説明

照射装置

【課題】スペクトル補正フィルタでの反射光の混入に伴うスペクトル特性のずれを抑制できる照射装置を提供すること。
【解決手段】光源装置12と、前記光源装置12の放射光H1のスペクトル特性を変えるスペクトル補正フィルタ22と、前記スペクトル補正フィルタ22と同一の光軸K1上に配置されたNDフィルタ24と、を備え、前記スペクトル補正フィルタ22で反射した反射光H2の進行方向を前記光軸K1から外すように、前記スペクトル補正フィルタ22、及び、前記NDフィルタ24を前記光軸K1に対して傾けた擬似太陽光照射装置1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池等のデバイスの特性評価や耐光試験に用いて好適な照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光と略同じスペクトル特性を有した光(以下、「擬似太陽光」と言う)を照射する擬似太陽光照射装置(ソーラーシミュレータとも呼ばれる)が知られており、太陽電池の特性評価や耐光試験に広く用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264991号公報
【特許文献2】特開2009−218009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、出願人は、光源から照射面に至る光路上に、光源のスペクトル特性を太陽光のスペクトル特性に変換するスペクトル補正フィルタと、光量を調整するための減光フィルタとを交換自在に設け、疑似太陽光のスペクトル特性や光量を容易に調整可能にした擬似太陽光照射装置について、既に国際出願している(PCT/JP2011/066531)。
しかしながら、スペクトル補正フィルタ、及び減光フィルタを光路上に設けると、一方のフィルタにコーティングされた膜面で反射した反射光が他方のフィルタの膜面で反射され照射面への照射光に混入する。この反射光が、スペクトル補正フィルタの膜面での反射を経ている場合、スペクトル補正フィルタでの反射によってスペクトル特性に変調を受ける。このような反射光が照射光に混入すると、照射光のスペクトル特性が設計値からずれてしまい、特性評価や耐光試験の目的に見合った品質の照射光が得られなくなる、といった問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、スペクトル補正フィルタでの反射光の混入に伴うスペクトル特性のずれを抑制できる照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、光源と、前記光源の放射光のスペクトル特性を変えるスペクトル補正フィルタと、前記スペクトル補正フィルタと同一の光軸上に配置された1又は複数の減光フィルタと、を備え、前記スペクトル補正フィルタで反射した反射光の進行方向を前記光軸から外すように、前記スペクトル補正フィルタ、及び/又は、前記減光フィルタを前記光軸に対して傾けたことを特徴とする照射装置を提供する。
【0007】
また本発明は、上記照射装置において、前記スペクトル補正フィルタと、前記減光フィルタとの各々を、前記光軸に対して互いに反対の方向に傾けたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記照射装置において、前記光軸に対する前記スペクトル補正フィルタ、及び前記減光フィルタの傾きの大きさを、斜入射に伴う透過スペクトル特性の変化が小さい範囲である5度〜30度としたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記照射装置において、前記スペクトル補正フィルタ、及び前記減光フィルタの各光学フィルタうち、透過率が小さい光学フィルタを前記光源の放射光の入射側に配置したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記照射装置において、前記スペクトル補正フィルタが赤外波長域の光を低減又はカットするスペクトル特性を有し、当該スペクトル補正フィルタを前記減光フィルタよりも前記光源の放射光の入射側に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スペクトル補正フィルタで反射した反射光を光軸から外すように、スペクトル補正フィルタ、及び/又は、減光フィルタを傾けて配置する構成としたため、反射光の照射光への混入を抑え、照射光のスペクトル特性のずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る擬似太陽光照射装置の概略構成図である。
【図2】光源装置の発光スペクトル特性を示す図である。
【図3】NDフィルタの透過スペクトル特性を示す図である。
【図4】スペクトル補正フィルタの透過スペクトル特性を示す図である。
【図5】光学フィルタ群を拡大して示す模式図である。
【図6】本発明に対する光学フィルタ群の参考構成を示す図である。
【図7】NDフィルタの透過率平坦性を示す図であり、(A)は図6に示す参考構成についての透過率平坦性を示し、(B)は本発明の実施形態の構成についての透過率平坦性を示す。
【図8】本発明の変形例に係る光学フィルタ群の構成を示す図である。
【図9】本発明の変形例に係る光学フィルタ群の構成を示す図である。
【図10】本発明の変形例に係る光学フィルタ群の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る照射装置の一態様として、太陽電池等のデバイスの特性評価や耐光試験に用いられる擬似太陽光照射装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る擬似太陽光照射装置1の概略構成図である。
同図に示すように、擬似太陽光照射装置1は、特性評価や耐光試験対象の試料を載置する試料載置ステージ3と、光源装置12と、光源装置12の放射光が入射する透過型インテグレータ光学系13と、当該透過型インテグレータ光学系13を通った光を平行光化して試料載置ステージ3に照射するコリメーション光学系14と、光学フィルタ群15とを備えている。
【0014】
光源装置12は、光源たるランプ10と、当該ランプ10の光を集光する集光反射鏡たる楕円反射鏡11とを有している。
ランプ10は、擬似太陽光の高出力化を実現可能にすべく、光学系効率が高い、点光源に近いショートアークランプが用いられている。またランプ10には、試験や評価の内容によって要求される波長域の光を放射し、当該波長域においてブロードなスペクトル特性が求められ、例えばキセノンランプやハロゲンランプが好適に用いられ得る。本実施形態ではキセノンランプを用いることとしている。
楕円反射鏡11は、光軸K1が鉛直上向きになるように配置され、この楕円反射鏡11の光軸K1と同軸にランプ10を垂直に立てた姿勢で挿入配置されている。
また、光源装置12には、ランプ10、或いは楕円反射鏡11を光軸K1方向、及び光軸K1に垂直な方向に相対移動し、ランプ10の発光点Pを楕円反射鏡11の焦点Fに合わせる位置調整機構(不図示)が設けられている。ランプ10は、図示せぬ送風ファンによって空冷されており、ランプ10の発光の安定化が図られている。
【0015】
透過型インテグレータ光学系13は、光源装置12から放射された光の照度ムラ及び色ムラを打ち消す光学系であり、2枚のフライアイレンズ17を光軸K1上に配置して構成されている。なお、フライアイレンズ17に代えて、ロッドインテグレータを光軸K1上に配置しても良い。
コリメーション光学系14は、透過型インテグレータ光学系13を通った光を平行光化し、照射面3Aに導くものであり、コリメータレンズ16と、2枚の反射平面ミラー18、20とを備えている。2枚の反射平面ミラー18、20は、透過型インテグレータ光学系13を通過した光をコリメータレンズ16に入射し、コリメータレンズ16は、入射光を平行化して出射する。このコリメータレンズ16は、光軸K2が試料載置ステージ3の照射面3Aに対して略垂直となるように当該試料載置ステージ3に対向配置されており、コリメータレンズ16の平行光が試料載置ステージ3の照射面3Aに垂直に入射して当該照射面3Aを均一な照度で照射する。
【0016】
本実施形態では、光源装置12、及び透過型インテグレータ光学系13の光軸K1と、コリメータレンズ16の光軸K2とが略平行に配置され、また、一方の反射平面ミラー18の反射によって透過型インテグレータ光学系13を通過した光を略90度に曲げた後、他方の反射平面ミラー20の反射によってコリメータレンズ16に光軸K2に沿って入射することで、光源装置12から照射面3Aに至る光路が門型(略C字状)に構成されている。
【0017】
光学フィルタ群15は、フライアイレンズ17の入射側に配置されており、光源装置12の放射光のスペクトル特性を、デバイスの特性評価や耐光試験に要求される所定のスペクトル特性に変換し、かつ光量を調整するものである。光学フィルタ群15は、透過型の光学フィルタのみから構成され、本実施形態では、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24を備え、これらが光源装置12の同じ光軸K1上に順に配置されている。
スペクトル補正フィルタ22は、透過光のスペクトル特性を疑似太陽光のスペクトル特性に変換して変える透過型の光学フィルタであり、また、NDフィルタ24は、減光フィルタとも呼ばれ、透過光の光量を減じる透過型の光学フィルタである。
これらスペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24は、光軸K1上にそれぞれが交換自在に設けられており、これらを交換することで、照射光のスペクトル特性や光量を自在に変更可能になっている。なお、光源装置12と光学フィルタ群15の間には、光軸K1上にリレーレンズ26が設けられている。
【0018】
図2は光源装置12の発光スペクトル特性を示す図であり、図3はNDフィルタ24の透過スペクトル特性を示す図である。また図4はスペクトル補正フィルタ22の透過スペクトル特性を示す図である。
光源装置12のランプ10に用いたキセノンランプは、図2に示すように、紫外域から赤外域にかけた広い波長範囲に亘り発光するものの、赤外域(図2中、矢印Aで示す)の光成分が他の波長域よりも顕著に多くなっている。
一方、図4に示すように、スペクトル補正フィルタ22の透過スペクトル特性は、光源装置12の放射光の赤外域の光成分を抑えるように、赤外域(図4中、矢印Bで示す)で透過率が相対的に低くなっている。このスペクトル補正フィルタ22に光源装置12の放射光を透過させることで、紫外域から赤外域にかけた疑似太陽光が得られる。
また、NDフィルタ24の透過スペクトル特性は、透過光のスペクトル特性を変化させずに光量のみを減じさせるべく、図3に示すように、紫外域から赤外域にかけて透過率が略一定の平坦な透過特性を有している。
【0019】
図5は、光学フィルタ群15を拡大して示す模式図である。
本実施形態では、同図に示すように、光学フィルタ群15を構成するスペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24のそれぞれは、光軸K1に対して入射面Sa(出射面Sb)が垂直ではなく、所定の傾斜角度α、βで傾けて配置されている。
更に詳述すると、一般に、スペクトル補正フィルタ22では、入射面Sa、及び出射面Sbへの光の入射に伴い少なからず反射が生じる。したがって、例えば図6に示すように、スペクトル補正フィルタ22を照射面3A側に配置し、NDフィルタ24を光源装置12側に配置し、なおかつ、それぞれを光軸K1に対して垂直(90度)に配置した場合、光源装置12の放射光H1がスペクトル補正フィルタ22の入射面Saに入射した際に、入射面Saがコーティングされた膜面であれば、多くの裏面反射が生じる。この裏面反射に起因して、スペクトル補正フィルタ22の入射面Saと、NDフィルタ24の出射面Sbが膜面の場合は、NDフィルタ24の出射面Sbの間で多重に反射が生じる(図6には1回反射の反射光成分のみを示す)。このような多重(1回を含む)の反射によって生じた反射光H2がスペクトル補正フィルタ22を透過し放射光H1と混ざり、この混合の光がフライアイレンズ17に照射光H3として入射される。
【0020】
反射光H2は、スペクトル補正フィルタ22の入射面Saでの反射の都度、透過スペクトル特性に応じたスペクトル変調を受けるため、スペクトル補正フィルタ22の透過スペクトル特性は、前掲図4に示すように、赤外域で相対的に透過率が低くなる。したがって、反射光H2においては、これとは逆に、赤外域の強度が相対的に高くなり、結果として、照射光H3のスペクトル特性においても、反射光H2の影響により赤外域での強度が他の波長域に比べて相対的に高くなり、設計値からのずれが生じることとなる。
【0021】
放射光H1への反射光H2の混入割合は、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24の透過率に基づき次のように求められる。
NDフィルタ24、及びスペクトル補正フィルタ22の透過率をT1、T2とし、反射率をR1、R2とし、また光源装置12の放射光の光量をI0とすると、スペクトル補正フィルタ22を透過してフライアイレンズ17に入射する放射光H1の光量I1は、次式(1)により表される。
【0022】
放射光H1の光量I1=I0×T1×T2 ・・・(1)
【0023】
またスペクトル補正フィルタ22とNDフィルタ24の間で多重に反射した後、スペクトル補正フィルタ22を透過してフライアイレンズ17に入射する反射光H2の光量I2は、反射回数が1回の場合、次式(2)により表される。
【0024】
反射光H2の光量I2=I0×T1×R2×R1×T2 ・・・(2)
【0025】
したがって、放射光H1への反射光H2の混入割合は、式(1)、及び式(2)に基づいて、次式(3)により求められる。
【0026】
照射光H3への反射光H2の混入割合=
=(反射光H2の光量I2)/(放射光H1の光量I1)
=R1×R2
=(1−T1)×(1−T2) ・・・(3)
ただし、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24での光の吸収は「0」と仮定している。
【0027】
(3)式に示されるように、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24の透過率T1、T2が低いほど混入割合が増加し、反射光H2の影響が大きくなることが分かる。
特に、特性評価や耐光試験では、スペクトル補正フィルタ22を固定しつつ、NDフィルタ24を適宜に交換、或いは追加して照射光H3の光量を多段階に調整しながら評価等が行われる。このような場合、NDフィルタ24を交換、或いは追加する度に、反射光H2の混入割合に応じて照射光H3のスペクトル特性が変化してしまい、更には、NDフィルタ24の透過率T1を小さくして光量を大きく減じるほど、照射光H3のスペクトル特性の変化が顕著になる。このように、NDフィルタ24の透過率T1を変えて光量を可変するごとに照射光H3のスペクトル特性が変化してしまうと、評価等で得たデータの信頼性を悪くしてしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、前掲図5に示したように、スペクトル補正フィルタ22とNDフィルタ24の間で生じる反射光H2が、放射光H1と異なる方向、すなわち光軸K1から外れた方向に向かうように、スペクトル補正フィルタ22、及び/又はNDフィルタ24を光軸K1に対して傾けて配置し、これにより、照射光H3への反射光H2の混入を防止することとしている。
【0029】
図7はNDフィルタ24の透過率平坦性を示す図であり、図7(A)は図6に示す参考構成についての透過率平坦性を示し、図7(B)は本実施形態の構成についての透過率平坦性を示す。この透過率平坦性は、紫外域に近い波長500nmの光の透過率を基準にして他の波長域の透過率の相対値を示したものである。
なお、図7(A)、及び図7(B)において、線aは、NDフィルタ24使用時の照射光H3のスペクトル特性(装置実測値)をNDフィルタ24を使用しないで測定した照射光のスペクトル特性(装置実測値)で除算することにより求めたNDフィルタ24の透過率平坦性(装置実測逆算値)を示している。また線bは、前掲図3に示したNDフィルタ24の透過スペクトル特性から求めた透過率平坦性(単独実測値)を示している。
【0030】
図7(A)の線bで示されるように、前掲図6の参考構成においては、上述の反射光H2の影響により、NDフィルタ24が、見かけ上、赤外域の広い範囲(図7(A)中、矢印Cで示す)で透過率が高くなったように振る舞ってしまい、照射光H3に赤外光の成分が設計値よりも多く含まれてしまうこととなる。
これに対して、図7(B)に示されるように、本実施形態の構成によれば、照射光H3への反射光H2の混入が防止されることから、NDフィルタ24が、見かけ上、赤外域の広い範囲で透過率が高くなることがなく、線bで示す単独実測値と略一致させることができる。なお、図7(A)、図7(B)において、波長1000nm〜1100nm付近の線bの凹凸波形は、測定上のノイズと考えられ、無視できるものである。
【0031】
ここで、スペクトル補正フィルタ22、及び/又はNDフィルタ24の傾きが大きいほど、反射光H2を光軸K1から大きく外すことができる。しかしながら、一般に、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24は、透過スペクトル特性に入射角度依存性を有することが多く、傾きが大きいほど、透過スペクトル特性の設計値からのずれが大きくなる。
そこで本実施形態では、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24のいずれかではなく、両方を光軸K1に対して傾けることで、それぞれの傾斜角度を抑えつつも、反射光H2を光軸K1から大きく逸らすこととしている。
具体的には、図5に示すように、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24のそれぞれの法線M1、M2と光軸K1とが成す角度を傾斜角度α、βとした場合に、この傾斜角度α、βの大きさ(絶対値)を射入射に伴う透過スペクトル特性のずれが小さい範囲である5度〜30度の範囲としている。
【0032】
また、光学フィルタ群15の各々の光学フィルタが光軸K1に対して傾けて配置されることで、図5に示すように、各光学フィルタでの反射によって光源装置12の側に戻る反射光H4の進行方向も光軸K1から外れる。これにより、反射光H4が光源装置12の楕円反射鏡11に入射し焦点F付近に集光することでランプ10の早期電極劣化などを引き起こす、といった事態も回避できる。ただし、光学フィルタ群15が含む全ての光学フィルタ(本実施形態では、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24)が同一方向に傾けられてしまうと、上記反射光H2の光軸K1からの逸れ量が小さくなってしまう。そこで、図5に示すように、スペクトル補正フィルタ22とNDフィルタ24の傾きの方向を相互に反対にし、略ハの字状に配置することとしている。すなわち、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24の傾斜角度α、βは、光軸K1を基準(0度)とした場合に、符号が相互に正負反対の符号となる。
このように配置することで、反射光H2の進行方向の光軸K1からの逸れ量を小さくすることなく、光源装置12の側に戻る反射光H4の進行方向を光軸K1から外すことができる。
【0033】
ここで、スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24の傾斜角度α、βの大きさは、反射光H2が照射光H3に混入しない角度、より正確には、光学フィルタ群15を通過した光が入射する透過型インテグレータ光学系13に反射光H2が入射しない角度であれば良い。一方で、上述の通り、傾斜角度α、βは、射入射に伴う透過スペクトル特性のずれが小さい角度範囲に収めるという制限があり、この角度範囲の制限内でスペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24を傾斜させたとしても、反射光H2が透過型インテグレータ光学系13に入射してしまう可能性がある。この場合には、図5に示すように、透過型インテグレータ光学系13の入射端(本実施形態では、フライアイレンズ17の入射面)と、当該透過型インテグレータ光学系13に向かう反射光H2を生じさせる透過型光学フィルタ(本実施形態ではNDフィルタ24)との間の距離Lを大きくとることで、透過型インテグレータ光学系13への反射光H2の入射を抑え、反射光H2の照射光H3への混入を抑えられる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、スペクトル補正フィルタ22で反射した反射光H2を光軸K1から外すように、スペクトル補正フィルタ22、及び、NDフィルタ24を傾けて配置する構成としたため、反射光H2の照射光H3への混入を抑え、照射光H3のスペクトル特性のずれを抑制できる。
【0035】
また本実施形態によれば、スペクトル補正フィルタ22と、NDフィルタ24との各々を、光軸K1に対して互いに反対の方向に傾ける構成とした。このように、両方を傾斜させることで、それぞれの傾斜角度を抑えつつも、反射光H2を光軸K1から大きく逸らすことができる。これに加え、光源装置12の側に戻る反射光H4の進行方向も光軸K1から外すことができ、反射光H4が光源装置12の楕円反射鏡11に入射し焦点F付近に集光することでランプ10の早期電極劣化などを引き起こす、といった事態も回避できる。
このとき、スペクトル補正フィルタ22とNDフィルタ24の傾きの方向を相互に反対にし、略ハの字状に配置しているため、反射光H2の光軸K1からの逸れ量を小さくすることなく、光源装置12の側に戻る反射光H4の進行方向を光軸K1から外すことができる。
【0036】
また本実施形態によれば、光軸K1に対するスペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24の傾斜角度α、βの大きさを、斜入射に伴う透過スペクトル特性の変化が小さい範囲である5度〜30度、より望ましくは10度以上、15度以下とした。
これにより、照射光H3のスペクトル特性の設計値からのズレを抑えることができる。
【0037】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0038】
(変形例1)
上述した実施形態では、光学フィルタ群15がスペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24をそれぞれ1枚だけ備える場合を例示したが、これに限らず、スペクトル補正フィルタ22、及び/又はNDフィルタ24を2枚以上、同一の光軸K1上に備えても良い。
例えば、図8に示すように、上記スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24に加え、青色成分を低減するスペクトル補正フィルタ22を設けることで、夕日に相当する擬似太陽光を照射光H3として照射することができる。
また例えば、図9に示すように、上記スペクトル補正フィルタ22、及びNDフィルタ24に加え、NDフィルタ24を1枚追加することで、更に透過率を低くした調整(低光量化)が可能になる。複数枚のNDフィルタ24を光学フィルタ群15が備える場合には、NDフィルタ24の透過率T1が小さい順に光源装置12の側から光軸K1に配置し、透過率T1が低いNDフィルタ24と透過型インテグレータ光学系13との間の距離Lを大きくする。この理由については後述する。
【0039】
また、光学フィルタ群15が備える光学フィルタの傾斜の方向は、入射面及び出射面の法線方向と光軸K1が成す角度がゼロ度より大きくなる方向であれば任意の方向とすることができる。このとき図8、及び図9に示すように、光学フィルタ群15の一部の光学フィルタを、放射光H1の進行方向に傾斜させ、他の一部の光学フィルタを光軸K1に垂直な線Qを中心に回転した方向に傾斜させ、各々の光学フィルタで傾斜の基準とする方向を異ならせても良い。
【0040】
なお、スペクトル補正フィルタ22、及び/又はNDフィルタ24を複数枚備える構成の光学フィルタ群15においては、この後段の光学系(本実施形態では透過型インテグレータ光学系13)に入射する反射光H2を生じる光学フィルタを傾ければ良い。このとき、照射光H3のスペクトル特性に影響を与えない程度に光量が小さな反射光H2を生じる光学フィルタについては傾けないこともできる。これらの光学フィルタを傾ける際には、透過スペクトル特性に斜入射による影響が生じない角度範囲で、各々の光学フィルタを傾けることが望ましい。
【0041】
また上記式(3)に示されるように、NDフィルタ24、及びスペクトル補正フィルタ22のうち、透過率が低いものほど反射光H2の混合割合の増加に寄与することとなる。したがって、1又は複数のNDフィルタ24、及び1又は複数のスペクトル補正フィルタ22を光学フィルタ群15が備える場合、各光学フィルタうち、透過率が最も低い方から順に光源装置12側から配置して透過型インテグレータ光学系13との間の距離Lを大きくとることとし、これにより、透過率が各光学フィルタの傾きを抑えながらも反射光H2の混合割合を効率良く抑えることができる。
【0042】
(変形例2)
また上述した実施形態では、NDフィルタ24をスペクトル補正フィルタ22よりも光源装置12の側に配置する構成を例示した。しかしながら、これに限らず、スペクトル補正フィルタ22が赤外波長域の光を低減、又はカット(遮蔽)するスペクトル特性を有している場合には、図10に示すように、当該スペクトル補正フィルタ22をNDフィルタ24よりも光源装置12の側に配置しても良い。
詳述すると、一般に、NDフィルタ24は、ガラス基板に金属膜(クロムやインコネル等)をコーティングして構成されているが、この金属膜が光の熱(より正確にはガラス基板やコーティング材での光エネルギー吸収による熱化)により酸化し、透過率T2が初期状態よりも高くなることがある。
一方、スペクトル補正フィルタ22は、ガラス基板上にSiO2やTiO2などの酸化物の多層膜をコーティングした構造を成しており、表面の膜が元々酸化物であるので熱酸化の影響が少ない。
そこで、スペクトル補正フィルタ22が赤外波長域の光を低減、又はカット(遮蔽)するスペクトル特性を有している場合には、当該スペクトル補正フィルタ22をNDフィルタ24よりも光源装置12の側に配置することで、光源装置12の照射光H3に含まれる赤外波長域の光をNDフィルタ24に入射する前にスペクトル補正フィルタ22で低減できるため、NDフィルタ24への熱負荷を低減でき、劣化による透過率T2の上昇を抑制できる。
【0043】
上述した実施形態、及び各変形例では、スペクトル補正フィルタ22が光源装置12の放射光H1を疑似太陽光のスペクトル特性を有した光に変換する構成について説明したが、これに限らず、スペクトル補正フィルタ22が他の任意のスペクトル特性に変換するものであっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 擬似太陽光照射装置(照射装置)
3 試料載置ステージ
3A 照射面
10 ランプ
11 楕円反射鏡
12 光源装置(光源)
13 透過型インテグレータ光学系
14 コリメーション光学系
15 光学フィルタ群
16 コリメータレンズ
17 フライアイレンズ
18、20 反射平面ミラー
22 スペクトル補正フィルタ
24 NDフィルタ(減光フィルタ)
H1 放射光
H2 反射光
H3 照射光
H4 反射光
K1、K2 光軸
M1、M2 法線
T1、T2 透過率
α、β 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の放射光のスペクトル特性を変えるスペクトル補正フィルタと、
前記スペクトル補正フィルタと同一の光軸上に配置された1又は複数の減光フィルタと、を備え、
前記スペクトル補正フィルタで反射した反射光の進行方向を前記光軸から外すように、前記スペクトル補正フィルタ、及び/又は、前記減光フィルタを前記光軸に対して傾けたことを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記スペクトル補正フィルタと、前記減光フィルタとの各々を、前記光軸に対して互いに反対の方向に傾けたことを特徴とする請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記光軸に対する前記スペクトル補正フィルタ、及び前記減光フィルタの傾きの大きさを、斜入射に伴う透過スペクトル特性の変化が小さい範囲である5度〜30度としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記スペクトル補正フィルタ、及び前記減光フィルタの各光学フィルタうち、透過率が小さい光学フィルタを前記光源の放射光の入射側に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の照射装置。
【請求項5】
前記スペクトル補正フィルタが赤外波長域の光を低減又はカットするスペクトル特性を有し、当該スペクトル補正フィルタを前記減光フィルタよりも前記光源の放射光の入射側に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−101886(P2013−101886A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245909(P2011−245909)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】