説明

SIP電話交換システム

【課題】 SIPサーバの機能を何ら変更することなく、簡単にグループ着信を行うことができるSIP電話交換システムを提供すること、
【解決手段】 SIPサーバ1、IP網2および電話端末(UA)3A〜3Nからなる従来のSIP電話交換システムに、グループ呼び装置4を追加する。該グループ呼び装置4は、ハードウェアあるいはソフトウェアで構成できる。該グループ呼び装置4はタイマを有し、ハンティング着信時に該タイマにてハンティング間隔を独自に決定できる。また、該グループ呼び装置4は発呼側の電話端末(UA)と被呼側の電話端末(UA)のSIPメッセージを仲介すると共に、音声データをスルーする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はSIP電話交換システムに関し、特にSIPサーバを何ら変更することなくグループ着信を可能にしたSIP電話交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
SIP(RFC3261“Session Initiation Protocol")による電話交換システムの主装置にあたるSIPサーバは、SIPメッセージをプロキシ(転送)することをその主たる機能としている。該SIPサーバは、1つの呼を複数のUA(user agent)にプロキシする場合、RFC3261で規定されるパラレルサーチ及びシーケンシャルサーチの2つのサーチ機能をもつのが通常である。該パラレルサーチは、従来の電話交換機の群着信に相当し、該シーケンシャルサーチはハンティング着信に相当する。
なお、本発明に関連する従来技術として、特許文献1に記されているものがある。
【特許文献1】特表2003−517764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記シーケンシャルサーチは、着信先がビジーの場合はすぐ次のUAに着信するが、着信先が空きの場合は、RFC3261の規定に従い、タイマーC(3分より大きい値)がタイムアウトした後でしか次のUAに着信しないという課題があった。すなわち、従来の電話交換機によるハンティング着信の場合、着信させる端末群(グループ)や、呼の設定(内線、外線など)により、ハンティング間隔を設定できるが、該ハンティング間隔は通常10秒前後である。しかるに、SIPサーバによるシーケンシャルサーチでは、前記のように、ハンティング間隔は3分以上であり、ハンティング間隔が長すぎるという課題があった。また、それゆえ、従来のSIP電話交換システムでは、ハンティング着信あるいはグループ着信ができないという課題があった。
【0004】
この発明は、前記した従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、SIPサーバの機能を何ら変更することなく、簡単にグループ着信を行うことができるSIP電話交換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した目的を達成するために、本発明は、IP網に接続された複数の電話端末またはUAとSIPサーバとを少なくとも有するSIP電話交換システムにおいて、前記電話端末またはUAから着信があるとグループ呼びを行うグループ呼び装置を前記IP網内に設けた点に特徴がある。
【0006】
又、本発明は、前記グループ呼び装置はタイマを有し、ハンティング着信時に該タイマにてハンティング間隔を独自に決定できるようにした点に他の特徴がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、本発明によるグループ呼び装置をシステムに追加するだけで、従来のSIPサーバの機能を何ら変更することなく、簡単にグループ着信を行うことができるようになる。
【0008】
また、ハンティング着信時に前記タイマにてハンティング間隔を独自に決定できるので、例えば該ハンティング間隔を10秒程度に設定すれば、利用者に違和感を与えることのないグループ呼びを行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態のSIP電話交換システムの全体構成を示す構成図である。
【0010】
該SIP電話交換システムは、SIPサーバ(プロシキサーバ)1と、IP網2を介して接続された電話機等のUA3A〜3Nと、本発明により付加されたグループ呼び装置4から構成されている。該グループ呼び装置4は専用ハードウェアまたは汎用機器のソフトウェアで構成することができるが、本実施形態では、例えばUAで構成したとして説明する。ソフトウェアで構成した場合には、SIPサーバ1内に設けてもよい。なお、該SIP電話交換システムは、必要に応じて、PSTNゲートウェイ11を介して、NTT電話網に接続することができる。該グループ呼び装置4は、扱うグループを1つのUAとして、SIPサーバ1にREGISTER(登録)される。
【0011】
次に、前記グループ呼び装置4の構成を、具体的に説明する。グループ呼び装置4は、RFC3261が規定するBack-to-Back User Agent(B2BUA)である。グループ呼び装置4は、図2に示すように、呼を分配するグループの電話番号(SIP Uriのユーザパート)と、そのグループに所属する端末の電話番号(SIP Uriのユーザパート)と、ハンティング/群着の種別に関する情報を、少なくとも有している。これらの情報については、SIPサーバ1と情報を共有してもよいし、グループ呼び装置4の設定データとして持っていてもよいし、またはSIPサーバ1から何らかの形で取得してもよい。なお、SIP Uriのユーザパートとは、図3に示すような、SIPアドレス中のkey部分のデータ、例えば図示の「1111」である。
【0012】
また、ハンティング着の場合は、呼び順とその間隔などについてのデータを有している。この呼び順としては、たとえば、(1)グループ単位の設定順、(2)所属端末の電話番号の若番順、(3)所属端末の電話番号の老番順、(4)ランダム等を用いることができる。一方、前記間隔は例えばタイマで設定でき、例えば10秒に設定できる。このため、着信先が空きの場合には、10秒で次のUAに着信させることができるようになる。
【0013】
また、ハンティング着時の呼び順において、該当するグループに所属するUAの全てに着信をかけたが応答しない場合には、例えば(1)ロータリー(最初に戻って再度着信をかける)、(2)シリアル(全てのUAに着信したらそこで終了し発信元にビジーを返す)等の方式を用いることができる。
【0014】
次に、前記グループ呼び装置4の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
ステップS1で、グループ呼び装置4に着信があると、ステップS2に進んで、暫定応答を返し、必要であれば音声パスを成立させる。より具体的に説明すると、SIP電話交換システム内のあるUA、例えば、図1のUA(3A)が、着信を希望するグループを指定してグループ呼び装置4に発呼すると、その呼はSIPサーバ1を介してグループ呼び装置4に着信する。グループ呼び装置4はその着信に対してUA(3A)に暫定応答を返す。この暫定応答は、リンギングバックトーンあるいは音声でありうる。
【0015】
上記のことをSIPで表現するなら、UA(3A)が、INVITEを送信すると、SIPサーバ1がそのINVITEをグループ呼び装置4へプロキシする。グループ呼び装置4は受信したINVITEに対して、暫定応答180/181/182を返し、必要に応じて、アーリーメディアによる音声パスを成立させる。
【0016】
次に、ステップS3で、グループ呼び装置4は、新たな呼により、グループに所属する端末であるUAへ発信する。全てのUAがビジーである場合、最初の呼であるUA(3A)にビジーを通知する。空きのUAが応答しない場合には、本実施形態では10秒後に次のUAの呼出に移る。より具体的に説明すると、グループ呼び装置4は、新たなINVITEをグループ内の単一または複数のUAに送信する。ハンティング呼びの場合、INVITEに対する4××/6××(ビジーを表す)を受信したら直ぐ次のUAにINVITEを送信し、18×(ビジーでは無いことを表す)を受信したらタイマを起動し、T.O.(タイムアウト)によりCANCELを送信し、次のUAにINVITEを送信する。全てのUAがビジーであると判断した場合、最初の呼に対し4××を送信する。なお、×は数字を示す。
【0017】
ステップS4では、ある端末がグループ呼び装置4からの着信に応答した場合、暫定応答を返していた最初の呼、即ち前記UA(3A)に応答する。この時点で2つの呼間のルートが成立するので、グループ呼び装置4は、音声パスをこの2つの呼間でスルーする。すなわち、グループ呼び装置4のINVITEに対し200を受信したら、最初の呼に200を送信し、2つの呼を成立させる。
【0018】
ステップS5では、通話が成立した後は、グループ呼び装置4はそれぞれのUAから受信されるSIPメッセージを2つの呼を仲介する形でSIPサーバ1にプロキシする。これにより、その後の切断のみならず、SIP電話交換システムが持つ全ての機能が可能になる。
【0019】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、従来のSIPサーバを何ら変更することなくグループ着信を可能にすることができる。
【0020】
また、本発明は、前記グループ着信機能の外に、ACD(Automatic Call Distribution)機能、IVR(Interative Voice Response)機能をもせることができる。前記ACD機能は、グループ内の端末にハンティング着信を行う際に、端末の状態(ビジー/アイドル/後処理中/着信拒否中)、端末の総通話時間などを考慮に入れて、現在着信が受けられる端末の中で最も総通話時間が短い端末から着信させるようにする機能である。また、前記IVR機能は、外線着信をSIPサーバからプロキシされ、それに対して応答し、音声合成、音声認識その他の技術により通話相手の要望を確認し、適切なグループ又は端末に着信させる機能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の概略の構成を示すシステム図である。
【図2】グループ呼び装置に設けられるグループおよびグループ所属端末情報の一例を示す図である。
【図3】SIP Uriの説明図である。
【図4】グループ呼び装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1・・・SIPサーバ、2・・・IP網、3A〜3N・・・電話端末(UA)、4・・・グループ呼び装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網に接続された複数の電話端末またはUAとSIPサーバとを少なくとも有するSIP電話交換システムにおいて、
前記電話端末またはUAから着信があるとグループ呼びを行うグループ呼び装置を前記IP網内に設けたことを特徴とするSIP電話交換システム。
【請求項2】
請求項1に記載のSIP電話交換システムにおいて、
前記グループ呼び装置はタイマを有し、ハンティング着信時に該タイマにてハンティング間隔を独自に決定することを特徴とするSIP電話交換システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のSIP電話交換システムにおいて、
前記グループ呼び装置は、発呼側の電話端末またはUAと被呼側の電話端末またはUAのSIPメッセージを仲介することを特徴とするSIP電話交換システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のSIP電話交換システムにおいて、
前記グループ呼び装置は、発呼側の電話端末またはUAと被呼側の電話端末またはUAの音声データをスルーすることを特徴とするSIP電話交換システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のSIP電話交換システムにおいて、
前記グループ呼び装置は、前記IP網内にハアードウェアまたはソフトウェアで構成されることを特徴とするSIP電話交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−352543(P2006−352543A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176355(P2005−176355)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】