説明

薬液投与装置および薬液投与装置の作動方法

【課題】小型化を図りつつ、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現する。
【解決手段】薬液を貯留可能な収縮自在のリザーバ11と、患者に挿入可能に設けられ、リザーバ11に貯留されている薬液を患者の体内に注入するニードル13と、流量範囲が互いに異なり並列に接続された大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bを有し、リザーバ11からニードル13に薬液を供給するポンプユニット15と、流量範囲が大きい大流量ポンプ25Aにより設定されるニードル13への薬液の供給量に対して、流量範囲が小さい小流量ポンプ25Bを正転駆動または逆転駆動することにより薬液の供給量を追加または削減するようにポンプユニット15を制御する制御部17とを備える薬液投与装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液投与装置およびその作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の体内に薬液を投与する携帯可能な薬液投与装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の薬液投与装置は、薬液を収容する輸液バッグと、圧電素子によって駆動され、輸液バッグに収容されている薬液を吐出させるマイクロポンプと、輸液バッグから吐出された薬液を患者の体内に注入する翼状針とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−63767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単一のマイクロポンプでは、高精度な流量制御を実現しようとすると流量範囲を小さくしなければならず、一方、流量範囲を大きくすると高精度な流量制御を実現することができないという不都合がある。これに対し、高精度に流量制御可能な複数のマイクロポンプを並列に接続することにより高流量を確保しようとすると、相当数のマイクロポンプを設けなければならず、装置全体が大型化しコストもかかるという不都合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、小型化を図りつつ、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現することができる薬液投与装置および薬液投与装置の作動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、薬液を貯留するリザーバと、該リザーバに貯留されている前記薬液を患者の体内に注入するニードルと、流量範囲が互いに異なり並列に接続され、前記リザーバから前記ニードルに前記薬液を供給する複数のポンプと、流量範囲が大きい前記ポンプが供給する前記薬液の供給量を増やすよう流量範囲が小さい前記ポンプの駆動を制御する制御部とを備える薬液投与装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、制御部の制御によりポンプが作動し、リザーバに貯留されている薬液がニードルに供給されて、ニードルから患者の体内に注入される。この場合において、制御部により、流量範囲が大きいポンプにより大流量の薬液を送り出し、流量範囲が小さいポンプにより小流量の薬液を追加して、薬液の供給量を微調整することができる。
【0008】
すなわち、制御部により、流量範囲が大きいポンプによって目標設定流量よりも若干少ない量の薬液を送り出しつつ、流量範囲が小さいポンプを正転駆動させて足りない分の薬液を追加し、効率的かつ精度よく目標設定流量を供給することができる。これにより、低流量で高精度に流量制御可能なポンプを複数設ける場合のようにポンプ数を増大することなく、小型化を図りつつ、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現することができる。
【0009】
上記発明においては、前記制御部が、流量範囲が大きい前記ポンプの停止中に、流量範囲が小さい前記ポンプを正転駆動して前記ニードルに前記薬液を供給することとしてもよい。
【0010】
このように構成することで、流量範囲が小さいポンプにより薬液の供給量を追加する場合に、流量範囲が大きいポンプにより送り出される薬液の圧力によって、流量範囲が小さいポンプによる薬液の送り出しが妨げられるのを防ぐことができる。したがって、流量範囲が大きいポンプと流量範囲が小さいポンプとの間で、薬液の供給量の追加による微調整を効率的に行うことができる。
【0011】
本発明は、薬液を貯留するリザーバと、該リザーバに貯留されている前記薬液を患者の体内に注入するニードルと、流量範囲が互いに異なり並列に接続され、前記リザーバから前記ニードルに前記薬液を供給する複数のポンプと、流量範囲が大きい前記ポンプが供給する前記薬液の供給量を減らすよう流量範囲が小さい前記ポンプの駆動を制御する制御部とを備える薬液投与装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、制御部により、流量範囲が大きいポンプにより大流量の薬液を送り出し、流量範囲が小さいポンプにより小流量の薬液を削減して、薬液の供給量を微調整することができる。すなわち、制御部により、流量範囲が大きいポンプによって目標設定流量を若干超える量の薬液を送り出しつつ、流量範囲が小さいポンプにより余分な薬液を削減し、効率的かつ精度よく目標設定流量を供給することができる。これにより、低流量で高精度に流量制御可能なポンプを複数設ける場合のようにポンプ数を増大することなく、小型化を図りつつ、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現することができる。
【0013】
上記発明においては、前記制御部が、流量範囲が大きい前記ポンプにより前記薬液を供給中に、流量範囲が小さい前記ポンプを逆転駆動して前記ニードルに供給される前記薬液の一部を供給方向とは逆方向に流動させることとしてもよい。
【0014】
このように構成することで、流量範囲が小さいポンプにより薬液の供給量を削減する場合に、流量範囲が大きいポンプによりチューブに送り出される薬液の圧力によって、薬液が逆流するのを防止しつつ、流量範囲が小さいポンプにより薬液を吸引することができる。したがって、流量範囲が大きいポンプと流量範囲が小さいポンプとの間で、薬液の供給量の削減による微調整を効率的に行うことができる。
【0015】
また、上記発明においては、流量範囲が大きい前記ポンプの流量の誤差量を示す補正値を記憶する記憶部を備え、前記制御部が、前記ニードルに供給する前記薬液の供給量が所望の値を満たすように、前記記憶部に記憶されている前記補正値に基づいて、前記流量範囲が大きいポンプにより設定されるニードルへの薬液の供給量を予め補正することとしてもよい。
【0016】
このように構成することで、流量範囲が大きいポンプに流量誤差がある場合でも、制御部により、記憶部に記憶されているその誤差量を示す補正値に基づいて予め補正され補正後の供給量に従って、流量範囲が大きいポンプにより薬液が供給される。これにより、流量範囲が大きいポンプの流量の誤差量を考慮して、流量範囲が大きいポンプにより薬液の所望の供給量にできるだけ近付けた状態で、流量範囲が小さいポンプにより薬液の供給量を微調整することができる。したがって、より効率的に高精度な流量制御を実現することができる。
【0017】
本発明は、流量範囲が互いに異なり並列に接続された複数のポンプにより、リザーバに貯留されている薬液をニードルに供給して患者に注入する薬液投与装置の作動方法であって、流量範囲が大きい前記ポンプが、大流量の薬液を前記ニードルに供給し、流量範囲が小さい前記ポンプが、前記流量範囲が大きいポンプにより前記ニードルに供給される薬液の供給量が目標設定流量を満たさない場合に、該流量範囲が大きいポンプを停止した状態で流量範囲が小さい前記ポンプにより小流量の薬液を追加する一方、流量範囲が大きい前記ポンプにより前記ニードルに供給される薬液の流量が目標設定流量を超える場合に、該流量範囲が大きいポンプにより前記ニードルに薬液を供給中に前記薬液の一部を供給方向とは逆方向に流動させて削減する薬液投与装置の作動方法を提供する。
【0018】
本発明によれば、流量範囲が大きいポンプが大流量の薬液をニードルに供給することで、薬液を小流量ずつ複数回に分けて供給する場合と比較して、時間短縮を図ることができる。そして、流量範囲が大きいポンプによりニードルに供給される薬液の流量が目標設定流量を満たさない場合に、流量範囲が大きいポンプを停止した状態で、流量範囲が小さいポンプが小流量の薬液を供給することで、流量範囲が大きいポンプにより送り出される薬液の圧力によって、流量範囲が小さいポンプによる薬液の送り出しが妨げられることなく、足りない薬液を精度よく追加することができる。
【0019】
一方、流量範囲が大きいポンプによりニードルに供給される薬液の流量が目標設定流量を超える場合に、流量範囲が大きいポンプによりニードルに薬液を供給中に、流量範囲が小さいポンプがその薬液の一部を供給方向とは逆方向に流動させることで、流量範囲が大きいポンプにより送り出される薬液の圧力によって薬液が逆流するのを防止しつつ、余分な薬液を精度よく削減することができる。したがって、低流量で高精度に流量制御可能なポンプを複数設ける場合のようにポンプ数を増大することなく、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型化を図りつつ、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薬液投与装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の薬液投与装置のブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る薬液投与装置を示す全体構成図である。
【図4】(a)は大流量ポンプの流量誤差に関するトランペットカーブ特性の一例を示す図であり、(b)は(a)における補正期間と累積誤差を示す図である。
【図5】図3の薬液投与装置の大流量ポンプに対する間歇制御のON/OFFの一例を示す図である。
【図6】図3の薬液投与装置によりニードルに供給される薬液の供給量の調整例を示す図である。
【図7】図3の薬液投与装置の大流量ポンプによる1回のステップの薬液の供給量と小流量ポンプによる1回のステップの薬液の供給量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る薬液投与装置およびその作動方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る薬液投与装置100は、患者に携帯され、予め設定された投与量および時間間隔で患者に薬液を自動的に投与することができるようになっている。この薬液投与装置100は、図1および図2に示されるように、薬液を貯留可能な収縮自在のリザーバ11と、リザーバ11に貯留されている薬液を患者の体内に注入するニードル13と、リザーバ11からニードル13に薬液を供給するポンプユニット15と、ポンプユニット15を制御する制御部17と、制御部17に電力を供給する電池19と、これらリザーバ11、ポンプユニット15、制御部17および電池19を収容する箱型のケース21とを備えている。
【0023】
ケース21は、例えば、シリコン材料からなり、患者に装着し易いように軽量で略直方体形状に形成されている。このケース21は、患者の体表に貼付け可能な平らな装着面21Aを有している。ケース21には、ユーザに薬液の設定流量および供給時間間隔等を入力させる入力部(図示略)が設けられている。入力部は、ユーザが入力した薬液の設定流量および供給時間間隔等を制御部17に送るようになっている。
【0024】
リザーバ11は、柔軟性および収縮性を有している。リザーバ11には、気密性の高い圧縮されたシリコーンゴムからなるセプタム(薬液注入部)12が設けられている。セプタム12はケース21の表面に露出して配置されており、セプタム12に針等を刺してリザーバ11内に薬液を注入することができるようになっている。
【0025】
ニードル13(ソフトカニューレ)は、例えば、柔軟性材料により形成されている。このニードル13は、一端がケース21の内部に配置され、他端がケース21の装着面21Aから外方に突出して配置されている。患者の体表にケース21の装着面21Aが貼り付けられることにより、患者の皮下にニードル13の他端を穿刺することができるようになっている。
【0026】
ポンプユニット15は、流量範囲が互いに異なり並列に接続された複数(本実施形態においては、2つ。)のポンプ25A,25Bを備えている。以下、流量範囲を大きいポンプを「大流量ポンプ(H_Pump)25A」とし、流量範囲が小さいポンプを「小流量ポンプ(L_Pump)25B」とする。
【0027】
大流量ポンプ25Aは、小流量ポンプ25Bと比較して、1回のステップで大流量の薬液を送出させることができるようになっている。一方、小流量ポンプ25Bは、大流量ポンプ25Aと比較して、1回のステップで小流量の薬液を送出させることができるようになっている。これらの大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bは、制御部17の作動により個別に駆動されるようになっている。
【0028】
大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bとリザーバ11とは、1本のチューブ27により接続されている。チューブ27は、一端がリザーバ11に接続され、他端が二股に分かれてそれぞれ大流量ポンプ25Aと小流量ポンプ25Bとに接続されている。
【0029】
また、大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bとニードル13も、1本のチューブ29により接続されている。チューブ29は、ニードル13の一端に接続される本体部29Aと、本体部29Aから二股に分かれて大流量ポンプ25Aに接続される一方の分岐部29Bと、小流量ポンプ25Bに接続される他方の分岐29Cとを備えている。
【0030】
制御部17は、入力部によりユーザから入力される薬液の設定流量および供給時間間隔等に基づいて、大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bによる薬液の供給を制御するようになっている。この制御部17は、大流量ポンプ25Aを正転駆動させることにより、リザーバ11からチューブ27を介して薬液を吸引させ、チューブ29を介してニードル13に薬液を送り出させるようになっている。また、制御部17は、小流量ポンプ25Bを正転駆動と逆転駆動とを切り替えて駆動させることにより、ニードル13に供給される薬液の供給量を追加したり削減したりすることができるようになっている。
【0031】
具体的には、制御部17は、大流量ポンプ25Aの駆動を停止中に小流量ポンプ25Bを正転駆動するようになっている。そして、小流量ポンプ25Bにより、リザーバ11からチューブ27を介して薬液を吸引し、チューブ29を介してニードル13に薬液を送り出させるようになっている。これにより、大流量ポンプ25Aにより送り出される薬液の圧力によって、小流量ポンプ25Bによる薬液の送り出しが妨げられることなく、薬液の供給量を追加することができるようになっている。
【0032】
一方、制御部17は、大流量ポンプ25Aの駆動中(すなわち、大流量ポンプ25Aによりニードル13に薬液を供給中)に、小流量ポンプ25Bを逆転駆動するようになっている。そして、大流量ポンプ25Aによりチューブ29の分岐部29Bから本体部29Aに送り出される薬液の一部を、小流量ポンプ25Bにより供給方向とは逆方向、すなわち、分岐部29Cに向かって流動させるようになっている。これにより、大流量ポンプ25Aによりニードル13に送り出される薬液の圧力によって、薬液が逆流するのを防止しつつ、小流量ポンプ25Bにより薬液の供給量を削減することができるようになっている。
【0033】
次に、このように構成された本実施形態に係る薬液投与装置100の作動方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る薬液投与装置100の作動方法は、まず、制御部17の作動により、入力部によってユーザから入力される薬液の設定流量および供給時間間隔に従い、大流量ポンプ25Aを駆動し、リザーバ11から大流量の薬液をニードル13に供給させるようになっている。
【0034】
そして、大流量ポンプ25Aによりニードル13に供給される薬液の供給量が設定流量を満たさない場合に、制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aの駆動を停止させた状態で、小流量ポンプ25Bを正転駆動させ、リザーバ11から小流量の薬液を送り出してニードル13に供給させるようになっている。
【0035】
一方、大流量ポンプ25Aによりニードル13に供給される薬液の供給量が設定流量を超える場合に、制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aによってリザーバ11からニードル13に薬液が供給されている際中に小流量ポンプ25Bを逆転駆動させ、大流量ポンプ25Aによりチューブ29の分岐部29Bから本体部29Aに流れ込む薬液の一部を分岐部29Cに流入させて吸引させるようになっている。
これにより、大流量ポンプ25Aにより設定されるニードル13への薬液の供給量に対して、小流量ポンプ25Bが、薬液の供給量を追加または削減するようになっている。
【0036】
このように構成された本実施形態に係る薬液投与装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る薬液投与装置100を用いて患者に薬液を投与するには、まず、リザーバ11に薬液が貯留された薬液投与装置100を患者の体表に押し当て、患者の体表にニードル13の他端を穿刺させながら装着面21Aを貼り付ける。これにより、患者に薬液投与装置100を装着させる。
【0037】
次いで、制御部17を作動させ、入力部により入力された薬液の設定流量および供給時間間隔に従い、ポンプユニット15の大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bを駆動させる。具体的には、大流量ポンプ25Aの駆動により、リザーバ11に貯留されている薬液の大流量がニードル13に供給され、小流量ポンプ25Bの駆動により、その供給量が微調整されて、患者の体内に定期的に注入される。
【0038】
以下、薬液の供給量を加算制御する場合と減算制御する場合とを分けて説明する。
例えば、大流量ポンプ25Aは、流量範囲が25μL/h〜500μL/hで、最小ステップが25μL/hとする。また、小流量ポンプ25Bは、流量範囲が0.1μL/h〜30μL/hで、最小ステップが0.1μL/hとする。
【0039】
[加算制御]
制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aが駆動させられて、設定流量よりも若干少ない量の薬液がリザーバ11からニードル13に供給された後、小流量ポンプ25Bが正転駆動させられて、足りない分の薬液がリザーバ11からニードル13に供給される。
【0040】
例えば、145.2μL/hの定量流量制御を実施する場合は、まず、大流量ポンプ25Aの駆動により、125μL/hの薬液がリザーバ11からニードル13に供給される。次いで、大流量ポンプ25Aの駆動が停止された後、小流量ポンプ25Bの正転駆動により、20.2μL/hの薬液がニードル13に追加される。
【0041】
また、例えば、231.4μL/hで20分間投与する場合は、まず、大流量ポンプ25Aの駆動により、225μL/hの薬液がリザーバ11からニードル13に供給される。次いで、大流量ポンプ25Aが駆動停止された後、小流量ポンプ25Bの正転駆動により、6.4μL/hの薬液がリザーバ11からニードル13に追加される。
【0042】
[減算制御]
制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aが駆動させられて、設定流量を若干超える量の薬液がリザーバ11からニードル13に供給されつつ、小流量ポンプ25Bが逆転駆動させられて、大流量ポンプ25Aにより供給される薬液の一部が吸引される。
【0043】
例えば、148.8μL/hの定量流量制御を実施する場合は、大流量ポンプ25Aの駆動により、150μL/hの薬液がリザーバ11からニードル13に供給される。次いで、大流量ポンプ25Aによる薬液の供給中に、小流量ポンプ25Bの逆転駆動により、1.2μL/hの薬液が供給方向とは逆方向に流動させられ、これにより余分な薬液が削減される。
【0044】
また、例えば、194.0μL/hで30分間投与する場合は、大流量ポンプ25Aの駆動により、200.0μL/hの薬液がリザーバ11からニードル13に30分間供給される。その間に、小流量ポンプ25Bの逆転駆動により、10分間隔で18.0μL/hの薬液が供給方向とは逆方向に流動させられ、これにより余分な薬液が削減される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液投与装置100によれば、制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aによって設定流量よりも若干少ない量の薬液を送り出しつつ、小流量ポンプ25Bにより足りない分の薬液を追加したり、また、大流量ポンプ25Aによって設定流量を若干超える量の薬液を送り出しつつ、小流量ポンプ25Bにより余分な薬液を削減したりすることにより、効率的かつ精度よく設定流量を供給することができる。これにより、低流量で高精度に流量制御可能なポンプを複数設ける場合のようにポンプ数を増大することなく、小型化を図りつつ、流量範囲が大きく高精度な流量制御を実現することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る薬液投与装置について説明する。
本実施形態に係る薬液投与装置200は、図3に示すように、大流量ポンプ25Aの流量の誤差量を示す補正値を記憶する記憶部31を備え、制御部17が、記憶部31に記憶されている補正値に基づいて、大流量ポンプ25Aにより設定されるニードル13への薬液の供給量を予め補正する点で第1実施形態と異なる。
以下、第1実施形態に係る薬液投与装置100と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
高流量制御可能な圧電型ダイヤフラム方式のポンプは、間歇駆動した場合に、流れ初めの立ち上がりの流量誤差が大きくなることがある。例えば、ポンプの流量誤差が、図4(a)に示されるようなトランペットカーブ特性を有する場合は、流量精度が安定するまでに数m秒〜数秒程度必要になることとなる。図4(a)において、ラインLは設定流量を示している(図4(b)において同様である。)。
【0048】
記憶部31には、工場出荷前の段階で予め計測された大流量ポンプ25Aのトランペトカーブ特性データに基づいて計測された、図4(b)に示されるような、薬液の供給量の目標精度が±5%以内に収束する時間tと、その時間内での累積誤差±y%が補正値として記憶されている。
【0049】
制御部17は、図5に示すように、大流量ポンプ25Aの駆動のON/OFFを所定の時間間隔で切り替える間歇制御を行うようになっている。また、制御部17は、リザーバ11からニードル13に供給される薬液の供給量が設定流量を満たすように、記憶部31に記憶されている補正値に基づいて、大流量ポンプ25Aにより設定されるニードル13への薬液の供給量を予め増減することにより補正するようになっている。
【0050】
次に、このように構成された本実施形態に係る薬液投与装置200の作用について説明する。
本実施形態に係る薬液投与装置200を用いて患者に薬液を投与するには、患者の体表にニードル13の他端を穿刺させて、患者に薬液投与装置200を装着させる。
【0051】
次いで、制御部17を作動させ、入力部により入力された設定流量および供給時間間隔に従い、ポンプユニット15の大流量ポンプ25Aおよび小流量ポンプ25Bを間歇駆動させる。
この場合において、図6に示されるように、設定流量(理想)に対して、大流量ポンプ25Aの立ち上がりの流量誤差(立ち上がり誤差)により、ニードル13に供給される薬液の供給量が設定流量よりも多いとする。
【0052】
本実施形態においては、制御部17の作動により、記憶部31に記憶されている補正値に基づいて、大流量ポンプ25Aにより供給される薬液の供給量が少なくなるように予め補正される。これにより、設定流量よりも少ない薬液がニードル13に供給される(補正1制御)。
【0053】
次いで、制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aの駆動が停止された状態で小流量ポンプ25Bが正転駆動させられ、大流量ポンプ25Aによる薬液の供給量に小流量の薬液が追加される(補正2制御)。すなわち、図7に示されるように、大流量ポンプ25Aにより1回のステップで供給される大流量の薬液のステップ間の差分の量の範囲内で、小流量ポンプ25Bにより薬液が追加または削減される。これにより、トータルで所望の設定流量の±5%の範囲内の誤差量に収められる。
【0054】
例えば、記憶部31に記憶されている補正値として、補正期間t=2秒間、設定流量の累積誤差y=+20%とする。また、大流量ポンプ25Aの間歇制御の周期は、駆動ON期間が10秒間で、駆動OFF期間が20秒間とする。
また、設定流量は、例えば、1時間で52μLを投与することとする。
【0055】
制御部17の作動により、大流量ポンプ25Aによる薬液の供給量を50μL/hに補正して大流量ポンプ25Aを駆動させると、リザーバ11からニードル13に供給される薬液の実際の供給量は、流量誤差により52μL/hとなる。この場合は、小流量ポンプ25Bによる薬液の追加または削減を行うことなく、大流量ポンプ25Aによる薬液の供給量の補正だけで設定流量を達成することができる。
【0056】
本実施形態においては、小流量ポンプ25Bによる薬液の追加または削減を行うことなく、大流量ポンプ25Aによる薬液の供給量の補正だけで設定流量を達成することができる一例を示したが、設定流量と大流量ポンプ25Aによる薬液の補正後の供給量との関係で、小流量ポンプ25Bにより薬液の供給量を追加または削減することとしてもよい。
【0057】
なお、参考例として、例えば、50μL/hずつ150μL/hの間歇制御を行う場合に、大流量ポンプ25Aによる供給量を補正せず、小流量ポンプ25Bにより2μL/hずつ薬液を追加することとすると、大流量ポンプ25Aによる20%の累積誤差と小流量ポンプ25Bによる追加量とを合わせて、累積2μL増加の54μL/hずつ薬液が供給されることになり、設定流量を超えてしまうことになる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液投与装置200によれば、大流量ポンプ25Aの流量の誤差量を考慮して予め補正した補正後の供給量に従って大流量ポンプ25Aにより薬液の設定流量にできるだけ近付けることができる。また、この状態で、小流量ポンプ25Bにより薬液の供給量を追加または削減し微調整することで、より効率的に高精度な流量制御を実現することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記各実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。また、例えば、上記各実施形態においては、ポンプとして、大流量ポンプ25Aと小流量ポンプ25Bを例示して説明したが、流量範囲が互いに異なる3つ以上のポンプを並列に接続することとしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 リザーバ
13 ニードル
17 制御部
25A 大流量ポンプ(流量範囲の大きいポンプ)
25B 小流量ポンプ(流量範囲の小さいポンプ)
31 記憶部
100,200 薬液投与装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留するリザーバと、
該リザーバに貯留されている前記薬液を患者の体内に注入するニードルと、
流量範囲が互いに異なり並列に接続され、前記リザーバから前記ニードルに前記薬液を供給する複数のポンプと、
流量範囲が大きい前記ポンプが供給する前記薬液の供給量を増やすよう流量範囲が小さい前記ポンプの駆動を制御する制御部とを備える薬液投与装置。
【請求項2】
前記制御部が、流量範囲が大きい前記ポンプの停止中に、流量範囲が小さい前記ポンプを正転駆動して前記ニードルに前記薬液を供給する請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項3】
薬液を貯留するリザーバと、
該リザーバに貯留されている前記薬液を患者の体内に注入するニードルと、
流量範囲が互いに異なり並列に接続され、前記リザーバから前記ニードルに前記薬液を供給する複数のポンプと、
流量範囲が大きい前記ポンプが供給する前記薬液の供給量を減らすよう流量範囲が小さい前記ポンプの駆動を制御する制御部とを備える薬液投与装置。
【請求項4】
前記制御部が、流量範囲が大きい前記ポンプにより前記薬液を供給中に、流量範囲が小さい前記ポンプを逆転駆動して前記ニードルに供給される前記薬液の一部を供給方向とは逆方向に流動させる請求項3に記載の薬液投与装置。
【請求項5】
流量範囲が大きい前記ポンプの流量の誤差量を示す補正値を記憶する記憶部を備え、
前記制御部が、前記ニードルに供給する前記薬液の供給量が所望の値を満たすように、前記記憶部に記憶されている前記補正値に基づいて、前記流量範囲が大きいポンプにより設定されるニードルへの薬液の供給量を予め補正する請求項1から請求項4のいずれかに記載の薬液投与装置。
【請求項6】
流量範囲が互いに異なり並列に接続された複数のポンプにより、リザーバに貯留されている薬液を二―ドルに供給して患者に注入する薬液投与装置の作動方法であって、
流量範囲が大きい前記ポンプが、大流量の薬液を前記ニードルに供給し、
流量範囲が小さい前記ポンプが、前記流量範囲が大きい前記ポンプにより前記ニードルに供給される薬液の供給量が目標設定流量を満たさない場合に、該流量範囲が大きいポンプを停止した状態で小流量の薬液を追加する一方、流量範囲が大きい前記ポンプにより前記ニードルに供給される薬液の流量が目標設定流量を超える場合に、該流量範囲が大きいポンプにより前記ニードルに薬液を供給中に前記薬液の一部を供給方向とは逆方向に流動させて削減する薬液投与装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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