説明

野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料及びその製造法

【課題】
醤油及び5’−ヌクレオチドを添加した野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の原料配合が全く同一であるであるにも拘らず、該野菜粒子(例えばおろし大根)及び/又は果汁(例えば柑橘果汁)の風味を確実に改善した野菜粒子含有液状調味料を得る。
【解決手段】
生醤油を野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部と混和したものを、品温80〜90℃で加熱した後、生野菜粒子及び/又は果汁、5’−ヌクレオチド、及び該調味料に使用される原料の残部と混和し、次いで品温60〜75℃で加熱して、課題の野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、醤油と、5’−ヌクレオチドと、野菜粒子及び/又は果汁とを添加含有する野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の製造法の改良に関し、該調味料の原料配合を全く変えることなく、野菜粒子(例えばおろしにんにくやおろし大根)及び/又は果汁の風味を確実に改善できる方法に関する。すなわち、原料配合が全く同一であるであるにも拘らず、ぽん酢では、柑橘果汁の生風味感が強く感じ、おろしだれでは、大根おろしの味とサッパリした味が強く感じ、また焼肉のたれでは、たまねぎなどの香味野菜の生風味感が強く感じる、野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油及び5’−ヌクレオチドを添加した野菜及び/又は果汁含有液状調味料の製造法が知られている(非特許文献1参照)。そして、該5’−ヌクレオチドは、該液状調味料に旨味を与えるものとして添加されるが、熱には安定であるものの、酵素ホスファターゼによって分解され、旨味がなくなる欠点を有する。
一方、常法通り圧搾した生醤油には、微生物に由来し醤油醸造に関与した各種酵素が残存し、酵素ホスファターゼも残存している。そのため、上記5’−ヌクレオチドを添加した調味料の製造法において使用する醤油は、酵素ホスファターゼの活性を有しない熱処理(たとえば、プレートヒーターで105℃、60秒処理)された火入れ醤油が専ら用いられている。
したがって、従来醤油及び5’−ヌクレオチドを添加した野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の製造業界において、生醤油を用いることは常識外のことであり、現実には実施されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】たれ類−その製造と利用−、太田静行、他著、株式会社光琳、平成4年4月10日発行、第167〜213頁参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、醤油及び5’−ヌクレオチドを使用する野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の製造法において、喫食時における5‘−ヌクレオチドの旨味とともに該野菜粒子(例えばおろしにんにくやおろし大根)及び/又は果汁の風味を確実に改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、生醤油を、従来公知の野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部(但し5‘−ヌクレオチドは除く)と混和し、品温80〜90℃で加熱した後、これに生野菜粒子及び/又は果汁と、5’−ヌクレオチドと該調味料に使用される原料の残部とを混和し、ついで品温60〜75℃で加熱するときは、従来公知の調味料に使用される原料配合が全く同一であるであるにも拘らず、5‘−ヌクレオチドの旨味及び野菜粒子(例えばおろし大根)及び/又は果汁の風味を確実に改善できることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示すごとき野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の製造法である。
(1)生醤油を、野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部(但し5‘−ヌクレオチドを除く)と混和したものを、品温80〜90℃で加熱した後、これに生野菜粒子及び/又は果汁と、5’−ヌクレオチドと、該調味料に使用される原料の残部とを混和し、次いで品温60〜75℃で加熱することを特徴とする野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料。
(2)生醤油を、野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部(但し5‘−ヌクレオチドを除く)と混和したものを、品温80〜90℃で加熱した後、これに生野菜粒子及び/又は果汁と、5’−ヌクレオチドと、該調味料に使用される原料の残部とを混和し、次いで品温60〜75℃で加熱することを特徴とする野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の製造法。
(3)5’−ヌクレオチドが、5’−ヌクレオチドを含有する酵母エキス、鰹節エキス、椎茸エキスから選ばれる1種又は2種を含有する前記(2)に記載の製造法。
(4)野菜粒子が、乾燥香味野菜粒子である前記(2)に記載の製造法。
(5)乾燥香味野菜粒子が粒径1〜5mmの乾燥たまねぎ粒子である前記(4)に記載の製造法。
(6)野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料が、ぽん酢、おろしだれ、又は焼肉のたれである前記(1)に記載の調味料。
(7)野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料が、ぽん酢、おろしだれ、又は焼肉のたれである前記(2)に記載の調味料の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、醤油及び5’−ヌクレオチドを使用する従来公知の野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料において、原料配合が全く同一であるにも拘らず、喫食時における5‘−ヌクレオチドの旨味及び野菜粒子(例えばおろし大根)及び/又は果汁の風味を確実に改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料としては、生醤油、5’−ヌクレオチド、及び野菜粒子及び/又は果汁の他、以下の一種又は二種以上が挙げられる。
(1)砂糖、乳糖、グラニュー糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、液糖、水飴、デキストリン、異性化糖などの糖類
(2)ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類
(3)清酒、ワイン、みりん、酒精含有甘味調味料(みりん風調味料)などの酒類
(4)サッカリン、グリチルリチン、ステビオサイド、アスパラテームなどの甘味料類
(5)ガーリック、オニオン、オレガノ、タイム、セージ、ジンジャー、レッドペパー、オールスパイス、クローブ、ナツメグ、カルダモンなどの香辛料類
(6)味噌、豆板醤などの味噌類
(7)魚醤、小麦グルテン分解物などのうまみ調味料
(8)酸味調味料
(9)食酢、醸造酢
(10)乳酸、クエン酸などの有機酸
(11)発酵調味料
(12)海草(コンブ)、茸(シイタケ)の抽出だし汁
(13)鰹節、鯖節などの魚節類、魚介類、野菜類のエキス、ビーフエキスなどのエキス類、蛋白加水分解物
(14)グルタミン酸ナトリウム、グリシンなどのアミノ酸
(15)香料
(16)着色料
【0009】
生醤油としては、通常の濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、又は白醤油など各種醤油の醸造法にしたがって得られた熟成諸味を圧搾し得られた清澄な液体で、微生物に由来し醤油醸造に関与した各種酵素が残存したもの、すなわち酵素ホスファターゼも残存しているものが挙げられる。該生醤油は、必要によりフィルター等で酵母等の微生物を除いたものを使用することができる。
【0010】
野菜粒子は、大根、たまねぎ、長ネギ、ニンジン、生姜、ニンニク、ピーマン、トマト、コーン、竹の子、シソ、パセリ、セロリ、ニラ、ミツバなどを、フードカッターやダイサーなどで1.0〜7.0cm程度までカットしたもの、あるいはこれらを更に高速粉砕機などで、網目が0.5〜5.0mmのスクリーンを用いて粉砕した粒径0.1〜3.0mmのもの、またはすりおろし機などで得られたおろしなどが挙げられる。
【0011】
野菜粒子としては、果実を、上述の野菜と同様に粒子状にカットあるいはすりおろし機で粒子状に加工した果実粒子を用いてもよい。果実としてはリンゴ、ナシ、キウイ、パイナップル、ユズ、スダチ、カボス、レモンなどが挙げられる。本発明で野菜粒子とは、上記野菜粒子又は果実粒子を意味する。
【0012】
本発明の生野菜、果実は、加工食品原料として市販されている冷凍の野菜、果実を含むものである。
【0013】
果汁としては、上記果実の搾汁液が挙げられ、このうちレモン、柚子、酢橘、カボスなどの柑橘果汁が好ましい。
【0014】
5’−ヌクレオチドとしては、グアニル酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、リボヌクレオタイドナトリウム、又はこれを含有する酵母エキス、鰹節エキス、椎茸エキス等が挙げられる。
【0015】
本発明を実施するには、生醤油を、先ず、野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部(但し、5‘−ヌクレオチドを除く)と混和したものを、品温80〜90℃で、達温〜30分加熱し、そのまま次の工程に移行する。また、この工程は、生醤油に乾燥野菜、糖類、酸味料などを混和した後、品温80〜90℃で、達温〜30分加熱処理を行い、次の工程に移行してもよい。
この加熱処理によって、生醤油に含まれる微生物に由来し醤油醸造に関与した各種酵素、及び酵素ホスファターゼを失活させることができるが、加熱処理の条件によっては、醤油特有の香気や風味成分の生成を促進することから、生野菜の新鮮な風味を弱める原因となる。しかしながら、品温を80〜90℃とすることによって、生野菜及び/又は果汁の新鮮な風味を強く維持することができる。
【0016】
品温80〜90℃で、達温〜30分加熱することは、重要であって、品温が90℃よりも高すぎるときは(例えば、115℃、5秒間加熱するときは、表2の結果からも判るように)、醤油特有の香りなどが引き立つために、野菜粒子(例えばおろし大根)及び/又は果汁の風味を顕著に改善できない。反対に80℃より低すぎるときは酵素ホスファターゼの失活が十分に行われなくなり、5’−ヌクレオチドが分解され、風味の改善効果が低減するので好ましくない。
上記加熱は、(80℃、10〜30分)、(85℃、達温〜5分)、(90℃、達温)が好ましい。
【0017】
上記したように生醤油に対して野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用原料の一部を混和し、品温80〜90℃で達温〜30分加熱する際に、5‘−ヌクレオチドは添加しないことは重要である。すなわち、5’−ヌクレオチドを添加した場合は、該5’−ヌクレオチドは、生醤油に含まれるホスファターゼによって、速やかに分解され、呈味性がなくなる欠点を招来する。
【0018】
生醤油に添加される原料の一部としては、加熱によって品質が損なわれない原料が好ましく、例えば乾燥した粒状野菜、又は糖類が好ましい。乾燥粒状野菜を加熱前の生醤油に添加することは重要であって、生醤油と混和後加熱されると、乾燥粒状野菜は、生醤油を吸水膨潤し、具材感が向上し、また乾燥野菜からの味が調味料全体に滲出して、該調味料の風味が向上するので好ましい。また、糖類は醤油と反応し、調味料全体のコクが深まるので好ましい。なお、生醤油を加熱した後に乾燥粒状野菜を添加した場合は、加熱不十分で十分に給水膨潤しないために食感が悪くなるので好ましくない。
【0019】
品温80〜90℃で、達温〜30分加熱した後は、これに生野菜粒子及び/又は果汁と、5’−ヌクレオチドと野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用予定原料の残部とを混合する。
【0020】
生野菜粒子は、加熱によって組織が軟化し易い欠点を有する。また果汁は、風味が消失し易い欠点を有する。したがって、前述したように品温80〜90℃で、達温〜30分加熱した後で添加する。また5’−ヌクレオチドは、ホスファターゼによって分解消失する危険性があるので、品温80〜90℃で、達温〜30分加熱した後に使用する。
【0021】
本発明は、ぽん酢、おろしだれ、焼肉のたれなど従来公知の調味料のレシピー(原料配合)をそのまま変えることなく、野菜粒子(例えばおろしにんにくやおろし大根)及び/又は果汁の風味を確実に改善できる。
【0022】
本発明では、生醤油を野菜粒子及び/又は果汁含有液体調味料に使用する原料の一部(但し、5‘−ヌクレオチドは除く)と混和したものを、品温80〜90℃で加熱した後、生野菜粒子及び/又は果汁、5’−ヌクレオチド及び該野菜粒子含有液状調味料に使用する原料の残部と混和した後、加熱殺菌を行う。
加熱は、従来公知の手段が採用可能で、加熱媒体が通流するジャケット付き調合タンク、チューブヒーター、プレートヒーター等の間接加熱装置により、品温60〜75℃、5〜20分間、加熱し製品とする。
【0023】
本発明において5’−ヌクレオチド及び野菜粒子及び/又は果汁を添加後、加熱の際に品温を60〜75℃、5〜30分加熱処理することは重要であって、表3に示すように、75℃を超える温度では野菜粒子の組織が軟化し、野菜が煮えたような風味となるため好ましくない。また果汁の風味も消失する。反対に60℃未満では原料由来の微生物を殺菌することができないため保存安定性が悪くなるので好ましくない。加熱は、(60℃で20〜30分)、(65℃で10〜20分)、(70℃で、達温〜10分)、(75℃で達温〜5分)が好ましい。
【0024】
本発明で得られる野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料としては、ぽん酢、おろしだれ又は焼肉のたれ等が挙げられる。
【0025】
本発明によれば、従来の火入れ醤油を利用した野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料と対比して、原料配合が全く同一であるにも拘らず使用した野菜(例えばおろしにんにくやおろし大根)及び/又は果汁の風味を明確に改善し、しかもそれを長期保持できる野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料を得ることができる。
【実施例1】
【0026】
生醤油(醤油醪を圧搾して得た各種酵素が残存している醤油)(サンプル)の製造例
蒸煮変性した脱脂大豆と炒熬割砕した小麦とを等量混合し、これに種麹を接種し、42時間通風製麹して醤油麹を得、これを高濃度食塩水に仕込み、25〜30℃で、適宜撹拌しながら、180日間常法通りの諸味管理を行ない、発酵熟成させた後、
圧搾濾過して食塩約18%(w/v)、水溶性総窒素(T.N.)約1.7%(w/v)の生醤油(醤油醪を圧搾して得た各種酵素が残存している醤油)(実施例1〜6で使用する生醤油)を得た。
【0027】
火入醤油(サンプル)の製造例
前記生醤油を、プレートヒーターにて105℃、60秒処理した後、30℃まで冷却して、その後4日間室温で静置して、オリ引きし、その後清澄部分を分離して、対照の火入醤油(実施例3〜6で使用する火入醤油)を得た。
【0028】
(本発明の野菜おろし含有液状調味料の製造法)
下記表1の配合割合にて、生醤油と乾燥たまねぎ粒子を混合したものを品温85℃達温加熱後室温まで冷却し、これに白ねぎ、大根おろし、生姜おろし、イノシン酸ナトリウム及び水を混合溶解し、次いで70℃に達温加熱後、その温度でペットボトルに詰め本発明の野菜おろし含有液状調味料を得た。
【0029】
【表1】

【0030】
(比較例の野菜おろし含有液状調味料)
一方また、生醤油と乾燥たまねぎ粒子を混合したものを品温115℃、5秒加熱後室温まで冷却し、これに白ねぎ、大根おろし、生姜おろし、イノシン酸ナトリウム及び水を混合溶解し、次いで70℃に達温加熱後、その温度でペットボトルに詰め比較例の野菜おろし含有液状調味料を得た。
【0031】
官能試験
上記で得た2種類の野菜おろし含有液状調味料(サンプル)を試食して、サンプル間の白ねぎの味の強さについて、一対比較法(7点尺度)にて官能試験を実施した。すなわち、2つのサンプルについて、一方のサンプルを他方のサンプルと比較し、同程度を0、やや強いを1、強いを2、かなり強いを3、反対にやや弱いを−1、弱いを−2、かなり弱いを−3と評価した。また表中の評点は、それぞれ識別能力を有するパネル18名または6名の平均値を示す。そして検定の欄における記号*:危険率5%以下で有意差有り、**:危険率1%以下で有意差有りを意味する(実施例3〜5の官能試験もこの方法による)。
結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2の結果から、生醤油と乾燥たまねぎ粒子を95℃を超える温度(115℃、5秒)で加熱した場合は、生醤油と乾燥たまねぎ粒を85℃達温加熱後、使用した場合に比べて、白ねぎの味を引き立たせる効果が、弱いことが判る。
【実施例2】
【0034】
5’−ヌクレオチド及び野菜粒子を添加後の加熱温度を変化させた場合の官能試験
表1の配合割合にて、生醤油と乾燥たまねぎ粒子を混合したものを品温85℃達温加熱後室温まで冷却し、これに白ねぎ、大根おろし、生姜おろし、イノシン酸ナトリウム及び水を混合溶解し、次いで60〜75℃に達温後10分間加熱処理した後、その温度でペットボトルに詰めたサンプルについて、生野菜の新鮮風味における官能試験を実施したところ、表3に示す結果を得た。
【0035】
【表3】

【0036】
本発明において5’−ヌクレオチド及び野菜粒子及び/又は果汁を添加後、加熱の際に品温を60〜75℃で加熱処理することは重要であって、表3に示すように、75℃を超える温度では野菜粒子の組織が軟化し、野菜が煮えたような風味となるため好ましくないことが判る。また、50℃未満では、微生物学的安定性がなくなり、好ましくない。
【実施例3】
【0037】
(醤油中に残存する酵素ホスファターゼの影響確認試験)
下記表4の配合割合にて、生醤油と乾燥たまねぎ粒子を混合したものを、表5記載の条件にて加熱後室温まで冷却し、これに白ねぎ、大根おろし、生姜おろし、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム及び水を混合溶解し、次いで70℃達温加熱後、その温度でペットボトルに詰め野菜おろし含有液状調味料を得た。
【0038】
【表4】

【0039】
上記野菜おろし含有液状調味料を、調製直後及び30日経過後に、グアニル酸ナトリウムを分析した。また、白ねぎの新鮮な味の強さを評価した。結果を表5に示した。
【0040】
(グアニル酸ナトリウムの分析法)
各サンプルをNo.2のろ紙(東洋濾紙株式会社製)濾過したろ過液を0.45μmフィルター(東洋濾紙株式会社製)で不溶性固形物を除去した原液10μlをHPLC試料とした。
使用カラム:YMC Pack Polyamine II 4.6×250mm(株式会社ワイエムシイ製)
溶媒: リン酸カリウム:水:アセトトリルを2g:78ml:20mlの比で混合した溶液
流量:1.0ml/min
波長:254nm
【0041】
【表5】

白ねぎの新鮮な味の評価:強い場合は○、弱い場合は×
【0042】
表5の結果から、生醤油と乾燥たまねぎ粒子を混合したものの加熱が、80℃未満では、野菜おろし含有液状調味料の5’−ヌクレオチド(グアニル酸ナトリウム)の一部が大きく分解消失するのを防止できないが、80℃以上では、著しく防止できることが判る。また、白ねぎの新鮮な味は、90℃以下で感じることができる。
【実施例4】
【0043】
ぽん酢の製造例
【0044】
【表6】

【0045】
生醤油及びグルタミン酸ナトリウムを混和したものを、品温85℃で、1分加熱した後、室温まで冷却し、直ちに柚子果汁、5’−ヌクレオチド、砂糖、酵母エキス、醸造酢、食塩、及び水を混合溶解し、次いでこれを品温75℃で1分加熱し、そのままペットボトルに充填、密封し、40℃以下に急冷し、容器詰めぽん酢を得た。
【0046】
(対照のぽん酢の製造例)
比較のため、上記本発明の容器詰めぽん酢の製造法において生醤油に代えて、火入醤油を用いる以外は全く同様にして、対照の容器詰めぽん酢を得た。
【0047】
(官能試験)
このようにして得られた二種類のぽん酢について、官能試験を行った。
結果を表9に示す。
【実施例5】
【0048】
(おろしだれの製造例)
【0049】
【表7】

【0050】
生醤油及びグルタミン酸ナトリウムを混和したものを、品温90℃に達温加熱した後室温まで冷却し、これに、大根おろし、5’−ヌクレオチド(グアニル酸ナトリウム)、醸造酢、食塩、砂糖及び水を混合溶解し、次いでこれをチューブヒーターを用いて品温65℃で10分加熱し、その温度でペットボトルに充填、密封し、40℃以下に急冷し、本発明の容器詰めおろしだれ(野菜粒子含有液状調味料)を得た。
【0051】
(対照のおろしだれ)
比較のため、上記本発明のおろしだれの製造法において生醤油に代えて、火入醤油を用いる以外は全く同様にして、対照の容器詰めおろしだれを得た。
【0052】
(官能試験)
このようにして得られた二種類のおろしだれについて、官能試験を行った。
結果を表10に示す。
【実施例6】
【0053】
(焼肉のたれの製造例)
【0054】
【表8】

【0055】
生醤油、香辛料、及びぶどう糖果糖液糖を混和したものを、品温80℃で達温加熱した後室温まで冷却し、これに、香味野菜粒子(にんにくおろし、刻みネギ)、5’−ヌクレオチド(グアニル酸ナトリウム)、醸造酢、レモン果汁、砂糖、アミノ酸、及び水を混合溶解し、次いでこれを品温70℃で10分加熱し、その温度でペットボトルに充填、密封し、40℃以下に急冷し、本発明の焼肉のたれ(野菜粒子含有液状調味料)を得た。
【0056】
(対照の焼肉のたれの製造例)
比較のため、上記本発明の焼肉のたれの製造法において生醤油に代えて、火入醤油を用いる以外は全く同様にして、対照の焼肉のたれを得た。
【0057】
(官能試験)
このようにして得られた二種類の焼肉のたれについて、官能試験を行った。
結果を表11に示す。
【0058】
【表9】

【0059】
【表10】

【0060】
【表11】

【0061】
表9、10及び11の結果から、火入醤油を用いた場合に比べて、生醤油を用いると、ぽん酢では、柑橘果汁の味が有意に強く感じる。おろしだれでは、大根おろしの味とサッパリした味が有意に強く感じる。焼肉のたれでは、香味野菜の味が有意に強く感じることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生醤油を、野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部(但し5‘−ヌクレオチドを除く)と混和したものを、品温80〜90℃で加熱した後、これに生野菜粒子及び/又は果汁と、5’−ヌクレオチドと、該調味料に使用される原料の残部とを混和し、次いで品温60〜75℃で加熱することを特徴とする野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料。
【請求項2】
生醤油を、野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料に使用される原料の一部(但し5‘−ヌクレオチドを除く)と混和したものを、品温80〜90℃で加熱した後、これに生野菜粒子及び/又は果汁と、5’−ヌクレオチドと、該調味料に使用される原料の残部とを混和し、次いで品温60〜75℃で加熱することを特徴とする野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料の製造法。
【請求項3】
5’−ヌクレオチドが、5’−ヌクレオチドを含有する酵母エキス、鰹節エキス、椎茸エキスから選ばれる1種又は2種を含有する請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
野菜粒子が、乾燥香味野菜粒子である請求項2に記載の製造法。
【請求項5】
乾燥香味野菜粒子が粒径1〜5mmの乾燥たまねぎ粒子である請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料が、ぽん酢、おろしだれ、又は焼肉のたれである請求項1に記載の調味料。
【請求項7】
野菜粒子及び/又は果汁含有液状調味料が、ぽん酢、おろしだれ、又は焼肉のたれである請求項2に記載の調味料の製造法。

【公開番号】特開2013−99306(P2013−99306A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246036(P2011−246036)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】