説明

車両用ドアミラーの鏡体形成方法、および車両用ドアミラー

【課題】鏡体に文字を形成する場合に、反射膜が透過したり鮮明度の低下を伴うことがない形成方法の提供を図る。
【解決手段】ガラス板2の一面に所要の警告文字3を印刷した後、その一面の全体に反射膜4を蒸着またはスパッタリングして鏡体1を形成する。これにより、反射膜4が警告文字3の対応ヶ所で透過することはない。また、警告文字3は印刷によって鮮明度を低下させずに形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアミラーの鏡体形成方法、およびこの方法によって形成された鏡体を備えた車両用ドアミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアミラーにあっては、鏡体に警告文字等を設けることが求められる場合がある。
【0003】
鏡体に文字等を設ける方法としては、例えば、特許文献1に示されるレーザーエッチング法や、特許文献2に示されるショットブラスト法、等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−318148号公報
【特許文献2】特開平9−109025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示技術では、レーザーによって反射膜を削る関係上、文字等の対応ヶ所が透けて見えてしまうため、目隠し手段を付設する必要が生じる。
【0006】
また、特許文献2の開示技術では、マスキングの抜き開孔縁周りでショットブラストの加工ムラが生じ易く、文字等の鮮明度が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は反射膜が部分的に透過したり、鮮明度が低下したりすることなく文字を付設することができる車両用ドアミラーの鏡体形成方法、およびこの方法によって形成された鏡体を備えた車両用ドアミラーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ドアミラーの鏡体形成方法にあっては、ガラス板の一面に文字を印刷する工程と、前記文字を印刷したガラス板の一面の全体に反射膜を蒸着またはスパッタリングする工程と、を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の車両用ドアミラーにあっては、上述の形成方法によって得られた鏡体を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、ガラス板の一面に所要の文字を印刷した後、その一面の全体に反射膜を蒸着またはスパッタリングして鏡体を形成するため、レーザー法と異なり、文字の対応ヶ所が透けて見えることはない。従って、鏡体裏面の見栄え対策のための仕上げ加工が不要でコスト的に有利となる。
【0011】
また、文字はガラス板面に印刷するため、ショットブラスト法により文字を設けるものと異なり、鮮明度を高めることができることは勿論、印刷の彩色を反射膜上に浮き上がらせることも可能で意匠効果を高めることができる。
【0012】
また、本発明の車両用ドアミラーによれば、上述の方法によって得られた鏡体を備えているため、鏡体の形成コストを低減できてコストダウンに寄与できる。また、文字対応部分が透過していないため、その部分にも鏡体受け構造を設定可能となり、設計の自由度の拡大と、鏡体の振れ防止性能の向上とを期待できる。更に、文字の鮮明度を高められるため、警告表示等の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用ドアミラーにおける鏡体の一実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0015】
図1に示す実施形態の鏡体1は、ガラス板2を素材としており、その一面には所要の警告文字3を印刷してあると共に、この警告文字3を印刷した一面の全体に反射膜4を蒸着またはスパッタリングして形成している。
【0016】
警告文字3は、反射膜4の蒸着で印刷ボケしない印刷手段で構成され、例えば、シルク印刷によって形成することができる。
【0017】
反射膜4は、通常、鏡面形成に多用されている汎用のクロム蒸着またはクロムスパッタリング手段によって形成することができる。この反射膜4は、ガラス板2の一面に警告文字3を印刷した後、印刷状態が安定した段階で印刷した警告文字3の上からその一面の全面に蒸着またはスパッタリングして形成される。
【0018】
このような鏡体1の形成方法によれば、前述のレーザーエッチング法とは異なり警告文字3の対応ヶ所が透けて見えることはない。従って、鏡体1の裏面(反射膜4の形成側)の見栄え対策のための仕上げ加工が不要でコスト的に有利となる。
【0019】
また、警告文字3はガラス板2の板面に、例えばシルク印刷によって形成するため、反射膜4の蒸着またはスパッタリングによって印刷ボケすることがないことと、前述のショットブラスト法とは異なり印刷文字周辺に加工ムラが生じることがないので、鮮明度を高めることができる。
【0020】
しかも、警告文字3の印刷彩色を反射膜4上に浮き上がらせて現出することも可能で、意匠効果を高めることができる。
【0021】
そして、このようにして形成された鏡体1を用いて車両用ドアミラーを構成することにより、上述のように鏡体1の形成コストを低減できるためにコストダウンに寄与することができる。
【0022】
また、警告文字3に対応した部分で反射膜4が透過していないため、その部分にも鏡体受け構造(支持構造)の設定が可能となる。これにより、鏡体4の取付構造の設計の自由度を高められると共に、鏡体4の振れ防止性能を高められて品質を向上することができる。
【0023】
そして、上述のように鏡体4自体の警告文字3の鮮明度が高いことと、鏡体4の振れ防止性能を高められることによって、警告文字3の視認性を高めることができる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、警告文字3の印刷手段、反射膜4の蒸着またはスパッタリング材料は、鏡体4の仕様によって種々選択して実施可能である。
【0025】
また、前記実施形態では、鏡体1に車両用ドアミラーに要求される警告文字3を設ける例を示したが、場合によって各種の模様を形成する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…鏡体
2…ガラス板
3…警告文字(文字)
4…反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の一面に文字を印刷する工程と、
前記文字を印刷したガラス板の一面の全体に反射膜を蒸着またはスパッタリングする工程と、を含むことを特徴とする車両用ドアミラーの鏡体形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の形成方法によって得られた鏡体を備えたことを特徴とする車両用ドアミラー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−220502(P2012−220502A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82374(P2011−82374)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】