説明

非接触電力伝送装置及び方法

【課題】コイルの相対的な位置関係が変化しても非接触での電力伝送を効率的に行うことができる非接触電力伝送装置及び方法を提供する。
【解決手段】非接触電力伝送装置1は、相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である給電コイルL1及び受電コイルL2間で伝送されるべき電力を供給する給電回路13と、給電コイルL1と受電コイルL2との相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの変位を測定する変位測定部14と、変位測定部14の測定結果に基づいて給電コイルL1及び受電コイルL2間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求め、この周波数を有する電力が給電コイルL1及び受電コイルL2間で伝送されるよう給電回路13を制御する制御部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の伝送を非接触で行う非接触電力伝送装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触電力伝送装置は、電力を伝送するための配線(ケーブル)が不要であり、接点の耐久性や接点不良を考慮する必要が無く、水分等による漏電の心配が殆ど無い等の様々なメリットがある。このため、近年では、家庭用電化製品等の民生用機器或いは電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)等の車両に設けられたバッテリを充電するための電力を伝送する用途のみならず、産業用機器(例えば、ステージ、アーム、クレーン、ロボット等)を駆動する電力を伝送する用途にも用いられている。
【0003】
以下の特許文献1には、半導体製造装置における搬送装置に対して非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置が開示されている。具体的には、搬送台の移動経路である搬送路に設定された停止位置に搬送台が停止したときに、停止位置に設けられた電圧供給装置から停止状態にある搬送台に対して電磁誘導の作用によって電力を供給する技術が開示されている。また、以下の特許文献2〜8には、携帯電話機等の民生用機器や車両等の移動体に対して非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−51137号公報
【特許文献2】特開2008−236916号公報
【特許文献3】特開2009−225551号公報
【特許文献4】特開2010−130878号公報
【特許文献5】特開2010−141976号公報
【特許文献6】特開2010−141977号公報
【特許文献7】特開2010−158151号公報
【特許文献8】特開2010−183810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した民生用機器や車両に設けられたバッテリを充電する用途においては、給電対象たる民生用機器や車両が非接触電力伝送装置に対して予め規定された状態に配置され、給電対象が静止している状態で非接触電力伝送装置から給電対象への電力伝送が行われるのが殆どである。これに対し、上述した産業用機器を駆動する電力を伝送する用途においては、給電対象たるステージやアーム等の可動部が動いている状態(例えば、直線動や回転動している状態)で非接触電力伝送装置から給電対象への電力伝送が行われる場合もある。
【0006】
可動部に対して電力を伝送する場合には、可動部が動くことによって、非接触電力伝送装置の給電コイルと可動部に設けられた受電コイルとの相対位置が変化する。このため、可動部がある特定位置に配置されている場合には高効率で電力伝送を行うことができるが、可動部がその特定位置からずれた位置に配置された場合には電力の伝送効率が低下してしまうという問題がある。電力の伝送効率が低下すると、バッテリの充電を行う場合には充電に要する時間が長くなるだけであるが、可動部に対する給電を行う場合には可動部で必要とされる電力が供給できなくなる。これにより、可動部の動作速度が低下する或いは可動部が動作しなくなる可能性が考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コイルの相対的な位置関係が変化しても非接触での電力伝送を効率的に行うことができる非接触電力伝送装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の非接触電力伝送装置は、相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である第1,第2コイル(L1、L2)間で電力を非接触で伝送可能な非接触電力伝送装置(1)であって、前記第1,第2コイル間で伝送されるべき電力を供給する給電部(13)と、前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量を測定する測定部(14)と、前記測定部の測定結果に基づいて前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求め、該周波数を有する電力が前記第1,第2コイル間で伝送されるよう前記給電部を制御する制御部(15)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の非接触電力伝送装置は、前記制御部が、前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量と、前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数との関係を示すテーブル(T)を用いて、前記周波数を求めることを特徴としている。
また、本発明の非接触電力伝送装置は、前記テーブルが、前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量と、前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数との関係を離散的に規定したものであり、前記制御部が、前記テーブルの内容を補間して前記周波数を求めることを特徴としている。
また、本発明の非接触電力伝送装置は、前記制御部が、前記測定部の測定結果に基づいて前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求める周波数選択器(15a)と、前記周波数選択器で選択された周波数を有する信号を出力する発振回路(15b)と、前記発振回路から出力される信号に基づいて前記給電部を駆動制御する駆動制御回路(15c、15d)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の非接触電力伝送装置は、前記給電部が、前記駆動制御回路の駆動制御によって、直流電力を前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を有する交流電力に変換する電力変換回路を備えることを特徴としている。
また、本発明の非接触電力伝送装置は、前記第1,第2コイルの何れか一方が、位置及び姿勢が固定された固定部(P1)に設けられており、前記第1,第2コイルの何れか他方が、位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である可動部(P2)に設けられていることを特徴としている。
本発明の非接触電力伝送方法は、相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である第1,第2コイル(L1、L2)間で電力を非接触で伝送する非接触電力伝送方法であって、前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量を測定する第1ステップと、前記第1ステップの測定結果に基づいて前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求める第2ステップと、前記第2ステップで求められた周波数を有する電力が前記第1,第2コイル間で伝送されるよう前記第1,第2コイル間で伝送されるべき電力を供給する給電部(13)を制御する第3ステップとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量を測定し、この測定結果に基づいて第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求め、この周波数を有する電力が第1,第2コイル間で伝送されるよう給電部を制御しているため、第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方が変化したとしても、非接触での電力伝送を効率的に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態で用いられる発振周波数テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置及び方法について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置の概要を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の非接触電力伝送装置1は、給電コイルL1(第1コイル)と受電コイルL2(第2コイル)とを備えており、給電コイルL1から受電コイルL2に対して電力を非接触で伝送可能である。
【0012】
図1に示す給電コイルL1及び受電コイルL2は、平面視形状(Z方向に見た形状)が共に長方形形状のコイルであり、これらが近接した状態に配置されることによって電磁気結合回路が形成される。この電磁気結合回路は、給電コイルL1と受電コイルL2とが電磁気的に結合して給電コイルL1から受電コイルL2への非接触の給電が行われる回路を意味し、「電磁誘導方式」で給電を行う回路と、「電磁界共鳴方式」で給電を行う回路との何れの回路であっても良い。
【0013】
給電コイルL1は、位置及び姿勢が固定された固定部P1に設けられており、受電コイルL2は、位置及び姿勢が可変である可動部P2に設けられている。このため、可動部P2の位置及び姿勢が変化することによって、固定部P1の給電コイルL1と可動部P2の受電コイルL2との相対的な位置及び姿勢が変化する。尚、電力伝送効率の過度な低下を防止するため、固定部P1の給電コイルL1は、可動部P2の可動範囲内でおおむね受電コイルL2に正対する位置に取り付けられる。ここで、本明細書において、「位置」とは、図1中に示したXYZ直交座標系におけるX方向,Y方向,Z方向の位置をいい、「姿勢」とはX軸,Y軸,Z軸周りの回転をいう。
【0014】
尚、本実施形態では、説明を簡単にするために、可動部P2は、XY平面内の並行移動(2自由度)とZ軸周りの回転(1自由度)との3自由度を有するものであるとする。このような固定部P1及び可動部P2を備える装置としては、例えば物体を載置した状態で移動させるステージ装置が挙げられる。つまり、物体を載置した状態で移動可能に構成されたステージが可動部P2であり、ステージをXY平面内で並行移動させるとともにZ軸周りに回転させるステージ駆動装置が固定部P1である。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置の要部構成を示すブロック図である。図2に示す通り、非接触電力伝送装置1は、固定部P1側(給電側)に設けられる構成と、可動部P2側(受電側)に設けられる構成とに大別される。給電側の構成は、上述した給電コイルL1に加えて、外部電源11、整流回路12、給電回路13(給電部)、変位測定部14(測定部)、及び制御部15等からなる。これに対し、受電側の構成は、上述した受電コイルL2に加えて受電回路21等からなる。尚、受電側に設けられる負荷22は、非接触で伝送された電力が供給される負荷であり、例えば可動部P2を駆動するモータ等である。
【0016】
外部電源11は、可動部P2に伝送すべき電力を生成するために必要となる電力を供給する電源であり、例えば電圧が200[V]である三相交流電力を供給する電源である。尚、この外部電源11は、三相交流電源に限られることはなく、商用交流電源のような単相交流電力を供給する電源であっても良い。整流回路12は、外部電源11から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する回路であり、例えば図2に示す通り、三相全波整流回路(ブリッジ整流回路)で実現される。
【0017】
外部電源11として燃料電池や太陽電池など直流電源を利用することも可能である。この場合、整流回路12は省略可能である。
【0018】
給電回路13は、整流回路12から供給される電力を、給電コイルL1と可動部P2に設けられる受電コイルL2とによって形成される電磁気結合回路を介して非接触で可動部P2に供給する。具体的に、給電回路13は、制御部15の制御の下で、整流回路12からの直流電力を交流電力に変換して給電コイルL1に与えることにより、可動部P2に対する非接触給電を実現する。
【0019】
つまり、給電回路13は、制御部15の制御によって、整流回路12からの直流電力を交流電力に変換する電力変換回路である。この給電回路13は、例えば図2に示す通り、スイッチングレッグ13a,13b(直列接続された2つのトランジスタと、これら2つのトランジスタにそれぞれ並列接続されたダイオードとからなる回路)が並列接続された回路で実現される。尚、ここでは、トランジスタで代表させているが、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の電力制御半導体素子でもよい。
【0020】
尚、給電回路13と給電コイルL1との間には2つのコンデンサC1が設けられている。このコンデンサC1は、給電コイルL1とともに直列共振回路を形成する。給電コイルL1の一端は、一方のコンデンサC1を介して給電回路13のスイッチングレッグ13aに接続されており、給電コイルL1の他端は、他方のコンデンサC1を介して給電回路13のスイッチングレッグ13bに接続されている。
【0021】
変位測定部14は、3つの変位測定器14a〜14cを備えており、固定部P1に対する可動部P2の相対的な位置及び姿勢の変位を測定する。変位測定器14aは、上記の変位のうちのX方向における位置の変位(Xm)を測定する。変位測定器14bは、上記の変位のうちのY方向における位置の変位(Ym)を測定する。変位測定器14cは、上記の変位のうちのZ軸周りの回転方向における回転角の変位(θm)を測定する。変位測定器14a,14bとしては、例えば磁歪式リニアセンサ、マグネスケール、光の干渉パターンを用いて測長器等を用いることができる。また、変位測定器14cとしては、ロータリーエンコーダやレゾルバ等を使用することができる。
【0022】
制御部15は、変位測定部14の測定結果(固定部P1に対する可動部P2の相対的な位置及び姿勢の変位)に基づいて電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求め、この周波数を有する電力が給電コイルL1から受電コイルL2に伝送されるように、給電回路13を制御する。具体的に、制御部15は、発振周波数選択器15a(周波数選択器)、発振回路15b、駆動クロック生成回路15c(駆動制御回路)、及びドライバ制御回路15d(駆動制御回路)を備える。
【0023】
発振周波数選択器15aは、変位測定部14の変位測定器14a〜14cからそれぞれ出力される変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせによって固定部P1に対する可動部P2の位置を特定し、その位置における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を指示する発振周波数指令値Fを求めて出力する。具体的に、発振周波数選択器15aは、発振周波数テーブルTを用いて、上記の発振周波数指令値Fを求める。尚、発振周波数選択器15aは、例えばCPU(中央処理装置)及びメモリ等を有するマイクロプロセッサと、発振周波数選択器15aの機能を実現するプログラムとの協働によって実現される。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態で用いられる発振周波数テーブルの一例を示す図である。図3に示す通り、発振周波数テーブルTは、固定部P1に対する可動部P2の相対的な位置及び姿勢の変位(Xm,Ym,θm)と、電力の伝送効率を最大にし得る周波数(F)との関係を示すテーブルである。この発振周波数テーブルTは、予め行われた実験やシミュレーションの結果に基づいて作成される。
【0025】
図3に示す発振周波数テーブルTは、固定部P1に対する可動部P2の相対的な位置及び姿勢の変位の取り得る値が、X方向については0〜100mmであり、Y方向については0〜50mmであり、Z軸周りの回転方向については0〜359°である場合のテーブルである。この図3に示す通り、発振周波数テーブルTでは、変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ毎に、電力の伝送効率を最大にし得る周波数(F)が規定されている。例えば、変位(Xm,Ym,θm)が(11mm,12mm,6°)である場合には、電力の伝送効率を最大にし得る周波数(F)として10.35MHzが規定されている。
【0026】
ここで、図3に示す発振周波数テーブルTは、変位Xm,Ymについては1mm毎に規定され、変位θmについては1°毎に規定されているため、これら変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ数が膨大になり、発振周波数テーブルTを作成する手間がかかる。このような手間を軽減するために、変位(Xm,Ym,θm)の刻みが粗くされて、変位(Xm,Ym,θm)と電力の伝送効率を最大にし得る周波数(F)との関係が離散的に規定された発振周波数テーブルを作成して用いることもできる。例えば、変位Xm,Ymについては10mm毎に規定され、変位θmについては10°毎に規定されたものを用いることができる。
【0027】
図3に示す発振周波数テーブルTが用いられる場合には、発振周波数選択器15aは、発振周波数テーブルTを参照して、変位測定器14a〜14cからそれぞれ出力される変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせに対応した周波数(F)を得ることによって、上記の発振周波数指令値Fを求める。即ち、発振周波数選択器15aは、発振周波数テーブルTの検索のみによって発振周波数指令値Fを求める。
【0028】
これに対し、上述した離散的な周波数テーブルが用いられる場合には、発振周波数選択器15aは、離散的な発振周波数テーブルを参照して、変位測定器14a〜14cからそれぞれ出力される変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせに近い組み合わせに対応した複数の周波数(F)を得て、これらに対して線形補間やスプライン補間等の補間を行うことにより上記の発振周波数指令値Fを求める。
【0029】
例えば、上述した離散的な周波数テーブル(変位Xm,Ymについては10mm毎に規定され、変位θmについては10°毎に規定されたテーブル)が用いられる場合において、変位測定器14a〜14cから変位(Xm,Ym,θm)として(35mm,15mm,53°)が出力されたとする。すると、発振周波数選択器15aは、例えば以下の8つの周波数(F)を用いて線形補間を行って上記の発振周波数指令値Fを求める。
【0030】
(30mm,10mm,50°)に対応する周波数(F)
(30mm,10mm,60°)に対応する周波数(F)
(30mm,20mm,50°)に対応する周波数(F)
(30mm,20mm,60°)に対応する周波数(F)
(40mm,10mm,50°)に対応する周波数(F)
(40mm,10mm,60°)に対応する周波数(F)
(40mm,20mm,50°)に対応する周波数(F)
(40mm,20mm,60°)に対応する周波数(F)
【0031】
発振周波数テーブルTをシミュレーションにより作成する場合には、変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ毎に、固定部P1に設けられた給電コイルL1の設計上の位置と可動部P2に設けられた受電コイルL2の設計上の位置とを座標変換して、給電コイルL1に対する受電コイルL2の相対位置を求める。そして、変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ毎に求められた相対位置の各々において、給電コイルL1と受電コイルL2との電磁気結合を、電磁界シミュレーション及び回路シミュレーションにより評価する。周波数を変えながら以上の評価を繰り返し行って、変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ毎に、効率が最大になる周波数を選択する。
【0032】
発振周波数テーブルTを実験により作成する場合には、変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ毎に、固定部P1側から給電される給電電力と可動部P2で受電される受電電力とをそれぞれ実際に測定し、受電電力を給電電力で除算して電力伝送効率を求める。周波数を変えながら上記の電力伝送効率を求め、変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせ毎に、電力伝送効率が最大になる周波数を選択する。
【0033】
発振回路15bは、発振周波数選択器15aから出力される発振周波数指令値Fで示される周波数を有する信号を出力する。駆動クロック生成回路15cは、発振回路15bから出力される信号に基づいて、給電回路13を駆動制御する基準となる駆動クロックを生成する。ドライバ制御回路15dは、駆動クロック生成回路15cから出力される駆動クロックに同期して給電回路13を駆動制御する。具体的には、給電回路13が備えるスイッチングレッグ13a,13bの各々に設けられたトランジスタのベース(パワーMOSFET若しくはIGBTの場合にはゲート)を駆動する。
【0034】
受電回路21は、給電コイルL1と受電コイルL2とによって形成される電磁気結合回路を介して非接触で供給されてくる電力(交流電力)を受電し、受電した電力を直流電力に変換して負荷22に供給する。具体的に、受電回路21は、4つのダイオードからなるブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力端に並列接続されたコンデンサとによって実現されている。尚、受電コイルL2と受電回路21との間にはコンデンサC2が並列接続されている。
【0035】
尚、上述した給電回路13、給電コイルL1、受電コイルL2、及び受電回路21の構成と動作の詳細は、例えば特開2009−225551号公報(「電力伝送システム」)或いは特開2008−236916号公報(「非接触電力伝送装置」)に開示されている。
【0036】
次に、上記構成における非接触電力伝送装置の動作について説明する。尚、説明を簡単にするために、初期状態では、可動部P2が予め規定された基準位置(例えば、原点位置)に静止した状態に配置されており、変位測定部14から出力される変位(Xm,Ym,θm)は、(0mm,0mm,0°)であるとする。また、この基準位置における電力伝送効率を最大にする発振周波数指令値Fが発振周波数選択器15aから出力されているものとする。
【0037】
かかる初期状態において、外部電源11から供給される電力(例えば、三相交流電力)は、整流回路12で整流されて直流電力に変換された後に給電回路13に供給される。給電回路13のスイッチングレッグ13a,13bの各々に設けられたトランジスタのベースは、制御部15のドライバ制御回路15dによって、発振周波数選択器15aから出力される発振周波数指令値Fに応じた周波数で駆動される。これにより、給電回路13に供給された直流電力は、発振周波数指令値Fに応じた周波数(例えば、11.5MHz)を有する交流電力に変換される。
【0038】
給電回路13で変換された交流電力は、コンデンサC1を介して給電コイルL1に供給され、給電コイルL1と受電コイルL2とによって形成される電磁気結合回路を介して非接触で可動部P2に伝送され、受電回路21で受電される。受電回路21で受電された交流電力は直流電力に変換された後に負荷22に供給される。この直流電力が供給されると、例えば負荷22としてのモータが駆動されて可動部P2が移動し、これにより固定部P1に対する可動部P2の相対位置が変化する。
【0039】
すると、固定部P1に対する可動部P2の相対位置の変化が変位測定部14で測定され、その測定結果を示す変位(Xm,Ym,θm)が、変位測定部14の変位測定器14a〜14cから制御部15の発振周波数選択器15aに対してそれぞれ出力される(第1ステップ)。変位測定部14からの変位(Xm,Ym,θm)が入力されると、発振周波数選択器15aは、発振周波数テーブルTを参照して、変位(Xm,Ym,θm)で示される位置における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を指示する発振周波数指令値Fを求めて出力する(第2ステップ)。
【0040】
例えば、変位測定部14からの変位(Xm,Ym,θm)が(11mm,12mm,5°)である場合には、図3に示す発振周波数テーブルTを参照して10.38MHzなる発振周波数指令値Fを求めて出力する。尚、発振周波数テーブルTが前述した離散的な周波数テーブルである場合には、変位測定部14からの変位(Xm,Ym,θm)の組み合わせに近い組み合わせに対応した複数の周波数(F)を得て、これらに対して線形補間やスプライン補間等の補間を行うことにより上記の発振周波数指令値Fを求める。
【0041】
発振周波数選択器15aから出力された発振周波数指令値Fは発振回路15bに入力され、発振回路15bからは発振周波数指令値Fで示される周波数を有する信号が出力される。この信号は駆動クロック生成回路15cに入力され、給電回路13を駆動制御する基準となる駆動クロックが生成されてドライバ制御回路15dに出力される。ドライバ制御回路15dは、駆動クロック生成回路15cからの駆動クロックに同期して給電回路13を駆動制御する(第3ステップ)。
【0042】
これにより、整流回路12からの直流電力は、給電回路13において発振周波数指令値Fに応じた周波数(例えば、10.38MHz)を有する交流電力に変換されて、給電コイルL1と受電コイルL2とによって形成される電磁気結合回路を介して非接触で可動部P2に伝送される。以後、以上説明した動作が繰り返されることによって、固定部P1に対する可動部P2の相対位置毎に電力の伝送効率が最大となるように、給電コイルL1から受電コイルL2に伝送される電力の周波数が制御される。
【0043】
以上の通り、本実施形態では、固定部P1に対する可動部P2の相対的な位置及び姿勢の変位を測定し、その測定結果に基づいて制御部15が給電コイルL1と受電コイルL2との間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求め、この周波数を有する電力が給電コイルL1と受電コイルL2との間で伝送されるように給電回路13を制御している。このため、給電コイルL1に対する受電コイルL2の相対的な位置や姿勢が変化しても、可動部P2に対する非接触での電力伝送を効率的に行うことができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置及び方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、固定部P1から可動部P2に対して電力を非接触で伝送する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、可動部P2から固定部P1に対して電力を非接触で伝送する場合であっても、固定部P1と可動部P2との間で相互に電力を非接触で伝送する場合であっても適用可能である。また、本発明は、固定部P1と可動部P2との間で電力を非接触で伝送する場合に限られず、可動部間で電力を非接触で伝送する場合にも適用することができる。かかる場合において、電力の伝送方向は一方向のみでも、双方向でも良い。
【0045】
また、上記実施形態では、可動部P2が、XY平面内の並行移動(2自由度)とZ軸周りの回転(1自由度)とが可能な3自由度を有するものである場合を例に挙げて説明したが、可動部P2がより高い自由度を有するものであっても、より低い自由度を有するものであっても本発明を適用することができる。例えば、可動部P2が、XY平面内の並行移動に加えてZ方向の移動やX軸,Y軸周りの回転が可能であるものであっても、X方向の移動のみ或いはZ軸周りの回転のみ可能であるものであっても本発明を適用することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、給電コイルL1及び受電コイルL2の平面視形状が長方形形状である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、給電コイルL1及び受電コイルL2の平面視形状は、接触での電力伝送に適していれば任意の形状(例えば、正方形形状、円形形状、或いは楕円形状等)にすることが可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、固定部P1から可動部P2に伝送される電力の周波数を、発振回路15bに発振周波数指令値Fを出力することによって変えていたが、インピーダンスを変化させることによって変えるようにしてもよい。例えば、電圧で容量が変化するキャパシタ(バリキャップ)をコンデンサC1に対して並列に接続し、キャパシタに加える電圧を制御してインピーダンスを変化させることによって伝送される電力の周波数を変えてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、固定部P1及び可動部P2を備える装置としてステージ装置を例示した。しかしながら、本発明は、ステージ装置以外に、アーム、クレーン、ロボット等の可動部を有する産業用機器に適用することができ、更には民生用機器等の様々な機器にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 非接触電力伝送装置
13 給電回路
14 変位測定部
15 制御部
15a 発振周波数選択器
15b 発振回路
15c 駆動クロック生成回路
15d ドライバ制御回路
L1 給電コイル
L2 受電コイル
P1 固定部
P2 可動部
T 発振周波数テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である第1,第2コイル間で電力を非接触で伝送可能な非接触電力伝送装置であって、
前記第1,第2コイル間で伝送されるべき電力を供給する給電部と、
前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求め、該周波数を有する電力が前記第1,第2コイル間で伝送されるよう前記給電部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量と、前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数との関係を示すテーブルを用いて、前記周波数を求めることを特徴とする請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記テーブルは、前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量と、前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数との関係を離散的に規定したものであり、
前記制御部は、前記テーブルの内容を補間して前記周波数を求める
ことを特徴とする請求項2記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定部の測定結果に基づいて前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求める周波数選択器と、
前記周波数選択器で選択された周波数を有する信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される信号に基づいて前記給電部を駆動制御する駆動制御回路と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
前記給電部は、前記駆動制御回路の駆動制御によって、直流電力を前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を有する交流電力に変換する電力変換回路を備えることを特徴とする請求項4記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記第1,第2コイルの何れか一方は、位置及び姿勢が固定された固定部に設けられており、
前記第1,第2コイルの何れか他方は、位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である可動部に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一方に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方が可変である第1,第2コイル間で電力を非接触で伝送する非接触電力伝送方法であって、
前記第1,第2コイルの相対的な位置及び姿勢のうち可変なものの量を測定する第1ステップと、
前記第1ステップの測定結果に基づいて前記第1,第2コイル間における電力の伝送効率を最大にし得る周波数を求める第2ステップと、
前記第2ステップで求められた周波数を有する電力が前記第1,第2コイル間で伝送されるよう前記第1,第2コイル間で伝送されるべき電力を供給する給電部を制御する第3ステップと
を備えることを特徴とする非接触電力伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115932(P2013−115932A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260316(P2011−260316)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)