MIMO端末測定方法および測定システム
【課題】MIMO端末を、簡易な構成で低コストにOTA測定ができるようにする。
【解決手段】複数Mの基地局アンテナとMIMO端末の複数Nの端末アンテナとの間がM×Nの伝搬経路で結合されるモデルを想定し、M系列の基地局信号RF1、RF2から各伝搬経路に応じてフェージングが付与されたM×N系列のフェージング信号FRF1〜FRF4を生成し、これらを各端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波する。一方、楕円球状の結合器30の一方の焦点F2の近傍に端末アンテナ1a、1bを位置させ、他方の焦点F1の近傍で、且つ楕円球の長軸中心について各端末アンテナ1a、1bとほぼ点対称な位置に測定用アンテナ311、312を配置することで、端末アンテナと測定用アンテナとを1対1で選択的に結合させ、測定用アンテナ311、312に対して合波信号Q1、Q2を供給して、前記想定したモデルと等価状態を形成している。
【解決手段】複数Mの基地局アンテナとMIMO端末の複数Nの端末アンテナとの間がM×Nの伝搬経路で結合されるモデルを想定し、M系列の基地局信号RF1、RF2から各伝搬経路に応じてフェージングが付与されたM×N系列のフェージング信号FRF1〜FRF4を生成し、これらを各端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波する。一方、楕円球状の結合器30の一方の焦点F2の近傍に端末アンテナ1a、1bを位置させ、他方の焦点F1の近傍で、且つ楕円球の長軸中心について各端末アンテナ1a、1bとほぼ点対称な位置に測定用アンテナ311、312を配置することで、端末アンテナと測定用アンテナとを1対1で選択的に結合させ、測定用アンテナ311、312に対して合波信号Q1、Q2を供給して、前記想定したモデルと等価状態を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ばれる多入力多出力通信方式の端末測定を簡易に低コストに行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MIMO方式は、それぞれが複数のアンテナを有する無線通信機(主に、携帯電話等の移動体通信の基地局と携帯無線端末機)との間で、複数のデータを同時刻に同一周波数を用いて高速、大容量の通信を行うシステムであり、双方が有するアンテナ数によってそのシステムの規模が決定され、双方のアンテナ数が4である4×4MIMO方式では、双方のアンテナ数が1の従来の通信システムに比べて理想的に4倍の伝送速度(スループット)が得られる。
【0003】
このMIMO方式は、実際の移動体通信においては、複数Mの基地局側アンテナと複数Nの端末側アンテナとの間の伝搬路がマルチパス伝搬路となり、それぞれが統計的に独立した伝送路と見なせ、その各伝送路の特性がわかれば、受信側の各アンテナで受信される合波信号から、送信側の各アンテナから出力された信号の分離が可能となるという原理に基づいている。
【0004】
ここで、受信側のアンテナに入力される信号は、それぞれが異なるフェージングを受けた信号が重なりあい、互いに干渉を受けた信号となっており、MIMO方式では、この干渉を受けた信号の情報を、送信側にフィードバックし、送信側では各アンテナへの送信信号と、フィードバックされた情報とから各伝送路の特性を求め、その特性に基づいて受信側で最大のスループットが得られるように各アンテナへの送信信号の加工を行っている。
【0005】
このようなMIMO方式は、基地局、フェージング伝搬路、端末とが一体的に動作するシステムであるので、端末性能を評価するシステムとしても、基地局とフェージング伝搬路を模擬したシステムが必要となるが、端末のより実際に近い特性を測定するためには、空間で電波を送受信する、所謂OTA(Over The Air)測定が必要となる。
【0006】
MIMO端末に対するOTA測定を行うためのシステムの具体例として、図11に示す測定システムが知られている。
【0007】
この測定システムはフェージングエミュレータ型と呼ばれ、MIMO方式の基地局と同等の機能を有し、複数M系列(ここではM=4の例を示している)の基地局信号RF1〜RF4を出力する基地局装置11と、基地局装置11からの基地局信号RF1〜RF4を受けて、それらの各信号を、遅延特性やドップラシフト特性が任意に付与された仮想的な複数P(ここではP=8の例を示している)のフェージング伝搬路(パス)を通過させたときに得られるフェージング信号FRF1〜FRF8を生成するフェージングエミュレータ12と、電波無反射室13と、電波無反射室13内でMIMO端末1の周囲に仮想的散乱体として特定位置に配置され、フェージング信号FRF1〜FRF8がそれぞれ供給される複数Pのアンテナ141〜148とで構成されている。
【0008】
なお、フェージングエミュレータ12としては、これまで様々なものが提案されているが、MIMO方式に関するものとしては、図12のものが知られている。
【0009】
このフェージングエミュレータ12は、高周波の基地局信号RF1〜RF4を、それぞれダウンコンバータ(D/C)1211〜1214によって所定の中間周波数帯に変換し、A/D変換器(A/D)1221〜1224によってデジタル信号に変換して、それを接続マトリクス処理部(Connection Matrix)123によって複数P(ここでは8)の信号路に分配する。
【0010】
そして、分配された各信号は、それぞれ遅延器1241〜1248に入力されて、それぞれのパスに応じた遅延が付与された後、D/A変換器(D/A)1251〜1258によりアナログの中間周波帯の信号に変換され、さらにアップコンバータ(U/C)1261〜1268により元の高周波帯(端末との無線通信に用いる周波数帯)に変換されて、各アンテナ141〜148に供給される。
【0011】
なお、図12において、符号127はダウンコンバートおよびアップコンバート用のローカル信号発生器、符号128はアップコンバートの際にドップラシフトを選択的に付与するドップラシフト付与器(周波数可変器)、符号129は、各パスに付与する遅延量やドップラシフトを設定するためのパラメータ設定部である。
【0012】
このドップラシフトは、端末を携帯するものがバスや自動車、電車等で高速に移動する際に、端末と周囲の建物等の散乱体との距離が変化することにより生じるドップラ周波数をシミュレートするためのものである。
【0013】
このようなフェージングエミュレータ12を介してMIMO端末1の試験を行う場合、基地局装置11の出力信号に任意のフェージングを付与してMIMO端末1へ入力し、MIMO端末1からの応答を基地局装置1で確認して、付与したフェージングに対するMIMO端末1の種々の性能を把握する。
【0014】
上記構成のフェージングエミュレータおよびそれを用いたOTA測定法に関しては、例えば次の非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】唐沢好男、小佐古昴、清水昌彦、「MIMO フェージングエミュレータ型OTAシステムの簡易構成法」 信学技報 A・P2010・131(2010−12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように、電波無反射室13内で、仮想散乱体(パス)の数Pに応じたアンテナ14をMIMO端末1を囲むように配置する構成の測定システムは、フェージング環境のパラメータ設定の自由度が大きく、MIMO端末に対するOTA測定の標準的なものといえるが、電波無反射室13や仮想散乱体の数Pに応じた比較的多くのアンテナ14が必要で、システムが大掛かりとなり、構築コストが高くなるという問題がある。
【0017】
本発明は上記問題を解決し、より簡易な構成で、低コストに構築できるMIMO端末測定方法および測定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のMIMO端末測定方法は、
複数Nの端末アンテナ(1a、1b)を有するMIMO端末(1)に送信するための複数M系列の基地局信号を生成する段階と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成する段階と、
前記複数M×N系列のフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する段階と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する段階とを含んでいる。
【0019】
また、本発明の請求項2のMIMO端末測定システムは、
複数Nの端末アンテナを有するMIMO端末に送信するための複数M系列の基地局信号を出力するMIMO方式の基地局装置(11)と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成して出力するフェージングエミュレータ(12)と、
前記複数M×N系列で出力されるフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する合波部(25)と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間を有し、該空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する結合器(30)とを備えている。
【0020】
また、本発明の請求項3のMIMO端末測定システムは、請求項2記載のMIMO端末測定システムにおいて、
前記結合器には、該結合器内に保持した前記MIMO端末と前記複数の測定用アンテナとを、前記長軸に沿った方向に移動させる移動機構(35、36)が備えられていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項4のMIMO端末測定システムは、請求項2または請求項3記載のMIMO端末測定システムにおいて、
前記複数の測定用アンテナが電波吸収体(40)に覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記したように、本発明では、複数Mの基地局アンテナとMIMO端末の複数Nの端末アンテナとの間が複数M×Nの伝搬経路で結合される単純化されたモデルを想定し、M系列の基地局信号から各伝搬経路に応じてフェージングが付与された複数M×N系列のフェージング信号を生成し、これらを各端末アンテナへの到来波毎に合波する。一方、楕円球状の結合器の一方の焦点の近傍位置にMIMO端末の複数の端末アンテナが位置するように保持し、他方の焦点の近傍位置で、且つ楕円球の長軸中心について各端末アンテナとほぼ点対称な位置に測定用アンテナをそれぞれ配置して、結合器内で各端末アンテナと測定用アンテナとが1対1で選択的に結合する状態を形成し、それらの測定用アンテナに対して前記合波した信号を供給して、前記基地局アンテナと各端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成している。
【0023】
このため、大掛かりな電波無反射室が不要となり、しかも仮想散乱体数に応じた多くのアンテナも使わなくて済み、システムが簡易化され、低い構築コストで実現できる。
【0024】
また、結合器内に保持したMIMO端末と複数の測定用アンテナとを、長軸に沿った方向に移動させる移動機構を備えたものでは、結合器内における多重反射がある場合でも、端末アンテナと測定用アンテナとの分離度が高い位置に設定することができる。
【0025】
また、測定用アンテナを電波吸収体で覆ったものでは、多重反射成分を大きく減衰させることができ、周波数特性の大きな落ち込みを抑制して広帯域特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】基地局とMIMO端末の空間結合モデルの一例を示す図
【図2】本発明のM=N=2の実施形態の全体構成図
【図3】結合器のより具体的な構成を示す図
【図4】結合器内の測定用アンテナと端末アンテナの位置関係を示す図
【図5】測定用アンテナと端末アンテナの間隔を変化させたときの結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図6】測定用アンテナを吸収体で覆った状態を示す図
【図7】吸収体がある状態で測定用アンテナと端末アンテナの間隔を変化させたときの結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図8】吸収体がある状態で、測定用アンテナの間隔および端末アンテナの間隔を変えた場合の結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図9】吸収体がある状態で、周波数変化に対する結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図10】M=N=4の実施形態の全体構成図
【図11】従来の測定システムの構成図
【図12】フェージングエミュレータの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明するが、その前に、本発明の前提となる基地局とMIMO端末との想定される空間結合モデルを図1に示す。
【0028】
図1に示すように、基地局5の複数M(ここではM=2)の基地局アンテナ5a、5bから発射された電波Pa、Pbは、伝搬路6を介してMIMO端末1の複数N(ここではN=2とする)の端末アンテナ1a、1bに到達する。
【0029】
ここで、基地局アンテナ5aから発射された電波Paは、伝搬路6でそれぞれ固有のフェージング(遅延、減衰、およびドップラシフト)Fa、Fbを受けて、端末アンテナ1a、1bにそれぞれ到来し、基地局アンテナ5bから発射された電波Pbも、伝搬路6でそれぞれ固有のフェージングFc、Fdを受けて、端末アンテナ1a、1bにそれぞれ到来する。
【0030】
つまり、端末アンテナ1aに到来する電波は、電波PaにフェージングFaが付与されたもの[Pa*Fa]と、電波PbにフェージングFcが付与されたもの[Pb*Fc]の和で表される。
【0031】
同様に、端末アンテナ1bに到来する電波は、電波PaにフェージングFbが付与されたもの[Pa*Fb]と、電波PbにフェージングFdが付与されたもの[Pb*Fd]の和で表される。
【0032】
この単純化されたモデルをOTA測定で実現するには、M系列の基地局信号から、M×Nの伝搬路にそれぞれ応じたフェージングが付与されたM×N系列のフェージング信号を生成し、それらを端末アンテナへの到来波毎に合成して、その合成波を各端末アンテナに選択的に供給すればよい。
【0033】
これを実現した測定システムを図2に示す。この測定システムは、MIMO方式に対応した基地局装置11、フェージングエミュレータ12、合波部25、空間結合のための楕円球型の結合器30によって構成されている。
【0034】
図2において、基地局装置11およびフェージングエミュレータ12は前述したものと同じ構造であり、基地局装置11は、MIMO端末1に送信するための複数M系列(ここでは2×2MIMOの例であるからM=2)の基地局信号RF1、RF2をフェージングエミュレータ12に出力する。なお、ここでは詳述しないが、基地局装置11が出力する信号に対してフェージングエミュレータ12による任意のフェージングを付与してMIMO端末1へ送信し、MIMO端末1からの応答を基地局装置11で確認して、付与したフェージングに対するMIMO端末1の種々の性能を把握することになる。
【0035】
フェージングエミュレータ12は、M系列の基地局信号RF1、RF2を受け、基地局アンテナと端末アンテナとの間に想定されたM×N(ここでは2×2=4)の伝搬経路を経た4系列のフェージング信号FRF1〜FRF4を生成出力する。その内部処理は、前記フェージングエミュレータ12の構造で言えば、基地局信号RF1、RF2をダウンコンバートしてA/D変換して得た信号に対し、接続マトリクス処理でそれぞれ2分岐して4系列化し、それぞれに遅延処理、D/A、アップコンバートして、4系列のフェージング信号FRF1〜FRF4を得ることになる。ここで、フェージング信号FRF1は前記基地局アンテナ5aと端末アンテナ1aとの間の伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF2は基地局アンテナ5aと端末アンテナ1bとの間の伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF3は基地局アンテナ5bと端末アンテナ1aとの間の伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF4は基地局アンテナ5bと端末アンテナ1bとの間の伝搬経路に対応している。
【0036】
これらのフェージング信号FRF1〜FRF4は、合波部25に入力される。合波部25は、4系列のフェージング信号FRF1〜FRF4に対して、前記N個の端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号Q1、Q2を生成する。
【0037】
図2の合波部25は、M=N=2に対応したものであり、フェージングエミュレータ12から出力されたフェージング信号FRF1〜FRF4のうち、端末アンテナ1aに与える信号FRF1、FRF3を同相型の合波器261に入力して合波信号Q1を生成し、端末アンテナ1bに与える信号FRF2、FRF4を同相型の合波器262に入力して合波信号Q2を生成する。
【0038】
このようにして生成された合波信号Q1、Q2は結合器30に入力される。結合器30は、楕円をその長軸を中心に回転して得られる楕円球状の空間が電波を反射させる金属壁で覆われて形成され、その空間内の楕円の長軸上の一方の焦点F2の近傍位置に複数の端末アンテナ1a、1bが位置するようにMIMO端末1を保持するとともに、複数N系列の合波信号Q1、Q2がそれぞれ供給される複数の測定用アンテナ311〜312を、他方の焦点F1の近傍位置で、且つ、楕円の長軸中心Oに対して各端末アンテナ1a、1bとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、空間内で各測定用アンテナ311、312と各端末アンテナ1a、1bとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記想定した複数Mの基地局アンテナと複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成する。
【0039】
この楕円球型の結合器30は、電波を反射する金属板(板あるいは膜体等)によって、楕円をその長軸を中心に回転させて得られる中空の楕円球空間を内部に形成したものであり、本願出願人は、楕円の幾何学的性質を利用し、長軸上の2つの焦点F1、F2の一方に配置したアンテナから出て内壁で反射された電波を他方の焦点に配置したアンテナで集中的に受信させて、単一アンテナや端末アンテナを有する端末の特性試験に適用していた。
【0040】
本願出願人らは、この楕円球空間型の結合器30が、一方の焦点の近傍に配置されたアンテナ群と他方の焦点の近傍位置に配置されたアンテナ群の各アンテナ同士が、楕円中心に対して互いに点対称な位置(厳密には僅かなずれも許容する)に配置されているときに、その点対称なもの同士が1対1で選択的に結合されるという点を利用している。
【0041】
なお、幾何光学では、焦点から楕円長軸に直交する方向に微小変位させた光源から出た光は楕円球空間の内壁面で反射した後、点対称となる位置を中心に収束する。点対称の位置が最も光が強くなるが、1点に集約されずに空間的に広がりをもち、ガウス分布することが知られている。電波の場合もほぼ同様であるが、電波は光のように一点から出射されないことや、楕円球空間の大きさを、波長に対して無視できる大きくすることはできないこと等の理由により、光の場合より分布が広がるので、各測定用アンテナについての分布の中心がそれぞれ端末アンテナの位置にあって、且つその分布の重なりが少ない状態にすることで、測定用アンテナと端末アンテナとが1対1で選択的に結合されることになる。
【0042】
図2の構成例では、結合器30の一方の焦点位置F2を挟み、且つ楕円長軸と直交する線上にMIMO端末1の端末アンテナ1a、1bを配置し、それと点対称な位置に二つの測定用アンテナ311、312を配置し、各測定用アンテナ311、312に対して前記合波部25によって生成された合波信号Q1、Q2を供給している。
【0043】
ただし、前記した分布の重なり等を考慮して、端末アンテナ1a、1bの間隔(後述の図4のd)と二つの測定用アンテナ311、312の間隔(後述の図4のd′)を、必ずしも同一にしなくてもよい。つまり、二つの測定用アンテナの一方から送信された電波に対して二つの端末アンテナが十分な分離度をもって受信する(1対1で選択的に結合する)ことが重要である。
【0044】
つまり、実際の端末アンテナ1a、1bの間隔dは携帯端末の設計で決まってしまうのに対し、二つの測定用アンテナの間隔は任意に選べるので、各測定用アンテナの放射電波の端末近傍位置における集約点の分布が重ならない(十分な分離度が得られる)ように間隔d′を変化させてもよい。この場合、各端末アンテナに対する測定用アンテナの位置が点対称の位置からずれることになるが、そのずれ量は測定用アンテナと端末アンテナの距離(ほぼ焦点間の距離で例えば1000mm程度)に対して十分小さい(λ/4=50mm程度)ことが確かめられているので、本発明ではこのずれ分も含めて「ほぼ点対称な位置」としている。
【0045】
なお、波長に比べて大きな楕円球空間を用いる程、集約点の分布の広がりを小さくすることができ、端末アンテナの間隔が狭い場合であっても、それと点対称位置あるいは点対称位置から極僅かずれた位置に配置した測定用アンテナに選択的に結合させることが可能である。
【0046】
ここでは各端末アンテナ1a、1bおよび測定用アンテナ311、312をダイポール系(スリーブアンテナも含む)とし、両者が直接結合しない向き、即ち、各アンテナの長さ方向が楕円の長軸に平行なコリニア配置とする。
【0047】
このように、実施形態のMIMO測定方法は、複数Nの端末アンテナ1a、1bを有するMIMO端末1に送信するための複数M系列の基地局信号を生成し、複数Mの基地局アンテナからMIMO端末の複数Nの端末アンテナに至るM×Nの伝搬経路を想定し、複数M系列の基地局信号を受け、複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された複数M×N系列のフェージング信号を生成する。そして、それらのフェージング信号を、複数Nの端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成し、電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に複数Nの端末アンテナ1a、1bが位置するようにMIMO端末1を保持するとともに、複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ311、312を、長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、長軸中心に対して各端末アンテナ1a、1bとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で各測定用アンテナ311、312と各端末アンテナ1a、1bとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、想定した複数Mの基地局アンテナと複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成している。
【0048】
また、システムの構成で言えば、複数Nの端末アンテナ1a、1bを有するMIMO端末1に送信するための複数M系列の基地局信号を出力するMIMO方式の基地局装置11と、複数Mの基地局アンテナからMIMO端末の複数Nの端末アンテナに至るM×Nの伝搬経路を想定し、複数M系列の基地局信号を受け、M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された複数M×N系列のフェージング信号を生成出力するフェージングエミュレータ12と、複数M×N系列のフェージング信号を、複数Nの端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する合波部25と、電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間を有し、その空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に複数Nの端末アンテナ1a、1bが位置するようにMIMO端末1を保持するとともに、複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ311、312を、長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、長軸中心に対して各端末アンテナ1a、1bとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、空間内で各測定用アンテナと各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、複数Mの基地局アンテナと複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成する結合器30とを備えている。
【0049】
このような測定方法および測定システムによれば、合波部25で生成された一方の合波信号Q1が測定用アンテナ311に供給されて、その信号Q1の電波がMIMO端末1の一方の端末アンテナ1aで選択的に受信され、他方の合波信号Q2が測定用アンテナ312に供給されて、その信号Q2の電波がMIMO端末1の他方の端末アンテナ1bで選択的に受信されることになり、前記単純化された空間結合モデルに対応したフェージング試験が行える。
【0050】
ただし、楕円球型の結合器30を用いた場合、一方の測定用アンテナから出た電波が内壁で反射して一方の端末アンテナ1aで全て吸収されるわけでなく、この端末アンテナ1aの位置を通過して再び内壁で反射し、測定用アンテナに戻り、再度内壁側に出射するという多重反射モードが生じ、この多重反射波の干渉により、アンテナ間の結合の周波数特性にリップルが生じて、試験周波数で高い結合度が得られなくなる場合がある。
【0051】
この状態は、MIMO端末1と測定用アンテナ311、312との距離を調整することで回避することが可能であり、図3に概略構造を示すように、MIMO端末1と測定用アンテナをそれぞれ保持するための保持部(構造は任意であるが電波の伝搬に影響を与えない材質で構成する)33、34を、楕円球の長軸に沿って移動させる移動機構36、37を設け、前記した点対称配置を維持したまま楕円中心Oに対して対称移動させ、両者の結合度が最大となるように位置決めしてから試験を行えばよい。
【0052】
移動機構としては、保持部33、34の一部を結合器30の外部に突出させ、これを楕円長軸に沿って手動あるいはステッピングモータ等の駆動によりスライド移動させる機構が採用できる。
【0053】
また、結合器30自体についても種々の構造が考えられる。即ち、結合器30は、基本的に電波を反射する金属壁で楕円球空間を覆う構造あるから、MIMO端末のセッティング作業の容易性等を考慮すれば、楕円球空間を内部に形成している隔壁部材を、楕円の長軸に沿った平面で上下に2分した構造にして最大の開口面を得るのが好ましい。
【0054】
その場合、下側の隔壁部材をベース部とし、上側の隔壁部材を下側の隔壁部材に被せる(位置決めは必要)だけの単純な分離構造や、上側の隔壁部材を下側の隔壁部材に対して蝶番によって連結した開閉自在な構造とする等、任意の構造が採用できる。また、電波を反射する金属壁は金属板、金属網あるいは金属塗料で形成することができる。
【0055】
次に、上記結合器30における測定用アンテナ311、312と端末アンテナ1a、1b(実際はシミュレーション用の擬似的なアンテナである)の間の結合度および分離度に関するシミュレーション結果について説明する。
【0056】
図4は、そのシミュレーションに用いた結合器30およびアンテナ構造の例を示すものであり、導電率σ=2×105S/mの金属壁で形成された結合器30の楕円球空間の長軸径2a=1200mm、短軸径2b=1094mm、離心率=0.41で、周波数1.47GHz(波長λ204.1mm)としている。また、各アンテナは全て半波長ダイポールであり、便宜上一方の焦点側の2つのアンテナ(測定用)に#1、#4、他方の焦点側の2つのアンテナ(端末アンテナ)に#2、#3のナンバーを付している。また、アンテナ#1、#4の間隔をd′、アンテナ#2、#3の間隔をdとしている(実際の端末内のアンテナ間距離と測定用アンテナの距離を厳密に一致させることが困難なことを想定しており、理想的にはd=d′でよい)。
【0057】
図5は、測定用のアンテナ群の中心位置と端末アンテナ群の中心位置とを楕円長軸上の基準位置(焦点位置)から対称に変位させたときのアンテナ#1からアンテナ#2、#3に対する透過係数S31、S21を測定したシミュレーション結果である。ここで変位Δz=0が基準位置であり、+方向が外側への変位、−方向が内側への変位を表す。
【0058】
図5の(a)は、d=d′=0.25λの場合で、Δz=60mmの位置でS31とS21の差、即ち、分離度が最大の20dB得られることがわかる。また、図5の(b)は、d=d′=0.5λの場合で、Δz=80mmの位置で分離度が最大となり、やはり最20dB近い値得られることがわかる。さらにこの場合には、Δz=−20mmの位置でも10dB以上の十分な分離度が得られている。図5の(c)は、d=0.25λ、d′=0.3λの場合で、Δz=60mmの位置で分離度最大となり、30dB近い値が得られることがわかる。この図5の(c)のようなd≠d′の例から、端末アンテナと測定用アンテナの対称性が、間隔比で20パーセント{=100×(0.3−0.25)/0.25}程度低下していても、十分な分離度が得られるものと推察できる。
【0059】
このように、前記した点対称性を維持しつつ両アンテナ群の距離を調整することで、多重反射によるリップルの影響を受けない状態で測定に必要な分離度を得ることができる。
【0060】
上記実施形態は、多重反射の影響が少ない位置を選んで測定するというものであるが、そのためにアンテナ群の移動機構が必要となり、広帯域測定を迅速に行う場合に不利である。
【0061】
この点を改善する方法として、多重反射そのものを減らすことが考えられるが、2回目以降の反射波のみを選択的に減衰させることは現実的には困難である。
【0062】
そこで、本願発明者らは、アンテナ#1、#4(測定用アンテナ)の周囲を電波吸収体で覆うことで、多重反射波を大きく減衰させることができることを見出した。
【0063】
この場合、最初の出射波に対する減衰も発生するが、その減衰分を見込んで供給信号レベルを増加させておけばよく、端末アンテナを通過して測定用アンテナの位置に戻ってきた電波を電波吸収体によって減衰させる。ここで電波吸収体による減衰量を例えば6dBとすれば1度目の戻り波に対して電力比1/4、2度目の戻り波に対して電力比1/16に減衰させることができ、それ以降の反射波を無視できる。
【0064】
この電波吸収体を用いた実験について説明する。
図6は、その電波吸収体40を用いた結合器30の構造であり、結合器自体の構造およびアンテナは、前記図4の場合と同様である。
【0065】
電波吸収体40としては、次の表に示すように電気定数の異なる2種類の材料、吸収体A、Bを用いている(材質はカーボン含浸ウレタンである)。
【0066】
【表1】
【0067】
前記同様に、d=d=0.5λ(電波吸収体40で覆う都合上間隔を広くしている)、透過率S31、S21を測定した結果が図7(a)、(b)であり、透過率の差の分離度も一点鎖線で示している。
【0068】
図7の(a)は吸収率の小さい吸収体Aを用いた場合の結果であり、S31、S21のレベルが比較的高く、その変化は緩やかで、分離度は、−120mm〜+120mmの変位範囲のうち、−30mm〜0mmの範囲で10〜15dBが得られている。
【0069】
また、図7の(b)は吸収率が比較的大きい吸収体Bを用いた場合の結果であり、S31、S21のレベルが吸収体Aの場合に比べて15dB程度低下しているが、その変化はさらに緩やかとなり、分離度は、−20mm〜−10mmの範囲で10〜11dBが得られている。
【0070】
図8は、d=d′=0.25λの場合の透過率S31、S21と分離度を測定した結果であり、吸収体Aを用いた図8の(a)の結果は、図7の(a)の場合とほぼ同様に、−30mm〜0mmの範囲で分離度10〜16dBが得られ、吸収体Bを用いた図8の(b)の結果は、図7の(b)の場合とほぼ同様に、−30mm〜0mmの範囲で分離度10〜16dBが得られ、−20mm〜−5mmの範囲で、分離度10〜11dBが得られている。
【0071】
なお、原理上、MIMO端末1の端末アンテナ間の距離が短いと分離度が低下するが、その場合、前記したように測定用アンテナ間の距離を微調整することで必要な分離度を確保することができることを確認している。MIMO端末1の端末アンテナ間の距離は端末の設計事項であり固定されているが、測定用アンテナ間の距離は任意に可変できるので、結合器30に測定用アンテナの間隔調整機構を設けておくことで、高い分離度を維持した試験が行える。これは前記した保持部34に測定用アンテナの間隔調整部(図示せず)を設けておけばよい。
【0072】
図9は、アンテナ間隔d=d′=0.5λで、且つ両アンテナ群の中心がそれぞれ基準位置(焦点位置z=0)にあるときの透過率S31、21と分離度の周波数特性の測定結果を示すものであ。
【0073】
吸収体Aを用いた図9の(a)の周波数特性には比較的大きなリップルが残っているが、より吸収率が大きい吸収体Bを用いた図9の(b)の周波数特性は平坦な特性となり、広帯域信号を伝送するMIMO端末の測定により好適と言える。
【0074】
また、前記実施形態ではM=N=2の例を示したが、M=N=4の場合には、図10に示すように、基地局装置1から4系列の基地局信号RF1〜RF4をフェージングエミュレータ12に入力し、4本の基地局アンテナ(図示せず)と4本の端末アンテナ1a〜1dとの間が16(=4×4)の伝搬経路で結合されるモデルを想定し、その各伝搬経路に応じてフェージングが付与された16系列のフェージング信号FRF1−1〜FRF4−4を生成し、これらを合波部25の4つの合波器261〜264により4つの端末アンテナ1a〜1dの到来波毎に合波する。
【0075】
ここで、フェージング信号FRF1−1〜FRF1−4は、第1の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF1−1〜FRF1−4は、第1の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF2−1〜FRF2−4は、第2の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF3−1〜FRF3−4は、第3の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF4−1〜FRF4−4は、第4の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応している。
【0076】
そして、楕円球状の結合器30の一方の焦点の近傍位置にMIMO端末1の4つの端末アンテナ1a〜1dが位置するように保持し、他方の焦点の近傍位置で、且つ楕円球の長軸中心について各端末アンテナとほぼ点対称な位置に4つの測定用アンテナ311〜314をそれぞれ配置して、結合器30内で各端末アンテナ1a〜1dと測定用アンテナ311〜314とが点対称配置のもの同士で1対1に選択的に結合する状態を形成し、それらの測定用アンテナ311〜314に対して、合波信号Q1〜Q4をそれぞれ供給して、想定された4つの基地局アンテナと4つの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成すればよい。
【0077】
この場合でも、各測定用アンテナと各端末アンテナとがより高い分離度で1対1に選択的に結合できるように、前記した移動機構35、36を併用したり、また多重反射の影響を抑圧するための電波吸収体を用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1……MIMO端末、1a、1b……端末アンテナ、11……基地局装置、12……フェージングエミュレータ、14……アンテナ(仮想散乱体)、20……MIMO端末測定システム、25……合波部、30……結合器、311、312……測定用アンテナ、33、34……保持部、35、36……移動機構、40……電波吸収体
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ばれる多入力多出力通信方式の端末測定を簡易に低コストに行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MIMO方式は、それぞれが複数のアンテナを有する無線通信機(主に、携帯電話等の移動体通信の基地局と携帯無線端末機)との間で、複数のデータを同時刻に同一周波数を用いて高速、大容量の通信を行うシステムであり、双方が有するアンテナ数によってそのシステムの規模が決定され、双方のアンテナ数が4である4×4MIMO方式では、双方のアンテナ数が1の従来の通信システムに比べて理想的に4倍の伝送速度(スループット)が得られる。
【0003】
このMIMO方式は、実際の移動体通信においては、複数Mの基地局側アンテナと複数Nの端末側アンテナとの間の伝搬路がマルチパス伝搬路となり、それぞれが統計的に独立した伝送路と見なせ、その各伝送路の特性がわかれば、受信側の各アンテナで受信される合波信号から、送信側の各アンテナから出力された信号の分離が可能となるという原理に基づいている。
【0004】
ここで、受信側のアンテナに入力される信号は、それぞれが異なるフェージングを受けた信号が重なりあい、互いに干渉を受けた信号となっており、MIMO方式では、この干渉を受けた信号の情報を、送信側にフィードバックし、送信側では各アンテナへの送信信号と、フィードバックされた情報とから各伝送路の特性を求め、その特性に基づいて受信側で最大のスループットが得られるように各アンテナへの送信信号の加工を行っている。
【0005】
このようなMIMO方式は、基地局、フェージング伝搬路、端末とが一体的に動作するシステムであるので、端末性能を評価するシステムとしても、基地局とフェージング伝搬路を模擬したシステムが必要となるが、端末のより実際に近い特性を測定するためには、空間で電波を送受信する、所謂OTA(Over The Air)測定が必要となる。
【0006】
MIMO端末に対するOTA測定を行うためのシステムの具体例として、図11に示す測定システムが知られている。
【0007】
この測定システムはフェージングエミュレータ型と呼ばれ、MIMO方式の基地局と同等の機能を有し、複数M系列(ここではM=4の例を示している)の基地局信号RF1〜RF4を出力する基地局装置11と、基地局装置11からの基地局信号RF1〜RF4を受けて、それらの各信号を、遅延特性やドップラシフト特性が任意に付与された仮想的な複数P(ここではP=8の例を示している)のフェージング伝搬路(パス)を通過させたときに得られるフェージング信号FRF1〜FRF8を生成するフェージングエミュレータ12と、電波無反射室13と、電波無反射室13内でMIMO端末1の周囲に仮想的散乱体として特定位置に配置され、フェージング信号FRF1〜FRF8がそれぞれ供給される複数Pのアンテナ141〜148とで構成されている。
【0008】
なお、フェージングエミュレータ12としては、これまで様々なものが提案されているが、MIMO方式に関するものとしては、図12のものが知られている。
【0009】
このフェージングエミュレータ12は、高周波の基地局信号RF1〜RF4を、それぞれダウンコンバータ(D/C)1211〜1214によって所定の中間周波数帯に変換し、A/D変換器(A/D)1221〜1224によってデジタル信号に変換して、それを接続マトリクス処理部(Connection Matrix)123によって複数P(ここでは8)の信号路に分配する。
【0010】
そして、分配された各信号は、それぞれ遅延器1241〜1248に入力されて、それぞれのパスに応じた遅延が付与された後、D/A変換器(D/A)1251〜1258によりアナログの中間周波帯の信号に変換され、さらにアップコンバータ(U/C)1261〜1268により元の高周波帯(端末との無線通信に用いる周波数帯)に変換されて、各アンテナ141〜148に供給される。
【0011】
なお、図12において、符号127はダウンコンバートおよびアップコンバート用のローカル信号発生器、符号128はアップコンバートの際にドップラシフトを選択的に付与するドップラシフト付与器(周波数可変器)、符号129は、各パスに付与する遅延量やドップラシフトを設定するためのパラメータ設定部である。
【0012】
このドップラシフトは、端末を携帯するものがバスや自動車、電車等で高速に移動する際に、端末と周囲の建物等の散乱体との距離が変化することにより生じるドップラ周波数をシミュレートするためのものである。
【0013】
このようなフェージングエミュレータ12を介してMIMO端末1の試験を行う場合、基地局装置11の出力信号に任意のフェージングを付与してMIMO端末1へ入力し、MIMO端末1からの応答を基地局装置1で確認して、付与したフェージングに対するMIMO端末1の種々の性能を把握する。
【0014】
上記構成のフェージングエミュレータおよびそれを用いたOTA測定法に関しては、例えば次の非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】唐沢好男、小佐古昴、清水昌彦、「MIMO フェージングエミュレータ型OTAシステムの簡易構成法」 信学技報 A・P2010・131(2010−12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように、電波無反射室13内で、仮想散乱体(パス)の数Pに応じたアンテナ14をMIMO端末1を囲むように配置する構成の測定システムは、フェージング環境のパラメータ設定の自由度が大きく、MIMO端末に対するOTA測定の標準的なものといえるが、電波無反射室13や仮想散乱体の数Pに応じた比較的多くのアンテナ14が必要で、システムが大掛かりとなり、構築コストが高くなるという問題がある。
【0017】
本発明は上記問題を解決し、より簡易な構成で、低コストに構築できるMIMO端末測定方法および測定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のMIMO端末測定方法は、
複数Nの端末アンテナ(1a、1b)を有するMIMO端末(1)に送信するための複数M系列の基地局信号を生成する段階と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成する段階と、
前記複数M×N系列のフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する段階と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する段階とを含んでいる。
【0019】
また、本発明の請求項2のMIMO端末測定システムは、
複数Nの端末アンテナを有するMIMO端末に送信するための複数M系列の基地局信号を出力するMIMO方式の基地局装置(11)と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成して出力するフェージングエミュレータ(12)と、
前記複数M×N系列で出力されるフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する合波部(25)と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間を有し、該空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する結合器(30)とを備えている。
【0020】
また、本発明の請求項3のMIMO端末測定システムは、請求項2記載のMIMO端末測定システムにおいて、
前記結合器には、該結合器内に保持した前記MIMO端末と前記複数の測定用アンテナとを、前記長軸に沿った方向に移動させる移動機構(35、36)が備えられていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項4のMIMO端末測定システムは、請求項2または請求項3記載のMIMO端末測定システムにおいて、
前記複数の測定用アンテナが電波吸収体(40)に覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記したように、本発明では、複数Mの基地局アンテナとMIMO端末の複数Nの端末アンテナとの間が複数M×Nの伝搬経路で結合される単純化されたモデルを想定し、M系列の基地局信号から各伝搬経路に応じてフェージングが付与された複数M×N系列のフェージング信号を生成し、これらを各端末アンテナへの到来波毎に合波する。一方、楕円球状の結合器の一方の焦点の近傍位置にMIMO端末の複数の端末アンテナが位置するように保持し、他方の焦点の近傍位置で、且つ楕円球の長軸中心について各端末アンテナとほぼ点対称な位置に測定用アンテナをそれぞれ配置して、結合器内で各端末アンテナと測定用アンテナとが1対1で選択的に結合する状態を形成し、それらの測定用アンテナに対して前記合波した信号を供給して、前記基地局アンテナと各端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成している。
【0023】
このため、大掛かりな電波無反射室が不要となり、しかも仮想散乱体数に応じた多くのアンテナも使わなくて済み、システムが簡易化され、低い構築コストで実現できる。
【0024】
また、結合器内に保持したMIMO端末と複数の測定用アンテナとを、長軸に沿った方向に移動させる移動機構を備えたものでは、結合器内における多重反射がある場合でも、端末アンテナと測定用アンテナとの分離度が高い位置に設定することができる。
【0025】
また、測定用アンテナを電波吸収体で覆ったものでは、多重反射成分を大きく減衰させることができ、周波数特性の大きな落ち込みを抑制して広帯域特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】基地局とMIMO端末の空間結合モデルの一例を示す図
【図2】本発明のM=N=2の実施形態の全体構成図
【図3】結合器のより具体的な構成を示す図
【図4】結合器内の測定用アンテナと端末アンテナの位置関係を示す図
【図5】測定用アンテナと端末アンテナの間隔を変化させたときの結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図6】測定用アンテナを吸収体で覆った状態を示す図
【図7】吸収体がある状態で測定用アンテナと端末アンテナの間隔を変化させたときの結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図8】吸収体がある状態で、測定用アンテナの間隔および端末アンテナの間隔を変えた場合の結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図9】吸収体がある状態で、周波数変化に対する結合度(分離度)の変化を示す測定結果
【図10】M=N=4の実施形態の全体構成図
【図11】従来の測定システムの構成図
【図12】フェージングエミュレータの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明するが、その前に、本発明の前提となる基地局とMIMO端末との想定される空間結合モデルを図1に示す。
【0028】
図1に示すように、基地局5の複数M(ここではM=2)の基地局アンテナ5a、5bから発射された電波Pa、Pbは、伝搬路6を介してMIMO端末1の複数N(ここではN=2とする)の端末アンテナ1a、1bに到達する。
【0029】
ここで、基地局アンテナ5aから発射された電波Paは、伝搬路6でそれぞれ固有のフェージング(遅延、減衰、およびドップラシフト)Fa、Fbを受けて、端末アンテナ1a、1bにそれぞれ到来し、基地局アンテナ5bから発射された電波Pbも、伝搬路6でそれぞれ固有のフェージングFc、Fdを受けて、端末アンテナ1a、1bにそれぞれ到来する。
【0030】
つまり、端末アンテナ1aに到来する電波は、電波PaにフェージングFaが付与されたもの[Pa*Fa]と、電波PbにフェージングFcが付与されたもの[Pb*Fc]の和で表される。
【0031】
同様に、端末アンテナ1bに到来する電波は、電波PaにフェージングFbが付与されたもの[Pa*Fb]と、電波PbにフェージングFdが付与されたもの[Pb*Fd]の和で表される。
【0032】
この単純化されたモデルをOTA測定で実現するには、M系列の基地局信号から、M×Nの伝搬路にそれぞれ応じたフェージングが付与されたM×N系列のフェージング信号を生成し、それらを端末アンテナへの到来波毎に合成して、その合成波を各端末アンテナに選択的に供給すればよい。
【0033】
これを実現した測定システムを図2に示す。この測定システムは、MIMO方式に対応した基地局装置11、フェージングエミュレータ12、合波部25、空間結合のための楕円球型の結合器30によって構成されている。
【0034】
図2において、基地局装置11およびフェージングエミュレータ12は前述したものと同じ構造であり、基地局装置11は、MIMO端末1に送信するための複数M系列(ここでは2×2MIMOの例であるからM=2)の基地局信号RF1、RF2をフェージングエミュレータ12に出力する。なお、ここでは詳述しないが、基地局装置11が出力する信号に対してフェージングエミュレータ12による任意のフェージングを付与してMIMO端末1へ送信し、MIMO端末1からの応答を基地局装置11で確認して、付与したフェージングに対するMIMO端末1の種々の性能を把握することになる。
【0035】
フェージングエミュレータ12は、M系列の基地局信号RF1、RF2を受け、基地局アンテナと端末アンテナとの間に想定されたM×N(ここでは2×2=4)の伝搬経路を経た4系列のフェージング信号FRF1〜FRF4を生成出力する。その内部処理は、前記フェージングエミュレータ12の構造で言えば、基地局信号RF1、RF2をダウンコンバートしてA/D変換して得た信号に対し、接続マトリクス処理でそれぞれ2分岐して4系列化し、それぞれに遅延処理、D/A、アップコンバートして、4系列のフェージング信号FRF1〜FRF4を得ることになる。ここで、フェージング信号FRF1は前記基地局アンテナ5aと端末アンテナ1aとの間の伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF2は基地局アンテナ5aと端末アンテナ1bとの間の伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF3は基地局アンテナ5bと端末アンテナ1aとの間の伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF4は基地局アンテナ5bと端末アンテナ1bとの間の伝搬経路に対応している。
【0036】
これらのフェージング信号FRF1〜FRF4は、合波部25に入力される。合波部25は、4系列のフェージング信号FRF1〜FRF4に対して、前記N個の端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号Q1、Q2を生成する。
【0037】
図2の合波部25は、M=N=2に対応したものであり、フェージングエミュレータ12から出力されたフェージング信号FRF1〜FRF4のうち、端末アンテナ1aに与える信号FRF1、FRF3を同相型の合波器261に入力して合波信号Q1を生成し、端末アンテナ1bに与える信号FRF2、FRF4を同相型の合波器262に入力して合波信号Q2を生成する。
【0038】
このようにして生成された合波信号Q1、Q2は結合器30に入力される。結合器30は、楕円をその長軸を中心に回転して得られる楕円球状の空間が電波を反射させる金属壁で覆われて形成され、その空間内の楕円の長軸上の一方の焦点F2の近傍位置に複数の端末アンテナ1a、1bが位置するようにMIMO端末1を保持するとともに、複数N系列の合波信号Q1、Q2がそれぞれ供給される複数の測定用アンテナ311〜312を、他方の焦点F1の近傍位置で、且つ、楕円の長軸中心Oに対して各端末アンテナ1a、1bとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、空間内で各測定用アンテナ311、312と各端末アンテナ1a、1bとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記想定した複数Mの基地局アンテナと複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成する。
【0039】
この楕円球型の結合器30は、電波を反射する金属板(板あるいは膜体等)によって、楕円をその長軸を中心に回転させて得られる中空の楕円球空間を内部に形成したものであり、本願出願人は、楕円の幾何学的性質を利用し、長軸上の2つの焦点F1、F2の一方に配置したアンテナから出て内壁で反射された電波を他方の焦点に配置したアンテナで集中的に受信させて、単一アンテナや端末アンテナを有する端末の特性試験に適用していた。
【0040】
本願出願人らは、この楕円球空間型の結合器30が、一方の焦点の近傍に配置されたアンテナ群と他方の焦点の近傍位置に配置されたアンテナ群の各アンテナ同士が、楕円中心に対して互いに点対称な位置(厳密には僅かなずれも許容する)に配置されているときに、その点対称なもの同士が1対1で選択的に結合されるという点を利用している。
【0041】
なお、幾何光学では、焦点から楕円長軸に直交する方向に微小変位させた光源から出た光は楕円球空間の内壁面で反射した後、点対称となる位置を中心に収束する。点対称の位置が最も光が強くなるが、1点に集約されずに空間的に広がりをもち、ガウス分布することが知られている。電波の場合もほぼ同様であるが、電波は光のように一点から出射されないことや、楕円球空間の大きさを、波長に対して無視できる大きくすることはできないこと等の理由により、光の場合より分布が広がるので、各測定用アンテナについての分布の中心がそれぞれ端末アンテナの位置にあって、且つその分布の重なりが少ない状態にすることで、測定用アンテナと端末アンテナとが1対1で選択的に結合されることになる。
【0042】
図2の構成例では、結合器30の一方の焦点位置F2を挟み、且つ楕円長軸と直交する線上にMIMO端末1の端末アンテナ1a、1bを配置し、それと点対称な位置に二つの測定用アンテナ311、312を配置し、各測定用アンテナ311、312に対して前記合波部25によって生成された合波信号Q1、Q2を供給している。
【0043】
ただし、前記した分布の重なり等を考慮して、端末アンテナ1a、1bの間隔(後述の図4のd)と二つの測定用アンテナ311、312の間隔(後述の図4のd′)を、必ずしも同一にしなくてもよい。つまり、二つの測定用アンテナの一方から送信された電波に対して二つの端末アンテナが十分な分離度をもって受信する(1対1で選択的に結合する)ことが重要である。
【0044】
つまり、実際の端末アンテナ1a、1bの間隔dは携帯端末の設計で決まってしまうのに対し、二つの測定用アンテナの間隔は任意に選べるので、各測定用アンテナの放射電波の端末近傍位置における集約点の分布が重ならない(十分な分離度が得られる)ように間隔d′を変化させてもよい。この場合、各端末アンテナに対する測定用アンテナの位置が点対称の位置からずれることになるが、そのずれ量は測定用アンテナと端末アンテナの距離(ほぼ焦点間の距離で例えば1000mm程度)に対して十分小さい(λ/4=50mm程度)ことが確かめられているので、本発明ではこのずれ分も含めて「ほぼ点対称な位置」としている。
【0045】
なお、波長に比べて大きな楕円球空間を用いる程、集約点の分布の広がりを小さくすることができ、端末アンテナの間隔が狭い場合であっても、それと点対称位置あるいは点対称位置から極僅かずれた位置に配置した測定用アンテナに選択的に結合させることが可能である。
【0046】
ここでは各端末アンテナ1a、1bおよび測定用アンテナ311、312をダイポール系(スリーブアンテナも含む)とし、両者が直接結合しない向き、即ち、各アンテナの長さ方向が楕円の長軸に平行なコリニア配置とする。
【0047】
このように、実施形態のMIMO測定方法は、複数Nの端末アンテナ1a、1bを有するMIMO端末1に送信するための複数M系列の基地局信号を生成し、複数Mの基地局アンテナからMIMO端末の複数Nの端末アンテナに至るM×Nの伝搬経路を想定し、複数M系列の基地局信号を受け、複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された複数M×N系列のフェージング信号を生成する。そして、それらのフェージング信号を、複数Nの端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成し、電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に複数Nの端末アンテナ1a、1bが位置するようにMIMO端末1を保持するとともに、複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ311、312を、長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、長軸中心に対して各端末アンテナ1a、1bとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で各測定用アンテナ311、312と各端末アンテナ1a、1bとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、想定した複数Mの基地局アンテナと複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成している。
【0048】
また、システムの構成で言えば、複数Nの端末アンテナ1a、1bを有するMIMO端末1に送信するための複数M系列の基地局信号を出力するMIMO方式の基地局装置11と、複数Mの基地局アンテナからMIMO端末の複数Nの端末アンテナに至るM×Nの伝搬経路を想定し、複数M系列の基地局信号を受け、M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された複数M×N系列のフェージング信号を生成出力するフェージングエミュレータ12と、複数M×N系列のフェージング信号を、複数Nの端末アンテナ1a、1bへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する合波部25と、電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間を有し、その空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に複数Nの端末アンテナ1a、1bが位置するようにMIMO端末1を保持するとともに、複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ311、312を、長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、長軸中心に対して各端末アンテナ1a、1bとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、空間内で各測定用アンテナと各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、複数Mの基地局アンテナと複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成する結合器30とを備えている。
【0049】
このような測定方法および測定システムによれば、合波部25で生成された一方の合波信号Q1が測定用アンテナ311に供給されて、その信号Q1の電波がMIMO端末1の一方の端末アンテナ1aで選択的に受信され、他方の合波信号Q2が測定用アンテナ312に供給されて、その信号Q2の電波がMIMO端末1の他方の端末アンテナ1bで選択的に受信されることになり、前記単純化された空間結合モデルに対応したフェージング試験が行える。
【0050】
ただし、楕円球型の結合器30を用いた場合、一方の測定用アンテナから出た電波が内壁で反射して一方の端末アンテナ1aで全て吸収されるわけでなく、この端末アンテナ1aの位置を通過して再び内壁で反射し、測定用アンテナに戻り、再度内壁側に出射するという多重反射モードが生じ、この多重反射波の干渉により、アンテナ間の結合の周波数特性にリップルが生じて、試験周波数で高い結合度が得られなくなる場合がある。
【0051】
この状態は、MIMO端末1と測定用アンテナ311、312との距離を調整することで回避することが可能であり、図3に概略構造を示すように、MIMO端末1と測定用アンテナをそれぞれ保持するための保持部(構造は任意であるが電波の伝搬に影響を与えない材質で構成する)33、34を、楕円球の長軸に沿って移動させる移動機構36、37を設け、前記した点対称配置を維持したまま楕円中心Oに対して対称移動させ、両者の結合度が最大となるように位置決めしてから試験を行えばよい。
【0052】
移動機構としては、保持部33、34の一部を結合器30の外部に突出させ、これを楕円長軸に沿って手動あるいはステッピングモータ等の駆動によりスライド移動させる機構が採用できる。
【0053】
また、結合器30自体についても種々の構造が考えられる。即ち、結合器30は、基本的に電波を反射する金属壁で楕円球空間を覆う構造あるから、MIMO端末のセッティング作業の容易性等を考慮すれば、楕円球空間を内部に形成している隔壁部材を、楕円の長軸に沿った平面で上下に2分した構造にして最大の開口面を得るのが好ましい。
【0054】
その場合、下側の隔壁部材をベース部とし、上側の隔壁部材を下側の隔壁部材に被せる(位置決めは必要)だけの単純な分離構造や、上側の隔壁部材を下側の隔壁部材に対して蝶番によって連結した開閉自在な構造とする等、任意の構造が採用できる。また、電波を反射する金属壁は金属板、金属網あるいは金属塗料で形成することができる。
【0055】
次に、上記結合器30における測定用アンテナ311、312と端末アンテナ1a、1b(実際はシミュレーション用の擬似的なアンテナである)の間の結合度および分離度に関するシミュレーション結果について説明する。
【0056】
図4は、そのシミュレーションに用いた結合器30およびアンテナ構造の例を示すものであり、導電率σ=2×105S/mの金属壁で形成された結合器30の楕円球空間の長軸径2a=1200mm、短軸径2b=1094mm、離心率=0.41で、周波数1.47GHz(波長λ204.1mm)としている。また、各アンテナは全て半波長ダイポールであり、便宜上一方の焦点側の2つのアンテナ(測定用)に#1、#4、他方の焦点側の2つのアンテナ(端末アンテナ)に#2、#3のナンバーを付している。また、アンテナ#1、#4の間隔をd′、アンテナ#2、#3の間隔をdとしている(実際の端末内のアンテナ間距離と測定用アンテナの距離を厳密に一致させることが困難なことを想定しており、理想的にはd=d′でよい)。
【0057】
図5は、測定用のアンテナ群の中心位置と端末アンテナ群の中心位置とを楕円長軸上の基準位置(焦点位置)から対称に変位させたときのアンテナ#1からアンテナ#2、#3に対する透過係数S31、S21を測定したシミュレーション結果である。ここで変位Δz=0が基準位置であり、+方向が外側への変位、−方向が内側への変位を表す。
【0058】
図5の(a)は、d=d′=0.25λの場合で、Δz=60mmの位置でS31とS21の差、即ち、分離度が最大の20dB得られることがわかる。また、図5の(b)は、d=d′=0.5λの場合で、Δz=80mmの位置で分離度が最大となり、やはり最20dB近い値得られることがわかる。さらにこの場合には、Δz=−20mmの位置でも10dB以上の十分な分離度が得られている。図5の(c)は、d=0.25λ、d′=0.3λの場合で、Δz=60mmの位置で分離度最大となり、30dB近い値が得られることがわかる。この図5の(c)のようなd≠d′の例から、端末アンテナと測定用アンテナの対称性が、間隔比で20パーセント{=100×(0.3−0.25)/0.25}程度低下していても、十分な分離度が得られるものと推察できる。
【0059】
このように、前記した点対称性を維持しつつ両アンテナ群の距離を調整することで、多重反射によるリップルの影響を受けない状態で測定に必要な分離度を得ることができる。
【0060】
上記実施形態は、多重反射の影響が少ない位置を選んで測定するというものであるが、そのためにアンテナ群の移動機構が必要となり、広帯域測定を迅速に行う場合に不利である。
【0061】
この点を改善する方法として、多重反射そのものを減らすことが考えられるが、2回目以降の反射波のみを選択的に減衰させることは現実的には困難である。
【0062】
そこで、本願発明者らは、アンテナ#1、#4(測定用アンテナ)の周囲を電波吸収体で覆うことで、多重反射波を大きく減衰させることができることを見出した。
【0063】
この場合、最初の出射波に対する減衰も発生するが、その減衰分を見込んで供給信号レベルを増加させておけばよく、端末アンテナを通過して測定用アンテナの位置に戻ってきた電波を電波吸収体によって減衰させる。ここで電波吸収体による減衰量を例えば6dBとすれば1度目の戻り波に対して電力比1/4、2度目の戻り波に対して電力比1/16に減衰させることができ、それ以降の反射波を無視できる。
【0064】
この電波吸収体を用いた実験について説明する。
図6は、その電波吸収体40を用いた結合器30の構造であり、結合器自体の構造およびアンテナは、前記図4の場合と同様である。
【0065】
電波吸収体40としては、次の表に示すように電気定数の異なる2種類の材料、吸収体A、Bを用いている(材質はカーボン含浸ウレタンである)。
【0066】
【表1】
【0067】
前記同様に、d=d=0.5λ(電波吸収体40で覆う都合上間隔を広くしている)、透過率S31、S21を測定した結果が図7(a)、(b)であり、透過率の差の分離度も一点鎖線で示している。
【0068】
図7の(a)は吸収率の小さい吸収体Aを用いた場合の結果であり、S31、S21のレベルが比較的高く、その変化は緩やかで、分離度は、−120mm〜+120mmの変位範囲のうち、−30mm〜0mmの範囲で10〜15dBが得られている。
【0069】
また、図7の(b)は吸収率が比較的大きい吸収体Bを用いた場合の結果であり、S31、S21のレベルが吸収体Aの場合に比べて15dB程度低下しているが、その変化はさらに緩やかとなり、分離度は、−20mm〜−10mmの範囲で10〜11dBが得られている。
【0070】
図8は、d=d′=0.25λの場合の透過率S31、S21と分離度を測定した結果であり、吸収体Aを用いた図8の(a)の結果は、図7の(a)の場合とほぼ同様に、−30mm〜0mmの範囲で分離度10〜16dBが得られ、吸収体Bを用いた図8の(b)の結果は、図7の(b)の場合とほぼ同様に、−30mm〜0mmの範囲で分離度10〜16dBが得られ、−20mm〜−5mmの範囲で、分離度10〜11dBが得られている。
【0071】
なお、原理上、MIMO端末1の端末アンテナ間の距離が短いと分離度が低下するが、その場合、前記したように測定用アンテナ間の距離を微調整することで必要な分離度を確保することができることを確認している。MIMO端末1の端末アンテナ間の距離は端末の設計事項であり固定されているが、測定用アンテナ間の距離は任意に可変できるので、結合器30に測定用アンテナの間隔調整機構を設けておくことで、高い分離度を維持した試験が行える。これは前記した保持部34に測定用アンテナの間隔調整部(図示せず)を設けておけばよい。
【0072】
図9は、アンテナ間隔d=d′=0.5λで、且つ両アンテナ群の中心がそれぞれ基準位置(焦点位置z=0)にあるときの透過率S31、21と分離度の周波数特性の測定結果を示すものであ。
【0073】
吸収体Aを用いた図9の(a)の周波数特性には比較的大きなリップルが残っているが、より吸収率が大きい吸収体Bを用いた図9の(b)の周波数特性は平坦な特性となり、広帯域信号を伝送するMIMO端末の測定により好適と言える。
【0074】
また、前記実施形態ではM=N=2の例を示したが、M=N=4の場合には、図10に示すように、基地局装置1から4系列の基地局信号RF1〜RF4をフェージングエミュレータ12に入力し、4本の基地局アンテナ(図示せず)と4本の端末アンテナ1a〜1dとの間が16(=4×4)の伝搬経路で結合されるモデルを想定し、その各伝搬経路に応じてフェージングが付与された16系列のフェージング信号FRF1−1〜FRF4−4を生成し、これらを合波部25の4つの合波器261〜264により4つの端末アンテナ1a〜1dの到来波毎に合波する。
【0075】
ここで、フェージング信号FRF1−1〜FRF1−4は、第1の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF1−1〜FRF1−4は、第1の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF2−1〜FRF2−4は、第2の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF3−1〜FRF3−4は、第3の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応し、フェージング信号FRF4−1〜FRF4−4は、第4の基地局アンテナと4本の端末アンテナ1a〜1dの間にそれぞれ形成される4つの伝搬経路に対応している。
【0076】
そして、楕円球状の結合器30の一方の焦点の近傍位置にMIMO端末1の4つの端末アンテナ1a〜1dが位置するように保持し、他方の焦点の近傍位置で、且つ楕円球の長軸中心について各端末アンテナとほぼ点対称な位置に4つの測定用アンテナ311〜314をそれぞれ配置して、結合器30内で各端末アンテナ1a〜1dと測定用アンテナ311〜314とが点対称配置のもの同士で1対1に選択的に結合する状態を形成し、それらの測定用アンテナ311〜314に対して、合波信号Q1〜Q4をそれぞれ供給して、想定された4つの基地局アンテナと4つの端末アンテナとの空間結合と等価状態を形成すればよい。
【0077】
この場合でも、各測定用アンテナと各端末アンテナとがより高い分離度で1対1に選択的に結合できるように、前記した移動機構35、36を併用したり、また多重反射の影響を抑圧するための電波吸収体を用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1……MIMO端末、1a、1b……端末アンテナ、11……基地局装置、12……フェージングエミュレータ、14……アンテナ(仮想散乱体)、20……MIMO端末測定システム、25……合波部、30……結合器、311、312……測定用アンテナ、33、34……保持部、35、36……移動機構、40……電波吸収体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数Nの端末アンテナ(1a、1b)を有するMIMO端末(1)に送信するための複数M系列の基地局信号を生成する段階と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成する段階と、
前記複数M×N系列のフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する段階と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する段階とを含むMIMO端末測定方法。
【請求項2】
複数Nの端末アンテナを有するMIMO端末に送信するための複数M系列の基地局信号を出力するMIMO方式の基地局装置(11)と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成して出力するフェージングエミュレータ(12)と、
前記複数M×N系列で出力されるフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する合波部(25)と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間を有し、該空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する結合器(30)とを備えたMIMO端末測定システム。
【請求項3】
前記結合器には、該結合器内に保持した前記MIMO端末と前記複数の測定用アンテナとを、前記長軸に沿った方向に移動させる移動機構(35、36)が備えられていることを特徴とする請求項2記載のMIMO端末測定システム。
【請求項4】
前記複数の測定用アンテナが電波吸収体(40)に覆われていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のMIMO端末測定システム。
【請求項1】
複数Nの端末アンテナ(1a、1b)を有するMIMO端末(1)に送信するための複数M系列の基地局信号を生成する段階と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成する段階と、
前記複数M×N系列のフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する段階と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する段階とを含むMIMO端末測定方法。
【請求項2】
複数Nの端末アンテナを有するMIMO端末に送信するための複数M系列の基地局信号を出力するMIMO方式の基地局装置(11)と、
前記複数Mの基地局アンテナから前記MIMO端末の複数Nの端末アンテナに至る複数M×Nの伝搬経路を想定し、前記複数M系列の基地局信号を受け、前記複数M×Nの各伝搬経路にそれぞれ応じたフェージングが付与された前記複数M×N系列のフェージング信号を生成して出力するフェージングエミュレータ(12)と、
前記複数M×N系列で出力されるフェージング信号を、前記N個の端末アンテナへの到来波毎に合波して複数N系列の合波信号を生成する合波部(25)と、
電波を反射させる金属壁で覆われた楕円球状の空間を有し、該空間内の前記楕円球の長軸上の一方の焦点の近傍位置に前記複数Nの端末アンテナが位置するように前記MIMO端末(1)を保持するとともに、前記複数N系列の合波信号がそれぞれ供給される複数Nの測定用アンテナ(311、312)を、前記長軸上の他方の焦点の近傍位置で、且つ、前記長軸中心に対して前記各端末アンテナとそれぞれほぼ点対称な位置に保持して、前記空間内で前記各測定用アンテナと前記各端末アンテナとをそれぞれ1対1で選択的に結合させて、前記複数Mの基地局アンテナと前記複数Nの端末アンテナとの空間結合と等価な状態を形成する結合器(30)とを備えたMIMO端末測定システム。
【請求項3】
前記結合器には、該結合器内に保持した前記MIMO端末と前記複数の測定用アンテナとを、前記長軸に沿った方向に移動させる移動機構(35、36)が備えられていることを特徴とする請求項2記載のMIMO端末測定システム。
【請求項4】
前記複数の測定用アンテナが電波吸収体(40)に覆われていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のMIMO端末測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−21579(P2013−21579A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154458(P2011−154458)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、電波資源拡大のための委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、電波資源拡大のための委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]