説明

経口投与用液剤を調製するための経口投与用製剤

【課題】より保存安定性に優れた、ポリエチレングリコールと電解質とアスコルビン酸を主要な成分とする経口投与用液剤を調製するための製剤の提供。
【解決手段】水と混合することにより経口投与用液剤を調製するための製剤であって、水に溶解することによって、水溶液1L当たり、ポリエチレングリコール含有量が30〜350g、アスコルベート成分含有量が3〜20gである経口投与用液剤が調製されるものであり、(a)ポリエチレングリコール、及び(b)塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上の電解質を含む第1の乾燥組成物が収容された透湿性容器と、(c)アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物が収容された透湿性容器とが、水蒸気バリア性容器に包含されている経口投与用製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に腸管洗浄法に用いられる経口投与用液剤を調製するための経口投与用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸検診における内視鏡検査において前処置のための腸管洗浄製剤が使用される。腸管洗浄製剤は水溶液として服用すべきものであるが、水溶液の状態では経時的な変質・変色があるため、粉末状態にて軟弱フィルムより成る四方パウチや溶解容器として兼用可能な自立型袋に封入充填した製品形態にて提供され、服用直前に開封し水に溶かし水溶液として使用されることが普通である。例えば、特許文献1には、薬剤を粉末状態にて収容し、使用時に水を注入することにより水溶液とするタイプの軟質袋状容器が開示されている。
【0003】
粉末状態で保存されており、服用直前に水に溶かして使用するタイプの腸管洗浄剤としては、ポリエチレングリコールと電解質を主要な成分とするものが従来から存在している。このような腸管洗浄液の多くは、通常、所期の洗浄効果を得るため、最大4Lもの量を服用する必要があり、年長者等に負担が大きいという問題がある。当該問題を解決するものとして、特許文献2には、ポリエチレングリコールと電解質とともにアスコルビン酸(ビタミンC)を含む腸管洗浄液が提案されている。当該腸管洗浄液は、アスコルビン酸の添加により腸管洗浄能力に優れており、必要服用量を従来の4L程度から1〜2Lまで削減することができ、服用者の負担を大幅に軽減できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−285518号公報
【特許文献2】特許第4131266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アスコルビン酸は、水溶液の状態のみならず、粉末状態で保存した場合でも、空気中の湿度の影響により、経時的に変質・変色しやすい。このため、特許文献2に記載のようなアスコルビン酸を含む腸管洗浄液では、一般的には、アスコルビン酸を含む粉末成分を水蒸気バリア性の容器に収容し、かつポリエチレングリコールを含むその他の粉末成分を非水蒸気バリア性の容器に収容しておき、使用直前に両者を混合して水溶液に調製する。
【0006】
しかしながら、アスコルビン酸やその塩は、水蒸気バリア性の容器に収容した場合であっても、長期間保存すると変色してしまい、水蒸気バリア性容器では、保存安定性が不十分である。
【0007】
本発明は、ポリエチレングリコールと電解質とアスコルビン酸を主要な成分とする経口投与用液剤を調製するためのものであって、より保存安定性に優れた経口投与用製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリエチレングリコール及び電解質を含む粉末状の第1の乾燥組成物を透湿性容器に収容し、アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む粉末状の第2の乾燥組成物を前記第1の乾燥組成物とは独立して透湿性容器に収容し、両透湿性容器を共に水蒸気バリア性容器に包含させた状態で保存することにより、ポリエチレングリコールと電解質とアスコルビン酸を主要な成分とする経口投与用液剤を調製するための乾燥組成物を従来よりも安定して長期間保存可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 水と混合することにより経口投与用液剤を調製するための製剤であって、
水に溶解させることによって、水溶液1L当たり、ポリエチレングリコール含有量が30〜350g、アスコルベート成分含有量が3〜20gである経口投与用液剤が調製されるものであり、
(a)ポリエチレングリコール、及び(b)塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上の電解質を含む第1の乾燥組成物が収容された透湿性容器と、
(c)アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物が収容された透湿性容器とが、
水蒸気バリア性容器に包含されていることを特徴とする経口投与用製剤、
(2) 硫酸ナトリウムを含有することを特徴とする前記(1)に記載の経口投与用製剤、
(3) 前記アスコルビン酸の塩がアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸マグネシウム及びアスコルビン酸カルシウムからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の経口投与用製剤、
(4) 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が、2000〜4500ダルトンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の経口投与用製剤、
(5) 前記透湿性容器の水蒸気透過度が、前記水蒸気バリア性容器の水蒸気透過度よりも大きいことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の経口投与用製剤、
(6) 腸管洗浄製剤であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の経口投与用製剤
(7) 前記第1の乾燥組成物を収容している透湿性容器及び前記第2の乾燥組成物を収容している透湿性容器が、透湿性の可撓性フィルムによりなる実質的に平坦状の袋体と、前記袋体の内部空間を複数の隔室に分離する隔壁と、前記複数の隔室のうちの第1の隔室に開口するように袋体の周辺部に取り付けられ、液体の注入及び排出をするための抽出ポートとから成る複室容器であり、
前記隔壁が、前記袋体の対向内面を剥離可能に溶着する剥離可能シールであり、
前記隔壁が、前記袋体の底部に沿って、当該袋体の側部より当該袋体の幅における中間部位まで延出する第1部分と、前記第1部分の端部より前記袋体の底部に離間方向に前記袋体の上縁部まで延出する第2部分とから構成され、
前記隔壁における前記袋体の底部に対し近接側の隔室に、前記抽出ポートが開口しており、かつ前記第1の乾燥組成物が収容されており、
前記隔壁における前記袋体の底部から離間側の隔室に、前記第2の乾燥組成物が収容されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の経口投与用製剤、
(8) 前記隔壁における前記第1部分と前記第2部分との接続部がR形状をなすことを特徴とする前記(7)に記載の経口投与用製剤、
(9) 前記隔壁を構成する剥離可能シールのシール強度が1〜5N/15mmであることを特徴とする前記(7)又は(8)に記載の経口投与用製剤、
(10) 水と混合することにより経口投与用液剤を調製するための乾燥組成物の保存方法であって、
水に溶解させることによって、水溶液1L当たり、ポリエチレングリコール含有量が30〜350g、アスコルベート成分含有量が3〜20gである経口投与用液剤が調製される乾燥組成物のうち、
(a)ポリエチレングリコール、及び(b)塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上の電解質を含む第1の乾燥組成物を、透湿性容器に収容し、
(c)アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物を、前記第1の乾燥組成物とは別個に透湿性容器に収容し、
前記第1の乾燥組成物を収容する透湿性容器及び前記第2の乾燥組成物を収容する透湿性容器を、水蒸気バリア性容器に包含することを特徴とする乾燥組成物の保存方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経口投与用製剤は、少量で投与されても効果的な洗浄作用を有し、腸管洗浄液として好適な経口投与用液剤を調製するための乾燥組成物を、長期間非常に安定して保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物が収容される透湿性容器として好ましい複室容器の一例の正面図である。
【図2】図1の複室容器の側面図であり、(a)は右側面図、(b)は左側面図である。
【図3】図1の複室容器の上面図である。
【図4】図1の複室容器の底面図である。
【図5】試験例2において、水蒸気バリア性包材内の湿度の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の経口投与用製剤は、水と混合することにより経口投与用液剤を調製するための乾燥組成物が少なくとも2種類の容器に分けて収容されており、かつこれらの容器が一つの外包容器に収容されているものである。すなわち、本発明の経口投与用製剤の各容器が収容している全ての乾燥組成物を水と混合することにより、経口投与用液剤が調製される。本発明の経口投与用製剤から調製される経口投与用液剤は、ポリエチレングリコール、電解質、及びアスコルベート成分を含み、腸管洗浄液として特に好適である。
【0013】
具体的には、本発明の経口投与用製剤は、(a)ポリエチレングリコール、及び(b)塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上の電解質を含む第1の乾燥組成物と、(c)アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物とが、独立して容器に収容されている。第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物とを共に水に溶解させることにより、経口投与用液剤が調製される。
なお、本発明及び本願明細書において、「本発明に係る乾燥組成物」とは、本発明の経口投与用製剤の各容器が収容している全ての乾燥組成物の混合物を意味する。すなわち、本発明に係る乾燥組成物は、第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物を含む。
【0014】
本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たりの含有量が30〜350gとなるように、ポリエチレングリコールを含有する。本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤のポリエチレングリコール含有量は、水溶液1L当たり、50g以上であることが好ましく、90g以上であることがより好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤のポリエチレングリコール含有量は、水溶液1L当たり、250g以下であることが好ましく、150g以下であることがより好ましく、140g以下であることがさらに好ましく、125g以下であることがよりさらに好ましい。最も好ましくは、本発明に係る乾燥組成物は、水溶液1L当たり100gのポリエチレングリコールが含有されるように、ポリエチレングリコールを含有する。
【0015】
本発明に係る乾燥組成物に含有させるポリエチレングリコールの平均分子量は、2000ダルトン以上であることが好ましく、2500ダルトン以上であることがより好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物に含有させるポリエチレングリコールの平均分子量は、4500ダルトン以下であることが好ましい。例えば、本発明に係る乾燥組成物に含有させるポリエチレングリコールとしては、PEG3350又はPEG4000であることが好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物には、2種以上の異なるポリエチレングリコールを含有させてもよい。
【0016】
本発明及び本願明細書において、アスコルベート成分とは、アスコルビン酸、アスコルビン酸の1種以上の塩、又はこれらの混合物を意味する。本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たりの含有量が3〜20gとなるように、アスコルベート成分を含有する。本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤のアスコルベート成分含有量は、水溶液1L当たり、4g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤のアスコルベート成分含有量は、水溶液1L当たり、15g以下であることが好ましく、12g以下であることがより好ましい。なお、アスコルビン酸及びその塩は、実際には、水和物として提供され得るが、本発明及び本願明細書において、アスコルビン酸及びその塩の重量や重量比は、水和水を除いたアスコルビン酸及びその塩の重量や重量比である。
【0017】
本発明に係る乾燥組成物に含有させるアスコルベート成分としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。アスコルビン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸マグネシウム、又はアスコルビン酸カルシウム等が挙げられる。本発明において用いられるアスコルビン酸の塩としては、アスコルビン酸ナトリウムが好ましい。また、アスコルベート成分は水分の存在下で経時的に変質・変色しやすい。
【0018】
本発明に係る乾燥組成物は、アスコルベート成分として、アスコルビン酸とアスコルビン酸の塩の両方を含むことが好ましい。本発明に係る乾燥組成物中におけるアスコルビン酸とその塩の重量比は、1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜8:2であることがより好ましく、3:7〜7:3であることがさらに好ましく、4:6〜6:4であることがよりさらに好ましく、4:6〜5:5であることが特に好ましい。
【0019】
本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより調製される経口投与用液剤の浸透度を調整するため、電解質を含む。本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤の浸透度は、330mOsmol/kg以上であることが好ましく、350mOsmol/kg以上であることがより好ましく、400mOsmol/kg以上であることがさらに好ましく、460mOsmol/kg以上であることがよりさらに好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤の浸透度は、600mOsmol/kg以下であることが好ましく、550mOsmol/kg以下であることがより好ましく、500mOsmol/kg以下であることがさらに好ましく、470mOsmol/kg以下であることがよりさらに好ましい。
【0020】
本発明に係る乾燥組成物に含有させる電解質は、少なくとも塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上である。これらの電解質は、1種類のみ含有していてもよいが、2種類以上組み合わせて含有していることが好ましい。中でも、塩化ナトリウムと、塩化カリウムと、アルカリ金属スルフェート又はアルカリ土類金属スルフェートの少なくとも1種とを含有することがより好ましい。
【0021】
本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たりの含有量が0.5〜7gとなるように、塩化ナトリウムを含有することが好ましい。本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤の塩化ナトリウム含有量は、水溶液1L当たり、1g以上であることがより好ましく、2g以上であることがさらに好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤の塩化ナトリウム含有量は、水溶液1L当たり、5g以下であることがより好ましく、4g以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たりの含有量が0.2〜4gとなるように、塩化カリウムを含有することが好ましい。本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤の塩化カリウム含有量は、水溶液1L当たり、0.5g以上であることがより好ましく、0.7g以上であることがさらに好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤の塩化カリウム含有量は、水溶液1L当たり、2g以下であることがより好ましく、1.3g以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たり、アルカリ金属スルフェート、アルカリ土類金属スルフェート、又はこれらの混合物(以下、スルフェート成分)の含有量が2〜10gとなるように、スルフェート成分を含有することが好ましい。本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤のスルフェート成分含有量は、水溶液1L当たり、3g以上であることがより好ましく、5g以上であることがさらに好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物から調製される経口投与用液剤のスルフェート成分含有量は、水溶液1L当たり、9g以下であることがより好ましく、8g以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明に係る乾燥組成物が含有するスルフェート成分としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、又は硫酸カルシウム等が挙げられる。本発明においては、硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0025】
本発明に係る乾燥組成物は、さらに重炭酸ナトリウムを初めとするその他の電解質を含んでいてもよい。本発明に係る乾燥組成物に含有させ得るその他の電解質としては、静脈投与される電解質輸液等に用いられる電解質と同様のものを挙げることができる。より具体杓には、ナトリウムイオン源としては、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが、カリウムイオン源としては、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、乳酸カリウムなどが、カルシウムイオン源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムなどが、マグネシウムイオン源としては、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムなどが、リン酸イオン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウムなどが、塩素イオン源としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが、また重炭酸イオン源としては、炭酸水素ナトリウムなどがそれぞれ例示され、これらの化合物は水和物の形態であってもよい。
【0026】
本発明に係る乾燥組成物は、さらに甘味料や香料を含有していることが好ましい。
本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たりの含有量が0.01〜3gとなるように、香料を含有することが好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物は、水に溶解させることにより、水溶液1L当たりの含有量が0.01〜30gとなるように、甘味料を含有することが好ましい。
【0027】
本発明に係る乾燥組成物に含有させる香料としては、経口で経口投与用液剤を摂取する際のポリエチレングリコールや電解質に起因する臭いをマスクするものであって、粉末状等の固形として含有させられるものであれば、特に限定されるものではない。本発明においては、食品香料が適当であり、特に果物の香料が適している。果物香料としては、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンライム、マンダリンオレンジ、葡萄、いちご、さくらんぼ、アップル、杏、ラズベリー等の粉末香料が挙げられる。その他、液体香料を電解質等の粉末に直接吸着させてもよい。中でも、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンライムのような柑橘系の液体香料はさわやかな飲み心地を与えられるため最適である。液体香料としては、これらの果物から圧搾法や水蒸気蒸留によって得られる精油を用いることができる。また、リモネン、シトラール、シトロネラール、リナロール、オクタナール等を単独にあるいは配合して作ることができる。なかでもリモネンを含む柑橘系の香料を使用することが好ましい。このような香料は香料メーカーから市販されており、それを用いることが実際的である。なお、液体香料には、香料成分を含水アルコール等で抽出したり溶解させたりした水溶性の液体香料、及び香料成分を油性溶剤に溶かした油溶性の液体香料が含まれる。さらに香料成分(精油)に保存剤等を加えたものも含まれる。液体香料としては、保存安定性の点から、水溶性の液体香料より、油溶性若しくは精油由来の香料を用いることが好ましい。
【0028】
本発明に係る乾燥組成物に含有させる甘味料は、大量の経口投与用液剤を服用する際に飲みやすくするものである。甘味料としては、腸内において水素ガスやメタンガスの発生がないか極めて少ないものでなければならない。腸内において水素ガスやメタンガスの発生が無い、若しくは極めて少ない甘味料としては、具体的には、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファム−K、チクラメート(シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム)、アスパルテーム等を単独若しくは組み合わせて用いることが好ましい。
【0029】
本発明に係る乾燥組成物は、少なくともポリエチレングリコールとスルフェート成分とを含む第1の乾燥組成物と、アスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物とに分けて収容される。経時的な変化をより受けやすいアスコルベート成分をポリエチレングリコールやスルフェート成分と分けて保存することにより、より安定してアスコルベート成分を保存することができる。
【0030】
本発明に係る乾燥組成物に含まれるその他の成分は、使用時に第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物と共に水に溶解させることができるように収容されていればよく、第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物のいずれかに含めてもよく、第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物とは別の乾燥組成物として異なる容器に収容されていてもよい。本発明においては、アスコルベート成分のみを第2の乾燥組成物として収容し、その他の成分は全て第1の乾燥組成物として収容することが、アスコルベート成分の保存安定性と服用時の調製の労力等の点から好ましい。
【0031】
第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物をはじめとする本発明に係る乾燥組成物は、乾燥物であればよく、粉末、錠剤、粒状のいずれの形状であってもよく、造粒物であってもよい。中でも、各成分が混合可能なように粒子径を調整された後に混合されたものであることが好ましい。また、本発明に係る乾燥組成物は、1回分の投与量ごとに収容されていることが好ましい。なお、第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物の水分含有量は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明に係る乾燥組成物では、第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物をそれぞれ透湿性容器に収容し、これらを共に水蒸気バリア性容器に包含する。このような収容形態により、本発明に係る乾燥組成物では、アスコルベート成分のみを水蒸気バリア性容器に収容し、ポリエチレングリコールを初めとするその他の成分を透湿性容器又は水蒸気バリア性容器に収容した場合よりも、アスコルベート成分の経時的な変色やポリエチレングリコール等のその他の成分の長期保存安定性も良好である。
【0033】
透湿性容器に収容された第1の乾燥組成物と、同じく透湿性容器に収容された第2の乾燥組成物とを水蒸気バリア性容器に包含することにより、該水蒸気バリア性容器の内部の湿度を外部環境よりも充分に低い一定の範囲内に長期間維持される。本発明に係る乾燥組成物が保存安定性に優れている理由は明らかではないが、ポリエチレングリコール等を含む第1の乾燥組成物とアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物とが低湿度に安定して維持されるためと推察される。なお、第1の乾燥組成物を収容した透湿性容器と第2の乾燥組成物を収容した透湿性容器とを、共に水蒸気バリア性容器に包含することにより、当該水蒸気バリア性容器内の湿度が、アスコルビン酸及びその塩の長期保存に適した湿度に維持され得ることは、本発明者らによって初めて得られた知見である。
【0034】
例えば、水溶液1L当たりの含有量が、それぞれ、ポリエチレングリコールが90〜110g、塩化ナトリウムが2〜4g、塩化カリウムが0.7〜1.3g、硫酸ナトリウムが5〜8gとなるように第1の乾燥組成物を透湿性容器に収容し、水溶液1L当たりのアスコルベート成分の含有量が9〜11gとなるように第2の乾燥組成物を透湿性容器に収容し、両者を水蒸気バリア性容器に収容することにより、当該水蒸気バリア性容器の内部の湿度を15〜25%に維持することができる。
【0035】
本発明及び本願明細書において、水蒸気バリア性容器とは、水蒸気透過度が1.0ml/m・24h以下、特に好ましくは0.5ml/m・24h以下の容器を意味する。水蒸気バリア性容器としては、金属、アルミ箔などの金属箔積層体、酸化ケイ素蒸着フィルム積層体、アルミ蒸着フィルム積層体、アルミナなどのセラミック蒸着フィルム等で構成されたもの用いることができる。
【0036】
本発明及び本願明細書において、透湿性容器とは、水蒸気透過度が、当該透湿性容器が外包される水蒸気バリア性容器よりも大きい容器を意味する。本発明において用いられる透湿性容器としては、水蒸気透過度が1.0ml/m・24h以上であることが好ましく、1.0ml/m・24hより高いことがより好ましく、1.5ml/m・24h以上であることがさらに好ましく、2ml/m・24h以上であることがよりさらに好ましい。透湿性容器としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、パルプ、紙、ポリエチレン、又はポリプロピレンの不織布で構成されたものが好ましく、単独あるいは積層体として使用してもよい。上述のような水蒸気透過度を有するものであれば、酸化ケイ素蒸着フィルム積層体、酸化アルミ蒸着フィルム積層体なども用いることができる。なお、本発明において用いられる透湿性容器は、内部の様子が観察可能な透明なものであることが好ましい。
【0037】
本発明の経口投与用製剤において、第1の乾燥組成物を収容する透湿性容器と第2の乾燥組成物を収容する透湿性容器とが、別個独立した容器であってもよく、両者がともに複室容器を形成していてもよい。本発明においては、透湿性の可撓性フィルムにより成り、隔壁により隔たれた隔室を有する複室容器のうち、第1の隔室に第1の乾燥組成物を、第2の隔室に第2の乾燥組成物をそれぞれ収容することが好ましい。
【0038】
本発明においては、第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物の収容のために、透湿性の可撓性フィルムにより成る複室容器であって、隔室の一つに液体の注入及び排出をするための抽出ポートが設けられており、当該抽出ポートから水が注入された場合に隔室同士が連通可能となるような隔壁からなるものを用いることが好ましい。このような複室容器であれば、抽出ポートから水を注入することにより、隔壁を開通させ、各隔室に収容されている固形の薬剤を全て溶解させた水溶液を簡便確実に調製することができる。この結果、混合すべき成分の一部を混合し忘れる等の医療過誤の防止にも有効である。
【0039】
本発明の経口投与用製剤としては、透湿性の可撓性フィルムによりなる実質的に平坦状の袋体と、前記袋体の内部空間を複数の隔室に分離する隔壁と、前記複数の隔室のうちの第1の隔室に開口するように袋体の周辺部に取り付けられ、液体の注入及び排出をするための抽出ポートとから成り、前記隔壁における前記袋体の底部に対し近接側の隔室に前記抽出ポートが開口している複室容器のうち、前記抽出ポートが開口している隔室(第1の隔室)に前記第1の乾燥組成物に収容し、前記隔壁における前記袋体の底部から離間側の隔室(第2の隔室)に、前記第2の乾燥組成物を収容し、さらに、当該複室容器を水蒸気バリア性容器で包含することが好ましい。
【0040】
このような複室容器の好ましい一態様を図1〜4に示す。図1は、第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物を収容する前の複室容器の正面図であり、図2は側面図であり、図3は上面図であり、図4は底面図である。
【0041】
第1の隔室20と第2の隔室22を隔てる隔壁18は、袋体の対向内面を剥離可能に溶着する剥離可能シールであることが好ましい。隔壁の開通が意図的なものかどうかを明らかにできるため、本発明においては、隔壁を構成する剥離可能シールのシール強度が1〜5N/15mmであることが好ましい。なお、本発明及び本願明細書において、シール強度は、JIS Z 0238に準拠して測定された、シール幅15mm当たりの剥離強度である。
【0042】
なお、第1の隔室20と第2の隔室22を隔てる隔壁18の剥離可能シールのシール強度は、1N/15mmよりも小さく、抽出ポート16から第1の隔室20への水の注入によって容易に剥離可能な微弱なものであってもよい。第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物は共に固形であるため、当該剥離可能シールのシール強度が微弱であったとしても、輸送等の取り扱い中の振動等によって隔壁の開通が起こるおそれが非常に小さいためである。
【0043】
当該複室容器は、水が注入される第1隔室20のほうが、第2隔室22よりも有意に大きいことが好ましい。例えば、隔壁18を、袋体10の底部10Aに沿って、当該袋体10の側部より当該袋体10の幅における中間部位まで延出する第1部分18−1と、前記第1部分18−1の端部より前記袋体10の底部10Aに離間方向に前記袋体10の上縁部まで延出する第2部分18−2とから構成ずることにより、第2隔室22よりも第1隔室20を大きくすることができる。当該隔壁18における前記第1部分18−1と前記第2部分18−2との接続部18−3は、R形状をなすことが好ましい。
【0044】
さらに、袋体10の外周輪郭部を強シール部12として袋体を形成しているが、当該複室容器は、強シール部12を袋体10の底部10Aより幾分上方において片側が局部的に少し内側に幅広にし、当該幅広部位12−4に細長い開口14を設けてもよい。開口14には指を挿入することで、強シール部12のこの部位を取手15として役立てることができる。また、開口14の全周内縁14’において表裏の可撓性フィルム10−1、10−2を非溶着とすることにより、当該部位において可撓性フィルムを柔軟にすることができ、開口14に指を入れて取手として握ったときの感触をソフトにすることができる。なお、開口14は、図1に示すように第2隔室22が設けられている側辺の強シール部12に設けてもよく、反対側の側辺の強シール部12に設けてもよい。
【0045】
また、第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物を収容し、直接水を注入して経口投与用液剤を調製するための容器としても用いられる複室容器は、透明な可撓性フィルムによって構成されていることが好ましい。内部が視認できることにより、使用前に各成分の変質・変色等が生じていないことが確認でき、かつ、経口投与用液剤調製時には、第1の乾燥組成物や第2の乾燥組成物の溶解の状態等を容易に確認できるためである。
【0046】
また、本発明の経口投与用製剤は、水蒸気バリア性容器内に、本発明の経口投与用製剤から経口投与用液剤を調製する方法、得られた経口投与用液剤の服用方法、服用を中止しなければならない症状、副作用時の対応が記載された注意書きを入れることができる。また、これらの使用方法や注意書き等は、第1の乾燥組成物や第2の乾燥組成物が収容されている透湿性容器の表面に貼付・印刷等しておいてもよい。
【実施例】
【0047】
次に試験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
[試験例1]
透湿性容器に収容した第1の乾燥組成物と、水蒸気透過度の異なる容器に収容した第2の乾燥組成物とを、共に水蒸気バリア性容器に包含させた状態で長期間保存し、保存後の第2の乾燥組成物の重量変化及び変色度合いを調べた。
200gのPEG4000、15gの硫酸ナトリウム、5.382gの塩化ナトリウム、及び2.03gの塩化カリウムを混合した粉末成分を、第1の乾燥組成物とした。また、9.4gのアスコルビン酸及び11.8gのアスコルビン酸ナトリウムを混合した粉末成分を、第2の乾燥組成物とした。当該第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物とを2Lの水に溶解させることによって、ポリエチレングリコール含有量が100g、アスコルベート成分含有量が10.6gである経口投与用液剤が調製される。
【0049】
第1の乾燥組成物は、水蒸気透過度が2〜3ml/m・24hである透湿性フィルムからなる、280×220mmの図1に示すスタンディングバック(透湿性複室容器)に収容した。当該透湿性フィルムは、二軸延伸したポリプロピレンフィルム、二軸延伸したナイロンフィルム、及びリニアーローデンシティポリエチレンからなる3層フィルム(ポリプロピレン20μm/ナイロン25μm/直鎖状低密度ポリエチレン100μmからなる3層の積層フィルム)である。
一方で、(a)水蒸気透過度が約0ml/m・24hであるアルミ箔(ポリプロピレン30μm/アルミ箔6.5μm/直鎖状低密度ポリエチレン60μmからなる3層の積層フィルム)、(b)水蒸気透過度が約1ml/m・24hであるシリカ蒸着ポリエチレンフィルム(ポリプロピレン20μm/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート12μm/直鎖状低密度ポリエチレン100μmからなる3層の積層フィルム)、及び(c)水蒸気透過度が2〜3ml/m・24hである透湿性フィルム(前記スタンディングバックと同種のフィルム)を用いて、それぞれ90×70mmの四方シール袋を作製し、これらにそれぞれ第2の乾燥組成物を収容した。
第1の乾燥組成物を収容したスタンディングバックと第2の乾燥組成物を収容した四方シール袋とを1つずつアルミ外包袋(水蒸気透過度が約0ml/m・24h)にいれ、40℃、75%RHの保存条件で、2、4、及び6ヶ月間保存した。保存期間経過後に、各第2の乾燥組成物の重量変化と色差を調べた。なお、重量変化は電子セミミクロン天秤(メトラー・トレド社製、製品名:XS205DU)を用いて、色差は分光測光器(日本電色工業社製、製品名:SZ−Σ90測光器)を用いて、それぞれ測定した。
【0050】
測定開始時(保存0カ月間)からの重量変化量を表1に示す。また、測定開始時からの色差変化量を表2に示す。この結果、水蒸気透過度の小さいアルミ箔に収容した第2の乾燥組成物に比べて、シリカ蒸着ポリエチレンフィルムに収容した第2の乾燥組成物や透湿性フィルムに収容した第2の乾燥組成物のほうが、重量の減少度合いが大きかった。一方で、アルミ箔に収容した第2の乾燥組成物では色差が大きく、4ヶ月間保存後や6ヶ月間保存後のものは目視でも着色が確認された。これに対して、シリカ蒸着ポリエチレンフィルムに収容した第2の乾燥組成物や透湿性フィルムに収容した第2の乾燥組成物では、色差が小さく、6ヶ月間保存後でも、目視では着色が確認できなかった。これらの結果から、第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物を水蒸気透過度の大きいフィルムからなる容器で収容した上で、水蒸気バリア性容器に包含させることにより、第2の乾燥組成物に含有されていた水分が第1の乾燥組成物へと移行し、当該水蒸気バリア性容器内が平衡状態に達した結果、非常に低い湿度で保持された結果、着色変化が抑制されたと推察される。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
[試験例2]
第1の乾燥組成物及び第2の乾燥組成物を収容した透湿性複室容器を水蒸気バリア性容器に包装した経口投与用製剤において、当該水蒸気バリア性容器内の湿度変化を調べた。
200gのPEG4000、15gの硫酸ナトリウム、5.382gの塩化ナトリウム、2.03gの塩化カリウム、及び0.244gのアップルフレーバー(ジボダン社製)を混合した粉末成分を、第1の乾燥組成物とした。また、9.4gのアスコルビン酸及び11.8gのアスコルビン酸ナトリウムを混合した粉末成分を、第2の乾燥組成物とした。
具体的には、ポリプロピレン20μm/ナイロン25μm/直鎖状低密度ポリエチレン100μmからなる3層の積層フィルムからなり、水蒸気透過度が2〜3ml/m・24hである図1に示す透湿性複室容器のうち、第1の隔室に第1の乾燥組成物を収容し、第2の隔室に第2の乾燥組成物を収容した後、当該透湿性複室容器を、水蒸気バリア性包材(ポリプロピレン30μm/アルミ箔6.5μm/直鎖状低密度ポリエチレン60μmからなる3層の積層フィルム、水蒸気透過度0ml/m・24h)にて包装した状態で、40℃、75%RH、又は25℃、60%RHの保存庫内で120日間保存し、保存中の水蒸気バリア性包材内の湿度を経時的に測定した。水蒸気バリア性包材内の湿度は、当該水蒸気バリア性包材内に、透湿性複室容器と共に無線通信可能な小型検出器(ティアンドデイ社製、製品名:Thermo Recorder RTR−53)を入れて密封しておき、1時間毎に湿度計測を行い、保存庫外の受信装置(ティアンドデイ社製、製品名:Data Collector RTR−57C)からデータを受信した。
【0054】
水蒸気バリア性包材内の湿度の測定結果を図5に示す。水蒸気バリア性包材内の湿度は、25℃、60%RH保存条件では湿度20%に収束し、40℃、75%RH保存条件では湿度19%に収束した。120日間保存後、水蒸気バリア性包材を開封し、内抱されていた透湿性複室容器の外観を目視で確認したところ、第1の乾燥組成物と第2の乾燥組成物のいずれも変色は確認されなかった。また、保存後の経口投与用製剤を水に溶解させたところ、得られた経口投与用液剤は、アップルフレーバーのよく香る、無色澄明の液体であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の経口投与用製剤を水に溶解して得られる経口投与用液剤は、ポリエチレングリコールと電解質とアスコルビン酸を主要な成分とし、腸管洗浄液等として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
10…袋体
10−1、10−2…袋体の表裏面
10A…袋体のガゼット折り底部
12…外周シール部(強シール部)
14…開口
15…取手
16…抽出ポート
16−1…ねじ部
16−2…フランジ部
18…隔壁(剥離可能シール部)
18−1…隔壁水平部
18−2…隔壁直立部
18−3…隔壁アール部
20…第1隔室
22…第2隔室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と混合することにより経口投与用液剤を調製するための製剤であって、
水に溶解させることによって、水溶液1L当たり、ポリエチレングリコール含有量が30〜350g、アスコルベート成分含有量が3〜20gである経口投与用液剤が調製されるものであり、
(a)ポリエチレングリコール、及び(b)塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上の電解質を含む第1の乾燥組成物が収容された透湿性容器と、
(c)アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物が収容された透湿性容器とが、
水蒸気バリア性容器に包含されていることを特徴とする経口投与用製剤。
【請求項2】
硫酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の経口投与用製剤。
【請求項3】
前記アスコルビン酸の塩がアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸マグネシウム及びアスコルビン酸カルシウムからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の経口投与用製剤。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が、2000〜4500ダルトンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用製剤。
【請求項5】
前記透湿性容器の水蒸気透過度が、前記水蒸気バリア性容器の水蒸気透過度よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の経口投与用製剤。
【請求項6】
腸管洗浄製剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の経口投与用製剤。
【請求項7】
前記第1の乾燥組成物を収容している透湿性容器及び前記第2の乾燥組成物を収容している透湿性容器が、透湿性の可撓性フィルムによりなる実質的に平坦状の袋体と、前記袋体の内部空間を複数の隔室に分離する隔壁と、前記複数の隔室のうちの第1の隔室に開口するように袋体の周辺部に取り付けられ、液体の注入及び排出をするための抽出ポートとから成る複室容器であり、
前記隔壁が、前記袋体の対向内面を剥離可能に溶着する剥離可能シールであり、
前記隔壁が、前記袋体の底部に沿って、当該袋体の側部より当該袋体の幅における中間部位まで延出する第1部分と、前記第1部分の端部より前記袋体の底部に離間方向に前記袋体の上縁部まで延出する第2部分とから構成され、
前記隔壁における前記袋体の底部に対し近接側の隔室に、前記抽出ポートが開口しており、かつ前記第1の乾燥組成物が収容されており、
前記隔壁における前記袋体の底部から離間側の隔室に、前記第2の乾燥組成物が収容されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の経口投与用製剤。
【請求項8】
前記隔壁における前記第1部分と前記第2部分との接続部がR形状をなすことを特徴とする請求項7に記載の経口投与用製剤。
【請求項9】
前記隔壁を構成する剥離可能シールのシール強度が1〜5N/15mmであることを特徴とする請求項7又は8に記載の経口投与用製剤。
【請求項10】
水と混合することにより経口投与用液剤を調製するための乾燥組成物の保存方法であって、
水に溶解させることによって、水溶液1L当たり、ポリエチレングリコール含有量が30〜350g、アスコルベート成分含有量が3〜20gである経口投与用液剤が調製される乾燥組成物のうち、
(a)ポリエチレングリコール、及び(b)塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルカリ金属スルフェート及びアルカリ土類金属スルフェートから選択される1種以上の電解質を含む第1の乾燥組成物を、透湿性容器に収容し、
(c)アスコルビン酸とアスコルビン酸の1種以上の塩との混合物から選択されるアスコルベート成分を含む第2の乾燥組成物を、前記第1の乾燥組成物とは別個に透湿性容器に収容し、
前記第1の乾燥組成物を収容する透湿性容器及び前記第2の乾燥組成物を収容する透湿性容器を、水蒸気バリア性容器に包含することを特徴とする乾燥組成物の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207002(P2012−207002A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75788(P2011−75788)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】