説明

表示ユニット付き電子機器

【課題】簡単な構成で、その水平姿勢に向かう表示ユニットの伏動方向には、表示ユニットに対する十分な保持力を発揮する表示ユニット付き電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器としての電話機2は、その上面パネル10に上下方向に回動可能に支持された表示ユニット8と、この表示ユニット8を保持する保持装置とを備え、この保持装置は、上面パネル10の内面に設けられ、表示ユニット8の支持脚44を三方から押圧する押し付け面を有した弾性変形可能なU字形の角度キーパ68と、この角度キーパ68の上面に開口して形成された凹溝78とを有し、この凹溝78は角度キーパ68を押し付け面を有した壁部分と残りの本体部分とに壁部分の基部を残して分離している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ユニットを有する電話機等の電子機器に関し、より詳しくは、表示ユニットの角度を無段階に調整できる電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機等の電子機器の中には、その前面に液晶表示等の表示パネルを含む表示ユニットを備えたものがあり、通常、表示パネルは上方を向いた水平姿勢にあるが、表示パネルに表示された情報が見易くなるように表示ユニットの姿勢を水平姿勢から上方に向けて起こした傾斜姿勢に変更可能な機能を有する電子機器も知られている(例えば、特許文献1等)。
この特許文献1の電子機器は、機器本体に回動可能に取り付けられた表示ユニットと、表示ユニットを所定の傾斜角度で保持可能とした角度調整装置とを備えている。この角度調整装置は、表示ユニットの底面から下方に延びる支持脚としてリブと、機器本体に設けられ、前記リブの所定位置にて前記リブに係合支持可能なスライド部材とを含んでいる。詳しくは、前記リブには、複数の凸部が上下方向に間隔を存して設けられており、前記スライド部材が前記リブの所定の凸部と係合することにより、表示ユニットは、機器本体に対して所定の傾斜角度に保持される。
【0003】
ところで、このような角度調整装置は、部品点数が多いため、電子機器の製造効率の低下及び製造コストの増加を招く。また、この角度調整装置では、表示ユニットの傾斜角度を段階的に調整できるに過ぎず、表示ユニットの傾斜角度を任意、つまり、無段階に調整することができない。
ここで、表示ユニットの傾斜角度を無段階で調整可能とした電子機器の1つの態様として、例えば、特許文献2に開示された電子機器が知られている。この電子機器は、筐体に回動自在に軸支された表示ユニットを備え、この表示ユニットの底面には円弧状のリブが二重にして一体に形成されている一方、筐体側にはリブ間に圧入されるゴム材製の制動片が設けられている。表示ユニットは、リブと制動片との接触により生じる摩擦力、即ち、保持力でもって任意の傾斜角度で保持されている。このような電子機器の場合、使用者は、前記保持力に抗して表示ユニットを起伏させることにより、表示ユニットを任意の傾斜角度に調整することができる。
【0004】
ここで、表示ユニットの起伏操作の操作性は、前記保持力の強さの大小による。つまり、保持力が強いほど起伏操作はし難くなり、保持力が弱いほど起伏操作は容易になる。なお、特許文献2の電子機器の場合、表示ユニットの起伏の両方にてその保持力の強さは一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−176197号公報
【特許文献2】特開2000−124620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、この種の電子機器は、その全体の小型化が進む一方で、より多くの情報を表示したり、また、表示された情報をより見易くしたりするために、表示ユニットは大型化する傾向にある。このため、表示ユニット自体の自重が増加し、この影響で、表示ユニットは水平姿勢に向けて倒れ易くなっている。よって、表示ユニットの角度を安定して維持するためには、表示ユニットの保持力の強さを増加させる必要がある。
【0007】
また、表示ユニットの高機能化に伴い、表示ユニット自体に操作ボタンが取り付けられていたり、また、表示パネルに代えてタッチパネルを備えたタイプの電子機器もまた開発されている。このような電子機器の場合、操作ボタンやタッチパネルが押されると、表示パネルを倒す方向に力が加わるので、この点でも、保持力の強さをより増加することが望まれる。
しかしながら、以上のように保持力を強くすると、表示ユニットは特に、表示ユニットを引き起こす向きの操作がし難くなるといった不具合が生じる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な機構で、傾斜姿勢から水平姿勢に伏せる方向の表示ユニットの姿勢変更に対しては十分な保持力を発揮する一方、水平姿勢から傾斜姿勢への表示ユニットの姿勢変更に対しては保持力を弱くし、表示ユニットを小さい力で簡単に引き起こすことができる表示ユニット付き電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の表示ユニット付き電子機器は、電子機器の筐体の上面に表示ユニットを備えた表示ユニット付き電子機器において、前記筐体に対して前記表示ユニットを水平姿勢と最大傾斜姿勢との間にて回動自在に支持する支持手段と、前記表示ユニットを任意の傾斜姿勢にて保持する保持手段とを備え、前記保持手段は、前記表示ユニットの回動を許容しつつ前記筐体から前記表示ユニットに亘って延びる支持脚と、前記支持脚に対して相対的に摺接可能に押し付けられ且つ前記支持脚を介して前記表示ユニットの保持力を発生する弾性部材を備えた保持力発生装置とを含み、前記弾性部材は、前記表示ユニットが引き起こし方向に回動される際には前記保持力を減少させるべく弾性変形し、これに対し、前記表示ユニットが前記水平姿勢に向けて伏動される際には前記保持力を増大させるべく弾性変形することを特徴とする(請求項1)。
【0010】
好ましくは、前記保持力発生装置は、前記弾性部材として、ゴム素材からなり且つ前記支持脚に対する押し付け面を有する角度キーパと、前記角度キーパに形成され、前記角度キーパを前記押し付け面を有する壁部分と残りの本体部分とに前記壁部分の基部を残して分離する溝とを含み、前記溝は、前記表示ユニットの伏動方向と対向する方向に開口している構成とする(請求項2)。
【0011】
より好ましくは、前記保持力発生装置は、少なくとも前記壁部分を除いて前記角度キーパを拘束する枠部材を更に含む構成とする(請求項3)。
【0012】
具体的には、前記支持脚は扇形状をなし、外周に前記表示ユニットの回動中心と同心の一定幅を有した円弧面と、前記円弧面の両側縁から延びる一対の側面とを含み、前記角度キーパは、前記支持脚の前記円弧面及び前記一対の側面を三方から囲む略U字形状をなし、前記円弧面及び前記側面の少なくとも1つに対向する面に前記押し付け面を有する、複数の押圧パッドを有する構成とする(請求項4)。
【0013】
ここで、好ましくは、前記押し付け面は、前記溝の深さ方向に延び且つ前記角度キーパの周方向に並ぶ複数の押圧パッドを有する構成とする(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表示ユニットを有する電子機器において、表示ユニットを無段階で任意の角度位置に保持することができ、しかも、表示ユニットを引き起こすときには、比較的小さい力で表示ユニットの移動ができ、表示ユニットを伏せるときには、十分な保持力を発揮できる。このため、表示ユニットが大型化しても、自重で倒れることは防止され、また、表示ユニットに設けられた操作ボタン等の操作を行っても表示ユニットが倒れず、所定角度を保てるので、ボタン操作に支障を来すことはない。
【0015】
また、本発明においては、一方向には比較的大きな押圧力を発揮し、他方向には比較的小さい押圧力を発揮する角度キーパは、一体成形可能なゴム製であるので、製造が容易であり製造コスト削減に寄与する。しかも、本発明は、表示ユニットの無段階角度調整及び所定角度での十分な保持力の確保といった効果を少ない部品点数で実現しているので、その工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る表示ユニット付き電話機を示す斜視図である。
【図2】図1の表示ユニットを背面側からみた斜視図である。
【図3】図1の表示ユニットの背面図である。
【図4】図2中のIV矢視図である。
【図5】図1の電話機における一部パーツを分解して示す斜視図である。
【図6】図5の角度キーパを拡大して示す斜視図である。
【図7】図6中のVII−VII線断面図である。
【図8】図6中のVIII−VIII線断面図である。
【図9】電話機の上面パネルの内面を一部省略する一方、その一部の円P内を拡大して示す斜視図である。
【図10】図1の電話機の概略的な縦断面図である。
【図11】図10中の円Q内を拡大して示し、表示ユニットを矢印A方向へ移動させた際の角度キーパのヘッド壁側の押圧パッドの働きを説明するための図である。
【図12】図10中の円Q内を拡大して示し、表示ユニットを矢印B方向へ移動させた際の角度キーパのヘッド壁側の押圧パッドの働きを説明するための図である。
【図13】図10の矢印A方向に対応したC方向に表示ユニットを引き起こした際の角度キーパのサイド壁側の押圧パッドの働きを説明するための図である。
【図14】図10の矢印B方向に対応したD方向に表示ユニットを伏動させた際の角度キーパのサイド壁側の押圧パッドの働きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る表示ユニット付き電子機器の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態である表示ユニット付き電話機2を示す。
【0018】
この電話機2は機器本体としての筐体4を備え、この筐体4にはその上面左側部に送受話器6が持ち上げ可能に載置されている一方、その上面上部に表示ユニット8が配置されている。
筐体4はプラスチック材料から形成され、その上面を形成する上面パネル10と、その底面部を形成するボトムケース12とを備えている。なお、筐体4内には送受話器6以外の電話機能部品(図示しない)が収容されている。
【0019】
ここで、上面パネル10には、表示ユニット8の手前側の領域が矩形の操作エリア20として確保され、この操作エリア20にはダイヤルキー14、局線ボタン16、機能ボタン18等が配置されている。そして、上面パネル10には操作エリア20の左側が送受話器6の受け座エリア21として形成され、この受け座エリア21は、送受話器6の受話部及び送話部を受ける一対の凹部24,24に加えてこれら凹部24間に円形のスピーカグリル26を有し、このスピーカグリル26はマトリックス状に分布された多数の孔からなる。なお、筐体4内にはスピーカグリル26の下方にスピーカが配置されている。
【0020】
表示ユニット8は、扁平な箱形状をなすユニット本体28と、図1でみてユニット本体28の下縁に設けられた連結部30とを有する。この連結部30は円柱形状をなし、ユニット本体28の下縁両端を除き、その下縁に沿ってユニット本体28の幅方向に延びている。後述するようにユニット本体28が連結部30を介して筐体4に回動自在に取り付けられたとき、連結部30の中心軸線はユニット本体8の回動中心軸を規定する。
【0021】
ユニット本体28は、互いに填め合わされたフロントケース34及びリアケース36からなり、図1から明らかなように、フロントケース34にはその中央に矩形の液晶表示器38が配設され、そして、この液晶表示器38の左右に操作ボタン40が3個ずつ設けられている。
【0022】
図2から明らかなように、前記連結部30はフロントケース34の下縁に設けられる一方、リアケース36の対応する下縁には膨出部42が設けられている。この膨出部42は、連結部30に隣接し且つ連結部30に沿って延びている。膨出部42は、リアケース36の背面側に突出するような円弧形状の背面を有し、この背面の曲率中心は、連結部30の中心軸線上に位置付けられている。
【0023】
更に、膨出部42の中央には、膨出部42からリアケース36の背面に至る支持脚44が設けられ、この支持脚44は、リアケース36及び膨出部42の背面側から突出している。この支持脚44は、リアケース36の側方からみて略扇形状をなしている。詳しくは、支持脚44の背面46は、リアケース36及び膨出部42のそれぞれに隣接する部位を除いて円弧面に形成され、一定の幅を有している。なお、背面46における円弧面の曲率中心もまた連結部30の中心軸線上に位置付けられている。
【0024】
また、図3及び図4に示すように、支持脚44はその背面46及びリアケース36の背面50に向けて僅かに先細状をなしている。即ち、支持脚44の両側面は背面46に向けて互いに近接するように傾斜している一方、リアケース36の背面50に向けて互いに近接するように傾斜している。つまり、支持脚44は、背面46と、一対の傾斜側面48とから形成され、傾斜側面48は対応する側の背面46の側縁から延び、リアケース36の背面50及び膨出部42に至っている。
【0025】
また、図2乃至4から明らかなように、膨出部42の外周には、支持脚44を挟む両側に2個ずつの掛止爪52が設けられている。これら掛止爪52は、上面パネル10の対応するスロット66に対して抜き差し自在に係合し、ユニット本体28の最大傾斜角を決定するストッパの役割を果たす。
具体的には、ユニット本体28の最大傾斜角は掛止爪52が上面パネル10の内面に当接することで決定される。
【0026】
なお、ユニット本体28の傾斜角が最小であるとき、即ち、ユニット本体28が水平姿勢にあるときは、ユニット本体28の背面は上面パネル10に当接した状態にある。また、ユニット本体28内には、液晶表示器38を機能させる機能部品(図示せず)が収容されている。また、図2、図3中、参照符号54、56はフロント及びリアケース34,36を互いに分離可能に結合するためのねじ孔及びねじを示す。
【0027】
次に、上面パネル10について図5を参照して更に詳述する。
上面パネル10は、表示ユニット8、即ち、ユニット本体28のための一対の支持部58を一体に備えている。これら支持部58は操作エリア20の上端部両側にそれぞれ配置され、互いに対向した対向面をそれぞれ有する。各支持部58の対向面からは回動軸60が突設され、これら回動軸60は互いに同軸上に位置付けられている。一方、前述したユニット本体28の連結部30は、その両端に軸受穴32をそれぞれ有する。それ故、一対の支持部58間にて連結部30を挟み込むように配置し、この連結部30の軸受穴32に対応する側の支持部58の回動軸60をそれぞれ差し込ませることで、ユニット本体28は一対の支持部58に回動軸60を介して回動自在に支持されている(図1参照)。
【0028】
また、上面パネル10の上部には、半円筒状の凹部62が形成されている。この凹部62は一方の支持部58から他方の支持部58に亘って延び、その軸線は回動軸60の軸線よりも上面パネル10の上縁側にオフセットして位置付けられている。凹部62は、ユニット本体28の膨出部42を受入れ可能な大きさを有する。
【0029】
凹部62の中央には、凹部62を横断し且つ上面パネル10の上縁に向けて延びる出入り口64が設けられており、この出入り口64はユニット本体28の支持脚44を受入れ、ユニット本体28の回動に伴う支持脚44の突没を許容する大きさを有する。更に、凹部62には出入り口64の左右に前記したユニット本体28の掛止爪52の差込みを許容するスロット66が2個ずつ設けられている。
出入り口64は、支持脚44の横断面形状に合致するように上面パネル10の上縁に向けて先細りの略等脚台形をなしている。
【0030】
出入り口64には上面パネル10の裏面側から角度キーパ68が嵌め込まれている。この角度キーパ68は、ゴム素材、好ましくは、シリコーンゴムからなる。
角度キーパ68は略U字形状をなし、出入り口64の上底側の部位に嵌め込まれている。より詳しくは、図6に示すように、角度キーパ68は一対のサイド壁70及びこれらサイド壁70の基部を互いに連結するヘッド壁72を有する。一対のサイド壁70の間の間隔はサイド壁70の基端から先端に向かうに従い徐々に広がっている。
【0031】
そして、角度キーパ68の内面には、複数の押圧パッド76が一体に形成されており、これら押圧パッド76は、前述した支持脚44が出入り口64内に受入れられたとき、前述した支持脚44の突没を許容しつつ支持脚44の外面を押圧する。即ち、押圧パッド76は支持脚44の外面に対して相対的に摺接する部材である。
詳しくは、各押圧パッド76は角度キーパ68の厚み方向に延びる断面円弧状の突条であり、角度キーパ68の周方向に間隔を存して配置されている。それ故、角度キーパ68の内周面は、全体として凹凸形状となっている。
【0032】
上述した押圧パッド76は、支持脚44に対する角度キーパ68の接触面積、即ち、角度キーパ68から支持脚44に加えられる押圧力を決定する。本実施形態では、押圧パッド76は、各サイド壁70に3個、ヘッド壁72に2個存在する。なお、この押圧パッド76の形状や個数は任意に変更することができ、これにより、支持脚44に加える押圧力を調整することができる。
【0033】
更に、図7及び図8に示すように、角度キーパ68には凹溝78が備えられている。この凹溝78は、出入り口64から支持脚44が突出する側の角度キーパ68の上面92に形成され、角度キーパ68の内周面に沿って延びるとともに、その両サイド壁70の先端にて開口している。このような凹溝78は、角度キーパ68を、前述した押圧パッド76を有したパッド分離壁部79と、このパッド分離壁部79以外のキーパ本体とに部分的に分離し、パッド分離壁部79は角度キーパ68の下面側にてキーパ本体、即ち、対応する側のサイド壁70及びヘッド壁72に連なっている。
【0034】
上述した角度キーパ68は、前述したように出入り口64の上底側の部位、即ち、図9に示す装着スペース80に装着される。
詳しくは、図9中の拡大部分から明らかなように、装着スペース80は上面パネル10の内面側にて確保され、その外郭が出入り口64の上底部位を外側から囲む略U字形状の周壁82と、この周壁82の両端から出入り口64に向けて突出した一対の仕切り壁88とにより形成され、装着スペース80の外郭形状及びこの外郭形状に対応した出入り口64の部位の開口縁は互いに協働して角度キーパ68のU字形状にほぼ合致したU字形状を提供する。
【0035】
更に、装着スペース80はヘッド押さえ86を備えており、このヘッド押さえ86は出入り口64の上底側に位置した周壁82の部位84から出入り口64の上底に向けてせり出している。
【0036】
それ故、装着スペース80に角度キーパ68が装着されたとき、角度キーパ68はその上面92が上面パネル10の内面に接した状態で、出入り口64の上底側の部位を囲むようにして装着され、そして、そのヘッド壁72は上面パネル10とヘッド押さえ86との間に挟み込まれている。
【0037】
一方、装着スペース80に装着された角度キーパ68は上面パネル10とは反対側の下面が回路基板により支持されている。詳しくは、ここでの回路基板は図5中、参照符号96で示されており、この回路基板96は筐体4内に収納されている。回路基板96の外縁には出入り口64に対応した切欠98が形成されている。この切欠98は支持脚44の通過を許容する大きさを有し、回路基板96は切欠98における開口縁の近傍領域にて角度キーパ68の下面94を支持する。
この結果、角度キーパ68は、上面パネル10の内面90と回路基板96とにより上下から挟まれた状態にある。
【0038】
次に、上述した表示ユニット8(ユニット本体28)の起伏動作についてより詳しく説明する。
先ず、表示ユニット8の支持脚44の外面には角度キーパ68がその押圧パッド76を介して押し付けられた状態にあり、ここでの押し付けは押圧パッド76の弾性変形に伴う所定の押圧力、即ち、保持力を支持脚44に付与する。
【0039】
このような状態にて、使用者が表示ユニット8に手を掛け、表示ユニット8を前記保持力に抗して手前に引き付けるか、又は、奥側に押し倒すと、表示ユニット8はその回動軸線の回りに回動して起伏し、これにより、表示ユニット8の姿勢を所望の傾斜角度を存した傾斜姿勢又は水平姿勢に変更することができる。
【0040】
ここで、例えば、図10中の矢印A方向へ表示ユニット8が引き起こされる場合、図11を参照しながら、角度キーパ68の働きを以下に説明する。
図11は、支持脚44の円弧状の背面46に対する押圧パッド76の摺接状態を示し、ここでの押圧パッド76は、角度キーパ68におけるヘッド壁72に設けられているものである。
表示ユニット8がA方向へ移動する場合、支持脚44の背面46は図11中、矢印a方向(図11でみて上方)に移動し、ここでの移動は押圧パッド76を同じくa方向に引き摺る。
【0041】
角度キーパ68には前述したようにその上面に凹溝78が設けられているので、押圧パッド76の上方への引き摺りは、図11中の二点鎖線の状態から実線の状態で示すように凹溝78側へ押圧パッド76の上部を弾性変形させる。つまり、押圧パッド76の上部は支持脚44から逃げるように変形し、支持脚44の背面46に加えられる押圧パッド76の押圧力、即ち、支持脚44の保持力が低減される。この結果、表示ユニット8を引き起こす方向(A方向)へ動かす際、表示ユニット8に要求される引き起こし力は比較的小さい。
【0042】
一方、図10中の矢印B方向へ表示ユニット8を伏動させる場合の角度キーパ68の働きは図11と同様な部位を示した図12から明らかとなる。
この場合、表示ユニット8がB方向へ移動する場合、支持脚44の背面46は図12中の矢印b方向に移動し、この移動に伴い、押圧パッド76は下方へ引き摺られる。角度キーパ68におけるヘッド壁72の下部はその下面に開口するような凹溝を備えておらず、実質的に中実であり、しかも、押圧パッド76側の面を除き、上面パネル10の内面、装着スペース80の周壁82及びヘッド押さえ86により拘束された状態にあることから、押圧パッド76の下方への引き摺りは、二点鎖線の状態から実線の状態で示すように押圧パッド76の下部を膨出させるように弾性変形させ、ここでの弾性変形は押圧パッド76の下部をより強く支持脚44の背面46に押し付けることになる。
【0043】
この結果、押圧パッド76による支持脚44の保持力が増大し、B方向への表示ユニット8の移動、即ち、水平姿勢に向かう表示ユニット8の伏動には、前述の引き起こし力に比べて大きな押し倒し力が要求される。
【0044】
図13及び図14は、支持脚44の傾斜側面48に対する押圧パッド76の摺接状態を示し、ここでの押圧パッド76は角度キーパ68におけるサイド壁70に設けられているものである。
【0045】
ここで、図13に示すように、表示ユニット8を引き起こす方向へ移動すると、支持脚44は、矢印C方向へ移動する。この移動に伴い、押圧パッド76は上方へ引き摺られる。このとき、押圧パッド68の上部は前述の場合と同様に凹溝78側へ変形し、支持脚44の保持力が低減される。この結果、使用者は表示ユニット8を比較的小さな力で引き起こすことができる。
【0046】
一方、図14に示すように、表示ユニット8をその水平姿勢に向けて伏動させると、支持脚44は、矢印D方向へ移動する。この移動に伴い。押圧パッド76は前述の場合と同様に、下方へ引き摺られる。ここでも、角度キーパ68のサイド壁70はその押圧パッド76側の面を除き、上面パネル10の内面、装着スペース80の周壁82及び回路基板96により拘束されているから、押圧パッド76の下部は膨出するように弾性変形し、支持脚44の傾斜側面48に強く押し付けられる。この結果、支持脚44の保持力が増大され、表示ユニット8の伏動にはその引き起こし力に比べて大きな押し倒し力が要求される。
【0047】
以上のように、本発明における表示ユニット8の引き起しは、小さな力でなすことができるのに対し、表示ユニット8の伏動には引き起こし力に比べて大きな押し倒し力が要求される。このため、表示ユニット8が大形化し、その自重が重くなっても、表示ユニット8を所望の傾斜姿勢にて安定して保持することができる。また、表示ユニット8に付随する操作ボタン40やタッチパネルに対し、使用者が押込み又はタッチ操作を行っても、表示ユニット8の押し倒しに対する抵抗が大きいので、ここでの押込み又はタッチ操作により表示ユニット8が不所望にして押し倒されることなく、その操作が阻害されることはない。
また、上述した表示ユニット8の作用は、凹溝78を有するゴム製の角度キーパ68に凹溝78を形成するだけでもたらされることから、表示ユニット8の構成は簡単になり、その部品点数も少なくて済み、結果的に電話機の製造コストの削減に大きく寄与する。
【0048】
なお、本発明は上述の一実施形態に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、角度キーパ68の凹溝78はその溝形状に限られるものではないし、また、角度キーパ68の内周全域に亘って延びる必要もない。
更に、押圧パッド76は必要不可欠なものではなく、角度キーパ68に押圧パッド76を設けるにしても、押圧パッド76は少なくともサイド壁72及びヘッド壁70の一方にあればよい。
【符号の説明】
【0049】
2 電話機
4 筐体
6 送受話器
8 表示ユニット
10 上面パネル
12 ボトムケース
28 ユニット本体
30 連結部
40 操作ボタン
44 支持脚
46 背面
48 傾斜側面
50 背面
52 掛止爪
60 回動軸
62 凹部
64 出入り口
66 スロット
68 角度キーパ
70 サイド壁
72 ヘッド壁
76 押圧パッド
78 凹溝
80 装着スペース
86 ヘッド押さえ
96 回路基板
98 切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体の上面に表示ユニットを備えた表示ユニット付き電子機器において、
前記筐体に対して前記表示ユニットを水平姿勢と最大傾斜姿勢との間にて回動自在に支持する支持手段と、
前記表示ユニットを任意の傾斜姿勢にて保持する保持手段と
を備え、
前記保持手段は、
前記表示ユニットの回動を許容しつつ前記筐体から前記表示ユニットに亘って延びる支持脚と、
前記支持脚に対して相対的に摺接可能に押し付けられ且つ前記支持脚を介して前記表示ユニットの保持力を発生する弾性部材を備えた保持力発生装置と
を含み、
前記弾性部材は、前記表示ユニットが引き起こし方向に回動される際には前記保持力を減少させるべく弾性変形し、これに対し、前記表示ユニットが前記水平姿勢に向けて伏動される際には前記保持力を増大させるべく弾性変形することを特徴とする表示ユニット付き電子機器。
【請求項2】
前記保持力発生装置は、
前記弾性部材として、ゴム素材からなり且つ前記支持脚に対する押し付け面を有する角度キーパと、
前記角度キーパに形成され、前記角度キーパを前記押し付け面を有する壁部分と残りの本体部分とに前記壁部分の基部を残して分離する溝とを含み、
前記溝は、前記表示ユニットの伏動方向と対向する方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載の表示ユニット付き電子機器。
【請求項3】
前記保持力発生装置は、少なくとも前記壁部分を除いて前記角度キーパを拘束する枠部材を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の表示ユニット付き電子機器。
【請求項4】
前記支持脚は扇形状をなし、
外周に前記表示ユニットの回動中心と同心の一定幅を有した円弧面と、
前記円弧面の両側縁から延びる一対の側面と
を含み、
前記角度キーパは、
前記支持脚の前記円弧面及び前記一対の側面を三方から囲む略U字形状をなし、前記円弧面及び前記側面の少なくとも1つに対向する面に前記押し付け面を有する、複数の押圧パッドを有することを特徴とする請求項3に記載の表示ユニット付き電子機器。
【請求項5】
前記押し付け面は、前記溝の深さ方向に延び且つ前記角度キーパの周方向に並ぶ複数の押圧パッドを有することを特徴とする請求項4に記載の表示ユニット付き電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−33548(P2012−33548A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169419(P2010−169419)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】