説明

自動水栓

【課題】吐水管の先端部に到るまで光ファイバを吐水管内に通して光センサの投光部と受光部とを構成して成る自動水栓において、光ファイバが吐水管内で水に濡れたり、光ファイバに接触した水が吐水口から吐水されてしまうといったことのない自動水栓を提供する。
【解決手段】光ファイバ50,52を吐水管12の先端部に到るまで吐水管12の内部に通して、各先端部にて光センサの投光部70と受光部72を構成し、検知対象の検知に基づいて吐水する自動水栓10において、吐水管12の内部に鞘管100を配管してその内部に光ファイバ50,52を挿通するとともに、鞘管100の外面と吐水管12の内面との間に通水空間103を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から自動的に吐水を行う自動水栓に関し、特に光ファイバを用いた自動水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水管の先端部に投光部と受光部とを設け、投光部から投射した光の、使用者の手等の検知対象からの反射光を受光部で受光して検知対象を検知する光センサ(以下単にセンサとする)を備えた自動水栓が公共のトイレや洗面所等に広く用いられている。
この自動水栓では、センサによる検知対象の検知に基づいて吐水を自動的に行う。通常、そのセンサは受光量が設定したしきい値よりも多いことをもって検知対象有りと判定する。
【0003】
ところで、従来の自動水栓では光を発するLED等の発光素子を上記の投光部として、またフォトダイオード,フォトトランジスタ等の受光素子を上記の受光部として吐水管の先端部に配置するとともに、発光素子による発光を行わせるための発光駆動回路や、受光素子により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を、それら発光素子,受光素子に接続状態で吐水管の先端部に設けていた。
【0004】
例えば下記特許文献1,特許文献2に、これら発光素子や受光素子、センサ回路を含むセンサを吐水管の先端部に設けて成る自動水栓が開示されている。
しかしながらこれら特許文献1,特許文献2に開示のもののように、吐水管の先端部に発光素子,受光素子,センサ回路を含むセンサを設けた自動水栓の場合、吐水管の先端部の形状が必然的に大形状化してしまい、これに伴って吐水管全体が太く大型化し、デザイン性,意匠性を損なってしまうといった問題を生じる。
【0005】
従来、発光素子と受光素子及びセンサ回路を備えたセンサ本体を吐水管の外部に配置しておき、そしてセンサ本体の発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを吐水管の先端部に到るまで吐水管の内部に通して、投光側の光ファイバの先端部にて投光部を、受光側の光ファイバの先端部にて受光部をそれぞれ構成するようになした自動水栓も知られている。
【0006】
例えば下記特許文献3に、この種の光ファイバを用いた自動水栓が開示されている。
このようにセンサ本体を吐水管の外部に配置して、光ファイバを吐水管の先端部に到るまで吐水管内部に通し、光ファイバの先端部にて投光部と受光部とを構成した場合、センサ本体を吐水管先端部に設けた場合に比べて吐水管を細く小型化することが可能である。
【0007】
ところで、この特許文献3に開示の自動水栓では吐水管内部が全体的に通水空間とされていて、そこに直接光ファイバが通してあり、即ち吐水管内の水の内部を直接通る形で光ファイバが吐水管内に挿通してあり、この場合吐水口から吐水される水が飲み水となるとき、その飲み水の中を光ファイバが通ることとなるため、使用者に対して不安感を感じさせてしまう問題がある。
またこの形態の自動水栓では、光ファイバを吐水管に組み付ける際に組付けしづらく、組付性の点でも問題がある。
【0008】
具体的には、通常吐水管は曲り形状をなしているため、光ファイバを吐水管内部に組み付ける際に、その曲った吐水管に光ファイバを通す必要があるが、この吐水管は曲り形状の外、途中で段付形状をなしている場合もあり、しかも吐水管は鋳物製である場合が多く、この場合その内面は鋳肌をなしていて凹凸面状をなしており、そのような吐水管の内部に光ファイバを通す際の作業が行いづらいといった問題がある。
【0009】
加えて光ファイバを吐水管の内部に通す際に光ファイバが吐水管の管壁内面で傷付く恐れがあり、而して光ファイバが傷付いてしまうと検知対象を検知する際の検知精度にも悪影響が及んでしまう。
【0010】
また一旦吐水管に組み付けた光ファイバをメンテナンスする際、光ファイバを吐水管から取り出し、また再び挿入する作業を行うこととなるが、その場合においても光ファイバの吐水管からの取出し及び再挿入が行いづらく、メンテナンス作業の作業性においても問題がある。
【0011】
尚、下記特許文献4には「水栓における電装品の設置構造」が示され、そこにおいて吐水管の内部に仕切壁を設けて、その仕切壁によって吐水管の内部を通水空間と電気配線用空間とに区画した点が開示されている。
しかしながらこの特許文献4に開示のものは、吐水管内部に挿通されるものが電気配線であって光ファイバではなく、またその電気配線用空間が吐水管の管壁自体によって形成されている点で本発明と異なる。
【0012】
また下記特許文献5には「水栓金具」が示され、そこにおいて吐水管内部に設けたホースの内部空間に光ファイバを挿通した点が開示されている。
但しこの特許文献5における光ファイバは光センサとしてのものではなく、加えてここでは光ファイバがホース内部の通水空間に直接挿通されている点で本発明と異なる。
【0013】
更に、下記特許文献6には吐水管の管壁自体の内部に光ファイバを埋込状態に設けた点が開示されているが、この特許文献6の光ファイバもまた光センサとしてのものではなく、加えて光ファイバが吐水管の管壁自体の内部に設けられている点で本発明と異なったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−133103号公報
【特許文献2】特開2002−70096号公報
【特許文献3】実開平3−125862号公報
【特許文献4】実開平5−54672号公報
【特許文献5】特開2002−266393号公報
【特許文献6】特開平3−176519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上のような事情を背景とし、吐水管の先端部に到るまで光ファイバを吐水管内に通して光センサの投光部と受光部とを構成して成る自動水栓において、光ファイバが吐水管内で水に濡れたり、或いは光ファイバに接触した水が吐水口から吐水されてしまうといったことがなく、また光ファイバの組付け及びメンテナンス性が良好であって、しかもそれら作業の際に光ファイバを傷付けてしまう恐れのない自動水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、該投光側の光ファイバの先端部にて光センサの投光部を、該受光側の光ファイバの先端部にて該光センサの受光部をそれぞれ構成し、該光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、前記吐水管の内部に、該吐水管とは別の管体から成る鞘管を該吐水管に沿って配管し、前記吐水管の先端部に到るまで該鞘管の内部に前記光ファイバを挿通するとともに、該鞘管の外面と吐水管の内面との間に該吐水管に沿って延びる通水空間を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において、前記鞘管の先端部を、前記吐水管の先端部に装着される、前記吐水口を備えた吐水口部材に一体化してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
以上のように本発明は、吐水管の内部に、吐水管とは別の管体から成る鞘管を吐水管に沿って配管し、吐水管の先端部に到るまで鞘管の内部に光ファイバを挿通するとともに、鞘管の外面と吐水管の内面との間に、吐水管に沿って延びる通水空間を形成したもので、本発明によれば、吐水管の内側の通水空間と区画された鞘管の内部空間を挿通空間として、そこに光ファイバを挿通するようになしているため、吐水管内部に通した光ファイバが吐水管内部を通って流れる水に接触せず、従ってまた光ファイバに接触した水が吐水口から吐水されてしまうといったことがなく、使用者に安心感を与えることができる。
【0019】
また本発明では、吐水管内に挿通状態に光ファイバを吐水管に組み付ける際、光ファイバを吐水管の管壁に接触させることなく吐水管内の鞘管内部に光ファイバを挿通すれば良い。
その鞘管は吐水管と異なって樹脂等で構成でき、その内面を平滑な内面とすることができ、従って光ファイバを吐水管内に挿通する際、鞘管をガイド管として円滑に光ファイバを吐水管内に挿通することができ、その際光ファイバが吐水管の管壁内面に接触したり当ったりすることによって傷付いてしまうのを防止しつつ、円滑に鞘管を介して光ファイバを吐水管内に挿通することができる。
【0020】
また光ファイバの組付時に光ファイバが吐水管の管壁によって傷付くことがないため、その傷付きによって光センサによる検知精度に悪影響が及んでしまうといった問題も併せて解消することができる。
同様に光ファイバをメンテナンス作業する際においても容易に同作業を行うことができ、また光ファイバが傷付くのを防止することができる。
【0021】
本発明では、吐水管の先端部に装着される、吐水口を備えた吐水口部材に鞘管の先端部を一体化しておくことができる(請求項2)。
例えば鞘管と吐水口部材とを別々の部品として各別に吐水管に組み付けるようになした場合、鞘管及び吐水口部材の組付けの手間と工数が多くなって組付性が悪化する。
【0022】
これに対して、鞘管の先端部と吐水口部材とを予め一体化しておけば、吐水口部材を吐水管に組み付けることで同時に鞘管の先端部を吐水管に組付状態とすることができ、それらの組付けのための手間,工数を少なくし得て組付作業性を良好となすことができる。
また光ファイバを取り出してメンテナンス作業する際のメンテナンス作業性も良好となすことができる。
【0023】
更に吐水口部材と鞘管の先端部とを別々に吐水管の先端部に組み付ける場合、吐水口部材と吐水管の先端部との間のシール及び吐水口部材と鞘管先端部とのシールを各別に行わなければならず、シール個所が2個所となって構造が複雑化するとともに組付性,メンテナンス性もその分悪化する。加えてシール個所が2個所となることによって、シール漏れを起す恐れのある個所も多くなってしまう。
【0024】
しかるに請求項2に従って吐水口部材と鞘管先端部とを予め一体化しておくことで、必要なシール個所が1個所で済み、吐水管内部を含む先端部分の構造を簡素化することができ、またシール個所が少なくなることによって、シールのための所要部品点数を少なくできるとともに、シール漏れを起す恐れのある個所を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の自動水栓の全体構成を示す図である。
【図2】図1における吐水管の内部構造を周辺部とともに示した縦断面図である。
【図3】図2の吐水管の先端部の内部構造を示した要部断面図である。
【図4】同先端部を構造を分解して示した要部分解斜視図である。
【図5】図2の吐水管の基端部の構造を示した要部断面図である。
【図6】図2,図5の接続部材を鞘管及び給水チューブとともに示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の自動水栓で、12は自動水栓10における吐水管である。ここで吐水管12は金属製且つ鋳物製とされており、その内面は凹凸面状の鋳肌をなしている。
吐水管12は、カウンタ(取付基体)14から起立する形態で設置され、上部が逆U字状のグースネック形状をなしていて、その先端面が使用者に向って前方斜め下向きをなしている。
吐水管12には、図1及び図2に示しているように、その先端に吐水管12の横断面形状に対応した略楕円形状の開口16が形成されている。
【0027】
図2に示しているように、吐水管12は基端側に段付形状をなす着座部18と、この着座部18から下向きに延びる挿通管20とを一体に有している。
挿通管20は、カウンタ14の取付穴22を挿通してカウンタ14の下側まで突き出しており、その外周面に設けられた雄ねじ部24に固定ナット26がねじ込まれている。
吐水管12は、着座部18をカウンタ14の上面に着座させ、その着座部18と固定ナット26とでパッキン28,30を介し、カウンタ14を上下両側から挟み込む状態にカウンタ14に取り付けられている。
【0028】
図1において、32はカウンタ14の下方に配置された本体機能部で、34はその本体機能部32の機能部ボックスであり、その内部に電磁弁36が収容されている。
電磁弁36は、給水元管からの水を後述の吐水口63(図3)に供給する給水路を開閉する弁であって、この電磁弁36に対し、給水チューブ38の下端が継手40を介して接続されている。
【0029】
給水チューブ38は、給水路の一部を形成する部材であって、機能部ボックス34から上向きに延び出し、そして図2に示す接続部材54にて吐水管12の上記挿通管20に接続されている。
この例において、給水チューブ38は可撓性のもので、ここではポリウレタン樹脂にて形成されている。
尚図1において44は止水栓を表している。
【0030】
機能部ボックス34の内部にはまた、マイコンを主要素として含む制御部46、及び光センサ(以下単にセンサとする)の主要素をなすセンサ本体48が収容されている。
制御部46は電磁弁36を作動制御し、センサによる検知対象の検知に基づいて電磁弁36を開弁させ、またセンサが検知対象を非検知となったところで電磁弁36を閉弁させる。
【0031】
センサ本体48は、光(ここでは赤外光)を発するLED等の発光素子と、フォトダイオード,フォトトランジスタ等の受光素子、及び発光素子による発光を行わせる発光駆動回路,受光素子により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を有している。
このセンサ本体48の発光素子からは投光側の光ファイバ50(図4参照)が延び出しており、また受光素子からは受光側の光ファイバ52が延び出している。
【0032】
センサ本体48から延び出した投光側の光ファイバ50及び受光側の光ファイバ52は、図2に示すように吐水管12の基端の開口42から吐水管12内部に入り込んでいる。そして吐水管12内部を、その先端部に到るまで延びている。
【0033】
図3に示しているように、吐水管12の先端部の内部には吐水口部材56が装着されている。
本例において、この吐水口部材56は樹脂製(ここではPOM樹脂(ポリアセタール樹脂)製)のもので、全体として吐水管12の先端部の形状に対応した略楕円形状の筒状をなしている。
【0034】
吐水管12の先端部には、吐水口部材56の外面(外周面)形状に対応した楕円形状の雌嵌合面58が形成されている。
吐水口部材56は、吐水管12の開口16から吐水管12内部に管軸方向に挿入され、雌嵌合面58に嵌合状態に吐水管12の先端部に保持されている。
尚吐水口部材56の挿入端は吐水管12に形成された段付部60への当接によって規定される。
【0035】
この吐水口部材56には管軸方向に貫通の吐水路62が形成されており、吐水口部材56は、この吐水路62からの水を先端の吐水口63から前方斜め下方に吐水する。
【0036】
この吐水口部材56にはまた、外面に環状の保持溝64が設けられていて、そこに環状シール部材としての弾性を有するOリング66が保持されている。そしてこのOリング66によって、吐水口部材56の外面と吐水管12の内面との間が水密にシールされている。
【0037】
図3において、68は吐水口部材56を吐水管12に固定する固定具としての固定ねじで、吐水管12の下面から吐水管12の管壁を貫通して吐水口部材56に到るまでねじ込まれている。
尚、固定ねじ68に代えて他の固定手段を用いて固定することも可能である。
【0038】
図4において70は投光部、72は受光部であって、これら投光部70,受光部72はそれぞれ投光側の光ファイバ50,受光側の光ファイバ52の各先端部にて構成されている。
この実施形態では、図1に示すセンサ本体48,これから延び出した光ファイバ50,52の先端部にて構成される投光部70,受光部72にてセンサが構成され、そしてそのセンサが検知対象、通常は使用者が差し出した手を検知すると、制御部46による制御の下に電磁弁36が開弁し、図3の吐水口63から自動的に吐水を行う。
また使用者が手を引き込めてセンサによる検知エリアから外れると、センサが手を非検知となり、ここにおいて制御部46の制御の下に電磁弁36が閉弁し、吐水口63からの吐水を停止する。
【0039】
図4に示しているように光ファイバ50,52の先端部には、これを位置決固定するための環状凸部74が一体に設けられている。
図4において、76は光ファイバ50,52を吐水口部材56に固定するための固定部材で、横断面形状が略楕円形状をなす胴部78と、その先端で吐水管12の管軸と直角方向に張り出した鍔部80とを有している。
図4(B)に示しているように、固定部材76には胴部78に一対の差込穴82が設けられており、そこに光ファイバ50,52の先端部が差し込まれている。
【0040】
86は、これら差込穴82において固定部材76に差し込まれた一対の光ファイバ50,52を抜止めする抜止部材で、それら光ファイバ50,52に対応して半リング状をなす一対の抜止部88を一体に有している。
一対の光ファイバ50,52は、上面が開口形状をなす固定部材76の凹部84に抜止部材86を図中下向きに嵌め入れることで、固定部材76から抜止めされる。
【0041】
詳しくは、抜止部材86を凹部84に嵌め入れると、一対の抜止部88が光ファイバ50,52の上記の環状凸部74の後側(図中右側)位置で光ファイバ50,52に嵌って、環状凸部74に対しその後側で係合した状態となり、光ファイバ50,52を固定部材76から抜止めする。
【0042】
即ち一対の抜止部88が、環状凸部74を図3に示しているように固定部材76における凹部84の前側の壁と協働して挟み込み、光ファイバ50,52の先端部をその軸線方向に固定する。
尚、抜止部材86には略半円形状をなす嵌合凹部98が設けられており、抜止部材86は凹部84への嵌入状態でそれら嵌合凹部98が環状凸部74に部分的に嵌合した状態となる。
【0043】
吐水口部材56には、図4(A)に示しているように固定部材76の胴部78,鍔部80にそれぞれ対応した凹部89,90が設けられている。ここで凹部89は吐水管12の管軸方向に貫通している。
【0044】
而して固定部材76は、胴部78を吐水口部材56の凹部89に挿入して嵌合させ、また鍔部80を凹部90に嵌入させた状態で、止めビス92によって吐水口部材56に固定されている。
詳しくは、固定部材76の一対の固定孔94に止めビス92を挿通して、それらを吐水口部材56のねじ孔96にねじ込むことで、固定部材76が吐水口部材56に固定されている。
【0045】
図2に示しているように、吐水管12の内部には鞘管100が吐水管12の先端部から基端部に到るまで吐水管12に沿って配管されている。
吐水管12は、その内部且つ鞘管100の外側空間が上記の吐水口63に連通した通水空間103とされている。
一方鞘管100の内部は上記光ファイバ50,52の挿通空間をなしており、そこに光ファイバ50,52が挿通されている。
【0046】
この実施形態において、鞘管100は樹脂製のものでその先端部が上記の吐水口部材56に一体化されている。
その一体化の手段として、鞘管100と吐水口部材56とを一体成形しておいても良いし、或いはそれらを別に成形しておいて溶着,接着等の固着手段により一体化したものであっても良い。
【0047】
この例において、鞘管100はその先端部を吐水口部材56と一体成形する場合には、その材質は吐水口部材56と同材質となる。
また溶着,接着等の手段にて吐水口部材56と一体化する場合には別材質のものであっても良い。
尚、図2に示しているように鞘管100は吐水管12の管壁から径方向に離隔した位置に配管されている。
【0048】
上記接続部材54は、全体として管状をなしており、その下端部に上記の給水チューブ38が差込状態に接続されている。
ここで給水チューブ38は接続部材54の下端部の爪102によって抜止めされている。
【0049】
接続部材54は、図6にも示しているように上端部に円環状の大径部104を一体に有しており、その大径部104が、図5に示しているように吐水管12の基端側の挿通管20に対し、開口42から上向きに差し込まれ、挿通管20の嵌合凹部106に嵌合せしめられている。
【0050】
この大径部104には、外面に環状溝108が設けられていて、そこに環状シール部材としての弾性を有するOリング110が保持され、このOリング110によって、大径部104と挿通管20との間が水密にシールされている。
【0051】
給水チューブ38は、この接続部材54の内部の連通空間109を介して吐水管12内部の通水空間103に連通せしめられている。
従って給水チューブ38を通じて図中上向きに送られた水は、接続部材54の連通空間109を図中上向きに流れた後、吐水管12内部の通水空間103へと流れ込み、更に吐水管12内の通水空間103を流通した後、先端部の吐水口部材56の吐水口63から吐水される。
【0052】
接続部材54の大径部104には、図5に示しているようにこれを上下方向に貫通する挿通孔112が設けられている。
一方鞘管100の下端部には大径部114が設けられており、その大径部114が挿通孔112の上部の嵌合凹部116に図中下向きに差し込まれて、そこに嵌合せしめられている。
【0053】
鞘管100の下端部の大径部114には、外面に環状の保持溝118が設けられていて、そこに環状シール部材としての弾性を有するOリング120が保持されており、このOリング120によって、鞘管100と接続部材54との間が水密にシールされている。
鞘管100に挿通された上記の光ファイバ50,52は、この接続部材54の挿通孔112を挿通して吐水管12から外部且つ下向きに突き出している。
【0054】
即ち光ファイバ50,52は、上記の機能部ボックス34から延び出した後、吐水管12における挿通管20の下端の開口42から接続部材54の挿通孔112を挿通して吐水管12内部且つ鞘管100の内部に入り込み、そして鞘管100の内部を吐水管12に沿って先端側まで延びた上、鞘管100と一体化されている吐水口部材56に対し固定部材76にて固定されている。そして固定部材76に設けられている開口形状の窓部119(図4参照)に投光部70,受光部72の先端面をそれぞれ位置させている。
投光部70は、その窓部119を通じて検知対象に向けて光を投射する。
また受光部72は、その窓部119を通じて反射光を受光する。
【0055】
尚、図5に示しているように大径部104を吐水管12に挿入させた接続部材54は、挿通管20の下端部に装着された抜止部材121によって、挿通管20から抜止めされている。
また図6に示しているように、接続部材54には光ファイバ50,52を掛止する掛止部122が設けられており、更にその上端には回転方向の位置決突起124が設けられていて、その位置決突起124が、これに対応して挿通管20に形成された位置決凹部126に嵌合し、それらの凹凸嵌合によって接続部材54が吐水管12に対して、詳しくは挿通管20に対して回転方向に位置決めされている。
【0056】
以上のように本実施形態では、吐水管12の内側の通水空間103と区画された鞘管100の内部空間を挿通空間として、そこに光ファイバ50,52を挿通するようになしているため、吐水管12内部に通した光ファイバ50,52が吐水管12内部を通って流れる水に接触せず、従ってまた光ファイバ50,52に接触した水が吐水口63から吐水されてしまうといったことがなく、使用者に安心感を与えることができる。
【0057】
また本実施形態では、吐水管12内に挿通状態に光ファイバ50,52を吐水管12に組み付ける際、光ファイバ50,52を吐水管12の管壁に接触させることなく吐水管12内の鞘管100内部に光ファイバ50,52を挿通すれば良く、またその鞘管10は吐水管12と異なって樹脂等で構成してあってその内面が平滑な面となしてあるから、光ファイバ50,52を鞘管100をガイド管として円滑に吐水管12内に挿通することができる。
【0058】
また吐水管12への光ファイバ50,52の組付時に光ファイバ50,52が吐水管12の管壁によって傷付くことがないため、その傷付きによってセンサによる検知精度に悪影響が及んでしまうといった問題も併せて解消することができる。
同様に光ファイバ50,52をメンテナンス作業する際においても容易に同作業を行うことができ、また光ファイバ50,52が傷付くのを防止することができる。
【0059】
本実施形態ではまた、吐水口部材56に鞘管100の先端部が一体化してあるため、吐水口部材56を吐水管12に組み付けることで、同時に鞘管100の先端部を吐水管12に組付状態とすることができ、それらの組付けのための手間,工数を少なくし得て組付作業性を良好となすことができる。
また光ファイバ50,52を取り出してメンテナンス作業する際のメンテナンス作業性も良好となすことができる。
【0060】
また吐水口部材56と鞘管100の先端部とを別々に吐水管12の先端部に組み付ける場合には、吐水口部材56と吐水管12の先端部との間のシール、及び吐水口部材56と鞘管100先端部とのシールを各別に行わなければならず、シール個所が2個所となって構造が複雑化するとともに組付性,メンテナンス性もその分悪化し、加えてシール個所が2個所となることによって、シール漏れを起す恐れのある個所も多くなってしまうが、本実施形態に従って吐水口部材56と鞘管100先端部とを予め一体化しておくことで、必要なシール個所が1個所で済み、吐水管内部を含む先端部分の構造を簡素化することができる。
またシール個所が少なくなることによって、シールのための所要部品点数を少なくできるとともに、シール漏れを起す恐れのある個所を少なくすることができる。
【0061】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 自動水栓
12 吐水管
50,52 光ファイバ
56 吐水口部材
63 吐水口
70 投光部
72 受光部
100 鞘管
103 通水空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、該投光側の光ファイバの先端部にて光センサの投光部を、該受光側の光ファイバの先端部にて該光センサの受光部をそれぞれ構成し、該光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、
前記吐水管の内部に、該吐水管とは別の管体から成る鞘管を該吐水管に沿って配管し、前記吐水管の先端部に到るまで該鞘管の内部に前記光ファイバを挿通するとともに、該鞘管の外面と吐水管の内面との間に該吐水管に沿って延びる通水空間を形成したことを特徴とする自動水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記鞘管の先端部を、前記吐水管の先端部に装着される、前記吐水口を備えた吐水口部材に一体化してあることを特徴とする自動水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137293(P2011−137293A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296349(P2009−296349)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】