LED点灯装置及びLED電球
【課題】電源電圧変動があってもLED電流が一定に維持されるLED点灯装置及びLED電球を提供する。
【解決手段】電源電圧を整流する整流回路、整流回路の出力を受けてLEDに流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出回路、及び検出されたスイッチング電流が一定となるように降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路を備えたLED点灯装置において、PWM制御回路が、電流検出回路の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路、基準電圧を生成する基準電圧生成回路、フィルタ回路の出力電圧と基準電圧との比較の結果に応じて降圧チョッパ回路の通電期間を決定する比較駆動回路、及び電源電圧を検出する電源電圧検出回路を備え、基準電圧生成回路が、所定の電源電圧範囲において、電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して基準電圧が単調減少するように構成した。
【解決手段】電源電圧を整流する整流回路、整流回路の出力を受けてLEDに流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出回路、及び検出されたスイッチング電流が一定となるように降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路を備えたLED点灯装置において、PWM制御回路が、電流検出回路の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路、基準電圧を生成する基準電圧生成回路、フィルタ回路の出力電圧と基準電圧との比較の結果に応じて降圧チョッパ回路の通電期間を決定する比較駆動回路、及び電源電圧を検出する電源電圧検出回路を備え、基準電圧生成回路が、所定の電源電圧範囲において、電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して基準電圧が単調減少するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED点灯装置及びLED電球に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの高輝度化が進み、白熱電球や電球型蛍光灯に代わりLED電球が普及しつつある。LED電球用の点灯装置には、小型化に有利な非絶縁タイプの降圧チョッパ回路が主に用いられる(特許文献1)。
【0003】
図6及び7に従来のLED点灯装置を示す。図6の点灯装置は、整流回路2及び電解コンデンサ3からなる整流平滑回路、トランジスタ5、ダイオード7、コイル8及びコンデンサ9からなる降圧チョッパ回路、並びに電流検出抵抗6の検出電圧に応じて降圧チョッパ回路のトランジスタ5をPWM制御するPWM制御回路40を備える。整流平滑回路によって電源1の入力電圧が整流平滑され、整流平滑回路の出力を受けて降圧チョッパ回路はLED10に供給する電流を制限する。電流検出抵抗6によって検出されたトランジスタ5のスイッチング電流が一定となるようにトランジスタ5がPWM制御回路40によってPWM制御される。なお、PWM制御回路40の制御電源(図7の定電圧源Vref)は不図示の配線及び回路を介して整流平滑回路の出力からPWM制御回路40に引き込まれる。
【0004】
図7にPWM制御回路40の具体的構成を示す。定電圧源Vrefには分圧抵抗404及び405が接続され、その分圧出力が基準電圧として比較器403の正入力端子に入力される。電流検出抵抗6に発生する電圧はコンデンサ406及び抵抗407からなるフィルタ回路を介して比較器403の負入力端子に入力される。フィルタ回路は、急峻なノイズ電圧やノイズ電流によって比較器403が誤動作しないように設けられるものであり、ノイズをフィルタリングするのに充分な時定数の積分回路で構成される必要がある。比較器403、ロジック部402、及びゲートドライバ401は、電流検出抵抗6の電圧が基準電圧よりも低いときにトランジスタ5を導通させ、基準電圧に達すると非導通とするよう動作する。このようなPWM制御により、図8Aに示すように、スイッチング電流のピーク値がIsとなるように制御され、LED電流の実効値が一定となるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−287430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図7に示すような回路には以下のような問題がある。
電源1が商用電源である場合、通常は電源電圧として定格値(例えば、約101V)が供給されるが、この電圧値は電力事情等によって変動し得る。ここで、商用電源1の電圧が定格値よりも高くなると、トランジスタ5に流れるスイッチング電流の勾配(di/dt)が大きくなる。これにより、フィルタ回路(コンデンサ406、抵抗407)の影響により制御に遅れが生じ、図8Bに示すように、トランジスタ5を非導通とする瞬間の電流が当初の設定値Isよりも高いIs´となり、LED10に供給される電流も設定値よりも増加してしまう。反対に、電源1の電圧が定格電圧よりも低くなると、トランジスタ5に流れるスイッチング電流の勾配(di/dt)が小さくなり、トランジスタ5を非導通とする瞬間の電流が当初の設定値Isよりも低くなり、LED10に供給される電流も設定値に対して減少してしまう。
【0007】
即ち、フィルタ回路にノイズ除去に充分な時定数をもたせ、定格電源電圧の供給を想定してLED電流を設定し、そのLED電流に対応した基準電圧を電源電圧変動に対して一定とした場合、図9に示すようにLED電流は電源電圧に比例して増加してしまう。従って、従来のLED点灯装置には、電源電圧変動に対して光出力を一定に制御することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、PWM制御にノイズ耐性を持たせつつも、電源電圧変動があってもスイッチング電流(LED電流)が一定になるようにPWM制御を行うための安価な構成を導入し、電源電圧が変動しても光出力を一定に維持できるLED点灯装置及びLED電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、電源電圧を整流する整流回路、整流回路の出力を受けてLEDに流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出回路、及び検出されたスイッチング電流が一定となるように降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路を備えたLED点灯装置であって、PWM制御回路が、電流検出回路の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路、基準電圧を生成する基準電圧生成回路、フィルタ回路の出力電圧と基準電圧との比較の結果に応じて降圧チョッパ回路の通電期間を決定する比較駆動回路、及び電源電圧を検出する電源電圧検出回路を備え、基準電圧生成回路が、所定の電源電圧範囲において、電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して基準電圧が単調減少するように構成されたLED点灯装置である。
【0010】
ここで、基準電圧生成回路が、定電圧源に接続された分圧回路、トランジスタであってコレクタが前記分圧回路の出力点に接続されるとともにエミッタが抵抗を介して接地されたトランジスタ、及びトランジスタのベースと電源電圧検出回路の出力点の間にアノードをベースに向けて接続された定電圧ダイオードを備え、定電圧ダイオードによって所定の電源電圧範囲の下限値が決定される構成とした。
【0011】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面のLED点灯装置、LED、LED点灯装置及びLEDが搭載されるハウジング、並びにLED点灯装置に電源電圧を供給するための口金を備えたLED電球である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例によるLED点灯装置の回路図である。
【図2】図1のLED点灯装置におけるPWM制御回路を示す図である。
【図3】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図4A】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図4B】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図4C】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図5】本発明の実施例によるLED電球を示す図である。
【図6】従来のLED点灯装置の回路図である。
【図7】図6のLED点灯装置におけるPWM制御回路を示す図である。
【図8A】一般的なPWM制御回路の動作を説明する図である。
【図8B】従来のPWM制御回路の動作を説明する図である。
【図9】従来のPWM制御回路の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施例によるLED点灯装置の回路図である。図1のLED点灯装置において、PWM制御回路4以外の構成は図6に示す従来のLED点灯装置のものと同様である。即ち、LED点灯装置は、電源1からの電源電圧を整流する整流回路(整流回路2及び電解コンデンサ3)、整流回路の出力を受けてLED10に流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路(トランジスタ5、ダイオード7、コイル8及びコンデンサ9)、降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出抵抗6、及び検出されたスイッチング電流が一定となるように降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路4を備える。なお、PWM制御回路4の制御電源(図2の定電圧源Vref)は不図示の配線及び回路を介して整流平滑回路からPWM制御回路4に引き込まれるものとする。
【0014】
図2に、図1のLED点灯装置におけるPWM制御回路4の具体的構成を示す。PWM制御回路4は、電流検出抵抗6の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路(コンデンサ406及び抵抗407)、基準電圧を生成する基準電圧生成回路(トランジスタ408、抵抗409、抵抗410、定電圧ダイオード411及び抵抗412)、フィルタ回路の出力電圧と基準電圧とを比較して比較結果に応じてトランジスタ5の通電期間を決定する比較駆動回路(ゲートドライバ401、ロジック部402及び比較器403)、及び電源電圧を検出する電源電圧検出回路(抵抗413及び414)を備える。
【0015】
定電圧源Vrefには分圧抵抗404及び405が接続され、その分圧出力が比較器403の正入力端子に入力される。電流検出抵抗6に発生する電圧はコンデンサ406及び抵抗407からなるフィルタ回路を介して比較器403の負入力端子に入力される。従来例と同様に、フィルタ回路は、急峻なノイズ電圧やノイズ電流によって比較器403が誤動作しないように設けられるものであり、ノイズをフィルタリングするのに充分な時定数の積分回路で構成される。ロジック部402が比較結果に応じてゲートドライバ401に駆動制御信号を出力し、駆動制御信号に応じてゲートドライバ401がトランジスタ5を駆動する。これにより、電流検出抵抗6の電圧が基準電圧よりも低いときにトランジスタ5が導通し、基準電圧に達すると非導通となり、この動作が繰り返される。なお、比較器403の入力における正負とロジック部402の論理を本実施例と逆にしてもよい。
【0016】
電源電圧検出回路(抵抗413及び414)の出力点が抵抗412及び定電圧ダイオード411を介してトランジスタ408のベースに接続される。トランジスタ408のエミッタは抵抗409を介して接地され、コレクタは分圧抵抗404及び405の出力点に接続される。
【0017】
定電圧ダイオード411のツェナー電圧は、電源電圧検出回路の出力点の電圧が、基準電圧制御を行うべき電源電圧変動範囲の下限値(以下、「制御下限値」という)となったときに、定電圧ダイオード411が導通するような電圧に設定される。即ち、電源電圧が下限値以上の範囲である場合に、電源電圧が高くなるのに比例してトランジスタ408のベース電流が増加する。そして、トランジスタ408のエミッタに接続された抵抗409により、トランジスタ408の直流増幅率(hFE)のばらつきの影響を受けず、ベース電流により不飽和状態のトランジスタ408のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスを制御することが可能となる。これにより、電源電圧が高くなるのに比例してトランジスタ408のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスが低下し、比較器403の正入力端子に入力される基準電圧が低下することになる。従って、下限値以上の電源電圧範囲において、電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して基準電圧が単調減少する。
【0018】
図3に、本発明のLED点灯装置の動作を示す。図示するように、電源電圧が下限値以上の範囲にある場合に、電源電圧の上昇に応じて基準電圧が減少し、従来例(図8、図9)においては増加していたスイッチング電流分が相殺され、電源電圧変動に対してLED電流は一定となる。
【0019】
上記実施例により、フィルタ回路に充分なノイズ除去能力を持たせつつ、電源電圧変動があってもスイッチング電流(LED電流)が一定になるようにPWM制御を行うための安価な構成が達成され、電源電圧が変動しても光出力を一定に制御・維持できる。言い換えると、フィルタ回路(コンデンサ406、抵抗407)の時定数を充分に長く設定しても応答の遅れによるスイッチング電流への影響をなくすことができるため、さらにノイズ耐性を強化することができる。
【0020】
なお、上述のように制御下限値は定電圧ダイオード411によって設定される。一方、トランジスタ408が完全に導通状態となる電源電圧が、基準電圧制御を行うべき上限電源電圧(以下、「制御上限値」という)に対応するように、トランジスタ408、抵抗409及び412並びに定電圧ダイオード411を選定してもよい。また、電源電圧検出回路の抵抗414に定電圧ダイオード(不図示)を、カソードを抵抗413側にして並列接続することにより、制御上限値を設定することもできる。即ち、定電圧ダイオード411や他の回路定数を適切に設定することにより、基準電圧の制御を行うべき電源電圧範囲を設定することができる。
【0021】
例えば、定格LED電流に対して、LED電流が減少することによる照度低下は問題とならないが増大することによるLED素子や回路素子のストレスや寿命が問題となるような場合、図4Aに示すように、定電圧ダイオード411によって決まる制御下限値を定格電源電圧に設定して基準電圧の制御が定格電源電圧以上で行われるようにしてもよい。
また逆に、定格LED電流に対して、LED電流が増大することには問題ないが減少することが問題となるような場合、例えば、最低限の照度さえ確保できればよい場合等は、図4Bに示すように、制御上限値を定格電源電圧に設定して、基準電圧の制御が定格電源電圧以下の範囲で行われるようにしてもよい。
【0022】
またさらに、定電圧ダイオード411及び他の回路定数を適宜設定して、図4Cに示すように定格電源電圧付近の所望の範囲を動作範囲として設定してもよい。
制御下限値及び制御上限値については、例えば、確実に給電される範囲として商用100V電源の場合は101±6V、商用200V電源の場合は202±20V(電気事業法施行規則第44条(供給電圧の適正維持)参照)に対応させてもよいし、設計仕様に応じて電源電圧の85%以上110%以下等としてもよい。
【0023】
図5に、上記のLED点灯装置を搭載したLED電球を示す。LED電球は、上述したLED点灯装置60、LED素子10、LED点灯装置60及びLED素子10を保持するハウジング70、ハウジング70に取り付けられたカバー75、並びにハウジング70に結合されるとともに整流回路2の入力端が配線61及び62を介して電気的に接続される口金80を備える。なお、LED電球の仕様に応じてカバー75はあってもなくてもよい。なお、図面(特に、ハウジング70の内部に配置されるLED点灯装置60、配線61及び62並びにLED素子10)は模式的に示したものであり、配置、形状及び大きさは図示したものに限定されない。
【0024】
本発明によると、ノイズ耐性を担保しつつも電源電圧変動があっても一定の照度が得られるLED電球を提供することができる。また、従来例(図7参照)に対する追加回路(トランジスタ408、抵抗409、410、412、413、414、定電圧ダイオード411)も小規模なもので済み、LED電球の小型化を妨げるものとはならないので好適である。
【0025】
なお、上記実施例では電源1として商用100V電源を主な例として説明したが、本発明は、回路素子を適切に選定することにより、AC110V、AC200V、AC240V等の他の定格の電源用のLED点灯装置及びLED電球にも適用できる。また、電源1は商用電源に限らず、構内電源、自家発電等の電源が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
2.整流回路
3.電解コンデンサ
4.PWM制御回路
5.トランジスタ
6.電流検出抵抗
7.ダイオード
8.コイル
9.コンデンサ
10.LED
401.ゲートドライバ
402.ロジック部
403.比較器
404、405、406、407、409、410、412、413、414.抵抗
408.トランジスタ
411.定電圧ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明はLED点灯装置及びLED電球に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの高輝度化が進み、白熱電球や電球型蛍光灯に代わりLED電球が普及しつつある。LED電球用の点灯装置には、小型化に有利な非絶縁タイプの降圧チョッパ回路が主に用いられる(特許文献1)。
【0003】
図6及び7に従来のLED点灯装置を示す。図6の点灯装置は、整流回路2及び電解コンデンサ3からなる整流平滑回路、トランジスタ5、ダイオード7、コイル8及びコンデンサ9からなる降圧チョッパ回路、並びに電流検出抵抗6の検出電圧に応じて降圧チョッパ回路のトランジスタ5をPWM制御するPWM制御回路40を備える。整流平滑回路によって電源1の入力電圧が整流平滑され、整流平滑回路の出力を受けて降圧チョッパ回路はLED10に供給する電流を制限する。電流検出抵抗6によって検出されたトランジスタ5のスイッチング電流が一定となるようにトランジスタ5がPWM制御回路40によってPWM制御される。なお、PWM制御回路40の制御電源(図7の定電圧源Vref)は不図示の配線及び回路を介して整流平滑回路の出力からPWM制御回路40に引き込まれる。
【0004】
図7にPWM制御回路40の具体的構成を示す。定電圧源Vrefには分圧抵抗404及び405が接続され、その分圧出力が基準電圧として比較器403の正入力端子に入力される。電流検出抵抗6に発生する電圧はコンデンサ406及び抵抗407からなるフィルタ回路を介して比較器403の負入力端子に入力される。フィルタ回路は、急峻なノイズ電圧やノイズ電流によって比較器403が誤動作しないように設けられるものであり、ノイズをフィルタリングするのに充分な時定数の積分回路で構成される必要がある。比較器403、ロジック部402、及びゲートドライバ401は、電流検出抵抗6の電圧が基準電圧よりも低いときにトランジスタ5を導通させ、基準電圧に達すると非導通とするよう動作する。このようなPWM制御により、図8Aに示すように、スイッチング電流のピーク値がIsとなるように制御され、LED電流の実効値が一定となるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−287430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図7に示すような回路には以下のような問題がある。
電源1が商用電源である場合、通常は電源電圧として定格値(例えば、約101V)が供給されるが、この電圧値は電力事情等によって変動し得る。ここで、商用電源1の電圧が定格値よりも高くなると、トランジスタ5に流れるスイッチング電流の勾配(di/dt)が大きくなる。これにより、フィルタ回路(コンデンサ406、抵抗407)の影響により制御に遅れが生じ、図8Bに示すように、トランジスタ5を非導通とする瞬間の電流が当初の設定値Isよりも高いIs´となり、LED10に供給される電流も設定値よりも増加してしまう。反対に、電源1の電圧が定格電圧よりも低くなると、トランジスタ5に流れるスイッチング電流の勾配(di/dt)が小さくなり、トランジスタ5を非導通とする瞬間の電流が当初の設定値Isよりも低くなり、LED10に供給される電流も設定値に対して減少してしまう。
【0007】
即ち、フィルタ回路にノイズ除去に充分な時定数をもたせ、定格電源電圧の供給を想定してLED電流を設定し、そのLED電流に対応した基準電圧を電源電圧変動に対して一定とした場合、図9に示すようにLED電流は電源電圧に比例して増加してしまう。従って、従来のLED点灯装置には、電源電圧変動に対して光出力を一定に制御することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、PWM制御にノイズ耐性を持たせつつも、電源電圧変動があってもスイッチング電流(LED電流)が一定になるようにPWM制御を行うための安価な構成を導入し、電源電圧が変動しても光出力を一定に維持できるLED点灯装置及びLED電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、電源電圧を整流する整流回路、整流回路の出力を受けてLEDに流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出回路、及び検出されたスイッチング電流が一定となるように降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路を備えたLED点灯装置であって、PWM制御回路が、電流検出回路の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路、基準電圧を生成する基準電圧生成回路、フィルタ回路の出力電圧と基準電圧との比較の結果に応じて降圧チョッパ回路の通電期間を決定する比較駆動回路、及び電源電圧を検出する電源電圧検出回路を備え、基準電圧生成回路が、所定の電源電圧範囲において、電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して基準電圧が単調減少するように構成されたLED点灯装置である。
【0010】
ここで、基準電圧生成回路が、定電圧源に接続された分圧回路、トランジスタであってコレクタが前記分圧回路の出力点に接続されるとともにエミッタが抵抗を介して接地されたトランジスタ、及びトランジスタのベースと電源電圧検出回路の出力点の間にアノードをベースに向けて接続された定電圧ダイオードを備え、定電圧ダイオードによって所定の電源電圧範囲の下限値が決定される構成とした。
【0011】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面のLED点灯装置、LED、LED点灯装置及びLEDが搭載されるハウジング、並びにLED点灯装置に電源電圧を供給するための口金を備えたLED電球である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例によるLED点灯装置の回路図である。
【図2】図1のLED点灯装置におけるPWM制御回路を示す図である。
【図3】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図4A】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図4B】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図4C】本発明のLED点灯装置の動作を説明する図である。
【図5】本発明の実施例によるLED電球を示す図である。
【図6】従来のLED点灯装置の回路図である。
【図7】図6のLED点灯装置におけるPWM制御回路を示す図である。
【図8A】一般的なPWM制御回路の動作を説明する図である。
【図8B】従来のPWM制御回路の動作を説明する図である。
【図9】従来のPWM制御回路の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施例によるLED点灯装置の回路図である。図1のLED点灯装置において、PWM制御回路4以外の構成は図6に示す従来のLED点灯装置のものと同様である。即ち、LED点灯装置は、電源1からの電源電圧を整流する整流回路(整流回路2及び電解コンデンサ3)、整流回路の出力を受けてLED10に流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路(トランジスタ5、ダイオード7、コイル8及びコンデンサ9)、降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出抵抗6、及び検出されたスイッチング電流が一定となるように降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路4を備える。なお、PWM制御回路4の制御電源(図2の定電圧源Vref)は不図示の配線及び回路を介して整流平滑回路からPWM制御回路4に引き込まれるものとする。
【0014】
図2に、図1のLED点灯装置におけるPWM制御回路4の具体的構成を示す。PWM制御回路4は、電流検出抵抗6の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路(コンデンサ406及び抵抗407)、基準電圧を生成する基準電圧生成回路(トランジスタ408、抵抗409、抵抗410、定電圧ダイオード411及び抵抗412)、フィルタ回路の出力電圧と基準電圧とを比較して比較結果に応じてトランジスタ5の通電期間を決定する比較駆動回路(ゲートドライバ401、ロジック部402及び比較器403)、及び電源電圧を検出する電源電圧検出回路(抵抗413及び414)を備える。
【0015】
定電圧源Vrefには分圧抵抗404及び405が接続され、その分圧出力が比較器403の正入力端子に入力される。電流検出抵抗6に発生する電圧はコンデンサ406及び抵抗407からなるフィルタ回路を介して比較器403の負入力端子に入力される。従来例と同様に、フィルタ回路は、急峻なノイズ電圧やノイズ電流によって比較器403が誤動作しないように設けられるものであり、ノイズをフィルタリングするのに充分な時定数の積分回路で構成される。ロジック部402が比較結果に応じてゲートドライバ401に駆動制御信号を出力し、駆動制御信号に応じてゲートドライバ401がトランジスタ5を駆動する。これにより、電流検出抵抗6の電圧が基準電圧よりも低いときにトランジスタ5が導通し、基準電圧に達すると非導通となり、この動作が繰り返される。なお、比較器403の入力における正負とロジック部402の論理を本実施例と逆にしてもよい。
【0016】
電源電圧検出回路(抵抗413及び414)の出力点が抵抗412及び定電圧ダイオード411を介してトランジスタ408のベースに接続される。トランジスタ408のエミッタは抵抗409を介して接地され、コレクタは分圧抵抗404及び405の出力点に接続される。
【0017】
定電圧ダイオード411のツェナー電圧は、電源電圧検出回路の出力点の電圧が、基準電圧制御を行うべき電源電圧変動範囲の下限値(以下、「制御下限値」という)となったときに、定電圧ダイオード411が導通するような電圧に設定される。即ち、電源電圧が下限値以上の範囲である場合に、電源電圧が高くなるのに比例してトランジスタ408のベース電流が増加する。そして、トランジスタ408のエミッタに接続された抵抗409により、トランジスタ408の直流増幅率(hFE)のばらつきの影響を受けず、ベース電流により不飽和状態のトランジスタ408のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスを制御することが可能となる。これにより、電源電圧が高くなるのに比例してトランジスタ408のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスが低下し、比較器403の正入力端子に入力される基準電圧が低下することになる。従って、下限値以上の電源電圧範囲において、電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して基準電圧が単調減少する。
【0018】
図3に、本発明のLED点灯装置の動作を示す。図示するように、電源電圧が下限値以上の範囲にある場合に、電源電圧の上昇に応じて基準電圧が減少し、従来例(図8、図9)においては増加していたスイッチング電流分が相殺され、電源電圧変動に対してLED電流は一定となる。
【0019】
上記実施例により、フィルタ回路に充分なノイズ除去能力を持たせつつ、電源電圧変動があってもスイッチング電流(LED電流)が一定になるようにPWM制御を行うための安価な構成が達成され、電源電圧が変動しても光出力を一定に制御・維持できる。言い換えると、フィルタ回路(コンデンサ406、抵抗407)の時定数を充分に長く設定しても応答の遅れによるスイッチング電流への影響をなくすことができるため、さらにノイズ耐性を強化することができる。
【0020】
なお、上述のように制御下限値は定電圧ダイオード411によって設定される。一方、トランジスタ408が完全に導通状態となる電源電圧が、基準電圧制御を行うべき上限電源電圧(以下、「制御上限値」という)に対応するように、トランジスタ408、抵抗409及び412並びに定電圧ダイオード411を選定してもよい。また、電源電圧検出回路の抵抗414に定電圧ダイオード(不図示)を、カソードを抵抗413側にして並列接続することにより、制御上限値を設定することもできる。即ち、定電圧ダイオード411や他の回路定数を適切に設定することにより、基準電圧の制御を行うべき電源電圧範囲を設定することができる。
【0021】
例えば、定格LED電流に対して、LED電流が減少することによる照度低下は問題とならないが増大することによるLED素子や回路素子のストレスや寿命が問題となるような場合、図4Aに示すように、定電圧ダイオード411によって決まる制御下限値を定格電源電圧に設定して基準電圧の制御が定格電源電圧以上で行われるようにしてもよい。
また逆に、定格LED電流に対して、LED電流が増大することには問題ないが減少することが問題となるような場合、例えば、最低限の照度さえ確保できればよい場合等は、図4Bに示すように、制御上限値を定格電源電圧に設定して、基準電圧の制御が定格電源電圧以下の範囲で行われるようにしてもよい。
【0022】
またさらに、定電圧ダイオード411及び他の回路定数を適宜設定して、図4Cに示すように定格電源電圧付近の所望の範囲を動作範囲として設定してもよい。
制御下限値及び制御上限値については、例えば、確実に給電される範囲として商用100V電源の場合は101±6V、商用200V電源の場合は202±20V(電気事業法施行規則第44条(供給電圧の適正維持)参照)に対応させてもよいし、設計仕様に応じて電源電圧の85%以上110%以下等としてもよい。
【0023】
図5に、上記のLED点灯装置を搭載したLED電球を示す。LED電球は、上述したLED点灯装置60、LED素子10、LED点灯装置60及びLED素子10を保持するハウジング70、ハウジング70に取り付けられたカバー75、並びにハウジング70に結合されるとともに整流回路2の入力端が配線61及び62を介して電気的に接続される口金80を備える。なお、LED電球の仕様に応じてカバー75はあってもなくてもよい。なお、図面(特に、ハウジング70の内部に配置されるLED点灯装置60、配線61及び62並びにLED素子10)は模式的に示したものであり、配置、形状及び大きさは図示したものに限定されない。
【0024】
本発明によると、ノイズ耐性を担保しつつも電源電圧変動があっても一定の照度が得られるLED電球を提供することができる。また、従来例(図7参照)に対する追加回路(トランジスタ408、抵抗409、410、412、413、414、定電圧ダイオード411)も小規模なもので済み、LED電球の小型化を妨げるものとはならないので好適である。
【0025】
なお、上記実施例では電源1として商用100V電源を主な例として説明したが、本発明は、回路素子を適切に選定することにより、AC110V、AC200V、AC240V等の他の定格の電源用のLED点灯装置及びLED電球にも適用できる。また、電源1は商用電源に限らず、構内電源、自家発電等の電源が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
2.整流回路
3.電解コンデンサ
4.PWM制御回路
5.トランジスタ
6.電流検出抵抗
7.ダイオード
8.コイル
9.コンデンサ
10.LED
401.ゲートドライバ
402.ロジック部
403.比較器
404、405、406、407、409、410、412、413、414.抵抗
408.トランジスタ
411.定電圧ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を整流する整流回路、該整流回路の出力を受けてLEDに流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路、該降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出回路、及び検出された該スイッチング電流が一定となるように該降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路を備えたLED点灯装置であって、
前記PWM制御回路が、前記電流検出回路の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路、基準電圧を生成する基準電圧生成回路、該フィルタ回路の出力電圧と該基準電圧とを比較して該比較の結果に応じて前記降圧チョッパ回路の通電期間を決定する比較駆動回路、及び前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路を備え、
前記基準電圧生成回路が、所定の電源電圧範囲において、前記電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して前記基準電圧が単調減少するように構成されたLED点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載のLED点灯装置において、前記基準電圧生成回路が、
定電圧源に接続された分圧回路、
トランジスタであってコレクタが前記分圧回路の出力点に接続されるとともにエミッタが抵抗を介して接地されたトランジスタ、及び
前記トランジスタのベースと前記電源電圧検出回路の出力点の間に、アノードを該ベースに向けて接続された定電圧ダイオード
を備え、
前記定電圧ダイオードによって前記所定の電源電圧範囲の下限値が決定されるLED点灯装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLED点灯装置、前記LED、該LED点灯装置及び該LEDが搭載されるハウジング、並びに該LED点灯装置に電源電圧を供給するための口金を備えたLED電球。
【請求項1】
電源電圧を整流する整流回路、該整流回路の出力を受けてLEDに流れるLED電流をPWM制御する降圧チョッパ回路、該降圧チョッパ回路のスイッチング電流を検出する検出回路、及び検出された該スイッチング電流が一定となるように該降圧チョッパ回路をPWM制御するPWM制御回路を備えたLED点灯装置であって、
前記PWM制御回路が、前記電流検出回路の出力電圧をフィルタリングするフィルタ回路、基準電圧を生成する基準電圧生成回路、該フィルタ回路の出力電圧と該基準電圧とを比較して該比較の結果に応じて前記降圧チョッパ回路の通電期間を決定する比較駆動回路、及び前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路を備え、
前記基準電圧生成回路が、所定の電源電圧範囲において、前記電源電圧検出回路によって検出された電源電圧に対して前記基準電圧が単調減少するように構成されたLED点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載のLED点灯装置において、前記基準電圧生成回路が、
定電圧源に接続された分圧回路、
トランジスタであってコレクタが前記分圧回路の出力点に接続されるとともにエミッタが抵抗を介して接地されたトランジスタ、及び
前記トランジスタのベースと前記電源電圧検出回路の出力点の間に、アノードを該ベースに向けて接続された定電圧ダイオード
を備え、
前記定電圧ダイオードによって前記所定の電源電圧範囲の下限値が決定されるLED点灯装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLED点灯装置、前記LED、該LED点灯装置及び該LEDが搭載されるハウジング、並びに該LED点灯装置に電源電圧を供給するための口金を備えたLED電球。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公開番号】特開2012−221561(P2012−221561A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82521(P2011−82521)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
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