説明

樹脂ワニスの製造方法

【課題】有機フィラーを含有しつつも、硬化後に低粗度・高ピール強度・高絶縁信頼性をもたらすような高い分散性を有する、樹脂ワニスの製造方法を提供することである。
【解決手段】有機フィラーに対して特定の膨潤工程を施すことによって、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機フィラーを含有する、特定の樹脂ワニスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子材料分野における樹脂ワニスに無機フィラーを含有させることにより、樹脂ワニスを固化して得られる樹脂(樹脂組成物)の剛性を増す取り組みが行われてきた。
特許文献1には、樹脂に低線膨張性を付与する手法として、樹脂に無機フィラーを配合する手法が開示されている。しかしながら、そのワニスを塗工する際に樹脂はじき、塗りむらがある等、依然改善の余地が残されていた。
【0003】
一方、特許文献2には、基材と樹脂間の密着性向上を期待して、樹脂に無機フィラー及び有機フィラーを配合する技術が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の樹脂組成物は印刷分野での使用においてはフィラーの分散性に起因する問題は認められないが、電子材料分野での使用においてはフィラーの分散性が必ずしも満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−290029号公報
【特許文献2】国際公開第2006/098409号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、有機フィラーを含有しつつも、低粗度・高ピール強度・高絶縁信頼性をもたらす絶縁層の形成を可能にする、高いフィラーの分散性を有する、樹脂ワニスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究した結果、有機フィラーに対して特定の膨潤工程を施すことによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1] 下記工程1)を有することを特徴とする、樹脂ワニスの製造方法。
工程1)有機フィラーを該有機フィラーの3.5倍量以上の有機溶媒によって膨潤させる工程(膨潤工程)
[2] 更に、下記工程2)を有することを特徴とする、上記[1]記載の樹脂ワニスの製造方法。
工程2)該膨潤工程によって生成された膨潤有機フィラーにワニス原料(有機フィラーを除く)を加え混合する工程(混合工程)
[3] 更に、下記工程3)を有することを特徴とする、上記[2]に記載の樹脂ワニスの製造方法。
工程3)該混合工程によって生成された混合液中の膨潤有機フィラーを分散させる工程(分散工程)
[4] 更に、下記工程4)を有することを特徴とする、上記[3]に記載の樹脂ワニスの製造方法。
工程4)該分散工程によって生成された分散処理液を濾過する工程(濾過工程)
[5] 工程1)で使用される有機フィラーの量が、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする、上記[2]〜[4]のいずれか一つに記載の樹脂ワニスの製造方法。
[6] 工程3)において、ホモジナイザーを用いて膨潤有機フィラーを分散させることを特徴とする、上記[3]〜[5]のいずれか一つに記載の樹脂ワニスの製造方法。
[7] 工程4)において、濾過精度10μm以下のフィルターを用いることを特徴とする、上記[4]〜[6]のいずれか一つに記載の樹脂ワニスの製造方法。
[8] 2μmの凝集体に対するフィルターの捕集率が80%以上であり、かつ、3μmの凝集体に対する捕集率が85%以上である、上記[7]記載の樹脂ワニスの製造方法。
[9] 工程4)において、濾過圧力が0.4MPa以下であることを特徴とする、上記[4]〜[8]のいずれか一つに記載の樹脂ワニスの製造方法。
[10] 工程4)において、濾過圧力が0.03MPa以上であることを特徴とする、上記[9]記載の樹脂ワニスの製造方法。
[11] 工程1)を低流動下で行うことを特徴とする、上記[1]〜[10]のいずれか一つに記載の樹脂ワニスの製造方法。
[12] 工程1)における有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒であることを特徴とする、上記[1]〜[11]のいずれか一つに記載の樹脂ワニスの製造方法。
[13] 上記[1]〜[12]のいずれか一つに記載の方法で得られた樹脂ワニス。
[14] 上記[13]に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、接着フィルム。
[15] 上記[13]に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、プリプレグ。
[16] 上記[13]に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、金属張積層板。
[17] 上記[13]に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、多層プリント配線板。
[18] 上記[13]に記載の樹脂ワニスによる絶縁層の表面の表面粗さ(Ra値)が50nm以上、300nm以下であり、該絶縁層の導体層に対するピール強度が0.53kgf/cm以上、5kgf/cm以下であることを特徴とする、多層プリント配線板。
[19] 上記[17]又は[18]に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
有機フィラーに特定量以上の有機溶媒を吸収させる膨潤工程を施すことによって、有機フィラーを含有しつつも、硬化後に低粗度・高ピール強度・高絶縁信頼性をもたらす絶縁層が形成される、樹脂ワニスの製造方法を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂ワニスの製造方法は、有機フィラーを該有機フィラーの3.5倍量以上の有機溶媒によって膨潤させる工程(膨潤工程)を有することが主たる特徴である。
【0010】
以下、順次、樹脂ワニスの製造方法を詳述する。
<工程1)膨潤工程>
有機フィラーを該有機フィラーの3.5倍量以上の有機溶媒によって膨潤させる。なお、本発明でいう「樹脂ワニス」とは「塗膜形成可能な液状の樹脂組成物」を意味する。また、「膨潤」は有機フィラーが架橋高分子か非架橋高分子のいずれであるかに係らず、有機フィラーが有機溶媒を吸収していることを意味する。そして、本工程で得られた、有機溶媒を3.5倍量以上吸収した有機フィラーを「膨潤有機フィラー」と呼ぶ。
【0011】
(有機フィラー)
本発明で使用される有機フィラーとしては、多層プリント配線板の絶縁層、ソルダーレジスト等においてフィラーとして使用されている架橋構造を有する樹脂又はゴムの粒子、或いは非架橋の樹脂又はゴムの粒子であれば制限なく使用できるが、硬化物の機械強度の向上、応力緩和効果等の観点から架橋ゴム粒子が好ましい。
【0012】
このようなゴム粒子は、具体的には、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子等が挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマーは、例えば、メタクリル酸メチルやスチレンの重合物などで構成され、ゴム状ポリマーは、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)やポリブタジエンなどで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、IM−401(以上、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(三菱レイヨン(株)製)、F351(日本ゼオン(株)製)等が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A、W450A(以上、三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。有機フィラーは1種又は2種以上を使用することができる。
【0013】
有機フィラーの平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。有機フィラーの平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。例えば、有機フィラーを溶解させない適当な有機溶媒に有機フィラーを超音波などにより均一に分散させ、FPRA−1000(大塚電子(株)製)を用いて、有機フィラーの粒度分布を重量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定される。
【0014】
最終的に得られる樹脂ワニス中の有機フィラーの含有量は特に限定はされないが、有機フィラーを配合することの効果、すなわち、硬化物のクラック防止、応力緩和効果を十分に発現させるという観点から、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは0.7質量%以上であり、特に好ましくは1質量%以上である。また、最終的に得られる樹脂ワニス中の有機フィラーの含有量は樹脂ワニスを乾燥、加熱硬化して得られる硬化物の耐熱性、耐透湿性を低下させるのを防止するという観点から、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、10質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。なお、「最終的に得られる樹脂ワニス中の有機フィラーの含有量」は、典型的には、後述の工程2)を経て生成される混合液中の有機フィラーの含有量が対応する。よって、本工程(工程1))で使用される有機フィラーの量は、工程2)によって生成する混合液100質量%に対して0.1質量%以上、10質量%以下となるようにするのが好ましい。
【0015】
(有機溶媒)
本工程で使用される有機溶媒は、有機フィラーが吸収し得るものであれば特に制限はなく、有機フィラーの種類によって適宜選択することができ、具体的には、ソルベントナフサ、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤、等が挙げられる。なかでも、有機フィラーへの吸収性、樹脂ワニスの塗工性等の点から、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、ソルベントナフサが特に好ましい。有機溶媒は1種を使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
有機フィラーに吸収させる有機溶媒の量は、有機フィラーの質量基準で、有機フィラーの3.5倍量以上が必要である。樹脂ワニス中での膨潤有機フィラーの良好な分散性が達成できるという観点で、3.6倍量以上が好ましく、3.7倍量以上がより好ましく、3.8倍量以上が更に好ましく、3.9倍量以上が更に一層好ましく、4.0倍量以上が殊更好ましく、4.1倍量以上が特に好ましい。一方、有機フィラーに吸収させる有機溶媒の量の上限値は、有機溶媒を吸収させることによる所期の効果を維持しつつ、コスト面で有利となる観点から20倍量以下が好ましく、15倍量以下がより好ましく、10倍量以下が更に好ましく、8倍量以下が更に一層好ましく、6倍量以下が殊更好ましい。
【0017】
有機フィラーへ有機溶媒を吸収させる温度は、有機フィラーへの有機溶媒の吸収が効率良く進行するという観点から、20℃以上が好ましく、25℃以上が好ましく、30℃以上が更に好ましく、35℃以上が更に一層好ましく、40℃以上が殊更好ましい。一方、蒸気圧が上昇し、有機溶媒が蒸発しやすくなるのを防止するという観点から、有機溶媒の温度は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、75℃以下が更に好ましく、70℃以下が更に一層好ましく、65℃以下が殊更好ましく、60℃以下が特に好ましい。
【0018】
有機フィラーへ有機溶媒を吸収させる時間は、選択する温度により適宜設定することが可能であるが、有機溶媒を所定量(すなわち、有機フィラーの3.5倍量以上)吸収保持させるためには、30分以上が好ましく、60分以上がより好ましく、90分以上が更に好ましく、120分以上が更に一層好ましい。なお、作業効率向上の観点から、10時間以下が好ましく、9時間以下がより好ましく、8時間以下が更に好ましい。
【0019】
有機フィラーの膨潤(すなわち、有機フィラーへの有機溶媒の吸収)は、低流動下で行うのが好ましい。ここでいう「低流動下」とは、「静置状態、及び、膨潤有機フィラーが付着ロスしない範囲で流動させた状態」を含む。本発明の「低流動下」としては、「実質的に静置下」である場合がより好ましい。
【0020】
本発明の「低流動下」を達成しうる具体的な態様は、以下の通りである。なお、反応装置には、有機フィラーと有機溶媒が投入された状態である。
態様1)反応装置を静置すること。
態様2)反応装置を振とうすること。
態様3)反応装置に超音波等で振動を与えること。
態様4)反応装置の内容物を攪拌すること。
【0021】
本発明の「低流動下」を達成するためには、態様1)〜4)のいずれであってもよいが、態様1)〜3)のいずれかの態様であるのが好ましく、態様1)または態様2)であるがより好ましく、態様1)が特に好ましい。
ただし、態様4)の場合には、低流動が達成できれば特に制限はないが、得られる膨潤有機フィラーが、攪拌羽根、缶壁に付着してロスさせないという観点で、攪拌速度の上限値は、30rpm以下が好ましく、20rpm以下がより好ましく、10rpm以下が更に好ましく、5rpm以下が更に一層好ましく、2rpm以下が殊更好ましく、1rpm以下が特に好ましい。また、低流動を確実に実現できるという観点で、攪拌速度の下限値としては、0.01rpm以上が好ましく、0.001rpm以上がより好ましく、0.0001以上が更に好ましく、0rpm以上が特に好ましい。態様3)、態様2)の場合も、態様4)と同様に、缶壁に付着してロスさせない程度で好ましい範囲を有する。
【0022】
<工程2)混合工程>
膨潤有機フィラーにワニス原料(有機フィラーを除く)を加え混合して混合液を調製する。ワニス原料(有機フィラーを除く)として、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、有機溶剤、無機フィラー、熱可塑性樹脂、難燃剤、その他の添加剤などが挙げられる。
【0023】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は1種又は2種以上を併用してもよいが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。またさらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂、及び1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を含有する態様が好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用することで、樹脂ワニスを用いて形成される樹脂層が優れた可撓性を有するものとなる。このため、支持体上に該樹脂層を形成してなる接着フィルムは、取扱い性に優れた接着フィルムとなる。また、樹脂ワニスを用いて形成される樹脂層を硬化した硬化樹脂層の破断強度が向上する。そのため、該硬化樹脂層を回路基板の絶縁層として形成することで、回路基板の耐久性が向上する。
【0024】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。具体例としては、DIC(株)製のHP4032(ナフタレン型エポキシ樹脂)、HP4032D(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製のjER828EL(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、jER807(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、jER152(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0025】
固体状エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。具体例としては、DIC(株)製のHP−4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、N−690(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、N−695(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、HP−7200(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、EXA7311(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、EXA7310(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、EXA7311−G3(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製のEPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)、NC7000L(ナフトールノボラックエポキシ樹脂)、NC3000H(ビフェニル型エポキシ樹脂)、NC3000(ビフェニル型エポキシ樹脂)、NC3000L(ビフェニル型エポキシ樹脂)、NC3100(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製のESN475(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、ESN485(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製のYX4000H(ビフェニル型エポキシ樹脂)、等が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用する場合、固体状樹脂と液状樹脂の量比(液状樹脂量:固体状樹脂量)は質量比で1:0.1〜1:2の範囲が好ましい。かかる範囲を超えて液状エポキシ樹脂の割合が多すぎると、樹脂ワニスを接着フィルムの形態で使用する場合に粘着性が高くなり、真空ラミネート時の脱気性が低下しボイドが発生しやすくなる傾向にある。また真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性の低下や、硬化後の耐熱性が低下する傾向にある。また、樹脂組成物の硬化物において十分な破断強度が得られにくい傾向にある。一方、かかる範囲を超えて固体状エポキシ樹脂の割合が多すぎると、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られず、取り扱い性の低下、ラミネートの際の十分な流動性が得られにくいなどの傾向がある。
【0027】
エポキシ樹脂はそれを硬化させる硬化剤と組み合わせて用いられる。樹脂ワニス中のエポキシ樹脂の含有量は、樹脂ワニスの不揮発成分100質量%に対して5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜45質量%、とりわけ好ましくは15〜40質量%、最も好ましくは20〜35質量%である。
【0028】
(エポキシ樹脂硬化剤)
エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等である。エポキシ樹脂硬化剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤としては、耐熱性、耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤やノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。市販品としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、LA7052、LA7054(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0030】
活性エステル系硬化剤としては、EXB−9460、HPC8000(DIC(株)製)、DC808、YLH1030(三菱化学(株)製)が挙げられる。ベンゾオキサジン系硬化剤としては、HFB2006M(昭和高分子(株)製)、P−d、F−a(四国化成工業(株)製)などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。市販されているシアネートエステル系硬化剤としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)やビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230」、シアネート当量232)等が挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂硬化剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とエポキシ樹脂硬化剤の反応基の合計数の比率が、エポキシ基の合計数を1とすると、1:0.4〜1:2となる量で用いるのが好ましく、1:0.5〜1:1.5となる量で用いるのがより好ましい。なお、エポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、エポキシ硬化剤の反応基(活性水酸基、活性エステル基等)の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。硬化剤の含有量がかかる好ましい範囲を満たすと、樹脂ワニスから形成される樹脂組成物の硬化物の耐熱性が十分となる傾向がある。
【0032】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、アミンアダクト化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-K、TPP-S、TPTP-S(北興化学工業(株)商品名)などが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2MZ-OK、2MA-OK、2PHZ(四国化成工業(株)商品名)などが挙げられる。アミンアダクト化合物の具体例としては、ノバキュア(旭化成工業(株)商品名)、フジキュア(富士化成工業(株)商品名)などが挙げられる。3級アミン化合物の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。
【0033】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。硬化促進剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、例えば、ソルベントナフサ、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジグライム、トリグライムなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−メトキシプロピルアセテート、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロパン酸メチルなどのエステル溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールなどのモノエーテル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤が挙げられる。
【0035】
(無機フィラー)
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが特に好ましい。無機フィラーは1種又は2種以上を使用することができる。また、シリカは樹脂ワニス中での分散性に有利な形状である球状シリカであることが好ましく、その平均粒径は0.01μm〜2μmの範囲が好ましく、0.05μm〜1.5μmの範囲がより好ましい。平均粒径が0.01μm未満であると粒子の比表面積が増加し、凝集性が高まり、均一な分散性を得ることが困難になる傾向となり、平均粒径が2μmを超えると微細配線を形成することが困難になる傾向となる。
【0036】
無機フィラーの平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機フィラーの粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機フィラーを超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製LA−500等を使用することができる。
【0037】
無機フィラーは、樹脂層及び硬化物の耐湿性、樹脂ワニス中での分散性等の向上のため、γ−アミノプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、イミダゾリンシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物;ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤などの1種又は2種以上の表面処理剤で処理されていてもよい。特にアミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤が好ましい。
【0038】
樹脂ワニス中の無機フィラーの含有量は特に限定はされないが、硬化物の機械強度が低下するのを防止するという観点から、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、85質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、とりわけ好ましくは75質量%以下である。また、硬化物の熱膨張率を十分に低下させるという観点から、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、とりわけ好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上である。
【0039】
無機フィラーはスラリーにしてから、樹脂ワニス(混合液)の調製に供するのが好ましい。スラリーとは、上記無機フィラーを有機溶媒中に分散して略泥状にしたものである。このスラリーは、例えば、溶媒中に乾燥状態の無機フィラーを後掲記載の各種装置(攪拌装置、分散装置、乳化装置等)を用いて分散させることにより得られる。貯蔵中の無機フィラーのケーキング等を回避するため、スラリー中の無機フィラーの含有量は、スラリー全体を100質量%とした場合、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。また、フィルムの塗工の際に樹脂ワニスの粘度調整を容易にするため、スラリー中の無機フィラーの含有量はスラリー全体を100質量%とした場合、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。なお、ケーキングとは、溶媒中の無機フィラーが固まって凝集物になり、溶媒中に無機フィラーの塊が生じることをいう。
【0040】
スラリーに用いる有機溶媒としては、ワニス原料(有機フィラーを除く)としての上述の有機溶剤を使用することができる。中でも極性有機溶媒が好ましく、ケトン系溶剤がより好ましく、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)が特に好ましい。
【0041】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種又は2種以上を使用することができる。樹脂ワニス中の熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、0.5〜60質量%が好ましく、より好ましくは3〜50質量%である。0.5質量%未満の場合、樹脂ワニスの粘度が低くなって厚みや性状の均一な樹脂組成物層を形成することが難しくなる傾向となり、60質量%を超える場合、フィルムの溶融粘度が高くなり過ぎて、フィルムの積層時の配線パターンを有する回路基板表面の配線間の凹部への埋め込み性が低下する傾向となる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲であるのが好ましく、10,000〜60,000の範囲であるのがより好ましく、20,000〜60,000の範囲であるのが更に好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0042】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。市販品としては、例えば、三菱化学(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、三菱化学(株)製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、三菱化学(株)製YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他、新日鐵化学(株)製FX280、FX293、三菱化学(株)製YL7553、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482等が挙げられる。
【0043】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0044】
(難燃剤)
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB−100、SPS−100、SPE−100、SPH−100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。樹脂ワニス中の難燃剤の含有量は特に限定はされないが、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜9質量%、とりわけ好ましくは1.5〜8質量%である。
【0045】
(その他の成分)
また、樹脂ワニスには、必要に応じて、上述の各成分以外に、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂を除く)、有機金属化合物、各種添加剤などを任意で含有させても良い。
【0046】
熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂を除く)としては、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、等が挙げられる。
有機金属化合物としては、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅化合物、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛化合物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト化合物などが挙げられる。有機金属化合物の添加量は、シアネートエステル樹脂に対し、金属換算で10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲が好ましい。有機金属化合物は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
また、樹脂添加剤としては、例えば、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等のパウダー類、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、シラン系カップリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0048】
本工程(工程2))における混合は、加熱攪拌装置を用いて行うのが好ましい。加熱攪拌装置の具体例としては、T.Kホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.コンビミックス、T.K.ハイビスディスパーミックス、(以上、プライミクス(株)製 商品名)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製 商品名)、真空乳化攪拌装置(みずほ工業(株)製 商品名)、真空混合装置「ネリマゼDX」(みずほ工業(株)製 商品名)、BDM2軸ミキサー、CDM同芯2軸ミキサー、PDミキサー(以上、(株)井上製作所製 商品名)等が挙げられる。なかでも、より早く均一な混合状態を得るためにホモミキサーやディスパー翼等の高速回転翼と攪拌翼とを有する加熱攪拌装置が好ましい。加熱温度は、30℃〜80℃が好ましく、35℃〜70℃がより好ましい。なお、かかる加熱温度で混合がなされることにより、特に熱硬化性樹脂が固形状の樹脂を含む場合には、固形状の熱硬化性樹脂が有機溶媒に速やかに溶解し、性状の均一性が高い樹脂ワニスを効率よく製造することができる。なお、加熱攪拌装置は一般的なジャケットやコイルなどの固定式の加熱機構を有するタイプに限定されず、投げ込みヒーターなどの可動式の加熱機構を有するタイプであってもよい。
【0049】
混合液の粘度は10〜1000mPa・sが好ましく、より好ましくは100〜500mPa・sである。粘度が高すぎるとその液粘度により、衝突部位での粒子の拡散が抑制され、全体として不均一な分散となる傾向がある。なお、粘度はE型粘度計等の回転粘度計で測定することができる。
【0050】
無機フィラーを含有する樹脂ワニスを調製する場合、無機フィラーは、膨潤有機フィラー及び熱硬化性樹脂とともに加熱攪拌装置を用いて混合するのが好ましい。
【0051】
なお、硬化剤が低温反応性である場合は、膨潤有機フィラー及び熱硬化性樹脂等を加熱下で混合した後に室温まで冷却し、該冷却後の混合液に硬化剤を配合してさらに攪拌(混合)を行なうのが好ましい。
【0052】
また、熱硬化性樹脂にエポキシ樹脂を使用し、エポキシ樹脂が固体状のエポキシ樹脂を含む場合は、無機フィラーには無機フィラースラリーを使用し、固体状エポキシ樹脂を無機フィラースラリー中に予め溶解してから混合液の調製に供するのが好ましい。また、熱可塑性樹脂、難燃剤及びその他の添加剤等は、膨潤有機フィラー、熱硬化性樹脂等とともに混合してもよいが、後述の有機フィラーの分散処理後の分散処理液に混合し、混合液としてもよい。
【0053】
<工程3)分散工程>
上記の混合工程(工程2))によって生成された混合液中の膨潤有機フィラーを分散させ、分散処理液を調製する。調製された分散処理液はそのまま樹脂ワニスとして使用してもよい。膨潤有機フィラーの分散は特にホモジナイザー、ビーズミル、超音波等の手段を用いて行なうのが好ましい。ここでいう「膨潤有機フィラーの分散」とは、膨潤有機フィラーを1次粒子状に分散させることである。ホモジナイザーは高速回転翼によるせん断エネルギーにより粒子を分散させる高速回転タイプのもの、或いは、原料の高圧加圧移送による衝突エネルギー、せん断エネルギー、キャビテーション発生により粒子を分散させる高圧タイプのものである。ビーズミルはビーズを衝突させる物理的エネルギーにより粒子を分散させるものである。超音波は凝集物に超音波を照射し粉砕するものである。なかでも、ホモジナイザーが好ましく、高圧ホモジナイザーがより好ましい。前記工程2)を経て得られた混合液が無機フィラーを含む場合、本工程にて膨潤有機フィラーとともに無機フィラーの分散がなされる。
【0054】
高圧ホモジナイザーとしては、有機フィラーや無機フィラーが高圧で衝突する部分の材質がタングステンカーバイド製、又はダイヤモンド製であることが衝突磨耗による異物混入を防ぐ上で好ましい。なお、高圧ホモジナイザーによる処理は、バッチ式分散方式でなく、連続分散方式であるため、生産性の向上とともに、有機溶剤蒸気が放散するリスクが低減でき、コスト面、環境面への負荷を低減することもできる。高圧ホモジナイザーの具体例としては、三和エンジニアリング(株)製高圧ホモゲナイザー、(株)イズミフードマシナリ製高圧ホモゲナイザー、ニロ・ソアビ社(イタリア)製高圧ホモジナイザー等が挙げられる。高圧ホモジナイザーの分散圧力は10〜300MPaの範囲が好ましく、15〜100MPaの範囲がより好ましく、20〜60MPaの範囲が更に好ましく、20〜40MPaが更に一層好ましい。分散圧力が低すぎると、分散処理が不十分となる傾向にあり、高すぎると混合液の液温が上昇し、混合液中の成分が反応したり、有機フィラーや無機フィラーの形状が変化する傾向にある。また、ホモジナイザーの回転数は、1000〜10000rpmが好ましく、2000〜9000rpmがより好ましく、3000〜8000rpmが更に好ましく、4000〜7000rpmが更に一層好ましい。混合液中の成分の反応を抑制するためには、分散処理後の液温が60℃以下であることが好ましい。また、分散処理後は冷却装置を用いて、速やかに液温を40℃以下にさせることが好ましい。
【0055】
分散処理の際には、混合液の温度が上昇する。そのため、硬化促進剤を含む樹脂ワニスを製造する場合は、硬化促進剤は、先の混合液の調製時に膨潤有機フィラー、熱硬化性樹脂等とともに混合することは行わず、該分散処理後の混合液に対して混合することが好ましい。分散処理後の混合液と硬化促進剤とを混合する装置としては、例えば、ディスパー翼、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼などを備えた公知の攪拌混合装置が使用できる。攪拌混合装置の具体例としては、プラネタリーミキサー、トリミックス、バタフライミキサー(以上(株)井上製作所製 商品名)、VMIX攪拌槽、マックスブレンド、SWIXERミキシングシステム(以上、(株)イズミフードマシナリ製 商品名)、Hi−Fミキサー(綜研テクニックス(株)製 商品名)、ジェットアジター((株)島崎製作所製 商品名)、などが挙げられる。また、上記の<工程2)混合工程>の項で説明した加熱攪拌装置を使用することもできる。
【0056】
分散処理を十分に行うために、分散処理時間は10〜120分が好ましく、20〜90分がより好ましく、30〜70分が特に好ましい。
【0057】
なお、分散工程後に、樹脂ワニスに使用可能なワニス原料(有機フィラーを除く)として、熱硬化性樹脂、無機フィラー、有機溶媒、熱可塑性樹脂、難燃剤、その他の添加剤を任意で含有させて、分散工程を繰り返しても良い。
【0058】
<工程4)濾過工程>
上記工程(工程3))によって生成された分散処理液を、液中の異物及び粗大粒子(有機フィラーの凝集体、有機フィラー及び無機フィラーの複合凝集体、無機フィラーの凝集体等)の除去のために、濾過するのが好ましい。濾過方法は公知の方法が使用できる。例えば、分散処理液を定量ポンプ、または加圧タンクを用いて送液し、カートリッジフィルター、カプセルフィルター等を単独又は連続して通過させる事により濾過する。その際の濾過圧力(差圧)はフィルターメッシュが目開きしないように0.4MPa以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましく、0.2MPa以下が更に好ましく、0.15MPa以下が更に一層好ましく、0.1MPa以下が殊更好ましく、0.05MPa以下が特に好ましい。一方、吐出流量が低下し生産性が劣ることを防止するために、0.03MPa以上が好ましい。また、定量ポンプは公知のものを使用できるが、濾過圧力を一定に保つために脈動の少ないものが好ましい。濾過フィルターの孔径、すなわち、濾過精度は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。なお、フィルターのダスト捕集能力が高過ぎる場合は濾過時間がかかりすぎて非効率の傾向となることから、使用する濾過フィルターの濾過精度は0.5μm以上が好ましい。また、本工程は複数回行っても良い。
【0059】
また、本工程によって凝集体を効率的に除去し、絶縁層の絶縁性を向上させるために、2μmの凝集体に対するフィルターの捕集率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、3μmの凝集体に対するフィルターの捕集率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。なお、フィルターの捕集率はJIS試験用粉体、APPIE標準粉体、市販のLatex Beads等を予め溶媒に分散した懸濁液をフィルターで濾過し、濾過前後のダスト量をコールターカウンターなどで測定することにより下記式により算出出来る。尚、この時の溶媒は制限を受けず、水系、或いは、非水系のものが使用出来るが、フィルターの能力を正確に把握するためには、ワニス粘性と同程度の粘性のものを選択することが好ましい。
【0060】
捕集率(%)=((濾過前のダスト量−濾過後のダスト量)/濾過前のダスト量)×100
【0061】
また、絶縁層の絶縁性向上の観点から、本発明の樹脂ワニスを使用する直前に濾過することが好ましい。本工程から樹脂ワニスを使用するまでの時間は、24時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましく、6時間以内が更に好ましく、3時間以内が更に一層好ましく、1時間以内が殊更好ましく、30分以内が特に好ましく、10分以内がとりわけ好ましく、1分以内がなおさら好ましい。
【0062】
なお、工程1)2)3)4)においては、本発明の効果が阻害されない程度に、ワニス原料(有機フィラーを除く)として、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、有機溶剤、無機フィラー、熱可塑性樹脂、難燃剤、その他の添加剤を別途または一部含有させても構わない。
【0063】
<絶縁層の形成>
本発明の樹脂ワニスは、「工程1)及び2)を経て得られたもの」(以下、樹脂ワニスAと呼ぶ)を指す場合、「工程1)、2)及び3)を経て得られたもの」(以下、樹脂ワニスBと呼ぶ)を指す場合、「工程1)、2)、3)及び4)を経て得られたもの」(以下、樹脂ワニスCと呼ぶ)を指す場合がある。より高性能な用途向きであるとう観点から、樹脂ワニスB、樹脂ワニスCが好ましく、樹脂ワニスCが特に好ましい。
【0064】
本発明の樹脂ワニスの用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、回路基板(積層板、多層プリント配線板等)の絶縁層、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。さらに本発明の樹脂ワニスは、支持体上に塗布、乾燥し樹脂組成物層を形成させて接着フィルムとすることができる。また、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させてプリプレグとすることができる。本発明の樹脂ワニスを回路基板に直接塗布し、乾燥、熱硬化を行なって絶縁層を形成することもできるが、工業的には、接着フィルム又はプリプレグの形態として絶縁層形成に用いられる。本発明の製造方法により得られる樹脂ワニスを乾燥、硬化させて形成される絶縁層は、粗化処理によって低粗度でありながら、導体層との間に高い密着性が得られる粗化面を形成でき、しかも高絶縁信頼性をもたらす絶縁層となる。
【0065】
本発明の樹脂ワニスをこのような回路基板の絶縁層形成に適用する場合、樹脂ワニスは、典型的には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および有機フィラー(膨潤有機フィラー)を含む第1態様の組成物か、該第1態様の組成物にさらに硬化促進剤を配合した第2態様の組成物か、該第2態様の組成物にさらに無機フィラーを配合した第3態様の組成物か、或いは、該第3態様の組成物にさらに熱可塑性樹脂を配合した第4態様の組成物であり、これら第1〜第4態様の組成物には、さらに難燃剤、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂を除く)、有機金属化合物、各種樹脂添加剤等を配合してもよい。なお、いずれの態様の組成物からなるワニスにおいても、その調製段階において膨潤有機フィラーに含まれる有機溶媒とは別に有機溶媒が配合されることがある。
【0066】
[接着フィルム]
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、支持体上に、上記樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤などを乾燥、除去させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0067】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有割合が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下となるように乾燥させる。乾燥条件は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。樹脂ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、30〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを50〜150℃で3〜10分乾燥させることが好ましく、60〜140℃で3〜10分乾燥させることがより好ましく、70〜130℃で3〜10分乾燥させることが更に好ましく、80〜120℃で3〜10分乾燥させることが更に一層好ましい。
【0068】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、導体層の厚さ以上とするのがよい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましく、20〜80μmがより好ましく、30〜60μmが更に好ましい。樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0069】
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムの中で、とくにPETが好ましい。支持体として銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を使用し、金属箔付接着フィルムとすることもできる。保護フィルムは、同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また支持体及び保護フィルムはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤を用いた離型処理が施してあってもよい。
【0070】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。また保護フィルムの厚さも特に制限されないが、1〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0071】
支持体は、内層回路基板等にラミネートした後に、或いは、加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持体を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができ、また硬化後の絶縁層の表面平滑性を向上させることができる。硬化後に剥離する場合、支持体には予め離型処理を施すのが好ましい。なお、支持体上に形成される樹脂組成物層は、該層の面積が支持体の面積より小さくなるように形成するのが好ましい。また接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。
【0072】
[接着フィルムを用いた多層プリント配線板]
次に、本発明の接着フィルムを用いて多層プリント配線板等の回路基板を製造する方法について説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を内層回路基板に直接接するように、内層回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により加熱及び加圧し、減圧下で内層回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び内層回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0073】
内層回路基板とは、主として、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び導体層が形成されるべき中間製造物も本発明における内層回路基板に含まれる。内層回路基板において、導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の内層回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0074】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製 真空ラミネーター等を挙げることができる。このように接着フィルムを内層回路基板にラミネートした後、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより内層回路基板に絶縁層を形成することができる。熱硬化温度は150℃〜220℃の範囲が好ましく、160℃〜200℃の範囲がより好ましく、170℃〜190℃の範囲が更に好ましい。熱硬化時間は20〜180分の範囲が好ましく、30〜150分の範囲がより好ましく、60〜120分の範囲が更に好ましい。また、絶縁層の表面粗さ(Ra値)をより緻密にするために、熱硬化の前に90〜110℃で20〜60分の予備硬化を行うことができる。
【0075】
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、減圧度を1×10−2 MPa以下とするのが好ましく、1×10−3 MPa以下の減圧下とするのが好ましい。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cmの範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cmの範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0076】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離していなかった場合は、この段階で剥離する。次に内層回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけがもっとも一般的な方法である。
【0077】
次いで、絶縁層表面に粗化処理を行う。粗化処理は酸化剤を使用した湿式粗化方法で行うのが好ましい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて粗化を行うのが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂ワニスを用いて、絶縁層を形成し、該絶縁層の表面に粗化処理を行うと、低粗度で緻密な粗面が形成され、該粗面には表面粗さ(Ra値)が低いにもかかわらず高いピール強度の導体層を形成することができる。従って、高密度かつ密着性に優れた配線を有する回路基板を製造することができる。
【0079】
絶縁層表面を粗化処理した後の絶縁層の表面の表面粗さ(Ra値)は、微細配線を形成できるという観点から、300nm以下が好ましく、280nm以下がより好ましく、260nm以下が更に好ましく、240nm以下が更に一層好ましく、230nm以下が殊更好ましく、220nm以下が特に好ましく、210nm以下がとりわけ好ましい。また、微細配線の密着性を確保するという観点から、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、90nm以上が更に好ましい、なお、Ra値とは、表面粗さを表す数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものである。具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。例えば、ビーコインスツルメンツ社製 WYKO NT3300を用いて、VSIコンタクトモード、
50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めることができる。
【0080】
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された絶縁層表面に、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分、より好ましくは150〜180℃で20〜60分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。絶縁層の導体層に対するピール強度は、十分な密着を得るという観点から、0.53kgf/cm以上が好ましく、0.55kgf/cm以上がより好ましく、0.57kgf/cm以上が更に好ましく、0.59kgf/cm以上が更に一層好ましい。また、実用的であるという観点から、5kgf/cm以下が好ましく、3kgf/cm以下がより好ましく、1kgf/cm以下が更に好ましい。
【0081】
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0082】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂ワニスを繊維からなるシート状繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。すなわち、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸してプリプレグとすることができる。
【0083】
繊維からなるシート状繊維基材としては、例えばガラス繊維、有機繊維、ガラス不織布、有機不織布から選択される1種又は2種以上を使用することができる。なかでも、プリプレグの線熱膨張係数を低下させるという観点から、ガラス繊維、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のシート状繊維基材が好ましく、ガラス繊維がより好ましく、ガラスクロス、Tガラス繊維、Qガラス繊維が更に好ましく、Qガラス繊維が更に一層好ましい。
【0084】
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、一旦、樹脂との剥離性の良い塗工紙上に溶融した樹脂をコーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状繊維基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0085】
[プリプレグを用いた金属張積層板及び多層プリント配線板]
次に本発明のプリプレグを用いて本発明の金属張積層板及び多層プリント配線板を製造する方法について説明する。まず、プリプレグを1枚若しくは数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層し金属張積層板を形成する。又は、プリプレグを内層回路基板に1枚若しくは数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層し多層プリント配線板を形成する。圧力は好ましくは5〜40kgf/cm(49×10〜392×10N/m)、温度は好ましくは120〜200℃で20〜100分の範囲で成型するのが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法によりラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前述の方法と同様、硬化したプリプレグ表面を、酸化剤を用いて粗化した後、導体層をメッキにより形成することで、多層プリント配線板等の回路基板を製造することができる。
【0086】
[半導体装置]
さらに本発明の多層プリント配線板を用いることで本発明の半導体装置を製造することができる。多層プリント配線板上の接続用電極部分に半導体素子を接合することにより、半導体装置を製造する。半導体素子の搭載方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装、異方性導電フィルム(ACF)による実装、非導電性フィルム(NCF)による実装などが挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。尚、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0088】
<測定方法・評価方法>
各種測定方法・評価方法について説明する。
【0089】
<接着フィルムの作製>
実施例1〜3、比較例1、2、4、5で得られた樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下必要に応じてPETと称する)フィルム上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均110℃)で10分間乾燥させ、シート状の接着フィルムを得た。また、乾燥後の樹脂厚みが10μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜110℃(平均100℃)で4分間乾燥させ、シート状の接着フィルムを得た。
【0090】
<ピール強度及び表面粗さ(Ra値)測定用サンプルの調整>
(1)積層板の下地処理
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、パナソニック電工(株)製R5715ES)の両面をメック(株)製CZ8100(銅のマイクロエッチング剤、2μmエッチング)に浸漬して銅表面の粗化処理を行った。
【0091】
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で得られた樹脂ワニスより作製した40μm厚の接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機(株)製MVLP−500)を用いて、上記両面銅張積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa(ヘクトパスカル)以下とし、その後、設定温度100℃で30秒間、圧力0.74MPa(メガパスカル)でプレスすることにより行った。
【0092】
(3)樹脂の硬化
ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、100℃で30分間、さらに180℃で30分間の硬化条件で、樹脂を硬化した。これにより、両面銅張積層板の両面に硬化された絶縁材料からなる絶縁層が形成された。
【0093】
(4)絶縁層表面の粗化処理
絶縁層を形成した積層板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のスエリングディップ・セキュリガントP(Swelling Dip Securiganth P)に60℃で10分間浸漬し、次に粗化液としてアトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションソリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。この一連の工程により、絶縁層表面の粗化処理を行った。この粗化処理後の積層板をサンプル1とした。
【0094】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
積層板を、PdClを含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後、電解銅めっきを行い、30μmの厚さの導体層を形成し、アニール処理を180℃にて60分間行った。この積層板をサンプル2とした。
【0095】
<粗化処理後の表面粗さ(Ra値)の測定及び評価>
サンプル1を非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92
μmとして得られる数値によりRa値を求めた。そして、無作為に選んだ測定点の平均値を求めることにより測定した。
【0096】
<メッキ銅層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定方法>
サンプル2の導体層に、幅10mm、長さ100mmの切込みをカッターを用いていれて、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、JIS C6481に準拠し、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0097】
<絶縁信頼性の評価方法>
10um厚の接着フィルムを使用して、上記と同様にして電解銅メッキを行い、30μmの厚さの導体層を形成した。導体メッキ側に、直径10cmの円形導体パターンを形成し、円形導体側をプラス極とし、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板の銅箔側をマイナス極として、高度加速寿命試験装置(ETAC製PM422)を使用し、130℃、85%湿度、3.3V直流印加、100時間経過させた前後の絶縁抵抗値を、エレクトロケミカルマイグレーションテスター(J−RAS(株)製ECM−100)にて測定した。
【0098】
<実施例1>
コア層がポリブタジエンからなり、シェル層がポリメチルメタクリレートをジビニルベンゼンで部分架橋したものからなるコア−シェル粒子である有機フィラー(ガンツ化成(株)製、IM−401)5部をソルベントナフサ20部中に40℃にて2時間静置した。有機フィラーにはソルベントナフサの全量が吸収されていた。このソルベントナフサが吸収された有機フィラーに、シリカ((株)アドマテックス製、平均粒径0.5μmの球状シリカ)を用いたシリカスラリー(組成比、シリカ/MEK/シラン系カップリング剤(N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製))=70部/30部/0.5部)200部と、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)10部と、液状ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「HP4032SS」)10部と、結晶性2官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部を加え、T.K.ハイビスディスパーミックス(プライミクス(株)製3D−50型)のプラネタ翼にて、65℃で各成分が十分に混合、溶解されるよう目視観察しながら攪拌させた。その時間は1時間であった。
【0099】
室温にまで冷却後、そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発成分75質量%のMEK溶液)16部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約124、不揮発成分80質量%のMEK溶液)6部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発成分65質量%のトルエン溶液)12部、さらに難燃剤として(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)5部を加え、同じく各成分が十分に混合されるよう目視観察しながら室温で攪拌させた。その時間は30分であった。
【0100】
得られた混合液にT.K.ハイビスディスパーミックスのホモジナイザーにて5000rpmで30分間の高速分散処理を施し、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの1質量%のMEK溶液2部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の1質量%のMEK溶液4.5部を加え、さらに30分の高速分散処理を行った後、濾過精度10μmのフィルター((株)ROKI製SHP100)で濾過して(差圧0.15MPa)、樹脂ワニスを得た。
【0101】
<実施例2>
有機フィラー(IM−401)5部をソルベントナフサ20部中に室温にて8時間静置した。有機フィラーにはソルベントナフサの全量が吸収されていた。次に、実施例1と同じシリカスラリー200部中に、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂10部と、液状ナフタレン型エポキシ樹脂10部と、結晶性2官能エポキシ樹脂5部とを加え、プラネタリーミキサー((株)井上製作所製:PLM−100型)にて、65℃で1時間攪拌加熱下に溶解させた後、室温に冷却した。そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー溶液16部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂溶液6部、活性エステル硬化剤溶液12部と、上記のソルベントナフサ中に有機フィラー(IM−401)を8時間静置したものをそのまま投入し、難燃剤として(HCA−HQ)5部を加え、各成分が十分に混合されるよう目視観察しながら室温で攪拌させた。その時間は1時間であった。
得られた懸濁液を高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ(株)製NS3006H型)にポンプで送液し、30MPaの処理圧力で連続的に分散処理し、最後にその分散処理液に硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの1質量%のMEK溶液2部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の1質量%のMEK溶液4.5部を加えて、プラネタリーミキサーで30分の攪拌混合後、濾過精度10μmのフィルター((株)ROKI製SHP100)で濾過して(差圧0.15MPa)、樹脂ワニスを得た。
【0102】
<実施例3>
濾過精度10μmのフィルターを濾過精度5μmのフィルター((株)ROKI製SHP050)に変更する以外は、実施例1と全く同様に濾過して(差圧0.15MPa)、樹脂ワニスを得た。
【0103】
<比較例1>
有機フィラー5部をソルベントナフサ20部中に静置する処理を行わず、有機フィラー5部とソルベントナフサ20部を別々にシリカスラリーに投入した以外は、実施例1と全く同じ方法により加熱攪拌した。1時間攪拌後も有機フィラーの凝集が激しく、さらに2時間加熱攪拌するも改善が見られなかったため室温にまで冷却し、へらを使って手動で凝集物を分散させた。その後は実施例1と全く同様にして高速分散処理したが、30分間では目視で確認出来る凝集物が存在したため、高速分散の処理時間を30分間延長して、得られた分散処理液に硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの1質量%のMEK溶液2部、コバルト(III)アセチルアセトナートの1質量%のMEK溶液4.5部を加え、さらに30分の攪拌混合後、濾過精度10μmのフィルター((株)ROKI製SHP100)で濾過して、樹脂ワニスを得た。
【0104】
<比較例2>
実施例2同様、シリカスラリー200部中に、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂10部と、液状ナフタレン型エポキシ樹脂10部と、結晶性2官能エポキシ樹脂5部とを加え、プラネタリーミキサーにて65℃で1時間攪拌した後、冷却した。別にビスフェノールAジシアネートのプレポリマー溶液16部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂溶液6部、活性エステル硬化剤溶液12部、ソルベントナフサ20部を室温にて攪拌均一化した樹脂溶液中に、有機フィラー(ガンツ化成株式会社IM−401)5部を添加し、室温にて8時間静置した。この有機フィラーを含む混合物を上記のシリカとエポキシ樹脂の混合物に加え、さらに難燃剤として(HCA−HQ)5部を加え、各成分が十分に混合されるよう目視観察しながら室温で攪拌をした。その攪拌時間は4時間を要するものであった。得られた混合液を実施例2と同様に、高圧ホモジナイザーにポンプで送液し、30MPaの処理圧力で連続的に分散処理し、最後にその分散処理液に硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの1質量%のMEK溶液2部、コバルト(III)アセチルアセトナートの1質量%のMEK溶液4.5部を加え、プラネタリーミキサーで30分の攪拌混合後、濾過精度10μmのフィルターで濾過して、樹脂ワニスを得た。
【0105】
<比較例3>
濾過精度10μmのフィルターを濾過精度5μmのフィルター((株)ROKI製SHP050)に変更する以外は、比較例1と全く同様にして樹脂ワニスを得ようとしたが、濾過操作後すぐにフィルターの耐圧限界(0.49MPa)に至り、フィルターが詰まってしまい、樹脂ワニスを得ることが出来なかった。
【0106】
<比較例4>
有機フィラー(IM−401)5部をソルベントナフサ15部中に40℃にて2時間静置した。有機フィラーにはソルベントナフサの全量が吸収されていた。すなわち、有機フィラーにその3倍量のソルベントナフサが吸収されていた。このソルベントナフサが吸収された有機フィラーを使用する以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを得た。
【0107】
結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
表1の結果から明らかなように、本発明の方法で製造された樹脂ワニスから得られた接着フィルムは、均一で緻密な粗面の絶縁層を形成し、かつ高いめっきピール強度が得られることが分かった。一方、比較例1では有機フィラーへの有機溶媒の吸収処理(膨潤処理)を行うことなく製造された樹脂ワニスを用いており、比較例2では溶媒に樹脂を溶解させた樹脂溶液中に、有機フィラーを静置して有機フィラーに溶媒を吸収させる工程を経て製造された樹脂ワニスを用いており、どちらの場合も製造時間が長く、手間をかけたにも関わらず、得られた接着フィルムから形成された絶縁層の粗面にはムラが見られ、かつ粗度の値が大きく、めっきピール強度は低めとなってしまうことが分かる。比較例4では有機フィラーへの有機溶媒の吸収量が不足しており、得られた接着フィルムから形成された絶縁層の粗面にはムラが見られ、かつ粗度の値が大きく、めっきピール強度は低めとなってしまうことが分かる。さらに、絶縁信頼性においては、実施例1と比較例1を比べると、本発明により分散性が向上することで絶縁信頼性も向上していることが分かる。また、実施例3の濾過精度5μmのフィルターで濾過された樹脂ワニスから形成された絶縁層はさらに絶縁信頼性が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、有機フィラーに対して特定の膨潤工程を施すことによって、有機フィラーを含有しつつも、硬化後に低粗度・高ピール・高絶縁信頼性をもたらすような、有機フィラーの高い分散性を有する、樹脂ワニスの製造方法を提供できるようになった。更に、該樹脂ワニスを用いた接着フィルム、プリプレグ、金属張積層板、回路基板、多層プリント配線板、半導体装置、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機等も提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1)を有することを特徴とする、樹脂ワニスの製造方法。
工程1)有機フィラーを該有機フィラーの3.5倍量以上の有機溶媒によって膨潤させる工程(膨潤工程)
【請求項2】
更に、下記工程2)を有することを特徴とする、請求項1記載の樹脂ワニスの製造方法。
工程2)該膨潤工程によって生成された膨潤有機フィラーにワニス原料(有機フィラーを除く)を加え混合する工程(混合工程)
【請求項3】
更に、下記工程3)を有することを特徴とする、請求項2に記載の樹脂ワニスの製造方法。
工程3)該混合工程によって生成された混合液中の膨潤有機フィラーを分散させる工程(分散工程)
【請求項4】
更に、下記工程4)を有することを特徴とする、請求項3に記載の樹脂ワニスの製造方法。
工程4)該分散工程によって生成された分散処理液を濾過する工程(濾過工程)
【請求項5】
工程1)で使用される有機フィラーの量が、樹脂ワニスの不揮発成分を100質量%としたとき、0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項6】
工程3)において、ホモジナイザーを用いて膨潤有機フィラーを分散させることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項7】
工程4)において、濾過精度10μm以下のフィルターを用いることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項8】
2μmの凝集体に対するフィルターの捕集率が80%以上であり、かつ、3μmの凝集体に対する捕集率が85%以上である、請求項7記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項9】
工程4)において、濾過圧力が0.4MPa以下であることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項10】
工程4)において、濾過圧力が0.03MPa以上であることを特徴とする、請求項9記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項11】
工程1)を低流動下で行うことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項12】
工程1)における有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の樹脂ワニスの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法で得られた樹脂ワニス。
【請求項14】
請求項13に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、接着フィルム。
【請求項15】
請求項13に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、プリプレグ。
【請求項16】
請求項13に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、金属張積層板。
【請求項17】
請求項13に記載の樹脂ワニスを含有することを特徴とする、多層プリント配線板。
【請求項18】
請求項13に記載の樹脂ワニスによる絶縁層の表面の表面粗さ(Ra値)が50nm以上、300nm以下であり、該絶縁層の導体層に対するピール強度が0.53kgf/cm以上、5kgf/cm以下であることを特徴とする、多層プリント配線板。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする、半導体装置。

【公開番号】特開2012−167272(P2012−167272A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15595(P2012−15595)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】