駆動装置、撮像装置、ぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体
【課題】伝達部と被伝達部の衝突時に発生する音をより効果的に低減させることが可能な駆動装置、撮像装置、ぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体を提供する。
【解決手段】固定部15に対し可動部11が移動して位置決めされる駆動装置1において、記憶部5は、駆動力を伝達する伝達部13と、可動部11を移動させるための駆動力が伝達される被伝達部12との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する。駆動情報設定部6は、記憶部5から読み出した情報に基づいて、非伝達領域内における駆動部14の駆動方法を示す駆動情報を設定し、非伝達領域内においては、駆動情報にしたがって位置決めを行わせる。制御部3は、駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う。
【解決手段】固定部15に対し可動部11が移動して位置決めされる駆動装置1において、記憶部5は、駆動力を伝達する伝達部13と、可動部11を移動させるための駆動力が伝達される被伝達部12との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する。駆動情報設定部6は、記憶部5から読み出した情報に基づいて、非伝達領域内における駆動部14の駆動方法を示す駆動情報を設定し、非伝達領域内においては、駆動情報にしたがって位置決めを行わせる。制御部3は、駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部に対し可動部が移動して位置決めする駆動装置、当該駆動装置を備える撮像装置ならびにぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ等の撮像装置により動画像の撮影や記録をする場合に、撮像レンズの駆動や光学的手ぶれ補正に伴って発生する音を低減させることにより、撮影時のみならず、記録内容の再生時においても、低ノイズ、高音質で再生することのできる性能が求められてきている。
【0003】
録音時の雑音の発生要因の一つとしては、例えばメカ機構駆動時の摺動音や、ギア列において歯面同士が接触するまでの間隙により生じる衝突音等が考えられる。このような要因により発生する音を低減させる技術として、メカ機構の駆動速度を下げることでギアの回転する運動エネルギーを下げて歯面の衝突時の熱や、音のエネルギーへ変換される量も下げることが知られている。しかし、駆動速度を下げると駆動時間が長くなるので、操作者の快適性が損なわれる等の欠点が発生する。これら衝突音の低減と、駆動時間の短縮とを両立させる技術として、メカ機構間のバックラッシを吸収するときの駆動速度を通常よりも上げて、歯面への衝突前には通常駆動時の速度に下げる技術が知られている(例えば、特許文献1)。これによれば、歯面への衝突前に通常駆動時の速度に下げ、駆動電流を通常よりも下げてモータートルクを下げた状態でギア面の衝突を発生させる。高速でバックラッシを吸収することで、ギア列のバックラッシの伝達が徐々に発生することによる過渡的に音が発生している時間を短縮することができる、としている。
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、バックラッシを吸収する期間において、一時的に駆動速度を通常よりも上げて駆動することにおり、駆動時間が短縮できる点と、このような駆動により、衝突時においては、モーター駆動トルクが下げられる点に着眼している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4065465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術によれば、ギア面が歯合している歯の背面に最終的に衝突する瞬間においては、ギア列は、通常駆動速度で駆動される。これにより、ギア面が衝突する瞬間に、ギア列を含むメカ系の各速度と慣性モーメントとによる運動エネルギーが衝突音として解放されることとなる。したがって、特許文献1に記載されている制御方法によれば、駆動部においてモーターの駆動トルクを低減させることによる消音効果は期待できるが、被伝達部および伝達部を含む運動エネルギーにより更に衝突音圧を低減することはできない。
【0007】
本発明は、被伝達部と伝達部の衝突時に発生する音をより効果的に低減させることが可能な駆動装置、撮像装置、ぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明の態様の一つである駆動装置は、固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置において、前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する記憶部と、前記記憶部から読み出した情報に基づいて、前記非伝達領域における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせるための駆動情報設定部と、前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の態様の一つである撮像装置は、前述した駆動装置を備える撮像装置であることを特徴とする。
また、本発明の態様の一つであるぶれ補正装置は、前述した駆動装置を備えるぶれ補正装置であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様の一つである駆動方法は、固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置による駆動方法であって、前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を予め記憶する段階と、前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる段階と、前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う段階と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の態様の一つである制御プログラムは、固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置の前記駆動を制御部の演算処理装置に行なわせるための制御プログラムであって、前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する処理と、前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる処理を有することを特徴とする。
【0012】
更には、本発明の別の態様の一つである記録媒体は、前述した制御プログラムを記録する記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被伝達部と伝達部の衝突時に発生する音をより効果的に低減させることが可能な駆動装置、撮像装置、ぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る撮像装置の構成図である。
【図2】伝達部と被伝達部との間に発生するバックラッシについて説明する図である。
【図3】リードスクリューとナットの嵌合による駆動力伝送系におけるバックラッシをバネによる付勢により抑圧している状態を示す図である。
【図4】第1の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図5】第1の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図6】第2の駆動方法についての度制御プロファイルを示す図である。
【図7】第2の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図8】バックラッシが比較的大きい場合の速度制御プロファイルを示す図である。
【図9】バックラッシが比較的小さい場合の速度制御プロファイルを示す図である。
【図10】第3の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図11】第3の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図12】第4の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図13】第4の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図14】減速駆動時に生じ得る問題を説明するための図である。
【図15】第5の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図16】第5の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図17】姿勢差や温度と駆動量とを対応付けたテーブルの構成例を示す図である。
【図18】第5の駆動方法についての速度制御プロファイルの他の例を示す図である。
【図19】第5の駆動方法を示したフローチャートである。
【図20】第5の駆動処理の詳細フローを示す図である。
【図21】第1〜第5の駆動方法を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下においては、撮像装置のぶれ補正機構において、本実施形態に係る駆動装置を備える場合を例に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成図である。図1に示す撮像装置1は、ぶれ検出部2、駆動機構7、駆動情報設定部6、記憶部5、記録媒体4及び制御部3を含む。図1においては、本実施形態に係るぶれ補正機構に係わる構成を中心に記載している。
【0017】
ぶれ検出部2は、例えばジャイロスコープ等の角速度センサや角加速度センサを用い、撮像装置1の振れを検出し、制御部3に対して、検出したぶれを示すぶれ情報を通知する。
【0018】
駆動機構7は、位置検出部8、光学要素部9、撮像部10、被伝達部12、伝達部13、駆動部14及び固定部15を有し、光学要素部9または撮像部10を移動させることにより、ぶれ補正を行う。
【0019】
駆動機構7のうち、光学要素部9は、複数のレンズ等を含み、撮像部10上に被写体像を結像させる。撮像部10は、光学要素部9により結像された被写体像を光電変換し、得られた信号についてA/D変換を行う。A/D変換により得られたデジタルデータは、駆動情報設定部6において色分離やγ補正等の一連の映像信号処理が施され、制御部3は、得られた被写体像信号としてのYCbCr信号を記憶部5に記憶させる。
【0020】
位置検出部8は、光学要素部9または撮像部10の位置を示す位置情報を検出し、制御部3に対して、検出した位置情報を通知する。制御部3は、通知された位置情報より、ぶれ補正において光学要素部9または撮像部10の移動が必要な量を算出し、駆動部14を駆動するための駆動信号を生成する。
【0021】
駆動機構7の駆動部14は、制御部3からの駆動信号にしたがって、伝達部13を介して可動部11に駆動力を伝達し、可動部11を固定部15に対して移動させる。ここで、可動部11は、被伝達部12と光学要素部9とからなる場合(可動部11A)と、被伝達部12と撮像部10とからなる場合(可動部11B)とがある。
【0022】
伝達部13と可動部11の被伝達部12との間には、機構上、非伝達領域が存在する。非伝達領域とは、駆動力が伝達されない領域のことであり、本実施の形態ではバックラッシをさす。バックラッシとは機械に用いられる送りねじ、歯車、リンケージなどの互いにはまりあって運動する機械要素において、意図して設けられた遊びにより発生する隙間のことであり、この隙間に磨耗防止のための潤滑剤を塗布する場合や、機械要素に弾性部材を利用する場合があるので、潤滑剤の粘性変形や弾性部材の弾性変形により間隙の量は変化する。間隙の量は重力による影響(姿勢差)や、温度による影響を受ける。
【0023】
以後はバックラッシの量を間隙量の変化要因も含めたものとし、説明する。図2及び図3を参照して、バックラッシについて説明する。
図2は、伝達部13と被伝達部12との間に発生するバックラッシについて説明する図である。実施例においては、伝達部13は、駆動部14のリードスクリューによって回動するナット(の突起部)がこれに相当し、被伝達部12は、光学要素部9の鏡枠がこれに相当する。図2及び図3においては、伝達部13及び被伝達部12を表す構成には、同一の符号を付している。
【0024】
鏡枠(被伝達部)12の凹部にナット(伝達部)13−1の凸部が嵌合することにより、駆動部14のリードスクリューの回転力が鏡枠12を光軸に対して直交方向に移動させる力として伝達される。鏡枠12の凹部にナット13−1の凸部が嵌合するときにできる間隙が、バックラッシ(非伝達領域)の一つの原因である。
【0025】
図3は、リードスクリューとナットの嵌合による駆動力伝送系におけるバックラッシを、バネによる付勢により抑圧している状態を示す図である。アクチュエータ(図1の駆動部14に相当)は、リードスクリュー13−2を回転させ、図3に示すように、嵌合されているナット13−1を光軸と直交する方向(図3においては左右方向)に移動させる。
【0026】
リードスクリュー13−2のねじ山の凸部と、ナット13−1のねじ山の凹部とが嵌合するときにできる間隙も、バックラッシ(非伝達領域)の一つの要因である。しかし、実施例においては、ナット13−1が光軸と直交する一方向(図3においては左方向)に付勢されている。このため、駆動を停止させたときのリードスクリュー13−2とナット13−1との間にできる間隙については、無視できる程度に小さい。
【0027】
バックラッシは、部品の加工状態での固体差や、姿勢差、温度変化等により影響を受けるため、常に一定ではなく、ばらつきや変化範囲が存在する。したがって、バックラッシを吸収するときは、バックラッシの量として一つの値を保持して管理するよりも、状況に応じた吸収処理を行うことが好ましい。そこで、本実施形態に係る撮像装置1においては、状況に応じて駆動部14の駆動方法を適切に設定する。
【0028】
駆動情報設定部6は、色分離、γ補正等の画像処理を行い、画像信号を変換して得られる被写体像信号YCbCr信号を出力する。また、駆動情報設定部6は、駆動機構7の固定部15に対して可動部11を移動させるときの駆動部14を制御する方法を決定する。特に、本実施形態に係る撮像装置1の駆動情報設定部6は、伝達部13と可動部11の被伝達部12との間のバックラッシを吸収するときの駆動部14の駆動方法に関する情報を設定し、設定した情報にしたがって、固定部15に対し可動部11を移動させて位置決めを行わせる。駆動部14の駆動方法に関する情報を、以下「駆動情報」または「速度制御プロファイル」という。詳細については、後述する。
【0029】
駆動情報設定部6は、例えば制御部3の演算処理装置により実行される駆動情報を設定するまでの一連の処理を行う電子回路、または制御部3の演算処理装置により実行されるプログラムである。駆動情報設定部6は、このようなプログラムとした場合、記憶部5に予め記憶させるようにしてもよい。
【0030】
記憶部5は、駆動情報設定部6から出力される被写体像信号YCbCr信号と、及び被伝達部12と伝達部13との間に存在するバックラッシに係わる情報とを記憶するとともに、記録媒体4に対して、画像等のデータを記憶する。バックラッシに係わる情報の詳細については後述する。駆動情報設定部6が制御プログラムである場合は、当該制御プログラムを記録媒体4に予め記憶させておき、記憶部5に読み出して制御部3の演算装置で実行されるマイクロコードとして実行させてもよい。また、駆動機構7を駆動してぶれ補正を行う場合には、制御部3は、駆動情報設定部6に基づいて駆動機構7を駆動することにより、ぶれ補正がなされた画像を記憶部5に記憶する。
【0031】
記録媒体4は、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等であり、画像等のデータを保存する。
【0032】
制御部3は、撮像部10、駆動情報設定部6、及び記憶部5等の各部の制御を行う。本実施形態に係る駆動機構7の制御に関しては、前述のとおり、例えば制御部3の演算処理装置により実行される駆動情報を設定するまでの一連の処理を行う電子回路、または制御部3の演算処理装置により実行されるプログラムである駆動情報設定部6が制御動作の中心となり実行される。以降の説明では、駆動情報設定部6は、制御部3の演算処理装置により実行される制御プログラムで構成した場合とする。
【0033】
以下に、図4〜図20を参照して、本実施形態に係る撮像装置1が、被伝達部(図2の鏡枠)12と伝達部13(図2のナット13−1)との間に存在するバックラッシの量等の各種状況に応じた駆動部14の駆動を行って、バックラッシを吸収する駆動方法を説明する。なお、バックラッシを吸収することをバックラッシキャンセルともいう。以下に、バックラッシキャンセルを行うための駆動部14の駆動方法について、具体的に説明する。
<第1の駆動方法>
【0034】
図4及び図5を参照して、第1の駆動方法について説明する。
図4は、第1の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4において、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示す。ここで、駆動速度とは、駆動部14により駆動されて移動する可動部11の速度をいう。
【0035】
制御部3は、駆動部14を駆動することにより伝達部13と被伝達部12との間のバックラッシキャンセルをするときに、予め記憶部5に記憶しているバックラッシに係わる情報を読み出して、図4に示す速度制御プロファイルを作成する。速度制御プロファイルは、制御部3が駆動部14をどのように制御して駆動させるかを示す駆動情報であり、駆動速度と時間との関係を定義する。制御部3は、作成した速度制御プロファイルにしたがって、駆動部14の制御を行う。
【0036】
図4に示す速度制御プロファイルにおいては、バックラッシキャンセルをするときの可動部11の移動方向を正方向とし、バックラッシキャンセルをするために駆動を開始するまでに可動部11が移動していた方向を負方向としている。
【0037】
バックラッシキャンセルをしている間は、伝達部13(ナット13−1)から被伝達部(鏡枠)12に対する伝達力は、作用していない。このことから、以下の説明においては、被伝達部12と伝達部13との間の間隙は駆動力が伝達されない非伝達領域として存在する。本実施の形態ではバックラッシをさす。バックラッシとは前述の通り機械に用いられる送りねじ、歯車、リンケージなどの互いにはまりあって運動する機械要素において、意図して設けられた遊びにより発生する隙間のことであり、この隙間に磨耗防止のための潤滑剤を塗布する場合や、機械要素に弾性部材を利用する場合があるので、潤滑剤の粘性変形や弾性部材の弾性変形により間隙の量は変化する。間隙の量は重力による影響(姿勢差)や、温度による影響を受ける。本実施の形態ではバックラッシの量を間隙量の変化要因も含めたものとする。
【0038】
第1の駆動方法について具体的に説明する。
バックラッシが大きくなるのは駆動方向を反転させた場合や装置の保持姿勢を変えた場合であり、その他温度変動や振動により影響を受けることが知られている。ここでは駆動方向を反転した場合を例にとって説明する。
【0039】
図4に示すように、第1の駆動方法によれば、制御部3は、まず、通常駆動速度での駆動から減速させて駆動速度をゼロにし、駆動部14を停止させる。駆動部14の停止している期間を「停止期間」とする。
【0040】
停止期間の後、制御部3は、駆動方向を反転させて通常駆動速度を超える所定の速度になるまで、駆動部14を加速する。実施例では、通常の駆動における飽和速度まで加速する。バックラッシ(非伝達領域)においては、被伝達部である鏡枠12や、撮像部10であるイメージセンサ、または光学要素部9であるレンズ等によるメカニカルな負荷はかかっておらず、慣性が小さくなる。このため、バックラッシの駆動には、通常の駆動速度よりも駆動速度を上げることが可能である。
【0041】
飽和速度まで加速した後は、等速で駆動をし、伝達部13と被伝達部12とが衝突すると想定されるタイミングに応じて、減速を開始する。実施例では、速度が略ゼロになるまで減速する。減速を終了させる時点が伝達部13と被伝達部12とが衝突すると想定される時点である。減速が終了すると、通常の駆動速度まで加速をして、以降は、通常のぶれ補正等における駆動動作を行う。図4の実施例ではぶれ補正における駆動が、通常駆動速度の等速度運動による位置制御の例を示しているが、位置検出部8やぶれ検出部2の情報から加速度を検出して駆動速度を変化させても良い。
【0042】
速度制御プロファイルでは、区間ごとに、どのような加速を行うか、及び、最終的にどれだけの駆動速度まで加速するかを定義している。第1の駆動方法についての速度制御プロファイルのうち、停止期間から駆動を開始して、飽和速度に到達するまでの第1の区間、飽和速度で駆動する第2の区間、及び、飽和速度から減速して略ゼロまで減速する第3の区間を、それぞれ「第1乃至第3の駆動フェーズ」とする。制御部3において、読み出したバックラッシに係わる情報に基づき、駆動情報設定部6が駆動フェーズごとに必要なパラメータを決定して、図4に示す速度制御プロファイルを作成する。
【0043】
ここで、バックラッシにおいて、ある駆動フェーズ内における伝達部13の移動距離は、図4の速度制御プロファイルと横軸の駆動時間範囲とで囲まれる面積で表されるため、図4の速度制御プロファイルの横軸で示す駆動時間Tは、伝達部13の位置と関連していると言うことができる。また、伝達部13と可動部11の被伝達部12との間のバックラッシキャンセルをした状態の伝達領域においては、可動部11の移動距離が、図4の速度制御プロファイルと横軸で囲まれる面積で表される。以下の説明においては、伝達部13の位置を「駆動位置」と表すこともある。
【0044】
制御部3は、速度制御プロファイルに設定した駆動フェーズごとの加速度や最高速度、及び各駆動フェーズの駆動時間を参照し、これにしたがって駆動部14の制御を行う。可動部11は、伝達部13を介して駆動部14により駆動される。前述のとおり、伝達部は速度制御プロファイルと横軸の駆動時間範囲とで囲まれる面積に相当する距離を移動する。以下においては、各駆動フェーズ内での伝達部13の移動距離を「各駆動フェーズにおける駆動量」とし、バックラッシキャンセルをするために伝達部13を移動させるトータルの距離を「バックラッシ駆動量」とする。
【0045】
次に、各駆動フェーズにおける駆動量やバックラッシ駆動量の求め方について説明する。
図5は、第1の駆動方法に関する制御量を示す図である。このうち、図5(a)は、各駆動フェーズにおける駆動量の算出方法、図5(b)は、バックラッシ駆動量の算出方法を示す。
【0046】
図5(a)に示すとおり、各駆動フェーズにおける駆動量は、加速/減速を行う駆動フェーズ(第1及び第3の駆動フェーズ)においては平均駆動速度×駆動時間から求まり、等速での駆動を行う駆動フェーズ(第2の駆動フェーズ)においては最高駆動速度×駆動時間から求まる。ここでの最高駆動速度とは、駆動電流を通常の駆動時と同じ電流で駆動し、バックラッシでの負荷を脱調なしで駆動可能な最高速度、又は速度が飽和してそれ以上加速できない最高速度をいう。また、駆動時間とは、駆動部14が駆動を行う時間をいうが、以下の説明においては、特に、バックラッシキャンセルをするため、駆動部14が各駆動フェーズで駆動を行っている時間を指すこととする。
【0047】
制御部3は、例えば、図1の位置検出部8が検出した光学要素部9または撮像部10の位置を示す位置情報等を利用して、予めバックラッシ(非伝達領域)の大きさを検知する。検知したバックラッシの大きさに相当する距離のうち、加速及び減速を行う第1及び第3の駆動フェーズの駆動量を決定する。第1及び第3の駆動フェーズの駆動量は、例えば、撮像装置1に予め記憶されている最大加速度で、予め記憶されている最高駆動速度まで加速するとした場合に必要な距離から決定する。第1及び第3の駆動フェーズでの駆動時間は、求めた駆動量を前述の平均駆動速度で除算することにより求まる。平均駆動速度は、例えば第1の駆動フェーズにおいては初速度がゼロで、最終的に到達すべき速度は最高駆動速度であることより求まる。同様に、第3の駆動フェーズの平均駆動速度は、初速度が最高駆動速度で、最終的には速度がゼロになるとして、求めることができる。
【0048】
第1及び第3の駆動フェーズにおける駆動量が求まると、第1及び第3の駆動フェーズにおける駆動量をバックラッシの大きさから減算した距離を、第2の駆動フェーズの駆動量として割り当てる。第2の駆動フェーズにおける駆動量は、図4においては「可変部分」で表す。
【0049】
前述のとおり、第2の駆動フェーズについては、可動部11は、加速度ゼロの等速度運動を行い、駆動速度は、予め値が設定されている。したがって、決定した駆動量を最高駆動速度で除算することにより、第2の駆動フェーズの駆動時間を決定することができる。
【0050】
このように、決定した第1及び第3の駆動フェーズの加速度及び駆動時間、第2の駆動フェーズの駆動時間、並びに予め記憶されている最高駆動速度とから、図4の速度制御プロファイルを作成する。
【0051】
図5(b)に示すとおり、図4の速度制御プロファイルにしたがって第1〜第3の各駆動フェーズの制御を行った場合、バックラッシ駆動量は、図5(a)の計算式で表される第1〜第3の駆動フェーズにおける駆動量の合計に相当する。
【0052】
このように、記憶部5に記憶されているバックラッシに係わる情報に基づき、駆動フェーズごとに必要なパラメータである加速度(等速度運動の区間については駆動速度)及び駆動時間をそれぞれ求めることにより、図4の速度制御プロファイルを作成する。作成した速度制御プロファイルにしたがって駆動部14を制御することにより、バックラッシキャンセルをするときは通常駆動速度よりも高速の最高駆動速度まで加速して高速で移動させ、被伝達部12と伝達部13とが衝突する前に、駆動速度は、一旦ゼロ付近にまで減速される。これにより、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となり、且つバックラッシキャンセルをするための駆動時間が短縮される。
<第2の駆動方法>
【0053】
図6〜図9を参照して、第2の駆動方法について説明する。
図6は、第2の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4と同様に、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示し、駆動速度Vについては、バックラッシキャンセルをするときの伝達部13の移動方向を正にとる。
【0054】
前述のとおり、第1の駆動方法においては、停止期間を設けて駆動速度をゼロとした後に、駆動方向を反転させ、通常駆動速度での駆動よりも高速の飽和速度まで加速して、飽和速度で等速度運動を行った後、速度をゼロ付近まで減速してから、通常の駆動速度に戻す制御を行う。
【0055】
これに対し、第2の駆動方法においては、等速度運動を行う区間が存在せず、飽和速度まで加速を行うと、直ちに減速の駆動フェーズに入る。実施例では、図6に示すように、加速及び減速の駆動時間が凡そ等しくなるように速度制御プロファイルを作成する。すなわち、第2の駆動方法においては、バックラッシの凡そ2分の1の距離までに駆動速度Vが飽和速度に到達するよう加速をし、その後、加速から減速に転じ、ゼロ付近になるまで減速する制御を行っている。駆動速度をゼロ付近になるまで減速すると、第1の駆動方法と同様に、通常の駆動速度まで加速して、以降は通常のぶれ補正等における駆動動作を行っている。図6の実施例ではぶれ補正における駆動が、通常駆動速度の等速度運動による位置制御の例を示しているが、位置検出部8やぶれ検出部2の情報から加速度を検出して駆動速度を変化させても良い。図8、図9も同様である。
【0056】
第2の駆動方法における加速区間を第1の駆動フェーズとし、減速区間を第2の駆動フェーズとする。
図7は、第2の駆動方法に関する制御量を示す図である。このうち、図7(a)は、各駆動フェーズにおける駆動量の算出方法、図7(b)は、バックラッシ駆動量の算出方法を示す。
【0057】
第2の駆動方法によれば、第1及び第2の駆動フェーズにおける駆動量は、それぞれ平均駆動速度×駆動時間から求まる。
制御部3は、第1の駆動方法と同様に、図1の位置検出部8が検出した位置情報等から予め検知したバックラッシの大きさを等分することにより、第1の駆動フェーズ及び第2の駆動フェーズのそれぞれの駆動量を決定する。決定した駆動フェーズごとの駆動量と、予め記憶されている最高速度とから、各駆動フェーズにおける加速度を決定する。加速及び減速の区間の駆動時間の決定方法については、第1の駆動方法の説明において述べたとおりである。決定した第1及び第2の駆動フェーズの加速度及び駆動時間、並びに予め記憶されている最高駆動速度より、速度制御プロファイルを作成する。
【0058】
図7(b)に示すとおり、図6の速度制御プロファイルにしたがって第1〜第2の駆動フェーズの制御を行った場合、バックラッシ駆動量は、図7(a)の計算式で表される第1〜第2の駆動フェーズにおける駆動量の合計に相当する。
【0059】
第2の駆動方法によれば、バックラッシの大きさが比較的小さい場合や、消費電力を下げたい等の理由から、アクチュエーター等の駆動部14のトルクによる加速度が相対的に低く設定される場合等に効果を奏する。すなわち、第2の駆動方法においては、最高速度で駆動する駆動フェーズを一瞬としたとしても、第1の駆動方法と同様に、通常駆動速度よりも高速になるまでの加速動作、及び飽和速度からゼロ付近にまでの減速動作を行っている。バックラッシが比較的小さい場合や駆動部14のトルクによる加速度が相対的に低い場合等であっても、第2の駆動方法により、第1の駆動方法と同様に、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0060】
前述のとおり、第2の駆動方法においては、バックラッシの大きさに応じて加速度を決定している。バックラッシの大きさに応じて加速度等を小さく、あるいは大きく設定した場合の速度制御プロファイルを、それぞれ図8及び図9に示す。
【0061】
図8は、バックラッシが比較的大きい場合の速度制御プロファイルを示す図であり、図9は、バックラッシが比較的小さい場合の速度制御プロファイルを示す図である。ここで、バックラッシの大きさは、図6に示す場合のそれを基準として、相対的に大きい場合及び小さい場合を示しており、図8及び図9においては、図6の速度制御プロファイルを破線で示している。図6と同様に、縦軸及び横軸は、それぞれ駆動速度V及び駆動時間Tを示す。
【0062】
加速度及び駆動時間の決定方法については、同様であるので説明は省略する。ただし、図9においては、加速度が、駆動可能なとり得る範囲の中で最大値をとる場合の速度制御プロファイルを示す。最大加速度は、予め撮像装置1に記憶されている。加速度はバックラッシの大きさに応じて最大加速度以下の値に設定される。
【0063】
図8及び図9に示す速度制御プロファイルにしたがって駆動部14を制御した場合であっても、同様に、バックラッシキャンセルをするときは高速で駆動し、伝達部13と被伝達部12とが衝突する前には速度が略ゼロになるまで減速させるため、同様の効果が得られる。最高速度の駆動期間を長く取らないので、より消費電力を下げることができる。アクチュエーターのトルクによる加速度が相対的に低い場合に有効である。
<第3の駆動方法>
【0064】
図10及び図11を参照して、第3の駆動方法について説明する。
図10は、第3の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4等と同様に、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示し、駆動速度Vは、バックラッシキャンセルをするときの伝達部13の移動方向を正にとる。
【0065】
第3の駆動方法についての速度制御プロファイルは、第2の駆動方法のそれと比較して、第1の駆動フェーズにおいて加速を行った後のピーク時の駆動速度を低く設定している点で異なる。実施例では、通常駆動速度よりも高く、飽和速度よりも低い値を加速限界の最高速度として設定する。所定の速度を予め記憶しておくこととしてもよいし、設定が可能な範囲の最大値及び最小値を記憶しておくこととしてもよい。
【0066】
実施例では、第2の駆動方法と同様に、バックラッシの凡そ2分の1の距離で駆動速度Vが最大となるように設定している。また、加速度には、予め記憶されている最大加速度を用いている。第1の駆動フェーズにおいては、最大加速度で所定の速度まで加速をする場合の駆動時間を、第2の駆動フェーズにおいては、所定の速度から最大の減速度で減速を行う場合の駆動時間をそれぞれ求めることにより、第3の駆動方法についての速度制御プロファイルを作成する。
【0067】
第2の駆動方法についての速度制御プロファイルでの制御は、バックラッシが比較的小さい場合に適用することにより効果を奏するが、第3の駆動方法についての速度制御プロファイルによる制御は、バックラッシが更に小さい場合に適している。
【0068】
すなわち、第1の駆動フェーズ(加速区間)においては、通常の駆動速度よりも高速になるまで加速して、バックラッシキャンセルをする。そして、第2の駆動フェーズ(減速区間)においては、通常の駆動速度での駆動を開始する前に、駆動速度が略ゼロになるまで減速する。このような駆動速度の制御を行うことで、バックラッシが非常に小さい場合であっても、最高駆動速度を低くして駆動することで、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0069】
なお、第3の駆動方法に関する制御量については、第2の駆動方法のそれと同様であり、図11に示すとおりである。
<第4の駆動方法>
【0070】
図12及び図13を参照して、第4の駆動方法について説明する。
図12は、第4の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4等と同様に、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示し、駆動速度Vは、バックラッシキャンセルをするときの伝達部13の移動方向を正にとる。
【0071】
第4の駆動方法に係る速度制御プロファイルは、第1の駆動方法のそれと比較して、等速度運動を行う第2の駆動フェーズの駆動速度を、飽和速度よりも高く設定している点で異なる。
【0072】
バックラッシ内の駆動に関しては、被伝達部12である鏡枠(図2参照)や、光学要素部9であるレンズ等にかかる負荷が軽減されている状態である。このため、第4の駆動方法のように、バックラッシについては、飽和速度よりも高速で駆動部14を駆動することが可能である。
【0073】
なお、バックラッシの大きさは、駆動領域全体の大きさと比べて十分に小さく、したがって、バックラッシを駆動するために要する時間も、必要な時間全体と比べると十分に短いと言える。このため、第2の駆動フェーズの駆動最高速度については、第1から第3の駆動フェーズまでの短時間のみ駆動電流を更に増加させて、図4に例示するより更に駆動速度を高くしても、消費電力や発熱による装置への影響は僅かであり、実現可能である。撮像装置1は、通常の駆動電流時の飽和速度よりも更に高い所定の速度を、第4の駆動方法に利用する速度として、予め記憶させておく。第4の駆動方法で利用する速度を読み出して最高駆動速度に設定することにより、図12に示す速度制御プロファイルを作成する。他のパラメータの決定方法については、前述の駆動方法と同様である。
【0074】
また、図12においては、最高駆動速度まで加速を行った後に等速度で駆動する場合を例に示しているが、第4の駆動方法は、これには限定されない。例えば、第2の駆動方法のように、まず加速区間で最高駆動速度まで加速して、次に、等速度運動を行わずに減速を開始し、減速区間で駆動速度を略ゼロまで減速する構成としてもよい。このような構成とする場合であっても、最高速度を飽和速度よりも高速に設定することで、前述の駆動方法と同様に、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0075】
等速での駆動を行わない場合には、第2の駆動方法と同様に、予め設定されている最高駆動速度とバックラッシの大きさとに応じて、加速及び減速の区間の加速度、及び各区間の駆動時間を決定する。すなわち、バックラッシの凡そ2分の1の距離で最高駆動速度となるように、各駆動フェーズの加速度駆動時間を決定することで、速度制御プロファイルを作成することができる。
【0076】
第4の駆動方法に関する各種の制御量の算出方法については、第1の駆動方法のそれと同様であり、各制御量は、図13に示すとおりである。
第4の駆動方法によれば、等速度運動の区間で前述の駆動方法よりも駆動電流を通常駆動時よりも増すことで、最高速度を鏡枠、レンズ等の負荷が接続されている状態で通常駆動する時の飽和速度より更に高速で駆動を行うため、より短時間でバックラッシキャンセルをすることが可能となる。
<第5の駆動方法>
【0077】
図14〜図20を参照して、第5の駆動方法について説明する。第5の駆動方法の詳細を説明する前に、まず、減速駆動時に生じ得る現象について説明する。
図14は、減速駆動時に生じ得る現象を説明するための図である。ここでは、バックラッシの大きさが一定でなく、駆動機構7内の部品の姿勢差の変化等の原因により変化する場合に発生する現象を説明する。
【0078】
バックラッシが小さくなる場合(図14のケース1)は、図14においては(1)に示すタイミングで伝達部13と被伝達部12との衝突が発生する。より早いタイミングで、すなわち、十分に減速し切れていない状態で伝達部13と被伝達部12とが衝突することとなる。このため、駆動速度がゼロ付近にまで十分に減速できている場合と比較すると、より大きな衝突音が発生することとなる。
【0079】
バックラッシが大きくなる場合(図14のケース2)は、図14においては(2)に示すタイミングで伝達部13と被伝達部12との衝突が発生する。衝突のタイミングが遅れるため、すなわち、減速区間ではバックラッシキャンセルをし切れず、通常駆動速度に向けて加速を開始した後に伝達部13と被伝達部12とが衝突するため、大きな衝突音が発生することとなる。
【0080】
これらの現象に対応するため、第5の駆動方法によれば、減速区間を更に複数の区間に分割する。実施例では、減速区間を2つの区間に分割する。そして、分割された区間のそれぞれについて、予め記憶させておいた情報を利用して、加速度及び駆動時間を決定する。記憶部5に記憶させる情報については、後に詳しく説明する。
【0081】
図15は、第5の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。このうち、加速区間や等速区間、すなわち第1及び第2の駆動フェーズの駆動方法については、第1の駆動方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0082】
前述のとおり、減速区間については、2つの区間に分割し、これらの区間のうち前段の区間において、駆動速度を十分に減速させておき、後段の区間では、緩やかに減速させる。このように、第5の駆動方法では、減速区間については非線形での速度制御を行う。
【0083】
以下の説明では、第3の駆動フェーズ(減速区間)のうち、前段の区間での減速を「1次減速」、後段の区間での減速を「2次減速」と表す。
1次減速区間の駆動量は、バックラッシの大きさとしてとり得る変動範囲の中で、最小値以下となるよう設定する。そして、1次減速区間の駆動を開始してから、駆動量が少なくともバックラッシの最小値に到達するまでの間に、駆動速度Vを十分に減速させる。但し、バックラッシの最小値の位置、及び設定した1次減速区間の駆動量の位置で完全に停止してしまわないように1次減速時の加速度にマージンαをのせた値(例えば、10%程度)を設定するか、または1次減速時の平均速度にマージンβをのせた値(例えば、10%程度)を設定する。これにより、被伝達部12と伝達部13とが衝突するタイミングにおいては、駆動速度Vが可能な範囲で十分減速されている。図14のケース1で説明したとおり、バックラッシが小さく、十分に減速し切れていない場合にはより大きな衝突音が発生し得る。しかし、1次減速区間において十分減速させておくことで、部品の姿勢差等によりバックラッシが小さくなり、仮に、バックラッシが最小値をとる場合であっても、図15の(1)の衝突のタイミングにおいては、伝達部13の慣性エネルギーは可能な限り小さく抑えられている。
【0084】
2次減速区間の駆動量は、バックラッシの大きさとしてとり得る範囲の中で、最大値から1次減速区間の駆動量を差し引いた駆動量となるよう設定する。そして、2次減速区間の駆動を開始してからは、緩やかに減速するよう制御する。仮に、バックラッシが、その大きさとしてとり得る範囲の中で最大値をとる場合であっても、図15の(2)のタイミングにおいては、駆動速度Vが略ゼロとなっている。このため、図14のケース2で説明したように、通常駆動速度に向けて加速を行っている最中に衝突してしまうことを回避でき、これにより、発生する衝突音の大きさを、極めて小さいものに抑制することができる。また、2次減速区間においては、バックラッシのとり得る範囲の中で最大値に合わせて駆動を行っているため、バックラッシは確実にキャンセルされている。
【0085】
他の実施例として、第3の駆動フェーズ(減速区間)のうち、減速区間を3つ以上の区間に分割する場合においては、前述の1次減速区間と2次減速区間の制御の間に、新しく挿入する減速区間の駆動量を、バックラッシの大きさとしてとり得る変動範囲の中で、最小値と最大値の間の駆動量として定義し、停止回避として加速度マージンα´、平均速度マージンβ´を同様に設定することで実現可能である。
【0086】
図16は、第5の駆動方法に関する制御量を示す図である。このうち、図16(a)は、各駆動フェーズにおける駆動量の算出方法、図16(b)は、バックラッシ駆動量の算出方法を示す。加速を行う駆動フェーズ及び等速度運動を行う駆動フェーズについては、それぞれ図5(a)及び図5(b)の第1の駆動方法のそれと同様であるので、ここでは説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0087】
第1の駆動方法においては、減速区間(第3の駆動フェーズ)においては、所定の加速度(<0)で減速を行うのに対して、前述のとおり、第5の駆動方法においては、2段階で加速度(<0)を設定している。図16(a)に示すとおり、1次減速区間及び2次減速区間は、平均速度がそれぞれの(加速度)×(各区間の駆動時間)で表され、駆動量が(平均速度)×(各区間の駆動時間)で表される。図16(b)に示すとおり、全体の駆動量は、「加速時駆動量+最高速度時駆動量+1次減速時駆動量+2次減速時駆動量」で表される。
【0088】
なお、前述のとおり、バックラッシの大きさは姿勢差等により異なる。このことから、第5の駆動方法を行うために、姿勢差と、これに対応する駆動量との関係を、予めテーブル等に格納しておく。
【0089】
図17は、姿勢差や温度差と駆動量とを対応付けたテーブルの構成例を示す図である。ここでは、バックラッシの大きさに影響を与える原因として、姿勢差及び温度差を例示する。
【0090】
例えば姿勢差により、バックラッシの大きさは所定の範囲で変化する。そこで、図17(a)に示すように、姿勢差とこれに対応する駆動量を格納しておく。制御部3は、図1においては不図示の姿勢センサ等により部品の姿勢を検知すると、図17(a)のテーブルを参照して、1次減速区間及び2次減速区間における駆動量を決定する。姿勢差の検出は図1のぶれ検出器のぶれ情報から求めることが出来る。
【0091】
すなわち、姿勢が上向き90度(+90度)の場合、制御対象物(実施例では可動部11)は自重により下側に寄る傾向があるので、バックラッシは小さくなっている。このため、姿勢が上向き90度のときに上方向に駆動を行う場合は、このときの駆動量には、バックラッシの大きさの最小値を適用する。姿勢が上向き90度のときに下向きに駆動を行う場合は、駆動量には、バックラッシの大きさの最大値を適用する。姿勢が下向き90度(−90度)の場合は、これと逆となる。
【0092】
姿勢が上向き90度と下向き90度との間にある場合は、上向き姿勢時の駆動量と下向き姿勢時の駆動量とで、内挿線形補間により駆動量を決定する。姿勢差による影響は重力によるものなので鉛直方向に加わる力量の成分を求めればよい。つまり、姿勢差の角度をθ(度)とすると可動部に加わる力量の角度成分はsin(θ)であり、駆動量の中央値((バックラッシの最大値+バックラッシの最小値)/2)を水平基準として変化するので、バックラッシの姿勢角度の内挿補間値は(1+sin(θ))×(バックラッシの最大値+バックラッシの最小値)/2で表すことができる。
【0093】
また、駆動機構7の温度によりバックラッシの大きさが変化することに対応するため、図17(b)に示すように、駆動機構7の温度差とこれに対応する駆動量との関係を、予めテーブルに格納しておく。制御部3は、図1においては不図示の温度センサ等により駆動機構7の温度を検知すると、図17(b)のテーブルを参照して、1次減速区間及び2次減速区間における駆動量を決定する。
【0094】
すなわち、駆動機構7の温度が、とり得る温度の範囲内において最低温度にあるとき(低音限界時、実施例では−5℃)は、部材の収縮や摺動性の低下によりバックラッシは小さくなっていると考えられるので、駆動量にはバックラッシの大きさとしてとり得る範囲内での最小値を適用する。駆動機構7の温度がとり得る範囲内において最高温度にあるとき(高温限界時、実施例では50℃)は、駆動量には、バックラッシの大きさとしてとり得る範囲内での最大値を適用する。
【0095】
駆動機構7の温度が低音限界と高温限界の間にある場合(実施例では、−5℃超且つ50℃未満の範囲にある場合)は、低音限界時の駆動量と高温限界時の駆動量とで、内挿線形補間により駆動量を決定する。
【0096】
このように、1次減速区間については、バックラッシの最小値及び当該区間における加速度を、2次減速区間については、バックラッシの最大値及び当該区間における加速度を予め記憶部5等に記憶しておく。姿勢センサや温度センサ(図示せず)により部品の姿勢や駆動機構7の温度を検知すると、制御部3は、図17に示すテーブルを参照して、検知した姿勢や温度に応じたバックラッシの最小値及び最大値を適用して、速度制御プロファイルを作成する。これにより、バックラッシの大きさの変化に対応した制御が可能となる。
【0097】
図18は、第5の駆動方法についての速度制御プロファイルの他の例を示す図である。図15に示す速度制御プロファイルと異なる点を中心に説明する。
図18に示す速度制御プロファイルによれば、2次減速区間での駆動完了時における駆動速度Vの値は、Vs(≠0)である。すなわち、バックラッシキャンセルをする動作の完了時において、可動部11が完全に停止していない。このような制御を行ったとしても、2次減速区間での駆動を終了後に通常のぶれ補正等における駆動を開始するときに、十分に駆動速度Vは抑えられていれば、衝突時に発生する音は十分に抑えられている。このため、通常での駆動を開始する時点において、必ずしも駆動速度Vがゼロ付近にまで抑えられ、可動部11が略静止状態となっている必要はない。なお、これは、第5の駆動方法に限るものではなく、前述の第1〜第4の駆動方法についても同様である。
【0098】
また、図15及び図18においては最高速度での等速度運動を行う駆動フェーズが存在する場合の速度制御プロファイルを示したが、これに限定されるものではない。加速区間及び減速区間のみからなり、減速区間について複数の区間に分割して、各区間で減速度を設定する構成についても第5の駆動方法に含まれる。また、最高速度についても、飽和速度に限定されるものではなく、飽和速度を超える速度まで加速する構成としてもよいし、通常の駆動速度超且つ飽和速度未満の速度まで加速する構成としてもよい。
【0099】
図19は、第5の駆動方法を示したフローチャートである。前述したように、本フローチャートでは、撮像装置1の制御部3が記録媒体4から駆動情報設定部6における制御プログラムを読み出して実行する場合とする。図19を参照して、バックラッシキャンセルをするときに制御部3が実行する処理の流れについて説明する。
【0100】
まず、制御部3は、ステップS1において、駆動方向、すなわち、可動部11の移動方向を反転させるか否かを判断する。
次に、制御部3は、ステップS2において、記憶部5等に格納されているバックラッシに係わる情報を読み出し、バックラッシキャンセルをするときの速度制御プロファイルを作成する。第5の駆動方法についての速度制御プロファイルは、加速区間の加速度と加速期間、等速度での駆動区間の最高駆動速度と駆動期間、1次減速区間及び2次減速区間それぞれの加速度と減速期間の情報からなる。
【0101】
そして、制御部3は、ステップS3において、加速駆動処理を行って、駆動速度Vが最高駆動速度に到達するまで加速させる。駆動速度Vが最高駆動速度に到達すると、ステップS4に進む。
【0102】
制御部3は、ステップS4において、最高駆動速度での等速度運動を保って駆動する。
制御部3は、ステップS5において、減速駆動処理を行って、駆動速度Vを所定の速度まで減速させる。
【0103】
制御部3は、ステップS6において、可動部11を所定の位置で停止させるための処理を行うと、処理を終了する。以降は、通常の駆動処理を開始する。
図20は、第5の駆動処理の詳細フローを示す図である。図20を参照して、図19の処理内容をより具体的に説明する。
【0104】
まず、制御部3は、ステップS1−1において、可動部11の駆動方向を反転するか否かを判断する。駆動方向の反転を行わない場合は、バックラッシキャンセルをする処理は不要と判断し、処理を終了する。駆動方向の反転が必要と判断した場合には、ステップS2−1に進む。
【0105】
制御部3は、ステップS2−1において、記憶部5等から、バックラッシに係わる情報を読み出す。読み出す情報は、バックラッシ駆動量の最小値や最大値、加速及び減速の最大値や最高駆動速度等である。前述のとおり、ここで、姿勢や温度によるバックラッシ駆動量の変化特性や駆動電流等についても読み出す。読み出した情報に基づき、必要なパラメータを決定して、速度制御プロファイルを作成する。
【0106】
制御部3は、ステップS3−1において、減速開始位置を演算する。減速区間の駆動量の演算方法については、図5を参照して説明したとおりである。減速開始位置は、バックラッシの大きさから減速区間の駆動量を減算することにより得られる。また、制御部3は、ステップS3−1において、バックラッシ内については、まず加速を行い、最高駆動速度に到達すると直ちに減速を開始する場合のバックラッシ駆動量を演算する。そして、求めたバックラッシ駆動量と、ステップS2−1において記憶部5等から読み出したバックラッシ駆動量とを比較する。
【0107】
演算により求めたバックラッシ駆動量よりも読み出したバックラッシ駆動量の最小値の方が大きい場合は、差分を求め、一時記憶しておく。求めた差分は、最高駆動速度での駆動量として用いる。
【0108】
演算により求めたバックラッシ駆動量よりも読み出したバックラッシ駆動量の最小値の方が小さい場合は、過補正とならないよう最高駆動速度を新たに定義する。具体的には、まず、読み出したバックラッシ駆動量の最大値の2分の1の量を算出する。そして、読み出した加速度の最大値で求めた当該2分の1の距離を駆動した場合に到達する最高速度を求めて、これを新たに最高駆動速度と定義し、以降の処理において利用する。演算により求めたバックラッシ駆動量が、記憶部5等から読み出したバックラッシ駆動量の最小値以上である場合は、記憶部5等から読み出した最高駆動速度をそのまま利用する。
【0109】
演算処理が終了すると、制御部3は、加速駆動を開始する(ステップS3−1)。
そして、制御部3は、ステップS4−1において、位置検出部8において検出した位置情報により、駆動速度を演算する。駆動部(アクチュエータ)14として、例えばステッピングモータを用いる場合は、ステップS4−1において、駆動パルスのカウント値から演算することとしてもよい。
【0110】
制御部3は、ステップS4−2において、ステップS4−1で求めた駆動速度と、最高駆動速度とを比較し、場合分け判定を行う。
駆動速度が最高駆動速度よりも高いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS4−3へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS4−3において、駆動速度として最高駆動速度を確保すべく、減速駆動を行う。
【0111】
駆動速度が最高駆動速度と等しいと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS4−4へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS4−4において、駆動速度として最高駆動速度を維持すべく駆動を行う。
【0112】
駆動速度が最高駆動速度よりも低いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS4−5へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS4−5において、駆動速度を最高駆動速度へと到達させるべく加速駆動を行う。
【0113】
制御部3は、ステップS4−6において、再度の位置検出を行う。
制御部3は、ステップS4−7において、ステップS4−6で検出した位置が、ステップS3−1において求めた減速開始位置(図20においては「減速開始位置」)に達したか否かを判定する。
【0114】
ステップS4−6で検出した位置が、ステップS3−1で求めた減速開始位置に達していないと判定した場合は、ステップS4−1に戻り、位置がステップS3−1で求めた減速開始位置に到達するまで、前述の位置検出と駆動速度の演算処理を行う。
【0115】
ステップS4−6で検出した位置が、ステップS3−1で求めた減速開始位置に達していると判定した場合は、ステップS5−1へと処理を移行させる。
制御部3は、ステップS5−1において、バックラッシに係わる情報を記憶部5等から読み出す。S2−1で既に読み出しておいたバックラッシに係わる情報を再利用するものであってもよい。具体的には、バックラッシ駆動量の最小値とこれに対応する加速度(<0)、及び、バックラッシ駆動量の最大値とこれに対応する加速度(<0)を読み出す。バックラッシ駆動量の最大値や最小値については、先に図17等を参照して説明したとおり、検知した姿勢や温度等に応じた値を取得する。
【0116】
制御部3は、ステップS5−2において、ステップS5−1で読み出した情報のうち、バックラッシ駆動量の最小値に対応する加速度を用いて、1次減速駆動を開始する。
制御部3は、ステップS5−3において、位置検出部8からの位置情報により位置検出を行い、検出した位置情報から駆動速度を演算する。
【0117】
制御部3は、ステップS5−4において、ステップS5−3で求めた駆動速度と、ステップS2−1で作成した速度制御プロファイルの第1の目標速度とを比較し、場合分け判定を行う。第1の目標速度とは、1次減速駆動において、最終的に到達すべき速度をいう。
【0118】
駆動速度が第1の目標速度よりも高いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS5−5へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS5−5において、第1の目標速度を確保すべく減速駆動を継続する。
【0119】
駆動速度が第1の目標速度と等しいと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS5−6へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS5−6において、第1の目標速度を維持すべく駆動を行う。
【0120】
駆動速度が第1の目標速度よりも低いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS5−7へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS5−7において、駆動速度として第1の目標速度へと到達させるべく減速駆動を継続する。
【0121】
制御部3は、ステップS5−8において、再度の位置検出を行う。
制御部3は、ステップS5−9において、駆動位置が、ステップS5−1で読み出したバックラッシ駆動量の最小値(図20においては「減速予定位置2」)に到達したか否かを判定する。
【0122】
駆動位置がバックラッシ駆動量の最小値に到達していない場合は、ステップS5−3に戻り、駆動位置がバックラッシ駆動量の最小値に達するまで、同様の処理を実行する。駆動位置がバックラッシ駆動量の最小値に到達している場合は、処理をステップS5−10へと移行させる。
【0123】
制御部3は、ステップS5−10において、2次減速駆動を開始する。
制御部3は、ステップS5−11において、位置検出部8からの位置情報により位置検出を行い、検出した位置情報から駆動速度を演算する。
【0124】
制御部3は、ステップS5−12において、ステップS5−11で求めた駆動速度と、ステップS2−1で作成した速度制御プロファイルの第2の目標速度とを比較し、場合分け判定を行う。第2の目標速度とは、2次減速駆動において、最終的に到達すべき速度をいう。
【0125】
駆動速度が第2の目標速度よりも高いと判定した場合、駆動速度が第2の目標速度と等しいと判定した場合、及び、駆動速度が第2の目標速度よりも低いと判定した場合は、処理をそれぞれステップS5−13、ステップS5−14、及び、ステップS5−15へと移行させる。ステップS5−13〜ステップS5−15の処理は、それぞれ前述のステップS5−5〜ステップS5−7の処理と同様である。
【0126】
制御部3は、ステップS5−16において、再度の位置検出を行う。
制御部3は、ステップS5−17において、駆動位置が、ステップS5−1で読み出したバックラッシ駆動量の最大値(図20においては「停止予定位置」)に到達したか否かを判定する。
【0127】
駆動位置がバックラッシ駆動量の最大値に到達していない場合は、ステップS5−11に戻り、駆動位置がバックラッシ駆動量の最大値に達するまで、同様の処理を実行する。駆動位置がバックラッシ駆動量の最大値に到達している場合は、処理をステップS6−1へと移行させる。
【0128】
制御部3は、ステップS6−1において、一時的に可動部11を停止状態とすべく、ブレーキ制御を行い、処理を終了する。
第5の駆動方法によれば、姿勢差や温度等の原因によりバックラッシの大きさが変化する場合であっても、減速駆動を行う区間を複数の区間に分割して区間ごとに加速度及び駆動時間を決定して駆動を行う。これにより、バックラッシが小さくなる場合には、伝達部13と被伝達部12とが、十分に減速された状態で衝突することとなる。バックラッシが大きくなる場合には、減速から通常駆動速度に向けて加速を開始した後に被伝達部13と被伝達部12とが衝突することを回避する。このように、第5の駆動方法によれば、バックラッシの大きさに応じた適切な駆動制御を行うことが可能となる。これにより、前述の駆動方法と同様に、伝達部13と被伝達部12との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0129】
図21は、第1〜第5の駆動方法を比較する図である。本実施形態に係る撮像装置1の制御部3は、第1〜第5の駆動方法の中から適切な駆動方法を選択し、選択した駆動方法に必要なパラメータを決定して、速度制御プロファイルを作成する。
【0130】
いずれの駆動方法を選択する場合であっても、選択した駆動方法においては予めどのような駆動を行うかを定義する駆動フェーズごとに区分されており、駆動フェーズごとに、それぞれ必要なパラメータを決定する。第1〜第5の駆動方法の速度制御プロファイルを作成するために必要なバックラッシに係わる情報を、記憶部5等に予め記憶させておく。例えば最高駆動速度として用いる飽和速度や、最大加速度、バックラッシ駆動量の最大値や最小値等は、複数の駆動方法で共通して利用することができる。このように、本実施形態に係る撮像装置1によれば、バックラッシの大きさ等の条件に応じた駆動方法を選択すると、バックラッシに係わる情報のうち、必要な情報を利用して速度制御プロファイルを作成し、これにしたがって制御を行うことで、適切な駆動方法を実行することができる。
【0131】
このように、本実施形態に係る撮像装置1によれば、記憶部5に記憶されているバックラッシに係わる情報に基づいて、その環境に応じた適切な駆動方法を示す駆動情報を設定する。そして、設定した駆動情報にしたがって、バックラッシキャンセルをするときには、高速で駆動させつつ、衝突前には一旦速度を十分に落としてから通常駆動速度に戻す制御を適切に行う。これにより、衝突時に発生する音をより効果的に低減させつつ、適切にバックラッシキャンセルをすることが可能となる。
【0132】
なお、ここでは、駆動方向を反転させて伝達部13と被伝達部12との間に発生する非伝達領域(バックラッシ)をキャンセルする場合の動作を例に説明しているが、これに限定されるものではない。ぶれ補正処理等においてある方向に駆動を行っているときに、駆動処理を一時停止することがある。一時停止を解除して再び同一の方向に駆動を行った場合等であっても、被伝達部12と伝達部13とが衝突するときには、音が発生することがある。非伝達部12の慣性が指示部との摩擦に比べて非常に大きくて、一時停止の際に伝達部13から離れてしまうことによるものである。このような場合にも前述の駆動方法を適用することで、同様に、衝突音が低減される。
【0133】
また、前述の実施例では光学的手ぶれ補正に伴って発生する音を低減させる駆動方法について説明したが、結像レンズの駆動や変倍レンズの駆動等、撮像装置で利用されるその他の駆動機構に適用されるものであっても良い。
【0134】
この他にも、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の改良及び変更が可能である。例えば、前述の各実施形態に示された全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよく、更には各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1 撮像装置
2 ぶれ検出部
3 制御部
4 記録媒体
5 記憶部
6 駆動情報設定部
7 (光学系)駆動機構
8 位置検出部
9 光学要素部
10 撮像部
11 可動部
12 被伝達部
13 伝達部
14 駆動部
15 固定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部に対し可動部が移動して位置決めする駆動装置、当該駆動装置を備える撮像装置ならびにぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ等の撮像装置により動画像の撮影や記録をする場合に、撮像レンズの駆動や光学的手ぶれ補正に伴って発生する音を低減させることにより、撮影時のみならず、記録内容の再生時においても、低ノイズ、高音質で再生することのできる性能が求められてきている。
【0003】
録音時の雑音の発生要因の一つとしては、例えばメカ機構駆動時の摺動音や、ギア列において歯面同士が接触するまでの間隙により生じる衝突音等が考えられる。このような要因により発生する音を低減させる技術として、メカ機構の駆動速度を下げることでギアの回転する運動エネルギーを下げて歯面の衝突時の熱や、音のエネルギーへ変換される量も下げることが知られている。しかし、駆動速度を下げると駆動時間が長くなるので、操作者の快適性が損なわれる等の欠点が発生する。これら衝突音の低減と、駆動時間の短縮とを両立させる技術として、メカ機構間のバックラッシを吸収するときの駆動速度を通常よりも上げて、歯面への衝突前には通常駆動時の速度に下げる技術が知られている(例えば、特許文献1)。これによれば、歯面への衝突前に通常駆動時の速度に下げ、駆動電流を通常よりも下げてモータートルクを下げた状態でギア面の衝突を発生させる。高速でバックラッシを吸収することで、ギア列のバックラッシの伝達が徐々に発生することによる過渡的に音が発生している時間を短縮することができる、としている。
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、バックラッシを吸収する期間において、一時的に駆動速度を通常よりも上げて駆動することにおり、駆動時間が短縮できる点と、このような駆動により、衝突時においては、モーター駆動トルクが下げられる点に着眼している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4065465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術によれば、ギア面が歯合している歯の背面に最終的に衝突する瞬間においては、ギア列は、通常駆動速度で駆動される。これにより、ギア面が衝突する瞬間に、ギア列を含むメカ系の各速度と慣性モーメントとによる運動エネルギーが衝突音として解放されることとなる。したがって、特許文献1に記載されている制御方法によれば、駆動部においてモーターの駆動トルクを低減させることによる消音効果は期待できるが、被伝達部および伝達部を含む運動エネルギーにより更に衝突音圧を低減することはできない。
【0007】
本発明は、被伝達部と伝達部の衝突時に発生する音をより効果的に低減させることが可能な駆動装置、撮像装置、ぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明の態様の一つである駆動装置は、固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置において、前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する記憶部と、前記記憶部から読み出した情報に基づいて、前記非伝達領域における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせるための駆動情報設定部と、前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の態様の一つである撮像装置は、前述した駆動装置を備える撮像装置であることを特徴とする。
また、本発明の態様の一つであるぶれ補正装置は、前述した駆動装置を備えるぶれ補正装置であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様の一つである駆動方法は、固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置による駆動方法であって、前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を予め記憶する段階と、前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる段階と、前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う段階と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の態様の一つである制御プログラムは、固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置の前記駆動を制御部の演算処理装置に行なわせるための制御プログラムであって、前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する処理と、前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる処理を有することを特徴とする。
【0012】
更には、本発明の別の態様の一つである記録媒体は、前述した制御プログラムを記録する記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被伝達部と伝達部の衝突時に発生する音をより効果的に低減させることが可能な駆動装置、撮像装置、ぶれ補正装置、駆動方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る撮像装置の構成図である。
【図2】伝達部と被伝達部との間に発生するバックラッシについて説明する図である。
【図3】リードスクリューとナットの嵌合による駆動力伝送系におけるバックラッシをバネによる付勢により抑圧している状態を示す図である。
【図4】第1の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図5】第1の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図6】第2の駆動方法についての度制御プロファイルを示す図である。
【図7】第2の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図8】バックラッシが比較的大きい場合の速度制御プロファイルを示す図である。
【図9】バックラッシが比較的小さい場合の速度制御プロファイルを示す図である。
【図10】第3の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図11】第3の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図12】第4の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図13】第4の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図14】減速駆動時に生じ得る問題を説明するための図である。
【図15】第5の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。
【図16】第5の駆動方法に関する制御量を示す図である。
【図17】姿勢差や温度と駆動量とを対応付けたテーブルの構成例を示す図である。
【図18】第5の駆動方法についての速度制御プロファイルの他の例を示す図である。
【図19】第5の駆動方法を示したフローチャートである。
【図20】第5の駆動処理の詳細フローを示す図である。
【図21】第1〜第5の駆動方法を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下においては、撮像装置のぶれ補正機構において、本実施形態に係る駆動装置を備える場合を例に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成図である。図1に示す撮像装置1は、ぶれ検出部2、駆動機構7、駆動情報設定部6、記憶部5、記録媒体4及び制御部3を含む。図1においては、本実施形態に係るぶれ補正機構に係わる構成を中心に記載している。
【0017】
ぶれ検出部2は、例えばジャイロスコープ等の角速度センサや角加速度センサを用い、撮像装置1の振れを検出し、制御部3に対して、検出したぶれを示すぶれ情報を通知する。
【0018】
駆動機構7は、位置検出部8、光学要素部9、撮像部10、被伝達部12、伝達部13、駆動部14及び固定部15を有し、光学要素部9または撮像部10を移動させることにより、ぶれ補正を行う。
【0019】
駆動機構7のうち、光学要素部9は、複数のレンズ等を含み、撮像部10上に被写体像を結像させる。撮像部10は、光学要素部9により結像された被写体像を光電変換し、得られた信号についてA/D変換を行う。A/D変換により得られたデジタルデータは、駆動情報設定部6において色分離やγ補正等の一連の映像信号処理が施され、制御部3は、得られた被写体像信号としてのYCbCr信号を記憶部5に記憶させる。
【0020】
位置検出部8は、光学要素部9または撮像部10の位置を示す位置情報を検出し、制御部3に対して、検出した位置情報を通知する。制御部3は、通知された位置情報より、ぶれ補正において光学要素部9または撮像部10の移動が必要な量を算出し、駆動部14を駆動するための駆動信号を生成する。
【0021】
駆動機構7の駆動部14は、制御部3からの駆動信号にしたがって、伝達部13を介して可動部11に駆動力を伝達し、可動部11を固定部15に対して移動させる。ここで、可動部11は、被伝達部12と光学要素部9とからなる場合(可動部11A)と、被伝達部12と撮像部10とからなる場合(可動部11B)とがある。
【0022】
伝達部13と可動部11の被伝達部12との間には、機構上、非伝達領域が存在する。非伝達領域とは、駆動力が伝達されない領域のことであり、本実施の形態ではバックラッシをさす。バックラッシとは機械に用いられる送りねじ、歯車、リンケージなどの互いにはまりあって運動する機械要素において、意図して設けられた遊びにより発生する隙間のことであり、この隙間に磨耗防止のための潤滑剤を塗布する場合や、機械要素に弾性部材を利用する場合があるので、潤滑剤の粘性変形や弾性部材の弾性変形により間隙の量は変化する。間隙の量は重力による影響(姿勢差)や、温度による影響を受ける。
【0023】
以後はバックラッシの量を間隙量の変化要因も含めたものとし、説明する。図2及び図3を参照して、バックラッシについて説明する。
図2は、伝達部13と被伝達部12との間に発生するバックラッシについて説明する図である。実施例においては、伝達部13は、駆動部14のリードスクリューによって回動するナット(の突起部)がこれに相当し、被伝達部12は、光学要素部9の鏡枠がこれに相当する。図2及び図3においては、伝達部13及び被伝達部12を表す構成には、同一の符号を付している。
【0024】
鏡枠(被伝達部)12の凹部にナット(伝達部)13−1の凸部が嵌合することにより、駆動部14のリードスクリューの回転力が鏡枠12を光軸に対して直交方向に移動させる力として伝達される。鏡枠12の凹部にナット13−1の凸部が嵌合するときにできる間隙が、バックラッシ(非伝達領域)の一つの原因である。
【0025】
図3は、リードスクリューとナットの嵌合による駆動力伝送系におけるバックラッシを、バネによる付勢により抑圧している状態を示す図である。アクチュエータ(図1の駆動部14に相当)は、リードスクリュー13−2を回転させ、図3に示すように、嵌合されているナット13−1を光軸と直交する方向(図3においては左右方向)に移動させる。
【0026】
リードスクリュー13−2のねじ山の凸部と、ナット13−1のねじ山の凹部とが嵌合するときにできる間隙も、バックラッシ(非伝達領域)の一つの要因である。しかし、実施例においては、ナット13−1が光軸と直交する一方向(図3においては左方向)に付勢されている。このため、駆動を停止させたときのリードスクリュー13−2とナット13−1との間にできる間隙については、無視できる程度に小さい。
【0027】
バックラッシは、部品の加工状態での固体差や、姿勢差、温度変化等により影響を受けるため、常に一定ではなく、ばらつきや変化範囲が存在する。したがって、バックラッシを吸収するときは、バックラッシの量として一つの値を保持して管理するよりも、状況に応じた吸収処理を行うことが好ましい。そこで、本実施形態に係る撮像装置1においては、状況に応じて駆動部14の駆動方法を適切に設定する。
【0028】
駆動情報設定部6は、色分離、γ補正等の画像処理を行い、画像信号を変換して得られる被写体像信号YCbCr信号を出力する。また、駆動情報設定部6は、駆動機構7の固定部15に対して可動部11を移動させるときの駆動部14を制御する方法を決定する。特に、本実施形態に係る撮像装置1の駆動情報設定部6は、伝達部13と可動部11の被伝達部12との間のバックラッシを吸収するときの駆動部14の駆動方法に関する情報を設定し、設定した情報にしたがって、固定部15に対し可動部11を移動させて位置決めを行わせる。駆動部14の駆動方法に関する情報を、以下「駆動情報」または「速度制御プロファイル」という。詳細については、後述する。
【0029】
駆動情報設定部6は、例えば制御部3の演算処理装置により実行される駆動情報を設定するまでの一連の処理を行う電子回路、または制御部3の演算処理装置により実行されるプログラムである。駆動情報設定部6は、このようなプログラムとした場合、記憶部5に予め記憶させるようにしてもよい。
【0030】
記憶部5は、駆動情報設定部6から出力される被写体像信号YCbCr信号と、及び被伝達部12と伝達部13との間に存在するバックラッシに係わる情報とを記憶するとともに、記録媒体4に対して、画像等のデータを記憶する。バックラッシに係わる情報の詳細については後述する。駆動情報設定部6が制御プログラムである場合は、当該制御プログラムを記録媒体4に予め記憶させておき、記憶部5に読み出して制御部3の演算装置で実行されるマイクロコードとして実行させてもよい。また、駆動機構7を駆動してぶれ補正を行う場合には、制御部3は、駆動情報設定部6に基づいて駆動機構7を駆動することにより、ぶれ補正がなされた画像を記憶部5に記憶する。
【0031】
記録媒体4は、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等であり、画像等のデータを保存する。
【0032】
制御部3は、撮像部10、駆動情報設定部6、及び記憶部5等の各部の制御を行う。本実施形態に係る駆動機構7の制御に関しては、前述のとおり、例えば制御部3の演算処理装置により実行される駆動情報を設定するまでの一連の処理を行う電子回路、または制御部3の演算処理装置により実行されるプログラムである駆動情報設定部6が制御動作の中心となり実行される。以降の説明では、駆動情報設定部6は、制御部3の演算処理装置により実行される制御プログラムで構成した場合とする。
【0033】
以下に、図4〜図20を参照して、本実施形態に係る撮像装置1が、被伝達部(図2の鏡枠)12と伝達部13(図2のナット13−1)との間に存在するバックラッシの量等の各種状況に応じた駆動部14の駆動を行って、バックラッシを吸収する駆動方法を説明する。なお、バックラッシを吸収することをバックラッシキャンセルともいう。以下に、バックラッシキャンセルを行うための駆動部14の駆動方法について、具体的に説明する。
<第1の駆動方法>
【0034】
図4及び図5を参照して、第1の駆動方法について説明する。
図4は、第1の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4において、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示す。ここで、駆動速度とは、駆動部14により駆動されて移動する可動部11の速度をいう。
【0035】
制御部3は、駆動部14を駆動することにより伝達部13と被伝達部12との間のバックラッシキャンセルをするときに、予め記憶部5に記憶しているバックラッシに係わる情報を読み出して、図4に示す速度制御プロファイルを作成する。速度制御プロファイルは、制御部3が駆動部14をどのように制御して駆動させるかを示す駆動情報であり、駆動速度と時間との関係を定義する。制御部3は、作成した速度制御プロファイルにしたがって、駆動部14の制御を行う。
【0036】
図4に示す速度制御プロファイルにおいては、バックラッシキャンセルをするときの可動部11の移動方向を正方向とし、バックラッシキャンセルをするために駆動を開始するまでに可動部11が移動していた方向を負方向としている。
【0037】
バックラッシキャンセルをしている間は、伝達部13(ナット13−1)から被伝達部(鏡枠)12に対する伝達力は、作用していない。このことから、以下の説明においては、被伝達部12と伝達部13との間の間隙は駆動力が伝達されない非伝達領域として存在する。本実施の形態ではバックラッシをさす。バックラッシとは前述の通り機械に用いられる送りねじ、歯車、リンケージなどの互いにはまりあって運動する機械要素において、意図して設けられた遊びにより発生する隙間のことであり、この隙間に磨耗防止のための潤滑剤を塗布する場合や、機械要素に弾性部材を利用する場合があるので、潤滑剤の粘性変形や弾性部材の弾性変形により間隙の量は変化する。間隙の量は重力による影響(姿勢差)や、温度による影響を受ける。本実施の形態ではバックラッシの量を間隙量の変化要因も含めたものとする。
【0038】
第1の駆動方法について具体的に説明する。
バックラッシが大きくなるのは駆動方向を反転させた場合や装置の保持姿勢を変えた場合であり、その他温度変動や振動により影響を受けることが知られている。ここでは駆動方向を反転した場合を例にとって説明する。
【0039】
図4に示すように、第1の駆動方法によれば、制御部3は、まず、通常駆動速度での駆動から減速させて駆動速度をゼロにし、駆動部14を停止させる。駆動部14の停止している期間を「停止期間」とする。
【0040】
停止期間の後、制御部3は、駆動方向を反転させて通常駆動速度を超える所定の速度になるまで、駆動部14を加速する。実施例では、通常の駆動における飽和速度まで加速する。バックラッシ(非伝達領域)においては、被伝達部である鏡枠12や、撮像部10であるイメージセンサ、または光学要素部9であるレンズ等によるメカニカルな負荷はかかっておらず、慣性が小さくなる。このため、バックラッシの駆動には、通常の駆動速度よりも駆動速度を上げることが可能である。
【0041】
飽和速度まで加速した後は、等速で駆動をし、伝達部13と被伝達部12とが衝突すると想定されるタイミングに応じて、減速を開始する。実施例では、速度が略ゼロになるまで減速する。減速を終了させる時点が伝達部13と被伝達部12とが衝突すると想定される時点である。減速が終了すると、通常の駆動速度まで加速をして、以降は、通常のぶれ補正等における駆動動作を行う。図4の実施例ではぶれ補正における駆動が、通常駆動速度の等速度運動による位置制御の例を示しているが、位置検出部8やぶれ検出部2の情報から加速度を検出して駆動速度を変化させても良い。
【0042】
速度制御プロファイルでは、区間ごとに、どのような加速を行うか、及び、最終的にどれだけの駆動速度まで加速するかを定義している。第1の駆動方法についての速度制御プロファイルのうち、停止期間から駆動を開始して、飽和速度に到達するまでの第1の区間、飽和速度で駆動する第2の区間、及び、飽和速度から減速して略ゼロまで減速する第3の区間を、それぞれ「第1乃至第3の駆動フェーズ」とする。制御部3において、読み出したバックラッシに係わる情報に基づき、駆動情報設定部6が駆動フェーズごとに必要なパラメータを決定して、図4に示す速度制御プロファイルを作成する。
【0043】
ここで、バックラッシにおいて、ある駆動フェーズ内における伝達部13の移動距離は、図4の速度制御プロファイルと横軸の駆動時間範囲とで囲まれる面積で表されるため、図4の速度制御プロファイルの横軸で示す駆動時間Tは、伝達部13の位置と関連していると言うことができる。また、伝達部13と可動部11の被伝達部12との間のバックラッシキャンセルをした状態の伝達領域においては、可動部11の移動距離が、図4の速度制御プロファイルと横軸で囲まれる面積で表される。以下の説明においては、伝達部13の位置を「駆動位置」と表すこともある。
【0044】
制御部3は、速度制御プロファイルに設定した駆動フェーズごとの加速度や最高速度、及び各駆動フェーズの駆動時間を参照し、これにしたがって駆動部14の制御を行う。可動部11は、伝達部13を介して駆動部14により駆動される。前述のとおり、伝達部は速度制御プロファイルと横軸の駆動時間範囲とで囲まれる面積に相当する距離を移動する。以下においては、各駆動フェーズ内での伝達部13の移動距離を「各駆動フェーズにおける駆動量」とし、バックラッシキャンセルをするために伝達部13を移動させるトータルの距離を「バックラッシ駆動量」とする。
【0045】
次に、各駆動フェーズにおける駆動量やバックラッシ駆動量の求め方について説明する。
図5は、第1の駆動方法に関する制御量を示す図である。このうち、図5(a)は、各駆動フェーズにおける駆動量の算出方法、図5(b)は、バックラッシ駆動量の算出方法を示す。
【0046】
図5(a)に示すとおり、各駆動フェーズにおける駆動量は、加速/減速を行う駆動フェーズ(第1及び第3の駆動フェーズ)においては平均駆動速度×駆動時間から求まり、等速での駆動を行う駆動フェーズ(第2の駆動フェーズ)においては最高駆動速度×駆動時間から求まる。ここでの最高駆動速度とは、駆動電流を通常の駆動時と同じ電流で駆動し、バックラッシでの負荷を脱調なしで駆動可能な最高速度、又は速度が飽和してそれ以上加速できない最高速度をいう。また、駆動時間とは、駆動部14が駆動を行う時間をいうが、以下の説明においては、特に、バックラッシキャンセルをするため、駆動部14が各駆動フェーズで駆動を行っている時間を指すこととする。
【0047】
制御部3は、例えば、図1の位置検出部8が検出した光学要素部9または撮像部10の位置を示す位置情報等を利用して、予めバックラッシ(非伝達領域)の大きさを検知する。検知したバックラッシの大きさに相当する距離のうち、加速及び減速を行う第1及び第3の駆動フェーズの駆動量を決定する。第1及び第3の駆動フェーズの駆動量は、例えば、撮像装置1に予め記憶されている最大加速度で、予め記憶されている最高駆動速度まで加速するとした場合に必要な距離から決定する。第1及び第3の駆動フェーズでの駆動時間は、求めた駆動量を前述の平均駆動速度で除算することにより求まる。平均駆動速度は、例えば第1の駆動フェーズにおいては初速度がゼロで、最終的に到達すべき速度は最高駆動速度であることより求まる。同様に、第3の駆動フェーズの平均駆動速度は、初速度が最高駆動速度で、最終的には速度がゼロになるとして、求めることができる。
【0048】
第1及び第3の駆動フェーズにおける駆動量が求まると、第1及び第3の駆動フェーズにおける駆動量をバックラッシの大きさから減算した距離を、第2の駆動フェーズの駆動量として割り当てる。第2の駆動フェーズにおける駆動量は、図4においては「可変部分」で表す。
【0049】
前述のとおり、第2の駆動フェーズについては、可動部11は、加速度ゼロの等速度運動を行い、駆動速度は、予め値が設定されている。したがって、決定した駆動量を最高駆動速度で除算することにより、第2の駆動フェーズの駆動時間を決定することができる。
【0050】
このように、決定した第1及び第3の駆動フェーズの加速度及び駆動時間、第2の駆動フェーズの駆動時間、並びに予め記憶されている最高駆動速度とから、図4の速度制御プロファイルを作成する。
【0051】
図5(b)に示すとおり、図4の速度制御プロファイルにしたがって第1〜第3の各駆動フェーズの制御を行った場合、バックラッシ駆動量は、図5(a)の計算式で表される第1〜第3の駆動フェーズにおける駆動量の合計に相当する。
【0052】
このように、記憶部5に記憶されているバックラッシに係わる情報に基づき、駆動フェーズごとに必要なパラメータである加速度(等速度運動の区間については駆動速度)及び駆動時間をそれぞれ求めることにより、図4の速度制御プロファイルを作成する。作成した速度制御プロファイルにしたがって駆動部14を制御することにより、バックラッシキャンセルをするときは通常駆動速度よりも高速の最高駆動速度まで加速して高速で移動させ、被伝達部12と伝達部13とが衝突する前に、駆動速度は、一旦ゼロ付近にまで減速される。これにより、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となり、且つバックラッシキャンセルをするための駆動時間が短縮される。
<第2の駆動方法>
【0053】
図6〜図9を参照して、第2の駆動方法について説明する。
図6は、第2の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4と同様に、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示し、駆動速度Vについては、バックラッシキャンセルをするときの伝達部13の移動方向を正にとる。
【0054】
前述のとおり、第1の駆動方法においては、停止期間を設けて駆動速度をゼロとした後に、駆動方向を反転させ、通常駆動速度での駆動よりも高速の飽和速度まで加速して、飽和速度で等速度運動を行った後、速度をゼロ付近まで減速してから、通常の駆動速度に戻す制御を行う。
【0055】
これに対し、第2の駆動方法においては、等速度運動を行う区間が存在せず、飽和速度まで加速を行うと、直ちに減速の駆動フェーズに入る。実施例では、図6に示すように、加速及び減速の駆動時間が凡そ等しくなるように速度制御プロファイルを作成する。すなわち、第2の駆動方法においては、バックラッシの凡そ2分の1の距離までに駆動速度Vが飽和速度に到達するよう加速をし、その後、加速から減速に転じ、ゼロ付近になるまで減速する制御を行っている。駆動速度をゼロ付近になるまで減速すると、第1の駆動方法と同様に、通常の駆動速度まで加速して、以降は通常のぶれ補正等における駆動動作を行っている。図6の実施例ではぶれ補正における駆動が、通常駆動速度の等速度運動による位置制御の例を示しているが、位置検出部8やぶれ検出部2の情報から加速度を検出して駆動速度を変化させても良い。図8、図9も同様である。
【0056】
第2の駆動方法における加速区間を第1の駆動フェーズとし、減速区間を第2の駆動フェーズとする。
図7は、第2の駆動方法に関する制御量を示す図である。このうち、図7(a)は、各駆動フェーズにおける駆動量の算出方法、図7(b)は、バックラッシ駆動量の算出方法を示す。
【0057】
第2の駆動方法によれば、第1及び第2の駆動フェーズにおける駆動量は、それぞれ平均駆動速度×駆動時間から求まる。
制御部3は、第1の駆動方法と同様に、図1の位置検出部8が検出した位置情報等から予め検知したバックラッシの大きさを等分することにより、第1の駆動フェーズ及び第2の駆動フェーズのそれぞれの駆動量を決定する。決定した駆動フェーズごとの駆動量と、予め記憶されている最高速度とから、各駆動フェーズにおける加速度を決定する。加速及び減速の区間の駆動時間の決定方法については、第1の駆動方法の説明において述べたとおりである。決定した第1及び第2の駆動フェーズの加速度及び駆動時間、並びに予め記憶されている最高駆動速度より、速度制御プロファイルを作成する。
【0058】
図7(b)に示すとおり、図6の速度制御プロファイルにしたがって第1〜第2の駆動フェーズの制御を行った場合、バックラッシ駆動量は、図7(a)の計算式で表される第1〜第2の駆動フェーズにおける駆動量の合計に相当する。
【0059】
第2の駆動方法によれば、バックラッシの大きさが比較的小さい場合や、消費電力を下げたい等の理由から、アクチュエーター等の駆動部14のトルクによる加速度が相対的に低く設定される場合等に効果を奏する。すなわち、第2の駆動方法においては、最高速度で駆動する駆動フェーズを一瞬としたとしても、第1の駆動方法と同様に、通常駆動速度よりも高速になるまでの加速動作、及び飽和速度からゼロ付近にまでの減速動作を行っている。バックラッシが比較的小さい場合や駆動部14のトルクによる加速度が相対的に低い場合等であっても、第2の駆動方法により、第1の駆動方法と同様に、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0060】
前述のとおり、第2の駆動方法においては、バックラッシの大きさに応じて加速度を決定している。バックラッシの大きさに応じて加速度等を小さく、あるいは大きく設定した場合の速度制御プロファイルを、それぞれ図8及び図9に示す。
【0061】
図8は、バックラッシが比較的大きい場合の速度制御プロファイルを示す図であり、図9は、バックラッシが比較的小さい場合の速度制御プロファイルを示す図である。ここで、バックラッシの大きさは、図6に示す場合のそれを基準として、相対的に大きい場合及び小さい場合を示しており、図8及び図9においては、図6の速度制御プロファイルを破線で示している。図6と同様に、縦軸及び横軸は、それぞれ駆動速度V及び駆動時間Tを示す。
【0062】
加速度及び駆動時間の決定方法については、同様であるので説明は省略する。ただし、図9においては、加速度が、駆動可能なとり得る範囲の中で最大値をとる場合の速度制御プロファイルを示す。最大加速度は、予め撮像装置1に記憶されている。加速度はバックラッシの大きさに応じて最大加速度以下の値に設定される。
【0063】
図8及び図9に示す速度制御プロファイルにしたがって駆動部14を制御した場合であっても、同様に、バックラッシキャンセルをするときは高速で駆動し、伝達部13と被伝達部12とが衝突する前には速度が略ゼロになるまで減速させるため、同様の効果が得られる。最高速度の駆動期間を長く取らないので、より消費電力を下げることができる。アクチュエーターのトルクによる加速度が相対的に低い場合に有効である。
<第3の駆動方法>
【0064】
図10及び図11を参照して、第3の駆動方法について説明する。
図10は、第3の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4等と同様に、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示し、駆動速度Vは、バックラッシキャンセルをするときの伝達部13の移動方向を正にとる。
【0065】
第3の駆動方法についての速度制御プロファイルは、第2の駆動方法のそれと比較して、第1の駆動フェーズにおいて加速を行った後のピーク時の駆動速度を低く設定している点で異なる。実施例では、通常駆動速度よりも高く、飽和速度よりも低い値を加速限界の最高速度として設定する。所定の速度を予め記憶しておくこととしてもよいし、設定が可能な範囲の最大値及び最小値を記憶しておくこととしてもよい。
【0066】
実施例では、第2の駆動方法と同様に、バックラッシの凡そ2分の1の距離で駆動速度Vが最大となるように設定している。また、加速度には、予め記憶されている最大加速度を用いている。第1の駆動フェーズにおいては、最大加速度で所定の速度まで加速をする場合の駆動時間を、第2の駆動フェーズにおいては、所定の速度から最大の減速度で減速を行う場合の駆動時間をそれぞれ求めることにより、第3の駆動方法についての速度制御プロファイルを作成する。
【0067】
第2の駆動方法についての速度制御プロファイルでの制御は、バックラッシが比較的小さい場合に適用することにより効果を奏するが、第3の駆動方法についての速度制御プロファイルによる制御は、バックラッシが更に小さい場合に適している。
【0068】
すなわち、第1の駆動フェーズ(加速区間)においては、通常の駆動速度よりも高速になるまで加速して、バックラッシキャンセルをする。そして、第2の駆動フェーズ(減速区間)においては、通常の駆動速度での駆動を開始する前に、駆動速度が略ゼロになるまで減速する。このような駆動速度の制御を行うことで、バックラッシが非常に小さい場合であっても、最高駆動速度を低くして駆動することで、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0069】
なお、第3の駆動方法に関する制御量については、第2の駆動方法のそれと同様であり、図11に示すとおりである。
<第4の駆動方法>
【0070】
図12及び図13を参照して、第4の駆動方法について説明する。
図12は、第4の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。図4等と同様に、縦軸は駆動速度Vを、横軸は駆動時間Tを示し、駆動速度Vは、バックラッシキャンセルをするときの伝達部13の移動方向を正にとる。
【0071】
第4の駆動方法に係る速度制御プロファイルは、第1の駆動方法のそれと比較して、等速度運動を行う第2の駆動フェーズの駆動速度を、飽和速度よりも高く設定している点で異なる。
【0072】
バックラッシ内の駆動に関しては、被伝達部12である鏡枠(図2参照)や、光学要素部9であるレンズ等にかかる負荷が軽減されている状態である。このため、第4の駆動方法のように、バックラッシについては、飽和速度よりも高速で駆動部14を駆動することが可能である。
【0073】
なお、バックラッシの大きさは、駆動領域全体の大きさと比べて十分に小さく、したがって、バックラッシを駆動するために要する時間も、必要な時間全体と比べると十分に短いと言える。このため、第2の駆動フェーズの駆動最高速度については、第1から第3の駆動フェーズまでの短時間のみ駆動電流を更に増加させて、図4に例示するより更に駆動速度を高くしても、消費電力や発熱による装置への影響は僅かであり、実現可能である。撮像装置1は、通常の駆動電流時の飽和速度よりも更に高い所定の速度を、第4の駆動方法に利用する速度として、予め記憶させておく。第4の駆動方法で利用する速度を読み出して最高駆動速度に設定することにより、図12に示す速度制御プロファイルを作成する。他のパラメータの決定方法については、前述の駆動方法と同様である。
【0074】
また、図12においては、最高駆動速度まで加速を行った後に等速度で駆動する場合を例に示しているが、第4の駆動方法は、これには限定されない。例えば、第2の駆動方法のように、まず加速区間で最高駆動速度まで加速して、次に、等速度運動を行わずに減速を開始し、減速区間で駆動速度を略ゼロまで減速する構成としてもよい。このような構成とする場合であっても、最高速度を飽和速度よりも高速に設定することで、前述の駆動方法と同様に、被伝達部12と伝達部13との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0075】
等速での駆動を行わない場合には、第2の駆動方法と同様に、予め設定されている最高駆動速度とバックラッシの大きさとに応じて、加速及び減速の区間の加速度、及び各区間の駆動時間を決定する。すなわち、バックラッシの凡そ2分の1の距離で最高駆動速度となるように、各駆動フェーズの加速度駆動時間を決定することで、速度制御プロファイルを作成することができる。
【0076】
第4の駆動方法に関する各種の制御量の算出方法については、第1の駆動方法のそれと同様であり、各制御量は、図13に示すとおりである。
第4の駆動方法によれば、等速度運動の区間で前述の駆動方法よりも駆動電流を通常駆動時よりも増すことで、最高速度を鏡枠、レンズ等の負荷が接続されている状態で通常駆動する時の飽和速度より更に高速で駆動を行うため、より短時間でバックラッシキャンセルをすることが可能となる。
<第5の駆動方法>
【0077】
図14〜図20を参照して、第5の駆動方法について説明する。第5の駆動方法の詳細を説明する前に、まず、減速駆動時に生じ得る現象について説明する。
図14は、減速駆動時に生じ得る現象を説明するための図である。ここでは、バックラッシの大きさが一定でなく、駆動機構7内の部品の姿勢差の変化等の原因により変化する場合に発生する現象を説明する。
【0078】
バックラッシが小さくなる場合(図14のケース1)は、図14においては(1)に示すタイミングで伝達部13と被伝達部12との衝突が発生する。より早いタイミングで、すなわち、十分に減速し切れていない状態で伝達部13と被伝達部12とが衝突することとなる。このため、駆動速度がゼロ付近にまで十分に減速できている場合と比較すると、より大きな衝突音が発生することとなる。
【0079】
バックラッシが大きくなる場合(図14のケース2)は、図14においては(2)に示すタイミングで伝達部13と被伝達部12との衝突が発生する。衝突のタイミングが遅れるため、すなわち、減速区間ではバックラッシキャンセルをし切れず、通常駆動速度に向けて加速を開始した後に伝達部13と被伝達部12とが衝突するため、大きな衝突音が発生することとなる。
【0080】
これらの現象に対応するため、第5の駆動方法によれば、減速区間を更に複数の区間に分割する。実施例では、減速区間を2つの区間に分割する。そして、分割された区間のそれぞれについて、予め記憶させておいた情報を利用して、加速度及び駆動時間を決定する。記憶部5に記憶させる情報については、後に詳しく説明する。
【0081】
図15は、第5の駆動方法についての速度制御プロファイルを示す図である。このうち、加速区間や等速区間、すなわち第1及び第2の駆動フェーズの駆動方法については、第1の駆動方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0082】
前述のとおり、減速区間については、2つの区間に分割し、これらの区間のうち前段の区間において、駆動速度を十分に減速させておき、後段の区間では、緩やかに減速させる。このように、第5の駆動方法では、減速区間については非線形での速度制御を行う。
【0083】
以下の説明では、第3の駆動フェーズ(減速区間)のうち、前段の区間での減速を「1次減速」、後段の区間での減速を「2次減速」と表す。
1次減速区間の駆動量は、バックラッシの大きさとしてとり得る変動範囲の中で、最小値以下となるよう設定する。そして、1次減速区間の駆動を開始してから、駆動量が少なくともバックラッシの最小値に到達するまでの間に、駆動速度Vを十分に減速させる。但し、バックラッシの最小値の位置、及び設定した1次減速区間の駆動量の位置で完全に停止してしまわないように1次減速時の加速度にマージンαをのせた値(例えば、10%程度)を設定するか、または1次減速時の平均速度にマージンβをのせた値(例えば、10%程度)を設定する。これにより、被伝達部12と伝達部13とが衝突するタイミングにおいては、駆動速度Vが可能な範囲で十分減速されている。図14のケース1で説明したとおり、バックラッシが小さく、十分に減速し切れていない場合にはより大きな衝突音が発生し得る。しかし、1次減速区間において十分減速させておくことで、部品の姿勢差等によりバックラッシが小さくなり、仮に、バックラッシが最小値をとる場合であっても、図15の(1)の衝突のタイミングにおいては、伝達部13の慣性エネルギーは可能な限り小さく抑えられている。
【0084】
2次減速区間の駆動量は、バックラッシの大きさとしてとり得る範囲の中で、最大値から1次減速区間の駆動量を差し引いた駆動量となるよう設定する。そして、2次減速区間の駆動を開始してからは、緩やかに減速するよう制御する。仮に、バックラッシが、その大きさとしてとり得る範囲の中で最大値をとる場合であっても、図15の(2)のタイミングにおいては、駆動速度Vが略ゼロとなっている。このため、図14のケース2で説明したように、通常駆動速度に向けて加速を行っている最中に衝突してしまうことを回避でき、これにより、発生する衝突音の大きさを、極めて小さいものに抑制することができる。また、2次減速区間においては、バックラッシのとり得る範囲の中で最大値に合わせて駆動を行っているため、バックラッシは確実にキャンセルされている。
【0085】
他の実施例として、第3の駆動フェーズ(減速区間)のうち、減速区間を3つ以上の区間に分割する場合においては、前述の1次減速区間と2次減速区間の制御の間に、新しく挿入する減速区間の駆動量を、バックラッシの大きさとしてとり得る変動範囲の中で、最小値と最大値の間の駆動量として定義し、停止回避として加速度マージンα´、平均速度マージンβ´を同様に設定することで実現可能である。
【0086】
図16は、第5の駆動方法に関する制御量を示す図である。このうち、図16(a)は、各駆動フェーズにおける駆動量の算出方法、図16(b)は、バックラッシ駆動量の算出方法を示す。加速を行う駆動フェーズ及び等速度運動を行う駆動フェーズについては、それぞれ図5(a)及び図5(b)の第1の駆動方法のそれと同様であるので、ここでは説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0087】
第1の駆動方法においては、減速区間(第3の駆動フェーズ)においては、所定の加速度(<0)で減速を行うのに対して、前述のとおり、第5の駆動方法においては、2段階で加速度(<0)を設定している。図16(a)に示すとおり、1次減速区間及び2次減速区間は、平均速度がそれぞれの(加速度)×(各区間の駆動時間)で表され、駆動量が(平均速度)×(各区間の駆動時間)で表される。図16(b)に示すとおり、全体の駆動量は、「加速時駆動量+最高速度時駆動量+1次減速時駆動量+2次減速時駆動量」で表される。
【0088】
なお、前述のとおり、バックラッシの大きさは姿勢差等により異なる。このことから、第5の駆動方法を行うために、姿勢差と、これに対応する駆動量との関係を、予めテーブル等に格納しておく。
【0089】
図17は、姿勢差や温度差と駆動量とを対応付けたテーブルの構成例を示す図である。ここでは、バックラッシの大きさに影響を与える原因として、姿勢差及び温度差を例示する。
【0090】
例えば姿勢差により、バックラッシの大きさは所定の範囲で変化する。そこで、図17(a)に示すように、姿勢差とこれに対応する駆動量を格納しておく。制御部3は、図1においては不図示の姿勢センサ等により部品の姿勢を検知すると、図17(a)のテーブルを参照して、1次減速区間及び2次減速区間における駆動量を決定する。姿勢差の検出は図1のぶれ検出器のぶれ情報から求めることが出来る。
【0091】
すなわち、姿勢が上向き90度(+90度)の場合、制御対象物(実施例では可動部11)は自重により下側に寄る傾向があるので、バックラッシは小さくなっている。このため、姿勢が上向き90度のときに上方向に駆動を行う場合は、このときの駆動量には、バックラッシの大きさの最小値を適用する。姿勢が上向き90度のときに下向きに駆動を行う場合は、駆動量には、バックラッシの大きさの最大値を適用する。姿勢が下向き90度(−90度)の場合は、これと逆となる。
【0092】
姿勢が上向き90度と下向き90度との間にある場合は、上向き姿勢時の駆動量と下向き姿勢時の駆動量とで、内挿線形補間により駆動量を決定する。姿勢差による影響は重力によるものなので鉛直方向に加わる力量の成分を求めればよい。つまり、姿勢差の角度をθ(度)とすると可動部に加わる力量の角度成分はsin(θ)であり、駆動量の中央値((バックラッシの最大値+バックラッシの最小値)/2)を水平基準として変化するので、バックラッシの姿勢角度の内挿補間値は(1+sin(θ))×(バックラッシの最大値+バックラッシの最小値)/2で表すことができる。
【0093】
また、駆動機構7の温度によりバックラッシの大きさが変化することに対応するため、図17(b)に示すように、駆動機構7の温度差とこれに対応する駆動量との関係を、予めテーブルに格納しておく。制御部3は、図1においては不図示の温度センサ等により駆動機構7の温度を検知すると、図17(b)のテーブルを参照して、1次減速区間及び2次減速区間における駆動量を決定する。
【0094】
すなわち、駆動機構7の温度が、とり得る温度の範囲内において最低温度にあるとき(低音限界時、実施例では−5℃)は、部材の収縮や摺動性の低下によりバックラッシは小さくなっていると考えられるので、駆動量にはバックラッシの大きさとしてとり得る範囲内での最小値を適用する。駆動機構7の温度がとり得る範囲内において最高温度にあるとき(高温限界時、実施例では50℃)は、駆動量には、バックラッシの大きさとしてとり得る範囲内での最大値を適用する。
【0095】
駆動機構7の温度が低音限界と高温限界の間にある場合(実施例では、−5℃超且つ50℃未満の範囲にある場合)は、低音限界時の駆動量と高温限界時の駆動量とで、内挿線形補間により駆動量を決定する。
【0096】
このように、1次減速区間については、バックラッシの最小値及び当該区間における加速度を、2次減速区間については、バックラッシの最大値及び当該区間における加速度を予め記憶部5等に記憶しておく。姿勢センサや温度センサ(図示せず)により部品の姿勢や駆動機構7の温度を検知すると、制御部3は、図17に示すテーブルを参照して、検知した姿勢や温度に応じたバックラッシの最小値及び最大値を適用して、速度制御プロファイルを作成する。これにより、バックラッシの大きさの変化に対応した制御が可能となる。
【0097】
図18は、第5の駆動方法についての速度制御プロファイルの他の例を示す図である。図15に示す速度制御プロファイルと異なる点を中心に説明する。
図18に示す速度制御プロファイルによれば、2次減速区間での駆動完了時における駆動速度Vの値は、Vs(≠0)である。すなわち、バックラッシキャンセルをする動作の完了時において、可動部11が完全に停止していない。このような制御を行ったとしても、2次減速区間での駆動を終了後に通常のぶれ補正等における駆動を開始するときに、十分に駆動速度Vは抑えられていれば、衝突時に発生する音は十分に抑えられている。このため、通常での駆動を開始する時点において、必ずしも駆動速度Vがゼロ付近にまで抑えられ、可動部11が略静止状態となっている必要はない。なお、これは、第5の駆動方法に限るものではなく、前述の第1〜第4の駆動方法についても同様である。
【0098】
また、図15及び図18においては最高速度での等速度運動を行う駆動フェーズが存在する場合の速度制御プロファイルを示したが、これに限定されるものではない。加速区間及び減速区間のみからなり、減速区間について複数の区間に分割して、各区間で減速度を設定する構成についても第5の駆動方法に含まれる。また、最高速度についても、飽和速度に限定されるものではなく、飽和速度を超える速度まで加速する構成としてもよいし、通常の駆動速度超且つ飽和速度未満の速度まで加速する構成としてもよい。
【0099】
図19は、第5の駆動方法を示したフローチャートである。前述したように、本フローチャートでは、撮像装置1の制御部3が記録媒体4から駆動情報設定部6における制御プログラムを読み出して実行する場合とする。図19を参照して、バックラッシキャンセルをするときに制御部3が実行する処理の流れについて説明する。
【0100】
まず、制御部3は、ステップS1において、駆動方向、すなわち、可動部11の移動方向を反転させるか否かを判断する。
次に、制御部3は、ステップS2において、記憶部5等に格納されているバックラッシに係わる情報を読み出し、バックラッシキャンセルをするときの速度制御プロファイルを作成する。第5の駆動方法についての速度制御プロファイルは、加速区間の加速度と加速期間、等速度での駆動区間の最高駆動速度と駆動期間、1次減速区間及び2次減速区間それぞれの加速度と減速期間の情報からなる。
【0101】
そして、制御部3は、ステップS3において、加速駆動処理を行って、駆動速度Vが最高駆動速度に到達するまで加速させる。駆動速度Vが最高駆動速度に到達すると、ステップS4に進む。
【0102】
制御部3は、ステップS4において、最高駆動速度での等速度運動を保って駆動する。
制御部3は、ステップS5において、減速駆動処理を行って、駆動速度Vを所定の速度まで減速させる。
【0103】
制御部3は、ステップS6において、可動部11を所定の位置で停止させるための処理を行うと、処理を終了する。以降は、通常の駆動処理を開始する。
図20は、第5の駆動処理の詳細フローを示す図である。図20を参照して、図19の処理内容をより具体的に説明する。
【0104】
まず、制御部3は、ステップS1−1において、可動部11の駆動方向を反転するか否かを判断する。駆動方向の反転を行わない場合は、バックラッシキャンセルをする処理は不要と判断し、処理を終了する。駆動方向の反転が必要と判断した場合には、ステップS2−1に進む。
【0105】
制御部3は、ステップS2−1において、記憶部5等から、バックラッシに係わる情報を読み出す。読み出す情報は、バックラッシ駆動量の最小値や最大値、加速及び減速の最大値や最高駆動速度等である。前述のとおり、ここで、姿勢や温度によるバックラッシ駆動量の変化特性や駆動電流等についても読み出す。読み出した情報に基づき、必要なパラメータを決定して、速度制御プロファイルを作成する。
【0106】
制御部3は、ステップS3−1において、減速開始位置を演算する。減速区間の駆動量の演算方法については、図5を参照して説明したとおりである。減速開始位置は、バックラッシの大きさから減速区間の駆動量を減算することにより得られる。また、制御部3は、ステップS3−1において、バックラッシ内については、まず加速を行い、最高駆動速度に到達すると直ちに減速を開始する場合のバックラッシ駆動量を演算する。そして、求めたバックラッシ駆動量と、ステップS2−1において記憶部5等から読み出したバックラッシ駆動量とを比較する。
【0107】
演算により求めたバックラッシ駆動量よりも読み出したバックラッシ駆動量の最小値の方が大きい場合は、差分を求め、一時記憶しておく。求めた差分は、最高駆動速度での駆動量として用いる。
【0108】
演算により求めたバックラッシ駆動量よりも読み出したバックラッシ駆動量の最小値の方が小さい場合は、過補正とならないよう最高駆動速度を新たに定義する。具体的には、まず、読み出したバックラッシ駆動量の最大値の2分の1の量を算出する。そして、読み出した加速度の最大値で求めた当該2分の1の距離を駆動した場合に到達する最高速度を求めて、これを新たに最高駆動速度と定義し、以降の処理において利用する。演算により求めたバックラッシ駆動量が、記憶部5等から読み出したバックラッシ駆動量の最小値以上である場合は、記憶部5等から読み出した最高駆動速度をそのまま利用する。
【0109】
演算処理が終了すると、制御部3は、加速駆動を開始する(ステップS3−1)。
そして、制御部3は、ステップS4−1において、位置検出部8において検出した位置情報により、駆動速度を演算する。駆動部(アクチュエータ)14として、例えばステッピングモータを用いる場合は、ステップS4−1において、駆動パルスのカウント値から演算することとしてもよい。
【0110】
制御部3は、ステップS4−2において、ステップS4−1で求めた駆動速度と、最高駆動速度とを比較し、場合分け判定を行う。
駆動速度が最高駆動速度よりも高いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS4−3へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS4−3において、駆動速度として最高駆動速度を確保すべく、減速駆動を行う。
【0111】
駆動速度が最高駆動速度と等しいと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS4−4へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS4−4において、駆動速度として最高駆動速度を維持すべく駆動を行う。
【0112】
駆動速度が最高駆動速度よりも低いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS4−5へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS4−5において、駆動速度を最高駆動速度へと到達させるべく加速駆動を行う。
【0113】
制御部3は、ステップS4−6において、再度の位置検出を行う。
制御部3は、ステップS4−7において、ステップS4−6で検出した位置が、ステップS3−1において求めた減速開始位置(図20においては「減速開始位置」)に達したか否かを判定する。
【0114】
ステップS4−6で検出した位置が、ステップS3−1で求めた減速開始位置に達していないと判定した場合は、ステップS4−1に戻り、位置がステップS3−1で求めた減速開始位置に到達するまで、前述の位置検出と駆動速度の演算処理を行う。
【0115】
ステップS4−6で検出した位置が、ステップS3−1で求めた減速開始位置に達していると判定した場合は、ステップS5−1へと処理を移行させる。
制御部3は、ステップS5−1において、バックラッシに係わる情報を記憶部5等から読み出す。S2−1で既に読み出しておいたバックラッシに係わる情報を再利用するものであってもよい。具体的には、バックラッシ駆動量の最小値とこれに対応する加速度(<0)、及び、バックラッシ駆動量の最大値とこれに対応する加速度(<0)を読み出す。バックラッシ駆動量の最大値や最小値については、先に図17等を参照して説明したとおり、検知した姿勢や温度等に応じた値を取得する。
【0116】
制御部3は、ステップS5−2において、ステップS5−1で読み出した情報のうち、バックラッシ駆動量の最小値に対応する加速度を用いて、1次減速駆動を開始する。
制御部3は、ステップS5−3において、位置検出部8からの位置情報により位置検出を行い、検出した位置情報から駆動速度を演算する。
【0117】
制御部3は、ステップS5−4において、ステップS5−3で求めた駆動速度と、ステップS2−1で作成した速度制御プロファイルの第1の目標速度とを比較し、場合分け判定を行う。第1の目標速度とは、1次減速駆動において、最終的に到達すべき速度をいう。
【0118】
駆動速度が第1の目標速度よりも高いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS5−5へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS5−5において、第1の目標速度を確保すべく減速駆動を継続する。
【0119】
駆動速度が第1の目標速度と等しいと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS5−6へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS5−6において、第1の目標速度を維持すべく駆動を行う。
【0120】
駆動速度が第1の目標速度よりも低いと判定した場合は、制御部3は、処理をステップS5−7へと移行させる。そして、制御部3は、ステップS5−7において、駆動速度として第1の目標速度へと到達させるべく減速駆動を継続する。
【0121】
制御部3は、ステップS5−8において、再度の位置検出を行う。
制御部3は、ステップS5−9において、駆動位置が、ステップS5−1で読み出したバックラッシ駆動量の最小値(図20においては「減速予定位置2」)に到達したか否かを判定する。
【0122】
駆動位置がバックラッシ駆動量の最小値に到達していない場合は、ステップS5−3に戻り、駆動位置がバックラッシ駆動量の最小値に達するまで、同様の処理を実行する。駆動位置がバックラッシ駆動量の最小値に到達している場合は、処理をステップS5−10へと移行させる。
【0123】
制御部3は、ステップS5−10において、2次減速駆動を開始する。
制御部3は、ステップS5−11において、位置検出部8からの位置情報により位置検出を行い、検出した位置情報から駆動速度を演算する。
【0124】
制御部3は、ステップS5−12において、ステップS5−11で求めた駆動速度と、ステップS2−1で作成した速度制御プロファイルの第2の目標速度とを比較し、場合分け判定を行う。第2の目標速度とは、2次減速駆動において、最終的に到達すべき速度をいう。
【0125】
駆動速度が第2の目標速度よりも高いと判定した場合、駆動速度が第2の目標速度と等しいと判定した場合、及び、駆動速度が第2の目標速度よりも低いと判定した場合は、処理をそれぞれステップS5−13、ステップS5−14、及び、ステップS5−15へと移行させる。ステップS5−13〜ステップS5−15の処理は、それぞれ前述のステップS5−5〜ステップS5−7の処理と同様である。
【0126】
制御部3は、ステップS5−16において、再度の位置検出を行う。
制御部3は、ステップS5−17において、駆動位置が、ステップS5−1で読み出したバックラッシ駆動量の最大値(図20においては「停止予定位置」)に到達したか否かを判定する。
【0127】
駆動位置がバックラッシ駆動量の最大値に到達していない場合は、ステップS5−11に戻り、駆動位置がバックラッシ駆動量の最大値に達するまで、同様の処理を実行する。駆動位置がバックラッシ駆動量の最大値に到達している場合は、処理をステップS6−1へと移行させる。
【0128】
制御部3は、ステップS6−1において、一時的に可動部11を停止状態とすべく、ブレーキ制御を行い、処理を終了する。
第5の駆動方法によれば、姿勢差や温度等の原因によりバックラッシの大きさが変化する場合であっても、減速駆動を行う区間を複数の区間に分割して区間ごとに加速度及び駆動時間を決定して駆動を行う。これにより、バックラッシが小さくなる場合には、伝達部13と被伝達部12とが、十分に減速された状態で衝突することとなる。バックラッシが大きくなる場合には、減速から通常駆動速度に向けて加速を開始した後に被伝達部13と被伝達部12とが衝突することを回避する。このように、第5の駆動方法によれば、バックラッシの大きさに応じた適切な駆動制御を行うことが可能となる。これにより、前述の駆動方法と同様に、伝達部13と被伝達部12との衝突音をより効果的に低減させることが可能となる。
【0129】
図21は、第1〜第5の駆動方法を比較する図である。本実施形態に係る撮像装置1の制御部3は、第1〜第5の駆動方法の中から適切な駆動方法を選択し、選択した駆動方法に必要なパラメータを決定して、速度制御プロファイルを作成する。
【0130】
いずれの駆動方法を選択する場合であっても、選択した駆動方法においては予めどのような駆動を行うかを定義する駆動フェーズごとに区分されており、駆動フェーズごとに、それぞれ必要なパラメータを決定する。第1〜第5の駆動方法の速度制御プロファイルを作成するために必要なバックラッシに係わる情報を、記憶部5等に予め記憶させておく。例えば最高駆動速度として用いる飽和速度や、最大加速度、バックラッシ駆動量の最大値や最小値等は、複数の駆動方法で共通して利用することができる。このように、本実施形態に係る撮像装置1によれば、バックラッシの大きさ等の条件に応じた駆動方法を選択すると、バックラッシに係わる情報のうち、必要な情報を利用して速度制御プロファイルを作成し、これにしたがって制御を行うことで、適切な駆動方法を実行することができる。
【0131】
このように、本実施形態に係る撮像装置1によれば、記憶部5に記憶されているバックラッシに係わる情報に基づいて、その環境に応じた適切な駆動方法を示す駆動情報を設定する。そして、設定した駆動情報にしたがって、バックラッシキャンセルをするときには、高速で駆動させつつ、衝突前には一旦速度を十分に落としてから通常駆動速度に戻す制御を適切に行う。これにより、衝突時に発生する音をより効果的に低減させつつ、適切にバックラッシキャンセルをすることが可能となる。
【0132】
なお、ここでは、駆動方向を反転させて伝達部13と被伝達部12との間に発生する非伝達領域(バックラッシ)をキャンセルする場合の動作を例に説明しているが、これに限定されるものではない。ぶれ補正処理等においてある方向に駆動を行っているときに、駆動処理を一時停止することがある。一時停止を解除して再び同一の方向に駆動を行った場合等であっても、被伝達部12と伝達部13とが衝突するときには、音が発生することがある。非伝達部12の慣性が指示部との摩擦に比べて非常に大きくて、一時停止の際に伝達部13から離れてしまうことによるものである。このような場合にも前述の駆動方法を適用することで、同様に、衝突音が低減される。
【0133】
また、前述の実施例では光学的手ぶれ補正に伴って発生する音を低減させる駆動方法について説明したが、結像レンズの駆動や変倍レンズの駆動等、撮像装置で利用されるその他の駆動機構に適用されるものであっても良い。
【0134】
この他にも、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の改良及び変更が可能である。例えば、前述の各実施形態に示された全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよく、更には各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1 撮像装置
2 ぶれ検出部
3 制御部
4 記録媒体
5 記憶部
6 駆動情報設定部
7 (光学系)駆動機構
8 位置検出部
9 光学要素部
10 撮像部
11 可動部
12 被伝達部
13 伝達部
14 駆動部
15 固定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置において、
前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせるための駆動情報設定部と、
前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記制御プログラムは、前記駆動部による駆動方法を表す駆動フェーズを複数有しており、
前記駆動フェーズは、少なくとも加速を行う加速駆動フェーズ及び減速を行う減速駆動フェーズを有し、
前記駆動情報設定部は、前記加速駆動フェーズの実行後に前記減速駆動フェーズを実行するよう前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動フェーズは、最高速度で駆動する最高速度時駆動フェーズを更に有し、
前記駆動情報設定部は、前記加速駆動フェーズ、前記最高速度時駆動フェーズ、及び、前記減速駆動フェーズの順に実行され、前記減速駆動フェーズ終了後に前記伝達部と前記被伝達部とが衝突するよう、前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動情報設定部は、最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう前記最高速度時駆動フェーズの駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記制御部は、設定された前記駆動情報にしたがって、前記最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう制御を行う
ことを特徴とする請求項3記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動情報設定部は、前記非伝達領域に係わる情報として前記記憶部に記憶されている情報に基づき、前記加速駆動フェーズ及び減速駆動フェーズそれぞれにおける加速度及び駆動時間を前記駆動情報として決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動情報設定部は、前記非伝達領域に係わる情報に基づいて、前記加速駆動フェーズの実行により到達する速度を、前記前記伝達部と被伝達部とが衝突後に駆動されるときの速度よりも高速となるよう前記駆動情報を設定する
ことを特徴とする請求項5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記減速駆動フェーズは、複数の減速駆動フェーズからなり、先に実行する1次減速駆動フェーズと、前記1次減速駆動フェーズの実行後に実行される2次減速駆動フェーズとを少なくとも有し、前記1次減速駆動フェーズの減速加速度は2次減速駆動フェーズの以降の減速フェーズの減速加速度よりも大きく、
前記駆動情報設定部は、
前記非伝達領域に係わる情報として前記記憶部に記憶されている情報に基づき、前記1次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最小値以下の値として、前記1次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記非伝達領域に係わる情報として前記記憶部に記憶されている情報に基づき、前記2次減速駆動フェーズ以降の最終減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最大値として、前記2次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定する
ことを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動装置を備える撮像装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動装置を備えるぶれ補正装置。
【請求項10】
固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置による駆動方法であって、
前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する段階と、
前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる段階と、
前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う段階と、
を有することを特徴とする駆動方法。
【請求項11】
前記駆動部による駆動方法を表す駆動フェーズを複数有しており、
前記駆動フェーズは、少なくとも加速を行う加速駆動フェーズ及び減速を行う減速駆動フェーズを有し、
前記駆動情報を設定する段階においては、前記加速駆動フェーズの実行後に前記減速駆動フェーズを実行するよう前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項10記載の駆動方法。
【請求項12】
前記駆動フェーズは、最高速度で駆動する最高速度時駆動フェーズを更に有し、
前記駆動情報を設定する段階においては、前記加速駆動フェーズ、前記最高速度時駆動フェーズ、及び、前記減速駆動フェーズの順に実行され、前記減速駆動フェーズ終了後に前記伝達部と前記被伝達部とが衝突するよう、前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項11記載の駆動方法。
【請求項13】
前記駆動情報を設定する段階においては、最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう前記最高速度時駆動フェーズの駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記制御を行う段階においては、設定された前記駆動情報にしたがって、前記最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう制御を行う
ことを特徴とする請求項12記載の駆動方法。
【請求項14】
前記駆動情報を設定する段階においては、前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記加速駆動フェーズ及び減速駆動フェーズそれぞれにおける加速度及び駆動時間を前記駆動情報として決定する
ことを特徴とする請求項13に記載の駆動方法。
【請求項15】
前記駆動情報を設定する段階においては、前記非伝達領域に係わる情報に基づいて、前記加速駆動フェーズの実行により到達する速度を、前記伝達部と前記被伝達部とが衝突後に駆動されるときの速度よりも高速となるよう前記駆動情報を設定する
ことを特徴とする請求項14記載の駆動方法。
【請求項16】
前記減速駆動フェーズは、複数の減速駆動フェーズからなり、先に実行する1次減速駆動フェーズと、前記1次減速駆動フェーズの実行後に実行される2次減速時駆動フェーズとを少なくとも有し、前記1次減速駆動フェーズの減速加速度は2次減速駆動フェーズの以降の減速フェーズの減速加速度よりも大きく、
前記駆動情報を設定する段階においては、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記1次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最小値以下の値として、前記1次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記2次減速駆動フェーズ以降の最終減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最大値として、前記2次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定する
ことを特徴とする請求項11記載の駆動方法。
【請求項17】
固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置の前記駆動を制御部の演算処理装置に行なわせるための制御プログラムであって、
前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する処理と、
前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる処理と、
前記駆動情報を設定する処理において設定された制御情報に基づいて制御を行う処理と、
を有することを特徴とする制御プログラム。
【請求項18】
前記駆動部による駆動方法を表す駆動フェーズを複数有しており、
前記駆動フェーズは、少なくとも加速を行う加速駆動フェーズ及び減速を行う減速駆動フェーズを有し、
前記駆動情報を設定する処理においては、前記加速駆動フェーズの実行後に前記減速駆動フェーズを実行するよう前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項17記載の制御プログラム。
【請求項19】
前記駆動フェーズは、最高速度で駆動する最高速度時駆動フェーズを更に有し、
前記駆動情報を設定する処理においては、前記加速駆動フェーズ、前記最高速度時駆動フェーズ、及び、前記減速駆動フェーズの順に実行され、前記減速駆動フェーズ終了後に前記伝達部と前記被伝達部とが衝突するよう、前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項18記載の制御プログラム。
【請求項20】
前記駆動情報を設定する処理においては、最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう前記最高速度時駆動フェーズの駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記制御を行う処理においては、設定された前記駆動情報にしたがって、前記最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう制御を行う
ことを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項21】
前記駆動情報を設定する処理においては、前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記加速駆動フェーズ及び減速駆動フェーズそれぞれにおける加速度及び駆動時間を前記駆動情報として決定する
ことを特徴とする請求項20に記載の制御プログラム。
【請求項22】
前記駆動情報を設定する処理においては、前記非伝達領域に係わる情報に基づいて、前記加速駆動フェーズの実行により到達する速度を、前記伝達部と前記被伝達部とが衝突後に駆動されるときの速度よりも高速となるよう前記駆動情報を設定する
ことを特徴とする請求項21記載の制御プログラム。
【請求項23】
前記減速駆動フェーズは、複数の減速駆動フェーズからなり、先に実行する1次減速駆動フェーズと、前記1次減速駆動フェーズの実行後に実行される2次減速駆動フェーズとを少なくとも有し、前記1次減速駆動フェーズの減速加速度は2次減速駆動フェーズの以降の減速フェーズの減速加速度よりも大きく
前記駆動情報を設定する処理においては、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記1次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最小値以下の値として、前記1次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記2次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最大値として、前記2次減速駆動フェーズ以降の最終減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定する
ことを特徴とする請求項18記載の制御プログラム。
【請求項24】
請求項17乃至23のいずれか1項に記載の制御プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置において、
前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせるための駆動情報設定部と、
前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記制御プログラムは、前記駆動部による駆動方法を表す駆動フェーズを複数有しており、
前記駆動フェーズは、少なくとも加速を行う加速駆動フェーズ及び減速を行う減速駆動フェーズを有し、
前記駆動情報設定部は、前記加速駆動フェーズの実行後に前記減速駆動フェーズを実行するよう前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動フェーズは、最高速度で駆動する最高速度時駆動フェーズを更に有し、
前記駆動情報設定部は、前記加速駆動フェーズ、前記最高速度時駆動フェーズ、及び、前記減速駆動フェーズの順に実行され、前記減速駆動フェーズ終了後に前記伝達部と前記被伝達部とが衝突するよう、前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動情報設定部は、最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう前記最高速度時駆動フェーズの駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記制御部は、設定された前記駆動情報にしたがって、前記最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう制御を行う
ことを特徴とする請求項3記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動情報設定部は、前記非伝達領域に係わる情報として前記記憶部に記憶されている情報に基づき、前記加速駆動フェーズ及び減速駆動フェーズそれぞれにおける加速度及び駆動時間を前記駆動情報として決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動情報設定部は、前記非伝達領域に係わる情報に基づいて、前記加速駆動フェーズの実行により到達する速度を、前記前記伝達部と被伝達部とが衝突後に駆動されるときの速度よりも高速となるよう前記駆動情報を設定する
ことを特徴とする請求項5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記減速駆動フェーズは、複数の減速駆動フェーズからなり、先に実行する1次減速駆動フェーズと、前記1次減速駆動フェーズの実行後に実行される2次減速駆動フェーズとを少なくとも有し、前記1次減速駆動フェーズの減速加速度は2次減速駆動フェーズの以降の減速フェーズの減速加速度よりも大きく、
前記駆動情報設定部は、
前記非伝達領域に係わる情報として前記記憶部に記憶されている情報に基づき、前記1次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最小値以下の値として、前記1次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記非伝達領域に係わる情報として前記記憶部に記憶されている情報に基づき、前記2次減速駆動フェーズ以降の最終減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最大値として、前記2次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定する
ことを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動装置を備える撮像装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動装置を備えるぶれ補正装置。
【請求項10】
固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置による駆動方法であって、
前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する段階と、
前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる段階と、
前記駆動情報設定部により設定された制御情報に基づいて制御を行う段階と、
を有することを特徴とする駆動方法。
【請求項11】
前記駆動部による駆動方法を表す駆動フェーズを複数有しており、
前記駆動フェーズは、少なくとも加速を行う加速駆動フェーズ及び減速を行う減速駆動フェーズを有し、
前記駆動情報を設定する段階においては、前記加速駆動フェーズの実行後に前記減速駆動フェーズを実行するよう前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項10記載の駆動方法。
【請求項12】
前記駆動フェーズは、最高速度で駆動する最高速度時駆動フェーズを更に有し、
前記駆動情報を設定する段階においては、前記加速駆動フェーズ、前記最高速度時駆動フェーズ、及び、前記減速駆動フェーズの順に実行され、前記減速駆動フェーズ終了後に前記伝達部と前記被伝達部とが衝突するよう、前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項11記載の駆動方法。
【請求項13】
前記駆動情報を設定する段階においては、最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう前記最高速度時駆動フェーズの駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記制御を行う段階においては、設定された前記駆動情報にしたがって、前記最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう制御を行う
ことを特徴とする請求項12記載の駆動方法。
【請求項14】
前記駆動情報を設定する段階においては、前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記加速駆動フェーズ及び減速駆動フェーズそれぞれにおける加速度及び駆動時間を前記駆動情報として決定する
ことを特徴とする請求項13に記載の駆動方法。
【請求項15】
前記駆動情報を設定する段階においては、前記非伝達領域に係わる情報に基づいて、前記加速駆動フェーズの実行により到達する速度を、前記伝達部と前記被伝達部とが衝突後に駆動されるときの速度よりも高速となるよう前記駆動情報を設定する
ことを特徴とする請求項14記載の駆動方法。
【請求項16】
前記減速駆動フェーズは、複数の減速駆動フェーズからなり、先に実行する1次減速駆動フェーズと、前記1次減速駆動フェーズの実行後に実行される2次減速時駆動フェーズとを少なくとも有し、前記1次減速駆動フェーズの減速加速度は2次減速駆動フェーズの以降の減速フェーズの減速加速度よりも大きく、
前記駆動情報を設定する段階においては、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記1次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最小値以下の値として、前記1次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記2次減速駆動フェーズ以降の最終減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最大値として、前記2次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定する
ことを特徴とする請求項11記載の駆動方法。
【請求項17】
固定部に対し可動部が移動して位置決めされる駆動装置の前記駆動を制御部の演算処理装置に行なわせるための制御プログラムであって、
前記可動部を移動させるための駆動力を伝達する伝達部と、前記駆動力が伝達される被伝達部との間に存在する非伝達領域に係わる情報を記憶する処理と、
前記記憶した情報に基づいて、前記非伝達領域内における前記駆動部の駆動方法を示す駆動情報を設定し、前記非伝達領域内においては、前記駆動情報にしたがって前記位置決めを行わせる処理と、
前記駆動情報を設定する処理において設定された制御情報に基づいて制御を行う処理と、
を有することを特徴とする制御プログラム。
【請求項18】
前記駆動部による駆動方法を表す駆動フェーズを複数有しており、
前記駆動フェーズは、少なくとも加速を行う加速駆動フェーズ及び減速を行う減速駆動フェーズを有し、
前記駆動情報を設定する処理においては、前記加速駆動フェーズの実行後に前記減速駆動フェーズを実行するよう前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項17記載の制御プログラム。
【請求項19】
前記駆動フェーズは、最高速度で駆動する最高速度時駆動フェーズを更に有し、
前記駆動情報を設定する処理においては、前記加速駆動フェーズ、前記最高速度時駆動フェーズ、及び、前記減速駆動フェーズの順に実行され、前記減速駆動フェーズ終了後に前記伝達部と前記被伝達部とが衝突するよう、前記駆動情報の設定を行う
ことを特徴とする請求項18記載の制御プログラム。
【請求項20】
前記駆動情報を設定する処理においては、最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう前記最高速度時駆動フェーズの駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記制御を行う処理においては、設定された前記駆動情報にしたがって、前記最高速度時駆動フェーズを所定時間保つよう制御を行う
ことを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項21】
前記駆動情報を設定する処理においては、前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記加速駆動フェーズ及び減速駆動フェーズそれぞれにおける加速度及び駆動時間を前記駆動情報として決定する
ことを特徴とする請求項20に記載の制御プログラム。
【請求項22】
前記駆動情報を設定する処理においては、前記非伝達領域に係わる情報に基づいて、前記加速駆動フェーズの実行により到達する速度を、前記伝達部と前記被伝達部とが衝突後に駆動されるときの速度よりも高速となるよう前記駆動情報を設定する
ことを特徴とする請求項21記載の制御プログラム。
【請求項23】
前記減速駆動フェーズは、複数の減速駆動フェーズからなり、先に実行する1次減速駆動フェーズと、前記1次減速駆動フェーズの実行後に実行される2次減速駆動フェーズとを少なくとも有し、前記1次減速駆動フェーズの減速加速度は2次減速駆動フェーズの以降の減速フェーズの減速加速度よりも大きく
前記駆動情報を設定する処理においては、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記1次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最小値以下の値として、前記1次減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定し、
前記非伝達領域に係わる情報として記憶されている情報に基づき、前記2次減速駆動フェーズにおける駆動量を、前記非伝達領域の大きさとしてとり得る範囲の中で最大値として、前記2次減速駆動フェーズ以降の最終減速駆動フェーズの加速度及び駆動時間を前記駆動情報として設定する
ことを特徴とする請求項18記載の制御プログラム。
【請求項24】
請求項17乃至23のいずれか1項に記載の制御プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図3】
【図20】
【図2】
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【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図3】
【図20】
【公開番号】特開2013−105161(P2013−105161A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251182(P2011−251182)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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