説明

移植機

【課題】作業性及び効率を向上した簡潔な構成の移植機を得ることを課題とする。
【解決手段】走行装置4に搬送部5と該搬送部5にて搬送された移植物Nを圃場に移植する植付装置6を設けた移植機において、搬送部5に移植物Nを収容する保持穴部54を搬送方向に複数設けた無端ベルト44a・44bを設け、該無端ベルト44a・44bは圃場上面近くを平行又は略平行に移動する移植搬送経路を有し、植付装置6は該移植搬送経路において無端ベルト44a・44b内側から保持穴部54を押して該保持穴部54に収容された移植物Nを圃場に移植する移植機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばニンニクやラッキョウやチューリップ等の球根を移植する移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
走行装置により機体を前進させながら、平面視でC字状の挟持具でした挟持したニンニクを植付具が取り出して圃場に植付ける移植機がある。(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−187571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術の移植機は、ニンニクを平面視でC字状の挟持具に挟み込むように入れないといけないので、作業性及び効率に課題がある。
そこで、本発明は、作業性及び効率を向上した簡潔な構成の移植機を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、走行装置4に搬送部5と該搬送部5にて搬送された移植物Nを圃場に移植する植付装置6を設けた移植機において、搬送部5に移植物Nを収容する保持穴部54を搬送方向に複数設けた無端ベルト44a・44bを設け、該無端ベルト44a・44bは圃場上面近くを平行又は略平行に移動する移植搬送経路を有し、植付装置6は該移植搬送経路において無端ベルト44a・44b内側から保持穴部54を押して該保持穴部54に収容された移植物Nを圃場に移植する移植機とした。
【0006】
従って、請求項1記載の発明によると、搬送部5に移植物Nを収容する保持穴部54を搬送方向に複数設けた無端ベルト44a・44bを設けたので、作業者は搬送部5の無端ベルト44a・44bに設けた保持穴部54に容易に移植物Nを収容する作業が行なえて、作業性及び効率が良い。
【0007】
また、該無端ベルト44a・44bは圃場上面近くを平行又は略平行に移動する移植搬送経路を有し、植付装置6は該移植搬送経路において無端ベルト44a・44b内側から保持穴部54を押して該保持穴部54に収容された移植物Nを圃場に移植する苗移植機としたので、植付装置6は移植物Nを直接触れることなく圃場に移植することができ、移植物が損傷することが防止でき、良好な移植作業が行なえる。
【0008】
請求項2記載の発明は、保持穴部54を無端ベルト44a・44bと同じ弾性部材で一体形成した請求項1記載の移植機とした。
従って、請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明の作用に加えて、保持穴部54を無端ベルト44a・44bと同じ弾性部材で一体形成したので、安価に製造できる。然も、保持穴部54が弾性を有するので、移植物Nを適切に収容して保持でき、適切な移植作業が行なえる。
【0009】
請求項3記載の発明は、搬送部5の無端ベルト44a・44b内に植付装置6及び移植物6の駆動機構部を設けた請求項1または請求項2記載の移植機とした。
従って、請求項3記載の発明によると、請求項1または請求項2記載の発明の作用に加えて、搬送部5の無端ベルト44a・44b内に植付装置6及び移植物6の駆動機構部を設けたので、機体を小型で簡潔な構成にすることができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、搬送部5に前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bを設け、植付装置6の植付作用部6aが各前部無端ベルト44a及び後部無端ベルト44bの各保持穴部54から同時に移植物Nを圃場に移植する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移植機とした。
【0011】
従って、請求項4記載の発明によると、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、搬送部5に前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bを設け、植付装置6の植付作用部6aが各前部無端ベルト44a及び後部無端ベルト44bの各保持穴部54から同時に移植物Nを圃場に移植する構成としたので、移植作業効率が向上する。
【0012】
請求項5記載の発明は、前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの間隔を調節自在にすると共に、植付装置6の前後植付作用部6aの間隔を調節自在にした請求項4に記載の移植機とした。
【0013】
従って、請求項5記載の発明によると、請求項4に記載の発明の作用に加えて、前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの間隔を調節自在にすると共に、植付装置6の前後植付作用部6aの間隔を調節自在にしたので、移植物Nの移植間隔を変更できて、圃場条件や色々な慣行移植農法に対応できる。
【0014】
請求項6記載の発明は、植付装置6の移植位置前方に作溝体60を設けた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の移植機とした。
従って、請求項6記載の発明によると、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、植付装置6の移植位置前方に作溝体60を設けたので、植付装置6が移植物Nを圃場に移植する位置の土壌を予めほぐして柔らかくして、移植物Nを傷めずに圃場に適切に移植することができる
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ニンニク等の移植物Nを作業性及び効率良く移植することができる簡潔な構成の移植機を得ることができ、課題を適切に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ニンニク移植機の側面図である。
【図2】ニンニク移植機の一部断面平面図である。
【図3】要部の斜視図である。
【図4】要部の作用を説明する作用説明用正面図である。
【図5】要部の作用を説明する作用説明用拡大正面図である。
【図6】要部の他の例を示す拡大断面図である。
【図7】要部の他の例を示す拡大正面図である。
【図8】左右傾斜を検出する他の例を示す作用説明用側面図である。
【図9】左右傾斜を検出する他の例を示す作用説明用平面図である。
【図10】畝案内ローラを装着した他の例を示す作用説明用平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の一形態として、ニンニクの球根である鱗茎の鱗片(以下、種Nという)を畑地に植付けるニンニク移植機1を以下に説明する。
ニンニク移植機1は、走行装置4と操縦ハンドル2を備えた機体に、ニンニクの種Nを搬送する搬送部5と、該搬送部5によって搬送されてきた種Nを圃場の畝Dに植付ける左右植付装置6を備えて、2条植えの構成となっている。走行装置4は、図示例では、エンジン3と、該エンジン3の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7と、該後輪7の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪8とを備えたものとしている。
【0018】
エンジン3の後部には、ミッションケース9を配置し、そのミッションケース9は、その左側部からエンジン3の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン3の左側部と連結している。このケース部分にエンジン3の出力軸が入り込んでミッションケース9内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース9の左右両側部に伝動ケース10を回動自在に取り付け、この伝動ケース10の回動中心にミッションケース9から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース10内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース10内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端部側方に突出する車軸11に伝動し、後輪7が駆動回転するようになっている。
【0019】
また、伝動ケース10のミッションケース9への取付部には、上方に延びるアーム12を一体的に取り付けていて、これがミッションケース9に固定された昇降用油圧シリンダ13のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆14の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド15で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ16で連結している。
【0020】
昇降用油圧シリンダ13が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム12は後方に回動し、これに伴い伝動ケース10が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ13のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム12は前方に回動し、これに伴い伝動ケース10が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ13は、機体に対する畝Dの上面高さを検出するセンサー17の検出結果に基づいて機体を畝Dの上面高さに対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した植付昇降レバー18の人為操作によって、機体を上昇或は下降させるよう作動する構成でもある。尚、前記植付昇降レバー18は、植付装置6及び搬送部5の駆動の入切の操作が行える。また、植付昇降レバー18の側方には、ミッションケース9内の主クラッチ(図示せず)を操作して走行装置4の走行の入切操作が可能な主クラッチレバー19を設けている。
【0021】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ16が伸縮作動すると、前記天秤杆14が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ13のピストンロッド先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース10を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ16は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出する周知の振り子式センサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0022】
前記左右前輪8は、エンジン3下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム20の左右両側部の下方に延びるアーム部分21の下端部側方に固定した車軸22に回転自在に取り付けられている。従って、左右前輪8は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【0023】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース9に前端部を固定したハンドルフレーム23の後端部に取り付けられている。ハンドルフレーム23は、機体の左右中央位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、ハンドルフレーム23の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0024】
尚、上記走行装置4は、四輪構成としたものであるが、左右一対の駆動輪のみの2輪構成でもよいし、前輪の替わりに畝Dの上面を転動する鎮圧輪としてもよい。また、クローラー式の走行装置としてもよい。
【0025】
次に、植付装置6について説明する。
左右植付装置6は、機体左右中央位置に配置されたハンドルフレーム23の左右両側に各々設けられており、各々その植付作用部6aを昇降動させる駆動部と連結し、該植付装置6の植付作用部6aが、搬送部5により搬送されてきた種Nに作用して種Nを圃場の畝Dに植付ける構成としたものである。
【0026】
植付装置6を駆動する駆動部は、ミッションケース9内から種N植付け具駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース32に設けている。図例のように植付け伝動ケース32は、その前部がミッションケース9の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部32aと、この第一ケース部32aの上部に後斜め下方に延びる第ニケース部32bを有する構成としている。これら第一ケース部32aから第ニケース部32b内に植付装置6を駆動するための動力を伝達する伝動機構を設け、第ニケース部32bの後端部で機体の左右両外側方に延びる植付駆動軸33に回転動力を伝達する構成としている。
【0027】
第ニケース部32bの植付駆動軸33には、その左右両端部に各々左右駆動回転アーム34の基部を固定している。従って、該左右駆動回転アーム34は植付駆動軸33の回転駆動力で回転する。
【0028】
そして、左右駆動回転アーム34の先端部には、その長手方向に各々複数の連結孔34aを設けて、その何れかの連結孔34aに左右各々左右移植体35の上端部を連結回動ピン36で連結している。
【0029】
左右移植体35は、左右同じ構成であり、代表で左移植体35の構成を説明する。
左移植体35は、連結回動ピン36で左駆動回転アーム34の先端部の連結孔34aに連結されて下方に延びた第一移植棒体37と該第一移植棒体37の中途部に基部が溶接固定され後方に延びる支持体38と該支持体38の後部に前後方向に設けた複数の固定孔38aの何れかに基部がボルト39に固定された機体側面視L字状の第二移植棒体40にて構成されている。
【0030】
そして、第一移植棒体37及び第二移植棒体40の下端部は下方に向いており、その下端にはゴムで成形された植付作用部6aが各々設けられている。
また、前記第ニケース部32bの後端部に固定された支持フレーム41の下端部には、揺動アーム42の基部が回動揺動自在に装着されている。そして、該揺動アーム42の先端は、左移植体35の第一移植棒体37中途部に連結回動ピン43にて連結され、左移植体35の第一移植棒体37及び第二移植棒体40下端部の植付作用部6aは左駆動回転アーム34の駆動回転により上下作動する構成となっている。
【0031】
尚、左右移植体35の上端部を左右駆動回転アーム34の何れの連結孔34aに連結するかによって、左右移植体35の上下高さが調節でき、従って、左右移植体35の植付作用部6aが最も下降する位置を調節することができることとなり、種Nの圃場の畝D上面からの植付深さを調節することができる。また、支持体38の何れの固定孔38aに第二移植棒体40を固定するかによって、第一移植棒体37に対する第二移植棒体40の前後位置を調節することができ、従って、種Nの植付け間隔を調節することができる。
【0032】
次に、搬送部5について説明する。
搬送部5は、前部搬送装置5aと後部搬送装置5bから構成され、前部搬送装置5aと後部搬送装置5bには各々合成ゴムより成型された前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bが機体左右方向に回動移動するように設けられている。
【0033】
第ニケース部32bに下部を固定した前フレーム45と支持フレーム41に下部を固定した後フレーム46の上部間に駆動軸47と従動上軸48を回動自在に設け、且つ、前フレーム45と後フレーム46の下部間に従動下左軸49、従動下右軸50を左右に並べて回動自在に設けている。
【0034】
そして、駆動軸47に前部搬送装置5aの駆動スプロケット51aと後部搬送装置5bの駆動スプロケット51bを各々前後方向に一対づつ駆動回転するように設け、従動上軸48と従動下左軸49と従動下右軸50に従動ローラ52を各々自由回転自在に設けている。
【0035】
また、前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bには、その左右両側部に前記駆動スプロケット51a、51bの歯部51cに係合する係合孔53が設けられている。そして、前部搬送装置5aの駆動スプロケット51aと従動ローラ52に前部無端ベルト44aをかけて、駆動スプロケット51aの歯部51cが前部無端ベルト44aの係合孔53に係合して駆動回転することにより、前部無端ベルト44aは正面視で反時計方向に回転移動する。また、後部搬送装置5bの駆動スプロケット51bと従動ローラ52に後部無端ベルト44bをかけて、駆動スプロケット51bの歯部51cが後部無端ベルト44bの係合孔53に係合して駆動回転することにより、後部無端ベルト44bも正面視で反時計方向に前部無端ベルト44aと同期して回転移動する。尚、後部無端ベルト44b部は、前部無端ベルト44aに対して前後方向に位置調節できる構成にしている。
【0036】
また、前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの前後幅の中央部には、種Nをはめ込む保持穴部54が一定間隔(左右移植体35の左右植付作用部6aの左右間隔と同じ間隔)で形成されている。
【0037】
保持穴部54は、無端ベルトと同じ合成ゴムで一体形成された十文字状の帯体54aで構成されており、保持穴部54の底部には貫通孔54bが形成されている。そして、作業者が、該保持穴部54内に種Nを入れると、種Nは保持穴部54内に十文字状の帯体54aの弾性力で保持される構成となっている。
【0038】
また、種Nを保持した保持穴部54が左右植付装置6の各植付作用部6aの下方に位置している時に、左右植付装置6の各植付作用部6aは前記の如く下動して、図5に示すように前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの内側から保持穴部54を圃場側に向けて押し、種Nを保持穴部54から押し出して圃場の畝D内に植付ける。そして、左右植付装置6の各植付作用部6aが種Nを保持穴部54から押し出して畝D内に植付けた後に、各植付作用部6aが上動して保持穴部54から離れると、保持穴部54の十文字状の帯体54aは弾性力で元の種Nを保持できる凹んだ状態に戻る。
【0039】
この左右植付装置6の各植付作用部6aが種Nを保持穴部54から押し出して畝D内に植付ける移植時に、各植付作用部6aは保持穴部54の帯体54aを介して種Nを押すように作用するので、各植付作用部6aにて種Nが傷つけられることが防止でき、良好な移植作業が行なえる。
【0040】
そして、駆動スプロケット51aと従動ローラ52との間の前部無端ベルト44a及び駆動スプロケット51bと従動ローラ52との間の後部無端ベルト44bは機体の上方部において水平状態で機体右方向に移動するので、機体後部の左側方で搬送部5の後部の畝溝に位置して機体の前進に伴って歩行している作業者は、該水平状態で機体右方向に移動する前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの各保持穴部54に種Nを容易に且つ作業性良く入れる(供給する)ことができる。
【0041】
特に、ニンニクは、圃場に種Nの向きを揃えてまっすぐに植付けると、生育後の茎葉の向きが揃ってにんにくの品質が良くなる。作業者は、前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの各保持穴部54に種Nを向きを揃えて適切に入れることが容易に行なえ、ニンニクの種Nを畝Nに方向を揃えてまっすぐに植付けることができる。よって、植付けた種Nは、茎葉の向きが揃って生育し品質の良いニンニクを収穫することができる。
【0042】
また、従動下左軸49と従動下右軸50の左右従動ローラ52間の前部無端ベルト44a及び後部無端ベルト44bは機体の下方部で圃場面近くにおいて水平状態に配置された移植搬送経路となっているので、左右植付装置6の各植付作用部6aが下動して前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの内側から保持穴部54を圃場側に向けて押し、種Nを保持穴部54から押し出して圃場内に適切に植付けることができる。
【0043】
尚、図6に示すように、十文字状の帯体54aの内壁面に下向き凸部54cを連続して設けておけば、保持穴部54内に入れられた種Nを確実に保持することができる。また、図7に示すように、保持穴部54の十文字状の帯体54aの外側に正面視で下端部程先細りの圧縮バネ54dを装着すれば、左右植付装置6の各植付作用部6aが種Nを保持穴部54から押し出して圃場内に植付けた後に、各植付作用部6aが上動して保持穴部54から離れると、保持穴部54の十文字状の帯体54aは圧縮バネ54dの付勢力で元の種Nを保持できる凹んだ状態に確実に戻り、作業者が前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの各保持穴部54に種Nを容易に且つ作業性良く入れることができる。
【0044】
一方、駆動軸47の前後中央部は、第ニケース部32bに下部を固定した前後2つの中央フレーム55、55で回動自在に支持されており、且つ、該前中央フレーム55で駆動軸47を支持した部位に一般的なラチェット式駆動機構56を設け、該ラチェット式駆動機構56の駆動爪を作動させる連結ロッド57の下端を前記揺動アーム42に連結している。従って、左右植付装置6の植付作用部6aが、前後搬送部5a、5bの各保持穴部54により搬送されてきた種Nに作用して種Nを圃場に植付けた後に上動する際に連結ロッド57も連動して上動し、駆動爪を回転作動させてラチェット式駆動機構56にて駆動軸47が回転し、駆動スプロケット51a、51bにて前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bが図3に示す保持穴部54間の距離(ピッチ)Pの2倍分(2ピッチ分)回転移動する。また、左右植付装置6の植付作用部6aが下動する時は、ラチェット式駆動機構56の特性により、前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bは回転移動せず停止状態である。
【0045】
60は作溝体であって、ミッションケース9後部下面に固定され、左右植付装置6の各植付作用部6aが種Nを圃場に植付ける位置の前方に位置して左右に2つ配置されており、左右植付装置6の各植付作用部6aが種Nを圃場に植付ける位置の土壌をほぐして柔らかくして、左右植付装置6の各植付作用部6aが種Nを傷めずに圃場に適切に植付けることができるようにする。尚、作溝体60の左右幅は、種Nの幅よりも若干大きく構成している。
【0046】
尚、前記畝Dの上面高さを検出するセンサー17は平らな板体で形成されており、該左右に2つ設けられた作溝体60の後方位置に配置されている。従って、左右2つの作溝体60が土壌をほぐして柔らかくした圃場上面を均していく作用があり、左右植付装置6にて適切に種Nを移植することができる。
【0047】
70は搬送部5の前部上方から前方に向けて配置された種Nを多数収容したコンテナKを載置する移植物載置台であって、植付け伝動ケース32の第一ケース部32aに基部を固定した載置台支持フレーム71にて支持されている。
【0048】
作業者は、移植物載置台70に種Nを多数収容したコンテナKを載置し、各部を駆動しながら機体を前進させ、機体後部の左側方で搬送部5の後部の左右畝D間の畝溝を歩きながら、移植物載置台70に載置したコンテナKから種Nを取り出して、前記のように前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの各保持穴部54に種Nを入れて移植作業を行なう。
【0049】
左右植付装置6の後方には、左右一対の鎮圧輪80を各々設けている。この鎮圧輪80は、遊転輪であり、畝D上面に接地して移植した種Nの上方乃至左右側方の土壌を鎮圧するようになっている。
【0050】
以上により、このニンニク移植機は、左右の前輪8及び後輪7により畝Dをまたいだ状態で走行装置4により機体は自走し、機体後部の左側方で搬送部5の後部の畝溝に位置して機体の前進に伴って畝溝を歩行している作業者は、水平状態で機体右方向に移動する前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの各保持穴部54に種Nを入れる(供給する)。
【0051】
搬送部5の前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bは、入れられた種Nを畝D上面に近い位置で左右植付装置6の各植付作用部6aの直下位置まで搬送する。そして、搬送部5の前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bによって搬送されてきた種Nを左右植付装置6の各植付作用部6aが各々畝D(作溝体60が土壌をほぐして柔らかくした部分)に植付ける。そして、鎮圧輪80が、移植した種Nの上方に土を寄せて被せながら鎮圧する。
【0052】
また、畝Dに移植する種Nの移植間隔を調節する場合には、左右移植体35の第一移植棒体37に対する第二移植棒体40の前後位置を調節し、その調節後の前後間隔に合わせて後部無端ベルト44b部を前部無端ベルト44aに対して前後方向に位置調節する。尚、第一移植棒体37に基部が固定された支持体38の何れの固定孔38aに第二移植棒体40を固定するかによって、第一移植棒体37に対する第二移植棒体40の前後位置を調節することができる。
【0053】
次に、図8及び図9に基づいて、機体の上下高さ位置制御及び機体の左右傾斜制御を行なう為に畝Dの上面高さを検出する他の例を説明する。
前例の畝Dの上面高さを検出するセンサー17を機体の左右方向に並べた左右接地センサー17L、17Rとし、該左右接地センサー17L、17Rは回動枢支軸90にて接地部が上下動するように回動自在に支持(枢支)された構成とする。
【0054】
左右接地センサー17L、17R各々の枢支部外側に左右外アーム91L、91Rを設けて、左右上下制御用ワイヤ92L、92Rのインナーワイヤ一端を連結している。
一方、機体に設けた回動支持軸93に昇降用油圧シリンダ13を制御する上下制御バルブ94を作動させる作動機構95を設けている。作動機構95は、回動支持軸93に回動自在に外嵌したパイプ96に基部を溶接固定した支持アーム97の上部に天秤作動杆98の中央部をピン99にて回動自在に支持し、該天秤作動杆98の左右両端部に各々前記左右上下制御用ワイヤ92L、92Rのインナーワイヤ他端を連結している。また、パイプ96に基部を溶接固定したバルブ作動アーム100の先端部を上下制御バルブ94の操作アーム101に連携している。
【0055】
従って、左右接地センサー17L、17Rが共に同方向に上下作動した時のみ、左右上下制御用ワイヤ92L、92Rにて天秤作動杆98を押し引き操作して支持アーム97を介してパイプ96が回動し、バルブ作動アーム100にて上下制御バルブ94の操作アーム101が操作されて上下制御バルブ94が切替え作動される。即ち、左右接地センサー17L、17Rが共に上動した時には、上下制御バルブ94が切替えられて昇降用油圧シリンダ13が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出して、左右アーム12が後方に回動し、これに伴い伝動ケース10が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、左右接地センサー17L、17Rが共に下動した時には、上下制御バルブ94が切替えられて昇降用油圧シリンダ13のピストンロッドが機体前方に引っ込んで、左右アーム12が前方に回動し、これに伴い伝動ケース10が上方に回動して、機体が下降する。よって、畝Dの高さを左右接地センサー17L、17Rが平均して検出し、機体を畝Dに対して適切な上下高さに位置制御することができる。
【0056】
また、左右接地センサー17L、17R各々の枢支部内側に左右内アーム102L、102Rを設けて、左右制御用ワイヤ103のアウターワイヤとインナーワイヤ一端を各々に連結し、左右接地センサー17L、17Rの高さが左右で異なった場合に左右制御用ワイヤ103のインナーワイヤ一が押し引き操作される構成としている。そして、左右制御用ワイヤ103のインナーワイヤ他端を左右水平制御用油圧シリンダ16を制御する左右傾斜制御バルブ104の操作アーム105に連結している。
【0057】
従って、畝D上面が左右方向で傾斜して左右接地センサー17L、17Rの上下位置が異なる場合には、左右制御用ワイヤ103のインナーワイヤ一が押し引き操作されて左右傾斜制御バルブ104が切替え作動される。即ち、左接地センサー17Lが右接地センサー17Rよりも上動した時には、左右制御用ワイヤ103のインナーワイヤ一が押し操作されて左右傾斜制御バルブ104が切替えられて、左右水平制御用油圧シリンダ16が作動してそのピストンロッドが退入して、左アーム12が後方に回動し、これに伴い左伝動ケース10が下方に回動して、機体の左側が上昇して機体を畝D上面に対して平行な状態にする。反対に、左接地センサー17Lが右接地センサー17Rよりも下動した時には、左右制御用ワイヤ103のインナーワイヤ一が引き操作されて左右傾斜制御バルブ104が切替えられて、左右水平制御用油圧シリンダ16が作動してそのピストンロッドが突出して、左アーム12が前方に回動し、これに伴い左伝動ケース10が上方に回動して、機体の左側が下降して機体を畝D上面に対して平行な状態にする。よって、畝Dの左右方向の傾斜を左右接地センサー17L、17Rが検出して、機体を畝Dに対して平行な状態になるように制御することができる。
【0058】
以上要するに、左右接地センサー17L、17Rにて畝Dの高さと左右方向の傾斜を検出して、上下制御バルブ94及び左右傾斜制御バルブ104を切替えて昇降用油圧シリンダ13及び左右水平制御用油圧シリンダ16を作動させて、機体を畝D上面に対して適切な高さで且つ上面に対して平行な状態に制御し、左右植付装置6による畝Dへの種Nの移植深さが常に適切になる。
【0059】
次に、図10に基づいて、左右畝案内ローラ110L、110Rを装着した他の例を説明する。
左右畝案内ローラ110L、110Rは、各々左右支持軸111L、111Rの先端部に各々回転自在に枢支された合成樹脂製の外表面が円滑面となっている左右円筒ローラ112L、112Rより構成されている。そして、左右支持軸111L、111Rの基部はL字状に上方に屈曲して垂直軸部113L、113Rとなっており、該垂直軸部113L、113Rを機体前部に固定して設けた左右支持パイプ114L、114Rに回動自在に支持している。
【0060】
また、機体前部と左右支持軸111L、111Rとの間には、各々左右引張スプリング115L、115Rが設けられており、左右畝案内ローラ110L、110Rは機体内方に向けて付勢された状態となっている。
【0061】
また、左右支持軸111L、111Rに各々インナーワイヤ一端を連結した左右サイドクラッチ連動ワイヤ116L、116Rを設け、該左右サイドクラッチ連動ワイヤ116L、116Rのインナーワイヤ他端を各々左右後輪7の駆動を入り切りする左右サイドクラッチ操作機構に連携している。即ち、左畝案内ローラ110Lが機体外方に回動すると左サイドクラッチ連動ワイヤ116Lが引かれて左後輪7の左サイドクラッチを切り、左後輪7の駆動が切れる。また、右畝案内ローラ110Rが機体外方に回動すると右サイドクラッチ連動ワイヤ116Rが引かれて右後輪7の右サイドクラッチを切り、右後輪7の駆動が切れる。
【0062】
従って、機体の左右後輪7と左右前輪8が畝Dを跨いだ状態で機体を前進させて移植作業を行なう際に、左右畝案内ローラ110L、110Rの左右円筒ローラ112L、112Rが各々畝D左右側面に接当して機体を畝Dに沿って進行させるべく作用する。よって、機体は、左右畝案内ローラ110L、110Rにより畝Dに沿って前進するので、作業者は操縦ハンドル2から離れて機体後部の左側方で搬送部5の後部の畝溝に位置して機体の前進に伴って歩行して移植作業(前部無端ベルト44aと後部無端ベルト44bの各保持穴部54に種Nを入れる作業)を行なえる。
【0063】
ところが、畝Dの状態等によって、左右畝案内ローラ110L、110Rによる機体誘導作用が効かず機体が畝Dから大きく逸れようとすることがある。例えば、機体が右方向に大きく逸れようとした場合には、左畝案内ローラ110Lが畝Dの左側面に押されて大きく左方に左引張スプリング115Lに抗して回動し、左サイドクラッチ連動ワイヤ116Lが引かれて左後輪7の左サイドクラッチを切り、左後輪7の駆動が切れて、右後輪7のみの駆動となって機体は左方に向きを変えて正常な畝Dに沿った状態に戻る。そして、機体が正常な畝Dに沿った状態に戻ると、左畝案内ローラ110Lが元の状態に復帰するので、左サイドクラッチが入りになって左後輪7が駆動される。逆に、機体が左方向に大きく逸れようとした場合には、右畝案内ローラ110Rが畝Dの右側面に押されて大きく右方に右引張スプリング115Rに抗して回動し、右サイドクラッチ連動ワイヤ116Rが引かれて右後輪7の右サイドクラッチを切り、右後輪7の駆動が切れて、左後輪7のみの駆動となって機体は右方に向きを変えて正常な畝Dに沿った状態に戻る。そして、機体が正常な畝Dに沿った状態に戻ると、右畝案内ローラ110Rが元の状態に復帰するので、右サイドクラッチが入りになって右後輪7が駆動される。
【0064】
従って、上記構成の左右畝案内ローラ110L、110Rによると、適切に機体を畝Dに沿って進行させることができ、適切な移植作業が行なえる。
【符号の説明】
【0065】
4 走行装置
5 搬送部
6 植付装置
6a 植付作用部
44a 前部無端ベルト
44b 後部無端ベルト
54 保持穴部
60 作溝体
N 移植物(種)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(4)に搬送部(5)と該搬送部(5)にて搬送された移植物(N)を圃場に移植する植付装置(6)を設けた移植機において、搬送部(5)に移植物(N)を収容する保持穴部(54)を搬送方向に複数設けた無端ベルト(44a・44b)を設け、該無端ベルト(44a・44b)は圃場上面近くを平行又は略平行に移動する移植搬送経路を有し、植付装置(6)は該移植搬送経路において無端ベルト(44a・44b)内側から保持穴部(54)を押して該保持穴部(54)に収容された移植物(N)を圃場に移植することを特徴とする移植機。
【請求項2】
保持穴部(54)を無端ベルト(44a・44b)と同じ弾性部材で一体形成したことを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
搬送部(5)の無端ベルト(44a・44b)内に植付装置(6)及び移植物(6)の駆動機構部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の移植機。
【請求項4】
搬送部(5)に前部無端ベルト(44a)と後部無端ベルト(44b)を設け、植付装置(6)の植付作用部(6a)が各前部無端ベルト(44a)及び後部無端ベルト(44b)の各保持穴部(54)から同時に移植物(N)を圃場に移植することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項5】
前部無端ベルト(44a)と後部無端ベルト(44b)の間隔を調節自在にすると共に、植付装置(6)の前後植付作用部(6a)の間隔を調節自在にしたことを特徴とする請求項4に記載の移植機。
【請求項6】
植付装置(6)の移植位置前方に作溝体(60)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94103(P2013−94103A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239155(P2011−239155)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】