共重合体系ゴム、ブチル系ゴム、クロロプレン系ゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、ウレタン系ゴム等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS、ポリプロピレン,ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、フッ素樹脂が挙げられる。なかでも強靭で耐衝撃性・曲げ疲労特性に優れるABS樹脂がより好ましい。
【0023】
図3に示すように、踏付部31のつま先312は斜め上方を向いており、踏付部31の底面314と、地表面9とのなす角度θは20度であるがこれに限定されない。踏付部31の底面314と地表面9とのなす角度は5〜45度が好ましい。5度より大きいと楽に歩行でき、30度より小さいとウォーキングシューズを履いたときにつま先に負担をかけない。踏付部31の底面314と地表面9とのなす角度は、より好ましくは10〜30度である。また、踏付部31と踵部32との土踏まず部222側の対向面は、下に向かって踏付部31と踵部32との間の空間が広がるように切り欠き311,321が設けられている。
【0024】
このウォーキングシューズ1を人間8が履いた状態を図4に示す。土踏まず部222に靴底がないため、人間8の体重によって土踏まず部222が下がり、それに伴って踏付部31と踵部32とが外側に広がることとなる。踏付部31及び踵部32の土踏まず部222側の面、すなわち踏付部31と踵部32との対向する面を切り欠いているため、踏付部31と踵部32とが外側により広がりやすくなる。これにより、背筋が伸びた状態で一層楽に歩行できると考えられる。また、普段あまり使用しない土踏まずの筋肉を緊張、弛緩させることとなり下肢部の血行が良くなると考えられる。シャンク4は図4の状態にある土踏まず部222を、歩行時に足を上げた際、板バネ材としての復元力により図3の土踏まず部222の状態に強制的に戻す作用をすることとなる。
【0025】
上記ウォーキングシューズ1の第一実施形態では、シャンク4がアッパー底部22の上面に取り付けられていたが、これに制限されず、例えば図5に示すように、アッパー底部22の底面に取り付けられてもよい。また本発明はウォーキングシューズ1のみならず、履物全般について適用可能である。図6にはサンダル7としての実施形態を示している。本実施形態のサンダル7も、アッパー上部210と、アッパー底部220と、踏付部310と踵部320とに分離された靴底と、板バネ材としてのシャンク40とからなる。
【0026】
上記実施形態では表面が平らなシャンク4,40を使用したが、これに制限されない。シャンク4,40の他の例を図7〜図10に示す。図7のシャンク4の第一の他の例では、シャンク4に多くの貫通孔41を設けている。これにより、ウォーキングシューズ1内部のムレを改善でき、より快適な歩行が可能となる。ウォーキングシューズ1内部への雨水等の浸食を防止するため、シャンク4の上側又は下側に、アッパー底部22の全面に亘ってポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工してなる連続多孔質構造膜を設けることができる。前記連続多孔質構造膜としては、ゴアテックス(登録商標)を例示することができる。
【0027】
図8のシャンク4の第二の他の例では、シャンク4に微小の突起42を多数設けている。これにより、血行促進効果が得られより快適な歩行が可能となる。図9及び図10のシャンクは、複数個の溝43,44を設けたものであり、足裏にフィットするウォーキングシューズ1となる。
【0028】
上述した本発明の特徴を活かしつつ、さらに歩行を快適にするための本発明のウォーキングシューズ1の第三実施形態を図11〜図13に示す。図11は本発明のウォーキングシューズ1の第三実施形態を示す分解斜視図、図12は図11のウォーキングシューズ1の横断面図であり、そのP部拡大横断面図が図13である。ウォーキングシューズ1の第三実施形態では、シャンク4とインソール5の間に空気ポンプ6を設けて、歩行により前記空気ポンプ6の圧縮、開放を繰り返して、ウォーキングシューズ1内部に外部の空気を断続的に送り込むことを特徴とする。図11に示すように、空気ポンプ6はゴム製のポンプ本体部61と、その左右から突出してそれぞれの先端部の上側に複数個の排気口62を有する排気通路部63とからなる。排気通路部63は、排気通路を確保する目的から比較的硬質なプラスチック等の材料で構成されることが好ましい。また、靴底3の形状等に合わせて、踵部32側の排気通路部63をその途中から下方に折曲げて形成している。ポンプ本体部61の下側には吸引口64が設けられており、この吸引口64に接してポンプ本体部61の内側に逆止弁65が設けられている。シャンク4上面にはポンプ本体部61と左右の排気通路部63の形状に合わせた収納穴45が、インソール5下面にはポンプ本体部61の形状に合わせた収納穴53が設けられており、ポンプ本体部61がシャンク4とインソール5の間に収納されるようにしている。本実施形態では、シャンク4の材質として加工しやすくかつ強靭で耐衝撃性と曲げ疲労特性に優れたABS樹脂を採用しており、その厚みは2.5mmである。シャンク4がABS樹脂製の場合、その厚みは0.5〜5mmが好ましい。0.5mmより厚いと板バネ材としての十分な復元力が得られる。5mmより薄いと歩行によって十分に変形し、歩行の邪魔にもならないため、歩行しやすく、かつ、十分な血行促進効果が得られる。シャンク4の厚みはより好ましくは1〜3mmである。また、シャンク4およびアッパー底部22の前記空気吸引口64に該当する位置にそれぞれ貫通孔46,221を設け、インソール5(履物の底)の前記複数個の空気排気口62に該当する位置に複数個の貫通孔54を設けている。
【0029】
以下図14〜図16を使用して歩行時の空気ポンプ6の働きを説明する。図14は図11に示したウォーキングシューズ1を人間8が履いて歩行している状態を表している。右足81は地表面9を蹴り上げており、左足82は地表面9から離れ空中に位置している状態である。
【0030】
図14のQ部の拡大断面図を図15に示す。Q部は、地表面9を蹴り上げている右足81側のウォーキングシューズ1等の部分である。シャンク4とインソール5が凹形状に曲がり、かつ右足81の裏がインソール5の上側からポンプ本体部61を押すことで、ポンプ本体部61内の空気が左右の排気通路部63を通り、排気口62を経てインソール5の貫通孔54から噴出(図11参照)することとなる。このとき、逆止弁65は閉じているため吸引口64からは空気が殆ど噴出しない。図16には図14のR部の拡大断面図を示している。R部は、地表面9から離れ空中に位置している左足82側のウォーキングシューズ1の部分である。地表面9を蹴り上げて図15の拡大断面図と同様の状態であったポンプ本体部61は、地表面9から離れ空中に位置すると、左足82の圧力から開放され、シャンク4の復元力により図16の状態となる。この際、ゴム製のポンプ本体部61がもとの形に復元することで内部の気圧が低下し、逆止弁65が開いて空気がポンプ本体部61に流れ込むこととなる。この状態から左足82が着地し地表面9を蹴り上げると図15の拡大断面図と同様の状態となり、ポンプ本体部61内部の空気がインソール5の貫通孔54から噴出(図11参照)することとなる。体重がかかる踏付部31や踵部32の上にポンプ本体部61を設けた場合には、歩行が不安定になりやすい。しかし、図11のウォーキングシューズ1はあまり体重のかからない土踏まず部222にポンプ本体部61を設けているため安定した歩行ができる。また、右足81の裏がインソール5の上側からポンプ本体部61を押すことに加えて、シャンク4とインソール5が凹形状に曲がることでポンプ本体部61が圧縮され、より多くの空気を靴内部に噴出させることができるのである。
【0031】
図2のウォーキングシューズ1を使用して歩行中の生体反応を計測する実験を行った。被験者は20歳の女性で普段の生活で特別な運動は行っていない者であった。被験者に図2のウォーキングシューズ及び通常の靴底を有するウォーキングシューズを履かせてそれぞれ歩行運動を行わせた。歩行運動は、座位安静(5分)→立位安静(5分)→40m/分歩行(4分)→60m/分歩行(4分)→80m/分歩行(4分)→100m/分歩行(4分)→120m/分歩行(4分)の条件で行った。測定項目として、酸素摂取量、筋電図及びビデオ撮影による動作分析を行い両ウォーキングシューズの比較を行った。ここで、40m/分はゆっくりとした歩行、60m/分は普通の歩行速度、80m/分は少し早めの歩行、100m/分は急ぎ足、120m/分はジョギング程度の速度である。
【0032】
まず、上記運動の各段階における定常状態の酸素摂取量を測定した。測定装置として、ミナト医科学社製呼吸代謝測定装置を使用した。安静時の酸素摂取量は300mL/分以下であり、安静状態であることが立証された。上記運動の全ての歩行段階で図2のウォーキングシューズを履いたほうが通常の靴底を有するウォーキングシューズを履いた場合より低い酸素摂取量を示した。この結果から、図2のウォーキングシューズはエネルギー消費の点で運動効率の高い靴であることが判明した。
【0033】
次に筋電図を測定した。測定装置は日本光電社製8chマルチテレメーターを用いて、データレコーダに記録した。その結果、上記運動の全ての歩行段階で筋電図の振幅(筋収縮の強さの指標)は図2のウォーキングシューズを履いたほうが小さい傾向にあった。特に、歩行運動の中心となる大腿伸筋群(大腿直筋、内側広筋、外側広筋)において、図2のウォーキングシューズを履いたほうが弱い筋肉収縮で歩行している傾向であった。また、図2のウォーキングシューズを履いたほうが拮抗作用が顕著に現れ、筋の弛緩基がはっきり現れることが明らかとなった。このことは、筋ポンプ作用が十分に機能して整脈還流が滑らかに行われていること、すなわち血行が促進されていることを示している。
【0034】
ビデオ撮影による動作分析は、8mmビデオで撮影して、その画像をデイケイエイチ社製ソフト、フレームディアスでコンピュータ処理を行った。動作分析を行った結果、二種類の靴の間で被験者が運動中の動きに大きな差はなかった。したがって、図2のウォーキングシューズは、普通のウォーキングシューズと同じような使用感と考えられる。
【0035】
また任意に選択した10人の学生に図2のウォーキングシューズ及び通常の底靴を有するウォーキングシューズを履かせて、それぞれ履き心地についてアンケートをとった。その結果、10人中の7人から図2のウォーキングシューズを履くと背筋が伸びて姿勢が良くなる旨の指摘があった。
【0036】
以上の実験結果から、図2のウォーキングシューズは普通のウォーキングシューズより、楽で効率の良い運動ができること、特に下肢筋群において少ない力で歩くことができることが明らかとなった。また、筋ポンプ作用が十分機能して静脈還流を促進することがわかった。さらに、普通のウォーキングシューズと変わらない歩き方、走り方ができると同時に、履くだけで背筋が伸びることも明らかとなった。以上より、本発明のウォーキングシューズは、楽に歩行できると同時により血行を促進して新陳代謝を促すことができ、かつ、背筋の伸びた姿勢で歩行することができるものであることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の履物であるウォーキングシューズの第一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1のウォーキングシューズの分解斜視図である。
【図3】図1のウォーキングシューズを地表面に置いた状態の側面図である。
【図4】図1のウォーキングシューズを人間が履いた状態を示す側面図である。
【図5】本発明の履物であるウォーキングシューズの第二実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の履物であるサンダルの実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の履物に用いるシャンクの第一の他の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の履物に用いるシャンクの第二の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明の履物に用いるシャンクの第三の他の例を示す斜視図である。
【図10】本発明の履物に用いるシャンクの第四の他の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の履物であるウォーキングシューズの第三実施形態を示す分解斜視図である。
【図12】図11のウォーキングシューズの横断面図である。
【図13】図12中P部の拡大横断面図である。
【図14】図11のウォーキングシューズを人間が履いて歩行している状態を示す側面図である。
【図15】図14のQ部の拡大断面図である。である。
【図16】図14のR部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ウォーキングシューズ
2 アッパー
21 アッパー上部
22 アッパー底部
31 踏付部
32 踵部
4 シャンク
41,46 貫通孔
45 収納穴
5 インソール
53 収納穴
6 空気ポンプ
61 ポンプ本体部
63 排気通路部
65 逆止弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏付部と踵部とに分離された靴底を有する履物であって、これら踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されてなる履物。
【請求項2】
踏付部のつま先が斜め上方を向いており、踏付部底面と地表面のなす角度が5〜45度である請求項1記載の履物。
【請求項3】
踏付部及び踵部の土踏まず側の対向面は、下方に向かって踏付部と踵部との間の空間が広がるように切り欠かれている請求項1記載の履物。
【請求項4】
シャンクは、チタン又はチタン合金製である請求項1記載の履物。
【請求項5】
シャンクは、樹脂製である請求項1記載の履物。
【請求項6】
シャンクには、複数個の孔が設けられてなる請求項1記載の履物。
【請求項7】
シャンクの上側又は下側には、ポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工した連続多孔質構造膜が設けられてなる請求項6記載の履物。
【請求項8】
シャンクの表面には複数個の突起が設けられており、該突起が上側を向くようにシャンクが架設されてなる請求項1記載の履物。
【請求項9】
シャンクには、履物の長さ方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる請求項1記載の履物。
【請求項10】
シャンクには、履物の幅方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる請求項1記載の履物。
【請求項11】
シャンクの上にはインソールが載置されており、シャンクとインソールの間に設けられた空間に空気ポンプが取り付けられ、歩行により前記空気ポンプの圧縮、開放が繰り返されて、履物内部に空気が断続的に送り込まれる請求項1記載の履物。
【請求項12】
空気ポンプは、下側に空気吸入口と逆止弁、上側に複数個の空気排出口が設けられてなり、シャンクおよび履物の底の前記空気吸入口に該当する位置ならびにインソールの前記複数個の空気排出口に該当する位置にそれぞれ貫通孔が設けられた請求項11記載の履物。
【請求項1】
踏付部と踵部とに分離された靴底を有する履物であって、これら踏付部と踵部との間に板バネ材としてのシャンクが架設されてなる履物。
【請求項2】
踏付部のつま先が斜め上方を向いており、踏付部底面と地表面のなす角度が5〜45度である請求項1記載の履物。
【請求項3】
踏付部及び踵部の土踏まず側の対向面は、下方に向かって踏付部と踵部との間の空間が広がるように切り欠かれている請求項1記載の履物。
【請求項4】
シャンクは、チタン又はチタン合金製である請求項1記載の履物。
【請求項5】
シャンクは、樹脂製である請求項1記載の履物。
【請求項6】
シャンクには、複数個の孔が設けられてなる請求項1記載の履物。
【請求項7】
シャンクの上側又は下側には、ポリテトラフロロエチレン樹脂を延伸加工した連続多孔質構造膜が設けられてなる請求項6記載の履物。
【請求項8】
シャンクの表面には複数個の突起が設けられており、該突起が上側を向くようにシャンクが架設されてなる請求項1記載の履物。
【請求項9】
シャンクには、履物の長さ方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる請求項1記載の履物。
【請求項10】
シャンクには、履物の幅方向に対応する方向の溝が複数個設けられてなる請求項1記載の履物。
【請求項11】
シャンクの上にはインソールが載置されており、シャンクとインソールの間に設けられた空間に空気ポンプが取り付けられ、歩行により前記空気ポンプの圧縮、開放が繰り返されて、履物内部に空気が断続的に送り込まれる請求項1記載の履物。
【請求項12】
空気ポンプは、下側に空気吸入口と逆止弁、上側に複数個の空気排出口が設けられてなり、シャンクおよび履物の底の前記空気吸入口に該当する位置ならびにインソールの前記複数個の空気排出口に該当する位置にそれぞれ貫通孔が設けられた請求項11記載の履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−34531(P2006−34531A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217690(P2004−217690)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(504037922)株式会社荘快堂 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(504037922)株式会社荘快堂 (5)
【Fターム(参考)】
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