説明

描画システム

【課題】直線を描画する際に手間がかからないようにして、使い勝手を良くした描画システムを提供す。
【解決手段】描画システム10は、タブレット11、モニタ12、端末装置13、そして、タブレットへの入力に用いられるスタイラスペン15からなる。スタイラスペンがタブレットの座標入力面16で最初に入力した位置が始点として認証され、スタイラスペンが座標入力面上の所定の入力位置で所定時間以上静止していたとき、当該入力位置が終点として決定される。始点と終点とが決定されると、始点と終点との間に含まれる複数の座標からなる一次座標群に基づく自由線nは、自動的にかつ瞬時に整列されて、補正された二次座標群に基づく直線lへ変換される。また、終点が決定されるまでは、仮直線vが自由線nと共に又は単独でモニタ画面へ表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタの画面上に表示されるカーソルの座標位置を指定するポインティングデバイスを用いて、モニタの画面上の座標のうち、複数の座標を連続して指定することによってカーソルの軌跡を線として描画するようにした描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコンやタブレット型携帯端末といった端末装置は、キーボードやポインティングデバイスといった入力装置を有する。
ポインティングデバイスは、例えば、マウスやタブレットと呼ばれるものであって、モニタの画面上で入力位置や座標を指定する座標入力手段を有している。該座標入力手段で入力された入力位置や座標の現在位置は、モニタの画面上でカーソルと呼ばれる絵記号で表示される。
端末装置と、ポインティングデバイス、およびモニタからなる描画システムは、ポインティングデバイスを筆のように使用して、モニタ画面上で描画する描画手段を有する。
該描画手段は、ポインティングデバイスで複数の座標を連続で指定したとき、モニタの画面上で対応するカーソルの軌跡を、線で描画するように形成されている。
【0003】
ここで、従来の描画手段は、フリーハンドで自由に描くことができる自由線形成手段と、直線を形成することに特化した直線形成手段を有している。
該直線形成手段は、例えば、キーボードの特定のキーを押下しながら直線を引いたり、モニタ画面上で直線を描画する機能を示すアイコンと呼ばれる図柄をポインティングデバイスによって指定入力後、始点と終点を指定し、該2点間を直線で結んだりして設定を切り替えることによって、直線を引くように形成されている。これにより、モニタ画面上で直線を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】引用なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の直線形成手段は、直線を形成するときに、わざわざ設定を切り替える必要がある。そのため、例えば、フリーハンドで書き込むことが多い文字や数式と、該数式等に基づくグラフや図表とを表示したとき、これらの関係性を直線や直線を含む引出線等によって示すといったように、直線形成手段と自由線形成手段とを頻繁に切り替える場合に、手間がかかり使い勝手が悪い。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、直線を描画する際に手間がかからないようにして、使い勝手を良くした描画システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の描画システムは、モニタと、
該モニタの画面上での入力位置或いは座標を指定し、又は前記モニタの画面上に表示されたカーソルを任意の位置へ移動させる座標入力手段を有するポインティングデバイスと、
該ポインティングデバイスの移動距離及び方向と、前記カーソルの移動距離及び方向とを対応付けるように制御する制御手段と、
前記座標入力手段で連続入力した複数の座標を一列に並べた一次座標群に基づいて、前記モニタの画面上で前記カーソルの軌跡の線を描画する描画手段とを備えた描画システムであって、
前記描画手段は、前記一次座標群に基づいて形成される線を直線に補正する直線入力支援手段を有し、
該直線入力支援手段は、始点認証手段と終点決定手段と座標整列手段を有し、
前記始点認証手段は、前記座標入力手段で入力位置を指定した最初の座標を始点として認証し、
前記終点決定手段は、前記座標入力手段で入力位置を指定した最後の座標を終点と決定し、
前記座標整列手段は、前記一次座標群が有する複数の前記座標を前記始点と前記終点を結ぶ同一直線上へ整列させて二次座標群を形成して、
前記描画手段で前記一次座標群に基づく線を描画したとき、当該線が前記二次座標群に基づく直線へ補正されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の描画システムは、請求項1に記載の発明において、前記終点決定手段は、終点判定手段を有し、
該終点判定手段は、前記座標入力手段で入力位置を指定したとき、該入力位置が終点か否かを判定し、
前記終点判定手段は、計時手段と比較手段とを有し、
前記計時手段は、該座標入力手段が指定した入力位置で表示されている前記カーソルの静止している時間を計時し、
前記比較手段は、前記計時手段で計時された前記カーソルの静止時間と、閾値となる所定の時間とを比較して、
前記静止時間が前記閾値を超えたとき、前記終点判定手段が前記入力位置を終点と判定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の描画システムは、請求項1若しくは請求項2に記載の発明において、前記直線入力支援手段は、補正前報知手段を有し、
該補正前報知手段は、前記座標整列手段が前記一次座標群に基づく線を前記二次座標群に基づく直線へ補正する前に、該補正がこれからなされることを報知するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の描画システムは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記直線入力支援手段は、補正後報知手段を有し、
該補正後報知手段は、前記座標整列手段が前記一次座標群に基づく線を前記二次座標群に基づく直線へ補正した後に、該補正がすでになされたことを報知するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の描画システムは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明において、前記直線入力支援手段は、線種選択手段を有し、
該線種選択手段は、前記座標整列手段が前記一次座標群に基づく線を前記二次座標群に基づく直線へ補正する前或いは補正した後に、補正される直線或いは補正された直線に基づいて、前記モニタの画面上で表示される線の線種を選択可能にするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の描画システムによれば、直線入力支援手段は、ポインティングデバイスが座標入力手段で指定する最初の入力位置を始点と認証し、最後の入力位置を終点と決定したとき、座標整列手段が、始点と終点との間に配されている複数の座標からなる一次座標群を同一直線上に整列させて二次座標群を形成することにより、最初に入力された複数の座標からなる一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線へ補正するようにした。
これによって、キーボードの特殊なキーを押下したり、モニタ画面上に表示された直線形成機能に係るアイコンをポインティングデバイスで指定して、設定を切り替えることなく、自動的に直線を形成することができる。そのため、直線を描画する際に手間がかからないので、描画システムの使い勝手を良くすることができる。
【0013】
請求項2に記載の描画システムによれば、ポインティングデバイスが入力位置を指定したとき、当該入力位置に対応するモニタ画面上の所定位置に配されたカーソルが静止している時間を判定する終点判定手段を設けたことにより、当該入力位置が終点であるか否か判定することができる。
これによって、判定された静止時間が所定時間未満であれば、フリーハンドによる描画として表示し、所定時間以上であれば、ポインティングデバイスが停止した入力位置を終点と判定し、当該終点を決定することにより、始点と終点間で直線を速やかに形成することができる。これにより、直線を描画する際に手間がかからず、描画システムの使い勝手を良くすることができる。
【0014】
請求項3に記載の描画システムによれば、座標整列手段が一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線へ整列させる前に、当該直線へ変換する補正がこれからなされることを補正前報知手段が報知するようにした。
これによって、これから補正される二次座標群に基づく直線が使用者の意図したものであるか否か確認を取ることができる。意図した直線であれば、その後、座標整列手段は該直線を自動的に形成するので、直線を描画する際に手間がかからず、描画システムの使い勝手を良くすることができる。
【0015】
請求項4に記載の描画システムによれば、座標整列手段が一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線へ整列させた後に、当該直線へ変換する補正がすでになされたことを補正後報知手段が報知するようにした。
これによって、すでに補正された二次座標群に基づく直線が使用者の意図したものと同一であることを確認することができる。そのため、使用者が意図したものと同一な直線が自動的に形成されるので、直線を描画する際に手間がかからず、描画システムの使い勝手を良くすることができる。
【0016】
請求項5に記載の描画システムによれば、座標整列手段が一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線へ整列させる前、或いは整列させた後に、該直線に基づいて実際にモニタ画面上で表示される線の線種を選択することができるようにした。
これにより、線間の間隔を均一にした二重線や、実線の間隔を均等にした点線、鎖線或いは破線や、振幅や波長を均等にした波線といった様々な線を綺麗にモニタの画面上へ表示することができる。
そのため、直線のみならず、形成した直線に基づいて様々な線について手間をかけずに描画することができるので、描画システムの使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例に係る描画システムで使用される各装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】本実施例に係る描画システムで使用される端末装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図3】本実施例に係る描画システムの構成の概略を示すブロック図である。
【図4】本実施例に係る描画システムで一次座標群に係る信号を二次座標群に係る信号へ補正する処理を示したフローチャート図である。
【図5】本実施例に係る描画システムで一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線に補正する概略を示す説明図である。
【図6】本実施例に係る描画システムで一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線に補正する前に報知する概略を示す説明図である。
【図7】本実施例に係る描画システムで一次座標群に基づく線を二次座標群に基づく直線に補正した後に報知する概略を示す説明図である。
【図8】本実施例に係る描画システムで二次座標群に基づく直線が時間の経過にしたがって変化する様子を示す説明図である。
【図9】本実施例に係る描画システムで二次座標群に基づく直線が所定時間の経過後に選択可能となる様子を示す説明図である。
【図10】本実施例に係る描画システムで二次座標群に基づく直線が座標入力面の押圧力の違いによって変化する様子を示す説明図である。
【図11】本実施例に係る描画システムで二次座標群に基づく直線がスタイラスペンの傾きによって変化する様子を示す説明図である。
【実施例1】
【0018】
本発明に係る実施例を添付した図面にしたがって説明する。
本実施例に係る描画システムに使用される装置の構成の概略を図1に示し、本実施例に係る描画システムの構成の概略を図2に示す。
【0019】
描画システム10は、図1に示すように、タブレット11と、モニタ12と、端末装置13とからなり、好ましくはキーボード14を有する。
タブレット11はポインティングデバイスと呼ばれる入力装置の一つである。
ポインティングデバイスとは、モニタ12の画面上で入力位置や座標を示すための入力装置をいう。ポインティングデバイスは、マウス、トラックパッド、トラックボールのように、一の入力位置に対して、移動方向と移動速度を検出して後に入力された他の入力位置を相対的に指定するものと、タッチパネル、タッチスクリーン、タブレット、デジタイザのように、平面状に形成された座標入力面とモニタ12の画面を一対一で対応させて、入力位置を絶対的に指定するものとがある。
スタイラスペン15は、ペン型の入力補助具である。
タブレット11は、座標入力面16を備えた座標入力手段を有している。該座標入力手段は、該座標入力面16をスタイラスペン15のペン先で押圧することにより、該ペン先で指定した入力位置を示す座標に係る信号を出力し、座標入力面16からスタイラスペン15のペン先が離れると当該信号の出力を停止するように形成されている。
なお、スタイラスペン15で座標入力面16を押圧するのではなく、指先で座標入力面16を押圧するようにしても良い。
タブレット11と端末装置13とは、無線で接続されている。なお、有線で接続するようにしても良い。タブレット11の座標入力面16からスタイラスペン15によって入力された入力位置を示す座標に係る信号は、端末装置13を介して、モニタ12へ入力される。そして、モニタ12の画面上では、座標入力面16の座標と対応する座標へカーソルが表示される。
【0020】
端末装置13は、図2に示すように、入力部20と、描画部21と、補正処理部22と、出力部23を備えた制御部24と、外部記録媒体25を有する。
入力部20は、タブレット11から出力された座標入力面16の入力位置を示す座標に係る信号が入力され、当該信号はさらに描画部21に送られる。
描画部21は、入力部20から入力された座標入力面16の入力位置を示す座標に係る信号を漸次記録保存して、複数の座標からなる一次座標群を形成する。該一次座標群に係る信号は出力部23を介してモニタ12へ出力される。
ここで、一次座標群に含まれている座標が一列に並べられているとき、描画部21は、各座標を繋げて該一次座標群に基づいて線を描画する。描画された線は、出力部23を介してモニタ12へ出力される。
これにより、補正処理部22を経ることなく出力された一次座標群に基づく線をモニタ12で表示することができる。
また、一次座標群に基づく線に係る信号は、描画部21で分岐され、補正処理部22へ出力される。
補正処理部22は、描画部21へ入力された一次座標群に係る信号を補正して、二次座標群に係る信号へ自動的に変換するように形成されている。補正処理部22で一次座標群に基づく線を補正して形成された二次座標群は、直線を形成する。
これにより、タブレット11から自由に入力された一次座標群に基づく線は、二次座標群に基づく直線へ自動的に補正される。
描画部21と補正処理部22は座標に係る信号が双方向通信可能に形成されている。これにより、一次座標群に基づく線に係る信号と、二次座標群に基づく直線に係る信号を描画部21と補正処理部22で自在に通信することができるので、線を直線へ速やかに補正処理し、補正処理した直線を補正処理前の線に戻すことが容易にできる。
出力部23は、描画部21で使用者が任意に選択した、一次座標群に基づく線か、又は補正処理部22で補正した二次座標群に基づく直線をモニタ12へ出力するように形成されている。
【0021】
制御部24は、上記の構成に加えて、タブレット11の座標入力面16の所定位置を示す座標と、モニタ12の画面上の所定位置を示す座標とが、一対一で絶対的に対応するように制御する制御手段を有する。これにより、座標入力面16で指定した入力位置を示す座標を、そのままモニタ12の画面上へ正確に反映させることができる。このとき、モニタ12の画面上の当該入力位置には、カーソルと呼ばれる小さな画像又は図形が表示される。
【0022】
また、外部記録媒体25は、補正前メモリ領域25aと補正後メモリ領域25bを有している。
補正前メモリ領域25aは、描画部21に入力された一次座標群に基づく線に係る信号に関する情報が記録保存されている。
補正後メモリ領域25bは、補正処理部22で補正された二次座標群に基づく直線に係る信号に関する情報が記録保存されている。
【0023】
上記の構成を有する描画システム10は、タブレット11から自由に入力された一次座標群に含まれる各座標を同一直線上へ整列するように補正して二次座標群に基づく直線を形成する。当該補正方法を、添付した図面にしたがって以下説明する。
【0024】
図3に示すように、描画部21は、描画手段100を有し、補正処理部22は、直線入力支援手段130を有している。
描画手段100は、自由線形成手段110と、直線形成手段120を有する。
自由線形成手段110は、図5(a)に示すように、タブレット11の座標入力面16で指定した入力位置の座標に係る信号を、モニタ12の画面上へそのまま出力して表示することができるように形成されている。そして、自由線形成手段110は、タブレット11の座標入力面16をスタイラスペン15で押圧し、該スタイラスペン15を座標入力面16上で摺動させたとき、該スタイラスペン15によって複数の座標を指定したものとみなし、該複数の座標を一列に並べた一次座標群を形成する。そして、自由線形成手段110は、一次座標群に含まれた座標同士を互いに繋いで線を形成する。以下、一次座標群に基づく線を自由線nという。
直線形成手段120は、自由線nに基づいて図5(b)に示すように、直線lを形成する。
該直線形成手段120は、直線入力支援手段130との間で双方向通信可能に形成されている。これにより、自由線nに係る信号は直線形成手段120から直線入力支援手段130へ向かって送信され、自由線nに係る信号を補正変換して形成した直線lに係る信号は直線入力支援手段130から直線形成手段120へ向かって送信される。
【0025】
直線入力支援手段130は、図3に示すように、描画部21のメインルーチン上で実行される直線形成手段120に対し、サブルーチンとして直線lを自動的に形成するように設けられている。そのため、図4に示すように、直線形成手段120から一次座標群に基づく自由線nに係る信号が入力されたとき、該信号を補正する処理を開始し(ステップS500及びステップS505)、二次座標群に基づく直線lへ変換する補正を確定し(ステップS555)、補正した直線lに係る信号を直線形成手段120へ送信する。そして、直線入力支援手段130は、直線形成手段120の支援を終了したとして直線lを形成する処理を終了する(ステップS565)。
【0026】
直線入力支援手段130は、図3に示すように、始点認証手段140と終点決定手段150を有する。
始点認証手段140は、タブレット11の座標入力面16で最初にスタイラスペン15で押圧した入力位置を始点と認証するように形成されている。始点が認証された後、スタイラスペン15を座標入力面16上で押圧したまま滑動させると図5(a)に示すように、カーソルが移動し、座標入力面16と一対一で対応するモニタ12の画面上には、自由線nが描かれる。
終点決定手段150は、タブレット11の座標入力面16でスタイラスペン15が最後に停止した入力位置を終点と決定するように形成されている。
本実施例は、後述するように自動的に入力位置を終点か否か判定する終点判定手段160を設けたが、スタイラスペン15に設けたボタンを押したり、該スタイラスペン15のペン先を押し込むような特殊な操作をすることによって、終点を決定するようにしても良い。
【0027】
ここで、始点認証手段140と終点決定手段150は、図4に示すように、入力された一次座標群に基づく自由線nに対し、始点と終点との距離が所定の距離以上離れているか否か判断する処理を行う(ステップS510)。予め設定した閾値以上に離れていない場合は、入力における誤差範囲と認定して、ステップS520を経て直線入力手段130を終了する(ステップS565)。予め設定した閾値以上に離れている場合は、終点を判定するための信号処理(ステップS515)へ移行する。
【0028】
終点決定手段150は、さらに終点判定手段160を有している。
終点判定手段160は、タブレット11の座標入力面16でスタイラスペン15が停止した入力位置を終点か否か判定するように形成されている。
当該判定はスタイラスペン15が座標入力面16を押圧して静止している時間によって行われ、終点判定手段160は、該静止時間を計測するために計時手段170aを有し、静止時間と所定の時間を比較するための比較手段170bを有している。
ここで、終点判定手段160は、図4に示すように、スタイラスペン15のペン先が座標入力面16の所定の範囲内に収まっているか否か判断する処理を行う(ステップS515)。予め設定した範囲内に収まっていない場合は、終点では無いと判断し、ステップS520を経て直線入力手段130を終了する(ステップS565)。予め設定した範囲内に収まっている場合は、計時手段170aに係る信号の処理(ステップS525)へ移行する。これにより、座標入力面16を押圧するペン先のブレを一定範囲まで許容することができ、完全に停止していなくても一応終点であると目星をつけることができる。
【0029】
計時手段170aは、端末装置13に内蔵される時計と同期し、描画システム10全体の時間を計るシステム時計26と、終点でスタイラスペン15の静止時間をカウントするカウンタ27とを有する。そして、ステップS515で終点であろうと目星をつけた位置に停止しているスタイラスペン15の静止時間を計測する処理を行う(ステップS525)。
【0030】
ここで、タブレット11が有する座標入力手段は、スタイラスペン15のペン先と座標入力面16とが接しているとき、入力位置を示す座標に係る信号を出力する。一方、該座標入力手段は、スタイラスペン15のペン先が座標入力面16から離れたとき、入力操作が中止されたものとして、タブレット11から出力される入力位置を示す座標に係る信号を遮断する。
そのため、直線入力支援手段130は、スタイラスペン15の静止時間の計測中、入力位置を示す座標に係る信号の入力が継続しているか否かを判定する処理を行う(ステップS530)。言い換えれば、スタイラスペン15のペン先が座標入力面16に接しているか否かを判定する処理を行う。接している場合には、比較手段170bで静止時間と所定の判定時間を比較する処理(ステップS535)へ移行する。一方、入力位置を示す座標に係る信号が遮断された場合、自由線nを二次座標群に基づく直線lへ変換する補正は中止され、自由線nが出力される(ステップS520)。
【0031】
比較手段170bは、計時手段170で計時されたスタイラスペン15の静止時間と、閾値となる所定の判定時間とを比較するように形成されている(ステップS535)。図4に示すように、静止時間が閾値を超えるまでは、後述する補正前報知手段210で補正前であることが報知され(ステップS540)、補正されるとしたならば形成される仮直線vをプレビュー表示する処理(ステップS545)が繰り返される。静止時間が閾値を越えたとき、終点判定手段160は、スタイラスペン15が停止した入力位置を終点と判定し、仮直線vを直線lに確定するために信号を補正する処理(ステップ550)へ移行する。
これにより、直線入力支援手段130は、始点認証手段140で認証された始点と、終点判定手段160で判定され、終点決定手段150で決定された終点を有する。
【0032】
さらに、直線入力支援手段130は、座標整列手段180を有する。
座標整列手段180は、始点と終点との距離を測定する距離測定手段190と、始点と終点との間を一直線に結ぶように仮直線vを設定する直線設定手段200とを有する。
距離測定手段190は、図4に示した始点と終点とが接近しすぎていることによる入力誤差を排除する処理を行うステップS510とは異なり、認証された始点と、決定された終点を最短で結ぶ直線を引くために、始点と終点との距離を測定するように形成されている。
測定された最短距離が直線設定手段200で仮直線vに設定される。設定した仮直線vは、スタイラスペン15の静止時間の判定中にモニタ12の画面上へ表示するために出力される(ステップS545)。
そして、座標整列手段180は、図4に示すように、終点を決定した後(ステップS535)、設定された仮直線v上へ、始点と終点との間に描かれている自由線nを構成する複数の座標を移動させて整列する信号の補正処理を行う(ステップS550)。その後、座標整列手段180は、一次座標に基づく自由線nに係る信号を二次座標群に基づく直線lに係る信号へ補正する処理を確定する(ステップS555)。これにより、自由線nは直線lに補正される。
ここで、モニタ12の画面上では、図5(a)に示すように、自由線nと共にプレビュー表示されていた仮直線vが、図5(b)に示すように、直線lに描き直されるように表示される。
【0033】
信号の補正を確定する処理(ステップS555)は、終点判定手段160で判定された終点候補が、終点決定手段150で終点と決定された後に確定される。そのため、終点判定手段160で終点が判定されている間(ステップS535)は、直線設定手段200で設定した仮直線vがモニタ12の画面上へ表示されるに留まり、終点が決定されてはじめて、仮直線vは直線lとして確定する(ステップS555)。そのため、仮直線vが表示されている間は、スタイラスペン15のペン先を座標入力面16から離して、入力操作を停止させたり(ステップS530)、当該ペン先を所定の範囲外にズラしたり(ステップS515)することによって、仮直線vをキャンセルして、そのまま自由線nを表示するようにしたり(ステップS520)、新たに直線を引きなおす(ステップ500)ことができる。
【0034】
上記のように、自由線nは、座標入力面16上でスタイラスペン15が停止した入力位置が所定時間経過後に終点と判定されたとき、自動的に直線lへ補正される。
このとき使用者によっては補正を望まない場合もあることから、直線入力支援手段130は、自由線nが直線lにこれから補正されることを報知する補正前報知手段210と、自由線nが直線lへすでに補正されたことを報知する補正後報知手段220を有する。
【0035】
補正前報知手段210は、図6に示すように、自由線nが直線lへ整列補正される前に、使用者へこれから補正がなされることを報知するように形成されている。
補正前報知手段210は、プレビュー表示手段230と補正前視覚効果発生手段240とを有する。
プレビュー表示手段210は、図4に示すように、補正前報知手段210に係る信号の処理(ステップS540)と共に、仮直線vをモニタ12の画面へ表示することができるように信号の処理を行う(ステップS545)。これにより、直線設定手段200で形成された仮直線vを、描画部21と出力部23を介して出力し、モニタ12で表示することができる。
プレビュー表示の類型としては、図6(a)に示すように、自由線nと仮直線vを共に示すようにしても良いし、或いは仮直線vを単独で示すようにしても良い。
補正前視覚効果発生手段240は、図6(b)に示すように、座標整列手段180で直線lが決定される前、すなわち終点判定中にモニタへプレビュー表示される仮直線vの終点近傍で点滅するアイコンPEを表示するように形成されている。
該アイコンPEは、終点判定手段160のカウンタ27と連動して点滅や振動、色の変化といった視覚効果を発生するように表示される。これにより、自由線nが直線lへ変換補正されることを、終点に係る座標の入力位置が確定して補正が終了する前に報知することができる。
また、アイコンPEでカウンタ27によるカウントダウンを数字で表示しても良い。これにより、座標の移動が確定するまでの大まかな時間を報知することができるので、使用者は、自由線nにするか、直線lに補正するか選択する時間を得ることができる。ここで、座標の移動が確定する前、すなわち終点判定手段160で終点判定中に、スタイラスペン15をさらに移動させたり、スタイラスペン15のペン先をタブレット11の座標入力面から離したりすると終点判定はキャンセルされ、終点に係る座標の入力位置の確定を回避することができる。
また、補正前視覚効果発生手段240によって、仮直線v自体を点滅させたり、振動させたりしても良い。さらにまた、終点判定中に、所定のメロディを端末装置13に設けたスピーカ(図示略)から流すようにしても良い。
【0036】
補正後報知手段220は、図4に示すように、ステップS150で直線lが確定した後に、当該補正したことを報知する処理を行う(ステップS560)そして、図7に示すように、自由線nが直線lへ変換補正された後に、使用者へすでに補正がなされたことを報知するように形成されている。
補正後報知手段220は、補正後視覚効果発生手段250を有する。
補正後視覚効果発生手段250は、座標整列手段180で直線lが決定されたとき、すなわち、終点決定手段150で終点が決定されたとき、又はその後、モニタ12へ表示される直線lに視覚効果AEを付与する。該視覚効果AEは、直線の色を変えたり、点滅させたりするか、又はモニタ12の画面全体を点滅させたりするように形成されている。
また、直線lが形成されたときに、所定のベル音やブザー音を端末装置13に設けたスピーカ(図示略)から流すようにしても良い。
ここで、直線lの終点近傍に直線lへの補正を取り消すためのキャンセル用アイコンを表示するようにしても良い。これにより、終点に係る座標の入力位置が確定し、自由線nが直線lへ自動的に補正されたことを取り消して自由線nへ戻すことができる。
なお、視覚効果AEはこれ等の特殊効果に限定されず、プログラム等によって、任意に設定を変更することができる。
これにより、自由線nが直線lに補正されたことを報知することができるので、使用者は、自身が描いた自由線nが自動的に直線lへ補正されたことを容易に理解することができる。
【0037】
上記のように、直線入力支援手段130は、自由線nを直線lに自動的に補正するように構成されている。さらに、補正した直線lに基づいて、直線入力支援手段130は、実線で表示される直線以外の線を選択することができる線種選択手段260を有する。
ここで、線種とは、実線、二重線や波線、点線や破線、鎖線のように線の種類と、線の太さが漸次変化するような線をいう。
線種選択手段260は、補正が確定した後時系列依存手段260aと入力依存手段260bとからなる。
【0038】
時系列依存手段260aは、図8に示すように、計時手段170aでスタイラスペン15の静止時間を計時して終点を判定した後、そのままスタイラスペン15を停止させていた場合に、線種が次々に変更される状態を示したものである。これにより、スタイラスペン15を座標入力面16から離した時間に応じて、所定の線種を自在に選択することができる。
このとき、線種の選択に係る信号の処理は、図4に示したように、スタイラスペン15の静止時間を計測し(ステップS525)、該静止時間が閾値を超えたか否か判断する処理(ステップS535)と並行して行われている。
ここで、時系列依存手段260aを設定している場合には、スタイラスペン15のペン先が座標入力面16から離れたとき、自由線nを直線lに補正する処理をキャンセルする処理(ステップS530)は、自由線nを出力するステップS520ではなく、ペン先が座標入力面16に接してから離されるまでの時間に応じて、所定の線種をプレビュー手段210に挙げる処理が行われる。プレビュー表示手段210は、仮直線vを所定の線種へ置き換えてモニタ12の画面へ表示する。
【0039】
また、時系列依存手段260aは、図9に示すように、自由線nを直線lに変換する補正が確定した(ステップS555)後に直線lに基づいて、線種を変更するようにしても良い。図9(b)は、終点決定手段150で終点が決定された後、直線lの終点近傍に線種選択メニューに係る複数のアイコンc1,c2,c3,c4を表示したものである。線種選択用アイコンc1,c2,c3,c4のうち、所望する線種を示すアイコンをスタイラスペン15で座標入力面16から指定したとき、指定された線種へ変更することができる。
なお、線種選択メニューに係る複数のアイコンc1,c2,c3,c4は、終点判定手段160で終点を判定している間であって、補正が確定する前に予め表示しておくようにしても良い。
【0040】
入力依存手段260bは、座標入力面16で入力位置が指定されるときの態様に依存するように形成されている。
具体的には、スタイラスペン15を座標入力面16へ圧接するときの押圧力の違いや、該スタイラスペン15のペン先15aの傾きの違いをタブレット11に設けた感圧センサで検知して、それらの入力状態の違いによって線種を自在に選択することができるように形成されている。
図10(a)は、終点の入力位置における押圧力が、始点の入力位置における押圧力よりも大きいときに、モニタ12の画面上では直線lの線の太さが漸次太くなるように表示されることを示したものである。
また、図10(b)は、終点の入力位置における押圧力が、始点の入力位置における押圧力よりも大きいとき、直線形成手段120から出力された直線lがモニタ12の画面上では波線として表示されることを示したものである。
図11(a)と図11(b)は、ペン先を右に傾けると直線形成手段120から出力された直線lがモニタ12の画面上では波線として表示され、左に傾けると当該直線lがモニタ12の画面上では二重線として表示されることを示したものである。
上記のように、スタイラスペン15の操作次第で様々な線種を自在に選択指定することができるので、使用者は、所望する線種を容易に選択することができる。
さらにまた、上記の時系列依存手段260aと入力依存手段260bを適宜組み合わせて、例えば、ペン先を右に傾けながら、タブレット11の座標入力面16を押圧している時間にしたがって、直線lの線種が順次切り替わり、ペン先を左に傾けると、一つ前の線種に戻るといった線種選択手段260を形成することもできる。
【0041】
また、線種選択手段260によれば、座標整列手段180で直線lを形成した後、該直線lをベースに線種を選択させるようにしたので、例えば、二重線の線間の間隔を均一にすることができ、点線、鎖線或いは破線の実線部分と隣り合う該実線部間の間隔を均等にすることができ、波線の場合は振幅や波長を均等にすることができるので、フリーハンドでそのような線を描く場合と比べて、綺麗な線をモニタ12の画面上へ表示することができる。
【0042】
本実施例に係る描画システム10によれば、入力された複数の座標からなる一次座標群に基づく自由線nについて、該自由線nの始点を自動的に認証し、さらに終点を自動的に決定するようにした。さらに、始点と終点に挟まれた複数の座標を自動的に整列させて二次座標群を形成するようにした。そして、自由線nを二次座標群に基づく直線lへ自動的に変換補正するようにした。
これにより、フリーハンドでは描きにくい直線を容易に描画することができるので、描画システム10の使い勝手を良くすることができる。
また、自由線nを直線lに自動的に補正するとき、又は補正した後に、直線lの終点近傍で視覚効果をもたらすアイコンPEや直線l自体に附加した視覚効果AEによって報知するようにしたことにより、使用者は、描いた自由線nが直線lに補正されることを容易に認識することができる。
さらに、直線lをベースとして様々な線を選択することができるようにしたことにより、使用者は、特定の操作を経ることなく、所望する線をモニタ12の画面上へ表示させることができる。
なお、本実施例はタブレット11とスタイラスペン15を使用したが、これに限定されるものではなく、マウスに代表される他のポインティングデバイスを使用して描画した場合も含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10…描画システム、
11…タブレット、12…モニタ、13…端末装置、14…キーボード、15…スタイラスペン、
16…座標入力面、
20…入力部、21…描画部、22…補正処理部、23…出力部、24…制御部、
25…外部記録媒体、25a…補正前メモリ領域、25b…補正後メモリ領域、26…システム時計、27…カウンタ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタと、
該モニタの画面上での入力位置或いは座標を指定し、又は前記モニタの画面上に表示されたカーソルを任意の位置へ移動させる座標入力手段を有するポインティングデバイスと、
該ポインティングデバイスの移動距離及び方向と、前記カーソルの移動距離及び方向とを対応付けるように制御する制御手段と、
前記座標入力手段で連続入力した複数の座標を一列に並べた一次座標群に基づいて、前記モニタの画面上で前記カーソルの軌跡の線を描画する描画手段とを備えた描画システムであって、
前記描画手段は、前記一次座標群に基づいて形成される線を直線に補正する直線入力支援手段を有し、
該直線入力支援手段は、始点認証手段と終点決定手段と座標整列手段を有し、
前記始点認証手段は、前記座標入力手段で入力位置を指定した最初の座標を始点として認証し、
前記終点決定手段は、前記座標入力手段で入力位置を指定した最後の座標を終点と決定し、
前記座標整列手段は、前記一次座標群が有する複数の前記座標を前記始点と前記終点を結ぶ同一直線上へ整列させて二次座標群を形成して、
前記描画手段で前記一次座標群に基づく線を描画したとき、当該線が前記二次座標群に基づく直線へ補正されるようにしたことを特徴とする描画システム。
【請求項2】
前記終点決定手段は、終点判定手段を有し、
該終点判定手段は、前記座標入力手段で入力位置を指定したとき、該入力位置が終点か否かを判定し、
前記終点判定手段は、計時手段と比較手段とを有し、
前記計時手段は、該座標入力手段が指定した入力位置で表示されている前記カーソルの静止している時間を計時し、
前記比較手段は、前記計時手段で計時された前記カーソルの静止時間と、閾値となる所定の時間とを比較して、
前記静止時間が前記閾値を超えたとき、前記終点判定手段が前記入力位置を終点と判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の描画システム。
【請求項3】
前記直線入力支援手段は、補正前報知手段を有し、
該補正前報知手段は、前記座標整列手段が前記一次座標群に基づく線を前記二次座標群に基づく直線へ補正する前に、該補正がこれからなされることを報知するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の描画システム。
【請求項4】
前記直線入力支援手段は、補正後報知手段を有し、
該補正後報知手段は、前記座標整列手段が前記一次座標群に基づく線を前記二次座標群に基づく直線へ補正した後に、該補正がすでになされたことを報知するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の描画システム。
【請求項5】
前記直線入力支援手段は、線種選択手段を有し、
該線種選択手段は、前記座標整列手段が前記一次座標群に基づく線を前記二次座標群に基づく直線へ補正する前或いは補正した後に、補正される直線或いは補正された直線に基づいて、前記モニタの画面上で表示される線の線種を選択可能にするようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の描画システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−185694(P2012−185694A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48593(P2011−48593)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】