説明

真空吸引による工場排水収集装置及び工場排水収集方法

【課題】床下に配置(敷設)する排水用配管が不要で、施工性がよく、レイアウトの自由度が高く、漏水の可能性が低く、排水管路の状態を容易に目視確認できる真空吸引による工場排水収集装置及び工場排水収集方法を提供すること。
【解決手段】バッファタンク11と、隣接して配設された真空吸引装置タンク12と、真空吸引装置14とからなる真空吸引ユニットと、配管状態を目視で確認できる場所に設置された真空配管2と、集水タンクを備えた真空ステーション3と、を備え、CIP洗浄により発生する排水をバッファタンク11に収集し、所定流量ずつ真空吸引装置タンク12に移送し、真空吸引装置タンク12内の排水を真空吸引装置14により真空配管2に移送し、真空配管2を通して真空ステーション3の集水タンクに移送し、真空ステーション3から排水処理場に移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種飲料等の食品製造工場等において、その製造装置を分解することなくCIP(Cleaning in Place)洗浄(定置洗浄)することにより発生する工場排水を真空吸引により収集し、該収集した工場排水を所定位置に設置された排水処理設備(排水処理場)に移送するための真空吸引による工場排水収集装置及び工場排水収集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のCIP装置の洗浄作業過程で使用する洗剤、水及び温水は直接食品製造工場等の床に流され、その床の勾配によって床面に設けられた排水溝に集められ、さらに該排水溝によって所定エリアごとに設置された排水ピットに集約した後、排水ピットを結んで床下に敷設された排水用配管内を通って排水処理設備等へ排水されるように構成されている。一般に、排水ピットとしてはコンクリート製二次製品であるコンクリート製入孔桝が使用され、排水用配管としてコンクリート製ヒューム管が使用されている。そしてコンクリート製入孔桝にコンクリート製ヒューム管が貫通する貫通接合箇所は防水モルタルによって防ぎ処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−153245号公報
【特許文献2】特開2002−227281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記CIP装置によるCIP洗浄で発生する工場排水はCIP洗浄の工程により異なる洗剤、温度、水質、流量の排水が各洗浄工程完了時に排水される。これらのCIP排水は高温で強酸、強アルカリでコンクリートを腐食する薬液を多量に含むため床下に配置された排水用配管が長期間の使用により熱収縮及び腐食によって貫通接合箇所や管継ぎ目で漏水が発生するという問題がある。この漏水を放置すると土壌汚染を発生する危険があるが、排水用配管を敷設している床の上には多数の製造装置を構成する機器が配置されているため、これらの機器を撤去して排水用配管を更新することは極めて困難である。そのため、これらの排水用配管をビニールコーティングするなどの方法で修繕を行う場合にも、その修繕にはその都度施工費用がかかる上、そのコーティングの寿命は短期間であり、繰り返し施工により莫大な投資が必要となってしまう。また、排水用配管は床下に設置されているため配管の腐食や漏水等の状態を目視で容易に監視することができないという問題もある。
【0005】
また、各種飲料等の製造ラインを分解することなく洗浄するCIP装置においては、排水溝に流れ込む排水量は大量に発生するがその時間は短時間である。この短時間で発生する大量のCIP排水を発生するのと同じタイミングで排水しようとすると、工場排水収集装置の規模は大規模のものとなってしまうという問題がある。またこの排水の温度が高い場合には、そのまま排水すると工場排水収集装置を構成する機器の材質としては耐熱性に優れた材料が要求されコストも高額となってしまうという問題もある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、床下に配置(敷設)する排水用配管が不要で、施工性がよく、レイアウトの自由度が高く、漏水の可能性が低く、排水管路の状態を容易に目視確認できる真空吸引による工場排水収集装置及び工場排水収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、製造装置をCIP洗浄することにより発生する工場排水を集め排水処理場に移送する真空吸引による工場排水収集装置であって、前記CIP洗浄による排水発生場所近傍に設置されたバッファタンクと、前記バッファタンクに隣接して配設された真空吸引装置タンクと、前記真空吸引装置タンク内の排水を真空吸引する真空吸引装置とからなる真空吸引ユニットと、配管状態を目視で確認できる場所に設置された真空配管と、集水タンクを備えた真空ステーションと、を備え、前記CIP洗浄により発生する排水を前記バッファタンクに収集し、前記バッファタンク内の排水を所定流量ずつ前記真空吸引装置タンクに移送し、前記真空吸引装置タンク内の排水を前記真空吸引装置により前記真空配管に移送し、前記真空配管を通して前記真空ステーションの集水タンクに移送し、前記真空ステーションから前記排水処理場に移送することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記真空吸引による工場排水収集装置において、前記バッファタンク及び前記真空吸引装置タンクは耐食性で且つ高熱伝導性の材料からなり、床面を掘削して設置されており、各タンク内の排水の熱はタンク側面及び底面を伝って地下に放熱するようになっていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記真空吸引による工場排水収集装置において、前記バッファタンクと前記真空吸引装置タンクは連通管で接続され、前記バッファタンク内の排水は前記連通管が形成するサイフォンにより前記真空吸引装置タンクに移送されるようになっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記真空吸引による工場排水収集装置において、前記真空吸引装置タンクは、1個の前記バッファタンクに対して隣接して複数個並列に設置されており、各前記真空吸引装置タンクには複数の前記真空吸引装置が設置されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記真空吸引による工場排水収集装置において、前記真空吸引装置タンクは、1個の前記バッファタンクに対して複数個直列に設置されており、前記バッファタンクに隣接する真空吸引装置タンクを第1真空吸引装置タンクとし、前記第1真空吸引装置タンクに隣接する真空吸引装置タンクを第2真空吸引装置タンクとし、順次第3、・・・第n真空吸引装置タンクとし、各前記真空吸引装置タンクには複数の前記真空吸引装置が設置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記真空吸引による工場排水収集装置において、前記バッファタンクと第1真空吸引装置タンクを接続する連通管を第1連通管、前記第1真空吸引装置タンクと第2真空吸引装置タンクを接続する連通管を第2連通管とし、順次第3連通管、・・・第n連通管とし、第1連通管が形成するサイフォンの水位を第1水位とし、第2連通管が形成するサイフォンの水位を第2水位とし、順次第3水位、・・・第n水位とし、前記バッファタンクの水位が第1水位以下の場合は前記第1真空吸引装置タンクに設置した真空吸引装置のみを作動させ、前記バッファタンクに流入する排水が増加し、水位が第1水位以上第2水位以下となった場合は前記第1真空吸引装置タンクと前記第2真空吸引装置タンクに設置した真空吸引装置を作動させるというように、順次水位の増加にともない作動させる真空吸引装置を増加することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、製造装置をCIP洗浄することにより発生する工場排水を集め排水処理場に移送する真空吸引による工場排水収集方法であって、前記CIP洗浄により発生する工場排水を排水発生場所近傍の床面を掘削して設置されたバッファタンクに一旦収集すると共に、前記バッファタンクに隣接して床面を掘削して設置された真空吸引装置タンクに所定量ずつ移送し、前記バッファタンクと真空吸引装置タンク内に収集された排水の熱を地下に放熱した排水温度を下げた後、前記真空吸引装置タンクから配管状態を目視で確認できる場所に設置された真空配管を通して真空ステーションの集水タンクに移送し、前記真空ステーションから前記排水処理場に移送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CIP洗浄により発生する工場排水をバッファタンクに収集し、バッファタンク内の排水を所定流量ずつ真空吸引装置タンクに移送し、真空吸引装置タンク内の排水を真空吸引装置により真空配管に移送し、配管状態を目視で確認できる場所に設置された真空配管を通して真空ステーションの集水タンクに移送し、真空ステーションから排水処理場に移送するので、下記のような効果が得られる。
・短時間に大量に発生する排水を発生と同じタイミングで移送することなく一旦バッファタンクに貯留してから移送するため、排水温度が下がり、真空配管に小口径で汎用性の高い材質の配管を用いることができる。
・製造装置が設置されている工場の床面、壁面、天井等の配管状態を目視で容易に確認できる位置に真空配管路を敷設できるため、柔軟な配管レイアウトが可能になるとともに、管路の痛みの経年変化や排水漏洩等を目視で確認できる。
・万が一、真空管路が破損しても強酸性、強アルカリ等の危険なCIP排液が外部に漏れることもなく、漏水による土壌汚染等の危険がない。
・製造装置を構成する機器のレイアウトの変動やCIP排水量の変動があった場合にも柔軟に真空吸引による工場排水収集装置を移設したり、改造して対応することができる。
【0015】
本発明によれば、短時間に大量に発生するCIP排水を床面を掘削して設置されたバッファタンク及び真空吸引装置タンクに収集してから移送するため、高温の排水の熱を地下に放熱させて排水温度が低下してから移送するので、配管等の腐食等も軽減され、機器の耐久性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の概略構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の真空吸引ユニットの概略平面構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の他の真空吸引ユニットの概略平面構成例を示す図である。
【図4】本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の他の真空吸引ユニットの概略側断面構成例を示す図である。
【図5】本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の真空吸引装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の真空吸引ユニットと真空吸引装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る工場の製造機器のレイアウト変更による真空吸引による工場排水収集装置の配置例を示す図である。
【図8】本発明に係る工場の製造機器のレイアウト変更による真空吸引による工場排水収集装置の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本発明に係る真空吸引による工場排水収集装置の概略構成例を示す図である。図示するように、本真空吸引による工場排水収集装置は、複数の真空吸引ユニット1と、ユニット型真空ステーション3とを備え、該複数の真空吸引ユニット1とユニット型真空ステーション3の間を真空配管2で接続して構成されている。飲料等の食品を製造する製造装置100をCIP洗浄する際に発生する工場排水101は、製造装置100が設置された工場の床面102に設けた排水溝103(図2参照)を通して真空吸引ユニット1に集められ、該真空吸引ユニット1から真空配管2を通して、ユニット型真空ステーション3に送られ、該ユニット型真空ステーション3から図示しない排水処理場に送られる。
【0018】
真空吸引ユニット1は図2にその平面配置構成を示すように、排水発生源の近傍(CIP洗浄する際に発生する工場排水101が集まる、例えば製造装置が設置されている床面102の排水溝103の下流端近傍)に配置されている。各真空吸引ユニット1はバッファタンク11と真空吸引装置タンク12とを備えている。バッファタンク11と真空吸引装置タンク12とは仕切り弁V1とを備えた連通管13で接続され、バッファタンク11内の排水は空気抜き弁V2を介して連通管13の空気を抜くことにより、確実なサイフォンを形成し、バッファタンク11中の水をサイフォン作用により真空吸引装置タンク12に移すようになっている。
【0019】
CIP装置の各洗浄工程で発生する工場排水101は上記のように床面102に設けられた排水溝103を通って、真空吸引ユニット1のバッファタンク11に集められる。該CIP装置からの工場排水101は各洗浄工程終了後短時間で大量に発生する。この大量に発生する工場排水101を発生と同じタイミングでそのまま排水しようとすると、工場排水収集装置は大規模のものとなってしまう。また、工場排水101の温度が高い場合には、そのまま排水すると装置を構成する配管、機器の材質としては耐熱性に優れた材料が要求され装置コストも高額となってしまう。
【0020】
ここでは真空吸引ユニット1のバッファタンク11と真空吸引装置タンク12は床面102を掘削して設置しており、上記短時間で発生した高温の排水を床面に設けた排水溝103を通して真空吸引ユニット1のバッファタンク11に収容する。これにより該バッファタンク11内に集められた高温排水の熱をバッファタンク11の側面及び床面を通して地下に放熱し、高温排水の温度を下げることができる。例えば、バッファタンク11及び真空吸引装置タンク12を高耐食性で且つ熱伝導性の材料(例えばSUS304等)で製作し、該バッファタンク11及び真空吸引装置タンク12を床面102を掘削した溝に設置することにより、タンク内に収容された排水の熱を温度の低い地下に効率よく放熱することが可能である。
【0021】
更に、連通管13が形成するサイフォンによりバッファタンク11の底部の放熱され低温となった排水を真空吸引装置タンク12に移すことにより、真空吸引ユニット1のバッファタンク11にある程度の量の排水が流入した時点で、バッファタンク11に最初に流入してから一定時間が経過し、温度が下がった排水を真空吸引装置タンク12に取り込むことができ、排水中の熱を効率良く放熱させることが可能となる。また、真空吸引ユニット1のバッファタンク11や真空吸引装置タンク12の上部蓋にグレーチング等の密閉構造でない蓋(上部蓋)19(図6参照)を用いることにより該真空吸引ユニット1に流入した高温排水の熱温を効率良く放熱することができる。
【0022】
14はバッファタンク11に近接して真空吸引装置タンク12の中に設置された真空吸引装置である。該真空吸引装置14は一端が真空吸引装置タンク12の底面近傍に開放され他端が真空配管2に接続された接続管15を備えている。接続管15には仕切り弁V3、逆止弁V4が設けられ、接続管15の一端から真空吸引装置タンク12の底面近傍の低温となった排水を真空配管2の真空吸引力で吸い込み、仕切り弁V3及び逆止弁V4を通って、真空配管2に移送する。真空吸引装置14は最低でも2台一組で真空吸引装置タンク12の中に設置することにより、一台の真空吸引装置14が故障したときでも残りの一台の真空吸引装置14が予備として運転することができる。
【0023】
バッファタンク11から真空吸引装置タンク12への排水の流入経路は、真空吸引ユニット1の設置場所の状況に応じて図2に示すように並列、又は図3に示すように直列の双方が可能である。図2はバッファタンク11及び真空吸引装置タンク12の平面図であり、図示するように1個のバッファタンク11に隣接して2個の真空吸引装置タンク12が並列に配置されている。図3はバッファタンク11及び真空吸引装置タンク12の平面図であり、図示するように1個のバッファタンク11に対して2個の真空吸引装置タンク12−1、12−2が直列に配置され、それぞれ真空吸引装置タンク12の中に2台の真空吸引装置14が配置され、真空吸引装置タンク12−1と真空吸引装置タンク12−2は連通管13−2で接続されている。
【0024】
連通管13の設置数と真空吸引装置14の設置数の比率を変えることにより、各タンクからの排水速度を調整することができる。また、図3に示すように、1個のバッファタンク11に対して2個の真空吸引装置タンク12−1と12−2が直列に配置され、それぞれ真空吸引装置タンク12−1、12−2の中に2台の真空吸引装置14が配置され、バッファタンク11と真空吸引装置タンク12−1が連通管13−1で接続され、真空吸引装置タンク12−1と真空吸引装置タンク12−2は連通管13−2で接続されている場合、図4に示すように、連通管13−1と連通管13−2のサイフォン形成高さを異なる高さに設定することでCIP排水量の変動に応じて稼動する真空吸引装置14の台数を制御することもできる。
【0025】
図4に示すように、連通管13−1と連通管13−2のサイフォン形成高さを異なる高さに設定し、連通管13−1のサイフォン形成高さを水位1、連通管13−2のサイフォン形成高さを水位2とする。真空吸引ユニット1に流入する排水の流量が少ない水位1では真空吸引装置14−1のみで排水の吸引を行ない、排水の流量が多くなり水位2に達すると、真空吸引装置14−1と真空吸引装置14−2の両方で排水の吸引を行なう。
【0026】
なお、図3及び図4では、バッファタンク11に2個の真空吸引装置タンク12−1及び12−2を直列に接続した例を示したが、真空吸引装置タンク12は2個に限定されるものではなく、複数個nであってもよい。この場合、図示を省略するが、バッファタンク11に隣接する真空吸引装置タンクを第1真空吸引装置タンクとし、該第1真空吸引装置タンクに隣接する真空吸引装置タンクを第2真空吸引装置タンクとし、順次第3・・・第n真空吸引装置タンクとする。そして、バッファタンク11と第1真空吸引装置タンクを接続する連通管を第1連通管、第1真空吸引装置タンクと第2真空吸引装置タンクを接続する連通管を第2連通管とし、順次第3・・・第n連通管とし、第1連通管が形成するサイフォンの水位を第1水位とし、第2連通管が形成するサイフォンの水位を第2水位とし、順次第3・・・第n連通管が形成するサイフォンの水位を第3・・・第n水位とする。
【0027】
そしてバッファタンク11の水位が第1水位以下の場合は第1真空吸引装置タンク12−1に設置した真空吸引装置14−1のみを作動させ、バッファタンク11に流入する排水が増加し、水位が第1水位以上第2水位以下となった場合は第1真空吸引装置タンクと第2真空吸引装置タンク12−2に設置した真空吸引装置14−2を作動させるというように、順次水位の増加にともない作動させる真空吸引装置14−3・・・14−nと増加させることにより、バッファタンク11に流入する排水量の増加に対処することが可能となる。
【0028】
上記真空吸引ユニット1において、真空吸引装置タンク12−1には連通管13−1が形成するサイフォンにより排水が連続的に流入してくるため、この排水を真空吸引装置14により真空配管2に一定量の空気を取り込んで効率良く排水の搬送を行なうために、真空吸引装置14の吸引方式は、気液同時吸引とする。図5は、この気液同時吸引を実施する真空吸引装置14の構成例を示す図である。図示するように、真空吸引装置14の接続管15の真空吸引装置タンク12内に開放する一端近傍に一端が大気に開放する空気管24の他端を接続する。これにより真空配管2の真空吸引力により接続管15を通して真空吸引装置タンク12内の工場排水である汚水を吸引すると空気管24を通して空気も同時に吸引される。
【0029】
なお、真空配管2内の真空度が不足する場合で、空気管24を通して排水を効率良く搬送するのに十分な量の空気を接続管15内に吸引できない場合が考えられる。このような場合、空気管24にコンプレッサーにより圧縮空気を送り込むようにしてもよい。
【0030】
真空吸引装置14により真空吸引装置タンク12内から吸引した排水は接続管15を通して、真空配管2に移送され、該真空配管2を通ってユニット型真空ステーション3に移送される。真空配管2は、地上、地面、壁面、天井等配管路の状態(経年変化による配管の痛み状態や漏水状態等)を目視により容易に確認できる位置に敷設される。そのため機器のレイアウトによっては、排水を天井等の高い位置まで搬送する必要がある。高い位置に敷設された真空配管2内を速い管内流速により排水を移送するために、接続管15の口径は50mm以下とするのが好ましい。また、接続管15と真空配管2の接続部は逆流を防ぐために一旦接続管15を真空配管2の管路より高い位置まで持ち上げて斜め上から接続すると共に、接続部に逆止弁V4を設置する(図1のA部参照)。
【0031】
真空吸引装置14として真空弁18を用いるときには、図6に示すように、コントローラ16に確実に真空度を到達させるために、逆止弁V4の上流側から圧力取出管17をコントローラ16に繋ぐこともできる。真空配管2の管路は緩やかな下り勾配とリフトと呼ばれる液体を斜めに持ち上げる配管を組み合わせて構成している。真空配管2の口径は流量に応じて75mm以上とする。真空配管2内は原則として常時真空状態であるため、この真空を利用して配管の途中に吸引ホースの接続口などを設けて工場内の清掃などに利用することもできる。また、万が一真空配管2が破損した場合でも管路内が大気圧にならない限り、搬送する液体(排水)が漏れることはない。
【0032】
なお、真空吸引装置14としては、真空吸引装置タンク12内の水位を検出する水位センサーを設けると共に、接続管15に電動弁を設け、真空吸引装置タンク12内の水位が所定の水位に達したことを水位センサーが検出したら、電動弁を開いて真空吸引装置タンク12内の排水を接続管15を通して真空配管2に吸引させるようにしてもよい。
【0033】
なお、図6において、19はバッファタンク11及び真空吸引装置タンク12の上部蓋であり、該上部蓋19にはグレーチング等の密閉構造でない蓋を用いる。これによりバッファタンク11及び真空吸引装置タンク12内の排水が有する熱タンク側面及び底面から地下への放熱に加え、タンク上部の大気への放熱も可能となる。
【0034】
また、設置場所の条件などにより、バッファタンク11による放熱量が十分に期待できない場合には、真空吸引ユニット1に冷水注水設備や熱交換設備を設置し、バッファタンク11内や場合によっては真空吸引装置タンク12にも冷水を注入したり、またバッファタンク11内の排水の熱や場合によっては真空吸引装置タンク12の排水の熱を熱交換設備を通して放熱するようにしてもよい。このような補助的な設備により十分な熱交換が行われる場合や設置場所の条件などにより流入水温が低い場合には、バッファタンク11から真空吸引装置タンク12に送水する際にサイフォンを形成せずにオーバーフローにより送水するようにしてもよい。
【0035】
真空配管2を空中に敷設する場合は、真空配管2内が大気圧になった状態で管路が破損した場合にも工場内の人間や器物に損害を与えないように地上、天井に配管する真空配管2の管路には受け皿を設ける等の防護処置を施すとよい。連通管13、接続管15、真空配管2等の配管にはCIP排液の液質を考慮してSUS304等の耐食性の材料を用いる。
【0036】
CIP洗浄の対象となる製造装置を長期間にわたって運用する場合、その時々の事情に応じて対象機器の排水量やレイアウトが変動する可能性があり、排水量や施設配置の将来変化に関して正確な把握や予測が困難であり、工場排水収集装置導入時に予想される排水量を根拠に機器仕様を定めても、やがて過大や過小が生じて変更が必要となることがある。そのために真空ステーションは導入時に要求される排水能力に合わせて機器の仕様を設計し指定の場所に固定して据え付けるのではなく、あらかじめスキッド化した移設可能な同じ能力・形状の「ユニット型真空ステーション」を排水量に応じて必要な台数設置することにより、排水量の変動や機器のレイアウト変動があった場合にも増設や移動などが可能な柔軟な工場排水収集装置を構築することができる。
【0037】
具体的な排水量や施設配置の将来変化としては、CIPの排水プログラム変更による汚水量の増減、工場内の製造機器のレイアウト自体の変更などが考えられる。図7及び図8はこのような具体的な変更による工場排水収集装置の配置例を示す図である。図7(a)及び(b)は、工場エリアA内に配置された複数(図では6個)の真空吸引ユニット1の数とレイアウトが同じで工場排水量が変化する場合を示す。図7(a)に示すように工場エリアA内に6個の真空吸引ユニット1が配置された工場排水収集装置において、排水量(6個の真空吸引ユニット1で収集する汚水量)が、例えば倍増した場合、図7(b)に点線で示すようにユニット型真空ステーション3−1及び真空配管2−1を増設する。そして3個の真空吸引ユニット1で収集した汚水を真空配管2−1を通して増設したユニット型真空ステーション3−1に送り、他の3個の真空吸引ユニット1で収集した汚水は既設のユニット型真空ステーション3−1に送る。このように、工場排水である汚水量が増加した場合、ユニット型真空ステーションを増設することにより、対処することが可能となる。また、図7(b)に示す状態から、例えば汚水量が半減した場合、真空配管2−1及びユニット型真空ステーション3−1を除去することにより、対処が可能となる。
【0038】
また、図8(a)に示すように、工場エリアBに配置されている複数(図では3個)の真空吸引ユニット1で収集している汚水をユニット型真空ステーション3に送るように構成された工場排水収集装置において、図8(b)に示すように、工場エリアCで発生する汚水を収集する必要が生じた場合、工場エリアCにも複数(図では3個)の真空吸引ユニット1−1を配置すると共に、1個のユニット型真空ステーション3−1と真空配管2−1を増設し、工場エリアC内に配置された真空吸引ユニット1−1で収集した汚水を真空配管2−1を通してユニット型真空ステーション3−1に送るようにする。このようにすることにより、汚水を収集する工場エリアが増加した場合でも容易に対処することが可能となる。また、図8(b)に示す状態から、例えば工場エリアCから汚水を収集する必要がなくなった場合、工場エリアCに配置された真空吸引ユニット1−1、真空配管2−1及びユニット型真空ステーション3−1を除去することにより、対処が可能となる。
【0039】
ユニット型真空ステーション3は集水タンク20、真空ポンプ(VP)21、圧送ポンプ(DP)22等から構成される。ユニット型真空ステーション3はスキッド化されてユニット毎にトラックやフォークリフトで簡単に移動できるようにする。複数の真空ステーションが設置される場合には流入する系統を切り替えて相互に融通運転が可能な配管構造を備えるように構成する。
【0040】
ユニット型真空ステーション3は2階建て構造とし、2階部分に集水タンク20及び該集水タンク20内を真空にする真空ポンプ21を設置し、1階部分に集水タンク20内に集められた排水を排水処理場に送る圧送ポンプ22を設置する。メンテナンス性を考慮してシンプルな配管ラインで構成する。集水タンク20は真空配管2の真空損失を最小限とするために高い位置に設置する。また、集水タンク20に収集した排水を既設の自然流下管路に直接放流する場合に備えて、集水タンク20の底部に排水部を設け、集水タンク20を大気に開放することで排水をそのまま自然流下管に排出できる。この場合は圧送ポンプ22の設置を省略することができる。
【0041】
真空ポンプ21の型式はCIP排液の液質を考慮し、ドライ式や水封式とする。圧送ポンプ22は圧送する流体により、ポンプ型式(渦巻、スクリュー等)等を変更する。各動力機器は施設の運用状況に合わせて、台数制御やインバータ制御等の最適な運転制御を採用する。
【0042】
ユニット型真空ステーション3の集水タンク20、真空ポンプ21、圧送ポンプ22、封水タンク、封水ポンプ及びバルブ、配管類はCIP排液の液質を考慮してSUS304程度の耐食性のある鋼板を使用する。
【0043】
脱臭装置は液質や設置場所の条件に応じて必要な場合に設置するため、後からでもユニット型真空ステーション3のスキッド上に取付けることが可能な構造とする。
【0044】
真空下では液体の沸点が下がるため、CIP排水の温度が高温の場合、飽和現象が発生して効率的な排水の真空搬送ができなくなる。その対策としてユニット型真空ステーション3の真空ポンプ21をCIP排水の温度をパラメータとして運転制御し、CIP排水が飽和しない適切な真空度に調整できるように制御システムを構成する。
【0045】
ユニット型真空ステーション3の動力・制御盤や電気配線・配管もスキッド上に工場内で組み込む構成とし、出荷前に製作工場内にて作動試験等を実施できるな真空ステーションとする。これにより装置設置現場での作業を極力減らすことが可能となり、現場での製造装置の停止期間を少なくすることができ、施工性の向上と品質の確保等が可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、CIP洗浄により発生する排水をバッファタンクに収集し、バッファタンク内の排水を所定流量ずつ真空吸引装置タンクに移送し、真空吸引装置タンク内の排水を配管状態を目視で確認できる場所に設置した真空配管を通して真空ステーションの集水タンクに移送し、真空ステーションから排水処理場に移送するので、短時間に大量に発生する工場排水を発生と同じタイミングで移送することなく、真空配管に小径の配管を用いることができ、柔軟な配管レイアウトが可能な真空吸引による工場排水収集装置として利用できる。
【0048】
また、製造装置が設置されている工場の床面、壁面、天井等を配管状態(管路の痛み経年変化や排水漏洩等)を目視で容易に確認できる位置に真空配管路を敷設でき、柔軟な配管レイアウトが可能で、万が一、真空管路が破損しても強酸性、強アルカリ等の危険なCIP排液が外部に漏れることもなく、漏水による土壌汚染等の危険がない真空吸引による工場排水収集装置として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 真空吸引ユニット
2 真空配管
3 ユニット型真空ステーション
11 バッファタンク
12 真空吸引装置タンク
13 連通管
14 真空吸引装置
15 接続管
16 コントローラ
17 圧力取出管
18 真空弁
19 上部蓋
20 集水タンク
21 真空ポンプ
22 圧送ポンプ
24 空気管
101 工場排水
102 床面
103 排水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置をCIP洗浄することにより発生する工場排水を集め排水処理場に移送する真空吸引による工場排水収集装置であって、
前記CIP洗浄による排水発生場所近傍に設置されたバッファタンクと、前記バッファタンクに隣接して配設された真空吸引装置タンクと、前記真空吸引装置タンク内の排水を真空吸引する真空吸引装置からなる真空吸引ユニットと、配管状態を目視で確認できる場所に設置された真空配管と、集水タンクを備えた真空ステーションと、を備え、
前記CIP洗浄により発生する排水を前記バッファタンクに収集し、前記バッファタンク内の排水を所定流量ずつ前記真空吸引装置タンクに移送し、前記真空吸引装置タンク内の排水を前記真空吸引装置により前記真空配管に移送し、前記真空配管を通して前記真空ステーションの集水タンクに移送し、前記真空ステーションから前記排水処理場に移送することを特徴とする真空吸引による工場排水収集装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空吸引による工場排水収集装置において、
前記バッファタンク及び前記真空吸引装置タンクは耐食性で且つ高熱伝導性の材料からなり、床面を掘削して設置されており、各タンク内の排水の熱はタンク側面及び底面を伝って地下に放熱するようになっていることを特徴とする真空吸引による工場排水収集装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空吸引による真空吸引による工場排水収集装置において、
前記バッファタンクと前記真空吸引装置タンクは連通管で接続され、前記バッファタンク内の排水は前記連通管が形成するサイフォンにより前記真空吸引装置タンクに移送されるようになっていることを特徴とする真空吸引による工場排水収集装置。
【請求項4】
請求項3に記載の真空吸引による工場排水収集装置において、
前記真空吸引装置タンクは、1個の前記バッファタンクに対して隣接して複数個並列に設置されており、各前記真空吸引装置タンクには複数の前記真空吸引装置が設置されていることを特徴とする真空吸引による工場排水収集装置。
【請求項5】
請求項2に記載の真空吸引による工場排水収集装置において、
前記真空吸引装置タンクは、1個の前記バッファタンクに対して複数個直列に設置されており、前記バッファタンクに隣接する真空吸引装置タンクを第1真空吸引装置タンクとし、前記第1真空吸引装置タンクに隣接する真空吸引装置タンクを第2真空吸引装置タンクとし、順次第3、・・・第n真空吸引装置タンクとし、各前記真空吸引装置タンクには複数の前記真空吸引装置が設置されていることを特徴とする真空吸引による工場排水収集装置。
【請求項6】
請求項5に記載の真空吸引による工場排水収集装置において、
前記バッファタンクと第1真空吸引装置タンクを接続する連通管を第1連通管、前記第1真空吸引装置タンクと第2真空吸引装置タンクを接続する連通管を第2連通管とし、順次第3連通管、・・・第n連通管とし、第1連通管が形成するサイフォンの水位を第1水位とし、第2連通管が形成するサイフォンの水位を第2水位とし、順次第3水位、・・・第n水位とし、前記バッファタンクの水位が第1水位以下の場合は前記第1真空吸引装置タンクに設置した真空吸引装置のみを作動させ、前記バッファタンクに流入する排水が増加し、水位が第1水位以上第2水位以下となった場合は前記第1真空吸引装置タンクと前記第2真空吸引装置タンクに設置した真空吸引装置を作動させるというように、順次水位の増加にともない作動させる真空吸引装置を増加することを特徴とする真空吸引による工場排水収集装置。
【請求項7】
製造装置をCIP洗浄することにより発生する排水を集め排水処理場に移送する真空吸引による工場排水収集方法であって、
前記CIP洗浄により発生する排水を排水発生場所近傍の床面を掘削して設置されたバッファタンクに一旦収集すると共に、前記バッファタンクに隣接して床面を掘削して設置された真空吸引装置タンクに所定量ずつ移送し、前記バッファタンクと真空吸引装置タンク内に収集された排水の熱を地下に放熱した排水温度を下げた後、前記真空吸引装置タンクから配管状態を目視で確認できる場所に設置された真空配管を通して真空ステーションの集水タンクに移送し、前記真空ステーションから前記排水処理場に移送することを特徴とする真空吸引による工場排水収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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