スイッチ装置
【課題】接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】操作用ハンドル5を備えた操作部2と、操作部2に分離可能に連結されたコンタクト部3とを備え、操作用ハンドル5の回転操作によってコンタクト部3の接点の切り替えを行うスイッチ装置であって、操作用ハンドル5の操作に連動して回転する操作軸6と、コンタクト部3に収納配設され操作軸6に連動して回転して接点の切り替えを行う接点操作用カム部材21と、接点がOFF状態の場合には操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを許容し、接点がON状態の場合には操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを阻止する抜け止め機構を備えている。
【解決手段】操作用ハンドル5を備えた操作部2と、操作部2に分離可能に連結されたコンタクト部3とを備え、操作用ハンドル5の回転操作によってコンタクト部3の接点の切り替えを行うスイッチ装置であって、操作用ハンドル5の操作に連動して回転する操作軸6と、コンタクト部3に収納配設され操作軸6に連動して回転して接点の切り替えを行う接点操作用カム部材21と、接点がOFF状態の場合には操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを許容し、接点がON状態の場合には操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを阻止する抜け止め機構を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作片を備えた操作部と、操作部に分離可能に連結されたコンタクト部とを備え、操作片の回転操作によってコンタクト部の接点の切り替えを行うスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチ装置の従来例として、接点をON・OFF操作するカムが操作部側に収納されている構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−154445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のスイッチ装置を取付板等に取り付ける際には、操作部とコンタクト部とを分離状態とする必要がある。このような場合に、従来例では接点をON・OFF操作するカムが操作部側に収納されているので、操作部をコンタクト部から分離(例え、接点OFF状態で操作部とコンタクト部を分離したとしても)すると、接点をON・OFF操作するカムによる操作力が無くなるので、分離後に接点がONとなってしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のうち請求項1記載の発明は、操作片を備えた操作部と、操作部に分離可能に連結されたコンタクト部とを備え、操作片の回転操作によってコンタクト部の接点の切り替えを行うスイッチ装置であって、前記操作片の操作に連動して回転する操作軸と、前記コンタクト部に収納配設され、前記操作軸に連動して回転して接点の切り替えを行う接点操作用カム部材と、前記接点がOFF状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを許容し、前記接点がON状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを阻止する抜け止め機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成により、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離することができる。さらに、接点操作用カム部材がコンタクト部に収納されているので、操作部をコンタクト部から分離しても接点操作用カム部材による操作力が接点に働いたままである。従って、接点OFF状態で操作部をコンタクト部から分離すれば、分離後もその接点OFF状態を保持することができる。この結果、従来例のように、操作部をコンタクト部から分離した際に発生する危険状態を解消し、安全性が担保されたスイッチ装置を実現することが可能となる。
ここで、「操作片」は、通常のセレクタスイッチの場合は操作用ハンドルを、鍵付セレクタスイッチの場合は鍵を意味する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスイッチ装置であって、前記抜け止め機構は、前記操作軸の外周面に形成された嵌合突起と、前記接点操作用カム部材に形成され前記嵌合突起が嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合突起が嵌り込んだ嵌合凹部を閉止する閉止板とを備え、前記閉止板には、前記嵌合突起を前記嵌合凹部に挿入・引き抜きする際に嵌合突起を案内する案内溝が形成されており、この案内溝の形成位置は、前記接点がOFF状態の場合にのみ前記嵌合凹部と案内溝とが連通する位置であることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、接点がOFF状態の場合には、嵌合凹部と案内溝とが連通状態となり、操作軸を接点操作用カム部材から抜くことが許容される。一方、接点がON状態の場合には、嵌合凹部と案内溝とが連通せず、嵌合突起が嵌り込んだ嵌合凹部を閉止板によって閉止された状態となっており、操作軸を接点操作用カム部材から抜くことが阻止されている。従って、簡単な構成で抜け止め機構を構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一例としてセレクタスイッチを挙げて、以下の実施の形態を詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は実施の形態に係るセレクタスイッチの全体構成を示す縦断面図である。セレクタスイッチ1は、操作部2と、操作部2に分離可能に連結されたコンタクト部3とから構成されている。
【0012】
(操作部2の構成)
操作部2はケース4を備え、このケース4の上部には、接点を切り替えるための操作用ハンドル(操作片に相当)5が装着されている。ケース4の内部には、操作用ハンドル5に連結され操作用ハンドル5の回転に連動して回転する操作軸6が配設されている。操作軸6の外周面には環状の第1カム部材7が形成されている。第1カム部材7の上方には、環状の第2カム部材8が配設されており、第2カム部材8と第1カム部材7との間には環状の第3カム部材9が介装されている。第2カム部材8及び第3カム部材9は、それぞれ操作軸5を外装して配置されている。
【0013】
第2カム部材8は、操作軸6の軸方向に移動可能であり且つ操作軸6の軸回りの回転が規制されている。操作軸6の軸回りの回転を規制する規制手段としては、例えば、第2カム部材8の外周面に規制突起(図示せず)を形成し、この規制突起に嵌合する嵌合溝(図示せず)をケース4の内壁に形成する構成が挙げられる。
第3カム部材9は、操作軸6の軸方向に移動可能であり且つ操作軸6の軸回りに回転可能に構成されている。ケース4内にはバネ受け部4aが形成されており、このバネ受け部4aと第2カム部材8との間には、操作軸6を外装するコイルバネ10が介在されている。これにより、第2カム部材8は第3カム部材9側に向けて付勢されている。
【0014】
図2に示すように、第1カム部材7の上面は、周方向に少なくとも1以上のカム山11を備えた第1カム面7Aを構成している。第2カム部材8の下面は、周方向に少なくとも1以上のカム山12を備えた第2カム面8Aを構成している。第3カム部材9の上面は、第2カム部材8のカム山12に係合可能なカム山13が周方向に等間隔をあけて複数設けられた第3カム面9Aを構成し、第3カム部材9の下面は、第1カム部材7のカム山11に係合可能なカム山14が周方向に等間隔をあけて複数設けられた第4カム面9Bを構成している。
【0015】
ここで、第3カム面9Aにおけるカム山13の一方の傾斜面(周方向に関して一方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ1とし、他方の傾斜面(周方向に関して他方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ2とし、第4カム面9Bにおけるカム山14の一方の傾斜面(前記周方向と同一周方向に関して一方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ3とし、他方の傾斜面(前記周方向と同一周方向に関して他方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ4とした場合、θ4>θ1、且つ、θ2>θ3を満たすようにカム形状が設定されている。このようなカム形状とすることにより、ノッチ感が得られる操作角度位置をハンドル操作角の近傍まで拡げることが可能となる。この理由については後述する。
なお、本実施の形態では、θ2>θ3、且つ、θ4>θ1を満たす条件に加えて、θ2>θ1、且つ、θ4>θ3を満たしている(図2参照)。このθ2>θ1、且つ、θ4>θ3を満たすことにより、カム動作が円滑になるという利点がある。
【0016】
加えて、傾斜角度θ1と傾斜角度θ3とは略等しく、傾斜角度θ2と傾斜角度θ4とは略等しくなるようにカム形状が設定されている。このようなカム形状とすることにより、左右のノッチ感を略同一にすることが可能となる。この理由については後述する。
【0017】
(コンタクト部3の構成)
再び、図1を参照して、コンタクト部3はケース20を有し、このケース20内には円盤状の接点操作用カム部材21が配置されている。接点操作用カム部材21は、操作軸6の下端部に連結されており、操作軸6の回転に連動して回転駆動されるようになっている。この接点操作用カム部材21の下面は、周方向に少なくとも1以上のカム山22を備えたカム面21Aを構成している。また、ケース20内には、複数の接点機構を備えた接点ブロック23が収納されている。各接点機構は、固定接点を備えた端子24、固定接点に接触・開離可能な可動接点25を備えた接点板26、可動接点25が固定接点と接触する方向に付勢するバネ27、接点板26に設けられ接点操作用カム部材21のカム山22と接触して可動接点25を固定接点と開離する方向に押圧する突起28等を備えている。
【0018】
なお、上記接点構成により、接点が溶着した場合、ハンドル5の操作により溶着部を強制的に開離することができ、安全性が担保されている。
【0019】
(第1カム部材7、第2カム部材8、第3カム部材9によるカム動作)
3ノッチ3接点構造のスイッチである場合を想定する。図2に示すように、ノッチ位置A1は接点がOFF状態で、ノッチ位置A1から右方向に45度回転したノッチ位置A2は接点がON状態で、ノッチ位置A1から左方向に45度回転したノッチ位置A3は接点がON状態である。
【0020】
(1)ノッチ位置A1からノッチ位置A3に回転操作する場合
ノッチ位置A1から操作用ハンドル5を左方向X3に回転操作すると、これに連動して操作軸6に同伴して第1カム部材7も左方向X3に回転しようとする。このとき、第3カム部材9には、カム山11とカム山14との当接面S1を介して第1カム部材7からの左方向X3の押圧力F1が作用する。一方、第2カム部材8は回転が阻止されているので、カム山12とカム山13との当接面S2には、左方向回転を阻止する回転阻止力F2が作用する。このとき、傾斜角度θ4>傾斜角度θ1であることから、押圧力F1>回転阻止力F2となり、第3カム部材9は左方向X3に回転する。これにより、第2カム部材8は当接面S2を介して上方への押上げ力が作用する。この押上げ力はバネ10の付勢力より大きいため、第2カム部材8は第3カム部材9のカム面に接触しながら上昇する。そして、第3カム部材8の2番目のカム山13(図2の右側のカム山13)の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部を乗り超えると、当接面S2からの回転阻止力F2が消失するので、ノッチ感が得られることになる。このノッチ感が得られる操作位置は、ノッチ位置A1から、カム山13の斜面(傾斜角度θ1の斜面)の水平距離だけ回転した位置である。従って、カム山13の斜面(傾斜角度θ2の斜面)を急にすることにより、ノッチ感が得られる操作位置を、操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0021】
なお、2番目のカム山13の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部を乗り超えると、第2カム部材8はバネ10の付勢力により下降して、第3カム部材9を左方向X3に移動させ、ノッチ位置A3に導くことになる。そして、後述するように、ノッチ位置A3に達した時に、接点操作用カム部材21により接点の切り替えが行われる。
【0022】
(2)ノッチ位置A3からノッチ位置A1に回転操作する場合
一方、ノッチ位置A1から操作用ハンドル5を右方向X4に回転操作すると、これに連動して操作軸6に同伴して第1カム部材7が右方向X4に回転しようとする。このとき、第3カム部材9には、カム山11とカム山14との当接面S3を介して第1カム部材7からの右方向X4の押圧力F3が作用する。一方、第2カム部材8は回転が阻止されているので、カム山13とカム山12との当接面S4には、右方向X4の回転を阻止する回転阻止力F4が作用する。このとき、傾斜角度θ2>傾斜角度θ3であることから、回転阻止力F4>押圧力F3となる。この結果、第3カム部材9は右方向X4に回転することできず、カム山12とカム山13とが係合状態を維持したまま第3カム部材9及び第2カム部材8が共に上昇し、第1カム部材7は右方向X4に回転する。そして、第1カム部材7のカム山11が、第3カム部材9の2番目のカム山14(図2の右側のカム山14)の頂部を乗り超えると、当接面S2からの回転阻止力F4が消失するので、ノッチ感が得られることになる。このノッチ感が得られる操作位置は、ノッチ位置A1から、カム山14の斜面(傾斜角度θ3の斜面)の水平距離だけ回転した位置である。従って、カム山14の斜面(傾斜角度θ4の斜面)を急にすることにより、ノッチ感が得られる操作角度位置を、操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0023】
なお、カム山11が2番目のカム山14の頂部を乗り超えると、第3カム部材9及び第2カム部材8はバネ10の付勢力により下降して、第1カム部材7を右方向X4に移動させ、ノッチ位置A2に導くことになる。そして、後述するように、ノッチ位置A4に達した時に、接点操作用カム部材21により接点の切り替えが行われる。
【0024】
このようにして、左右いずれの操作方向においても、ノッチ感が得られる操作角度位置を、操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0025】
加えて、本実施の形態においては、傾斜角度θ1と傾斜角度をθ3とは略等しく、傾斜角度θ2と傾斜角度θ4とは略等しく設定されているので、第3カム面9Aと第4カム面9Bとは同一カム形状を構成している。従って、カム山13の斜面(傾斜角度θ1の斜面)の水平距離とカム山14の斜面(傾斜角度θ3の斜面)の水平距離とは等しいことになり、左方向のノッチ感が得られる操作角度位置と、右方向のノッチ感が得られる操作角度位置とは等しく、且つ、操作荷重も左右のいずれの方向においても略等しくなる。この結果、左右の操作感を等しくできることになる。
【0026】
なお、上記の例では、ノッチ位置A1からノッチ位置A3に回転操作する場合、及び、ノッチ位置A3からノッチ位置A1に回転操作する場合について説明したけれども、ノッチ位置A1からノッチ位置A2に回転操作する場合、及び、ノッチ位置A2からノッチ位置A1に回転操作する場合についても、同様なカム動作がなされる。従って、ノッチ位置A1からの左右方向の回転操作を行う場合のノッチ感を得る操作角度位置を略等しくでき、且つ、ノッチ感が得られる操作角度位置をハンドルの操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0027】
(接点操作用カム部材のカム動作)
上記のように操作用ハンドル5が回転操作すると、連動して操作軸6が回転する。これにより、操作軸6に連結された接点操作用カム部材21も回転する。そして、図3に示すように、接点操作用カム部材21の回転により、カム山22がノッチ位置に対応する接点の接点板26を押し下げる。これにより、可動接点25が固定接点から開離して接点がOFF状態となる。一方、それまでにカム山22により接点板26が押し下げられて、可動接点25と固定接点とが開離していた接点は、カム山22の移動により、バネ27の付勢力により接点板26が上昇し、可動接点25と固定接点とが接触して接点がON状態となる。
【0028】
(接点操作用カム部材のカム形状と接点位置の調整)
接点操作用カム部材21のカム山22の位相と接点位置を調整することで、各ノッチ位置での別の接点を個別制御することができる。
図4を参照して説明する。図4は2ノッチ・3接点の場合であり、操作角が90度の例を示している。図4(2)、(3)においてK1〜K3はカム山を示している。接点操作用カム21は、カム山K1〜K3を有するカム形状に設定されているものとする。ハンドル5がノッチ位置1にある場合には、図4(2)に示すように、接点2はON、接点1はON、接点3はOFFとなる。ハンドル5がノッチ位置2にある場合には、図4(2)に示すように、接点2はOFF、接点1はOFF、接点3はONとなる。このようにして、接点操作用カム部材21のカム山の位相と接点位置を調整することで、各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することが可能となる。
【0029】
なお、接点間隔とノッチ位置間隔が同じである場合は各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することができない場合が生じる。例えば、ハンドル5がノッチ位置1にある場合には、図4(3)に示すように、接点2はON、接点1はON、接点3はOFF状態となり、ハンドル5がノッチ位置2にある場合には、図4(3)に示すように、接点2はOFF、接点1はON、接点3はON状態となる。従って、ハンドル5がノッチ位置1にある場合に、接点2はON、接点1はON、接点3はOFF、ハンドル5がノッチ位置2にある場合に、接点2はOFF、接点1はOFF、接点3はONの状態が得られない。従って、接点間隔とノッチ位置間隔とは異ならせることが必要である。例えば、3ノッチ・3接点の場合であっても、各ノッチ(45度間隔)に対して接点の配置を120度間隔とし、各ノッチ位置に対応する接点に対して接点操作するカム形状をオーバーラップしないように調整することにより、各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することが可能となる。
【0030】
なお、参考まで述べると、カムスイッチでは、ノッチ数が3以上で且つ各ノッチ位置で別の接点を個別に制御する構成は存在している。図5(1)に示すように、カムスイッチは、周面カム201と、周面カム201の周囲に配置された接点202とで構成されている。接点数を増加させるためには、図5(2)に示すように、周面カム201と接点202とから成る構成ブロック203を多段に積層することになる。従って、カムスイッチでは、接点数の増加により、構造が大型化するという欠点がある。本実施の形態では、1つの接点操作カムを用いるだけでよいので、大型化するという問題は解消されている。
【0031】
また、押し棒を使用する従来のセレクタスイッチでは、多数の押し棒を円周上に配置すれば、ノッチ数が3以上で且つ各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することは可能である。しかしながら、多数の押し棒を円周上に配置することはスペース的に困難である。また、部品点数も多くなる。これに対して、本実施の形態では、1つの接点操作カムを用いるだけでよいので、上記の問題は生じない。
【0032】
(操作部に関連するその他の事項)
(1)上記実施の形態では、第3カム9A面及び第4カム面9Bは、カム山が周方向に等間隔をあけて全周に設けられていたが、「第1カム面7Aと第4カム面9Bの少なくとも1つのカム面」、及び、「第2カム面8Aと第3カム面9Aの少なくとも1つのカム面」が、カム山が周方向に等間隔をあけて全周に設けられている構成であればよい。
また、第1カム面7A、第2カム面8A、第3カム面9A、第4カム面9Bの全てのカム面について、全周にカム山を設ければ、「第1カム面7Aと第4カム面9Bの接触面積」及び「第2カム面8Aと第3カム面9Aの接触面積」が大きくなり、操作力を大きくすることができる。すなわち、対向するカム面の接触面積を調整することによって、操作力を増減することが可能である。
【0033】
(2)上記実施の形態では、θ2>θ3、且つ、θ4>θ1を満たす条件及び、θ1とθ3とは略等しく、θ2とθ4とは略等しいという条件の両者を満たしていたけれども、前者の条件のみを満たす構成であってもよい。
【0034】
(3)上記実施の形態では、下側に第1カム部材7を、上側に第2カム部材8を、第1カム部材7と第2カム部材8の間に第3カム部材9を配置し、バネ10を第2カム部材8の上側に配置して第2カム部材8を第3カム部材9側に向けて付勢する構成であったけれども、下側に第2カム部材8を、上側に第1カム部材7を、第2カム部材8と第1カム部材7の間に第3カム部材9を配置し、バネ10を第2カム部材8の下側に配置して第2カム部材8を第3カム部材9側に向けて付勢する構成であってもよい。
【0035】
(操作部とコンタクト部の分離)
さらに、本実施の形態では、接点がON状態となる位置にある場合には、操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを阻止し、接点がOFF状態となる位置にある場合には、操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを許容する抜け止め機構を備えている。操作部2とコンタクト部3とが分離可能なタイプのセレクタスイッチでは、取付板等にセレクタスイッチを取り付ける際に、操作部2とコンタクト部3とを分離状態とする必要がある。また、取付板等にセレクタスイッチが取付けられた後に、誤って、操作部2がコンタクト部3から抜けてしまう場合もある。上記いずれの場合においても、本実施の形態では、上記抜け止め機構を有していることにより、接点がOFF状態でしか、操作部2をコンタクト部3から分離できないことになり、安全性が担保されている。
【0036】
一方、従来例では接点をON・OFF操作するカムが操作部側に設けられているので、操作部をコンタクト部から分離した場合、接点はON状態となっていた。しかも、操作部がコンタクト部から分離しているので、操作用ハンドル等を操作しても接点OFFに戻せない。従って、接点ONにより、工業機械等が作動されて危険であった。本実施の形態では、接点がOFF状態でのみ操作部2をコンタクト部3から分離できる構成である。さらに、接点操作用カム部材21がコンタクト部3に収納されているので、操作部2をコンタクト部3から分離しても接点操作用カム部材21による操作力が接点に働いたままである。従って、接点OFF状態で操作部2をコンタクト部3から分離すれば、分離後もその接点OFF状態を保持することができる。この結果、従来例のように、操作部をコンタクト部から分離した際に発生する危険状態を解消し、安全性が担保されたスイッチ装置を実現することが可能となる。
【0037】
(コンタクト部に関連するその他の事項)
本実施の形態においては、上記したように、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を実現できるという効果に加えて、少ないスペースで、且つ、各ノッチ位置での他の接点動作を個別制御することが可能なスイッチ装置を実現できるという効果も奏する。
【0038】
以下にその理由について説明する。「背景技術」の項に記載した従来例(接点をON・OFF操作するカムを備えた構成)以外の他の従来のセレクタスイッチとしては、図24に示すように、ハンドル100、ハンドル100に直結したカム101、カム101の内側カム部101a(図25参照)に係合する接点動作用プレート102、カム101の外側カム部101b(図25参照)に係合するノッチプレート103、接点105のON・OFFを実行する押し棒104等を備えている(別体構成のセレクタスイッチと称する)。また、接点動作用プレート102とノッチプレート103を1つのプレート(以下、兼用プレートと称する)で構成したものもある(兼用構成のセレクタスイッチと称する)。
上記の別体構成のセレクタスイッチ及び上記兼用構成のセレクタスイッチのいずれの場合であっても、接点切り替えに際しては、ハンドル100を回転操作し、これにより、ハンドル100の回転力が、カム101によって接点動作用プレート102(兼用構成では兼用プレート)を軸方向に動かす力に変換され、その動きにより、押し棒104を押し下げ、接点のON・OFFの切り替えを行うようになっている。
【0039】
上記従来例では、押し棒104によって接点のON・OFFの切り替えを行うように構成されているので、2ノッチ2接点の場合、押し棒104が2つ必要となる。押し棒104が2つで3ノッチ3接点(接点1、接点2、接点3)を実現しようとすると、接点1、接点2は2つの押し棒104を上昇位置、下降位置とすることによりON、OFFの切り替えが可能であるが、接点3は、押し棒104を上昇位置と下降位置の中間位置でONさせることが必要となり、カム形状及び接点構造が複雑になる。
【0040】
よって、押し棒104を2つで3ノッチ3接点の実現は困難となる。また、ノッチ数が多くなると、それに応じて押し棒104を多くする必要があり、スペース的に困難である。また、他の問題としては、多段(3ノッチ以上)のセレクタスイッチの場合、ノッチ毎に違う接点を設定することが困難である。
本実施の形態においては、接点操作用カム部材21によって直接コンタクト部3の接点の切り替えを行うように構成されているので、従来例のような押し棒104を用いる場合に比べてスペースを大きくとらず、多段のセレクタスイッチを構成できる。また、接点操作用カム部材21のカム形状を調整することにより、各ノッチ位置での他の接点動作を個別制御することが可能となる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に係る実施例を図6〜図23を参照して説明する。実施例としては、3ノッチの鍵付セレクタスイッチを例示している。なお、図6〜図12、図15、図16、図19、図20は中央位置(OFF状態)における図であり、図13、図14、図17、図18は右側ON状態位置おける図である。また、図23は中央位置から右側ON状態位置に操作した場合の動作状態を示している。
【0042】
(操作部2の構成)
主として図10及び図12を参照しつつ説明する。操作部2は、ケース4、操作軸6、第1カム部材7、第2カム部材8、第3カム部材9、及びバネ10等が備えている。本実施例においては、ケース4の上部に操作用ハンドルとして機能する鍵30が設けられている。鍵30は基体31に挿入・引き抜き可能に装着されている。基体31は筒状部材32に回転可能に装着され、この筒状部材32がケース4に嵌合固定されている。従って、基体31は鍵30と一体的に回転する。また、操作軸6は円筒状であり、上端面6aに角孔6bが形成されている。そして、この角孔6bに基体31の角状下端部31aが嵌合し、さらに、下端部31aの下面にネジ32が螺合して、基体31が操作軸6と連結されている。
【0043】
また、操作軸6の下端部外周には、周方向に180度間隔をあけて一対の嵌合突起33が形成されている。
また、本実施例においては、第2カム部材8における操作軸6の軸回りの回転を規制する規制手段として、第2カム部材8の外周面に規制突起8aを形成し、この規制突起8aに嵌合する嵌合溝(図示せず)をケース4の内壁に形成している。
【0044】
(コンタクト部3の構成)
コンタクト部3は、ケース20、接点操作用カム部材21、接点ブロック23等を備えている。接点操作用カム部材21は円盤状のカム部21aと軸部21bを有する。カム部21aには、操作軸6が挿入する取付孔40が形成されている。この取付孔40には嵌合凹部41,41が形成されており、操作軸6の嵌合突起33,33が嵌合凹部41,41に嵌り込むことにより操作軸6が接点操作用カム部材21と連結されるようになっている。なお、接点操作用カム部材21の軸部21bは接点ブロック23の取付孔42に回転自在に挿入されている。
【0045】
また、ケース20は、円筒部20aと角筒部20bを備えている。円筒部20aの底部20c(閉止板に相当、図15、図16参照)には操作軸6が挿入可能な挿入孔43(図15、図16参照)が形成されており、この挿入孔43には案内溝44,44(図15、図16参照)が形成されている。そして、案内溝44,44の形成位置は、図15及び図16に示すように、接点OFF状態時の嵌合突起33,33の位置に対応している。従って、接点OFF状態の場合には、嵌合凹部41,41と案内溝44,44とが一致した状態となり、嵌合突起33,33が案内溝44,44を介して引き抜くことが可能となる。一方、接点OFF状態以外の場合には、図17及び図18に示すように、嵌合凹部41,41と案内溝44,44とが一致しないので、底部20cによって嵌合突起33,33の抜け止めがなされている。
【0046】
接点ブロック23は4つの接点機構を有している。接点機構は、固定接点を備えた端子24、固定接点に接触・開離可能な可動接点25を備えた接点板26、可動接点25が固定接点と接触する方向に付勢するバネ27(図21(2)、図22参照)、可動体50等を備えている。この可動体50は、上下方向に移動可能であって、実施の形態の突起28に相当するものであり、接点操作用カム部材21のカム山22と接触して可動接点25を固定接点と開離する方向に押圧する機能を有している。
【0047】
可動体50は、図22に示すように、挿入孔50aを有している。挿入孔50aの上側内壁には取付突起60が形成されており、この取付突起60が接点板26に形成されている取付孔61に挿入している。そして、接点板26と接点ブロック23の底面23aとの間にバネ27が介在されている。このバネ27によって、接点板26は上方に付勢され、この接点板26を介して可動体50は上方に付勢された状態となっている。従って、図21(1)に示すように、接点操作カム部材21のカム山22により可動体50が押し下げられた場合は、可動接点25は固定接点と開離し、接点OFF状態である。図21(2)に示すように、接点操作用カム部材21のカム山により可動体50が押し下げられていない場合は、可動接点25は固定接点と接触しており、接点ON状態である。
【0048】
次いで、上記構成のスイッチの動作について説明する。中央OFF状態位置において、鍵30を左方向に回転操作すると、第2カム部材8及び第3カム部材9が上昇して、図23(1)から図23(2)の状態となる。その後、図23(3)の状態で、第1カム部材7のカム山11が第3カム部材9のカム山14の頂部に達し、この頂部を乗り超えると、バネの付勢力で第2カム部材8及び第3カム部材9が下降し、図23(4)に示す左ON状態位置まで導かれる。そのため、第1カム部材7のカム山11が第3カム部材9のカム山14の頂部を乗り超えた時点でノッチ感が得られる。また、図23(4)に示す左ON状態位置において、接点操作用カム部材21のカム山22により可動体50が押し下げられていない状態となり、可動接点25は固定接点と接触状態となる。即ち、接点ON状態となる。
【0049】
一方、左ON状態位置から右方向に回転操作すると、第2カム部材8が上昇して、図23(4)から図23(5)の状態となる。その後、図23(6)の状態で、第3カム部材8のカム山13の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部に達し、この頂部を乗り超えると、バネの付勢力で第2カム部材8が下降し、図23(7)に示す中央OFF状態位置まで導かれる。そのため、第3カム部材8のカム山13の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部を乗り超えた時点でノッチ感が得られる。また、図23(7)に示す中央OFF状態位置において、接点操作用カム部材21のカム山22により可動体50が押し下げられた状態となり、可動接点25は固定接点と開離状態となる。即ち、接点OFF状態となる。
【0050】
このようにして、ノッチ位置からの左右方向の回転操作を行う場合のノッチ感を得る操作角度を略等しくでき、且つ、クリック感が得られる操作角を最大操作角近傍まで広げることが可能なスイッチを実現できることになる。
【0051】
また、接点の切り替えを接点操作用カム部材によって行うので、接点操作用カム部材のカム山の位相と接点位置を調整することで、各ノッチ位置での接点動作を個別制御することが可能となる。加えて、接点操作用カム部材がコンタクト部側にあるので、接点OFF状態でしか操作部がコンタクト部から抜けないよう構成することが可能となる。
【0052】
本発明は、実施の形態や実施例で示したセレクタスイッチや鍵付セレクタスイッチなどのスイッチ装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、セレクタスイッチなどのスイッチ装置に好適に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態に係るセレクタスイッチの縦断面図。
【図2】第1カム部材〜第3カム部材のカム動作を説明するための図。
【図3】接点操作用カム部材のカム動作を説明するための図。
【図4】接点操作用カム部材のカム形状と接点位置との関係を説明するための図。
【図5】カムスイッチの構成を示す図。
【図6】実施例に係るセレクタスイッチの平面図。
【図7】実施例に係るセレクタスイッチの斜視図。
【図8】実施例に係るセレクタスイッチの正面図。
【図9】実施例に係るセレクタスイッチの側面図。
【図10】図6のY1−Y1線矢視断面図。
【図11】実施例に係るセレクタスイッチの分離した状態における斜視図。
【図12】実施例に係るセレクタスイッチの分解斜視図。
【図13】実施例に係るセレクタスイッチの平面図。
【図14】図13のY2−Y2線矢視断面図。
【図15】実施例に係るコンタクト部の平面図。
【図16】図15のY3−Y3線矢視断面図。
【図17】実施例に係るコンタクト部の平面図。
【図18】図17のY4−Y4線矢視断面図。
【図19】実施例に係るセレクタスイッチのケースを取り除いた状態の平面図。
【図20】実施例に係るセレクタスイッチのケースを取り除いた状態の斜視図。
【図21】接点のOFF・ON状態を示す図であり、図21(1)は接点のOFF状態を示し、図21(2)は接点ON状態を示す。
【図22】実施例に係るセレクタスイッチの接点機構の分解斜視図。
【図23】実施例に係るセレクタスイッチのカム動作を説明するための図。
【図24】従来例の別体構成のセレクタスイッチの断面図。
【図25】従来例のカムの構成を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1:セレクタスイッチ 2:操作部
3:コンタクト部 5:操作用ハンドル
6:操作軸 7:第1カム部材
8:第2カム部材 9:第3カム部材
10:バネ 11,12,13,14,22:カム山
7A:第1カム面 8A:第2カム面
9A:第3カム面 9B:第4カム面
θ1〜θ4:傾斜角度 21:接点操作用カム部材
30:鍵 33:嵌合突起
41:嵌合凹部 44:案内溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作片を備えた操作部と、操作部に分離可能に連結されたコンタクト部とを備え、操作片の回転操作によってコンタクト部の接点の切り替えを行うスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチ装置の従来例として、接点をON・OFF操作するカムが操作部側に収納されている構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−154445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のスイッチ装置を取付板等に取り付ける際には、操作部とコンタクト部とを分離状態とする必要がある。このような場合に、従来例では接点をON・OFF操作するカムが操作部側に収納されているので、操作部をコンタクト部から分離(例え、接点OFF状態で操作部とコンタクト部を分離したとしても)すると、接点をON・OFF操作するカムによる操作力が無くなるので、分離後に接点がONとなってしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のうち請求項1記載の発明は、操作片を備えた操作部と、操作部に分離可能に連結されたコンタクト部とを備え、操作片の回転操作によってコンタクト部の接点の切り替えを行うスイッチ装置であって、前記操作片の操作に連動して回転する操作軸と、前記コンタクト部に収納配設され、前記操作軸に連動して回転して接点の切り替えを行う接点操作用カム部材と、前記接点がOFF状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを許容し、前記接点がON状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを阻止する抜け止め機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成により、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離することができる。さらに、接点操作用カム部材がコンタクト部に収納されているので、操作部をコンタクト部から分離しても接点操作用カム部材による操作力が接点に働いたままである。従って、接点OFF状態で操作部をコンタクト部から分離すれば、分離後もその接点OFF状態を保持することができる。この結果、従来例のように、操作部をコンタクト部から分離した際に発生する危険状態を解消し、安全性が担保されたスイッチ装置を実現することが可能となる。
ここで、「操作片」は、通常のセレクタスイッチの場合は操作用ハンドルを、鍵付セレクタスイッチの場合は鍵を意味する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスイッチ装置であって、前記抜け止め機構は、前記操作軸の外周面に形成された嵌合突起と、前記接点操作用カム部材に形成され前記嵌合突起が嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合突起が嵌り込んだ嵌合凹部を閉止する閉止板とを備え、前記閉止板には、前記嵌合突起を前記嵌合凹部に挿入・引き抜きする際に嵌合突起を案内する案内溝が形成されており、この案内溝の形成位置は、前記接点がOFF状態の場合にのみ前記嵌合凹部と案内溝とが連通する位置であることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、接点がOFF状態の場合には、嵌合凹部と案内溝とが連通状態となり、操作軸を接点操作用カム部材から抜くことが許容される。一方、接点がON状態の場合には、嵌合凹部と案内溝とが連通せず、嵌合突起が嵌り込んだ嵌合凹部を閉止板によって閉止された状態となっており、操作軸を接点操作用カム部材から抜くことが阻止されている。従って、簡単な構成で抜け止め機構を構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一例としてセレクタスイッチを挙げて、以下の実施の形態を詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は実施の形態に係るセレクタスイッチの全体構成を示す縦断面図である。セレクタスイッチ1は、操作部2と、操作部2に分離可能に連結されたコンタクト部3とから構成されている。
【0012】
(操作部2の構成)
操作部2はケース4を備え、このケース4の上部には、接点を切り替えるための操作用ハンドル(操作片に相当)5が装着されている。ケース4の内部には、操作用ハンドル5に連結され操作用ハンドル5の回転に連動して回転する操作軸6が配設されている。操作軸6の外周面には環状の第1カム部材7が形成されている。第1カム部材7の上方には、環状の第2カム部材8が配設されており、第2カム部材8と第1カム部材7との間には環状の第3カム部材9が介装されている。第2カム部材8及び第3カム部材9は、それぞれ操作軸5を外装して配置されている。
【0013】
第2カム部材8は、操作軸6の軸方向に移動可能であり且つ操作軸6の軸回りの回転が規制されている。操作軸6の軸回りの回転を規制する規制手段としては、例えば、第2カム部材8の外周面に規制突起(図示せず)を形成し、この規制突起に嵌合する嵌合溝(図示せず)をケース4の内壁に形成する構成が挙げられる。
第3カム部材9は、操作軸6の軸方向に移動可能であり且つ操作軸6の軸回りに回転可能に構成されている。ケース4内にはバネ受け部4aが形成されており、このバネ受け部4aと第2カム部材8との間には、操作軸6を外装するコイルバネ10が介在されている。これにより、第2カム部材8は第3カム部材9側に向けて付勢されている。
【0014】
図2に示すように、第1カム部材7の上面は、周方向に少なくとも1以上のカム山11を備えた第1カム面7Aを構成している。第2カム部材8の下面は、周方向に少なくとも1以上のカム山12を備えた第2カム面8Aを構成している。第3カム部材9の上面は、第2カム部材8のカム山12に係合可能なカム山13が周方向に等間隔をあけて複数設けられた第3カム面9Aを構成し、第3カム部材9の下面は、第1カム部材7のカム山11に係合可能なカム山14が周方向に等間隔をあけて複数設けられた第4カム面9Bを構成している。
【0015】
ここで、第3カム面9Aにおけるカム山13の一方の傾斜面(周方向に関して一方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ1とし、他方の傾斜面(周方向に関して他方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ2とし、第4カム面9Bにおけるカム山14の一方の傾斜面(前記周方向と同一周方向に関して一方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ3とし、他方の傾斜面(前記周方向と同一周方向に関して他方向側の傾斜面に相当)の傾斜角度をθ4とした場合、θ4>θ1、且つ、θ2>θ3を満たすようにカム形状が設定されている。このようなカム形状とすることにより、ノッチ感が得られる操作角度位置をハンドル操作角の近傍まで拡げることが可能となる。この理由については後述する。
なお、本実施の形態では、θ2>θ3、且つ、θ4>θ1を満たす条件に加えて、θ2>θ1、且つ、θ4>θ3を満たしている(図2参照)。このθ2>θ1、且つ、θ4>θ3を満たすことにより、カム動作が円滑になるという利点がある。
【0016】
加えて、傾斜角度θ1と傾斜角度θ3とは略等しく、傾斜角度θ2と傾斜角度θ4とは略等しくなるようにカム形状が設定されている。このようなカム形状とすることにより、左右のノッチ感を略同一にすることが可能となる。この理由については後述する。
【0017】
(コンタクト部3の構成)
再び、図1を参照して、コンタクト部3はケース20を有し、このケース20内には円盤状の接点操作用カム部材21が配置されている。接点操作用カム部材21は、操作軸6の下端部に連結されており、操作軸6の回転に連動して回転駆動されるようになっている。この接点操作用カム部材21の下面は、周方向に少なくとも1以上のカム山22を備えたカム面21Aを構成している。また、ケース20内には、複数の接点機構を備えた接点ブロック23が収納されている。各接点機構は、固定接点を備えた端子24、固定接点に接触・開離可能な可動接点25を備えた接点板26、可動接点25が固定接点と接触する方向に付勢するバネ27、接点板26に設けられ接点操作用カム部材21のカム山22と接触して可動接点25を固定接点と開離する方向に押圧する突起28等を備えている。
【0018】
なお、上記接点構成により、接点が溶着した場合、ハンドル5の操作により溶着部を強制的に開離することができ、安全性が担保されている。
【0019】
(第1カム部材7、第2カム部材8、第3カム部材9によるカム動作)
3ノッチ3接点構造のスイッチである場合を想定する。図2に示すように、ノッチ位置A1は接点がOFF状態で、ノッチ位置A1から右方向に45度回転したノッチ位置A2は接点がON状態で、ノッチ位置A1から左方向に45度回転したノッチ位置A3は接点がON状態である。
【0020】
(1)ノッチ位置A1からノッチ位置A3に回転操作する場合
ノッチ位置A1から操作用ハンドル5を左方向X3に回転操作すると、これに連動して操作軸6に同伴して第1カム部材7も左方向X3に回転しようとする。このとき、第3カム部材9には、カム山11とカム山14との当接面S1を介して第1カム部材7からの左方向X3の押圧力F1が作用する。一方、第2カム部材8は回転が阻止されているので、カム山12とカム山13との当接面S2には、左方向回転を阻止する回転阻止力F2が作用する。このとき、傾斜角度θ4>傾斜角度θ1であることから、押圧力F1>回転阻止力F2となり、第3カム部材9は左方向X3に回転する。これにより、第2カム部材8は当接面S2を介して上方への押上げ力が作用する。この押上げ力はバネ10の付勢力より大きいため、第2カム部材8は第3カム部材9のカム面に接触しながら上昇する。そして、第3カム部材8の2番目のカム山13(図2の右側のカム山13)の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部を乗り超えると、当接面S2からの回転阻止力F2が消失するので、ノッチ感が得られることになる。このノッチ感が得られる操作位置は、ノッチ位置A1から、カム山13の斜面(傾斜角度θ1の斜面)の水平距離だけ回転した位置である。従って、カム山13の斜面(傾斜角度θ2の斜面)を急にすることにより、ノッチ感が得られる操作位置を、操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0021】
なお、2番目のカム山13の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部を乗り超えると、第2カム部材8はバネ10の付勢力により下降して、第3カム部材9を左方向X3に移動させ、ノッチ位置A3に導くことになる。そして、後述するように、ノッチ位置A3に達した時に、接点操作用カム部材21により接点の切り替えが行われる。
【0022】
(2)ノッチ位置A3からノッチ位置A1に回転操作する場合
一方、ノッチ位置A1から操作用ハンドル5を右方向X4に回転操作すると、これに連動して操作軸6に同伴して第1カム部材7が右方向X4に回転しようとする。このとき、第3カム部材9には、カム山11とカム山14との当接面S3を介して第1カム部材7からの右方向X4の押圧力F3が作用する。一方、第2カム部材8は回転が阻止されているので、カム山13とカム山12との当接面S4には、右方向X4の回転を阻止する回転阻止力F4が作用する。このとき、傾斜角度θ2>傾斜角度θ3であることから、回転阻止力F4>押圧力F3となる。この結果、第3カム部材9は右方向X4に回転することできず、カム山12とカム山13とが係合状態を維持したまま第3カム部材9及び第2カム部材8が共に上昇し、第1カム部材7は右方向X4に回転する。そして、第1カム部材7のカム山11が、第3カム部材9の2番目のカム山14(図2の右側のカム山14)の頂部を乗り超えると、当接面S2からの回転阻止力F4が消失するので、ノッチ感が得られることになる。このノッチ感が得られる操作位置は、ノッチ位置A1から、カム山14の斜面(傾斜角度θ3の斜面)の水平距離だけ回転した位置である。従って、カム山14の斜面(傾斜角度θ4の斜面)を急にすることにより、ノッチ感が得られる操作角度位置を、操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0023】
なお、カム山11が2番目のカム山14の頂部を乗り超えると、第3カム部材9及び第2カム部材8はバネ10の付勢力により下降して、第1カム部材7を右方向X4に移動させ、ノッチ位置A2に導くことになる。そして、後述するように、ノッチ位置A4に達した時に、接点操作用カム部材21により接点の切り替えが行われる。
【0024】
このようにして、左右いずれの操作方向においても、ノッチ感が得られる操作角度位置を、操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0025】
加えて、本実施の形態においては、傾斜角度θ1と傾斜角度をθ3とは略等しく、傾斜角度θ2と傾斜角度θ4とは略等しく設定されているので、第3カム面9Aと第4カム面9Bとは同一カム形状を構成している。従って、カム山13の斜面(傾斜角度θ1の斜面)の水平距離とカム山14の斜面(傾斜角度θ3の斜面)の水平距離とは等しいことになり、左方向のノッチ感が得られる操作角度位置と、右方向のノッチ感が得られる操作角度位置とは等しく、且つ、操作荷重も左右のいずれの方向においても略等しくなる。この結果、左右の操作感を等しくできることになる。
【0026】
なお、上記の例では、ノッチ位置A1からノッチ位置A3に回転操作する場合、及び、ノッチ位置A3からノッチ位置A1に回転操作する場合について説明したけれども、ノッチ位置A1からノッチ位置A2に回転操作する場合、及び、ノッチ位置A2からノッチ位置A1に回転操作する場合についても、同様なカム動作がなされる。従って、ノッチ位置A1からの左右方向の回転操作を行う場合のノッチ感を得る操作角度位置を略等しくでき、且つ、ノッチ感が得られる操作角度位置をハンドルの操作角45度近傍まで広げることが可能となる。
【0027】
(接点操作用カム部材のカム動作)
上記のように操作用ハンドル5が回転操作すると、連動して操作軸6が回転する。これにより、操作軸6に連結された接点操作用カム部材21も回転する。そして、図3に示すように、接点操作用カム部材21の回転により、カム山22がノッチ位置に対応する接点の接点板26を押し下げる。これにより、可動接点25が固定接点から開離して接点がOFF状態となる。一方、それまでにカム山22により接点板26が押し下げられて、可動接点25と固定接点とが開離していた接点は、カム山22の移動により、バネ27の付勢力により接点板26が上昇し、可動接点25と固定接点とが接触して接点がON状態となる。
【0028】
(接点操作用カム部材のカム形状と接点位置の調整)
接点操作用カム部材21のカム山22の位相と接点位置を調整することで、各ノッチ位置での別の接点を個別制御することができる。
図4を参照して説明する。図4は2ノッチ・3接点の場合であり、操作角が90度の例を示している。図4(2)、(3)においてK1〜K3はカム山を示している。接点操作用カム21は、カム山K1〜K3を有するカム形状に設定されているものとする。ハンドル5がノッチ位置1にある場合には、図4(2)に示すように、接点2はON、接点1はON、接点3はOFFとなる。ハンドル5がノッチ位置2にある場合には、図4(2)に示すように、接点2はOFF、接点1はOFF、接点3はONとなる。このようにして、接点操作用カム部材21のカム山の位相と接点位置を調整することで、各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することが可能となる。
【0029】
なお、接点間隔とノッチ位置間隔が同じである場合は各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することができない場合が生じる。例えば、ハンドル5がノッチ位置1にある場合には、図4(3)に示すように、接点2はON、接点1はON、接点3はOFF状態となり、ハンドル5がノッチ位置2にある場合には、図4(3)に示すように、接点2はOFF、接点1はON、接点3はON状態となる。従って、ハンドル5がノッチ位置1にある場合に、接点2はON、接点1はON、接点3はOFF、ハンドル5がノッチ位置2にある場合に、接点2はOFF、接点1はOFF、接点3はONの状態が得られない。従って、接点間隔とノッチ位置間隔とは異ならせることが必要である。例えば、3ノッチ・3接点の場合であっても、各ノッチ(45度間隔)に対して接点の配置を120度間隔とし、各ノッチ位置に対応する接点に対して接点操作するカム形状をオーバーラップしないように調整することにより、各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することが可能となる。
【0030】
なお、参考まで述べると、カムスイッチでは、ノッチ数が3以上で且つ各ノッチ位置で別の接点を個別に制御する構成は存在している。図5(1)に示すように、カムスイッチは、周面カム201と、周面カム201の周囲に配置された接点202とで構成されている。接点数を増加させるためには、図5(2)に示すように、周面カム201と接点202とから成る構成ブロック203を多段に積層することになる。従って、カムスイッチでは、接点数の増加により、構造が大型化するという欠点がある。本実施の形態では、1つの接点操作カムを用いるだけでよいので、大型化するという問題は解消されている。
【0031】
また、押し棒を使用する従来のセレクタスイッチでは、多数の押し棒を円周上に配置すれば、ノッチ数が3以上で且つ各ノッチ位置で別の接点を個別に制御することは可能である。しかしながら、多数の押し棒を円周上に配置することはスペース的に困難である。また、部品点数も多くなる。これに対して、本実施の形態では、1つの接点操作カムを用いるだけでよいので、上記の問題は生じない。
【0032】
(操作部に関連するその他の事項)
(1)上記実施の形態では、第3カム9A面及び第4カム面9Bは、カム山が周方向に等間隔をあけて全周に設けられていたが、「第1カム面7Aと第4カム面9Bの少なくとも1つのカム面」、及び、「第2カム面8Aと第3カム面9Aの少なくとも1つのカム面」が、カム山が周方向に等間隔をあけて全周に設けられている構成であればよい。
また、第1カム面7A、第2カム面8A、第3カム面9A、第4カム面9Bの全てのカム面について、全周にカム山を設ければ、「第1カム面7Aと第4カム面9Bの接触面積」及び「第2カム面8Aと第3カム面9Aの接触面積」が大きくなり、操作力を大きくすることができる。すなわち、対向するカム面の接触面積を調整することによって、操作力を増減することが可能である。
【0033】
(2)上記実施の形態では、θ2>θ3、且つ、θ4>θ1を満たす条件及び、θ1とθ3とは略等しく、θ2とθ4とは略等しいという条件の両者を満たしていたけれども、前者の条件のみを満たす構成であってもよい。
【0034】
(3)上記実施の形態では、下側に第1カム部材7を、上側に第2カム部材8を、第1カム部材7と第2カム部材8の間に第3カム部材9を配置し、バネ10を第2カム部材8の上側に配置して第2カム部材8を第3カム部材9側に向けて付勢する構成であったけれども、下側に第2カム部材8を、上側に第1カム部材7を、第2カム部材8と第1カム部材7の間に第3カム部材9を配置し、バネ10を第2カム部材8の下側に配置して第2カム部材8を第3カム部材9側に向けて付勢する構成であってもよい。
【0035】
(操作部とコンタクト部の分離)
さらに、本実施の形態では、接点がON状態となる位置にある場合には、操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを阻止し、接点がOFF状態となる位置にある場合には、操作軸6を接点操作用カム部材21から抜くことを許容する抜け止め機構を備えている。操作部2とコンタクト部3とが分離可能なタイプのセレクタスイッチでは、取付板等にセレクタスイッチを取り付ける際に、操作部2とコンタクト部3とを分離状態とする必要がある。また、取付板等にセレクタスイッチが取付けられた後に、誤って、操作部2がコンタクト部3から抜けてしまう場合もある。上記いずれの場合においても、本実施の形態では、上記抜け止め機構を有していることにより、接点がOFF状態でしか、操作部2をコンタクト部3から分離できないことになり、安全性が担保されている。
【0036】
一方、従来例では接点をON・OFF操作するカムが操作部側に設けられているので、操作部をコンタクト部から分離した場合、接点はON状態となっていた。しかも、操作部がコンタクト部から分離しているので、操作用ハンドル等を操作しても接点OFFに戻せない。従って、接点ONにより、工業機械等が作動されて危険であった。本実施の形態では、接点がOFF状態でのみ操作部2をコンタクト部3から分離できる構成である。さらに、接点操作用カム部材21がコンタクト部3に収納されているので、操作部2をコンタクト部3から分離しても接点操作用カム部材21による操作力が接点に働いたままである。従って、接点OFF状態で操作部2をコンタクト部3から分離すれば、分離後もその接点OFF状態を保持することができる。この結果、従来例のように、操作部をコンタクト部から分離した際に発生する危険状態を解消し、安全性が担保されたスイッチ装置を実現することが可能となる。
【0037】
(コンタクト部に関連するその他の事項)
本実施の形態においては、上記したように、接点がOFF状態でのみ操作部をコンタクト部から分離できる構成にし、分離後も接点OFF状態を保持することにより、安全性が担保されたスイッチ装置を実現できるという効果に加えて、少ないスペースで、且つ、各ノッチ位置での他の接点動作を個別制御することが可能なスイッチ装置を実現できるという効果も奏する。
【0038】
以下にその理由について説明する。「背景技術」の項に記載した従来例(接点をON・OFF操作するカムを備えた構成)以外の他の従来のセレクタスイッチとしては、図24に示すように、ハンドル100、ハンドル100に直結したカム101、カム101の内側カム部101a(図25参照)に係合する接点動作用プレート102、カム101の外側カム部101b(図25参照)に係合するノッチプレート103、接点105のON・OFFを実行する押し棒104等を備えている(別体構成のセレクタスイッチと称する)。また、接点動作用プレート102とノッチプレート103を1つのプレート(以下、兼用プレートと称する)で構成したものもある(兼用構成のセレクタスイッチと称する)。
上記の別体構成のセレクタスイッチ及び上記兼用構成のセレクタスイッチのいずれの場合であっても、接点切り替えに際しては、ハンドル100を回転操作し、これにより、ハンドル100の回転力が、カム101によって接点動作用プレート102(兼用構成では兼用プレート)を軸方向に動かす力に変換され、その動きにより、押し棒104を押し下げ、接点のON・OFFの切り替えを行うようになっている。
【0039】
上記従来例では、押し棒104によって接点のON・OFFの切り替えを行うように構成されているので、2ノッチ2接点の場合、押し棒104が2つ必要となる。押し棒104が2つで3ノッチ3接点(接点1、接点2、接点3)を実現しようとすると、接点1、接点2は2つの押し棒104を上昇位置、下降位置とすることによりON、OFFの切り替えが可能であるが、接点3は、押し棒104を上昇位置と下降位置の中間位置でONさせることが必要となり、カム形状及び接点構造が複雑になる。
【0040】
よって、押し棒104を2つで3ノッチ3接点の実現は困難となる。また、ノッチ数が多くなると、それに応じて押し棒104を多くする必要があり、スペース的に困難である。また、他の問題としては、多段(3ノッチ以上)のセレクタスイッチの場合、ノッチ毎に違う接点を設定することが困難である。
本実施の形態においては、接点操作用カム部材21によって直接コンタクト部3の接点の切り替えを行うように構成されているので、従来例のような押し棒104を用いる場合に比べてスペースを大きくとらず、多段のセレクタスイッチを構成できる。また、接点操作用カム部材21のカム形状を調整することにより、各ノッチ位置での他の接点動作を個別制御することが可能となる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に係る実施例を図6〜図23を参照して説明する。実施例としては、3ノッチの鍵付セレクタスイッチを例示している。なお、図6〜図12、図15、図16、図19、図20は中央位置(OFF状態)における図であり、図13、図14、図17、図18は右側ON状態位置おける図である。また、図23は中央位置から右側ON状態位置に操作した場合の動作状態を示している。
【0042】
(操作部2の構成)
主として図10及び図12を参照しつつ説明する。操作部2は、ケース4、操作軸6、第1カム部材7、第2カム部材8、第3カム部材9、及びバネ10等が備えている。本実施例においては、ケース4の上部に操作用ハンドルとして機能する鍵30が設けられている。鍵30は基体31に挿入・引き抜き可能に装着されている。基体31は筒状部材32に回転可能に装着され、この筒状部材32がケース4に嵌合固定されている。従って、基体31は鍵30と一体的に回転する。また、操作軸6は円筒状であり、上端面6aに角孔6bが形成されている。そして、この角孔6bに基体31の角状下端部31aが嵌合し、さらに、下端部31aの下面にネジ32が螺合して、基体31が操作軸6と連結されている。
【0043】
また、操作軸6の下端部外周には、周方向に180度間隔をあけて一対の嵌合突起33が形成されている。
また、本実施例においては、第2カム部材8における操作軸6の軸回りの回転を規制する規制手段として、第2カム部材8の外周面に規制突起8aを形成し、この規制突起8aに嵌合する嵌合溝(図示せず)をケース4の内壁に形成している。
【0044】
(コンタクト部3の構成)
コンタクト部3は、ケース20、接点操作用カム部材21、接点ブロック23等を備えている。接点操作用カム部材21は円盤状のカム部21aと軸部21bを有する。カム部21aには、操作軸6が挿入する取付孔40が形成されている。この取付孔40には嵌合凹部41,41が形成されており、操作軸6の嵌合突起33,33が嵌合凹部41,41に嵌り込むことにより操作軸6が接点操作用カム部材21と連結されるようになっている。なお、接点操作用カム部材21の軸部21bは接点ブロック23の取付孔42に回転自在に挿入されている。
【0045】
また、ケース20は、円筒部20aと角筒部20bを備えている。円筒部20aの底部20c(閉止板に相当、図15、図16参照)には操作軸6が挿入可能な挿入孔43(図15、図16参照)が形成されており、この挿入孔43には案内溝44,44(図15、図16参照)が形成されている。そして、案内溝44,44の形成位置は、図15及び図16に示すように、接点OFF状態時の嵌合突起33,33の位置に対応している。従って、接点OFF状態の場合には、嵌合凹部41,41と案内溝44,44とが一致した状態となり、嵌合突起33,33が案内溝44,44を介して引き抜くことが可能となる。一方、接点OFF状態以外の場合には、図17及び図18に示すように、嵌合凹部41,41と案内溝44,44とが一致しないので、底部20cによって嵌合突起33,33の抜け止めがなされている。
【0046】
接点ブロック23は4つの接点機構を有している。接点機構は、固定接点を備えた端子24、固定接点に接触・開離可能な可動接点25を備えた接点板26、可動接点25が固定接点と接触する方向に付勢するバネ27(図21(2)、図22参照)、可動体50等を備えている。この可動体50は、上下方向に移動可能であって、実施の形態の突起28に相当するものであり、接点操作用カム部材21のカム山22と接触して可動接点25を固定接点と開離する方向に押圧する機能を有している。
【0047】
可動体50は、図22に示すように、挿入孔50aを有している。挿入孔50aの上側内壁には取付突起60が形成されており、この取付突起60が接点板26に形成されている取付孔61に挿入している。そして、接点板26と接点ブロック23の底面23aとの間にバネ27が介在されている。このバネ27によって、接点板26は上方に付勢され、この接点板26を介して可動体50は上方に付勢された状態となっている。従って、図21(1)に示すように、接点操作カム部材21のカム山22により可動体50が押し下げられた場合は、可動接点25は固定接点と開離し、接点OFF状態である。図21(2)に示すように、接点操作用カム部材21のカム山により可動体50が押し下げられていない場合は、可動接点25は固定接点と接触しており、接点ON状態である。
【0048】
次いで、上記構成のスイッチの動作について説明する。中央OFF状態位置において、鍵30を左方向に回転操作すると、第2カム部材8及び第3カム部材9が上昇して、図23(1)から図23(2)の状態となる。その後、図23(3)の状態で、第1カム部材7のカム山11が第3カム部材9のカム山14の頂部に達し、この頂部を乗り超えると、バネの付勢力で第2カム部材8及び第3カム部材9が下降し、図23(4)に示す左ON状態位置まで導かれる。そのため、第1カム部材7のカム山11が第3カム部材9のカム山14の頂部を乗り超えた時点でノッチ感が得られる。また、図23(4)に示す左ON状態位置において、接点操作用カム部材21のカム山22により可動体50が押し下げられていない状態となり、可動接点25は固定接点と接触状態となる。即ち、接点ON状態となる。
【0049】
一方、左ON状態位置から右方向に回転操作すると、第2カム部材8が上昇して、図23(4)から図23(5)の状態となる。その後、図23(6)の状態で、第3カム部材8のカム山13の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部に達し、この頂部を乗り超えると、バネの付勢力で第2カム部材8が下降し、図23(7)に示す中央OFF状態位置まで導かれる。そのため、第3カム部材8のカム山13の頂部が第2カム部材8のカム山12の頂部を乗り超えた時点でノッチ感が得られる。また、図23(7)に示す中央OFF状態位置において、接点操作用カム部材21のカム山22により可動体50が押し下げられた状態となり、可動接点25は固定接点と開離状態となる。即ち、接点OFF状態となる。
【0050】
このようにして、ノッチ位置からの左右方向の回転操作を行う場合のノッチ感を得る操作角度を略等しくでき、且つ、クリック感が得られる操作角を最大操作角近傍まで広げることが可能なスイッチを実現できることになる。
【0051】
また、接点の切り替えを接点操作用カム部材によって行うので、接点操作用カム部材のカム山の位相と接点位置を調整することで、各ノッチ位置での接点動作を個別制御することが可能となる。加えて、接点操作用カム部材がコンタクト部側にあるので、接点OFF状態でしか操作部がコンタクト部から抜けないよう構成することが可能となる。
【0052】
本発明は、実施の形態や実施例で示したセレクタスイッチや鍵付セレクタスイッチなどのスイッチ装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、セレクタスイッチなどのスイッチ装置に好適に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態に係るセレクタスイッチの縦断面図。
【図2】第1カム部材〜第3カム部材のカム動作を説明するための図。
【図3】接点操作用カム部材のカム動作を説明するための図。
【図4】接点操作用カム部材のカム形状と接点位置との関係を説明するための図。
【図5】カムスイッチの構成を示す図。
【図6】実施例に係るセレクタスイッチの平面図。
【図7】実施例に係るセレクタスイッチの斜視図。
【図8】実施例に係るセレクタスイッチの正面図。
【図9】実施例に係るセレクタスイッチの側面図。
【図10】図6のY1−Y1線矢視断面図。
【図11】実施例に係るセレクタスイッチの分離した状態における斜視図。
【図12】実施例に係るセレクタスイッチの分解斜視図。
【図13】実施例に係るセレクタスイッチの平面図。
【図14】図13のY2−Y2線矢視断面図。
【図15】実施例に係るコンタクト部の平面図。
【図16】図15のY3−Y3線矢視断面図。
【図17】実施例に係るコンタクト部の平面図。
【図18】図17のY4−Y4線矢視断面図。
【図19】実施例に係るセレクタスイッチのケースを取り除いた状態の平面図。
【図20】実施例に係るセレクタスイッチのケースを取り除いた状態の斜視図。
【図21】接点のOFF・ON状態を示す図であり、図21(1)は接点のOFF状態を示し、図21(2)は接点ON状態を示す。
【図22】実施例に係るセレクタスイッチの接点機構の分解斜視図。
【図23】実施例に係るセレクタスイッチのカム動作を説明するための図。
【図24】従来例の別体構成のセレクタスイッチの断面図。
【図25】従来例のカムの構成を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1:セレクタスイッチ 2:操作部
3:コンタクト部 5:操作用ハンドル
6:操作軸 7:第1カム部材
8:第2カム部材 9:第3カム部材
10:バネ 11,12,13,14,22:カム山
7A:第1カム面 8A:第2カム面
9A:第3カム面 9B:第4カム面
θ1〜θ4:傾斜角度 21:接点操作用カム部材
30:鍵 33:嵌合突起
41:嵌合凹部 44:案内溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作片を備えた操作部と、操作部に分離可能に連結されたコンタクト部とを備え、操作片の回転操作によってコンタクト部の接点の切り替えを行うスイッチ装置であって、
前記操作片の操作に連動して回転する操作軸と、
前記コンタクト部に収納配設され、前記操作軸に連動して回転して接点の切り替えを行う接点操作用カム部材と、
前記接点がOFF状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを許容し、前記接点がON状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを阻止する抜け止め機構と、
を備えたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記抜け止め機構は、
前記操作軸の外周面に形成された嵌合突起と、前記接点操作用カム部材に形成され前記嵌合突起が嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合突起が嵌り込んだ嵌合凹部を閉止する閉止板とを備え、
前記閉止板には、前記嵌合突起を前記嵌合凹部に挿入・引き抜きする際に嵌合突起を案内する案内溝が形成されており、この案内溝の形成位置は、前記接点がOFF状態の場合にのみ前記嵌合凹部と案内溝とが連通する位置であることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項1】
操作片を備えた操作部と、操作部に分離可能に連結されたコンタクト部とを備え、操作片の回転操作によってコンタクト部の接点の切り替えを行うスイッチ装置であって、
前記操作片の操作に連動して回転する操作軸と、
前記コンタクト部に収納配設され、前記操作軸に連動して回転して接点の切り替えを行う接点操作用カム部材と、
前記接点がOFF状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを許容し、前記接点がON状態の場合には前記操作軸を前記接点操作用カム部材から抜くことを阻止する抜け止め機構と、
を備えたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記抜け止め機構は、
前記操作軸の外周面に形成された嵌合突起と、前記接点操作用カム部材に形成され前記嵌合突起が嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合突起が嵌り込んだ嵌合凹部を閉止する閉止板とを備え、
前記閉止板には、前記嵌合突起を前記嵌合凹部に挿入・引き抜きする際に嵌合突起を案内する案内溝が形成されており、この案内溝の形成位置は、前記接点がOFF状態の場合にのみ前記嵌合凹部と案内溝とが連通する位置であることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−67500(P2010−67500A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233498(P2008−233498)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
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