説明

直貼り用床材とそれを用いた木質フロア

【課題】接着剤なしで床下地に固定しかつ必要時には容易に剥がすことのできる直貼り用床材10を提供する。また、直貼り床材10の床下地面に対する固定を確実なものとした木質フロアを提供する。
【解決手段】木質基材2の裏面に緩衝材層3が積層され、その裏面に吸着性を有するアクリル系樹脂層4を、ドット状、線状、または面状に形成して直貼り用床材10とする。コンクリートスラブ20等の床下地面の上に、ポリエチレンシートのように表面が平滑なシートからなる表面平滑処理層30を形成し、その上に、上記の直貼り用床材10を配置固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直貼り用床材とそれを用いた木質フロアに関する。
【背景技術】
【0002】
合板や木質繊維板である木質基材の裏面に、不織布や発泡樹脂からなる緩衝材層を積層した直貼り用床材は知られている。直貼り用床材の複数枚を、床下地であるコンクリートスラブに直接敷き詰める、あるいはコンクリートスラブの上に貼り付けたパーティクルボードや合板(捨て貼り合板)を介して敷き詰めることにより、木質フロアとされる。木質フロアの施工に際して、直貼り用床材を床下地に敷き詰めて固定する作業には、通常、接着剤や両面粘着テープが用いられる。
【0003】
木質フロア面の一部に傷が付いたとき、あるいは経時変化により表面の一部に変色が生じたときなどに、木質フロアを構成する直貼り用床材の全部または一部を張り替えることが求められる。しかし、接着剤や両面粘着テープを用いて床下地に貼り付けられている直貼り用床材を、床下地から剥がして除去することは容易でなく、長い作業時間を必要とする。また、剥がした後の床下地面に、接着剤層や不織布や発泡樹脂である緩衝材層の一部が残ってしまうので、それを取り除く作業も必要とされる。
【0004】
そのような不都合を解消する床材として、特許文献1には、基材と、該基材上に積層された発泡体層とを備え、該発泡体層は吸着性を有するアクリル系重合体からなる吸着性床材が記載されており、施工に接着剤や両面粘着テープを用いないことから、床下地に対する脱着が容易かつ迅速に行うことができると記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−56167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される床材は、アクリル系重合体からなる吸着性を有する発泡体層を床下地に対向する面に有しており、接着剤を使用しないで床下地に固定することができ、必要時には容易に取り去ることができる。しかし、木質系基材の裏面にアクリル系重合体からなる発泡体層を形成することは容易でなく、特別の製造装置を必要とする。また、通常、コンクリートスラブあるいは捨て貼り合板のような床下地面には微少な凹凸が多く存在しており、そのままではアクリル系重合体からなる吸着性を有する発泡体層と床下地面との間の結合力が不十分となって、施工中に、一旦固定した床材が不用意に移動してしまう場合が起こり得る。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、接着剤なしで床下地に固定しかつ必要時には容易に剥がすことのできる直貼り用床材であって、簡単な方法で製造することのできる直貼り用床材を提供することを第1の課題とする。また、その直貼り用床材を床下地面に貼り付けた木質フロアにおいて、直貼り床材の床下地面に対する固定を確実なものとした木質フロアを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による直貼り用床材は、基本的に、木質基材の裏面に緩衝材層が積層された直貼り用床材であって、前記緩衝材層の裏面には吸着性を有するアクリル系樹脂層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記の直貼り用床材は、従来知られた木質基材の裏面に緩衝材層が積層された直貼り用床材における前記緩衝材層の裏面に、市販されているアクリル系樹脂のフィルムやシートを所要の大きさに切断して、接着剤等を用いて貼り付けることにより、または、従来の直貼り用床材において緩衝材層として用いられている材料に上記のようにしてアクリル系樹脂層を形成したものを作り、それを従来知られた木質基材の裏面に貼り付けることにより製造することができる。そのために、発泡成形装置のような特別の製造装置を必要とせず、その製造は容易でありかつ低コストで製造することができる。
【0010】
本発明における直貼り用床材において、緩衝材層の裏面に形成するアクリル系樹脂層はその全面に面状に形成されていてもよく、ドット状あるいは線状のように部分的に形成されていてもよい。床下地面との間の固定力および脱着力を考慮して、実験的に必要となる面積を設定すればよい。
【0011】
上記の直貼り用床材を必要枚数だけ床下地面に配置することにより、本発明による木質フロアとされる。床下地の種類に特に制限はなく、従来の木質フロアにおける任意の床下地であってよい。具体的には、コンクリートスラブ、あるいはその表面にパーティクルボードのような木質板あるいは合板を貼り付けたコンクリートスラブ等を例示できる。
【0012】
上記のように、本発明による直貼り用床材は、緩衝材層の裏面に吸着性を有するアクリル系樹脂層を有しており、接着剤や両面粘着テープを用いることなく、そのままで床下地面に固定することができる。さらに、張り替えなどの必要時には、直貼り用床材を上方に引っ張ることにより、床下地面から容易に引き剥がすことができる。
【0013】
床下地の表面に微細な凹凸があるときに、緩衝材層の裏面に形成したアクリル系樹脂層と床下地面との接触面積が少なくなり、両者間に吸着による充分な固定力が得られない場合が起こり得る。それを解消するために、本発明による木質フロアの好ましい態様においては、床下地の表面には表面を平滑にするための表面平滑処理層が形成されており、該表面平滑処理層の上に前記直貼り用床材が配置されていることを特徴とする。表面が平滑である表面平滑処理層を形成することにより、緩衝材層の裏面に形成したアクリル系樹脂層の全面が床下地面と接触することとなり、所要の固着力が得られる。
【0014】
前記表面平滑処理層は、平滑な表面層が得られることを条件に任意の層であってよいが、具体的な例として、床下地面に塗布された樹脂塗料による塗膜、あるいは床下地面に貼着された樹脂シート等を挙げることができる。また、このような表面平滑処理層を形成することにより、床下地からの湿気を遮断することができ、木質フロアに配置した直貼り用床材が不用意に伸縮するのを防止することができる。それにより、木質フロアの平坦性を長期にわたり維持することができる。
【0015】
なお、本発明において、アクリル系樹脂層を形成するアクリル系樹脂とは、アクリル基を持った高分子化合物からなる樹脂一般をいい、代表的なものとして、ポリアクリル酸やそのエステル(およびポリメタクリル酸とそのエステル)が挙げられる。中でも、常温で良好な柔軟性を示し、屈曲耐久性を有し、耐候性にも優れていることから、多層構造重合体すなわち2種以上のアクリル系重合体がコア−シェル型の多層構造を形成している重合体であるアクリル系軟質樹脂は好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より簡単な方法で製造することができる、接着剤なしで床下地に固定しかつ必要時には容易に剥がすことのできる直貼り用床材が得られる。また、その直貼り用床材を吸着力によって確実に床下地面に固定した木質フロアが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による直貼り用床材の一形態を示す平面図、図2はその側面図である。図3は他の形態の直貼り用床材におけるアクリル系樹脂層の形成態様を示す。図4は本発明による木質フロアの一形態を説明するための図である。
【0018】
図1および図2に示す直貼り用床材10は、4周の側面部分に実加工を施した長尺状の小幅な木質系単位板1の多数枚が雁行形状に突き合わせ接合されて形成される木質基材2と、該木質基材1の裏面に積層された緩衝材層3と、該緩衝材層3の裏面に形成された吸着性を有するアクリル系樹脂層4とからなる。なお、図示しないが、木質基材2は、1枚の合板あるいは木質繊維板で構成することもできる。
【0019】
前記木質単位板1には合板あるいはMDFのような木質繊維板が用いられ、その表面に例えば化粧突き板のような化粧層が形成される。木質単位板1の厚みは5〜15mm程度が普通である。木質単位板1の裏面には短手方向に多数の凹溝5が形成されており、床下地面に配置したときに、直貼り用床材10が床下地面の不陸に対して追従するのを良好にしている。
【0020】
緩衝材層3は、不織布、樹脂発泡体、ゴム発泡体などの緩衝性を備えたシートで構成される。具体的には、ポリエステル不織布、発泡ポリエチレンシート、発泡ポリウレタンシート、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)樹脂発泡シート、などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を積層して用いてもよい。緩衝材層3の厚みも任意であるが、通常、1〜7mm程度である。
【0021】
アクリル系樹脂層4は、前記したアクリル系樹脂からなるフィルムまたはシートを接着積層するか、アクリル系樹脂を塗布することにより形成される。厚みは0.3〜4.5mm程度であることの望ましい。アクリル系樹脂層4は、図2に示すように、緩衝材層3の全面に形成されてもよく、図3に示すように、ドット状あるいは線状に部分的に形成されてもよい。
【0022】
直貼り用床材10の製造に当たっては、木質基材2の裏面に緩衝材層3を積層した床材を作り、その後工程で、緩衝材層3の裏面にアクリル系樹脂層4を形成してもよく、図3に示すように、緩衝材層3の裏面にアクリル系樹脂層4を形成したものをあらかじめ作っておき、それを木質基材2の裏面に接着積層するようにしてもよい。
【0023】
木質フロアを施工するに当たっては、上記した直貼り用床材10を、床下地の上で位置決めした後、床下地に対して押し付ける。前記アクリル系樹脂層4はそれ自身が吸着性を有しており、上から押し付けることにより、直貼り用床材10は床下地面に安定的に固定される。固定に当たっては、接着剤や両面粘着テープ等を使用しなくてよく、貼り付け作業は容易であると共に、なんらかの理由で貼り付け固定した直貼り用床材10の全部または一部を交換することが必要となったときでも、当該直貼り用床材10を上方に持ち上げれば、容易に床下地面から引き剥がすことができる。
【0024】
図4は、木質フロアを施工するときの他の態様を示している。ここでは、例えば床下地であるコンクリートスラブ20の表面に、その表面を平滑にするための表面平滑処理層30を形成した後、該表面平滑処理層30に対して、直貼り用床材10を固定している。床下地は、コンクリートスラブ20の表面に厚み5〜15mm程度のパーティクルボードや合板のような捨て貼り層を貼り付けたものでもよく、その場合には、前記捨て貼り層の上に、直貼り用床材10を固定する。また、床下地として、厚み15mm程度のパーティクルボードや耐水性合板を直接用いることもできる。
【0025】
床下地の上に上記のようにして表面平滑処理層30を形成することにより、床下地面が微細な表面凹凸を有する場合であっても、強い固定力で直貼り用床材10を床下地に配置することができる。表面平滑処理層30は、例えばウレタン系樹脂である樹脂塗料を床下地面に塗布して形成した樹脂塗膜であってもよく、ポリエチレン(PE)系樹脂あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂のフィルムあるいはシートを適宜の接着剤を用いて床下地面に貼着することにより形成してもよい。いずれの場合でも、表面平滑処理層30の厚みは、コスト面や作業性の観点から1mm以下であることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による直貼り用床材の一形態を示す平面図。
【図2】図1に示す直貼り用床材の側面図。
【図3】他の形態の直貼り用床材におけるアクリル系樹脂層の形成態様を示す図。
【図4】本発明による木質フロアの一形態を説明するための図。
【符号の説明】
【0027】
1…長尺状の小幅な木質系単位板、2…木質基材、3…緩衝材層、4…吸着性を有するアクリル系樹脂層、5…凹溝、20…床下地(コンクリートスラブ)、30…表面平滑処理層、10…直貼り用床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の裏面に緩衝材層が積層された直貼り用床材であって、前記緩衝材層の裏面には吸着性を有するアクリル系樹脂層が形成されていることを特徴とする直貼り用床材。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂層は、緩衝材層の裏面に、ドット状、線状、または面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直貼り用床材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の直貼り用床材の複数枚が床下地面に配置されてなる木質フロア。
【請求項4】
請求項3に記載の木質フロアであって、床下地の表面には表面を平滑にするための表面平滑処理層が形成されており、該表面平滑処理層の上に前記直貼り用床材が配置されていることを特徴とする木質フロア。
【請求項5】
前記表面平滑処理層が床下地面に塗布された樹脂塗料による塗膜であることを特徴とする請求項4に記載の木質フロア。
【請求項6】
前記表面平滑処理層が床下地面に貼着された樹脂シートであることを特徴とする請求項4に記載の木質フロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−70906(P2010−70906A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236195(P2008−236195)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】