説明

木質系床材

【課題】圧縮空気を用いて、木質系基材の表面に貼り付けられた表面化粧材を、その隅部から好適に剥離させることができる木質系床材を提供することにある。
【解決手段】木質系床材10は木質系基材3の表面32に粘着材4で表面化粧材2を貼り合わせている。木質系基材3の表面32には、表面化粧材2を貼り合わせることにより、表面化粧材2の隅部29よりも内側にある内部に密閉空間が形成されるように凹部34が設けられている。木質系基材3と表面化粧材2との間には、凹部34に向かって表面化粧材3に空気供給孔を穿設し、空気供給孔を介して、凹部34に圧縮空気を供給したときに、凹部34から表面化粧材2の隅部29に向かって圧縮空気が案内されるように非粘着部35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基材の表面に表面化粧材を貼り合わせた木質系床材に係り、特に、表面化粧材の貼り替えを好適に行うことができる木質系床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図9に示すように、木質系床材8は、木質系基材91と、木質系基材91の表面に貼着された表面化粧材92とを備えており、これらの木質系床材8を敷き詰めて木質系フロア9とされている。近年では、賃貸住宅の市況において、入居者が入居する前に、室内装飾として数種のパターンから表面化粧材の装飾を選択するようなサービスが注目されている。
【0003】
具体的には、既存の木質系フロア9(具体的には既存の表面化粧材92)の表面に、再剥離可能なように、接着材(粘着材)を介して、例えばPVCシートなどからなる入居者が選択した表面化粧材93が、貼り合わされる。
【0004】
このように、粘着材を用いて新たな表面化粧材を木質系フロア9(木質系床材8)の表面に、貼着しているので、別の入居者が入居時に、その入居者が異なる表面化粧材93を選択したとしても、木質フロア9に対して選択した表面化粧材93を貼り替えることが可能となる。
【0005】
しかしながら、このような貼り替えを行う際には、下地となる既存の木質系フロア9(表面化粧材92)を傷つけないように注意して表面化粧材93を剥がさなければならなかった。そのため、この貼り替え作業に時間と手間がかかっていた。
【0006】
一般的に、表面化粧材の貼り替え作業を容易にするための技術として、例えば、表面化粧材の両面を利用したリバーシブルフロアを形成するためのフロアパネルが記載されている(例えば特許文献1参照)。このフロアパネルは、フロアパネル本体を備え、フロアパネル本体の表面に凹部が形成されている。該凹部の底面には、表面化粧材(表面化粧板)が嵌入、接着されている。
【0007】
ここで、第1の態様としては、表面化粧材の隅部には、圧縮空気を導入するための開放口が設けられており、この開放口と連通するように、表面化粧材の裏面側に離間穴が形成されている。さらに、第2の態様としては、フロアパネル本体の上縁部に開放口が設けられており、この開放口と連通し、表面化粧材の裏面の隅部まで離間穴が形成されている。
【0008】
特許文献1に記載如き第1および第2の態様によれば、開放口から加圧ガスを注入したときに、圧縮空気が離間穴に到達し、この圧縮空気の圧力により、表面化粧材の貼着面の剥離を促進することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−144334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の第1の態様を、上述した表面化粧材の貼り替えに適用した場合、表面化粧材の隅部に開放口を設け、その開放口にエアノズルを用いて圧縮空気を導入した場合、圧縮空気を離間穴まで到達させるためには、空気漏れがないよう開放口とエアノズルとの気密性を保たなければならない。そこで、このような気密性を保つためには、エアノズルを開放口の上方から押さえ込む必要がある。この結果、押さえ込まれた開放口の近傍の表面化粧材の隅部が圧縮空気の空気圧によって持ち上がり難くなり、表面化粧材の隅部を利用して、表面化粧材を剥離させることができない場合がある。
【0011】
そこで、特許文献1の第2の態様を、上述した表面化粧材の貼り替えに適応しようとしたとしても、フロアパネル本体には凹部が無いため、表面化粧材のさらに外側に、開放口を設けるための上縁部が存在しない。したがって、このような技術を表面化粧材の貼り替えに容易に適用できるものではない。
【0012】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮空気を用いて、木質系基材の表面に貼り付けられた表面化粧材を、その隅部から好適に剥離させることができる木質系床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、前記表面化粧材の隅部よりも内側から、前記表面化粧材の隅部に向かって、圧縮空気を案内する(流す)ことにより、たとえ、隅部よりも内側からエアノズルにより表面化粧材を押さえ込んだとしても、この表面化粧材の隅部が浮き上がり、この隅部から表面化粧材を容易に剥がすことができるとの新たな知見を得た。
【0014】
本発明は、発明者らのこの新たな知見に基づくものであり、本発明に係る木質系床材は、木質系基材の表面に粘着材で表面化粧材を貼り合わせた木質系床材であって、前記木質系基材の表面には、前記表面化粧材を貼り合わせることにより、前記表面化粧材の隅部よりも内側にある内部に密閉空間が形成されるように凹部が設けられており、前記木質系基材と表面化粧材との間には、前記凹部に向かって前記表面化粧材に空気供給孔を穿設し、該空気供給孔を介して、前記凹部に圧縮空気を供給したときに、前記凹部から前記表面化粧材の隅部に向かって前記圧縮空気が案内されるように、圧縮空気案内部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、木質系基材の表面に、表面化粧材が貼り合わされた状態で凹部の内部には密閉空間が形成されている。そして、表面化粧材を木質系基材から剥がす際に、まず、凹部に向かって前記表面化粧材に空気供給孔を穿設する。
【0016】
この穿設された空気供給孔を介して凹部に圧縮空気を供給したときに、凹部は密閉空間が形成されているので、圧縮空気の空気圧により、表面化粧材の部分が持ち上がり、凹部から圧縮空気案内部に沿って圧縮空気が案内され、表面化粧材の隅部から圧縮空気が放出される。このときに、表面化粧材の隅部が木質系基材の表面から浮き上がる。この浮き上がった表面化粧材の隅部を利用して、粘着材を介して貼り合わされた表面化粧材を、木質系基材の表面から容易に剥がすことができる。
【0017】
さらに、木質系基材の表面から引き剥がした表面化粧材を型紙として利用して、新たに貼り付ける表面化粧材の形取りを行うこともできる。これにより、形取りされた部分に沿って、表面化粧材となる素材をカットすることにより同じ形状の表面化粧材を得ることができる。特に、出隅部または入隅部に隣接した木質系床材の形状は矩形状とは異なって複雑であり、貼り替えに必要となる表面化粧材の形状も複雑であるので、このような手法で素材をカットすることにより、正確な形状の表面化粧材を得ることができる。
【0018】
また、本発明にいう圧縮空気案内部は、前記凹部から前記表面化粧材の隅部に向かって前記圧縮空気が案内されるような構造であれば特に限定されるものではない。例えば、好ましい態様としては、木質系基材の凹部から表面化粧材の隅部に対接する部分までの間において、前記表面化粧材の裏面と非粘着状態となるように、前記木質系基材の表面に、前記圧縮空気案内部として非粘着層を設けてもよい。
【0019】
また、別の好ましい態様としては、木質系基材の凹部と対接する部分から、表面化粧材の隅部までの間において、前記木質系基材の表面と非粘着となるように、前記表面化粧材の裏面に、前記圧縮空気案内部として非粘着層を設けてもよい。
【0020】
これらの非粘着層を設けた態様によれば、空気供給孔を介して、凹部に圧縮空気を供給したときに、圧縮空気が非粘着層の表面を流れて、凹部から表面化粧材の隅部へ案内される。これにより、表面化粧材の隅部が浮き上がり、隅部を利用して木質系基材から表面化粧材を好適に剥離することができる。
【0021】
さらに、別の好ましい態様としては、木質系基材の凹部から表面化粧材の隅部に対接する部分までの間において、木質系基材の表面に前記圧縮空気案内部として案内溝を設けてもよい。また、別の好ましい態様としては、木質系基材の凹部と対接する部分から、表面化粧材の隅部までの間において、表面化粧材の裏面に前記圧縮空気案内部として案内溝を設けてもよい。
【0022】
これらの案内溝を設けた態様によれば、空気供給孔を介して、凹部に圧縮空気を供給したときに、圧縮空気が案内溝を流れて、凹部から表面化粧材の隅部へ案内される。これにより、表面化粧材の隅部が浮き上がり、隅部を利用して木質系基材から表面化粧材を好適に剥離することができる。
【0023】
このような案内溝は、木質系基材の凹部から表面化粧材の隅部に進むにしたがって、溝深さが浅くなるように形成されていることがより好ましい。このような案内溝を設けることにより、木質系基材に対する表面化粧材の隅部の粘着をより確実なものとすることができるばかりでなく、木質系基材の凹部から表面化粧材の隅部に向かって、圧縮空気をより確実に流すことができる。
【0024】
また、表面化粧材と木質系基材とを好適に貼り合わせることができるのであれば、特に、表面化粧材と木質系基材との粘着状態は限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、表面化粧材と粘着材との界面の接着強度は、木質系基材と粘着材との界面の接着強度よりも高い。
【0025】
この態様によれば、粘着材が表面化粧材に粘着した状態で、表面化粧材を引き剥がすことができるので、木質系基材の表面に粘着材が残存することはなく、新たな表面化粧材を木質系基材の表面に好適に貼着することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧縮空気を用いて、木質系基材の表面に貼り付けられた表面化粧材を、その隅部から好適に剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る木質系床材の模式図であり、(a)は、木質系床材の模式的分解斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線矢視拡大断面図。
【図2】図1に示す木質系床材の表面化粧材の貼り替えを説明するための図であり、(a)は、空気供給孔を穿設した状態を示した図、(b)は、空気供給孔にエアノズルを配置した状態を示した図、(c)は、エアノズルから圧縮空気を供給した状態を示した図。
【図3】図1に示す木質系床材の別の態様を示した模式図であり、(a)は、表面化粧材を裏面から見た模式的斜視図、(b)は、木質系基材の表面から見た模式的斜視図。
【図4】図1に示す木質系床材の別の形態の模式的分解斜視図であり、(a)は、4枚の表面化粧材が貼着された木質系床材の斜視図であり、(b)は、6枚の表面化粧材が貼着された木質系床材の斜視図。
【図5】図4(a)に示す木質系床材の変形例に係る模式的分解斜視図であり、(a)は、4枚の表面化粧材が貼着された木質系床材の斜視図であり、(b)は、(a)のさらなる変形例に係る木質系床材の斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る木質系床材の模式図であり、(a)は、木質系床材の模式的分解斜視図であり、(b)は、(a)のB−B線矢視拡大断面図。
【図7】図6に示す木質系床材の表面化粧材の貼り替えを説明するための図であり、(a)は、空気供給孔を穿設した状態を示した図、(b)は、空気供給孔にエアノズルを配置した状態を示した図、(c)は、エアノズルから圧縮空気を供給した状態を示した図。
【図8】図6に示す第1実施形態に係る木質系床材の別の態様を示した模式図であり、(a)は、表面化粧材を裏面から見た模式的斜視図、(b)は、木質系基材の表面から見た模式的斜視図。
【図9】従来の木質系床材における表面化粧材の貼り替えを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の本発明のいくつかの実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る木質系床材の模式図であり、(a)は、木質系床材の模式的分解斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線矢視拡大断面図である。
【0029】
図2は、図1に示す木質系床材の表面化粧材の貼り替えを説明するための図であり、(a)は、空気供給孔を穿設した状態を示した図、(b)は、空気供給孔にエアノズルを配置した状態を示した図、(c)は、エアノズルから圧縮空気を供給した状態を示した図である。
【0030】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る木質系床材10は、木質系基材3の表面32に粘着材4で表面化粧材2を貼り合わせた木質系床材である。木質系基材3は、少なくとも床材の剛性および強度を確保ための基材であり、材料としては、広葉樹や針葉樹からなる通常の合板、LVL、LVB、MDF(木質繊維板)、集成材、さらには、これらを任意に積層した積層板、などを挙げることができる。
【0031】
また、木質系基材3の周縁には、雄実部31aと雌実部31bとが形成されている。この雄実部31aと雌実部31bを係合させることにより、木質系床材10を実接合することができる。
【0032】
さらに、表面化粧材2は、粘着材4を介して、木質系基材3の表面32に貼着されるものであり、化粧用表面基材と、木質系床材10の表面の意匠性を高めるための表面材と、を積層したものである。化粧用表面基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリオレフィン系樹脂からなるシート、MDF、合板、または単板などを挙げることができ、これらの材料を選択してさらに積層したものであってもよい。表面材は、表面化粧材2の表面22を構成するものであり、所望の模様が印刷されたポリ塩化ビニル(PVC)の化粧シート、ポリオレフィン系樹脂など合成樹脂からなる化粧シート、さらには、ナラ材、カバ材、ブナ材、チーク材などの化粧単板、化粧紙、または金属製の化粧材などをあげることができる。特に、表面化粧材2を可撓性を有する材料および厚みを有するように構成した場合には、後述する作業において、表面化粧材2を好適に引き剥がすことができる。
【0033】
粘着材4は、表面化粧材2と木質系基材3とを貼り付けるための粘着性を有した材料であり、例えば、粘着性を有した両面粘着テープ、例えばアクリル樹脂エマルジョンなどのアクリル系樹脂を主成分とするピールアップ接着剤(粘着剥離型接着剤)等を挙げることができる。
【0034】
このような粘着材4は、表面化粧材2と木質系基材3を粘着させると共に、木質系基材3の表面32に表面化粧材2が残らずに、木質系基材3から表面化粧材2を剥離することができるのでれば、特に限定されるものではない。
【0035】
また、表面化粧材2と木質系基材3とを好適に貼り合わせることができるのであれば、表面化粧材2と木質系基材3との粘着状態は特に限定されるものではないが、本実施形態では、表面化粧材2の裏面23と粘着材との界面の接着強度は、木質系基材3の表面32と粘着材との界面の接着強度よりも高い。
【0036】
たとえば、両面粘着テープを用いた場合に、木質系基材3の表面32の表面粗さを、表面化粧材2の裏面23の表面粗さよりも粗くすること等により、このような接着強度の関係を満たすことができる。この他にも、例えば両面粘着テープの両面に塗布される粘着剤の種類を変更したりしてもよく、この接着強度の関係を満たすことができるのであれば、これらの態様に限定さえるものではない。
【0037】
このように、粘着材4が表面化粧材2に粘着した状態で、表面化粧材2を引き剥がすと、木質系基材3の表面32に粘着材4が残存することはなく、新たな表面化粧材2を木質系基材3の表面32に好適に貼着することができる。
【0038】
本実施形態では、図1(a)、(b)に示すように、木質系基材3の表面32に、凹部34が形成されている。凹部34は、表面化粧材2の隅部29よりも、内側に形成されている。そして、粘着材4を介して表面化粧材2を木質系基材3の表面32に貼り合わせることにより、凹部34の内部には、密閉空間が形成されることになる。
【0039】
さらに、木質系基材3と表面化粧材2との間には、後述する凹部34に向かって表面化粧材2に空気供給孔5を穿設し(図2(a)参照)、空気供給孔5を介して、凹部34に圧縮空気を供給したときに、凹部34から表面化粧材2の隅部29に向かって圧縮空気が案内されるように、凹部34から表面化粧材2の隅部29まで非粘着層(圧縮空気案内部)35が形成されている。
【0040】
具体的には、非粘着層35は、木質系基材3の凹部34から表面化粧材2の隅部29に対接する部分(具体的には木質系基材3の隅部)39までの間において、表面化粧材2の裏面23と非粘着状態となるように、木質系基材3の表面32に設けられている。
【0041】
この非粘着層35は、例えば、表面に合成樹脂など非粘着性を有した(離形性を有した)材料がラミネートされたクラフト粘着テープなどからなる。木質系基材3の表面32のうち、木質系基材3の凹部34から表面化粧材2の隅部29に対接する部分まで、クラフト粘着テープを貼り付けて、非粘着層35とされる。
【0042】
そして、裏面23に粘着材4を配置した表面化粧材2を、非粘着層35設けられた木質系基材3の表面に貼着する。これにより、非粘着層35の表面35aは非粘着性を有しているので、表面35aと粘着材4との間は、非粘着状態となる。
【0043】
このような木質系床材10は、従来どおり、例えば釘打ち、糊付けなどにより、床下地面に敷設される。そして貼り替え時(具体的には、表面化粧材2を木質系基材3から剥がす際)に、図2(a)に示すように、ドリルなどの穿削装置を用いて、木質系基材3の凹部34に向かって、表面化粧材2に5〜12mm程度の空気供給孔5を穿設する。
【0044】
次に、図2(b)に示すように、穿設された空気供給孔5の開口から圧縮空気が漏れないように、エアノズル6を、空気供給孔5に挿入し、凹部34にエアノズル6から圧縮空気を供給する。具体的には、凹部34の内部は、エアノズル6の先端を含む一部が収納される空間となり、エアノズル6を押し込むことにより、エアノズル6の周りが、凹部34の開口でシールされることになる。
【0045】
これにより、図2(c)に示すように、凹部34に圧縮空気を供給したときに、凹部34の内部には、密閉空間が形成されているので、圧縮空気の空気圧により、表面化粧材2の部分が持ち上がる。さらに、圧縮空気は、非粘着状態である非粘着層35の表面35aを流れて、凹部34から表面化粧材2の隅部29へ案内され、表面化粧材2の隅部29から圧縮空気が放出される。これにより、表面化粧材2の隅部29が浮き上がり、隅部29を利用して、粘着材4を介して貼り合わされた表面化粧材2を、木質系基材3の表面32から容易に剥がすことができる。
【0046】
さらに、木質系基材3の表面32から引き剥がした表面化粧材2を型紙として利用して、新たに貼り付ける表面化粧材の形取りを行うこともできる。これにより、形取りされた部分に沿って、表面化粧材2となる素材をカットすることにより、同じ形状の表面化粧材を新たに得ることができる。特に、出隅部または入隅部に隣接した木質系床材の場合、表面化粧材2の形状が複雑であるので、このような手法でその素材をカットすることにより、正確な形状の表面化粧材を速やかに得ることができる。
【0047】
図3は、図1に示す木質系床材の別の態様を示した模式図であり、(a)は、表面化粧材を裏面から見た模式的斜視図、(b)は、木質系基材の表面から見た模式的斜視図である。図1の実施形態と相違する点は、非粘着層(圧縮空気案内部)の位置であり、その他の構成は同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0048】
図3(a)に示すように、表面化粧材2の裏面23には、粘着材4が配置されている。さらに、粘着材4の上には、木質系基材3の凹部34(図3(b)参照)と対接する部分24から表面化粧材2の隅部29までの間において、木質系基材3の表面32と非粘着となるように、非粘着層25が設けられている。なお、非粘着層25は、図1に示すものと同じ材質からなる。
【0049】
このような状態の表面化粧材2を、図3(b)に示す木質系基材3の表面32に貼り合わせる。ここで、表面化粧材2の裏面23において、粘着材4の上に、非粘着層25を設けたので、貼り合わせ時に、粘着材4が木質系基材3の凹部34を塞ぐことなく、上述した図2(a)〜(c)の一連の作業の際に、木質系基材の表面32と非粘着層25との間に圧縮空気が流れるルートを確保することができる。これにより、図1に示す木質系床材と同様に、表面化粧材2の隅部が浮き上がり、隅部29を利用して木質系基材3から表面化粧材2を好適に剥離することができる。
【0050】
図4は、図1に示す木質系床材の別の形態の模式的分解斜視図であり、(a)は、4枚の表面化粧材が貼着された木質系床材の斜視図であり、(b)は、6枚の表面化粧材が貼着された木質系床材の斜視図である。図1の実施形態と相違する点は、木質系基材の表面に設けた凹部及び非粘着層(圧縮空気案内部)の位置とそれらの個数であり、その他の構成は同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0051】
図4(a)に示すように、木質系床材10は、4枚の表面化粧材2,2,…を、縦2列、横2列にして、木質系基材3に貼り合わせたものである。具体的には、木質系基材3は、例えば、厚さ9mm、幅303mm、長さ1818mmの合板からなり、各表面化粧材2は、例えば、厚さ3mm、幅151.5mm、長さ909mmの化粧用のMDFからなる。化粧用のMDF(表面化粧材)は、化粧用表面基材にMDFを用い、表面材にポリオレフィン系樹脂の化粧シートを用いて、これらを積層したものである。
【0052】
さらに、木質系基材3の表面32には、各表面化粧材2に対応するように、4つの凹部34が形成されている。各凹部34は、表面化粧材2の四隅部近傍であって、貼着される表面化粧材2の隅部29よりも、内側に形成されている。そして、粘着材4を介して表面化粧材2を木質系基材3の表面32に貼り合わせることにより、各凹部34の内部には、上述したのと同様に、密閉空間が形成されることになる。
【0053】
さらに、木質系基材3と表面化粧材2との間に位置するように、非粘着層35が設けられている。そして、図1に示す非粘着層と同様に、各非粘着層35は、凹部34から表面化粧材2の隅部29に向かって圧縮空気が案内されるように、凹部34から表面化粧材2の隅部29まで形成されている。
【0054】
このような結果、各表面化粧材に空気供給孔5を穿設し、圧縮空気が漏れないように、エアノズル6から、凹部34に圧縮空気を供給することにより、表面化粧材2の隅部29が浮き上がり、木質系基材3の各隅部39の位置から、表面化粧材2の浮き上がった隅部29を利用して、各表面化粧材2を好適に引き剥がすことができる。
【0055】
同様に、図4(b)に示す木質系床材10は、6枚の表面化粧材2,2…を、縦2列、横3列にして、木質系基材3に貼り合わせたものである。木質系床材10を構成する木質系基材3は、図4(a)と同じであり、各表面化粧材2は、例えば、厚さ3mm、幅101mm、長さ909mmのPVCシートからなる。PVCシート(表面化粧材)は、化粧用表面基材にポリ塩化ビニル(PVC)シートを用い、表面材にポリ塩化ビニル(PVC)の化粧シートを用いて、これらを積層したシートである。木質系床材10は6枚の表面化粧材2,2…を、木質系基材3に貼り合わせたものである。
【0056】
この場合も同様に、各表面化粧材2、2・・・に対応する木質系基材3の表面32に、凹部34と、非粘着層35を設ければ、上述した方法と同じ方法で、表面化粧材2の隅部29を利用して、各表面化粧材2を好適に引き剥がすことができる。
【0057】
図5は、図4(a)に示す木質系床材の変形例に係る模式的分解斜視図であり、(a)は、4枚の表面化粧材が貼着された木質系床材の斜視図であり、(b)は、(a)のさらなる変形例に係る木質系床材の斜視図である。
【0058】
図4(a)では、表面化粧材2を引き剥がす際に、木質系基材3の各隅部39から圧縮空気が流れるように、凹部34および非粘着層35をそれぞれ設けたが、図5(a)に示すように、4つの凹部34を、各表面化粧材2が隣接する、木質系基材3の表面32の中央近傍に設けてもよい。また、本実施形態では、対角に位置する凹部34を結ぶように非粘着層35が形成されており、これにより、非粘着層35としてのクラフト粘着テープの貼り付けを容易にすることができる。
【0059】
また、図5(b)に示すように、4つの凹部34を、木質系基材3の長手方向中央の縁部近傍に設け、各凹部34から、木質系基材3の長手方向中央の縁部に向かって圧縮ガスが放出されるように、非粘着層35を設けてもよい。
【0060】
このように、図5(a),(b)に示す木質系床材は、図4(a)の木質系床材に比べて木質系基材3の中央に凹部が位置するので、木質系基材の隅部の機械的強度を保持することができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態に係る木質系床材の模式図であり、(a)は、木質系床材の模式的分解斜視図であり、(b)は、(a)のB−B線矢視拡大断面図である。図7は、図6に示す木質系床材の表面化粧材の貼り替えを説明するための図であり、(a)は、空気供給孔を穿設した状態を示した図、(b)は、空気供給孔にエアノズルを配置した状態を示した図、(c)は、エアノズルから圧縮空気を供給した状態を示した図である。図1に示す第1実施形態の木質系床材と相違する点は、圧縮空気案内部の構造である。したがって、それ以外の構成は、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
図6(a),(b)に示すように、本実施形態では、木質系基材3の凹部34から表面化粧材2の隅部29に対接する部分(具体的には木質系基材3の隅部)39までの間において、木質系基材3の表面32に案内溝(圧縮空気案内部)38が設けられている。案内溝38の一端側は、凹部34に連通しており、その他端側は、木質系基材3の隅部39から所望の幅を残して、その近傍まで延在している。さらに、案内溝38は、木質系基材3の凹部34から表面化粧材2の隅部29(木質系基材3の隅部39)が位置する方向に進むにしたがって、溝深さが浅くなるように形成されている。
【0063】
このような木質系基材3に対して、粘着材4を介して表面化粧材2を貼り合わせることにより、凹部34および案内溝38の内部には、密閉空間が形成されることになる。案内溝38を設けることにより、後述する穿設した空気供給孔5を介して、凹部34に圧縮空気を供給したときに、凹部34から表面化粧材2の隅部29に向かって圧縮空気が案内される流路が形成されることになる。
【0064】
上述した貼り替え作業と同様に、表面化粧材2を剥がす際に、まず、図7(a)に示すように、木質系基材3の凹部34に向かって、表面化粧材2に空気供給孔5を穿設する。次に、図7(b)に示すように、エアノズル6を、空気供給孔5に挿入し、エアノズル6から凹部34に圧縮空気を供給する。
【0065】
これにより、図7(c)に示すように、凹部34に圧縮空気を供給したときに、凹部34および案内溝38の内部には、密閉空間が形成されているので、圧縮空気が案内溝38の表面35aを流れて、圧縮空気の空気圧により、凹部34および案内溝38に面する表面化粧材2の部分が、持ち上がる。さらに、案内溝38に沿って流れた圧縮空気は、表面化粧材2の隅部29から放出される。これにより、表面化粧材2の隅部29が浮き上がり、隅部29を利用して、粘着材4を介して貼り合わされた表面化粧材2を、木質系基材3の表面32から容易に剥がすことができる。
【0066】
さらに、木質系床材の状態で、案内溝28は、木質系基材3の凹部34から表面化粧材2の隅部29が位置する方向に進むにしたがって、溝深さが浅くなるように形成され、さらには、隅部29から所定の幅を残して形成されているので、木質系基材3に対する表面化粧材2の隅部29の粘着をより確実なものとし、木質系基材3の凹部34から表面化粧材2の隅部29に向かって、圧縮空気をより確実に流すことができる。
【0067】
図8は、図6に示す第1実施形態に係る木質系床材の別の態様を示した模式図であり、(a)は、表面化粧材を裏面から見た模式的斜視図、(b)は、木質系基材の表面から見た模式的斜視図である。図6の実施形態と相違する点は、案内溝(圧縮空気案内部)の位置であり、その他の構成は同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0068】
図8(a)に示すように、さらに、粘着材4の上には、木質系基材3の凹部34(図8(b)参照)と対接する部分24から表面化粧材2の隅部29までの間において、案内溝28が形成されている。さらに、案内溝28を除く表面化粧材2の裏面23には、粘着材4が配置されている。
【0069】
粘着材4を介して表面化粧材2を木質系基材3の表面32に貼り合わせた状態で、案内溝28の一端側は、凹部34に連通しており、その他端側は、表面化粧材2の隅部29から所望の幅を残して、その近傍まで延在している。さらに、案内溝28は、凹部34から対接する部分24(木質系基材3の凹部34)から表面化粧材2の隅部29(木質系基材3の隅部39)に進むにしたがって、溝深さが浅くなるように形成されている。
【0070】
このように、粘着材4を介して表面化粧材2を木質系基材3の表面32に貼り合わせることにより、凹部34および案内溝28の内部には、密閉空間が形成されることになる。そして、案内溝28を設けることにより、上述した図7(a)〜(c)の一連の作業と同等の作業を行う際に、凹部34から表面化粧材2の隅部29に向かって圧縮空気が案内される流路が確保されることになる。これにより、図6に示す木質系床材と同様に、表面化粧材2の隅部が浮き上がり、隅部29を利用して木質系基材3から表面化粧材2を好適に剥離することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0072】
例えば、図4(a),(b)および図5(a),(b)に示す第1実施形態に係る木質系床材では、表面化粧材の個数に合わせて、非粘着層を設けたが、これと同じ位置に、第2実施形態に係る案内溝を設けてもよく、さらには、表面化粧材の裏面に、複数の案内溝を設けてもよい。
【0073】
さらに、第1および第2の実施形態では、木質系基材の表面に凹部を設けたが、表面化粧材に空気供給孔を穿設し、例えばパッキン等を用いてエアノズルと空気供給孔の圧縮空気の漏れを防止し、非粘着層または案内溝(圧縮空気案内部)を介して、表面化粧材の隅部に向かって圧縮空気を流すことができるのであれば、凹部を設けなくてもよい。
【0074】
また、第1および第2の実施形態では、予め粘着材を表面化粧材の裏面側に配置して、これを、木質系基材に貼り合わせたが、木質系基材の表面に形成された凹部を塞ぐことがないのであれば、予め木質系基材の表面に粘着材を配置してもよい。
【0075】
さらに、第2実施形態では、案内溝の深さを、表面化粧材の隅部に進むにしたがって浅くしたが、表面化粧材を好適に貼り付けて、さらにその後、剥離することができるのであれば、溝深さは、一定であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
2:表面化粧材、3:木質系基材、4:粘着材、5:空気供給孔、6:エアノズル、10:木質系床材、22:表面、23:裏面、25:非粘着層、28:案内溝、29:隅部、31a:雄実部、31b:雌実部、32:表面、34:凹部、35:非粘着層、38:案内溝、39:隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材の表面に粘着材で表面化粧材を貼り合わせた木質系床材であって、
前記木質系基材の表面には、
前記表面化粧材を貼り合わせることにより、前記表面化粧材の隅部よりも内側にある内部に密閉空間が形成されるように凹部が設けられており、
前記木質系基材と表面化粧材との間には、
前記凹部に向かって前記表面化粧材に空気供給孔を穿設し、該空気供給孔を介して、前記凹部に圧縮空気を供給したときに、前記凹部から前記表面化粧材の隅部に向かって前記圧縮空気が案内されるように、圧縮空気案内部が形成されていることを特徴とする木質系床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92025(P2013−92025A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236264(P2011−236264)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】