説明

吐水装置

【課題】給湯装置からの高温水が水栓に到達するまでの間冷たい水が吐水されることによって使用者に対して冷たい思いをさせることなく手洗い等を行うことが可能である吐水装置を提供する。
【解決手段】水栓12と、スイッチ48と、給湯器14からの高温水を水栓12に送る主流路16と、主流路16から分岐した分岐流路20と、吐水指示に基づき分岐流路20の水を用いてスチーム発生させるスチーム発生器32及びスチームを水栓12に送るスチーム流路42を備えたスチーム噴射装置44と、流路切換えをなす開閉バルブ26,28とを備えて吐水装置を構成する。そして初期に水栓12よりスチーム噴射し、主流路16の水が設定温度に達したところで流路切換えを行って水栓12から高温水を吐水可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吐水装置に関し、詳しくは吐水具からスチーム噴射する機能を備えた吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器(給湯装置)からの高温水を例えば洗面器に取り付けた混合水栓(吐水具)(以下単に水栓とする)に導いて吐水(通常は水(冷水)と混合し適温水として吐水)し、手洗い等を行う際に、給湯器と混合水栓との間の距離が長いために、給湯器からの高温水がなかなか水栓まで到達せず、そのために吐水初期に冷たい水が出てしまうといった問題を生じていた。
【0003】
このため使用者は目的とする適温水が吐水されるまでの間、水栓からの吐水の温度を手で触って確かめながら適温水が出るまで長い時間待たなければならず、水栓使用に際して面倒を伴い、また目的とする適温水が出るまでの間に吐水された冷たい水が捨て水となってしまって不経済であるといった問題があった。
【0004】
対策として、洗面化粧台のキャビネット内部に電気温水器を設置してそこに高温水を貯えておき、水栓使用する際に近い位置から高温水を水栓に供給するといったことも従来行われている。
しかしながらこの場合、電気温水器に常時電気エネルギーを投入しておかなければならず、しかもこの電気温水器は多量の高温水をそこに貯えておくものであるためエネルギー消費も多いといった問題がある。
【0005】
尚、本発明に関連する先行技術として下記特許文献1,特許文献2,特許文献3に開示されたものがある。
特許文献1に開示のものは、混合水栓のシャワーヘッドに繋がるシャワーホース内部の残水を利用するようになしたもので、この特許文献1に開示のものでは、シャワーヘッドにミスト水を噴射するミスト吐水部を備えておき、ホース内部の残水をミスト吐水部からミスト噴射するようになしたものである。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは、頭髪の寝癖を直す目的でミスト噴射を行うもので、しかもこのミストは冷水をそのままミスト化して噴射するものであり、本発明とは基本的に異なっている。
【0006】
特許文献2に開示のものは、トイレのロータンクの上部に設置される手洗装置にミスト噴射するミスト吐水口を設けたものであるが、これもまた冷水をそのままミスト化して吐水するものであり本発明と異なっている。
【0007】
一方特許文献3に開示のものは、可撓性のホースの先端部に設けたミスト噴出ヘッドからスチームミストを噴出し、風邪のための吸引や毛髪セットのため、或いは肌を潤すため等に用いるようになしたもので、この特許文献3に開示のものは特許文献1,特許文献2と異なってスチームミストを噴射する。
但しこれら特許文献1,特許文献2,特許文献3に開示のものは、ミスト噴射後に給湯装置からの高温水の吐水に切り換えるといったものではなく、この点において本発明と基本的に相違している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−56025号公報
【特許文献2】特開2002−161564号公報
【特許文献3】特開2007−54238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、吐水具に対して遠い位置にある給湯装置からの高温水が吐水具に到達する間にも、使用者に対して冷たい思いをさせることなく手洗い等を行うことが可能で、しかもその際の使用エネルギーが僅かであり、また手洗い等のための所要時間を短くできるとともに、給湯装置からの高温水の使用量も節減できて経済性にも優れており、手洗い等を行うに際して使い勝手の良い吐水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、(イ)吐水具と、(ロ)吐水指示手段と、(ハ)給湯装置からの高温水を該吐水具に送る主流路と、(ニ)該主流路から分岐した分岐流路と、(ホ)該主流路における該分岐流路の分岐部の上流部の水を温度検知するための温度センサと、(ヘ)(a)該分岐流路に連通して設けられ、吐水指示に基づき該分岐流路の水を用いてスチーム発生させるスチーム発生器、及び(b)発生したスチームを前記吐水具に送るスチーム流路を備え、該吐水具からスチームをミスト状に噴射するスチーム噴射装置と、(ト)前記温度センサによる検知温度が設定温度に達するまでの間で、前記主流路の前記分岐部よりも下流部を閉、前記分岐流路を開とし、該設定温度に達したところで該分岐流路を閉、該下流部を開に流路切換可能な切換手段と、を有し、前記検知温度が設定温度に達するまでの間で前記吐水具よりスチーム噴射し、該設定温度に達したところで流路切換えを行ってスチーム発生停止の下で該吐水具から高温水を吐水可能となしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記分岐流路は排水流路に連絡されており、前記スチーム発生器が取水流路にて該分岐流路に連絡されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項2において、前記分岐流路にはタンクが設けられていて、該分岐流路の水が一旦該タンクに貯えられた後前記排水流路へと流出するようになしてあり、該タンクには前記取水流路が接続されて、該タンクの水の一部が前記スチーム発生器側に取水されるようになしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、(イ)吐水具と、(ロ)吐水指示手段と、(ハ)給湯装置からの高温水を該吐水具に送る主流路と、(ニ)該主流路に設けられ、該主流路の流入水を貯水する貯水タンク、貯水を温度検知する温度センサ及び吐水指示に基づき貯水を加熱するヒータを備えた貯水昇温タンクと、(ホ)前記主流路から分岐した分岐流路と、(へ)(a)該分岐流路に連通して設けられ、吐水指示に基づき該分岐流路の水を用いてスチーム発生させるスチーム発生器、及び(b)発生したスチームを前記吐水具に送るスチーム流路を備え、前記吐水具からスチームをミスト状に噴射するスチーム噴射装置と、(ト)前記貯水の検知温度が設定温度に達するまでの間、前記主流路の前記貯水昇温タンクよりも下流部を閉、前記分岐流路を開とし、設定温度に達したところで該分岐流路を閉、該下流部を開に流路切換可能な切換手段と、を有し、前記検知温度が設定温度に達するまでの間で前記吐水具よりスチーム噴射し、該設定温度に達したところで流路切換えを行ってスチーム発生停止の下で該吐水具から高温水を吐水可能となしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記切換手段が、前記主流路の前記下流部に設けられた開閉バルブと、前記分岐流路に設けられた開閉バルブとを有しており、一方の開閉バルブを閉,他方の開閉バルブを開又はその逆に切り換えることで流路切換えをなすものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0015】
以上のように請求項1の吐水装置は、主流路から分岐流路を分岐させて、分岐流路の水を用いてスチーム発生させ且つ吐水具に供給してスチーム噴射させるスチーム噴射装置と、主流路と分岐流路とで流路切換えをなす切換手段とを設け、給湯装置と吐水具とを繋ぐ主流路の水に対する検知温度が設定温度に達するまでの間で吐水具からスチーム噴射し、そして検知温度が設定温度に達したら流路切換えを行って、スチーム発生停止の下で給湯装置からの高温水を吐水具からそのまま又は冷水と混合して吐水可能となしたものである。
【0016】
本発明の吐水装置によれば、給湯装置からの高温水が吐水具に到達するまでの間の吐水初期に吐水具からスチームをミスト状に噴射し、手洗いや洗面等を行う際にそのスチームミストによって予備洗いを行うことができる。
このときのミストはスチームミストであって温かいものであり、使用者はそのスチームミストにて快適に予備洗い等を行うことができる。
【0017】
而して一定時間経つと給湯装置からの高温水が吐水具に到達して、以後はその高温水を用いて手洗い等の本洗いを行うことができる。
その際、初期のスチームミストを用いた予備洗いで手等に付着した汚れを浮き上らせることができ、従ってその後の高温水を用いた本洗いでは僅かな高温水の使用量で手洗い等を済ませることができる。
従ってこの請求項1によれば高温水の使用量を少なくすることができ、経済性を高めることができる。
また手洗い等を短時間で済ませることができ、吐水装置の使い勝手が良好となる。
【0018】
また従来のように高温水が吐水具に到達するまで長い時間待たなくてもよく、その間にイライラしたり、吐水に何度も手を触れて吐水の温度を確かめたりとかいった行為を行わなくてもよく、快適に吐水装置を使用することが可能となる。
【0019】
またスチーム発生に際して使用する水の量は僅かで済むため(例えばスチーム発生器に数cc程度の水を供給することでスチーム発生させることができる)、経済性も高く、またこのスチーム発生器は吐水指示手段からの吐水指示で作動開始即ちスチーム発生開始するため、もともと使用エネルギーが少なくて済むのに加えて所要作動時間も短いために投入エネルギーも僅かで済む。
【0020】
尚この吐水装置において、スチーム噴射と高温水を含んだ水の吐水とは別々の吐水口から行っても良いし、或いは場合によって1つの吐水口から行うようになしても良い。
尚主流路の水を温度検知するための温度センサの設置位置は、給湯装置から吐水具側にできるだけ離れた位置の水の温度を検知できるような位置としておくことが望ましい。
具体的な設置位置としては主流路における分岐流路の分岐部ないしその直近上流位置が好適である。
【0021】
また吐水装置使用開始時に分岐流路が開、主流路における分岐部より下流部が閉とされる場合には、分岐流路に温度センサを設けて、主流路の水の温度を間接的に知るようになすことも場合により可能である。
【0022】
請求項1において、上記吐水具は洗面器に設けておき、洗面器に向けて吐水するものとなしておくことができる。
また上記の分岐流路は排水流路に連絡しておき、更にスチーム発生器を取水流路にて分岐流路に連絡しておくことができる(請求項2)。
【0023】
スチーム発生に必要な水の量は僅かであり、従って主流路内に残流している冷たい水を吐水具から初期に出さないようにするためには、主流路内の冷たい残水の多くを排出することが必要である。
【0024】
この請求項2では、分岐流路を通じて主流路から取り出した多くの冷たい残水を、その排水流路を通じて外部に排出することができ、そしてその一部だけを用いてスチーム発生させるようになすことができる。
【0025】
この場合において分岐流路にはタンクを設けておいて、分岐流路に流れ込んだ水を一旦そのタンクに貯えた後、排水流路へと流すようにし、そしてタンク内に貯留した水を取水流路を通じてスチーム発生器側に供給するようになすことができる(請求項3)。
【0026】
一方請求項4の吐水装置は、主流路に、主流路の流入水を貯えてヒータによる加熱で昇温させる貯水昇温タンクを設けておき、吐水指示に基づいてヒータにより貯水を加熱開始して、貯水の温度が設定温度に到達したところで給湯器からの水を貯水昇温タンクを経由して吐水具へと送るようになし、また貯水の温度が設定温度に到達する前即ち吐水初期においては、スチーム発生器でスチーム発生させて吐水具からスチームミストを噴射するようになしたもので、この請求項4の吐水装置によれば、主流路に残っていた冷たい残水を捨て水として排出するのを回避することが可能となる。
【0027】
例えば貯水昇温タンクの容量を数リットル程度の容量としておけば、主流路に残っていた冷たい残水を貯水昇温タンクに導いてそこに収容することができ、そしてこれをヒータによる加熱で昇温させた上で吐水具に供給することができる。これにより主流路に残った冷たい残水を捨て水として系外に排出することを不要となすことができる。
【0028】
この請求項4の吐水装置にあっては、貯水昇温タンクで貯水を設定温度まで昇温させるのに若干の時間(例えば30秒程度)かかることから、その間に分岐流路に分岐させた水をスチーム発生器でスチーム化して吐水具に送り、吐水初期においてスチームミストを吐水具から噴射させる。
【0029】
従ってこの請求項4の吐水装置にあっても、吐水具の使用初期に噴射したスチームミストを用いて手等の予備洗いを行うことができる。
そしてその後において貯水昇温タンクで加熱された高温水、若しくは貯水昇温タンクを通過し、そこで貯水昇温タンク内の高温水と混合することで暖められた主流路の水(貯水昇温タンクよりも上流部の水)を吐水具に送ってそこから吐水させ、本洗いを行うことができる。
【0030】
この請求項4において、上記分岐流路は貯水昇温タンクから延び出させておくことができる。
またスチーム発生器は、取水流路を介することなく直接に分岐流路上に設けておくことができる。
【0031】
更にこの請求項4において、貯水昇温タンクへの主流路の水の流入温度を検知するための第2の温度センサを設けておき、その第2の温度センサが、給湯装置からの高温水の到達を検知したところで、貯水昇温タンクのヒータによる加熱を停止させるようになしておくことができる。
【0032】
これら請求項1〜4の何れかにおいて、上記切換手段は、主流路からの分岐流路の分岐部に設けた1つの切換バルブ(三方バルブ)をもって構成するといったことも可能であるが、その他の手段として、請求項5に従い主流路の上記下流部に設けた開閉バルブと、分岐流路に設けた開閉バルブとを含んで構成し、一方の開閉バルブを閉、他方の開閉バルブを開又はその逆に切り換えることで流路切換えをなすものとしておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の吐水装置の全体概略図である。
【図2】同実施形態の吐水装置の作用を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本発明の他の実施形態の吐水装置の全体図である。
【図4】図3の吐水装置の作用を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗面器で、12は洗面器10に設けられた吐水具としての水栓(混合水栓)である。
14は、屋外等に設置された給湯器(給湯装置)で、16はこの給湯器14から水栓12に到る主流路で、給湯器14からの高温水はこの主流路16を通じて水栓12へと送られる。
18は、屋内において主流路16に設けられた止水栓である。
【0035】
20は主流路16から分岐した分岐流路で、22はその分岐部を表している。
24は分岐流路20に設けられたタンクで、分岐流路20を通じて取り出された水はこのタンク24に一旦貯留される。
そこに貯留された水はオーバーフローによって分岐流路20をタンク24外に流出し、更に図示を省略する排水流路へと流れ込んで、その後屋外に排出される。
【0036】
26は分岐流路20に設けられた開閉バルブ,28は主流路16に設けられた開閉バルブで何れも電気駆動のバルブであり、それぞれ制御部30に電気的に接続されて、制御部30によって動作制御される。
これら開閉バルブ26,28は両方合せて流路切換えのための切換手段をなしている。
図中22A,22Bはそれぞれ主流路16の分岐部22よりも上流部,下流部をそれぞれ表しており、開閉バルブ28はその下流部22Bに設けられている。
【0037】
切換手段をなす開閉バルブ26,28はそれぞれ次のような働きをなす。
即ち、開閉バルブ28が閉,開閉バルブ26が開とされることで、給湯器16側から主流路16を流れて来た水は分岐部22で分岐流路20に流れ込み、また開閉バルブ26を閉,開閉バルブ28を開とすることで、主流路16を分岐部22に到った水はそのまま下流部22Bを通じて水栓12へと供給される。
【0038】
32はスチーム発生器で容器34内部にIHヒータ(電磁誘導加熱ヒータ)36を有している。
このスチーム発生器32は取水流路38にて上記のタンク24に連絡されており、タンク24内の水の一部がポンプ40による汲み上げによってこの取水流路38を通じスチーム発生器32へと供給される。
【0039】
スチーム発生器32は、数cc程度の量で内部に供給された水をIHヒータ36による加熱によってほぼ瞬間的にスチームとする。
ここで発生したスチームはスチーム流路42を通じて水栓12へと送られ、水栓12の吐水口13からスチームミストとして洗面器10内に噴射される。
図1において、44はこのスチーム発生器32とスチーム流路42とを含むスチーム噴射装置を表している。
【0040】
主流路16には、分岐部22に対し直近上流部位に主流路16内の水の温度を検知する温度センサ(サーミスタ)46が設けられている。
この温度センサ46にて検知された温度は信号として制御部30に入力される。
48は、水栓12の使用者によって操作されるスイッチ(吐水指示手段)である。
【0041】
次にこの実施形態の吐水装置の作用を、図2のタイムチャートを参照して具体的に説明する。
この例では、水栓12の使用者が操作部50を開操作してスイッチ48をオン操作すると、温度センサ46により主流路16内の水が温度検知され、そしてその検知温度が設定温度未満であるときに、先ず開閉バルブ28が閉,開閉バルブ26が開とされて分岐流路20が開かれた状態となり、給湯器14からの高温水供給により主流路16内を流れる水が分岐流路20へと流れ、タンク24へと一旦貯えられる。
【0042】
ポンプ40はスイッチ48のオン操作と同時に汲み上げ開始し、タンク24内の水の一部を取り出してスチーム発生器32内に数cc程度の供給量でこれを供給する。
供給された水はスチーム発生器32でほぼ瞬間的にスチームとなり、その圧力によってスチーム流路42を流通して水栓12へと送られ、吐水口13からスチームミストとして噴射される。
尚、図2にも示しているようにスチーム発生器32はスイッチ48のオン操作に対し僅かに遅れて動作開始する。
【0043】
このようにして水栓12からスチームミストが噴射されたところで、使用者はこれを手に当てることで手を濡らし、予備洗いを行うことができる。
尚スチーム発生器32で発生したスチームは、水栓12へと送られ更に水栓12から噴射されるまでの間で冷却されて、水栓12から温度40℃程度のスチームミストとして洗面器10に向け噴射される。
【0044】
以上のようなスチームミストによる予備洗いをしている間にも、給湯装置14から送られた高温水は主流路16を下流側へと流れて来、そしてこれにより温度センサ46による主流路16の水の検知温度が設定温度に到ったところで、分岐流路20の開閉バルブ26が閉,主流路16の下流部22Bの開閉バルブ28が開となり、分岐流路20から主流路具体的には下流部22B側に流路切換えがなされる。
【0045】
従って設定温度に達した高温水は主流路16を通じて水栓12へと供給され、そこで冷水と混合され適温水とされた上で吐水口13から洗面器10へと吐水される。
使用者はこの適温水を用いて予備洗い後の本洗いを行うことができる。
作業を終えたところで使用者が操作部50を閉操作することで適温水の吐水も停止する。
尚ここでは分岐流路20から主流路16の下流部22B側に流路切換えが行われる以前のタイミングでスチーム発生器32のIHヒータ36は加熱停止する。
尚、この例では、スチームミスト及び適温水の何れも水栓12の同一の吐水口13から吐出するものとして説明したが、それぞれを別々の吐水口から吐出するようになすことも勿論可能である。
【0046】
以上のような本実施形態の吐水装置によれば、給湯器14からの高温水が水栓12に到達するまでの間の吐水初期に、水栓12からスチームをミスト状に噴射し、手洗いや洗面等を行う際にそのスチームミストによって予備洗いを行うことができる。
このときのミストはスチームミストであって温かいものであり、使用者はそのスチームミストにて快適に予備洗い等を行うことができる。
【0047】
而して一定時間経つと給湯器14からの高温水が水栓12に到達して、以後はその高温水を用いて手洗い等の本洗いを行うことができる。
その際、初期のスチームミストを用いた予備洗いで手等に付着した汚れを浮き上らせることができ、従ってその後の高温水を用いた本洗いでは僅かな高温水の使用量で手洗い等を済ませることができる。
従ってこの実施形態によれば高温水の使用量を少なくすることができ、経済性を高めることができる。
また手洗い等を短時間で済ませることができ、吐水装置の使い勝手が良好となる。
【0048】
また従来のように高温水が水栓12に到達するまで長い時間待たなくてもよく、その間にイライラしたり、吐水に何度も手を触れて吐水の温度を確かめたりとかいった行為を行わなくてもよく、快適に吐水装置を使用することが可能となる。
【0049】
またスチーム発生に際して使用する水の量は僅かで済むため経済性も高く、またスチーム発生器32はスイッチ48からの吐水指示で作動開始即ちスチーム発生開始するため、もともと使用エネルギーが少なくて済むのに加えて所要作動時間も短いために投入エネルギーも僅かで済む。
【0050】
図3は本発明の他の実施形態を示している。
この例では、主流路16に貯水昇温タンク52を設け、分岐流路20を、この貯水昇温タンク52から延び出させている。
ここではスチーム発生器32が、上記実施形態のように取水流路38を介して分岐流路20と接続されておらずに直接分岐流路20に設けられ、分岐流路20から直接水の供給を受けてスチーム発生する。
【0051】
このスチーム発生器32で発生したスチームはスチーム流路42を通じて水栓12へと送られ、そこからミスト状のスチームとして噴射される。この点は上記実施形態と同様である。
尚、分岐流路20は貯水昇温タンク52からではなく主流路16の他の部位から分岐して延び出させることもできる。
【0052】
貯水昇温タンク52は、主流路16の水を流入させて貯水する貯水タンク54と、内部の貯水を温度検知する温度センサ56と、貯水を加熱し昇温させるIHヒータ58とを有しており、内部に主流路16の水を流入させてこれを昇温させる。
この例において、貯水昇温タンク52は容量が数リットル程度のものである。
【0053】
主流路16には、この貯水昇温タンク52への水の流入部直近上流位置に、貯水昇温タンク52への流入水を温度検知する第2の温度センサ(サーミスタ)60が設けられている。
この温度センサ60及び貯水昇温タンク52のIHヒータ58、更に温度センサ56は制御部30に電気的に接続されている。
尚スチーム発生器32のIHヒータ36もまた、制御部30に電気的に接続されている。この点は上記第1の実施形態においても同様である。
62は、使用者によって操作される吐水指示手段を兼ねたスイッチである。
【0054】
次にこの実施形態の吐水装置の作用を、図4のタイムチャートを参照して以下に説明する。
この例では、使用者がスイッチ62をオン操作することで、先ず温度センサ56によって貯水昇温タンク52内の貯水温度が検知され、そしてその温度が設定温度未満であるとき、IHヒータ58が加熱動作を開始して内部の貯水の昇温を開始する。
【0055】
このとき主流路16の開閉バルブ28は閉,分岐流路20の開閉バルブ26は開とされて、主流路16の水が貯水昇温タンク52を経由して分岐流路20へと取り出され、スチーム発生器32でスチーム化されてスチーム流路42を通じ水栓12へと送られ、そこからスチームミストが洗面器10に向けて噴射される。
尚、スチーム発生器32はスイッチ62のオン操作より僅かに遅れてスチーム発生動作する。
【0056】
貯水昇温タンク52内の貯水が設定温度に達したところで、内部のIHヒータ58は加熱動作を停止し、その後に使用者が再びスイッチ62を操作することによって、そこで分岐流路20の開閉バルブ26が閉,主流路16における下流部22Bの開閉バルブ28が開となり、今度は主流路16を通じて水栓12へと水が供給される。
【0057】
このとき、設定温度に達した貯水昇温タンク52内の高温水が下流部22Bを通じて水栓12へと供給され、また貯水昇温タンク52よりも上流部22Aの水が貯水昇温タンク52を経由して下流部22Bを通じ水栓12へと供給される。
【0058】
而して貯水昇温タンク52よりも上流部に位置している主流路16内の水が残水であって冷たい水であったとしても、その水が貯水昇温タンク52を経由して流れることで、水栓12には常に一定温度以上の温度に暖められた水が供給される。
【0059】
主流路16(詳しくは上流部22A)を水が流通し始めて所定時間経過すると貯水昇温タンク52に給湯器14からの高温水が到達してそこに流入するようになる。
この時点で貯水昇温タンク52のIHヒータ58を特に加熱動作させなくても良くなり、従ってその時点で(吐水の検知温度が設定温度に到達していなくても)温度センサ60による温度検知に基づいてIHヒータ58を加熱動作停止させることができる(但し貯水温度が設定温度に達するまで引き続きIHヒータ58を加熱動作継続させることもできる)。
【0060】
尚スチームミストによる予備洗い及び高温水を用いた本洗いを終えたところで、使用者がスイッチ62を再び操作すると、そこで水栓12への水の供給が停止する。
そこで水栓12の操作部50を閉操作することで水栓12を元の止水操作状態に戻すことができる。
但し操作部50を閉操作することによって止水操作を行うようになしても良い。
【0061】
この本実施形態によれば、主流路16に残っていた冷たい残水を捨て水として排出するのを回避することが可能となる。
主流路16に残っていた冷たい残水を貯水昇温タンク52に導いてそこに収容することができ、そしてこれをIHヒータ58による加熱で昇温させた上で水栓12に供給することができるため、主流路16に残った冷たい残水をあえて捨て水として系外に排出しなくても良くなるのである。
【0062】
この実施形態の吐水装置にあっては、貯水昇温タンク52で貯水を設定温度まで昇温させるのに若干の時間(例えば30秒程度)かかることから、その間に分岐流路20に分岐させた水をスチーム発生器32でスチーム化して水栓12に送り、吐水初期においてスチームミストを吐水具から噴射させる。
【0063】
従ってこの実施形態の吐水装置にあっても、水栓12の使用初期に噴射したスチームミストを用いて手等の予備洗いを行うことができる。
そしてその後において貯水昇温タンク52で加熱された高温水、若しくは貯水昇温タンク52を通過し、そこで貯水昇温タンク52内の高温水と混合することで温められた主流路16の水(貯水昇温タンク52よりも上流部の水)を水栓12に送ってそこから吐水させ、本洗いを行うことができる。
【0064】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば図1及び図2の実施形態において、分岐流路20の分岐部に三方切換バルブを設けて、その切換動作により流路を切り換えるようになすこともできるし、また吐水具として様々な吐水具を用いることが可能である。また本発明の吐水装置は場合によってキャビネット内等の電気温水器の下流側に設けておくといったことも可能である等本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 洗面器
12 水栓(吐水具)
14 給湯器(給湯装置)
16 主流路
20 分岐流路
22 分岐部
22A 上流部
22B 下流部
24 タンク
26,28 開閉バルブ
32 スチーム発生器
36,58 IHヒータ
38 取水流路
42 スチーム流路
44 スチーム噴射装置
46,56,60 温度センサ
48 スイッチ(吐水指示手段)
52 貯水昇温タンク
54 貯水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)吐水具と、
(ロ)吐水指示手段と、
(ハ)給湯装置からの高温水を該吐水具に送る主流路と、
(ニ)該主流路から分岐した分岐流路と、
(ホ)該主流路における該分岐流路の分岐部の上流部の水を温度検知するための温度センサと、
(ヘ)(a)該分岐流路に連通して設けられ、吐水指示に基づき該分岐流路の水を用いてスチーム発生させるスチーム発生器、及び(b)発生したスチームを前記吐水具に送るスチーム流路を備え、該吐水具からスチームをミスト状に噴射するスチーム噴射装置と、
(ト)前記温度センサによる検知温度が設定温度に達するまでの間で、前記主流路の前記分岐部よりも下流部を閉、前記分岐流路を開とし、該設定温度に達したところで該分岐流路を閉、該下流部を開に流路切換可能な切換手段と、
を有し、前記検知温度が設定温度に達するまでの間で前記吐水具よりスチーム噴射し、該設定温度に達したところで流路切換えを行ってスチーム発生停止の下で該吐水具から高温水を吐水可能となしてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記分岐流路は排水流路に連絡されており、前記スチーム発生器が取水流路にて該分岐流路に連絡されていることを特徴とする吐水装置。
【請求項3】
請求項2において、前記分岐流路にはタンクが設けられていて、該分岐流路の水が一旦該タンクに貯えられた後前記排水流路へと流出するようになしてあり、該タンクには前記取水流路が接続されて、該タンクの水の一部が前記スチーム発生器側に取水されるようになしてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項4】
(イ)吐水具と、
(ロ)吐水指示手段と、
(ハ)給湯装置からの高温水を該吐水具に送る主流路と、
(ニ)該主流路に設けられ、該主流路の流入水を貯水する貯水タンク、貯水を温度検知する温度センサ及び吐水指示に基づき貯水を加熱するヒータを備えた貯水昇温タンクと、
(ホ)前記主流路から分岐した分岐流路と、
(へ)(a)該分岐流路に連通して設けられ、吐水指示に基づき該分岐流路の水を用いてスチーム発生させるスチーム発生器、及び(b)発生したスチームを前記吐水具に送るスチーム流路を備え、前記吐水具からスチームをミスト状に噴射するスチーム噴射装置と、
(ト)前記貯水の検知温度が設定温度に達するまでの間、前記主流路の前記貯水昇温タンクよりも下流部を閉、前記分岐流路を開とし、設定温度に達したところで該分岐流路を閉、該下流部を開に流路切換可能な切換手段と、
を有し、前記検知温度が設定温度に達するまでの間で前記吐水具よりスチーム噴射し、該設定温度に達したところで流路切換えを行ってスチーム発生停止の下で該吐水具から高温水を吐水可能となしてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記切換手段が、前記主流路の前記下流部に設けられた開閉バルブと、前記分岐流路に設けられた開閉バルブとを有しており、一方の開閉バルブを閉,他方の開閉バルブを開又はその逆に切り換えることで流路切換えをなすものであることを特徴とする吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230182(P2010−230182A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75227(P2009−75227)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】