海藻の食害防止具、及び、海藻の食害防止機能付きコンクリートブロック
【課題】植食性魚類の補食から海藻の生長点を効率よく、かつ、経済的な方法で防御することにより、早期に藻場を造成することができる海藻の食害防止具、及び、海藻の食害防止機能付きコンクリートブロックを提供する。
【解決手段】中心軸部2と、複数本の突起部3とによって構成され、突起部3は、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線C周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°〜135°の範囲で突出するように構成した。
【解決手段】中心軸部2と、複数本の突起部3とによって構成され、突起部3は、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線C周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°〜135°の範囲で突出するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻が魚類による食害を受けて枯死することを防ぐための食害防止具、及び、海藻の食害防止機能を有するコンクリートブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
海藻の食害を防止するための方法として、保護しようとする海藻の全体、或いは、藻の育苗床を網で囲い、アイゴをはじめとする植食動物の進入を妨げて食害を防ごうとする方法や、海藻の生長点に繊維を結び付けるという食害防止方法が知られている。また、保護しようとする海藻の周囲にウニやアワビ等の忌避剤、或いは、放射状の棘状部を有する食害防止具を配置する方法なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−137118号公報
【特許文献2】特開2002−335784号公報
【特許文献3】特開平9−285250号公報
【特許文献4】特開2007−244260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、海藻の全体、或いは、藻の育苗床を網で囲うという食害防止方法は、耐久性(耐波性)及び経済性の面で問題がある。具体的には、網を支える支柱等を簡易な構成とした場合、波や潮流により短期間で簡単に損壊してしまい、また、基盤が海底面に対して十分に固定されていない場合には、設置場所から流されてしまうという問題がある。一方、十分な耐久性を得ようとすると、材料費や設置作業のコストが嵩むことになり、小規模で実験的に実施する場合は別として、ある程度の大きな規模で実施しようとする場合には、経済性の観点から実現は難しいと考えられる。
【0005】
また、海藻の生長点に繊維を結び付けるという食害防止方法は、作業員が海底に潜り、保護しようとする海藻の一つ一つに繊維を結び付ける作業を行わなければならず、非常に効率が悪く、特に広範囲の藻場造成を行う場合には、経済的な負担が大きくなってしまうという問題がある。更に、海藻の生長点の位置は種類により異なるため、コンブ科のサガラメ、アラメ、カジメ、クロメ以外の海藻について、この方法を適用できるかどうか不明である。
【0006】
更に、上記のような従来の食害防止方法はいずれも、維持管理を行うに際して非常に手間がかかり、また、コストも嵩んでしまうという問題がある。例えば、海藻を網で囲う場合、時間の経過に伴って雑海藻や貝類等の付着性生物が網に付着することになり、それらの付着性生物によって網目が塞がれてしまう蓋然性が高い。これを放置すると、保護しようとする海藻が日照不足によって枯れてしまうため、それらの付着生物を定期的に除去する作業が必要となる。
【0007】
また、保護しようとする海藻の周辺にウニやアワビ等の忌避剤を配置するという方法においては、忌避剤が海水中に放出されるため、効果を持続させるためには絶えず忌避剤を補給しなければならず、また、放射状の棘状部を有する食害防止具を配置するという方法においては、棘状部の間隔が狭いため、浮泥の堆積や付着性生物などによって隙間が埋まり、植食動物の侵入防止効果を維持するためには、定期的な清掃、交換等の作業が必要になる。このように、従来の食害防止方法は、維持管理に際して煩雑な作業が必要となり、そのための費用が嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決すべくなされたものであって、植食性魚類の補食から海藻の生長点を効率よく、かつ、経済的な方法で防御することにより、早期に藻場を造成することができる海藻の食害防止具、及び、海藻の食害防止機能付きコンクリートブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る海藻の食害防止具は、中心軸部と、複数本の突起部とによって構成され、突起部は、隣接する突起部同士が中心軸部の長手軸線周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、中心軸部の長手軸線に対して45°(斜め上方)〜135°(斜め下方)の範囲で突出するように構成されていることを特徴としている。
【0010】
尚、突起部には、鉛直±20°の範囲の方向に延在する垂直部を接続し、保持させるように構成することもできる。また、基端側部分に対し先端側部分を屈曲させた鈎状の突起部を採用し、更に、それらの鈎状の突起部を中心軸部の長手軸線周りに配置して、卍状に突出するように構成することもできる。
【0011】
また、一段につき複数本の突起部を、上下方向へ二段以上配置し、上段の突起部の突出方向と、その下段の突起部の突出方向が相違するように構成することもできる。
【0012】
また、本発明に係る海藻の食害防止機能付きコンクリートブロックは、天端面上、又は、上向きの傾斜面上に、海藻の食害防止具を複数固定してなるものであって、食害防止具が、中心軸部と、複数本の突起部とによって構成され、突起部は、隣接する突起部同士が前記中心軸部の長手軸線周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、中心軸部の長手軸線に対して45°(斜め上方)〜135°(斜め下方)の範囲で突出するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
尚、このコンクリートブロックは、天端面上における最も外側の位置に、垂直部を有する食害防止具(外側用食害防止具)を配置し、それよりも内側の位置には、垂直部を有しない食害防止具(内側用食害防止具)を配置する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る海藻の食害防止具、及び、海藻の食害防止機能付き根固めブロックは、海藻の生長点を植食性魚類から好適に保護することができ、食害による磯焼け海域の藻場回復に非常に有効である。また、取り付け作業を陸上で行うことができるので、効率よく作業を行うことができるほか、基本的には潜水作業が不要となり、設置作業に関するコストを大幅に縮減することができ、経済性に優れている。また、本発明に係る海藻の食害防止具は、潜水作業を行って、既に海底に設置されている根固めブロックに取り付けることもでき、この場合、新たにブロックを製作する必要が無いので、コストを縮減することができ、経済的に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第1の実施形態)の斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る海藻の食害防止具1の他の構成例を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1の食害防止具1の使用方法(第2の実施形態)の説明図(根固めブロック5の斜視図)である。
【図4】図4は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第3の実施形態)の斜視図であり、図4(1)は、外側用食害防止具1aの斜視図、図4(2)は、内側用食害防止具1bの斜視図である。
【図5】図5は、図4の食害防止具1の使用方法(第4の実施形態)の説明図(根固めブロック5の平面図)である。
【図6】図6(1)は、図5の根固めブロック5の天端面5a上に配置した食害防止具1のうち、外側用食害防止具1aのみを表示した図であり、図6(2)は、内側用食害防止具1bのみを表示した図である。
【図7】図7は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第5の実施形態)の斜視図であり、図7(1)は、外側用食害防止具1aの斜視図、図7(2)は、内側用食害防止具1bの斜視図である。
【図8】図8は、図7の食害防止具1の使用方法(第6の実施形態)の説明図(根固めブロック5の平面図)である。
【図9】図9(1)は、図8の根固めブロック5の天端面5a上に配置した食害防止具1のうち、外側用食害防止具1aのみを表示した図であり、図9(2)は、内側用食害防止具1bのみを表示した図である。
【図10】図10は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第7の実施形態)の斜視図であり、図10(1)は、幅狭型食害防止具1cの斜視図、図10(2)は、幅広型食害防止具1dの斜視図である。
【図11】図11は、図10の食害防止具1の使用方法(第8の実施形態)の説明図(根固めブロック5の平面図)である。
【図12】図12(1)は、図11の根固めブロック5の天端面5a上に配置した食害防止具1のうち、幅狭型食害防止具1cのみを表示した図であり、図12(2)は、幅広型食害防止具1dのみを表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に沿って本発明「海藻の食害防止具」及び「根固めブロック」の実施形態について説明する。
まず、本発明の第1の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1は、図1に示すように、中心軸部2と、複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成されている。
【0017】
本実施形態においては、これらはいずれも金属によって形成されているが、硬質ゴムやプラスチックによって形成することもできる。中心軸部2は、図示されているように、ベース4の表面に対し長手軸線Cが垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0018】
突起部3は、中心軸部2の長手軸線C周りに、放射状に突設されている。突起部3の構成についてより詳細に説明すると、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ四段にわたって合計16本配置されている。これらのうち、第一段目(最上段)S1の4本の突起部3はいずれも、中心軸部2の長手軸線Cに対して90°の方向へ突出するように(中心軸部2が鉛直となるように食害防止具1を設置した場合に、突起部3が水平方向へ突出するように)、かつ、隣接する突起部3同士が長手軸線C周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。第二段目S2の突起部3も、また、第三段目S3の突起部3も、第一段目と同様である。
【0019】
第四段目(最下段)S4の突起部3は、隣接する突起部3同士が長手軸線C周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている点は、第一段目S1(〜第三段目S3)の突起部3と同様であるが、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°の方向(斜め上方)へ突出するように構成されている。尚、第一段目S1〜第三段目S3の突起部3は、主として植食性魚類の成魚から海藻を防御することを目的としており、第四段目S4の突起部3は、特に海藻幼芽を防御することを目的としている。
【0020】
尚、本実施形態においては、第一段目S1〜第三段目S3の突起部3は、中心軸部2の長手軸線Cに対して90°の方向へ突出するように構成されているが、第四段目S4の突起部3と同様に、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°の方向(斜め上方)へ突出するように構成してもよいし(図2参照)、或いは、135°(斜め下方)へ突出するように構成してもよい。また、長手軸線Cに対する突起部3の角度は、90°、45°(斜め上方)、及び、135°(斜め下方)には限定されず、45°(斜め上方)から135°(斜め下方)の範囲で適宜設定することができる。
【0021】
植食性魚類の通常の摂餌姿勢は、下向き45°(脊髄がほぼ斜め45°の角度となり、口が斜め下方を向いた姿勢)から上向き45°(脊髄がほぼ斜め45°の角度となり、口が斜め上方を向いた姿勢)までの範囲であることが多いため、突起部3の角度を、植食性魚類の通常の摂餌姿勢に合わせ、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°(斜め上方)から135°(斜め下方)の範囲で設定することにより、植食性魚類の摂餌行動を好適に妨害することができる。
【0022】
また、隣接する突起部3同士の長手軸線C周りの角度間隔は、45°〜120°の範囲で適宜設定することができる。角度間隔が45°より小さいと、浮泥の堆積や付着生物が多くなり、突起部3の隙間が埋まりやすくなってしまい、突起部3の隙間が埋まると、海藻に必要な日光が遮られてしまうという問題がある。また、魚類以外の植食動物(ウニ、貝類等)が付着しやすくなり、それらのすみかになってしまうという問題もある。一方、120°よりも大きいと、植食性魚類の侵入を好適に妨げることができないという問題がある。
【0023】
本実施形態の食害防止具1は、隣接する突起部3同士の長手軸線C周りの角度間隔が90°に設定されているため、植食性魚類の侵入を好適に妨げ、海藻の食害を防止することができ、かつ、浮泥の堆積や付着生物による突起部3の目詰まりという問題を好適に回避でき、その結果、メンテナンスがほぼ不要となり、そのための費用を縮減でき、経済性に優れている。
【0024】
尚、中心軸部2の高さ寸法、突起部3の突出寸法、各段の間隔寸法については、保護しようとする海藻の種類、及び、対象とする植食性魚類の種類や大きさに応じて、適切な寸法に設定する。
【0025】
例えば、ホンダワラ科の海藻のうち多年生のもの(ノコギリモクやマメタワラなど)については、毎年、主枝が流失した後に残る越年部位(茎と付着器)の生長点を防御することによって、枯死を回避し、好適に保護することができると考えられ、そのためには食害防止具1の高さを20cm以上に設定する必要があると考えられる。また、ホンダワラ科の海藻のうち1年生のもの(アカモクなど)については、毎年、藻体すべてが枯死、流出するため、幼芽の生長点を保護すればよく、食害防止具1の高さは10cm程度で足りる。コンブ科のアラメ、クロメなどにおいては、生長点は1箇所であり、底面から高さ30〜40cm付近に位置するため、食害防止具1の高さもこれに合わせて40cm以上に設定する必要がある。コンブ科のマコンブやミツイシコンブなどにおいても、生長点は1箇所であり、底面から高さ10〜20cm付近に位置するため、食害防止具1の高さもこれに合わせて20cm以上に設定する必要がある。
【0026】
突起部3の突出寸法は、対象とする植食性魚類の体長によって決定する。食害防止具1同士の間隔を、対象魚類の体長に合わせて決めるためである。各段の間隔寸法は、対象魚類の体高より狭くなるように設定する。また、突起部3の数、及び、段数についても、図1の例には限定されず、保護しようとする海藻の種類によって適宜変更することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、中心軸部2は角柱状に構成されているが、断面形状は特に限定されず、円柱状、或いは、異形断面の形状とすることもできる。更に、突起部3についても、断面形状は限定されず、図示されているような円柱状でも、中心軸部2のような角柱状でもよく、また、先細り形状、或いは、先太り形状とすることもできる。特にコンブ科の海藻では、波や流れにより食害防止具の中心軸部先端および突起部先端と海藻の葉部の摩擦がおこり、海藻葉部を傷つける恐れがある場合には、各先端を曲げたり、保護材を取り付けることもできる。
【0028】
また、各段(第一段目S1〜第四段目S4)における四つの突起部3は、いずれも高さ位置が揃っているが、必ずしも高さ位置を揃える必要はなく、同一の段の隣接する突起部3間で、設置位置を上下方向へずらしてもよい。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態の食害防止具1の使用方法の例(食害防止具1を適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図3に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の食害防止具1を、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように設置する。尚、天端面5aだけでなく、上向きの傾斜面5bに取り付けてもよい。各食害防止具1の間隔、設置本数は、保護しようとする海藻の種類、及び、対象とする植食性魚類の種類や大きさにあわせて適宜設定する。
【0030】
根固めブロック5の天端面5a、或いは、上向きの傾斜面5bに多数の食害防止具1を設置すると、根固めブロック5の上方の空間において、植食性魚類が侵入できない領域が形成され、その結果、根固めブロック5の天端面5a上、或いは、上向きの傾斜面5b上で発芽し、生長した海藻6における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0031】
尚、根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、根固めブロック5の製造時に陸上で行うことができる。より具体的には、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図1に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(第四段目の突起部3よりも下の部分)を、根固めブロック5の天端面5a(或いは傾斜面5b)を形成するコンクリートの中に埋め込み、コンクリートを硬化させる。また、既に製造された根固めブロック5の天端面5a(或いは傾斜面5b)に、食害防止具1のベース4を、接着剤或いはモルタル等を用いて取り付けることもできる。
【0032】
また、図1に示した食害防止具1のベース4を省略し、中心軸部2の最下部(第四段目の突起部3よりも下の部分)の寸法を長く設定し、既設の根固めブロック5の天端面5a(或いは傾斜面5b)にドリルで孔をあけ、その中に中心軸部2の最下部を差し込み、接着剤或いはモルタル等を使用して食害防止具1を根固めブロック5に対して固定するようにしてもよい。
【0033】
このようにして、食害防止具1を根固めブロック5に対して取り付け、これを海底に設置した場合、十分な耐波安定性を確保することができる。また、取り付け作業を陸上で行うことができるため、潜水作業が不要となり、設置作業に関するコストを大幅に縮減することができる。更に、既設の根固めブロック5に取り付ける場合には、ブロックを新設する必要が無く、汎用性、経済性が高い。
【0034】
また、この食害防止具1は、藻体の全体を防御するのではなく、海藻の生長点を重点的に保護することができる。藻体の全体を防御するためには、カゴや網などで全体を囲うことが必要であり、経済性、耐波性の面で問題があるが、生長点を保護すれば他の部分を捕食されても組織が再生するため、海藻の食害を効率的、経済的に防止することができる。尚、本実施形態においては、食害防止具を根固めブロックに適用した例について説明したが、根固めブロック以外のコンクリートブロック(消波ブロック、或いは、汎用的なコンクリート製の方塊、コンクリート板など)に適用することもできる。
【0035】
次に、本発明の第3の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)は、図4に示すように、中心軸部2と、複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成され、中心軸部2は、ベース4の表面に対し長手軸線が垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0036】
図4(1)の外側用食害防止具1aは、突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ三段にわたって合計12本配置されている。これらの突起部3はいずれも、中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。また、この食害防止具1aは、突起部3のほかに、1本の垂直部7を有している。この垂直部7は、第一段目の1本の突起部3aと、その下方に位置する第二段目の突起部3bと、更にその下方に位置する第三段目の突起部3cの先端部とそれぞれ接続され、ほぼ鉛直(鉛直±20°の範囲の方向)に延在するように保持されている。
【0037】
外側用食害防止具1aの突起部3の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第三段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔、及び、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースでいずれも10cmに設定されている。
【0038】
図4(2)の内側用食害防止具1bは、図4(1)の食害防止具1aと同様に、中心軸部2の長手軸線周りに、複数の突起部3が放射状に突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ二段にわたって合計8本配置されている。これらの突起部3は、中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。
【0039】
内側用食害防止具1bの突起部3の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第二段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第二段目の突起部3と第一段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースで20cmに設定されている。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態として、第3の実施形態の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)の使用方法の例(外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図5に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように、かつ、すべての向き(各突起部3の延在方向)を揃えて設置する。
【0041】
尚、外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bは、任意の四つの食害防止具1のそれぞれ一つずつの突起部3の先端を、ある基準点P(図5参照)を中心として、その周囲に等しい角度間隔(90°)、及び、等しい距離間隔で(基準点Pを挟んで対向する突起部3の先端同士の間隔が5cm、中心軸部2同士の間隔が25cmとなるように)突き合わせるという配置パターンに従って、規則的に配置する。また、それらのうち、最も外側(天端面5aの外周縁寄り)の位置には、外側用食害防止具1aを配置し(図6(1)参照)、それよりも内側(天端面5aの中央部寄り)の位置には、内側用食害防止具1bを配置する(図6(2)参照)。
【0042】
更に、外側用食害防止具1aについては、図6(1)に示すように、垂直部7が、隣接する他の外側用食害防止具1aの突起部3の先端に近接した位置となる向きで、かつ、隣り合う外側用食害防止具1aの垂直部7同士が近接しない向きとなるようにそれぞれ配置する。
【0043】
図4に示した外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、図5及び図6に示すように配置した場合、植食性魚類(特に、体高10cm以上、体幅5cm以上の魚類)が、根固めブロック5の外周側、及び、上方から、天端面5a上の領域内へ侵入することを防止することができ、根固めブロック5の天端面5a上で発芽し、生長した海藻における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0044】
尚、根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、第2の実施形態と同様に、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図4に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(ベース4の表面から2cm上方までの部分)を、根固めブロック5の天端面5aを形成するコンクリートの中に埋め込み、つまり、打設されたコンクリートの表面から食害防止具1の最下段の突起部3までの高さ寸法が3cmとなるように埋め込み、コンクリートを硬化させる。
【0045】
次に、本発明の第5の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)は、図7に示すように、中心軸部2と、基端側部分に対し先端側部分が水平方向へ直角に屈曲した鈎状の複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成され、中心軸部2は、ベース4の表面に対し長手軸線が垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0046】
図7(1)の外側用食害防止具1aは、鈎状の突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に(卍状に)突設されている。より詳細には、一段につき4本の鈎状の突起部3が、上下方向へ三段にわたって合計12本配置されている。これらの突起部3はいずれも、基端側部分が中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3の基端側部分同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。
【0047】
外側用食害防止具1aの突起部3の基端側部分、及び、先端側部分の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第三段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔、及び、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースでいずれも10cmに設定されている。
【0048】
図7(2)の内側用食害防止具1bは、図7(1)の食害防止具1aと同様に、鈎状の突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に(卍状に)突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ二段にわたって合計8本配置されている。これらの突起部3はいずれも、基端側部分が中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3の基端側部分同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。
【0049】
内側用食害防止具1bの突起部3の基端側部分、及び、先端側部分の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第二段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第二段目の突起部3と第一段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースで20cmに設定されている。
【0050】
次に、本発明の第6の実施形態として、第5の実施形態の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)の使用方法の例(外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図8に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように、かつ、すべての向き(各突起部3の延在方向)を揃えて設置する。
【0051】
尚、外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bは、突起部3の基端部側の延長方向に並列させて、等しい距離間隔で(隣接する食害防止具1の突起部3の先端同士の間隔が5cm、中心軸部2同士の間隔が25cmとなるように)格子状に配置する。また、それらのうち、最も外側(天端面5aの外周縁寄り)の位置には、外側用食害防止具1aを配置し(図9(1)参照)、それよりも内側(天端面5aの中央部寄り)の位置には、内側用食害防止具1bを配置する(図9(2)参照)。
【0052】
図7に示した外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、図8及び図9に示すように配置した場合、植食性魚類(特に、体高10cm以上、体幅5cm以上の魚類)が、根固めブロック5の外周側、及び、上方から、天端面5a上の領域内へ侵入することを防止することができ、根固めブロック5の天端面5a上で発芽し、生長した海藻における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0053】
尚、根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、第2の実施形態と同様に、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図7に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(ベース4の表面から2cm上方までの部分)を、根固めブロック5の天端面5aを形成するコンクリートの中に埋め込み、つまり、打設されたコンクリートの表面から食害防止具1の最下段の突起部3までの高さ寸法が3cmとなるように埋め込み、コンクリートを硬化させる。
【0054】
次に、本発明の第7の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1(幅狭型食害防止具1c、幅広型食害防止具1d)は、図10に示すように、中心軸部2と、複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成され、中心軸部2は、ベース4の表面に対し長手軸線が垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0055】
図10(1)の幅狭型食害防止具1c、及び、図10(2)の幅広型食害防止具1dは、突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ二段にわたって合計8本ずつ配置されている。これらの突起部3はいずれも、中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。尚、上段の4本の突起部3の突出方向と、下段の4本の突起部3の突出方向は、45°相違している。
【0056】
これらの食害防止具1の突起部3の長さはいずれも10cmに設定され、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と下段の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cmに設定されている。また、幅狭型食害防止具1cの下段の突起部3と上段の突起部3の間隔は、幅広型食害防止具1dよりも狭く、軸芯ベースで10cmに設定され、幅広型食害防止具1dの下段の突起部3と上段の突起部3の間隔は、幅狭型食害防止具1cよりも広く、軸芯ベースで20cmに設定されている。
【0057】
次に、本発明の第8の実施形態として、第7の実施形態の食害防止具1(幅狭型食害防止具1c、幅広型食害防止具1d)の使用方法の例(幅狭型食害防止具1c、及び、幅広型食害防止具1dを適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図11に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の幅狭型食害防止具1c、及び、幅広型食害防止具1dを、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように、かつ、幅狭型食害防止具1cの上段の突起部3の向きと、幅広型食害防止具1dの下段の突起部3の向きをすべて揃えて(或いは、幅狭型食害防止具1cの下段の突起部3の向きと、幅広型食害防止具1dの上段の突起部3の向きをすべて揃えて)設置する。
【0058】
これらの食害防止具1は、基準となる一つの食害防止具1の上段の突起部3、或いは、下段の突起部3の延長方向に並列させて、等しい距離間隔で(隣接する食害防止具1の中心軸部2同士の間隔が17cmとなるように)格子状に配置する。尚、外側であるか、内側であるかを問わず、幅狭型食害防止具1cと、幅広型食害防止具1dとを交互に配置し、幅狭型食害防止具1c同士が隣り合わないように、また、幅広型食害防止具1d同士が隣り合わないように配置する(図12(1)(2)参照)。
【0059】
図10に示した幅狭型食害防止具1c、及び、幅広型食害防止具1dを、図11及び図12に示すように配置した場合、植食性魚類(特に、体高10cm以上、体幅5cm以上の魚類)が、根固めブロック5の外周側、及び、上方から、天端面5a上の領域内へ侵入することを防止することができ、根固めブロック5の天端面5a上で発芽し、生長した海藻における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0060】
根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、第2の実施形態と同様に、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図10に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(ベース4の表面から2cm上方までの部分)を、根固めブロック5の天端面5aを形成するコンクリートの中に埋め込み、つまり、打設されたコンクリートの表面から食害防止具1の最下段の突起部3までの高さ寸法が3cmとなるように埋め込み、コンクリートを硬化させる。
【0061】
尚、第3〜8の実施形態において説明した突起部3及び中心軸部2の寸法、上下段の突起部3同士の間隔寸法、隣接する食害防止具1の間隔寸法、角度等は、それぞれ必要に応じて±25%の範囲内で適宜加減することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:食害防止具、
1a:外側用食害防止具、
1b:内側用食害防止具、
1c:幅狭型食害防止具、
1d:幅広型食害防止具、
2:中心軸部、
3:突起部、
4:ベース、
5:根固めブロック、
5a:天端面、
5b:傾斜面、
6:海藻、
7:垂直部、
C:長手軸線、
S1:第一段目、
S2:第二段目、
S3:第三段目、
S4:第四段目
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻が魚類による食害を受けて枯死することを防ぐための食害防止具、及び、海藻の食害防止機能を有するコンクリートブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
海藻の食害を防止するための方法として、保護しようとする海藻の全体、或いは、藻の育苗床を網で囲い、アイゴをはじめとする植食動物の進入を妨げて食害を防ごうとする方法や、海藻の生長点に繊維を結び付けるという食害防止方法が知られている。また、保護しようとする海藻の周囲にウニやアワビ等の忌避剤、或いは、放射状の棘状部を有する食害防止具を配置する方法なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−137118号公報
【特許文献2】特開2002−335784号公報
【特許文献3】特開平9−285250号公報
【特許文献4】特開2007−244260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、海藻の全体、或いは、藻の育苗床を網で囲うという食害防止方法は、耐久性(耐波性)及び経済性の面で問題がある。具体的には、網を支える支柱等を簡易な構成とした場合、波や潮流により短期間で簡単に損壊してしまい、また、基盤が海底面に対して十分に固定されていない場合には、設置場所から流されてしまうという問題がある。一方、十分な耐久性を得ようとすると、材料費や設置作業のコストが嵩むことになり、小規模で実験的に実施する場合は別として、ある程度の大きな規模で実施しようとする場合には、経済性の観点から実現は難しいと考えられる。
【0005】
また、海藻の生長点に繊維を結び付けるという食害防止方法は、作業員が海底に潜り、保護しようとする海藻の一つ一つに繊維を結び付ける作業を行わなければならず、非常に効率が悪く、特に広範囲の藻場造成を行う場合には、経済的な負担が大きくなってしまうという問題がある。更に、海藻の生長点の位置は種類により異なるため、コンブ科のサガラメ、アラメ、カジメ、クロメ以外の海藻について、この方法を適用できるかどうか不明である。
【0006】
更に、上記のような従来の食害防止方法はいずれも、維持管理を行うに際して非常に手間がかかり、また、コストも嵩んでしまうという問題がある。例えば、海藻を網で囲う場合、時間の経過に伴って雑海藻や貝類等の付着性生物が網に付着することになり、それらの付着性生物によって網目が塞がれてしまう蓋然性が高い。これを放置すると、保護しようとする海藻が日照不足によって枯れてしまうため、それらの付着生物を定期的に除去する作業が必要となる。
【0007】
また、保護しようとする海藻の周辺にウニやアワビ等の忌避剤を配置するという方法においては、忌避剤が海水中に放出されるため、効果を持続させるためには絶えず忌避剤を補給しなければならず、また、放射状の棘状部を有する食害防止具を配置するという方法においては、棘状部の間隔が狭いため、浮泥の堆積や付着性生物などによって隙間が埋まり、植食動物の侵入防止効果を維持するためには、定期的な清掃、交換等の作業が必要になる。このように、従来の食害防止方法は、維持管理に際して煩雑な作業が必要となり、そのための費用が嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決すべくなされたものであって、植食性魚類の補食から海藻の生長点を効率よく、かつ、経済的な方法で防御することにより、早期に藻場を造成することができる海藻の食害防止具、及び、海藻の食害防止機能付きコンクリートブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る海藻の食害防止具は、中心軸部と、複数本の突起部とによって構成され、突起部は、隣接する突起部同士が中心軸部の長手軸線周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、中心軸部の長手軸線に対して45°(斜め上方)〜135°(斜め下方)の範囲で突出するように構成されていることを特徴としている。
【0010】
尚、突起部には、鉛直±20°の範囲の方向に延在する垂直部を接続し、保持させるように構成することもできる。また、基端側部分に対し先端側部分を屈曲させた鈎状の突起部を採用し、更に、それらの鈎状の突起部を中心軸部の長手軸線周りに配置して、卍状に突出するように構成することもできる。
【0011】
また、一段につき複数本の突起部を、上下方向へ二段以上配置し、上段の突起部の突出方向と、その下段の突起部の突出方向が相違するように構成することもできる。
【0012】
また、本発明に係る海藻の食害防止機能付きコンクリートブロックは、天端面上、又は、上向きの傾斜面上に、海藻の食害防止具を複数固定してなるものであって、食害防止具が、中心軸部と、複数本の突起部とによって構成され、突起部は、隣接する突起部同士が前記中心軸部の長手軸線周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、中心軸部の長手軸線に対して45°(斜め上方)〜135°(斜め下方)の範囲で突出するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
尚、このコンクリートブロックは、天端面上における最も外側の位置に、垂直部を有する食害防止具(外側用食害防止具)を配置し、それよりも内側の位置には、垂直部を有しない食害防止具(内側用食害防止具)を配置する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る海藻の食害防止具、及び、海藻の食害防止機能付き根固めブロックは、海藻の生長点を植食性魚類から好適に保護することができ、食害による磯焼け海域の藻場回復に非常に有効である。また、取り付け作業を陸上で行うことができるので、効率よく作業を行うことができるほか、基本的には潜水作業が不要となり、設置作業に関するコストを大幅に縮減することができ、経済性に優れている。また、本発明に係る海藻の食害防止具は、潜水作業を行って、既に海底に設置されている根固めブロックに取り付けることもでき、この場合、新たにブロックを製作する必要が無いので、コストを縮減することができ、経済的に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第1の実施形態)の斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る海藻の食害防止具1の他の構成例を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1の食害防止具1の使用方法(第2の実施形態)の説明図(根固めブロック5の斜視図)である。
【図4】図4は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第3の実施形態)の斜視図であり、図4(1)は、外側用食害防止具1aの斜視図、図4(2)は、内側用食害防止具1bの斜視図である。
【図5】図5は、図4の食害防止具1の使用方法(第4の実施形態)の説明図(根固めブロック5の平面図)である。
【図6】図6(1)は、図5の根固めブロック5の天端面5a上に配置した食害防止具1のうち、外側用食害防止具1aのみを表示した図であり、図6(2)は、内側用食害防止具1bのみを表示した図である。
【図7】図7は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第5の実施形態)の斜視図であり、図7(1)は、外側用食害防止具1aの斜視図、図7(2)は、内側用食害防止具1bの斜視図である。
【図8】図8は、図7の食害防止具1の使用方法(第6の実施形態)の説明図(根固めブロック5の平面図)である。
【図9】図9(1)は、図8の根固めブロック5の天端面5a上に配置した食害防止具1のうち、外側用食害防止具1aのみを表示した図であり、図9(2)は、内側用食害防止具1bのみを表示した図である。
【図10】図10は、本発明に係る海藻の食害防止具1(第7の実施形態)の斜視図であり、図10(1)は、幅狭型食害防止具1cの斜視図、図10(2)は、幅広型食害防止具1dの斜視図である。
【図11】図11は、図10の食害防止具1の使用方法(第8の実施形態)の説明図(根固めブロック5の平面図)である。
【図12】図12(1)は、図11の根固めブロック5の天端面5a上に配置した食害防止具1のうち、幅狭型食害防止具1cのみを表示した図であり、図12(2)は、幅広型食害防止具1dのみを表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に沿って本発明「海藻の食害防止具」及び「根固めブロック」の実施形態について説明する。
まず、本発明の第1の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1は、図1に示すように、中心軸部2と、複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成されている。
【0017】
本実施形態においては、これらはいずれも金属によって形成されているが、硬質ゴムやプラスチックによって形成することもできる。中心軸部2は、図示されているように、ベース4の表面に対し長手軸線Cが垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0018】
突起部3は、中心軸部2の長手軸線C周りに、放射状に突設されている。突起部3の構成についてより詳細に説明すると、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ四段にわたって合計16本配置されている。これらのうち、第一段目(最上段)S1の4本の突起部3はいずれも、中心軸部2の長手軸線Cに対して90°の方向へ突出するように(中心軸部2が鉛直となるように食害防止具1を設置した場合に、突起部3が水平方向へ突出するように)、かつ、隣接する突起部3同士が長手軸線C周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。第二段目S2の突起部3も、また、第三段目S3の突起部3も、第一段目と同様である。
【0019】
第四段目(最下段)S4の突起部3は、隣接する突起部3同士が長手軸線C周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている点は、第一段目S1(〜第三段目S3)の突起部3と同様であるが、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°の方向(斜め上方)へ突出するように構成されている。尚、第一段目S1〜第三段目S3の突起部3は、主として植食性魚類の成魚から海藻を防御することを目的としており、第四段目S4の突起部3は、特に海藻幼芽を防御することを目的としている。
【0020】
尚、本実施形態においては、第一段目S1〜第三段目S3の突起部3は、中心軸部2の長手軸線Cに対して90°の方向へ突出するように構成されているが、第四段目S4の突起部3と同様に、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°の方向(斜め上方)へ突出するように構成してもよいし(図2参照)、或いは、135°(斜め下方)へ突出するように構成してもよい。また、長手軸線Cに対する突起部3の角度は、90°、45°(斜め上方)、及び、135°(斜め下方)には限定されず、45°(斜め上方)から135°(斜め下方)の範囲で適宜設定することができる。
【0021】
植食性魚類の通常の摂餌姿勢は、下向き45°(脊髄がほぼ斜め45°の角度となり、口が斜め下方を向いた姿勢)から上向き45°(脊髄がほぼ斜め45°の角度となり、口が斜め上方を向いた姿勢)までの範囲であることが多いため、突起部3の角度を、植食性魚類の通常の摂餌姿勢に合わせ、中心軸部2の長手軸線Cに対して45°(斜め上方)から135°(斜め下方)の範囲で設定することにより、植食性魚類の摂餌行動を好適に妨害することができる。
【0022】
また、隣接する突起部3同士の長手軸線C周りの角度間隔は、45°〜120°の範囲で適宜設定することができる。角度間隔が45°より小さいと、浮泥の堆積や付着生物が多くなり、突起部3の隙間が埋まりやすくなってしまい、突起部3の隙間が埋まると、海藻に必要な日光が遮られてしまうという問題がある。また、魚類以外の植食動物(ウニ、貝類等)が付着しやすくなり、それらのすみかになってしまうという問題もある。一方、120°よりも大きいと、植食性魚類の侵入を好適に妨げることができないという問題がある。
【0023】
本実施形態の食害防止具1は、隣接する突起部3同士の長手軸線C周りの角度間隔が90°に設定されているため、植食性魚類の侵入を好適に妨げ、海藻の食害を防止することができ、かつ、浮泥の堆積や付着生物による突起部3の目詰まりという問題を好適に回避でき、その結果、メンテナンスがほぼ不要となり、そのための費用を縮減でき、経済性に優れている。
【0024】
尚、中心軸部2の高さ寸法、突起部3の突出寸法、各段の間隔寸法については、保護しようとする海藻の種類、及び、対象とする植食性魚類の種類や大きさに応じて、適切な寸法に設定する。
【0025】
例えば、ホンダワラ科の海藻のうち多年生のもの(ノコギリモクやマメタワラなど)については、毎年、主枝が流失した後に残る越年部位(茎と付着器)の生長点を防御することによって、枯死を回避し、好適に保護することができると考えられ、そのためには食害防止具1の高さを20cm以上に設定する必要があると考えられる。また、ホンダワラ科の海藻のうち1年生のもの(アカモクなど)については、毎年、藻体すべてが枯死、流出するため、幼芽の生長点を保護すればよく、食害防止具1の高さは10cm程度で足りる。コンブ科のアラメ、クロメなどにおいては、生長点は1箇所であり、底面から高さ30〜40cm付近に位置するため、食害防止具1の高さもこれに合わせて40cm以上に設定する必要がある。コンブ科のマコンブやミツイシコンブなどにおいても、生長点は1箇所であり、底面から高さ10〜20cm付近に位置するため、食害防止具1の高さもこれに合わせて20cm以上に設定する必要がある。
【0026】
突起部3の突出寸法は、対象とする植食性魚類の体長によって決定する。食害防止具1同士の間隔を、対象魚類の体長に合わせて決めるためである。各段の間隔寸法は、対象魚類の体高より狭くなるように設定する。また、突起部3の数、及び、段数についても、図1の例には限定されず、保護しようとする海藻の種類によって適宜変更することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、中心軸部2は角柱状に構成されているが、断面形状は特に限定されず、円柱状、或いは、異形断面の形状とすることもできる。更に、突起部3についても、断面形状は限定されず、図示されているような円柱状でも、中心軸部2のような角柱状でもよく、また、先細り形状、或いは、先太り形状とすることもできる。特にコンブ科の海藻では、波や流れにより食害防止具の中心軸部先端および突起部先端と海藻の葉部の摩擦がおこり、海藻葉部を傷つける恐れがある場合には、各先端を曲げたり、保護材を取り付けることもできる。
【0028】
また、各段(第一段目S1〜第四段目S4)における四つの突起部3は、いずれも高さ位置が揃っているが、必ずしも高さ位置を揃える必要はなく、同一の段の隣接する突起部3間で、設置位置を上下方向へずらしてもよい。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態の食害防止具1の使用方法の例(食害防止具1を適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図3に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の食害防止具1を、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように設置する。尚、天端面5aだけでなく、上向きの傾斜面5bに取り付けてもよい。各食害防止具1の間隔、設置本数は、保護しようとする海藻の種類、及び、対象とする植食性魚類の種類や大きさにあわせて適宜設定する。
【0030】
根固めブロック5の天端面5a、或いは、上向きの傾斜面5bに多数の食害防止具1を設置すると、根固めブロック5の上方の空間において、植食性魚類が侵入できない領域が形成され、その結果、根固めブロック5の天端面5a上、或いは、上向きの傾斜面5b上で発芽し、生長した海藻6における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0031】
尚、根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、根固めブロック5の製造時に陸上で行うことができる。より具体的には、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図1に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(第四段目の突起部3よりも下の部分)を、根固めブロック5の天端面5a(或いは傾斜面5b)を形成するコンクリートの中に埋め込み、コンクリートを硬化させる。また、既に製造された根固めブロック5の天端面5a(或いは傾斜面5b)に、食害防止具1のベース4を、接着剤或いはモルタル等を用いて取り付けることもできる。
【0032】
また、図1に示した食害防止具1のベース4を省略し、中心軸部2の最下部(第四段目の突起部3よりも下の部分)の寸法を長く設定し、既設の根固めブロック5の天端面5a(或いは傾斜面5b)にドリルで孔をあけ、その中に中心軸部2の最下部を差し込み、接着剤或いはモルタル等を使用して食害防止具1を根固めブロック5に対して固定するようにしてもよい。
【0033】
このようにして、食害防止具1を根固めブロック5に対して取り付け、これを海底に設置した場合、十分な耐波安定性を確保することができる。また、取り付け作業を陸上で行うことができるため、潜水作業が不要となり、設置作業に関するコストを大幅に縮減することができる。更に、既設の根固めブロック5に取り付ける場合には、ブロックを新設する必要が無く、汎用性、経済性が高い。
【0034】
また、この食害防止具1は、藻体の全体を防御するのではなく、海藻の生長点を重点的に保護することができる。藻体の全体を防御するためには、カゴや網などで全体を囲うことが必要であり、経済性、耐波性の面で問題があるが、生長点を保護すれば他の部分を捕食されても組織が再生するため、海藻の食害を効率的、経済的に防止することができる。尚、本実施形態においては、食害防止具を根固めブロックに適用した例について説明したが、根固めブロック以外のコンクリートブロック(消波ブロック、或いは、汎用的なコンクリート製の方塊、コンクリート板など)に適用することもできる。
【0035】
次に、本発明の第3の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)は、図4に示すように、中心軸部2と、複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成され、中心軸部2は、ベース4の表面に対し長手軸線が垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0036】
図4(1)の外側用食害防止具1aは、突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ三段にわたって合計12本配置されている。これらの突起部3はいずれも、中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。また、この食害防止具1aは、突起部3のほかに、1本の垂直部7を有している。この垂直部7は、第一段目の1本の突起部3aと、その下方に位置する第二段目の突起部3bと、更にその下方に位置する第三段目の突起部3cの先端部とそれぞれ接続され、ほぼ鉛直(鉛直±20°の範囲の方向)に延在するように保持されている。
【0037】
外側用食害防止具1aの突起部3の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第三段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔、及び、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースでいずれも10cmに設定されている。
【0038】
図4(2)の内側用食害防止具1bは、図4(1)の食害防止具1aと同様に、中心軸部2の長手軸線周りに、複数の突起部3が放射状に突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ二段にわたって合計8本配置されている。これらの突起部3は、中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。
【0039】
内側用食害防止具1bの突起部3の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第二段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第二段目の突起部3と第一段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースで20cmに設定されている。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態として、第3の実施形態の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)の使用方法の例(外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図5に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように、かつ、すべての向き(各突起部3の延在方向)を揃えて設置する。
【0041】
尚、外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bは、任意の四つの食害防止具1のそれぞれ一つずつの突起部3の先端を、ある基準点P(図5参照)を中心として、その周囲に等しい角度間隔(90°)、及び、等しい距離間隔で(基準点Pを挟んで対向する突起部3の先端同士の間隔が5cm、中心軸部2同士の間隔が25cmとなるように)突き合わせるという配置パターンに従って、規則的に配置する。また、それらのうち、最も外側(天端面5aの外周縁寄り)の位置には、外側用食害防止具1aを配置し(図6(1)参照)、それよりも内側(天端面5aの中央部寄り)の位置には、内側用食害防止具1bを配置する(図6(2)参照)。
【0042】
更に、外側用食害防止具1aについては、図6(1)に示すように、垂直部7が、隣接する他の外側用食害防止具1aの突起部3の先端に近接した位置となる向きで、かつ、隣り合う外側用食害防止具1aの垂直部7同士が近接しない向きとなるようにそれぞれ配置する。
【0043】
図4に示した外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、図5及び図6に示すように配置した場合、植食性魚類(特に、体高10cm以上、体幅5cm以上の魚類)が、根固めブロック5の外周側、及び、上方から、天端面5a上の領域内へ侵入することを防止することができ、根固めブロック5の天端面5a上で発芽し、生長した海藻における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0044】
尚、根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、第2の実施形態と同様に、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図4に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(ベース4の表面から2cm上方までの部分)を、根固めブロック5の天端面5aを形成するコンクリートの中に埋め込み、つまり、打設されたコンクリートの表面から食害防止具1の最下段の突起部3までの高さ寸法が3cmとなるように埋め込み、コンクリートを硬化させる。
【0045】
次に、本発明の第5の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)は、図7に示すように、中心軸部2と、基端側部分に対し先端側部分が水平方向へ直角に屈曲した鈎状の複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成され、中心軸部2は、ベース4の表面に対し長手軸線が垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0046】
図7(1)の外側用食害防止具1aは、鈎状の突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に(卍状に)突設されている。より詳細には、一段につき4本の鈎状の突起部3が、上下方向へ三段にわたって合計12本配置されている。これらの突起部3はいずれも、基端側部分が中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3の基端側部分同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。
【0047】
外側用食害防止具1aの突起部3の基端側部分、及び、先端側部分の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第三段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔、及び、第三段目の突起部3と第二段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースでいずれも10cmに設定されている。
【0048】
図7(2)の内側用食害防止具1bは、図7(1)の食害防止具1aと同様に、鈎状の突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に(卍状に)突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ二段にわたって合計8本配置されている。これらの突起部3はいずれも、基端側部分が中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3の基端側部分同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。
【0049】
内側用食害防止具1bの突起部3の基端側部分、及び、先端側部分の長さはいずれも10cmに設定されている。また、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と第二段目の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cm、第二段目の突起部3と第一段目の突起部3の間隔は、軸芯ベースで20cmに設定されている。
【0050】
次に、本発明の第6の実施形態として、第5の実施形態の食害防止具1(外側用食害防止具1a、内側用食害防止具1b)の使用方法の例(外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図8に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように、かつ、すべての向き(各突起部3の延在方向)を揃えて設置する。
【0051】
尚、外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bは、突起部3の基端部側の延長方向に並列させて、等しい距離間隔で(隣接する食害防止具1の突起部3の先端同士の間隔が5cm、中心軸部2同士の間隔が25cmとなるように)格子状に配置する。また、それらのうち、最も外側(天端面5aの外周縁寄り)の位置には、外側用食害防止具1aを配置し(図9(1)参照)、それよりも内側(天端面5aの中央部寄り)の位置には、内側用食害防止具1bを配置する(図9(2)参照)。
【0052】
図7に示した外側用食害防止具1a、及び、内側用食害防止具1bを、図8及び図9に示すように配置した場合、植食性魚類(特に、体高10cm以上、体幅5cm以上の魚類)が、根固めブロック5の外周側、及び、上方から、天端面5a上の領域内へ侵入することを防止することができ、根固めブロック5の天端面5a上で発芽し、生長した海藻における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0053】
尚、根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、第2の実施形態と同様に、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図7に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(ベース4の表面から2cm上方までの部分)を、根固めブロック5の天端面5aを形成するコンクリートの中に埋め込み、つまり、打設されたコンクリートの表面から食害防止具1の最下段の突起部3までの高さ寸法が3cmとなるように埋め込み、コンクリートを硬化させる。
【0054】
次に、本発明の第7の実施形態として、海藻の食害防止具1について説明する。本実施形態の海藻の食害防止具1(幅狭型食害防止具1c、幅広型食害防止具1d)は、図10に示すように、中心軸部2と、複数本の突起部3と、平板状のベース4とによって構成され、中心軸部2は、ベース4の表面に対し長手軸線が垂直となる向きで、ベース4の中央から上方へ向かって立設されている。
【0055】
図10(1)の幅狭型食害防止具1c、及び、図10(2)の幅広型食害防止具1dは、突起部3が、中心軸部2の長手軸線周りに、放射状に突設されている。より詳細には、一段につき4本の突起部3が、上下方向へ二段にわたって合計8本ずつ配置されている。これらの突起部3はいずれも、中心軸部2の長手軸線に対して90°の方向へ突出するように、かつ、隣接する突起部3同士が中心軸部2の長手軸線周りに90°の角度間隔をおいて突出するように構成されている。尚、上段の4本の突起部3の突出方向と、下段の4本の突起部3の突出方向は、45°相違している。
【0056】
これらの食害防止具1の突起部3の長さはいずれも10cmに設定され、中心軸部2の長さ(高さ)は27cmに設定されている。ベース4の表面と下段の突起部3までの間隔は、軸芯ベースで5cmに設定されている。また、幅狭型食害防止具1cの下段の突起部3と上段の突起部3の間隔は、幅広型食害防止具1dよりも狭く、軸芯ベースで10cmに設定され、幅広型食害防止具1dの下段の突起部3と上段の突起部3の間隔は、幅狭型食害防止具1cよりも広く、軸芯ベースで20cmに設定されている。
【0057】
次に、本発明の第8の実施形態として、第7の実施形態の食害防止具1(幅狭型食害防止具1c、幅広型食害防止具1d)の使用方法の例(幅狭型食害防止具1c、及び、幅広型食害防止具1dを適用した根固めブロック5)について説明する。例えば、図11に示すように、コンクリート製の根固めブロック5の天端面5aに、多数の幅狭型食害防止具1c、及び、幅広型食害防止具1dを、中心軸部2が天端面5aに対し垂直となるように、かつ、幅狭型食害防止具1cの上段の突起部3の向きと、幅広型食害防止具1dの下段の突起部3の向きをすべて揃えて(或いは、幅狭型食害防止具1cの下段の突起部3の向きと、幅広型食害防止具1dの上段の突起部3の向きをすべて揃えて)設置する。
【0058】
これらの食害防止具1は、基準となる一つの食害防止具1の上段の突起部3、或いは、下段の突起部3の延長方向に並列させて、等しい距離間隔で(隣接する食害防止具1の中心軸部2同士の間隔が17cmとなるように)格子状に配置する。尚、外側であるか、内側であるかを問わず、幅狭型食害防止具1cと、幅広型食害防止具1dとを交互に配置し、幅狭型食害防止具1c同士が隣り合わないように、また、幅広型食害防止具1d同士が隣り合わないように配置する(図12(1)(2)参照)。
【0059】
図10に示した幅狭型食害防止具1c、及び、幅広型食害防止具1dを、図11及び図12に示すように配置した場合、植食性魚類(特に、体高10cm以上、体幅5cm以上の魚類)が、根固めブロック5の外周側、及び、上方から、天端面5a上の領域内へ侵入することを防止することができ、根固めブロック5の天端面5a上で発芽し、生長した海藻における植食性魚類による食害を好適に防止することができる。
【0060】
根固めブロック5に対する食害防止具1の取り付け作業は、第2の実施形態と同様に、根固めブロック5を形成するための型枠内にコンクリートを打設し、その後、コンクリートの硬化前に、図10に示すベース4、及び、中心軸部2の最下部(ベース4の表面から2cm上方までの部分)を、根固めブロック5の天端面5aを形成するコンクリートの中に埋め込み、つまり、打設されたコンクリートの表面から食害防止具1の最下段の突起部3までの高さ寸法が3cmとなるように埋め込み、コンクリートを硬化させる。
【0061】
尚、第3〜8の実施形態において説明した突起部3及び中心軸部2の寸法、上下段の突起部3同士の間隔寸法、隣接する食害防止具1の間隔寸法、角度等は、それぞれ必要に応じて±25%の範囲内で適宜加減することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:食害防止具、
1a:外側用食害防止具、
1b:内側用食害防止具、
1c:幅狭型食害防止具、
1d:幅広型食害防止具、
2:中心軸部、
3:突起部、
4:ベース、
5:根固めブロック、
5a:天端面、
5b:傾斜面、
6:海藻、
7:垂直部、
C:長手軸線、
S1:第一段目、
S2:第二段目、
S3:第三段目、
S4:第四段目
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸部と、複数本の突起部とによって構成され、
前記突起部は、隣接する突起部同士が前記中心軸部の長手軸線周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、前記中心軸部の長手軸線に対して45°〜135°の角度範囲で突出するように構成されていることを特徴とする海藻の食害防止具。
【請求項2】
鉛直±20°の範囲の方向に延在する垂直部が、前記突起部に接続され、保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の海藻の食害防止具。
【請求項3】
基端側部分に対し先端側部分を屈曲させた鈎状の突起部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の海藻の食害防止具。
【請求項4】
前記突起部が、前記中心軸部の長手軸線周りに、卍状に突設されていることを特徴とする、請求項3に記載の海藻の食害防止具。
【請求項5】
一段につき複数本の突起部が、上下方向へ二段以上配置され、上段の突起部の突出方向と、その下段の突起部の突出方向が相違するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の海藻の食害防止具。
【請求項6】
天端面上、又は、上向きの傾斜面上に、請求項1〜5のいずれかに記載の海藻の食害防止具を複数固定してなることを特徴とする海藻の食害防止機能付きコンクリートブロック。
【請求項7】
前記天端面上における最も外側の位置には、前記垂直部を有する食害防止具を配置し、それよりも内側の位置には、前記垂直部を有しない食害防止具を配置したことを特徴とする、請求項6に記載の海藻の食害防止機能付きコンクリートブロック。
【請求項1】
中心軸部と、複数本の突起部とによって構成され、
前記突起部は、隣接する突起部同士が前記中心軸部の長手軸線周りに45°〜120°の角度間隔をおいて中心軸部から放射状に突出するように、かつ、前記中心軸部の長手軸線に対して45°〜135°の角度範囲で突出するように構成されていることを特徴とする海藻の食害防止具。
【請求項2】
鉛直±20°の範囲の方向に延在する垂直部が、前記突起部に接続され、保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の海藻の食害防止具。
【請求項3】
基端側部分に対し先端側部分を屈曲させた鈎状の突起部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の海藻の食害防止具。
【請求項4】
前記突起部が、前記中心軸部の長手軸線周りに、卍状に突設されていることを特徴とする、請求項3に記載の海藻の食害防止具。
【請求項5】
一段につき複数本の突起部が、上下方向へ二段以上配置され、上段の突起部の突出方向と、その下段の突起部の突出方向が相違するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の海藻の食害防止具。
【請求項6】
天端面上、又は、上向きの傾斜面上に、請求項1〜5のいずれかに記載の海藻の食害防止具を複数固定してなることを特徴とする海藻の食害防止機能付きコンクリートブロック。
【請求項7】
前記天端面上における最も外側の位置には、前記垂直部を有する食害防止具を配置し、それよりも内側の位置には、前記垂直部を有しない食害防止具を配置したことを特徴とする、請求項6に記載の海藻の食害防止機能付きコンクリートブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−205957(P2011−205957A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76486(P2010−76486)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】
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