説明

有機EL素子用封止材、及び有機EL表示装置

【課題】 これまでの有機EL封止に用いられた方法では、有機EL素子の性能を低下させる水分を除くために、封止材に除湿材或いは吸湿材等の水分を除去するための物質を添加したり、除湿性の保護膜等で素子を保護する等の手段を講じなければならなかった。そこで、本発明の課題は、水分を除去するための物質を添加する必要のない有機EL素子封止材を提供することにある。
【解決手段】 下記式(1)


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わす。)
で表される繰り返し単位を30モル%以上含む樹脂からなる有機EL封止材により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する繰り返し単位を含む樹脂からなる有機EL封止材、及び該有機EL封止材を用いて構成される有機EL素子、及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、薄型化が可能であり、しかも直流低電圧駆動が可能であるという利点を有しており、次世代ディスプレイとして着目されている。
【0003】
しかし、有機EL素子を構成する有機発光材料や電極は、活性が高く化学的に不安定であるため、水分等により特性が劣化しやすく、大気中で駆動させると、発光特性が急激に劣化し寿命が短いという問題があった。そこで、一般的な有機EL素子では、有機EL素子の上に乾燥剤が設置されたガラス又は金属からなる蓋を被せ、その周辺を接着剤(封止剤)で封止することにより水分の浸入を遮断する構造が採られていた。この方式では、有機EL素子から発せられた光は蓋の反対側、即ち、有機EL素子の底部側から取り出されることからボトムエミッション方式とも呼ばれている。
【0004】
近年、従来のボトムエミッション方式の有機EL素子に代わって、有機EL素子から発せられた光を上面側から取り出すトップエミッション方式の有機EL素子が注目されている。この方式は、開口率が高く、低電圧駆動となることから、長寿命化に有利であるという利点がある。
【0005】
このようなトップエミッション方式の有機EL素子では、通常、積層体を2枚のガラス等の透明材料からなる防湿性基材により挟み込み、該防湿性基材間を充填剤で充填することにより封止している(例えば、特許文献1)。
【0006】
しかしながら、このようなトップエミッション方式の有機EL素子では、光の取り出し方向を遮蔽してしまわないようにするために乾燥剤を配置するスペースがなく、充填剤で充填したとしても、また、特許文献1に示されるように充填剤中に吸湿性の高い層を設け防湿効果を高める方策を施しても充分な防湿効果が得られにくく、寿命が短くなるという問題があった。
【0007】
本発明で使用される特定の構造を有する繰り返し単位を含む樹脂をガスバリア材として使用が可能であることは、特許文献2に記載されているものの、有機EL封止材として使用が可能であることについては、記載も示唆もされていない。
【0008】
また、ガスバリア材として広く知られているポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体を有機EL素子の封止膜の構成成分として使用する例が特許文献3に記載されているが、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体は高湿度下での水蒸気透過性は劣化するため、無機材料を併用して当面の欠点を補っても多湿の環境下においては長期間にわたる信頼性の発現は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−357973号公報
【特許文献2】特許第3686238号公報
【特許文献3】特開2006−218687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまでの有機EL封止に用いられた方法では、有機EL素子の性能を低下させる水分を除くために、封止材に除湿材或いは吸湿材等の水分を除去するための物質を添加したり、除湿性の保護膜等で素子を保護する等の手段を講じなければならなかったが、これらの方法では、上記の問題点があった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、水分を除去するための物質を添加する必要のない有機EL素子封止材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、特定の構造を有する繰り返し単位を含む樹脂からなる有機EL封止材として用いることにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術のように、水分を除去するための物質を添加する必要のない有機EL素子封止材を提供することができる。
【0014】
本発明の有機EL素子封止材の提供により、有機EL素子の性能を長時間保つことができる。また、保護膜を用いた場合に起こっていた製品の歩留まりの低下を防ぐことが可能となり、製造工程上の問題点を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の各項目から構成される。
1.一般式(1)
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わす。)
で表される繰り返し単位を30モル%以上含む樹脂からなる有機EL封止材、
2.1.に記載の有機EL封止材が、有機EL発光層の少なくとも一方の面に層を介して、又は層を介さないで積層して得られる有機EL表示素子、
3.2.に記載の有機EL表示素子を備えた有機EL表示装置。
【0018】
本発明の有機EL素子封止材は、一般式(1)で表される繰り返し単位を30モル%以上含む樹脂からなることに特徴を有する。
【0019】
本発明の一般式(1)で表されるポリアリルアルコールは公知であり、その製造方法については、例えば、米国特許第2455722号、同2467105号、同3285897号、同3666740号(特公昭47−40308)、同4125694号、英国特許第854207号等に記載されている。
【0020】
本発明の有機EL封止材は、一般式(1)で表される繰り返し単位で構成されるポリアリルアルコール樹脂と特定の樹脂との混合物であっても、一般式(1)で表される繰り返し単位で構成される重合体と他の特定の共重合成分との共重合物であってもよい。
本発明の有機EL封止材が、特定の樹脂との混合物である場合には、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位で構成されるポリアリルアルコール樹脂と相溶性よく混合される樹脂であれば、性能に大きく悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。
【0021】
このような樹脂としては、例えば、公知慣用のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリカプロラクタム( 6 − ナイロン)、ポリラウリロラクタム( 1 2 − ナイロン) 、ポリヘキサメチレンアジパミド( 6 , 6 −ナイロン) 等のポリアミド類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のポリニル類、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート等のポリアクリル類、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂は単独成分であっても、2種類以上の共重合体であっても良い。また、2種類以上の樹脂種を混合してもよい。
【0022】
共重合成分としては、性能に大きく悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン系単量体、
ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体、
スチレン、α−メチルスチレン等の芳香属置換ビニル系単量体、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル系単量体、
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体、
塩化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体、
マレイイミド、N−メチルマレイイミド、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸誘導体系
単量体等が挙げられる。
また上記共重合体成分のうちの1種または2種類以上の成分からなる共重合体を含んでいても良い。また、共重合物は、ランダム共重合物であってもブロック共重合物であってもよいが、ガスバリア性の観点から、ブロック共重合性が高いほうが好ましい。
本発明の有機EL封止材による封止膜は必要に応じて有機、無機成分等による他の組成物層と積層しても良い。
【0023】
本発明の有機EL封止材は、一般式(1)で表される繰り返し単位を30モル%以上含む樹脂からなることに特徴を有するが、30モル%以下であると、ガス及び水蒸気バリア性が低下し好ましくなく、ガス及び水蒸気バリア性の向上のためには、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは70モル%以上の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む樹脂を用いることができる。
【0024】
本発明の有機EL封止材は、必要に応じて各種の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
【0025】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等。
【0026】
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
【0027】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
【0028】
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
【0029】
滑剤:エチレンビスステアロイルアミド、ブチルステアレート、高級脂肪酸金属塩等。
【0030】
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
【0031】
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、雲母、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化ケイ素等。
【0032】
本発明の有機EL表示素子用封止材は、硬化物をJIS Z 0208に従い、20μm厚での透湿度の値が10g/m以下であることが好ましい。上記透湿度が10g/mを超えると、素子に水分が到達し発光部でのダークスポット発生の原因となる。
【0033】
本発明の封止材を用いた封止の方法は、例えば、
1)基板上に形成された有機EL素子上に直接本発明の封止材による封止膜を形成する方法、
2)別の基板上にあらかじめ形成された本発明の封止材による封止膜を積層する方法、等を用いて、本発明の有機EL表示素子とすることができる。
【0034】
本発明の封止材を用いた封止膜の形成方法は特に限定されないが、例えば気相成膜法による蒸着、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレー法、スクリーン印刷法、本発明の封止材により得られるフィルムを貼合せる等、公知の方法を用いることができる。
【0035】
基材層に組成物層を積層する際には、基材の種類に応じて一般的に用いられている公知のアンダーコーティング剤又は接着剤を使用することが好ましい。
【0036】
本発明の封止材に用いられる樹脂は有機溶媒等の溶媒に分散させて液状として、コーティング剤(塗液組成物)やフィルムの原料として用いることができる。溶媒の量は、組成物の用途に応じて決定される。溶媒にはアルコール等の汎用の溶媒を用いることができる。
【0037】
本発明の封止材の実施の態様の例を以下に説明する。
まず、ガラスもしくはフィルム基板上に透明電極、正孔輸送層、有機EL層及び背面電極からなる有機EL層を形成し、その上に本発明の封止材に用いられる樹脂を熱転写し、非透水性ガラスもしくはフィルムと加熱しながら貼りあわせて封止する。場合により、非透水性のガラスもしくはフィルムに熱転写し、有機EL層を形成したガラス又はフィルムに加熱しながら貼りあわせて封止する。
【0038】
さらに詳述すると、本発明における有機EL素子の封止構造は次のようにして作製される。まず、ガラス又はフィルム基板上に透明電極を約0.1μmの厚みで成膜する。透明電極の成膜に際しては、真空蒸着及びスパッタ等による方法がある。ただし、真空蒸着による成膜は、結晶粒が成長して膜表面の平滑度を低下させることがあり、薄膜ELに適用する場合には絶縁破壊膜や不均一発光の原因を作るため注意を要する。一方、スパッタによる成膜は表面の平滑性がよく、その上に薄膜デバイスを積層する場合に好ましい結果が得られている。続いて、透明電極の上部に正孔輸送層及び有機EL層を0.05μmの厚みで順次成膜する。また、有機EL層の上部に背面電極を0.1〜0.3μmの厚みで成膜する。
【0039】
これらの素子の成膜を終えたガラス又はフィルム基板の上部に本発明の封止材に用いられる樹脂をロールラミネータ又は、真空ラミネーター等で転写する。この時、本発明の封止材に用いられる樹脂は予め基材フィルム(離型フィルム)状に延展されシート状に形成されていて、このシート状に形成された封止材に用いられる樹脂をロールラミネータ又は、真空ラミネーター等で転写する。なお、前記の転写による方法を用いる場合は、フィルム上に延展された封止材に用いられる樹脂の層の厚みを10〜30μmとすると、転写を円滑に行うことができる。
【0040】
次いで、転写した封止材に用いられる樹脂の上から非透水性ガラス又はフィルム基板を重ね合わせる。これを真空ラミネーター装置を用いて加熱圧着させ、上下基板の仮固着を行う。その後、基板またはフィルムの縁部を公知の接着剤を用いてガラス基板に貼り合せる。
【0041】
また、有機EL素子の信頼性を向上させる目的であらかじめ素子を無機膜で保護した状態の有機EL素子基板とガラス又はフィルムとを本発明の封止材を用いた封止膜と重ね合わせることも可能である。ここでいう無機膜とは酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどがあげられる。
【0042】
本発明の有機EL表示装置は、上記で得られた有機EL表示素子を用いて得られる。本発明の有機EL表示装置は、本発明の有機EL表示素子を備えた、文字や図形を表示するディスプレイ装置または照明装置をいい、例えば封止フィルム等でガスバリア封止を行ったり、電源との接続部分を設置したりして、装置として実用に供することができる構造としたものを指す。
【実施例】
【0043】
以下の実施例で更に本発明を詳細に説明する。
(透湿度の測定)
実施例1、2、及び比較例1で製造した有機EL素子用封止材を、OPET(東レ株式会社製、ルミラー(商品名)、フィルム厚み12μm)上に、乾燥後の厚みが20μmになるようにバーコーターにより塗工した。80℃にて60分乾燥した後、更に減圧下80℃で60分間乾燥した。得られたフィルムの透湿度をJISZ0208に従い、40℃〜90%RHの条件にて測定した。測定値を20μm厚さの封止材のみの値に換算した。
【0044】
(発光特性試験1)
実施例1、2、及び比較例1で得られた各有機ELデバイスについて、大気中において初期輝度100cd/mの条件で定電流連続駆動させ、デバイスの半減寿命(輝度が初期輝度の半分に低下するまでに要する時間)を測定した。
【0045】
(発光特性試験2)
また、大気中において初期輝度100cd/mの条件で定電流駆動させ初期の発光状態を確認した後、デバイスを23℃90%RHの条件下に100時間暴露した後、再び初期評価と同じ条件で駆動させ発光の様子を目視により観察した。
【0046】
(有機EL素子基板の製造)
ガラス基板(25mm×25mm×0.7mm)にITO電極を100nmの厚さで成膜したものを透明支持基板とした。透明支持基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更に、UV−オゾンクリーナ(NL−UV253、日本レーザー電子社製)にて直前処理を行った。次に、この透明支持基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)を200mg、他の異なる素焼き坩堝にトリス(8−ヒドロキシキノリラ)アルミニウム(Alq3)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10−4Paまで減圧した。その後、α−NPD入りの坩堝を加熱し、α−NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いでAlq3の坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で(Alq3)膜を形成した。その後、透明支持基板を別の真空蒸着装置に移し、この真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mg、別のタングステン製ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後、真空槽を2×10−4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で200Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し透明支持基板を取り出して透明支持基板上に作製した有機EL素子基板を得た。
【0047】
(合成例1)ポリメタアリルアルコール(PMAA)の合成
冷却器付き反応容器に水素化リチウムアルミニウム250質量部を仕込み、窒素置換し、N−メチルモルホリン3000質量部を添加した後、130℃に加熱し還流させた。これにポリメチルメタクリレート600質量部とN−メチルモルホリン6000質量部からなる溶液を添加し、滴下終了後さらに4時間還流させた。この後、酢酸エチル1000質量部を滴下して未反応の水素化物を失活させ、さらに50%リン酸水溶液5000質量部を滴下した。冷却後、遠心分離により上澄みと固形分に分離した。得られた上澄みには蒸留水に加えポリマー(その1)を析出させた。また、得られた固形分には10000質量部のエタノールを加え、60℃、1時間加熱溶解してからグラスフィルターで濾過し、得られた濾液をエバポレーターにより濃縮した後、蒸留水に加えポリマー(その2)を析出させた。析出によって得られたポリマー(その1およびその2)を合わせて、100℃の蒸留水により煮沸することにより十分洗浄した後、真空乾燥して、PMAA380質量部を得た。
【0048】
(実施例1)
合成例1で得られたPMAA30質量部を70質量部のイソプロピルアルコールに60℃で1時間加熱溶解させ、固形分濃度30質量%の溶液を調製し、これをアルミナ蒸着PET(東レフイルム化工(株)社製 BARRIALOX VM−PET1011RG)に、乾燥後の厚みが20μmになるようにバーコーターにより塗工した。塗工後の基材を、80℃にて60分乾燥した後、更に減圧下80℃で60分間乾燥した。得られた積層体の封止材面と有機EL素子面を合わせ真空ラミネーターで被着させ、有機ELデバイスを得た。なお、フィルムの縁部は接着剤を用いて有機EL素子付ガラス基板に貼り合せた。なお、調製した封止剤の透湿度は5cc/m・dayであった。
【0049】
(実施例2)
真空蒸着装置にアルミナ蒸着PET(東レフイルム化工(株)社製 BARRIALOX VM−PET1011RG)の蒸着面を上にしてセットした。次にPMAA4gをアルミナ製るつぼに入れ、このるつぼの周囲にタングステン製ヒーターを巻き付け真空蒸着装置にし込み、0.2nm/秒の蒸着速度で蒸発させ厚さ20μmのPMAA層をOPET/酸化珪素からなる基材の酸化珪素面上に設けた。得られた積層体の封止材面と有機EL素子面を合わせ真空ラミネーターで被着させ、有機ELデバイスを得た。なお、フィルムの縁部は接着剤を用いて有機EL素子付ガラス基板に貼り合せた。
【0050】
(比較例1)
アルミナ蒸着PET(東レフイルム化工(株)社製 BARRIALOX VM−PET1011RG)の蒸着面上に100cmにつき0.1gの酸化カルシウムを散布しこれを蒸着面が上になるようにセットした。次にPVA4gをアルミナ製るつぼに入れ、このるつぼの周囲にタングステン製ヒーターを巻き付け真空蒸着装置にしこんだ。これを0.2nm/秒の蒸着速度で蒸発させ厚さ20μmのPVA層をOPET/酸化珪素からなる基材の酸化珪素面上に設けた。得られた積層体の封止材面と有機EL素子面を合わせ真空ラミネーターで被着させ、有機ELデバイスを得た。なお、フィルムの縁部は接着剤を用いて有機EL素子付ガラス基板に貼り合せた。なお、PVA30質量部を40質量部の水、30質量部のイソプロピルアルコールに60℃で1時間加熱溶解させ、固形分濃度30質量%の溶液を調製し、これを用いて透湿度を測定した。27cc/m・dayであった。
上記発光特性試験1及び2の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
本結果より、本発明の有機EL封止材は、これまでの樹脂(比較例1)であるPVAに、除湿剤(酸化カルシウム)を添加して用いたもの(比較例1)より発光特性が優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の有機EL封止材は、長期間の使用に耐える有機EL素子の封止材としての利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わす。)
で表される繰り返し単位を30モル%以上含む樹脂からなる有機EL封止材。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL封止材が、有機EL発光層の少なくとも一方の面に層を介して、又は層を介さないで積層して得られる有機EL表示素子。
【請求項3】
請求項2に記載の有機EL表示素子を備えた有機EL表示装置。

【公開番号】特開2013−109838(P2013−109838A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251569(P2011−251569)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】