静電気抑制用微細炭素繊維含有インク
【課題】本発明は、印刷物の摩擦帯電などによる静電気及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する静電気抑制用微細炭素繊維含有インク、及び本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクに適した印刷装置を提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、印刷用インク100重量部に、特に、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加したことを特徴とする微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、印刷用インク100重量部に、特に、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加したことを特徴とする微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂性フィルム、紙、金属などへの印刷に用いるインクである静電気抑制用微細炭素繊維含有インクに関する。
【背景技術】
【0002】
「微細炭素繊維」とは、カーボンナノチューブ(炭素繊維構造体)等の微細な炭素繊維である。炭素繊維は、繊維径によっていくつかの種類があり、気相法炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等と呼ばれている。
【0003】
なかでも、カーボンナノチューブは、最も微細な、繊維径が100nm以下のもので、その特異な物性から、ナノ電子材料、複合材料、燃料電池などの触媒担持、ガス吸収などの広い応用が期待されている。
【0004】
カーボンナノチューブには、炭素原子が網状に結合したシート(グラフェンシート)の一層が筒状になった単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層が筒状になった二層カーボンナノチューブ(DWCNT)及びグラフェンシートの筒が何層も入れ子状に積層した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が知られている。
【0005】
微細炭素繊維の直径とシートの巻き方の幾何学形状がカイラル指数によって決定され、カイラル指数によって金属や半導体の性質を示す。
【0006】
これらのカーボンナノチューブとしては、実質的にグラファイト構造をもつ炭素原子の連続的な多重層からなるフィブリルで、規則的に配列した炭素原子の層の多層からなり、各層とコアがフィブリルの円中軸に実質的に直交している黒鉛質からなるフィブリルが、例えば特許文献1、2に開示されている。
【0007】
さらに触媒作用によって成長した実質的にグラファイト構造をもつ炭素原子の連続的な多重層からなるフィブリルであり、規則的に配列した炭素原子の層の多層からなり、各層とコアがフィブリルの円中軸に実質的に同心円状に配置され、炭素原子の各層は、C軸がフィブリルの円中軸に実質的に直交している黒鉛質からなるフィブリルであることも、例えば、特許文献3に開示されている。
【0008】
しかしながら、同心円状のグラフェンシートの積層構造では、繊維は変形しやすく、繊維同士がファンデルワールス力で凝集し、繊維の集合体は繊維同士が絡み合った構造体となりやすい。したがって、このような凝集構造を有する粒子を複合材料用フィラーとしてマトリックス材料に混合して分散させようとすると、絡み合った凝集粒子は容易に解かれず、分散させるのが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、特許文献4〜6のカーボンナノチューブが開発された。特許文献4のカーボンナノチューブは、少量の添加にて、マトリックスの特性を損なわずに電気的特性、機械的特性、熱特性等の物理特性を向上させることのできる微細炭素繊維であって、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の繊維状物質において、筒を構成するシートが多角形の軸直交断面を有し、該断面の最大径が15〜100nmであり、アスペクト比が105以下で、ラマン分光分析で514nmにて測定されるID/IGが0.1以下であることを特徴とする。
【0010】
特許文献5のカーボンナノチューブは、特殊な構造を持つ炭素繊維構造体に、該炭素繊維構造体を結合するための結合剤を添加してなる炭素繊維結合体であって、該炭素繊維構造体が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする。
【0011】
特許文献6のカーボンナノチューブは、少量の添加にて、マトリックスの特性を損なわずに電気的特性、機械的特性、熱特性等の物理特性を向上させることのできる炭素繊維構造体であって、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであり、また前記炭素繊維構造体は圧縮密度0.8g/cm3において測定した粉体抵抗値が0.02Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0012】
【特許文献1】米国特許第4663230号明細書
【特許文献2】特開平03−174018号公報
【特許文献3】米国特許第5165909号公報
【特許文献4】特許第3761561号公報
【特許文献5】特開2006−265751号公報
【特許文献6】特許第3776111号公報
【0013】
微細炭素繊維が添加されたインクとしては、特許文献7〜12等が公開されている。特許文献7の微細炭素繊維含有インクは、0.5〜20重量%の均一に分散された、3.5〜75nm(両端の数字を含む)の直径を有し、その長さ対直径の比が少なくとも5である炭素フィブリルを含む反応射出成形ポリマーマトリックスを含む電気伝導性成形複合体であって、前記フィブリルは凝集体の形態であり、その直径が前記フィブリルの直径の1000倍以下である電気伝導性成形複合体であることを特徴とする。
【0014】
特許文献8の微細炭素繊維含有インクは、被印刷体への定着性に優れ、にじみや裏移りのない鮮明な印刷画像を与えることができる孔版印刷用油中水型エマルションインク、および孔版印刷方法であって、
1.油相10〜90重量%および水相90〜10重量%によって構成される油中水型エマルションインクにおいて、前記油相および/または水相中に少なくとも1種以上のカーボンナノチューブを含有することを特徴とする。
2.サーマルヘッド、又は加熱作用を有するレーザー光線により感熱孔版シートを穿孔する工程、該穿孔シートを孔版印刷版胴ヘセットする工程、該シートの穿孔部に前記1の油中水型エマルジョンインクを通過させる工程、および該通過インクを印刷用紙へ磁場により転移する工程を含むことを特徴とする孔版印刷方法。
【0015】
特許文献9の微細炭素繊維含有インクは、凝集し易いカーボンナノチューブやグラファイトナノファイバー等のように擬一次元形状を有する微粒子を均一に分散した分散液およびその製造方法、効率の良い微粒子の精製方法、微粒子の密度が高く、且つ均一な微粒子皮膜であって、支持部材の上に第1の導電性電極を形成し、双極性非プロトン溶剤にカーボンナノチューブやグラファイトナノファイバーを分散した分散液を第1の導電性電極上に滴下または印刷により塗布して微粒子皮膜を積層することにより実現する。
【0016】
特許文献10の微細炭素繊維含有インクは、ガスバリア性に優れるとともに、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いた場合には、酸化防止剤を用いなくても酸素等により酸化されることを防止することができ、食品や医薬品等の包装用の塗料やインクに好適に用いることができる塗料やインクを実現することができる樹脂組成物であって、塗料又はインクに用いられる樹脂組成物であって、バインダー樹脂に、カーボンナノチューブが含有されていることを特徴とする。
【0017】
特許文献11の微細炭素繊維含有インクは、カーボンナノチューブの組成物がインク中に生成され、このインクは、インクジェット被覆プロセスを介して分配し得る。この微細炭素繊維インクは、カソード構造体に形成されるウェルに分配される。実施形態は、文献11の図1(a)に示されるような、ウェル構造体内に微細炭素繊維を均一に被覆するためのプロセスを提供する。ウェル構造体は、穴を形成するために4つ以上の壁(または、丸穴の場合は、1つの壁)を有し得る。
【0018】
特許文献12には、気相成長炭素繊維とカーボンブラックと熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とを含有した組成物。この組成物からなる導電性塗料、導電性インク、及び電気回路基板が記載されている。
【0019】
【特許文献7】特許第3034027号公報
【特許文献8】特開2003−26981号公報
【特許文献9】特開2002−255528号公報
【特許文献10】特開2004−75705号公報
【特許文献11】特開2007−505474号公報
【特許文献12】特開平6−122785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述のように、微細炭素繊維を印刷用インクに添加した技術は複数公開されている。しかしながら、それらの目的は、インクの酸化防止効果、にじみ防止効果、E−インク用途等であり、印刷物における静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事を目的とするものではない。
【0021】
なお、特許文献4には、微細炭素繊維を印刷用インクに添加し、抵抗性を規定しているものも散見されるが、その印刷対象は車の部品(バンパーなど)である。
【0022】
そこで、本発明は、印刷物の摩擦帯電等による静電気及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する静電気抑制用微細炭素繊維含有インク、及び本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクに適した印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するために、印刷用インク100重量部に、微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加したことを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。さらに、前記印刷用インクが、オフセット印刷用インクであること、前記印刷用インクが、黒インクであること、前記黒インクの顔料が、カーボンブラックであることを特徴とする前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0024】
また、前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの粘度が、20〜80Pa・s(周波数特性10Hz、測定温度25℃)の範囲であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷・乾燥工程を経た印刷物に、0.0265μg/cm2〜5.3μg/cm2の前記微細炭素繊維が付着していることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷した印刷物の印刷部の電気抵抗が、1.0×104Ω〜5.0×1011Ωの範囲であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0025】
さらに、前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造であることを特徴とする前記の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の繊維状物質において、筒を構成するシートが多角形の軸直交断面を有し、該断面の最大径が15〜100nmであり、アスペクト比が105以下で、ラマン分光分析で514nmにて測定されるID/IGが0.2以下であることを特徴とする微細炭素繊維であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記微細炭素繊維が、炭素繊維構造体に、該炭素繊維構造体を結合するための結合剤を添加してなる炭素繊維結合体であって、該炭素繊維構造体が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする炭素繊維結合体であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであり、また前記炭素繊維構造体は圧縮密度0.8g/cm3において測定した粉体抵抗値が0.02Ω・cm以下であることを特徴とする炭素繊維構造体であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0026】
また、前記微細炭素繊維含有インクが、撹拌及び均一化処理し、均一分散させたことを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0027】
そして、前記何れかに記載の微細炭素繊維含有インクの印刷物が、シート状の樹脂製フィルム又は紙或いは金属であることを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0028】
加えて、前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを使用する印刷装置において、印刷・乾燥工程後の加湿工程で、静電気除去剤を使用しないことを特徴とする印刷装置の構成とした。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以上の構成であり、樹脂製フィルム、紙、金属の表面印刷に使用できるのは勿論、以下の効果がある。本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを使用したシート状の印刷物は静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加が抑制される。従って、静電気抑制用微細炭素繊維含有インクで印刷した印刷物は、静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加が抑制されるため、印刷物同士が貼り付かず、印刷物の折り工程、整理(集積)、分配、結束作業や製本(製本工程)の作業が容易になり、作業性が極めてよくなる。
【0030】
さらに、印刷装置や印刷物から、作業者へ放電される静電気を抑制されることから、人体に刺激を与えず安全である。
【0031】
また、本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、紙への印刷を行った場合、印刷物同士及び接触物との摩擦帯電により、印刷物に発生する静電気及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制することができるため、印刷装置の加湿装置を低レベルで駆動、或いは駆動させなくても、印刷物の四隅の揃いが乱れることがない。従って、加湿に用いられる静電気除去剤の使用を低減でき、静電気由来の不具合の発生により、印刷機を停止する事も少なくなるため、印刷装置のランニングコストを低減する事ができる。
【0032】
従来、印刷後、印刷物をボイラ等により発生させた熱に暴露させ、印刷用インクを乾燥させるが、そのままでは、印刷物に静電気が帯電し、印刷物がまとまらない。そこで、乾燥工程の直後に、加湿工程を設けている。加湿工程では、霧状の水を印刷物に噴霧している。
【0033】
通常それだけでは、帯電防止効果が低いため、噴霧する水に、洗濯洗剤などに使用する四級アンモニウム塩などの静電気除去剤(柔軟剤)を混合している。一般に、加湿に用いられる水中の静電気除去剤(柔軟剤)の濃度は、水100重量部に対して、5〜30重量部程度である。
【0034】
このような濃度で四級アンモニウム塩を使用すると、四級アンモニウム塩が原因となり、印刷機を構成する金属素材を腐蝕させてしまい、駆動寿命が短くなってしまう。従って、印刷機の修理、特殊塗装、さらにチタン合金などの特殊鋼材を使用しなければならず、印刷機が極めて高いものとなってしまう。なお、一般の印刷機は、柔軟剤を印刷用静電除去剤として使用することを想定していないため、特別な対策は取られておらす、柔軟剤を使用している印刷機に錆、ピンホールが見られているのが現状である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、印刷用インクに微細炭素繊維を添加することで、印刷物同士及び接触物による摩擦帯電によって、印刷物における静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事ができる微細炭素繊維含有インクを提供することができた。
【0036】
微細炭素繊維とは、カーボンナノチューブであり、特に、軸直角方向に積層されたナノチューブが好適で、例えば、ナノカーボンテクノロジーズ(株)製、MWNTシリーズ、即ち、請求項8〜11の微細炭素繊維が例示できる。なお、他の構造の微細炭素繊維であっても、静電気の帯電は低減される。
【0037】
微細炭素繊維の添加量は、印刷用インク100重量部に対して、0.01重量部〜2.0重量部、特に好ましくは0.2重量部〜1.0重量部である。微細炭素繊維の混合比が、印刷用インク100重量部に対して、0.01重量部未満では静電気抑制効果は発揮されず、2.0重量部を超えると、印刷用インクの粘度が高く、不良印刷物が多く発生する。
【0038】
3次元ネットワーク構造とは、微細炭素繊維が粒状炭素相部において結合され、該粒状炭素相部にて前記微細炭素繊維が複数交差した立体形状を呈していることを意味する。
【0039】
アスペクト比とは、繊維長さ/繊維径の比率のことである。
【0040】
ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛は1580cm−1のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1のピーク(Dバンド)が出現する。DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=ID/IG)で欠陥の分析もなされている。グラフェンシート面内の結晶サイズLaとRには相関があることが知られている。R=0.1がLa=500オングストロームに相当するとされる。
【0041】
ラマン分光分析には、堀場ジョバン・イボン社製のラマン分光分析装置(LabRam800)を使用し、アルゴンレーザの514nmを用いて測定した。
【0042】
炭素源の分解温度とは、炭素源ガスを熱分解させる際の温度である。
【0043】
触媒粒子とは、気相成長法によって炭素繊維を成形する際に用いる触媒のことである。具体的には、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を用いるのが好ましい。
【0044】
圧縮密度とは、酸化粉体の重量を圧縮成形体の体積で割った値であり、言い換えれば成形体密度のことである。
【0045】
粉体抵抗値とは、直径10mmの容器に詰めた微細炭素繊維を上下から電極となる金属製の押棒で100kg/cm2に加圧しつつ当該微細炭素繊維の電気抵抗を測定し、この測定値と電極の面積および電極間の距離から算出した値を意味する。
【0046】
印刷物における静電気の発生には、印刷基材及び印刷物同士の接触による静電気の発生、又は印刷基材及び印刷物と印刷機に設置されているローラーとの接触による静電気の発生等がある。印刷物における静電気量(帯電電荷量)は、摩擦帯電により発生した静電気量(帯電電荷量)から放電(除電)を差し引いた値となる。放電の形態には、火花放電、コロナ放電及び沿面放電等がある。
【0047】
印刷用インクとは、活版印刷、樹脂凸版印刷、フレキソ印刷などの凸版、オフセット印刷などの平板、グラビア印刷などの凹版、シルクスクリーンや謄写版などの孔版用インクの何れであってもよい。特に、オフセット印刷用インクが好適である。オフセット印刷用インクには、輪転機用(図1)と枚葉機用がある。
【0048】
印刷用インクの色は、特に限定されないが、微細炭素繊維が黒であるため、黒色が発色してもより色であることが望ましい。最も好ましくは、黒インクである。黒インクの顔料としては、カーボンブラックが好適である。
【0049】
カーボンブラックは、各種の製法により製造されたカーボンブラックを使用することができる。好適に使用することのできるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができ、又、原料の相違により分類されるガスブラック、オイルブラック、アセチレンブラック等も更に好適例として挙げることができる。これらの中でも好ましいカーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラックである。
【0050】
市販のカーボンブラックを使用することができる。具体的には、コロンビアカ−ボン日本社のR−14(比表面積45m2/g、粒径68mμ)、R−420(比表面積25m2/g、粒径68mμ)、R−450(比表面積33m2/g、粒径62mμ)、R−MT−P(比表面積8m2/g、粒径280mμ)、キャボット社製のSterlingV(比表面積35m2/g、粒径50mμ)、SterlingNS(比表面積25m2/g、粒径75mμ)、SterlingSO(比表面積42m2/g、粒径41mμ)、三菱化成(株)製の#22B(比表面積55m2/g、粒径40mμ)、#20B(比表面積56m2/g、粒径60mμ)、CF−9(比表面積60m2/g、粒径40mμ)、#3500(比表面積47m2/g、粒径40mμ)、デンカ(株)製のHS−100(比表面積32m2/g、粒径53mμ)、ASAHIHS−500(比表面積37m2/g、粒径76mμ)等を挙げることができる。
【0051】
本発明の印刷用インクにおけるカーボンブラックの含有量としては、通常5〜30重量%、好ましくは8〜15重量%である。その範囲外であると、特に、オフセット印刷においては好適な粘度が得られない。
【0052】
オフセット印刷とは、実際に印刷イメージが作られている版と紙が直接触れない印刷技術である。インク壺から流れ出し版に付けられたインクを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写(オフセット)した後、供給された紙(給紙工程)などの被印刷体に印刷(印刷工程)するため、オフセット印刷と呼ばれる。
【0053】
オフセット印刷は、前記印刷工程、続いてインクを熱風などにより乾燥させる乾燥工程、乾燥された印刷物から静電気を除去するため界面活性剤などを含む柔軟剤などの静電気除去剤を印刷物に噴霧する加湿工程、必要に応じて印刷物を所定の形状に折る折り工程、印刷物を積み重ねる集積工程、印刷物を切断し形状を整える裁断工程、必要部数に分割する分配工程、必要部数をバンドなどでまとめる結束工程からなり、印刷物は依頼場所に発送される。
【0054】
なお、小・中型印刷機は、これら各工程を行う装置が独立し、人の作業を頻繁に必要とする。一方大型印刷機は、これら各工程が連続的に進行し、必要部数の印刷物が仕上がる。
【0055】
さらに、オフセット印刷された印刷物を製本することもよく行われている。オフセット印刷の印刷物も、一般的に行われている製本工程によって製本することができる。このとき、印刷物に静電気が蓄積されていると各製本工程で不具合が生じてしまう。
【0056】
給紙から結束、さらに製本の各工程において、印刷物同士及び印刷物と各装置のローラーが接触し、印刷物に静電気が発生し、その量が増加する。特に、折り工程及び乾燥工程後は特に静電気量が増大する。印刷物に静電気が発生すると、人に放電し、傷みを感じる。
【0057】
オフセット印刷の大半が平版を用いて行われているため、オフセットと言えば平版オフセット印刷のことを指す。しかし、版に凸版を用いるドライオフセット印刷や、電子写真方式のオンデマンド印刷機にもオフセット方式を用いたものなどがある。
【0058】
平版とは印刷の版式の一つで、版の撥水性を利用した印刷方法である。版材に石を用いる石版印刷が平版の最初だが、現在ではアルミに感光剤を塗布したPS版が主流となっている。
【0059】
イメージを作る前の原版(PS版)は、親水性の支持体を、親油(撥水)性の感光層で覆ったものである。この上に、版下から製版したフィルムを載せ、フォトリソグラフィにより、非画線部の親油層を除去する。この原版を胴に設置し、湿し水を付けると、親油層の除去された部分にのみ水が乗る。続いてインクを付けるが、非画線部には水があるためインクが乗らず、画線部にのみインクが付着した状態になる。このインクを、原版からブランケットと呼ばれるゴム筒に一旦移した後、改めて紙に転写する。
【0060】
非常に鮮明な印刷が可能で、版が直接紙に触れないことから胴の磨耗が少なく、大量印刷にも適する。輪転機を使用すれば短時間で大量の印刷が可能になる。
【0061】
このようなオフセット印刷用インクは、他の印刷用インクに比べ粘度が高いため、微細炭素繊維を均一に分散させるだけ、微細炭素繊維の沈澱、凝集は起こらず、従来のオフセット印刷として使用できる。オフセット印刷用インクの粘度としては、20〜80Pa・s(周波数特性10Hz、測定温度25℃)が好適である。その値未満であると印刷物が綺麗に仕上がらない。また、その値を超える粘度であると、印刷機に流れ込まない。一般的に、小・中型印刷機は、大型印刷機用インクに比べ、高粘度な印刷用インクを使用する場合が多い。
【0062】
また、粘度の低い水溶性インクの場合には、微細炭素繊維を少量の分散剤を添加した系において、ビーズミル等の分散処理を施す事でエマルジョンの状態にすれば、微細炭素繊維を均一にインク中に混合できる。
【0063】
本発明である微細炭素繊維含有インクは、通常の印刷用インクの製造法と同様にして製造することができる。すなわち、基本的には、各成分の配合、プレミキシング、練肉、調整、濾過の工程を有する。なお、この工程のそれぞれは、製造装置の相違により単独に行われるとは限られない。この工程において、粘度の相違によって練肉、濾過の方法が異なる。
【0064】
例えば、微細炭素繊維含有インクの粘度が高いときには、3本ロール法、ニーダー法あるいはフラッシュ法を採用して練肉する。3本ロールは、各ロールの回転速度の違いによる剪断力によって練肉するものであり、洗浄が容易であるので小ロット生産に適している。ニーダー法は、特殊形状のブレードの回転により練肉するものである。これは大ロット生産に適している。フラッシュ法は、前記各成分の配合、プレミキシング、練肉、調整、濾過の工程を同時に行う方法である。
【0065】
微細炭素繊維含有インクの粘度が低いときには、サンドミル、ボールミル、アトライタ等のメディア型分散機を使用する。なお、微細炭素繊維含有インクを製造するに当たり、上記の他、ミキサー、ニーダー、ミル等を使用することができるが、いずれを使用するかは、ミルベース、インクの粘度、ロットの大きさ、生産効率、インクの品質、密閉性、連続運転の可否、経済性、使い易さ、安全性等の種々の要因を考慮するべきことはいうまでもない。
【0066】
本発明で提供する印刷用インクを用いて印刷した印刷物は、静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果を有する。そのため当該印刷物を静電気が発生しやすい装置の壁面若しくは内部に設置するとことも望ましい。
【0067】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
[微細炭素繊維含有インクの調製方法]
本発明の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクは、図1に示すオフセット印刷用インク(輪転機用)100重量部に対して、微細炭素繊維(ナノカーボンテクノロジーズ(株)製MWCNT、MWNT−7)を図10に記載の比率で混合した。
【0069】
図1のオフセット印刷用インク(輪転機用)は、VAN SON KOREA Inc.(韓国人民共和国)製の[Web Heat Set Ink(Coated papaer) M5 Prosess<Black>]の組成である。なお、「CAS NO.」は、米国化学会の一部門であるCAS(Chemical Abstracts Service)が運営・管理する化学物質登録システムから付与される化学物質に固有の数値識別番号である。
【0070】
オフセット印刷用インク中に微細炭素繊維を均一に分散させるための処方は、撹拌機(KENMIX社製、MAJOR)を用いて、オフセット印刷用インク中に微細炭素繊維を予備分散させ、次いで3本ロールミル(井上製作所社製、KN−R207)を用いた本分散及び脱泡処理を行う事で、微細炭素繊維が均一に分散した微細炭素繊維含有インクを得た。
【0071】
3本ロールミルとは、回転数の異なる3本のロールから構成され、ロール間圧力を利用した圧縮作用と、速度の異なるロール間でのせん断作用により分散を行う装置である。更に、粘度の高いインクの脱泡も可能である。ロール本体は冷却・加熱が可能で処理材料温度を均一にしながら分散を行う事ができる。
【0072】
オフセット印刷用インクは高粘度であるため、撹拌時に気泡が混入する。気泡が混入されたままのインク状態で印刷を行うと、印刷不良の原因になる。そのため3本ロールミル処理により、脱泡を行いながら微細炭素繊維の分散処理を行う事は、非常に重要な処理工程となる。
【0073】
[試験例1]
上記微細炭素繊維含有インク調製方法により、オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.01重量部添加した微細炭素繊維含有インクを得た。
【0074】
[試験例2]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.1重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0075】
[試験例3]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.2重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0076】
[試験例4]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を1.0重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0077】
[試験例5]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を2.0重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0078】
[比較例1]
微細炭素繊維を添加しないオフセット印刷用インク・VAN SON KOREA Inc.(韓国人民共和国)製の[Web Heat Set Ink(Coated papaer) M5 Prosess<Black>]である。
【0079】
[比較例2]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.005重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0080】
[比較例3]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を3.0重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【実施例2】
【0081】
[微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態]
試験例1〜5の微細炭素繊維含有オフセット印刷用インク中における微細炭素繊維の分散状態観察においては、微細炭素繊維含有インク1gにトルエン1〜10gを入れ希釈し、希釈液を直ちにガラス基材に塗布、乾燥したサンプルを用いて、光学顕微鏡(NIKON社製光学顕微鏡、エクリプスME600)観察を行った。
【0082】
その結果として、微細炭素繊維が0.1、1.0及び2.0重量部含有した微細炭素繊維含有オフセット印刷用インクの光学顕微鏡写真を図2〜4に示す。比較として、比較例1の微細炭素繊維を含有していないオフセット印刷用インクの光学顕微鏡写真を図5に示した。
【0083】
実施例2により、微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態は、実施例1に記載の分散処理を行う事により、微細炭素繊維の凝集体等が観察されず、また微細炭素繊維の解繊状態も良好であり、インクのどの部分を測定しても同様な光学顕微鏡写真が得られるため、微細炭素繊維はインク中に均一に解繊した状態で分散している事が確認できた(図10)。
【実施例3】
【0084】
[微細炭素繊維含有インクの粘度測定]
試験例1〜5の微細炭素繊維含有オフセット印刷用インクの粘度測定は、レオメーター[BOHLIN INSTRUMENTS社製、GEMINI150 Advanced Rheometer]を用いて測定を行った(測定条件:周波数特性10Hz、測定温度25℃)。比較として、比較例1〜3のインク粘度測定を行い、それらの結果を図10に示した。
【0085】
実施例3により、試験例1〜5及び比較例1〜3のインク粘度測定を行った結果(図10)、試験例1〜5のインクは、小・中型印刷機又は大型印刷機用インクに所望される粘度を有していた。
【0086】
更に、0.2重量部前後の微細炭素繊維添加量領域では、微細炭素繊維を添加する事で、インク粘度が低下した。オフセット印刷インクは、インクの伸び性・流動性が非常に重要な特性の一つであるため、微細炭素繊維を少量添加する事で粘度が低下した事は、オフセット印刷用インクとしての特性が向上した事は明白である。また、微細炭素繊維が2.0重量部より多い場合は、オフセット印刷用インクの粘度としては高すぎる事も明らかである。
【実施例4】
【0087】
[微細炭素繊維含有インクを印刷した印刷物における微細炭素繊維の分散状態]
試験例1〜5の微細炭素繊維含有オフセット印刷用インクを上質紙に印刷した状態における微細炭素繊維の分散状態について、電子顕微鏡(日本電子(JEOL)社製FE−SEM JSM−6700F)を用いて、0.1重量部、1.0重量部及び2.0重量部含有微細炭素繊維含有インクを、ローラー(カラーテスター(VAN SON社製))を用いて上質紙に5×22cm角に塗布後、3日間室温にて放置乾燥したサンプルの紙表面観察を行った。
【0088】
その結果、得られた電子顕微鏡写真を図6〜8に示した。比較として、比較例1の微細炭素繊維を含有していないインクを上質紙に塗布・乾燥した印刷物の電子顕微鏡写真を図9に示した。
【0089】
実施例4により、試験例1〜5の微細炭素繊維含有インクを印刷した印刷物上における微細炭素繊維の分散状態は、微細炭素繊維が上質紙のセルロース繊維の表面に付着しており、場合によってはセルロース繊維の最表面に突起状に存在しており、微細炭素繊維同士が再凝集している様子はないため、良好な分散状態である事は明らかである。
【実施例5】
【0090】
[微細炭素繊維含有インクを印刷した印刷物の表面抵抗率測定]
実施例4の上質紙に微細炭素繊維含有インクを塗布した印刷物を、5×20cm角の大きさに裁断したサンプルを用いて表面抵抗率の測定(三菱化学社製、HIRESTA−UP,MCP−HT450)を行った。比較として、比較例1〜3で作製したインクについて同様な操作方法でサンプルを作製し、印刷物の表面抵抗率を測定した。それらの結果を図10に示した。
【0091】
実施例5により、微細炭素繊維含有インクを用いて印刷した印刷物の表面抵抗率を測定した結果、試験例1〜5のインクを用いたサンプルの表面抵抗率は、5.0×1011Ω以下であった。また、微細炭素繊維含有インク中の微細炭素繊維の添加量が増加すると、印刷物の表面抵抗率が低下したため、印刷物の静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果が増加している事は明らかである。
【0092】
一般的に動的な要因で物体が摩擦帯電して静電気を帯びる場合、物体の表面抵抗率が1012Ω/sq以下であれば、摩擦帯電を抑制する効果があると言われている。しかしその抑制効果は、表面抵抗率が低い方が、静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果が強くなる。
【0093】
微細炭素繊維が、0.01重量部以上添加された本発明の微細炭素繊維含有インクの場合は、5.0×1011Ω以下の抵抗値を示し、印刷物同士及び接触物の摩擦帯電による静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事ができ、その効果は微細炭素繊維の添加量が多いほど高い事は明白である。
【0094】
そのため、微細炭素繊維の添加量が0.01重量部より少ない場合は、微細炭素繊維が無添加な場合と表面抵抗率の差が小さいため、摩擦帯電による静電気の抑制効果は低い。
【実施例6】
【0095】
[小・中型印刷機用微細炭素繊維含有インクを用いた静電気抑制効果試験]
小・中型印刷機[(株)桜井グラフィックシステムズ社製、オリバー466SIP]を用いて、試験例4の静電気抑制微細炭素繊維含有インク(微細炭素繊維添加量:1.0重量部)を使用して、リサイクル上質紙(日本製紙製、B4サイズ、古紙率70%)に印刷を行った。
【0096】
次いでこの印刷物を、折り機[正栄機械製作所社製、オリスター コンビ16 B2型]を用いて、一折目を行った後の印刷物表面の静電気量測定を行った。すなわち、折り機内へ給紙される前の紙表面の静電気量、及び、折り機内へ給紙され、折り工程を得た後の紙表面の静電気量測定を行う事で、小・中型印刷機用微細炭素繊維含有インクの静電気抑制効果試験を行った。
【0097】
印刷物の静電気量測定は、折り工程開始後、10分、20分、30分、40分、50分後に、折り機内へ給紙される前の紙表面の静電気量、及び折り機から排出された紙表面の静電気量(シムコジャパン社製静電気測定装置、FMX−003)を測定した。比較例として、比較例1の微細炭素繊維を無添加のインクを使用して印刷を行った印刷物の静電気量の測定も同様な方法で行い、それらの結果を図11に示した。
【0098】
実施例6により、小・中型印刷機用微細炭素繊維含有インクの静電気抑制効果を試験した結果、静電気が最も発生しやすいリサイクル上質紙を使用し、更に印刷物が最も静電気を帯びやすい折り工程において、微細炭素繊維含有インクを用いて印刷を行った印刷物は、折り工程前後において静電気量の変化がほとんどなく、更に折り機を止める事なく作業を終了する事ができ、更に折り工程を終えた印刷物は四隅が揃った。また、作業者がその印刷物に触れても、静電気の発生がなく、作業者が安全に安心して分配、結束などの作業を終えることができた。
【0099】
それに対して、比較例1の微細炭素繊維を添加していないインクを使用して印刷を行った印刷物は、折り工程開始30分後に、印刷物同士及び印刷物と折り機内のローラーとの接触により発生する静電気により、印刷物同士及び印刷物とローラーが密着してしまい、折り機を停止しなければならない不具合を生じた。この現象は、印刷物同士及び印刷物と折り機に設置されたローラーにおいて、折り工程中に静電気が発生し、その静電気が印刷物に蓄積され、静電気量が増大する事に起因する。
【0100】
これらの結果より、微細炭素繊維含有インクを使用して印刷した印刷物は、静電気が最も発生しやすいリサイクル上質紙を使用し、更に印刷物が最も静電気を帯びやすい折り工程においても、印刷物の摩擦帯電による静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)を抑制している事ができる事は明白である。また静電気由来で多発する生産現場の不具合を解消できる。
【実施例7】
【0101】
[大型印刷機用微細炭素繊維含有インクを用いた静電気抑制効果試験]
大型印刷機[(株)東芝社製、オフセット輪転機OA・B2]を用いて、試験例1〜4の微細炭素繊維含有インクの印刷物に対する静電気抑制効果試験を行った。印刷機には印刷・乾燥工程を得た印刷物の静電気の発生を抑制する目的で、静電気除去剤(界面活性剤)を含有した静電気除去剤(柔軟剤)を印刷物に噴霧する加湿工程がある。乾燥後に急激に静電気が印刷物に発生するためである。
【0102】
この加湿工程に使用される四級アンモニウム塩等の静電気除去剤(柔軟剤)が、界面活性剤が、特に印刷機に対して錆、ピンホールなどの不具合を生じる場合が多い。そのため印刷物への静電気抑制効果の試験方法は、大型印刷機用微細炭素繊維含有インクを用いて印刷する事で、加湿器の駆動をどの程度低減させる事が出来るかという指標で、静電気抑制効果を試験した。比較例として、比較例1及び2のインクを使用して印刷を行った紙表面の静電気量の測定を同様な方法で行い、それらの結果を図12に示した。
【0103】
実施例7により、微細炭素繊維の混合比が、0.01重量部(試験例1)である微細炭素繊維含有インクを使用した場合は、加湿器の駆動を停止すると、やや印刷物の散乱が確認されたが、低レベルで駆動させると、散乱することなく整理(印刷物の四隅が揃い積み重なること)された。従って、印刷物への静電気の帯電が無添加に比べ抑制され、印刷機を止めることなく作業を終了した。
【0104】
微細炭素繊維の混合比が、0.1重量部〜1.0重量部(試験例2〜4)である微細炭素繊維含有インクを使用した場合は、加湿器を駆動させなくとも、印刷物が散乱することなく、整理された。従って、印刷物への静電気の帯電が極めて低く抑えられ、印刷機を止めることなく作業を終了した。
【0105】
それに対して、微細炭素繊維無添加(比較例1)インクまたは微細炭素繊維の混合比が、0.005重量部(比較例2)である微細炭素繊維含有インクを使用した場合は、印刷物乾燥後に加湿器の駆動なしでは、印刷物に静電気が発生し、印刷物が散乱(印刷物の四隅が揃わずに積み重なること)した。
【0106】
従って、印刷用インクへの微細炭素繊維の混合量は、印刷用インク100重量部に対して、0.01重量部〜2.0重量部添加する事で、従来通りの印刷が可能で、印刷物同士及び接触物との摩擦帯電による静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果が得られた。より好ましくは、0.2重量部〜1.0重量部である。
【0107】
以上の結果より、印刷用インク100重量部に、微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加した静電気抑制用微細炭素繊維含有インクは、印刷物の静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事ができる。従って、印刷・乾燥・集積・折り・製本等の各工程において、静電気が原因による不具合を解消する事ができる。また、作業者が印刷物からの静電気放電を受けることがなく、安全に安心して各工程の作業を行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】オフセット印刷用インク(輪転機用)の組成を示す図である。
【図2】0.1重量部の微細炭素繊維を含有したオフセット印刷用の本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの光学顕微鏡写真である。
【図3】1.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態を示す光学顕微鏡写真である。
【図4】2.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態を示す光学顕微鏡写真である。
【図5】微細炭素繊維を含有していない印刷用インクの光学顕微鏡写真である。
【図6】0.1重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを上質紙に塗布した際の印刷物上での微細炭素繊維の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】1.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを上質紙に塗布した際の印刷物上での微細炭素繊維の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】2.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを上質紙に塗布した際の印刷物上での微細炭素繊維の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】印刷されていない上質紙の電子顕微鏡写真である。
【図10】図1の組成の印刷用インクへの微細炭素繊維混合割合、インク中の微細炭素繊維の分散状態、インクの粘度及び表面抵抗率を示す図である。
【図11】小・中型印刷機を用いて印刷、折り工程を行った際、印刷物に発生した静電気量を測定した結果である。
【図12】大型印刷機を用いて印刷・折り工程を行った際、加湿器の駆動状態による印刷物の状況を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂性フィルム、紙、金属などへの印刷に用いるインクである静電気抑制用微細炭素繊維含有インクに関する。
【背景技術】
【0002】
「微細炭素繊維」とは、カーボンナノチューブ(炭素繊維構造体)等の微細な炭素繊維である。炭素繊維は、繊維径によっていくつかの種類があり、気相法炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等と呼ばれている。
【0003】
なかでも、カーボンナノチューブは、最も微細な、繊維径が100nm以下のもので、その特異な物性から、ナノ電子材料、複合材料、燃料電池などの触媒担持、ガス吸収などの広い応用が期待されている。
【0004】
カーボンナノチューブには、炭素原子が網状に結合したシート(グラフェンシート)の一層が筒状になった単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層が筒状になった二層カーボンナノチューブ(DWCNT)及びグラフェンシートの筒が何層も入れ子状に積層した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が知られている。
【0005】
微細炭素繊維の直径とシートの巻き方の幾何学形状がカイラル指数によって決定され、カイラル指数によって金属や半導体の性質を示す。
【0006】
これらのカーボンナノチューブとしては、実質的にグラファイト構造をもつ炭素原子の連続的な多重層からなるフィブリルで、規則的に配列した炭素原子の層の多層からなり、各層とコアがフィブリルの円中軸に実質的に直交している黒鉛質からなるフィブリルが、例えば特許文献1、2に開示されている。
【0007】
さらに触媒作用によって成長した実質的にグラファイト構造をもつ炭素原子の連続的な多重層からなるフィブリルであり、規則的に配列した炭素原子の層の多層からなり、各層とコアがフィブリルの円中軸に実質的に同心円状に配置され、炭素原子の各層は、C軸がフィブリルの円中軸に実質的に直交している黒鉛質からなるフィブリルであることも、例えば、特許文献3に開示されている。
【0008】
しかしながら、同心円状のグラフェンシートの積層構造では、繊維は変形しやすく、繊維同士がファンデルワールス力で凝集し、繊維の集合体は繊維同士が絡み合った構造体となりやすい。したがって、このような凝集構造を有する粒子を複合材料用フィラーとしてマトリックス材料に混合して分散させようとすると、絡み合った凝集粒子は容易に解かれず、分散させるのが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、特許文献4〜6のカーボンナノチューブが開発された。特許文献4のカーボンナノチューブは、少量の添加にて、マトリックスの特性を損なわずに電気的特性、機械的特性、熱特性等の物理特性を向上させることのできる微細炭素繊維であって、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の繊維状物質において、筒を構成するシートが多角形の軸直交断面を有し、該断面の最大径が15〜100nmであり、アスペクト比が105以下で、ラマン分光分析で514nmにて測定されるID/IGが0.1以下であることを特徴とする。
【0010】
特許文献5のカーボンナノチューブは、特殊な構造を持つ炭素繊維構造体に、該炭素繊維構造体を結合するための結合剤を添加してなる炭素繊維結合体であって、該炭素繊維構造体が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする。
【0011】
特許文献6のカーボンナノチューブは、少量の添加にて、マトリックスの特性を損なわずに電気的特性、機械的特性、熱特性等の物理特性を向上させることのできる炭素繊維構造体であって、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであり、また前記炭素繊維構造体は圧縮密度0.8g/cm3において測定した粉体抵抗値が0.02Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0012】
【特許文献1】米国特許第4663230号明細書
【特許文献2】特開平03−174018号公報
【特許文献3】米国特許第5165909号公報
【特許文献4】特許第3761561号公報
【特許文献5】特開2006−265751号公報
【特許文献6】特許第3776111号公報
【0013】
微細炭素繊維が添加されたインクとしては、特許文献7〜12等が公開されている。特許文献7の微細炭素繊維含有インクは、0.5〜20重量%の均一に分散された、3.5〜75nm(両端の数字を含む)の直径を有し、その長さ対直径の比が少なくとも5である炭素フィブリルを含む反応射出成形ポリマーマトリックスを含む電気伝導性成形複合体であって、前記フィブリルは凝集体の形態であり、その直径が前記フィブリルの直径の1000倍以下である電気伝導性成形複合体であることを特徴とする。
【0014】
特許文献8の微細炭素繊維含有インクは、被印刷体への定着性に優れ、にじみや裏移りのない鮮明な印刷画像を与えることができる孔版印刷用油中水型エマルションインク、および孔版印刷方法であって、
1.油相10〜90重量%および水相90〜10重量%によって構成される油中水型エマルションインクにおいて、前記油相および/または水相中に少なくとも1種以上のカーボンナノチューブを含有することを特徴とする。
2.サーマルヘッド、又は加熱作用を有するレーザー光線により感熱孔版シートを穿孔する工程、該穿孔シートを孔版印刷版胴ヘセットする工程、該シートの穿孔部に前記1の油中水型エマルジョンインクを通過させる工程、および該通過インクを印刷用紙へ磁場により転移する工程を含むことを特徴とする孔版印刷方法。
【0015】
特許文献9の微細炭素繊維含有インクは、凝集し易いカーボンナノチューブやグラファイトナノファイバー等のように擬一次元形状を有する微粒子を均一に分散した分散液およびその製造方法、効率の良い微粒子の精製方法、微粒子の密度が高く、且つ均一な微粒子皮膜であって、支持部材の上に第1の導電性電極を形成し、双極性非プロトン溶剤にカーボンナノチューブやグラファイトナノファイバーを分散した分散液を第1の導電性電極上に滴下または印刷により塗布して微粒子皮膜を積層することにより実現する。
【0016】
特許文献10の微細炭素繊維含有インクは、ガスバリア性に優れるとともに、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いた場合には、酸化防止剤を用いなくても酸素等により酸化されることを防止することができ、食品や医薬品等の包装用の塗料やインクに好適に用いることができる塗料やインクを実現することができる樹脂組成物であって、塗料又はインクに用いられる樹脂組成物であって、バインダー樹脂に、カーボンナノチューブが含有されていることを特徴とする。
【0017】
特許文献11の微細炭素繊維含有インクは、カーボンナノチューブの組成物がインク中に生成され、このインクは、インクジェット被覆プロセスを介して分配し得る。この微細炭素繊維インクは、カソード構造体に形成されるウェルに分配される。実施形態は、文献11の図1(a)に示されるような、ウェル構造体内に微細炭素繊維を均一に被覆するためのプロセスを提供する。ウェル構造体は、穴を形成するために4つ以上の壁(または、丸穴の場合は、1つの壁)を有し得る。
【0018】
特許文献12には、気相成長炭素繊維とカーボンブラックと熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とを含有した組成物。この組成物からなる導電性塗料、導電性インク、及び電気回路基板が記載されている。
【0019】
【特許文献7】特許第3034027号公報
【特許文献8】特開2003−26981号公報
【特許文献9】特開2002−255528号公報
【特許文献10】特開2004−75705号公報
【特許文献11】特開2007−505474号公報
【特許文献12】特開平6−122785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述のように、微細炭素繊維を印刷用インクに添加した技術は複数公開されている。しかしながら、それらの目的は、インクの酸化防止効果、にじみ防止効果、E−インク用途等であり、印刷物における静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事を目的とするものではない。
【0021】
なお、特許文献4には、微細炭素繊維を印刷用インクに添加し、抵抗性を規定しているものも散見されるが、その印刷対象は車の部品(バンパーなど)である。
【0022】
そこで、本発明は、印刷物の摩擦帯電等による静電気及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する静電気抑制用微細炭素繊維含有インク、及び本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクに適した印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するために、印刷用インク100重量部に、微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加したことを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。さらに、前記印刷用インクが、オフセット印刷用インクであること、前記印刷用インクが、黒インクであること、前記黒インクの顔料が、カーボンブラックであることを特徴とする前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0024】
また、前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの粘度が、20〜80Pa・s(周波数特性10Hz、測定温度25℃)の範囲であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷・乾燥工程を経た印刷物に、0.0265μg/cm2〜5.3μg/cm2の前記微細炭素繊維が付着していることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷した印刷物の印刷部の電気抵抗が、1.0×104Ω〜5.0×1011Ωの範囲であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0025】
さらに、前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造であることを特徴とする前記の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の繊維状物質において、筒を構成するシートが多角形の軸直交断面を有し、該断面の最大径が15〜100nmであり、アスペクト比が105以下で、ラマン分光分析で514nmにて測定されるID/IGが0.2以下であることを特徴とする微細炭素繊維であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記微細炭素繊維が、炭素繊維構造体に、該炭素繊維構造体を結合するための結合剤を添加してなる炭素繊維結合体であって、該炭素繊維構造体が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする炭素繊維結合体であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。前記微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであり、また前記炭素繊維構造体は圧縮密度0.8g/cm3において測定した粉体抵抗値が0.02Ω・cm以下であることを特徴とする炭素繊維構造体であることを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0026】
また、前記微細炭素繊維含有インクが、撹拌及び均一化処理し、均一分散させたことを特徴とする前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0027】
そして、前記何れかに記載の微細炭素繊維含有インクの印刷物が、シート状の樹脂製フィルム又は紙或いは金属であることを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの構成とした。
【0028】
加えて、前記何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを使用する印刷装置において、印刷・乾燥工程後の加湿工程で、静電気除去剤を使用しないことを特徴とする印刷装置の構成とした。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以上の構成であり、樹脂製フィルム、紙、金属の表面印刷に使用できるのは勿論、以下の効果がある。本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを使用したシート状の印刷物は静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加が抑制される。従って、静電気抑制用微細炭素繊維含有インクで印刷した印刷物は、静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加が抑制されるため、印刷物同士が貼り付かず、印刷物の折り工程、整理(集積)、分配、結束作業や製本(製本工程)の作業が容易になり、作業性が極めてよくなる。
【0030】
さらに、印刷装置や印刷物から、作業者へ放電される静電気を抑制されることから、人体に刺激を与えず安全である。
【0031】
また、本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、紙への印刷を行った場合、印刷物同士及び接触物との摩擦帯電により、印刷物に発生する静電気及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制することができるため、印刷装置の加湿装置を低レベルで駆動、或いは駆動させなくても、印刷物の四隅の揃いが乱れることがない。従って、加湿に用いられる静電気除去剤の使用を低減でき、静電気由来の不具合の発生により、印刷機を停止する事も少なくなるため、印刷装置のランニングコストを低減する事ができる。
【0032】
従来、印刷後、印刷物をボイラ等により発生させた熱に暴露させ、印刷用インクを乾燥させるが、そのままでは、印刷物に静電気が帯電し、印刷物がまとまらない。そこで、乾燥工程の直後に、加湿工程を設けている。加湿工程では、霧状の水を印刷物に噴霧している。
【0033】
通常それだけでは、帯電防止効果が低いため、噴霧する水に、洗濯洗剤などに使用する四級アンモニウム塩などの静電気除去剤(柔軟剤)を混合している。一般に、加湿に用いられる水中の静電気除去剤(柔軟剤)の濃度は、水100重量部に対して、5〜30重量部程度である。
【0034】
このような濃度で四級アンモニウム塩を使用すると、四級アンモニウム塩が原因となり、印刷機を構成する金属素材を腐蝕させてしまい、駆動寿命が短くなってしまう。従って、印刷機の修理、特殊塗装、さらにチタン合金などの特殊鋼材を使用しなければならず、印刷機が極めて高いものとなってしまう。なお、一般の印刷機は、柔軟剤を印刷用静電除去剤として使用することを想定していないため、特別な対策は取られておらす、柔軟剤を使用している印刷機に錆、ピンホールが見られているのが現状である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、印刷用インクに微細炭素繊維を添加することで、印刷物同士及び接触物による摩擦帯電によって、印刷物における静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事ができる微細炭素繊維含有インクを提供することができた。
【0036】
微細炭素繊維とは、カーボンナノチューブであり、特に、軸直角方向に積層されたナノチューブが好適で、例えば、ナノカーボンテクノロジーズ(株)製、MWNTシリーズ、即ち、請求項8〜11の微細炭素繊維が例示できる。なお、他の構造の微細炭素繊維であっても、静電気の帯電は低減される。
【0037】
微細炭素繊維の添加量は、印刷用インク100重量部に対して、0.01重量部〜2.0重量部、特に好ましくは0.2重量部〜1.0重量部である。微細炭素繊維の混合比が、印刷用インク100重量部に対して、0.01重量部未満では静電気抑制効果は発揮されず、2.0重量部を超えると、印刷用インクの粘度が高く、不良印刷物が多く発生する。
【0038】
3次元ネットワーク構造とは、微細炭素繊維が粒状炭素相部において結合され、該粒状炭素相部にて前記微細炭素繊維が複数交差した立体形状を呈していることを意味する。
【0039】
アスペクト比とは、繊維長さ/繊維径の比率のことである。
【0040】
ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛は1580cm−1のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1のピーク(Dバンド)が出現する。DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=ID/IG)で欠陥の分析もなされている。グラフェンシート面内の結晶サイズLaとRには相関があることが知られている。R=0.1がLa=500オングストロームに相当するとされる。
【0041】
ラマン分光分析には、堀場ジョバン・イボン社製のラマン分光分析装置(LabRam800)を使用し、アルゴンレーザの514nmを用いて測定した。
【0042】
炭素源の分解温度とは、炭素源ガスを熱分解させる際の温度である。
【0043】
触媒粒子とは、気相成長法によって炭素繊維を成形する際に用いる触媒のことである。具体的には、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を用いるのが好ましい。
【0044】
圧縮密度とは、酸化粉体の重量を圧縮成形体の体積で割った値であり、言い換えれば成形体密度のことである。
【0045】
粉体抵抗値とは、直径10mmの容器に詰めた微細炭素繊維を上下から電極となる金属製の押棒で100kg/cm2に加圧しつつ当該微細炭素繊維の電気抵抗を測定し、この測定値と電極の面積および電極間の距離から算出した値を意味する。
【0046】
印刷物における静電気の発生には、印刷基材及び印刷物同士の接触による静電気の発生、又は印刷基材及び印刷物と印刷機に設置されているローラーとの接触による静電気の発生等がある。印刷物における静電気量(帯電電荷量)は、摩擦帯電により発生した静電気量(帯電電荷量)から放電(除電)を差し引いた値となる。放電の形態には、火花放電、コロナ放電及び沿面放電等がある。
【0047】
印刷用インクとは、活版印刷、樹脂凸版印刷、フレキソ印刷などの凸版、オフセット印刷などの平板、グラビア印刷などの凹版、シルクスクリーンや謄写版などの孔版用インクの何れであってもよい。特に、オフセット印刷用インクが好適である。オフセット印刷用インクには、輪転機用(図1)と枚葉機用がある。
【0048】
印刷用インクの色は、特に限定されないが、微細炭素繊維が黒であるため、黒色が発色してもより色であることが望ましい。最も好ましくは、黒インクである。黒インクの顔料としては、カーボンブラックが好適である。
【0049】
カーボンブラックは、各種の製法により製造されたカーボンブラックを使用することができる。好適に使用することのできるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができ、又、原料の相違により分類されるガスブラック、オイルブラック、アセチレンブラック等も更に好適例として挙げることができる。これらの中でも好ましいカーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラックである。
【0050】
市販のカーボンブラックを使用することができる。具体的には、コロンビアカ−ボン日本社のR−14(比表面積45m2/g、粒径68mμ)、R−420(比表面積25m2/g、粒径68mμ)、R−450(比表面積33m2/g、粒径62mμ)、R−MT−P(比表面積8m2/g、粒径280mμ)、キャボット社製のSterlingV(比表面積35m2/g、粒径50mμ)、SterlingNS(比表面積25m2/g、粒径75mμ)、SterlingSO(比表面積42m2/g、粒径41mμ)、三菱化成(株)製の#22B(比表面積55m2/g、粒径40mμ)、#20B(比表面積56m2/g、粒径60mμ)、CF−9(比表面積60m2/g、粒径40mμ)、#3500(比表面積47m2/g、粒径40mμ)、デンカ(株)製のHS−100(比表面積32m2/g、粒径53mμ)、ASAHIHS−500(比表面積37m2/g、粒径76mμ)等を挙げることができる。
【0051】
本発明の印刷用インクにおけるカーボンブラックの含有量としては、通常5〜30重量%、好ましくは8〜15重量%である。その範囲外であると、特に、オフセット印刷においては好適な粘度が得られない。
【0052】
オフセット印刷とは、実際に印刷イメージが作られている版と紙が直接触れない印刷技術である。インク壺から流れ出し版に付けられたインクを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写(オフセット)した後、供給された紙(給紙工程)などの被印刷体に印刷(印刷工程)するため、オフセット印刷と呼ばれる。
【0053】
オフセット印刷は、前記印刷工程、続いてインクを熱風などにより乾燥させる乾燥工程、乾燥された印刷物から静電気を除去するため界面活性剤などを含む柔軟剤などの静電気除去剤を印刷物に噴霧する加湿工程、必要に応じて印刷物を所定の形状に折る折り工程、印刷物を積み重ねる集積工程、印刷物を切断し形状を整える裁断工程、必要部数に分割する分配工程、必要部数をバンドなどでまとめる結束工程からなり、印刷物は依頼場所に発送される。
【0054】
なお、小・中型印刷機は、これら各工程を行う装置が独立し、人の作業を頻繁に必要とする。一方大型印刷機は、これら各工程が連続的に進行し、必要部数の印刷物が仕上がる。
【0055】
さらに、オフセット印刷された印刷物を製本することもよく行われている。オフセット印刷の印刷物も、一般的に行われている製本工程によって製本することができる。このとき、印刷物に静電気が蓄積されていると各製本工程で不具合が生じてしまう。
【0056】
給紙から結束、さらに製本の各工程において、印刷物同士及び印刷物と各装置のローラーが接触し、印刷物に静電気が発生し、その量が増加する。特に、折り工程及び乾燥工程後は特に静電気量が増大する。印刷物に静電気が発生すると、人に放電し、傷みを感じる。
【0057】
オフセット印刷の大半が平版を用いて行われているため、オフセットと言えば平版オフセット印刷のことを指す。しかし、版に凸版を用いるドライオフセット印刷や、電子写真方式のオンデマンド印刷機にもオフセット方式を用いたものなどがある。
【0058】
平版とは印刷の版式の一つで、版の撥水性を利用した印刷方法である。版材に石を用いる石版印刷が平版の最初だが、現在ではアルミに感光剤を塗布したPS版が主流となっている。
【0059】
イメージを作る前の原版(PS版)は、親水性の支持体を、親油(撥水)性の感光層で覆ったものである。この上に、版下から製版したフィルムを載せ、フォトリソグラフィにより、非画線部の親油層を除去する。この原版を胴に設置し、湿し水を付けると、親油層の除去された部分にのみ水が乗る。続いてインクを付けるが、非画線部には水があるためインクが乗らず、画線部にのみインクが付着した状態になる。このインクを、原版からブランケットと呼ばれるゴム筒に一旦移した後、改めて紙に転写する。
【0060】
非常に鮮明な印刷が可能で、版が直接紙に触れないことから胴の磨耗が少なく、大量印刷にも適する。輪転機を使用すれば短時間で大量の印刷が可能になる。
【0061】
このようなオフセット印刷用インクは、他の印刷用インクに比べ粘度が高いため、微細炭素繊維を均一に分散させるだけ、微細炭素繊維の沈澱、凝集は起こらず、従来のオフセット印刷として使用できる。オフセット印刷用インクの粘度としては、20〜80Pa・s(周波数特性10Hz、測定温度25℃)が好適である。その値未満であると印刷物が綺麗に仕上がらない。また、その値を超える粘度であると、印刷機に流れ込まない。一般的に、小・中型印刷機は、大型印刷機用インクに比べ、高粘度な印刷用インクを使用する場合が多い。
【0062】
また、粘度の低い水溶性インクの場合には、微細炭素繊維を少量の分散剤を添加した系において、ビーズミル等の分散処理を施す事でエマルジョンの状態にすれば、微細炭素繊維を均一にインク中に混合できる。
【0063】
本発明である微細炭素繊維含有インクは、通常の印刷用インクの製造法と同様にして製造することができる。すなわち、基本的には、各成分の配合、プレミキシング、練肉、調整、濾過の工程を有する。なお、この工程のそれぞれは、製造装置の相違により単独に行われるとは限られない。この工程において、粘度の相違によって練肉、濾過の方法が異なる。
【0064】
例えば、微細炭素繊維含有インクの粘度が高いときには、3本ロール法、ニーダー法あるいはフラッシュ法を採用して練肉する。3本ロールは、各ロールの回転速度の違いによる剪断力によって練肉するものであり、洗浄が容易であるので小ロット生産に適している。ニーダー法は、特殊形状のブレードの回転により練肉するものである。これは大ロット生産に適している。フラッシュ法は、前記各成分の配合、プレミキシング、練肉、調整、濾過の工程を同時に行う方法である。
【0065】
微細炭素繊維含有インクの粘度が低いときには、サンドミル、ボールミル、アトライタ等のメディア型分散機を使用する。なお、微細炭素繊維含有インクを製造するに当たり、上記の他、ミキサー、ニーダー、ミル等を使用することができるが、いずれを使用するかは、ミルベース、インクの粘度、ロットの大きさ、生産効率、インクの品質、密閉性、連続運転の可否、経済性、使い易さ、安全性等の種々の要因を考慮するべきことはいうまでもない。
【0066】
本発明で提供する印刷用インクを用いて印刷した印刷物は、静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果を有する。そのため当該印刷物を静電気が発生しやすい装置の壁面若しくは内部に設置するとことも望ましい。
【0067】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
[微細炭素繊維含有インクの調製方法]
本発明の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクは、図1に示すオフセット印刷用インク(輪転機用)100重量部に対して、微細炭素繊維(ナノカーボンテクノロジーズ(株)製MWCNT、MWNT−7)を図10に記載の比率で混合した。
【0069】
図1のオフセット印刷用インク(輪転機用)は、VAN SON KOREA Inc.(韓国人民共和国)製の[Web Heat Set Ink(Coated papaer) M5 Prosess<Black>]の組成である。なお、「CAS NO.」は、米国化学会の一部門であるCAS(Chemical Abstracts Service)が運営・管理する化学物質登録システムから付与される化学物質に固有の数値識別番号である。
【0070】
オフセット印刷用インク中に微細炭素繊維を均一に分散させるための処方は、撹拌機(KENMIX社製、MAJOR)を用いて、オフセット印刷用インク中に微細炭素繊維を予備分散させ、次いで3本ロールミル(井上製作所社製、KN−R207)を用いた本分散及び脱泡処理を行う事で、微細炭素繊維が均一に分散した微細炭素繊維含有インクを得た。
【0071】
3本ロールミルとは、回転数の異なる3本のロールから構成され、ロール間圧力を利用した圧縮作用と、速度の異なるロール間でのせん断作用により分散を行う装置である。更に、粘度の高いインクの脱泡も可能である。ロール本体は冷却・加熱が可能で処理材料温度を均一にしながら分散を行う事ができる。
【0072】
オフセット印刷用インクは高粘度であるため、撹拌時に気泡が混入する。気泡が混入されたままのインク状態で印刷を行うと、印刷不良の原因になる。そのため3本ロールミル処理により、脱泡を行いながら微細炭素繊維の分散処理を行う事は、非常に重要な処理工程となる。
【0073】
[試験例1]
上記微細炭素繊維含有インク調製方法により、オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.01重量部添加した微細炭素繊維含有インクを得た。
【0074】
[試験例2]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.1重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0075】
[試験例3]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.2重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0076】
[試験例4]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を1.0重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0077】
[試験例5]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を2.0重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0078】
[比較例1]
微細炭素繊維を添加しないオフセット印刷用インク・VAN SON KOREA Inc.(韓国人民共和国)製の[Web Heat Set Ink(Coated papaer) M5 Prosess<Black>]である。
【0079】
[比較例2]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を0.005重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【0080】
[比較例3]
オフセット印刷用インクに微細炭素繊維を3.0重量部添加した以外は、試験例1に準じた方法で微細炭素繊維含有インクを得た。
【実施例2】
【0081】
[微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態]
試験例1〜5の微細炭素繊維含有オフセット印刷用インク中における微細炭素繊維の分散状態観察においては、微細炭素繊維含有インク1gにトルエン1〜10gを入れ希釈し、希釈液を直ちにガラス基材に塗布、乾燥したサンプルを用いて、光学顕微鏡(NIKON社製光学顕微鏡、エクリプスME600)観察を行った。
【0082】
その結果として、微細炭素繊維が0.1、1.0及び2.0重量部含有した微細炭素繊維含有オフセット印刷用インクの光学顕微鏡写真を図2〜4に示す。比較として、比較例1の微細炭素繊維を含有していないオフセット印刷用インクの光学顕微鏡写真を図5に示した。
【0083】
実施例2により、微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態は、実施例1に記載の分散処理を行う事により、微細炭素繊維の凝集体等が観察されず、また微細炭素繊維の解繊状態も良好であり、インクのどの部分を測定しても同様な光学顕微鏡写真が得られるため、微細炭素繊維はインク中に均一に解繊した状態で分散している事が確認できた(図10)。
【実施例3】
【0084】
[微細炭素繊維含有インクの粘度測定]
試験例1〜5の微細炭素繊維含有オフセット印刷用インクの粘度測定は、レオメーター[BOHLIN INSTRUMENTS社製、GEMINI150 Advanced Rheometer]を用いて測定を行った(測定条件:周波数特性10Hz、測定温度25℃)。比較として、比較例1〜3のインク粘度測定を行い、それらの結果を図10に示した。
【0085】
実施例3により、試験例1〜5及び比較例1〜3のインク粘度測定を行った結果(図10)、試験例1〜5のインクは、小・中型印刷機又は大型印刷機用インクに所望される粘度を有していた。
【0086】
更に、0.2重量部前後の微細炭素繊維添加量領域では、微細炭素繊維を添加する事で、インク粘度が低下した。オフセット印刷インクは、インクの伸び性・流動性が非常に重要な特性の一つであるため、微細炭素繊維を少量添加する事で粘度が低下した事は、オフセット印刷用インクとしての特性が向上した事は明白である。また、微細炭素繊維が2.0重量部より多い場合は、オフセット印刷用インクの粘度としては高すぎる事も明らかである。
【実施例4】
【0087】
[微細炭素繊維含有インクを印刷した印刷物における微細炭素繊維の分散状態]
試験例1〜5の微細炭素繊維含有オフセット印刷用インクを上質紙に印刷した状態における微細炭素繊維の分散状態について、電子顕微鏡(日本電子(JEOL)社製FE−SEM JSM−6700F)を用いて、0.1重量部、1.0重量部及び2.0重量部含有微細炭素繊維含有インクを、ローラー(カラーテスター(VAN SON社製))を用いて上質紙に5×22cm角に塗布後、3日間室温にて放置乾燥したサンプルの紙表面観察を行った。
【0088】
その結果、得られた電子顕微鏡写真を図6〜8に示した。比較として、比較例1の微細炭素繊維を含有していないインクを上質紙に塗布・乾燥した印刷物の電子顕微鏡写真を図9に示した。
【0089】
実施例4により、試験例1〜5の微細炭素繊維含有インクを印刷した印刷物上における微細炭素繊維の分散状態は、微細炭素繊維が上質紙のセルロース繊維の表面に付着しており、場合によってはセルロース繊維の最表面に突起状に存在しており、微細炭素繊維同士が再凝集している様子はないため、良好な分散状態である事は明らかである。
【実施例5】
【0090】
[微細炭素繊維含有インクを印刷した印刷物の表面抵抗率測定]
実施例4の上質紙に微細炭素繊維含有インクを塗布した印刷物を、5×20cm角の大きさに裁断したサンプルを用いて表面抵抗率の測定(三菱化学社製、HIRESTA−UP,MCP−HT450)を行った。比較として、比較例1〜3で作製したインクについて同様な操作方法でサンプルを作製し、印刷物の表面抵抗率を測定した。それらの結果を図10に示した。
【0091】
実施例5により、微細炭素繊維含有インクを用いて印刷した印刷物の表面抵抗率を測定した結果、試験例1〜5のインクを用いたサンプルの表面抵抗率は、5.0×1011Ω以下であった。また、微細炭素繊維含有インク中の微細炭素繊維の添加量が増加すると、印刷物の表面抵抗率が低下したため、印刷物の静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果が増加している事は明らかである。
【0092】
一般的に動的な要因で物体が摩擦帯電して静電気を帯びる場合、物体の表面抵抗率が1012Ω/sq以下であれば、摩擦帯電を抑制する効果があると言われている。しかしその抑制効果は、表面抵抗率が低い方が、静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果が強くなる。
【0093】
微細炭素繊維が、0.01重量部以上添加された本発明の微細炭素繊維含有インクの場合は、5.0×1011Ω以下の抵抗値を示し、印刷物同士及び接触物の摩擦帯電による静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事ができ、その効果は微細炭素繊維の添加量が多いほど高い事は明白である。
【0094】
そのため、微細炭素繊維の添加量が0.01重量部より少ない場合は、微細炭素繊維が無添加な場合と表面抵抗率の差が小さいため、摩擦帯電による静電気の抑制効果は低い。
【実施例6】
【0095】
[小・中型印刷機用微細炭素繊維含有インクを用いた静電気抑制効果試験]
小・中型印刷機[(株)桜井グラフィックシステムズ社製、オリバー466SIP]を用いて、試験例4の静電気抑制微細炭素繊維含有インク(微細炭素繊維添加量:1.0重量部)を使用して、リサイクル上質紙(日本製紙製、B4サイズ、古紙率70%)に印刷を行った。
【0096】
次いでこの印刷物を、折り機[正栄機械製作所社製、オリスター コンビ16 B2型]を用いて、一折目を行った後の印刷物表面の静電気量測定を行った。すなわち、折り機内へ給紙される前の紙表面の静電気量、及び、折り機内へ給紙され、折り工程を得た後の紙表面の静電気量測定を行う事で、小・中型印刷機用微細炭素繊維含有インクの静電気抑制効果試験を行った。
【0097】
印刷物の静電気量測定は、折り工程開始後、10分、20分、30分、40分、50分後に、折り機内へ給紙される前の紙表面の静電気量、及び折り機から排出された紙表面の静電気量(シムコジャパン社製静電気測定装置、FMX−003)を測定した。比較例として、比較例1の微細炭素繊維を無添加のインクを使用して印刷を行った印刷物の静電気量の測定も同様な方法で行い、それらの結果を図11に示した。
【0098】
実施例6により、小・中型印刷機用微細炭素繊維含有インクの静電気抑制効果を試験した結果、静電気が最も発生しやすいリサイクル上質紙を使用し、更に印刷物が最も静電気を帯びやすい折り工程において、微細炭素繊維含有インクを用いて印刷を行った印刷物は、折り工程前後において静電気量の変化がほとんどなく、更に折り機を止める事なく作業を終了する事ができ、更に折り工程を終えた印刷物は四隅が揃った。また、作業者がその印刷物に触れても、静電気の発生がなく、作業者が安全に安心して分配、結束などの作業を終えることができた。
【0099】
それに対して、比較例1の微細炭素繊維を添加していないインクを使用して印刷を行った印刷物は、折り工程開始30分後に、印刷物同士及び印刷物と折り機内のローラーとの接触により発生する静電気により、印刷物同士及び印刷物とローラーが密着してしまい、折り機を停止しなければならない不具合を生じた。この現象は、印刷物同士及び印刷物と折り機に設置されたローラーにおいて、折り工程中に静電気が発生し、その静電気が印刷物に蓄積され、静電気量が増大する事に起因する。
【0100】
これらの結果より、微細炭素繊維含有インクを使用して印刷した印刷物は、静電気が最も発生しやすいリサイクル上質紙を使用し、更に印刷物が最も静電気を帯びやすい折り工程においても、印刷物の摩擦帯電による静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)を抑制している事ができる事は明白である。また静電気由来で多発する生産現場の不具合を解消できる。
【実施例7】
【0101】
[大型印刷機用微細炭素繊維含有インクを用いた静電気抑制効果試験]
大型印刷機[(株)東芝社製、オフセット輪転機OA・B2]を用いて、試験例1〜4の微細炭素繊維含有インクの印刷物に対する静電気抑制効果試験を行った。印刷機には印刷・乾燥工程を得た印刷物の静電気の発生を抑制する目的で、静電気除去剤(界面活性剤)を含有した静電気除去剤(柔軟剤)を印刷物に噴霧する加湿工程がある。乾燥後に急激に静電気が印刷物に発生するためである。
【0102】
この加湿工程に使用される四級アンモニウム塩等の静電気除去剤(柔軟剤)が、界面活性剤が、特に印刷機に対して錆、ピンホールなどの不具合を生じる場合が多い。そのため印刷物への静電気抑制効果の試験方法は、大型印刷機用微細炭素繊維含有インクを用いて印刷する事で、加湿器の駆動をどの程度低減させる事が出来るかという指標で、静電気抑制効果を試験した。比較例として、比較例1及び2のインクを使用して印刷を行った紙表面の静電気量の測定を同様な方法で行い、それらの結果を図12に示した。
【0103】
実施例7により、微細炭素繊維の混合比が、0.01重量部(試験例1)である微細炭素繊維含有インクを使用した場合は、加湿器の駆動を停止すると、やや印刷物の散乱が確認されたが、低レベルで駆動させると、散乱することなく整理(印刷物の四隅が揃い積み重なること)された。従って、印刷物への静電気の帯電が無添加に比べ抑制され、印刷機を止めることなく作業を終了した。
【0104】
微細炭素繊維の混合比が、0.1重量部〜1.0重量部(試験例2〜4)である微細炭素繊維含有インクを使用した場合は、加湿器を駆動させなくとも、印刷物が散乱することなく、整理された。従って、印刷物への静電気の帯電が極めて低く抑えられ、印刷機を止めることなく作業を終了した。
【0105】
それに対して、微細炭素繊維無添加(比較例1)インクまたは微細炭素繊維の混合比が、0.005重量部(比較例2)である微細炭素繊維含有インクを使用した場合は、印刷物乾燥後に加湿器の駆動なしでは、印刷物に静電気が発生し、印刷物が散乱(印刷物の四隅が揃わずに積み重なること)した。
【0106】
従って、印刷用インクへの微細炭素繊維の混合量は、印刷用インク100重量部に対して、0.01重量部〜2.0重量部添加する事で、従来通りの印刷が可能で、印刷物同士及び接触物との摩擦帯電による静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する効果が得られた。より好ましくは、0.2重量部〜1.0重量部である。
【0107】
以上の結果より、印刷用インク100重量部に、微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加した静電気抑制用微細炭素繊維含有インクは、印刷物の静電気の発生及び静電気量(帯電電荷量)の増加を抑制する事ができる。従って、印刷・乾燥・集積・折り・製本等の各工程において、静電気が原因による不具合を解消する事ができる。また、作業者が印刷物からの静電気放電を受けることがなく、安全に安心して各工程の作業を行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】オフセット印刷用インク(輪転機用)の組成を示す図である。
【図2】0.1重量部の微細炭素繊維を含有したオフセット印刷用の本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの光学顕微鏡写真である。
【図3】1.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態を示す光学顕微鏡写真である。
【図4】2.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インク中における微細炭素繊維の分散状態を示す光学顕微鏡写真である。
【図5】微細炭素繊維を含有していない印刷用インクの光学顕微鏡写真である。
【図6】0.1重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを上質紙に塗布した際の印刷物上での微細炭素繊維の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】1.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを上質紙に塗布した際の印刷物上での微細炭素繊維の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】2.0重量部の微細炭素繊維を含有した本発明である静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを上質紙に塗布した際の印刷物上での微細炭素繊維の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】印刷されていない上質紙の電子顕微鏡写真である。
【図10】図1の組成の印刷用インクへの微細炭素繊維混合割合、インク中の微細炭素繊維の分散状態、インクの粘度及び表面抵抗率を示す図である。
【図11】小・中型印刷機を用いて印刷、折り工程を行った際、印刷物に発生した静電気量を測定した結果である。
【図12】大型印刷機を用いて印刷・折り工程を行った際、加湿器の駆動状態による印刷物の状況を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用インク100重量部に、微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加したことを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項2】
前記印刷用インクが、オフセット印刷用インクであることを特徴とする請求項1に記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項3】
前記印刷用インクが、黒インクであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項4】
前記黒インクの顔料が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項3の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項5】
前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの粘度が、20〜80Pa・s(周波数特性10Hz、測定温度25℃)の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項6】
前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷・乾燥工程を経た印刷物に、0.0265μg/cm2〜5.3μg/cm2の前記微細炭素繊維が付着していることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項7】
前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷した印刷物の印刷部の電気抵抗が、1.0×104Ω〜5.0×1011Ωの範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項8】
前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項9】
前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の繊維状物質において、筒を構成するシートが多角形の軸直交断面を有し、該断面の最大径が15〜100nmであり、アスペクト比が105以下で、ラマン分光分析で514nmにて測定されるID/IGが0.2以下であることを特徴とする微細炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項10】
前記微細炭素繊維が、炭素繊維構造体に、該炭素繊維構造体を結合するための結合剤を添加してなる炭素繊維結合体であって、該炭素繊維構造体が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする炭素繊維結合体であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項11】
前記微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであり、また前記炭素繊維構造体は圧縮密度0.8g/cm3において測定した粉体抵抗値が0.02Ω・cm以下であることを特徴とする炭素繊維構造体であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項12】
前記微細炭素繊維含有インクが、撹拌及び均一化処理し、均一分散させたことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れかに記載の微細炭素繊維含有インクの印刷物が、シート状の樹脂製フィルム又は紙或いは金属であることを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項14】
請求項1〜請求項13の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを使用する印刷装置において、印刷・乾燥工程後の加湿工程で、静電気除去剤を使用しないことを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
印刷用インク100重量部に、微細炭素繊維を0.01重量部〜2.0重量部の割合で添加したことを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項2】
前記印刷用インクが、オフセット印刷用インクであることを特徴とする請求項1に記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項3】
前記印刷用インクが、黒インクであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項4】
前記黒インクの顔料が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項3の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項5】
前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクの粘度が、20〜80Pa・s(周波数特性10Hz、測定温度25℃)の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項6】
前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷・乾燥工程を経た印刷物に、0.0265μg/cm2〜5.3μg/cm2の前記微細炭素繊維が付着していることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項7】
前記静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを用いて、印刷した印刷物の印刷部の電気抵抗が、1.0×104Ω〜5.0×1011Ωの範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項8】
前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項9】
前記微細炭素繊維が、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造の繊維状物質において、筒を構成するシートが多角形の軸直交断面を有し、該断面の最大径が15〜100nmであり、アスペクト比が105以下で、ラマン分光分析で514nmにて測定されるID/IGが0.2以下であることを特徴とする微細炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項10】
前記微細炭素繊維が、炭素繊維構造体に、該炭素繊維構造体を結合するための結合剤を添加してなる炭素繊維結合体であって、該炭素繊維構造体が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする炭素繊維結合体であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項11】
前記微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、当該粒状部は、その粒径が前記炭素繊維の外径よりも大きく、かつ、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させる成長過程において形成されてなるものであり、また前記炭素繊維構造体は圧縮密度0.8g/cm3において測定した粉体抵抗値が0.02Ω・cm以下であることを特徴とする炭素繊維構造体であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項12】
前記微細炭素繊維含有インクが、撹拌及び均一化処理し、均一分散させたことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れかに記載の微細炭素繊維含有インクの印刷物が、シート状の樹脂製フィルム又は紙或いは金属であることを特徴とする静電気抑制用微細炭素繊維含有インク。
【請求項14】
請求項1〜請求項13の何れかに記載の静電気抑制用微細炭素繊維含有インクを使用する印刷装置において、印刷・乾燥工程後の加湿工程で、静電気除去剤を使用しないことを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−269959(P2009−269959A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119909(P2008−119909)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(301021212)株式会社サンライズカンパニー (2)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)
【出願人】(306030116)ナノカーボンテクノロジーズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(301021212)株式会社サンライズカンパニー (2)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)
【出願人】(306030116)ナノカーボンテクノロジーズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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