説明

脚構造

【課題】金属製シャーシをエンボシング(形付け加工)により凹部を形成し、この凹部に脚部材を貼着する脚構造であって、凹部に貼着される脚部材を確実に保持でき、脚部材が剥がれるのを防止し、脚部材の厚みを厚くすることができ、しかも組立作業性のよい脚構造とする。
【解決手段】金属製シャーシ26凹ませて形成した凹部32に脚部材29を貼着した脚構造において、凹部32の少なくとも一部にスリット33が設けられ、脚部材29はスリット33により形成されるシャーシ断面に対向してなる脚構造とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製のシャーシを用いた家具や電子機器に適用して好適な脚構造に係り、詳しくは金属製シャーシを凹ませて形成した凹部に脚部材を貼着するようにした脚構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家具や電子機器には金属製のシャーシの一部をエンボシング(embossing:形付け加工)して凹部を形成し、この凹部に例えばゴムやフエルトからなる脚部材を貼着した脚構造を有するものがある。このような脚構造は、組立工数が少なく、作業性がよいという利点がある。
【0003】図9はこのような金属製のシャーシの一部をエンボシングして形成された脚構造の一例を示す斜視図である。脚構造41は、金属製のシャーシ42をエンボシングして形成された脚部43と、この脚部43の下面に貼着されたフエルトやゴム等からなるクッション部材45とから構成されている。
【0004】図10は脚構造41の平面図、図11は図1010のI−I線断面図である。図10及び図11に示すように、シャーシ42には下方に向けて平面視略矩形の凸部47が突出されている。凸部47は側板部47aと底板部47bからなり、底板部47bには更に上方に向けて平面視略矩形の凹部49が形成されている。凹部49は側板部49aと上板部49bからなる。すなわち、脚部43は凸47と凹部49からなり、金属製のシャーシ42をエンボシング(形付け加工)して、一体成形されている。そして、凹部49の上板部49bの下面には、フエルトやゴム等からなり衝撃を緩衝するための平面視略矩形のクッション部材45が接着剤や接着テープ等により貼着されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のような脚構造41では、エンボシングのため、図11に示すように、凸部47の側板部47aの傾斜角が例えば45°となり、凹部49の上板部49bと側板部49aとの角度が例えば135度といった鈍角になってしまう。このため、脚構造41を備えた電子機器を載置する台の面上で矢印Xの方向にスライドさせて移動させると、クッション部材45には矢印Yの方向に摩擦力が作用する。この摩擦力が貼着力より大きいと、クッション部材45は上板部49bからずれて側板部49aに当接するが、135度といった鈍角ではクッション部材45の動きを阻止するのに十分ではなく、クッション部材45が凹部49の上板部49bから剥がれてしまう虞があった。
【0006】また、シャーシ42の上面から凹部49の上板部49bの下面までの距離をh、シャーシ42の上面から凸部47の底板部47bの下面(凹部49の側板部49aの下端)までの距離をHとすると、H−hの距離、すなわちクッション部材45が凹部49に保持される厚みを、エンボシングのため大きくすることができない。このため、クッション部材45をシャーシ42の凹部49に保持するための十分な厚みを確保できず、クッション部材45を厚くすることにより緩衝能力を向上させることが困難であるという問題があった。
【0007】更に、クッション部材45を凹部49の上板部49b下面に正確に貼り付けるのが難しく、曲がって貼り付ける虞があり、貼り付け作業にかなりの注意を要し、作業性が悪いという欠点があった。
【0008】そこで、本発明は、金属製シャーシをエンボシング(形付け加工)により凹部を形成し、この凹部に脚部材を貼着する脚構造であって、凹部に貼着される脚部材を確実に保持でき、摩擦力により脚部材が剥がれるのを防止し、脚部材の厚みを厚くすることができ、しかも組立作業性のよい脚構造を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る脚構造は、金属製シャーシを凹ませて形成した凹部に脚部材を貼着した脚構造において、前記凹部の少なくとも一部にスリットが設けられ、前記脚部材は前記スリットにより形成されるシャーシ断面に対向してなることを特徴とするものである。
【0010】本発明に係る脚構造では、凹部の少なくとも一部にスリットが設けられ、脚部材はスリットにより形成されるシャーシ断面に対向しているので、脚構造を備えた例えば電子機器をスライドさせて移動させても、脚部材の側面がスリットにより形成されるシャーシ断面に対向しているので、脚部材は凹部に保持され、脚部材が剥がれるのを確実に防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に沿って本発明に係る脚構造の実施の形態の一例を説明する。図2は本発明に係る脚構造を適用したオーディオミニコンポを示す図である。オーディオミニコンポ1はセンターユニット2と、センターユニット2の左右に設けられた一対のスピーカーユニット3とから構成されている。図3はセンターユニットの側面図である。センターユニット2は、筐体としてフロントパネル5とリアパネル6とベースキャビネット7を有している。
【0012】図2に示すように、フロントパネル5の上部には、MD(Mini Disc)収納部10と表示部11が設けられている。フロントパネル5の表示部11の左側には電源釦12、ファンクション切換釦13、ラジオバンド切換釦14、MDに録音するための録音釦15が設けられている。
【0013】フロントパネル5の表示部11の右側には内部に装着されたCD(Compact Disc)をイジェクトするためのCDイジェクト釦17が突設されている。ディスクを挿入し又は取り出すための縦型のスロット形のディスク挿入口18の中央部左側には、CD(12cmCD)又はシングルCD(8cmCD)を挿入する際の目印となり、記録面側を示し、かつ装飾の機能も有するイルミネーション19が設けられている。ディスク挿入口18の中央部右側には略半円形の切欠18aが設けられている。フロントパネル5の表示部11の下方にはCD及びMDを操作するための各種操作釦20が設けられ、各種操作釦20の下方にはボリュームダイヤル兼ジョグダイヤル21が設けられている。
【0014】そして、図3に示すように、ベースキャビネット7の下面には、前方に4個の円板状のゴム脚23が固定されると共に、後方に本発明に係る脚構造25が左右一対設けられている。
【0015】図1は本発明に係る脚構造25の分解斜視図である。脚構造25は、ベースキャビネット7の金属製のシャーシ26がエンボシング(形付け加工)されて形成された脚部27と、この脚部27の下面に嵌合・貼着されたフエルトやゴム等からなる脚部材であるクッション部材29とから構成されている。
【0016】本発明は、金属製のシャーシ26にエンボシング(形付け加工)により凹部32を形成するに際し、その対向する両側面に一対のスリット33を設けることにより、凹部32を深く形成することを可能とし、かつクッション部材29の側面がスリット33により形成されたシャーシの側縁端に当接するようにして、脚構造25を備えた例えば電子機器を台面上でスライドさせて移動させても、摩擦力によりクッション部材29が移動しないようにして、クッション部材29が凹部32から剥がれるのを確実に防止できるようにするものである。
【0017】図4は脚構造25の平面図、図5は図4のA−A線断面図、図6は図4のB−B線断面図である。図4乃至図6に示すように、シャーシ26には下方に向けて平面視略矩形の凸部30が突出されている。凸部30は側板部30aと底板部30bからなり、底板部30bには更に上方に向けて平面視略矩形の凹部32が形成されている。凸部30の側板部30aは、左右側板部30a-1,30a-1と前後側板部30a-2,30a-2からなっている。底板部30bには、凹部32が形成される部分に、一対のスリット33,33が形成される。凹部32は前後側板部32a,32aと上板部32bから形成され、それらは一対のスリット33,33の間に形成される。スリット33,33の端部は前後側板部32a,32aと同位置でもよいが、スリット33,33の長さは前後側板部32a,32aの間隔より長いことが望ましい。
【0018】すなわち、脚部27は凸部30と凹部32からなり、金属製のシャーシ26をエンボシング加工して、一体成形されている。そして、凹部32の上板部32bの下面にはフエルトやゴム等からなり衝撃を緩衝するための平面視略矩形のクッション部材29が接着剤や接着テープ等により貼着されている。
【0019】クッション部材29の例えば前後方向は、図5に示すように、上板部32bと略等しく延出しており、一方、クッション部材29の左右方向は、図6に示すように、上板部32bを越えて左右一対のスリット33,33の側縁端まで延出している。
【0020】シャーシ26を打ち抜き加工してスリット33,33を形成してから、エンボシング(形付け加工)して脚部27を形成するので、凹部32の上板部32bと側板部32aとの角度αは例えば135度といった角度より小さく、また凹部32を底板部30bから深くすることができる。これにより、シャーシ26の上面から凹部32の上板部32bの下面までの距離をh、シャーシ26の上面から凸部30の底板部30bの下面(凹部32の側板部32aの下端)までの距離をHとすると、H−hの距離、すなわちクッション部材29が凹部32に保持される厚みを大きくすることができる。従って、クッション部材29を凹部32に保持するための十分な厚みを確保でき、クッション部材29を厚くすることにより緩衝能力を向上させることができる。
【0021】次に、脚部25の作用について図5及び図6R>6を参照して説明する。図5に示すように、オーディオミニコンポ1のセンターユニット2を台面上で前後方向の一方向である矢印Cの方向にスライドさせて移動させると、クッション部材29には矢印Dの方向に摩擦力が作用するが、凹部32の上板部32bと側板部32aとの角度αは例えば135度といった角度より小さくすることができるので、クッション部材29の動きを十分阻止することができる。
【0022】一方、図6に示すように、オーディオミニコンポ1のセンターユニット2を台面上で左右方向の一方向である矢印Eの方向にスライドさせて移動させると、クッション部材29には矢印Fの方向に摩擦力が作用するが、クッション部材29の側端が一対のスリット33で形成されたシャーシの側縁端に直角に当接しており、クッション部材29が上板部32bと一対のスリット33によりしっかりと保持されているので、クッション部材29の動きを確実に阻止することができ、クッション部材29が剥がれるのを確実に防止することができる。
【0023】また、クッション部材29を凹部32の上板部32bに貼り付ける場合には、クッション部材29を一対のスリット33間に嵌合させることにより、簡単かつ正確に位置決めすることができ、組立作業がしやすく、組立作業性を向上させることができる。
【0024】次に、第2の実施の形態の脚構造について説明する。図7は第2の実施の形態の脚構造を示す平面図、図8は図7のG−G線断面図である。第2の実施の形態の脚構造35は、ベースキャビネット7のシャーシ26には下方に向けて平面視略円形の凸部36が突出されている。凸部36は側板部36aと底板部36bからなり、底板部36bには更に上方に向けて平面視略円形の凹部37が形成されている。凹部37は前後側板部37a,37aと上板部37bから形成され、凹部37の左右側板部部分は細長く円弧状に切り欠かれ左右一対の円弧状のスリット38,38が設けられている。そして、凹部37の上板部37bの下面にはフエルトやゴム等からなり衝撃を緩衝するための平面視略円形のクッション部材39が嵌合・貼着されている。
【0025】すなわち、第2の実施の形態の脚構造35は、凸部36、凹部37及びクッション部材39が略円形であり、スリット38が円弧状である他は、上述した第1の実施の形態の脚構造25と同様に構成されている。従って、第1の実施の形態の脚構造25と同様の効果が生じる。
【0026】なお、上述第1及び第2の実施の形態では、スリット33,38を凹部32,37の対向する両側に設けたが、これに限定されるわけではなく、スリットを凹部の片側にのみ設けてもよい。凹部32,37を平面視略矩形又は略円形としたが、これに限らず、楕円形や多角形等その他の形状にしてもよいことは勿論である。
【0027】脚構造を電子機器に適用したが、これに限らず、家具等の金属製シャーシを用いた他の製品に適用してもよいことは勿論である。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、脚構造を備えた例えば電子機器を載置する台面上でスライドさせて移動させても、脚部材の側面がスリットにより形成されるシャーシ断面に対向しているので、脚部材は凹部にしかりと保持され、摩擦力により脚部材が凹部に対して移動するのを阻止し、脚部材が剥がれるのを確実に防止することができる。
【0029】スリットを形成してから、エンボシング(形付け加工)して凹部を形成するので、凹部の上板部と側板部との角度を例えば135度といった角度より小さくすることができる。これにより、脚部材が凹部に保持される厚みを大きくすることができ、脚部材を凹部に保持するための十分な厚みを確保でき、脚部材を厚くすることにより緩衝能力を向上させることができる。
【0030】また、脚部材を凹部に貼り付ける場合には、脚部材をスリットに嵌合させることにより、簡単かつ正確に位置決めすることができ、組立作業がしやすく、組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脚構造の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る脚構造を適用したオーディオミニコンポの正面図である。
【図3】センターユニットの側面図である。
【図4】本発明に係る脚構造の平面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図4のB−B線断面図である。
【図7】第2の実施の形態の脚構造の平面図である。
【図8】図7のG−G線断面図である。
【図9】従来の脚構造の一例を示す斜視図である。
【図10】従来の脚構造の一例の平面図である。
【図11】図10のI−I線断面図である。
【符号の説明】
1 オーディオミニコンポ
2 センターユニット
3 スピーカーユニット
5 フロントパネル
6 リアパネル
7 ベースキャビネット
25 脚構造
26 シャーシ
27 脚部
29 クッション部材(脚部材)
30,36 凸部
30a-1,30a-1 左右側板部
30a-2,30a-2 前後側板部
30b,36b 底板部
32,37 凹部
32a,37a 前後側板部
32b,37b 上板部
33 スリット
35 脚構造
38 スリット
39 クッション部材(脚部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製シャーシを凹ませて形成した凹部に脚部材を貼着した脚構造において、前記凹部の少なくとも一部にスリットが設けられ、前記脚部材は前記スリットにより形成されるシャーシ断面に対向してなることを特徴とする脚構造。
【請求項2】 前記凹部のスリットが対向するように2箇所設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脚構造。
【請求項3】 前記凹部が平面視略矩形であり、前記スリットが略直線形状であることを特徴とする請求項1に記載の脚構造。
【請求項4】 前記凹部が平面視略円形であり、前記スリットが略円弧形状であることを特徴とする請求項1に記載の脚構造。
【請求項5】 前記凹部が平面視略多角形であることを特徴とする請求項1に記載の脚構造。
【請求項6】 前記凹部が平面視略楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の脚構造。
【請求項7】 前記脚部材が衝撃を緩衝するためのクッション部材であることを特徴とする請求項1に記載の脚構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2001−257480(P2001−257480A)
【公開日】平成13年9月21日(2001.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−69152(P2000−69152)
【出願日】平成12年3月13日(2000.3.13)
【出願人】(000000491)アイワ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】