説明

系統連系インバータ装置

【課題】系統連系インバータ装置でMPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えた後、MPPT制御に戻すとき、最大電力点電圧への追尾時間のロスを低減する。
【解決手段】コントローラ4はインバータ装置3をMPPT制御で制御する第1の電圧指令値生成部401と、連系点電圧抑制制御で制御する第2の電圧指令値生成部402と、MPPT制御と連系点電圧抑制制御とを切り換える電圧指令値切換部403を備える。電圧指令値切換部403がMPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えると、第2の電圧指令値生成部402は太陽電池2の出力電圧を上昇させる制御から当該出力電圧を低下させる制御に切り換え、太陽電池2の最大電力点を探索する。第2の電圧指令値生成部402は太陽電池2の出力電圧が最大電力点の電圧になると、連系点電圧抑制制御を終了し、第1の電圧指令値生成部401はMPPT制御を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池で生成される直流電力を交流電力に逆変換し、その交流電力を商用電力系統に供給する系統連系インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池を用いた系統連系インバータ装置では、太陽電池の発電量が変動するのに応じて最大電力点電圧が変化するので、一般に太陽電池の出力電圧を最大電力点電圧に制御するMPPT制御(Maximum Power Point Tracking、最大電力点追尾制御)が行われる。太陽電池をインバータ装置に直接接続する構成では、MPPT制御は、インバータ装置の出力電流を制御することによってインバータ装置の入力電圧、すなわち、太陽電池の出力電圧を最大電力点電圧に制御する。
【0003】
系統連系インバータ装置と電力系統との間には配電線などによりインダクタンス性の負荷が介在するので、系統連系インバータ装置から出力される交流電流が負荷を流れることによって系統連系インバータ装置と電力系統との連系点の電圧(以下、「連系点電圧」という。)が変動する。連系点電圧が規定値よりも上昇すると、家電設備等の負荷に悪影響を与えるため、分散型電源系統連系技術指針(JEAG9701−1993)では、連系点電圧が規定値よりも上昇したとき、系統連系インバータ装置の出力電流を出力電圧に対して進相させて連系点電圧の上昇を抑制し、その後系統連系インバータ装置の出力力率が規定値になっても連系点電圧の上昇が抑制できない場合は、MPPT制御を停止し、系統連系インバータ装置の出力電流を減少させて連系点電圧を規定値以下に抑制することが規定されている。
【0004】
分散型電源系統連系技術指針(JEAG9701−1993)に従いMPPT制御を系統連系インバータ装置の出力電流を減少させて連系点電圧を規定値以下に抑制する制御(以下、「連系点電圧抑制制御」という。)に切り換えた場合、その後、連系点電圧が規定値以下に低下したときにはMPPT制御に戻す必要がある。しかし、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換える時に太陽電池の出力特性(電力−電圧の特性)がMPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えた時の出力特性から変化していた場合、変化後の出力特性では最大電力点電圧がどこにあるのか不明であるため、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に移行する条件を効率良く検出できないという問題がある。
【0005】
従来、特開平8−317764号公報には、上記の問題を解消する方法として、
(1)連系点電圧Veが第1の基準電圧V1を超えると、MPPT制御から太陽電池の出力電圧Vsをその時の最大電力点電圧VAに固定する連系点電圧抑制制御に切り換える。
(2)連系点電圧抑制制御に移行した後は連系点電圧Veが第2の基準電圧V2(>V1)となるように太陽電池の出力電圧Vsを抑制する。
(3)日射量の低下による太陽電池の出力電力の低下や電力系統側の負荷変動によって、連系点電圧Veが第2の基準電圧V2よりも低下すると、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換える。
という方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−317664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MPPT制御は、太陽電池の出力電圧を所定のステップで変化させ、その変化方向に対する太陽電池の出力電力の変化方向を調べる方法(いわゆる山登り法)によって、太陽電池の出力電圧を太陽電他の出力特性(山形の電力−電圧特性)の最大電力点に収束させる制御である。特開平08−317664号公報に記載の連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換える制御では、制御を切り換えた時の太陽電池の出力特性に対して最大電力点電圧を追尾することになるので、その出力特性がMPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えたときの出力特性から変化している場合、最大電力点電圧への追尾速度が遅くなるという問題がある。
【0008】
図6に示すように、出力特性AをMPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えたときの出力特性とし、出力特性Bを連系点電圧抑制制御からMPPT制御に戻すときの出力特性とし、連系点電圧抑制制御では出力特性Aの最大電力点電圧VAmaxから電圧を上昇させる方向(矢印の方向)に太陽電池の出力電圧を変化させる制御が行われたとする。この連系点電圧抑制制御で太陽電池の出力電圧が「VAk」に制御されたときに連系点電圧が規定値以下に低下し、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換えると、太陽電池の出力特性は出力特性Bになっているので、切換後のMPPT制御では出力特性Bの電力Pkに対応する動作点NBkから最大電力点NBmaxを探索することになる。
【0009】
しかし、出力特性Bで動作点NBkから最大電力点NBmaxを探索する場合、最大電力点NBmaxが動作点NBkに対して右側の領域にあるのか左側の領域にあるのかが分からない。このため、動作点NBkから右側の領域に探索を開始すると、出力特性Bの山を下る方向の探索になるので、途中で出力特性Bの山を登る方向に探索方向を反転しなければならず、その分、最大電力点NBmaxへの追尾速度が遅れることになる。このことは、連系点電圧抑制制御で出力特性Aの最大電力点電圧VAmaxから電圧を低下させる方向に太陽電池の出力電圧を変化させる制御が行われ、出力特性Bの動作点NBk’から最大電力点NBmaxを探索することになる場合でも同様である。
【0010】
本発明は、MPPT制御から一時的に連系点電圧抑制制御に切り換えた後、MPPT制御に戻すときに最大電力点電圧への追尾時間のロスを低減することができる系統連系インバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0012】
本発明によって提供される系統連系インバータ装置は、太陽電池によって生成される直流電力を交流電力に逆変換し、電力系統に出力する電力逆変換手段と、前記電力逆変換手段と前記電力系統との連系点の電圧を検出する連系点電圧検出手段と、前記連系点の電圧が予め設定された閾値以下の状態では前記太陽電池の出力電力が最大電力点の電力となるように前記電力逆変換手段の出力電流を制御する最大電力点追尾制御を行い、前記連系点の電圧が前記閾値よりも高い状態では前記太陽電池の出力電力が前記最大電力点の電力よりも低い領域で変化するように前記電力逆変換手段の出力電流を制御して前記連系点の電圧の上昇を抑制する連系点電圧抑制制御を行う制御手段と、を備えた系統連系インバータ装置において、前記制御手段は、前記連系点の電圧が前記閾値よりも高い状態から前記閾値以下に低下したとき、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を反転させて前記最大電力点を検出する最大電力点検出手段と、前記最大電力点検出索手段により前記太陽電池の最大電力点が検出されると、前記連系点電圧抑制制御を終了し、前記最大電力点追尾制御を開始させる切換制御手段と、を含む、ことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
なお、上記の系統連系インバータ装置において、前記電力逆変換手段の出力電力を検出する出力電力検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記連系点電圧抑制制御中に、前記電力逆変換手段の出力電力がゼロ以下になる場合は、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を反転して前記太陽電池の出力電力を上昇させ、前記前記電力逆変換手段の出力電力がゼロより大きくなると、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を元の変化方向に戻すとよい(請求項2)。
【0014】
また、上記の系統連系インバータ装置において、前記連系点電圧抑制制御における前記太陽電池の出力電圧の変化方向は前記太陽電池の出力電圧が上昇する方向であり、前記最大電力点検出手段は、前記連系点の電圧が前記閾値よりも高い状態から前記閾値以下に低下したとき、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を低下する方向に反転させて前記最大電力点を検出するとよい(請求項3)。
【0015】
また、上記の系統連系インバータ装置において、前記閾値には第1の閾値と当該第1の閾値よりも小さい第2の閾値とが含まれ、前記制御手段は、前記連系点の電圧が上昇している状態では前記第1の閾値を用いて前記最大電力点追尾制御と前記連系点電圧抑制制御とを切り換える制御を行い、前記連系点の電圧が低下している状態では前記第2の閾値を用いて前記連系点電圧抑制制御と前記最大電力点追尾制御とを切り換える制御を行うとよい(請求項4)。
【0016】
また、上記の系統連系インバータ装置において、前記最大電力点検出手段は、前記太陽電池の出力電圧が所定のピッチで変化する毎に、前記太陽電池の出力電力の変化率ΔPn/ΔVn(ΔPn:今回の出力電力の変化量、ΔVn:今回の出力電圧の変化量)を算出するとともに、その変化量と前回算出された前記太陽電池の出力電力の変化量ΔPn-1/ΔVn-1(ΔPn-1:前回の出力電力の変化量、ΔVn-1:前回の出力電圧の変化量)との積(ΔPn/ΔVn)・(ΔPn-1/ΔVn-1)を算出し、その算出値がゼロ以下に変化するタイミングを前記太陽電池の最大電力点として検出するとよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制御手段は、連系点電圧抑制制御中に連系点の電圧が閾値よりも高い状態から閾値以下に低下すると、太陽電池の出力電圧の変化方向を反転して太陽電池の最大電力点を探索する。例えば、連系点電圧抑制制御で太陽電池の出力電圧を最大電力点電圧よりも高い領域で上昇させている場合、出力電圧の変化方向を低下する方向に反転して太陽電池の最大電力点を探索する。逆に、連系点電圧抑制制御で太陽電池の出力電圧を最大電力点電圧よりも低い領域で低下させている場合、出力電圧の変化方向を上昇する方向に反転して太陽電池の最大電力点を探索する。そして、最大電力点を検出すると、制御手段は、連系点電圧抑制制御を終了し、最大電力点追尾制御を開始する。
【0018】
本発明によれば、連系点電圧抑制制御から最大電力点追尾制御に切り換えるとき、その時の太陽電池の出力電圧を直ちに太陽電池の電力−電圧特性の最大電力点の方向に変化させて当該最大電力点を検出した後、最大電力点追尾制御に切り換えるので、切換後の最大電力点追尾のための時間的なロスを低減し、迅速に最大電力点を追尾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る系統連系インバータ装置のブロック構成を示す図である。
【図2】連系点電圧抑制制御中に日射量が変化した場合、連系点電圧を上昇制御から減少制御に変化させることを説明するための太陽電池の出力特性の一例を示す図である。
【図3】MPPT制御と連系点電圧抑制制御とを切り換える制御の手順を示すフローチャートである。
【図4】連系点電圧抑制制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】連系点電圧抑制制御を解除する処理手順を示すフローチャートである。
【図6】従来の方法で連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換えたときに最大電力点追尾が遅くなる理由を説明するための太陽電池の出力特性(電力−電圧特性)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る系統連系インバータ装置を図1乃至図5を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る系統連系インバータ装置のブロック構成を示す図である。
【0022】
図1に示す系統連系インバータ装置1は、太陽電池2を電力源とし、太陽電池2で生成される直流電力を交流電力に逆変換して電力系統7に出力するインバータ装置である。系統連系インバータ装置1は、基本的なブロック構成としてインバータ装置3、コントローラ4、直流計測器5及び交流計測器6を備える。
【0023】
太陽電池2は、太陽光を受光し、光起電力効果により受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する。太陽電池2で発生された電気エネルギーは直流電力としてインバータ装置3に出力される。
【0024】
インバータ装置3は、太陽電池2から出力される直流電力を交流電力に逆変換して電力系統7に出力する。インバータ装置3には、6個のスイッチング素子を用いた三相フルブリッジ回路で構成される電圧型の三相インバータ、三相インバータから出力されるU相、V相、W相の各相の交流電圧及び交流電流に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ、フィルタから出力される交流電圧のレベルを電力系統7の電圧(以下、「系統電圧」という。)とほぼ同一のレベルに昇圧する変圧器及び異常発生時にインバータ装置3を電力系統7から切り離すための解列器が含まれる。
【0025】
6個のスイッチング素子は、コントローラ4から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号によってオン・オフ駆動される。PWM信号は、コントローラ4によって、例えば、インバータ装置3から出力させる交流電流の目標波形(被変調波信号の波形)と所定の高周波の三角波(変調波)の波形とを比較する三角波比較方式により生成される。6個のスイッチング素子がPWM信号によってオン・オフ動作することにより直流電力が交流電力に変換されてインバータ装置3から電力系統7のU相、V相、W相の各相に出力される。インバータ装置3から出力される交流電圧及び交流電流は、商用電源周波数(日本では50Hz/60Hz)を有している。
【0026】
直流計測器5は、太陽電池2の出力電圧Vdc(太陽電池2の動作点電圧であり、インバータ装置3の入力電圧に相当)と出力電流Idcを検出し、出力電圧Vdcと出力電流Idcを乗じて出力電力Pdcを算出する。直流計測器5で検出された出力電圧Vdcと算出された出力電力Pdcはコントローラ4に入力される。
【0027】
なお、直流計測器5を直流電流計と直流電圧計で構成し、コントローラ4に出力電圧Vdcと出力電流Idcの検出値を入力してコントローラ4で出力電力Pdcを算出する構成にしてもよい。
【0028】
交流計測器6は、インバータ装置3の出力電圧vac(U相、V相、W相の各相の三相交流電圧)と出力電流iac(U相、V相、W相の各相の三相交流電流)とを検出し、これらの検出値を用いて出力電圧vacの実効値Vacと出力電力Wac=Pac(有効電力)+j・Qac(無効電力)を算出する。交流計測器6で検出された出力電圧vac及び出力電流iacと算出された実効値Vacと出力電力Wacはコントローラ4に入力される。
【0029】
なお、交流計測器6を交流電流計と交流電圧計で構成し、コントローラ4に出力電圧vac及び出力電流iacの検出値を入力してコントローラ4で実効値Vac及び出力電力Wacを算出する構成にしてもよい。
【0030】
コントローラ4は、電流モード制御によりインバータ装置3内の電圧型の三相インバータの出力電流iacを制御する。系統連系インバータ装置1では、太陽電池2で生成される電力を効率良く電力系統7に出力するため、太陽電池2の出力電圧Vdcを太陽電池2の出力特性(電力−電圧特性)の最大電力点電圧(最大電力点に対応する電圧)に制御する必要がある。太陽電池2の出力特性は日射量によって変化し、その出力特性の変化に応じて最大電力点電圧も変化する。このため、コントローラ4は、所定の周期でインバータ装置3の入力電圧Vdc(すなわち、太陽電池2の出力電圧Vdc)が最大電力点電圧となるインバータ装置3の出力電圧の目標値vacoを設定し、電流マイナーループによってインバータ装置3の出力電流iacが目標値vacoとなるように制御する(MPPT制御)。
【0031】
一方、系統連系インバータ装置1では、MPPT制御により系統連系インバータ装置1の出力電流iacが変化するのに応じて系統連系インバータ装置1と電力系統7との連系点の電圧vacが変動した場合、その連系点の電圧vacの実効値Vac(インバータ装置3の出力端の電圧に相当。以下、「連系点電圧Vac」という。)が規定値以上に上昇しないように(規定値以上の過電圧にならないように)制御する必要がある。このため、コントローラ4は、所定の周期で連系点電圧Vacが規定値以上に上昇していないか監視し、上昇した場合は、MPPT制御を連系点電圧抑制制御に切り換える。
【0032】
系統連系インバータ装置1は一般に配電線を通して電力系統7に接続されており、系統連系インバータ装置1の出力電流iacが増加すると(出力電力Wacが増大すると)、それに応じて配電線の逆起電力により連系点電圧Vacが上昇する。連系点電圧抑制制御は、インバータ装置3の出力電流iacを所定のステップで減少させることにより配電線の逆起電力を減少させ、これにより連系点電圧Vacを規定値以下に抑制する制御である。
【0033】
連系点電圧抑制制御は、系統連系インバータ装置1の出力電力Wacを減少させる制御であるから、例えば、太陽電池2の出力特性が図6の出力特性Aである場合、太陽電池2の動作点を最大電力点NAmaxから右方向(太陽電池2の出力電圧Vdcを上昇させる方向)若しくは左方向(太陽電池2の出力電圧Vdcを低下させる方向)に変化させる制御に相当する。太陽電池2の動作点を出力電圧Vdcが低下する方向に変化させる制御は、太陽電池2の動作点を出力電圧Vdcが上昇する方向に変化させる制御に比べると、同一の出力電力における太陽電池2の出力電流Idcが大きくなるから、発熱や電力ロスの点で不利である。従って、本実施形態では、太陽電池2の動作点を出力電圧Vdcが上昇する方向に変化させる連系点電圧抑制制御をしている。
【0034】
コントローラ4は、連系点電圧抑制制御によって連系点電圧Vacが規定値よりも小さくなると、連系点電圧抑制制御を終了し、MPPT制御を再開する。すなわち、コントローラ4は、連系点電圧Vacを監視しながら、通常はMPPT制御によりインバータ装置3の出力電流iacを制御し、連系点電圧Vacが規定値以上に上昇すると、MPPT制御を連系点電圧抑制制御に切り換えて連系点電圧Vacの上昇を抑制し、連系点電圧抑制制御によって連系点電圧Vacが規定値よりも小さくなると、連系点電圧抑制制御を終了し、MPPT制御に復帰する制御を行う。
【0035】
図1のコントローラ4内の構成は、上記のコントローラ4の制御を実現するための構成をブロック図で示したものである。
【0036】
コントローラ4は、第1の電圧指令値生成部401、第2の電圧指令値生成部402、電圧指令値切換部403、無効電力指令部404、被変調波生成部405及びPWM信号生成部406を含む。
【0037】
コントローラ4は、上述したように、インバータ装置3内の6個のスイッチング素子のオン・オフ駆動を制御するためのPWM信号を生成し、そのPWM信号をインバータ装置3に供給する。コントローラ4は、αβ軸座標系でインバータ装置3の出力電流iacの制御値Iα,Iβ(目標値と実測値との偏差に基づき実測値を目標値にするための制御値。Iαは制御値のα軸成分、Iβは制御値のβ軸成分)を設定する。そして、コントローラ4は、制御値Iα,Iβを二相−三相変換してU、V、Wの各相の出力電流の目標値iuo,ivo,iwo(被変調波の波形)を生成し、各目標値iuo,ivo,iwoをそれぞれ所定の高周波の三角波(変調波)と比較してPWM信号を生成する。
【0038】
第1の電圧指令値生成部401、第2の電圧指令値生成部402、電圧指令値切換部403、無効電力指令部404及び被変調波生成部405は、インバータ装置3の出力電流iacのαβ軸座標系における制御値Iαo,Iβoを生成し、その制御値Iαo,Iβoをαβ−UWV変換してU,V,Wの各相の出力電流の目標値iuo,ivo,iwoを生成する機能を果たすブロックである。αβ軸座標系における制御値Iαo,Iβoは、インバータ装置3の出力電圧vacのdq座標系における制御値Ed,Eqを設定し、その制御値Ed,Eqをdq−αβ変換してαβ軸座標系における各軸の成分Eα,Eβを求めるとともに、インバータ装置3のU、V、Wの各相の出力電流の実測値iu,iv,iwをUWV−αβ変換してαβ軸座標系における各軸の成分Iα,Iβを求め、両成分について差分(Eα−Iα),(Eβ−Iβ)を演算することにより生成される。
【0039】
第1の電圧指令値生成部401は、MPPT制御により太陽電池2の出力電圧Vdcの目標値Vdcoを設定するブロックである。第1の電圧指令値生成部401で設定される目標値Vdcoは、電圧指令値切換部403を介して被変調波生成部405にdq座標系におけるq軸成分Vqとして入力される。第1の電圧指令値生成部401には直流計測器5から直流電圧Vdcの検出値と直流電力Pdcの算出値とが入力される。第1の電圧指令値生成部401は、所定の周期で出力電圧Vdcの目標値Vdcoの更新処理を行う。この更新処理は、前回設定された出力電圧Vdcの目標値Vdco(以下、前回の目標値を「Vn-1」と表記する。)に所定の電圧値ΔVdc(>0)を加算若しくは減算して今回の目標値Vdco(以下、今回の目標値を「Vn」と表記する。)を設定する処理である。
【0040】
第1の電圧指令値生成部401は、前回直流計測器5から入力された直流電力Pdc(以下、前回の入力値を「Pn-1」と表記する。)と今回直流計測器5から入力された直流電力Pdc(以下、今回の入力値を「Pn」と表記する。)の差分ΔP=Pn−Pn-1を演算し、ΔP>0であれば、前回と同様の電圧値ΔVdcの加算若しくは減算の処理を行う。すなわち、第1の電圧指令値生成部401は、前回の更新処理が「Vn=Vn-1+ΔVdc」であれば、今回の更新処理でも「Vn=Vn-1+ΔVdc」の処理を行い、前回の更新処理が「Vn=Vn-1−ΔVdc」であれば、今回の更新処理でも「Vn=Vn-1−ΔVdc」の処理を行う。
【0041】
一方、ΔP<0であれば、第1の電圧指令値生成部401は、前回とは逆の処理を行う。すなわち、前回の更新処理が「Vn=Vn-1+ΔVdc」であれば、今回の更新処理では「Vn=Vn-1−ΔVdc」の処理を行い、前回の更新処理が「Vn=Vn-1−ΔVdc」であれば、今回の更新処理では「Vn=Vn-1+ΔVdc」の処理を行う。
【0042】
そして、ΔP=0であれば、第1の電圧指令値生成部401は、電圧値ΔVdcの加算若しくは減算の処理はせず、「Vn=Vn-1」の処理を行う。
【0043】
第2の電圧指令値生成部402は、連系点電圧抑制制御により太陽電池2の出力電圧Vdcの目標値Vdcoを設定するブロックである。第2の電圧指令値生成部402で設定される目標値Vdcoは、電圧指令値切換部403を介して被変調波生成部405にdq座標系におけるq軸成分Vqとして入力される。第2の電圧指令値生成部402には直流計測器5から直流電圧Vdcの検出値と直流電力Pdcの算出値が入力され、交流計測器6から連系点電圧Vac(交流電圧vacの検出値から算出された実効値)が入力される。
【0044】
第2の電圧指令値生成部401は、所定の周期で出力電圧Vdcの目標値Vdcoを上昇させる更新処理を行うとともに、連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に低下したか否かの判別処理を行う。また、第2の電圧指令値生成部401は、出力電圧Vdcの目標値Vdcoを上昇させることによって連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に低下すると、連系点電圧抑制処理を解除する処理を行う。
【0045】
また、第2の電圧指令値生成部401は、連系点電圧抑制制御中に日射量が減少し、インバータ装置3の出力電力が0になると、出力電圧Vdcの目標値Vdcoを上昇させる処理から出力電圧Vdcの目標値Vdcoを低下させる処理に切り換える。これは、例えば、太陽電池2の出力特性が図2の出力特性Bで、連系点電圧抑制制御により出力電圧Vdcの目標値Vdcoが「VBh」まで低下したとき(矢印(イ)の動作点移動参照)に日射量が減少して出力特Cに変化していた場合、出力特性Cでは電圧VBhの出力電力が「0」になり、すなわち、インバータ装置3から電力系統7に電力が出力されなくなり、連系点電圧Vacの抑制制御を行う意味がなくなるから、出力特性Bの動作点NBhを出力特性Cの出力Phに対応する動作点NChに移動させる(すなわち、出力電圧Vdcの目標値Vdcoを「VBh」から「VCh」に低下させる。矢印(ロ)の動作点移動参照)ためである。
【0046】
なお、連系点電圧抑制制御中に日射量が増加し、例えば、太陽電池2の出力特性が図2の出力特性Aに変化しても、第2の電圧指令値生成部401は出力電圧Vdcの目標値Vdcoの上昇処理を継続する。この場合は、出力特性Bの動作点NBhが出力特性Aの動作点NAhに移動し、太陽電池2の出力電力Pdcが増加して連系点電圧Vacを上昇させる方向に作用するから、太陽電池2の出力電力Pdcを減少する制御を継続すれば、連系点電圧Vacの上昇を抑制することになるからである。
【0047】
コントローラ4は、起動時はMPPT制御により太陽電池2の出力電圧Vdcの目標値Vdcoを制御するが、MPPT制御中に連系点電圧Vacが第1の閾値V1以上に上昇すると、連系点電圧抑制制御に切り換え、太陽電池2の出力電圧Vdcの目標値Vdcoを連系点電圧抑制制御によって制御する。そして、連系点電圧抑制制御中に連系点電圧Vacが第1の閾値V1よりも小さい第2の閾値V2以下に低下すると、連系点電圧抑制制御を解除する処理をした後、MPPT制御に切り換える。
【0048】
電圧指令値切換部403は、連系点電圧Vacの検出値に基づき、被変調波生成部405に第1の電圧指令値生成部401で生成される電圧指令値(MPPT制御による電圧指令値)と第2の電圧指令値生成部402で生成される電圧指令値(連系点電圧抑制制御による電圧指令値)のいずれを入力するかを制御するブロックである。電圧指令値切換部403による電圧指令値の切換制御は、連系点電圧Vacの検出値に基づき、太陽電池2の出力電圧Vdcの制御をMPPT制御と連系点電圧抑制制御との間で切り換える制御と等価である。
【0049】
電圧指令値切換部403には、交流計測器6から連系点電圧Vacの検出値が入力される。電圧指令値切換部403は、連系点電圧Vacを第1の閾値V1と第2の閾値V2の2つの閾値と比較し、その比較結果に基づいてスイッチ403bの切換を制御する切換制御部403aと、被変調波生成部405に第1の電圧指令値生成部401を接続する状態と被変調波生成部405に第2の電圧指令値生成部402を接続する状態とを切り換えるスイッチ403bとを有する。
【0050】
切換制御部403aは、連系点電圧Vacが第2の閾値V2(<V1)よりも小さい値から第1の閾値V1に上昇するまではスイッチ403bを被変調波生成部405に第1の電圧指令値生成部401を接続する(MPPT制御を行う)状態に制御する。切換制御信号生成部403aは、連系点電圧Vacが第1の閾値V1以上に上昇すると、連系点電圧Vacが第2の閾値V2に低下するまではスイッチ403bを被変調波生成部405に第2の電圧指令値生成部402を接続する(連系点電圧抑制制御を行う)状態に制御する。そして、連系点電圧Vacが第2の閾値V2よりも小さくなると、切換制御信号生成部403aは、スイッチ403bを被変調波生成部405に第1の電圧指令値生成部401を接続する(MPPT制御を行う)状態に制御する。
【0051】
なお、本実施形態では、MPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換える第1の閾値V1と、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換える第2の閾値V2とにV1>V2の関係を設定しているが、これは連系点電圧Vacが閾値の近傍で変動した場合、MPPT制御と連系点電圧抑制制御との間の切換制御でチャタリングが生じるのを防止するためである。従って、V1=V2に設定してもよい。
【0052】
無効電力指令部404は、無効電力の目標値Qoを設定するブロックである。無効電力の目標値Qoは、通常力率=1の値(0)が設定される。無効電力指令部404で設定される目標値Qoは、被変調波生成部405にdq座標系におけるd軸成分Vdとして入力される。
【0053】
被変調波生成部405は、第1の電圧指令値生成部401又は第2の電圧指令値生成部402と無効電力指令部404から入力されるdq座標系のd軸成分Vd及びq軸成分Vqと、インバータ装置3のU,V,Wの各相の出力電流の実測値iu,iv,iwとを用いてU、V、Wの各相の出力電流の制御値iuo,ivo,iwoを生成するブロックである。被変調波生成部405には、直流計測器5から太陽電池2の出力電圧Vdcの検出値が入力され、交流計測器6から出力電圧vac、出力電流iac及び交流電力Pacの検出値が入力される。
【0054】
被変調波生成部405は、第1の電圧指令値生成部401又は第2の電圧指令値生成部402から入力される直流電圧指令値Vdcoと直流計測器5から入力される太陽電池2の出力電圧Vdcとの偏差を算出し、その編差にPI制御演算を行って制御値のdq座標系におけるq軸成分Eqを算出する。被変調波生成部405は、無効電力指令部404から入力される無効電力指令値Qoと交流計測器6から入力される交流電力Pacに含まれる無効電力Qとの偏差を求め、その編差にPI制御演算を行って制御値のd軸成分Edを算出する。そして、被変調波生成部405は、d軸成分Edとq軸成分Eqをdq−αβ変換して制御値のαβ軸座標系におけるα軸成分Eαとβ軸成分Eβを算出する。
【0055】
また、被変調波生成部405は、交流計測器6から入力されるインバータ装置3のU、V、Wの各相の出力電流の実測値iu,iv,iwをUWV−αβ変換してαβ軸座標系におけるα軸成分Iαとβ軸成分Iβを算出する。被変調波生成部405は、αβ軸座標系の各軸成分について、差分を演算することにより制御値Iαo(=Eα−Iα),Iβo(=Eβ−Iβ)を生成する。そして、被変調波生成部405は、制御値Iαo,Iβoをαβ−UWV変換してU,V,Wの各相の出力電流の制御値iuo,ivo,iwoを生成する。被変調波生成部405で生成された生成されたiuo,ivo,iwoは、PWM信号生成部406に入力される。
【0056】
PWM信号生成部406は、三角波を生成し、被変調波生成部405から入力される被変調波(U,V,Wの各相の出力電流の制御値iuo,ivo,iwo)のレベルと三角波のレベルを比較し、その比較結果に応じたレベルのパルス信号をPWM信号として生成するブロックである。PWM信号生成部406で生成されたPWM信号は、インバータ装置3に入力される。
【0057】
次に、コントローラ4におけるMPPT制御と連系点電圧抑制制御との切換制御について、図3乃至図5のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
図3は、MPPT制御と連系点電圧抑制制御とを切り換える制御の手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、系統連系インバータ装置1が起動し、MPPT制御によってインバータ装置3を制御している状態で連系点電圧Vacが変動した場合のMPPT制御と連系点電圧抑制制御との切換制御の手順を示している。図4は、連系点電圧抑制制御の処理手順を示すフローチャートであり、図5は、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換える時の連系点電圧抑制制御を解除する処理手順を示すフローチャートである。コントローラ4は、所定の周期で図3乃至図5に示すフローチャートを実行する。
【0059】
コントローラ4は、連系点電圧Vacが第1の閾値V1以上に上昇していないか監視しており(S1)、連系点電圧Vacが第1の閾値V1以上に上昇していなければ(S1:NO)、MPPT制御を継続する(S2)。コントローラ4は、連系点電圧Vacが第1の閾値V1以上に上昇すると(S1:YES)、制御をMPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換え(S3)、図4に示す「連系点電圧抑制制御」によりインバータ装置3の制御を行う。
【0060】
図2に示したように、制御を連系点電圧抑制制御に切り換えるときの太陽電池2の出力特性が出力特性Bであるとすると、コントローラ4は切換直前までMPPT制御を行っているので、太陽電池2の出力電圧Vdc(すなわち、インバータ装置3の出力電圧Vdc)は、出力特性Bの最大電力点電圧VBmaxとなっている。
【0061】
コントローラ4は、連系点電圧抑制制御に移行すると、交流計測器6から入力されるインバータ装置3の出力電力Pacが「0」より大きいか否かを判別し(S10)、出力電力Pacが「0」より大きければ(S10:YES)、現在の直流電圧指令値Vdcoに所定の電圧値ΔVdcを加算して直流電圧指令値Vdcoを上昇させた後(S11)、図3の制御に戻る。一方、コントローラ4は、出力電力Pacが「0」以下であれば(S10:NO)、現在の直流電圧指令値Vdcoから所定の電圧値ΔVdcを減算して直流電圧指令値Vdcoを減少させた後(S12)、図3の制御に戻る。
【0062】
図3の制御に戻ると、コントローラ4は、連系点電圧抑制制御により連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に減少したか否かを判別する(S4)。連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に減少していなければ(S4:NO)、コントローラ4は、連系点電圧抑制制御を継続する(S5)。一方、コントローラ4は、連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に減少していれば(S4:YES)、図5に示す「連系点電圧抑制制御解除」の制御を行う(S6)。
【0063】
「連系点電圧抑制制御解除」は、連系点電圧抑制制御をMPPT制御に切り換える際、その時の太陽電圧2の出力特性は、MPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えたときの出力特性から変化していると考えられるので、太陽電池2の出力電圧Vdcを変化後の出力特性の最大電力点電圧に設定して連系点電圧抑制制御を終了させる制御である。
【0064】
例えば、MPPT制御から連系点電圧抑制制御に切り換えたときの太陽電池2の出力特性を図2の出力特性Bとし、連系点電圧抑制制御で太陽電池2の動作点を出力特性Bの最大電力点NBmaxから動作点NBkに移動させたとき(矢印(イ)の動作点移動参照)に連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に低下したとする。そして、このときの太陽電圧2の出力特性が図2の出力特性Cであるとすると、連系点電圧抑制制御解除の開始をするときの動作点は出力特性Cの動作点NCkとなり、図2の出力特性Aであるとすると、連系点電圧抑制制御解除の開始をするときの動作点は出力特性Aの動作点NAkとなる。
【0065】
図2から明らかなように、出力特性A,Cの動作点NAk,NCkはそれぞれ最大電力点NAmax,NCmaxよりも右側の領域(VAk>VAmax,VCk>VCmaxの領域)にあるから、連系点電圧抑制制御解除に移行すると、連系点電圧抑制制御で直流電圧指令値Vdcを上昇させていた制御は直流電圧指令値Vdcを低下させる制御に切り換えられ、連系点電圧抑制制御解除の処理によって太陽電池2の出力電圧Vdcは連系点電圧抑制制御解除の開始時の出力特性Aの最大電力点NAmaxに対応する電圧VAmax(又は出力特性Cの最大電力点NCmaxに対応する電圧VCmax)に設定される。
【0066】
図5に示す「連系点電圧抑制制御解除」に移行すると、コントローラ4は、直流計測器5から入力される直流電圧Vdcと直流電力Pdcから今回処理時の直流電圧Vnと直流電力Pnを取得し(S20)、これらの取得値と前回処理時に取得した直流電圧Vn-1と直流電力Pn-1とを用いて直流電圧Vdcの差分ΔVn/(Vn−Vn-1)と直流電力Pdcの差分ΔPn=(Pn−Pn-1)を算出する(S21)。更に、コントローラ4は、直流電力Pdcの変化率(ΔPn/ΔVn)を演算し、前回処理時に算出した直流電力Pdcの変化率(ΔPn-1/ΔVn-1)との積(ΔPn/ΔVn)・(ΔPn-1/ΔVn-1)を求める。
【0067】
そして、コントローラ4は、その積の値が「0」以下である否かを判別し(S22)、(ΔPn/ΔVn)・(ΔPn-1/ΔVn-1)>0であれば(S22:NO)、現在の直流電圧指令値Vdcoから所定の電圧値ΔVdcを減算して直流電圧指令値Vdcoを減少させた後(S23)、図3の制御に戻る。一方、(ΔPn/ΔVn)・(ΔPn-1/ΔVn-1)≦0であれば(S22:YES)、コントローラ4は、連系点電圧抑制制御解除の処理を完了し(S24)、図3の制御に戻る。
【0068】
図3の制御に戻ると、コントローラ4は、連系点電圧抑制制御解除の処理が完了しているか否を判別し(S7)、連系点電圧抑制制御解除の処理が完了していなければ(S7:NO)、ステップS1に戻り、上述したステップS1〜S7の処理を繰り返す。そして、連系点電圧抑制制御解除の処理が完了すると(S7:YES)、コントローラ4は、連系点電圧抑制制御を終了し、制御をMPPT制御に切り換えて(S8)、ステップS1に戻る。すなわち、コントローラ4は、連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換えるときの太陽電池2の出力特性の最大電力点を動作点としてMPPT制御を再開する。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、連系点電圧Vacが第2の閾値V2以下に減少したことによってインバータ装置3の制御を連系点電圧抑制制御からMPPT制御に切り換える場合、連系点電圧抑制制御における直流電圧指令値Vdcoの上昇制御を直流電圧指令値Vdcoの低下制御に切り換えて太陽電池2の出力電圧Vdcを制御切換時の太陽電池2の出力特性の最大電力点電圧に設定し、その後連系点電圧抑制制御を終了してMPPT制御を再開させるようにしているので、連系点電圧抑制制御から直ちにMPPT制御に切り換えた場合に比べ、MPPT制御で最大電力点を探索するための追尾処理による時間のロスを低減することができる。従って、本実施形態によれば、連系点電圧抑制制御における動作点をMPPT制御の最適動作点に迅速に切り換えることができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、連系点電圧抑制制御を太陽電池2の直流電圧Vdcを上昇させる方向(図2の出力特性Bの矢印(イ)の方向)に制御していたが、本発明は、太陽電池2の直流電圧Vdcを低下させる方向(図2の出力特性Bの矢印(ハ)の方向)に制御した場合にも適用することができる。この場合は、図4に示す「連系点電圧抑制制御」のフローチャートではステップS10,S11が不要になる。また、図5に示す「連系点電圧抑制制御解除」のフローチャートではステップS23の処理が直流電圧指令値Vdcoに所定の電圧値ΔVdcを加算して直流電圧指令値Vdcoを上昇させる処理となる。
【0071】
また、上記実施形態では、インバータ装置が三相インバータの場合について説明したが、本発明は、インバータ装置が単相インバータの場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 系統連系インバータ装置
2 太陽電池
3 インバータ装置
4 コントローラ
401 第1の電圧指令値生成部
402 第2の電圧指令値生成部
403 電圧指令値切換部
403a 切換制御部
403b スイッチ
404 無効電力指令部
405 被変調波生成部
406 PWM信号生成部
5 直流計測器
6 直流計測器
7 電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池によって生成される直流電力を交流電力に逆変換し、電力系統に出力する電力逆変換手段と、
前記電力逆変換手段と前記電力系統との連系点の電圧を検出する連系点電圧検出手段と、
前記連系点の電圧が予め設定された閾値以下の状態では前記太陽電池の出力電力が最大電力点の電力となるように前記電力逆変換手段の出力電流を制御する最大電力点追尾制御を行い、前記連系点の電圧が前記閾値よりも高い状態では前記太陽電池の出力電力が前記最大電力点の電力よりも低い領域で変化するように前記電力逆変換手段の出力電流を制御して前記連系点の電圧の上昇を抑制する連系点電圧抑制制御を行う制御手段と、
を備えた系統連系インバータ装置において、
前記制御手段は、
前記連系点の電圧が前記閾値よりも高い状態から前記閾値以下に低下したとき、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を反転させて前記最大電力点を検出する最大電力点検出手段と、
前記最大電力点検出索手段により前記太陽電池の最大電力点が検出されると、前記連系点電圧抑制制御を終了し、前記最大電力点追尾制御を開始させる切換制御手段と、
を含む、
ことを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項2】
前記電力逆変換手段の出力電力を検出する出力電力検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記連系点電圧抑制制御中に、前記電力逆変換手段の出力電力がゼロ以下になる場合は、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を反転して前記太陽電池の出力電力を上昇させ、前記前記電力逆変換手段の出力電力がゼロより大きくなると、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を元の変化方向に戻す、請求項1に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項3】
前記連系点電圧抑制制御における前記太陽電池の出力電圧の変化方向は前記太陽電池の出力電圧が上昇する方向であり、
前記最大電力点検出手段は、前記連系点の電圧が前記閾値よりも高い状態から前記閾値以下に低下したとき、前記太陽電池の出力電圧の変化方向を低下する方向に反転させて前記最大電力点を検出する、請求項1又は2に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項4】
前記閾値には第1の閾値と当該第1の閾値よりも小さい第2の閾値とが含まれ、
前記制御手段は、前記連系点の電圧が上昇している状態では前記第1の閾値を用いて前記最大電力点追尾制御と前記連系点電圧抑制制御とを切り換える制御を行い、前記連系点の電圧が低下している状態では前記第2の閾値を用いて前記連系点電圧抑制制御と前記最大電力点追尾制御とを切り換える制御を行う、請求項1乃至3のいずれかに記載の系統連系インバータ装置。
【請求項5】
前記最大電力点検出手段は、前記太陽電池の出力電圧が所定のピッチで変化する毎に、前記太陽電池の出力電力の変化率ΔPn/ΔVn(ΔPn:今回の出力電力の変化量、ΔVn:今回の出力電圧の変化量)を算出するとともに、その変化量と前回算出された前記太陽電池の出力電力の変化量ΔPn-1/ΔVn-1(ΔPn-1:前回の出力電力の変化量、ΔVn-1:前回の出力電圧の変化量)との積(ΔPn/ΔVn)・(ΔPn-1/ΔVn-1)を算出し、その算出値がゼロ以下に変化するタイミングを前記太陽電池の最大電力点として検出する、請求項1乃至4のいずれかに記載の系統連系インバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−252537(P2012−252537A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124853(P2011−124853)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】