説明

座席

【課題】背当をリクライニングさせたときに座も傾動して座り心地が良好に保たれるだけでなく、座の傾動の程度や、リクライニングさせるときの押圧力及び復帰させるときの付勢力を最適化することができ、座クッション部分を薄くすることができ、1人掛座席を効率的に回転させることができる座席を提供する。
【解決手段】四角環状の剛性枠32に弾性網30が張設されてなる弾性補助部材31を座枠19に取り付け、弾性網30の上に弾性多孔体よりなる座クッションを設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物(バス、鉄道車輌、航空機、船舶等)、劇場、映画館その他で使用される座席に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(1)背当をリクライニングさせることができる座席においては、リクライニング後の背当と座との間の開き角によって、座り心地や長時間着座した際の疲労度が異なってくる。背当をリクライニングさせても座の角度が変わらないタイプでは、前記開き角が大きくなるため、座り心地が大きく変化したり、身体が前方にずれやすくなったりし、もって疲労度が大きくなることがある。そこで、背当をリクライニングさせると座もその後部が下降するように傾動して、前記開き角が大きくならないようにしたタイプが種々開発されている。図9に示す座席51は、座枠52の前部側の座枠基軸53を支点にして後部側が上下動する座枠52と、座枠52の後端よりもやや前方に設けた背当基軸54を支点にして前後方向に起倒する背当枠55とを備えており、背当枠55と座枠52とは背当基軸54より後方に設けた連携軸56で回動可能に連結されているため、背当枠55をリクライニングさせると座枠52の後部側が下降する。背当枠55はガススプリングなどの復元機構により、リクライニングから復帰させる方向に付勢されて原位置へ復帰する(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献1及び特許文献2によれば、座枠基軸53、背当基軸54及び連携軸56の前後方向の相対的位置関係については、上記のとおりに読み取ることができる。しかし、これらの各軸53,54,56の前後方向の絶対的位置については明細書に記載がないため、図面からおよその位置を推し量るしかないところ、本発明者がその図面どおりに実施してみても、各軸53,54,56の絶対的位置及び相対的距離の要因が複数あり、それぞれの要因が互いに影響しあうので、背当をリクライニングさせるときの押圧力及び復帰させるときの付勢力や、座枠の傾動の程度を最適に設定することが非常に難しいことがわかった。
【0004】
(2)次に、座り心地の面から、座クッションの弾性を補助する目的で、座枠に、複数のバネ(例えば、特許文献3参照)や、伸縮可能な均一な弾性体(例えば、特許文献4参照)や、不均一に一体成形された高弾性体のゴム材(例えば、特許文献5参照)等の弾性補助部材を張設し、その上に座クッションを設置した座席が知られている。
【0005】
しかし、これらの弾性補助部材は、重量が大きい、座枠への取付構造が複雑である、コストが高い、という問題のいずれかを有しており、これらの問題を全て解消したものは見当たらなかった。
【0006】
(3)次に、鉄道車輌用座席においては、車輌の方向転換に伴って座席も方向転換させるために、座席を垂直軸の周りに回転可能に設け、手動により回転させるようにしたものが多い(例えば、特許文献6参照)。また、モータにより回転させるものもある。
【0007】
手動により回転させる場合、1人掛座席であっても2〜3人掛座席であっても、1台1台を別々に回転させる必要があるが、特に1人掛座席は車輌におけるその総台数が多いため、手間と時間がかかるという問題があった。また、モータにより回転させる場合には、多数台の座席を一斉に回転させることもできるが、それには複雑で高価なモータ設備が必要となる。
【0008】
【特許文献1】実開平2−4444号公報
【特許文献2】実公平5−46691号公報
【特許文献3】実開平2−124052号公報
【特許文献4】実開平5−72250号公報
【特許文献5】特開2001−128783号公報
【特許文献6】特開平6−40334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、下記の参考発明1の目的は、背当をリクライニングさせたときに座も傾動して座り心地が良好に保たれるだけでなく、座の傾動の程度や、リクライニングさせるときの押圧力及び復帰させるときの付勢力が最適化された座席を提供することにある。
本発明の目的は、軽量で、座枠への取付構造が簡単で、コストが低い弾性補助部材を実現して、座クッション部分を薄くすることができる座席を提供することにある。
下記の参考発明3の目的は、方向転換のために1人掛座席を効率的に回転させることができる座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る座席は、以下の(2)の特徴を備える。また、参考発明1、3に係る座席は、以下の(1)又は(3)の特徴を備える。
(1)着席者のヒップポイントを通る鉛直線より前方へ−10〜50mmの距離範囲に背当枠をリクライニング可能に軸支する背当支軸を設け、背当枠を常にはリクライニングから復帰させる方向に付勢する付勢部材を設け、背当支軸を通る鉛直線より前方へ100〜200mmの距離範囲に座枠をその後部が下降及び上昇するよう傾動可能に軸支する座支軸を設け、背当支軸を通る鉛直線より後方へ70〜110mmの距離範囲に背当枠から延びる連結部材が座枠に連結される連結点を設けることにより、着座者が背当枠をリクライニングさせるときには、背当に体重をかけやすくするとともに背当を適度な押圧力で押圧できるようにし、また、背当のリクライニングと連動して連結部材により連結点が押し下げられる座枠はその後部が適度な下降量で下降する反面、前部が極力上昇しないようにし、付勢部材がその付勢力により背当枠をリクライニングから復帰させるときには、適度な押圧力を実現する適度な付勢力によって確実に復帰させることができるようにした座席。ここで、数値で示した各距離範囲は、背当枠をリクライニングさせる前の起立復帰状態とした時の距離範囲である。
【0011】
この座席は、標準体重60kgを中心とする体重45〜100kgの着座者にとって最適な設定としたものである。図1に示すように、本明細書における着席者のヒップポイントは、標準体重60kgの着座者に基づいて、座面より垂直方向で80mm上方、背当面より水平方向で125mm前方の点(座席左右方向の中央)とする。
【0012】
図6のグラフは、着席者のヒップポイントを通る鉛直線から前方へ測った背当支軸21までの距離L1に対する、背当枠18をリクライニングさせたときの「着座感」の関係、また、付勢部材24の付勢力による背当5の復帰に必要な「復帰力」の関係について示したものである。着座感は不足、良の2段階で評価し、復帰力は不足、良、過剰の3段階で評価している。
着座感については、距離L1が−20mmより小さい(ヒップポイントを通る鉛直線より後方へ20mmを越える)と、背当をリクライニングする際に、背当枠18が向かうベクトルの下向き成分が過小となり、(後述するL3が小さくなることと相俟って)座枠19の後部の下降量が過小となることにより、着席者は背当に体重を乗せてリクライニングさせにくく、また、背中と背当とのずれを感じ、背当と座との間の開き角を大きく感じるため、着座感は不足となる。距離L1が−20〜80mmであれば、背当をリクライニングする際に、背当枠18が向かうベクトルの下向き成分が適度になり、(後述するL3が適度になることと相俟って)座枠19の後部の下降量が適度になることにより、着席者は背当に体重を乗せてリクライニングさせやすく、また、背中と背当とのずれを感じず、背当と座との間の開き角を大きく感じないので、着座感は良となる。距離L1が80mmより大きいと、背当をリクライニングする際に、背当枠18が向かうベクトルの下向き成分が過大になり、(後述するL3が過大になることと相俟って)座枠19の後部の下降量が過大になることにより、着座感は不足となる。
復帰力については、距離L1が−10mmより小さいと、付勢部材24の付勢力が適度であってもその付勢力が背当枠18に作用する点に対して背当支軸21が近付くので、復帰力は不足となる。距離L1が−10〜50mmであれば、付勢部材24の付勢力が適度であればその付勢力が背当枠18に作用する点に対して背当支軸21が適度に離れるので、復帰力は良となる。距離L1が50mmより大きいと、付勢部材24の付勢力が適度であってもその付勢力が背当枠18に作用する点に対して背当支軸21が離れすぎるので、復帰力は過剰となる。
よって、着座感と復帰力との双方が良となるL1の範囲は−10〜50mmであるから、言い換えれば、ヒップポイントを通る鉛直線より前方へ−10〜50mmの距離範囲に背当支軸21を設けるということになる。
【0013】
図7のグラフは、背当支軸21を通る鉛直線から前方へ測った座支軸22までの距離L2に対する、座枠19の後部の下降に伴って前部が上昇する程度「前部上昇」の関係、また、付勢部材24の付勢力による背当5の復帰に必要な「復帰力」の関係について示したものである。前部上昇は良、過剰の2段階で評価し、復帰力は不足、良、過剰の3段階で評価している。
前部上昇については、距離L2が80mmより小さいと、座枠19の前部に対して座支軸22が離れるので、前部上昇は過剰となり、着座者の膝下が持ち上がりすぎて着座感が損なわれる。距離L2が80mm以上であれば、座枠19の前部に対して座支軸22が近付くので、前部上昇はあまりないので良となり、着座感が損なわれない。
復帰力については、距離L2が80mmより小さいと、連結部材20の連結点27に対して座支軸22が近付きすぎ、付勢部材24が背当枠18を復帰させる時に併せて座枠19の後部を連結点27で引き上げるのに必要な引上力が過小になるので、復帰力は過剰となる。距離L2が100〜200mmであれば、連結点27に対して座支軸22が適度に離れ、前記引上力が適度になるので、復帰力は良となる。距離L2が200mmより大きいと、連結点27に対して座支軸22が離れすぎ、前記引上力が過大になるので、復帰力は不足となる。
よって、前部上昇と復帰力との双方が良となるL2の範囲は100〜200mmであるから、言い換えれば、背当支軸21を通る鉛直線より前方へ100〜200mmの距離範囲に座支軸22を設けるということになる。
【0014】
図8のグラフは、背当支軸21を通る鉛直線から後方へ測った連結部材20の連結点27までの距離L3に対する、座部4の上面の傾斜角「座面傾斜角」の関係、また、付勢部材24の付勢力による背当5の復帰に必要な「復帰力」の関係について示したものである。いずれも不足、良、過剰の3段階で評価している。
座面傾斜角については、距離L3が70mmより小さいと、座支軸22に対して連結点27が近付きすぎるため、連結点27で座枠19の後部を押し下げても座面傾斜角は不足となり、開き角が大きくなるので着座感が損なわれる。距離L3が70〜120mm、好ましくは、90〜120mmであれば、座支軸22に対して連結点27が適度に離れるため、連結点27で座枠19の後部を押し下げると座面傾斜角は適度となり、良好な着座感が得られる。距離L3が120mmより大きいと、座支軸22に対して連結点27が離れすぎるため、連結点27で座枠19の後部を押し下げると座面傾斜角が過剰となり、ヒップポイントが沈む感じになるので、着座感が損なわれる。
復帰力については、距離L3が50mmより小さいと、付勢部材24が背当枠18を復帰させる時に併せて座枠19の後部を連結点27で引き上げるのに必要な引上力が過小になるので、復帰力は過剰となる。距離L3が50〜110mmであれば、前記引上力が適度になるので、復帰力は良となる。距離L3が110mmより大きいと、前記引上力が過大になるので、復帰力は不足となる。
よって、座面傾斜角と復帰力との双方が良となるL3の範囲は70〜110mm、好ましくは、90〜110mmであるから、言い換えれば、
背当支軸21を通る鉛直線より後方へ70〜110mm、好ましくは、90〜110mmの距離範囲に連結点27を設けるということになる。
【0015】
「付勢部材」は、特に限定されないが、油圧シリンダ、エアシリンダ等の流体圧シリンダを例示できる。流体圧シリンダの場合、その付勢力は特に限定されないが、背当をリクライニングさせるときに必要な体重分を含む適度な押圧力や、適度な復帰力や、流体圧シリンダの入手容易性及びコストを考慮すると、350〜500Nが適当であり、380N〜460Nがより適当である。また、その付勢力は、リクライニング初期とリクライニング終期とで一定の特性でもよいし、変化する特性でもよい。
【0016】
(2)四角環状の剛性枠に弾性網が張設されてなる弾性補助部材を座枠に取り付け、前記弾性網の上に弾性多孔体よりなる座クッションを設置した座席。
【0017】
「弾性網」は、特に限定されないが、例えば繊維製の線状体が編まれてなるもの、例えば繊維製の線状体が縦横に重ねられて接触点で接合されたもの等を例示できる。線状体の材料は、特に限定されないが、ポリエステル、テトロン等を例示できる。弾性補助部材の座枠への取付構造は、特に限定されないが、剛性枠の一辺を座枠の一辺に嵌合構造により係着した後、剛性枠の対辺を座枠の対辺にネジ止めすることにより、座枠に取り付けた構造を例示できる。
【0018】
(3)方向転換のために垂直軸の周りに回転可能に設けた一人掛座席を複数台隣設し、いずれかの1人掛座席を回転させると他の1人掛座席も連動して回転するように前記複数台の一人掛座席の回転を機械的に連動させる連動機構を設けた座席。
【0019】
連動機構は、特に限定されないが、各一人掛座席の垂直軸と共に回転する回転体と、回転体の相互間に掛けられたチェーン、歯付きベルト等の伝動部材とを備えたものを例示できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る座席によれば、軽量で、座枠への取付構造が簡単で、コストが低い弾性補助部材を実現して、座クッション部分を薄くすることができるという優れた効果を奏する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を座席に具体化した形態として図面に基づいて、実施形態を示す。なお、実施形態に記す数値は例示であって、適宜変更できる。
【0022】
図1〜図5は、本発明を鉄道車輌の車輌用座席であって、2台の1人掛座席1(幅約640mm、長さ約670mm、高さ約1150mm)が、脚部2に支えられた基台3上に、750mm〜850mmの間隔をおいて並設されている。1人掛座席1は、クッション材等を設置して設けられた座部4と、座部4に対して約17°リクライニング可能に支持された背当5と、例えば座部4に支持された肘掛6とを含む基本構成を備えている。
この車輌用座席の1人掛座席1は、車輌の進行方向の変更にあわせて、2台の1人掛座席1の方向変換する際に、回転を機械的に連動させる連動機構が設けられている。これは、通路側の脚部2に設けてあるペダル7を踏み、ロックをはずして通路側の1人掛座席1を基台に対し自座席の略中央の垂直軸の周りを回転させることで、他方の1人掛座席1が連動して、基台3に対し他方の1人掛座席1の略中央の垂直軸の周りを回転可能であるということである。
この連動機構の仕組みは、それぞれの1人掛座席1の直下で脚部2及び基台3の内部に、シャフト(図示略)によって脚部2に支持されている一対のギア10と、この一対のギア10と噛み合って一対のギア10を共動させるチェーン11と、チェーン11を張設の際に緩みを持たないようにする一対のスプロケット12、12と、チェーン11にテンションをかけるためのテンションギア13とから構成されている。一対のギア10は、回転円盤14を介して対応する1人掛座席1と回動を共にするようになっている。
【0023】
1人掛座席1の座部4及び背当5を支持する内部の枠は、基枠17、背当枠18、座枠19と連結部材20から構成されている。また、リクライニングをしていない1人掛座席1に着席者(体重約60kg)のヒップポイント23が、座部4より垂直方向で80mm上方、背当面より水平方向で125mm前方の点に存在している。
【0024】
基枠17は、基枠17の下部で基台3上部の回転円盤14に固定されており、ギア10の回転を1人掛座席1に伝える。基枠17の平面形状は略正方形で、側面形状は略へ状になっており、両側面の上端には、背当支軸21が、着席者のヒップポイント23を通る鉛直線より前方へ9.1mmの距離(図1の距離L1)及び、着席者のヒップポイント23を通る水平線より下方へ115.0mmの距離に、背当枠18をリクライニング可能に軸支するように設けられている。また、両側面の前端には座支軸22が、背当支軸21を通る鉛直線より前方へ130.0mmの距離(図1の距離L2)に座枠19をその後部が下降及び上昇するよう傾動可能に軸支するように設けられている。
背当枠18の正面形状は略長方形で、側面形状は下部が前方へ折れ曲がっている略直線状であり、背当枠18の両側面の前端で背当支軸21に軸着されている。また、背当枠18を常にはリクライニングから復帰させる方向に付勢する付勢部材24が、基枠17の後端と背当枠18の略中央部とを連結するように設けられている。
座枠19の平面形状は略正方形で、側面形状は後部がわずかに持ち上がっている略直線状になっている。座枠19の両側面の前部側の下方に向けて設けられている座支軸取付部26に座支軸22が軸着されている。また、座枠19の両側面の後端から上方に向けて設けられている連結部材取付部28には、背当枠18の両側面の折れ曲がり部から延びる連結部材20が連結点27で軸着されている。この連結点27は、リクライニングをしていない態様時に背当支軸21を通る鉛直線より後方へ92.2mmの距離(図1の距離L3)に設けられている。
【0025】
ヒップポイント23を通る鉛直線より前方に背当支軸21が設けられているので、着座者が背当枠18をリクライニングさせるときには、背当5に体重をかけやすくするとともに背当5を適度な押圧力で押圧できるようにしている。また、背当5の背当支軸21が支点となっておこるリクライニングと連動して、連結部材20により連結点27が押し下げられる座枠19は、座支軸22が支点となってその後部が適度な下降量で下降する反面、前部が極力上昇しないようにしている。
付勢部材24がその付勢力により背当枠18をリクライニングから復帰させるときには、適度な押圧力を実現する適度な付勢力によって確実に復帰させることができるようにしている。本実施形態においては、付勢部材24の特性として、押し始めには412N、最大で441Nとなっている。
【0026】
リクライニングをしていない1人掛座席1は、座部4の上面が水平面に対して8°上方に傾斜しており、背当5の前面の略中央部が垂直面に対して21°後方に傾斜している態様である。最大の17°後方へリクライニングした際には、座部4の上面が水平面に対して15°上方に傾斜した態様になる。よって、座支軸22を支点として、リクライニングをしていない態様から、座部4の上面の前部側が7°上昇し、座部4の上面の後部側が下降していることになる。
【0027】
座部4の内部には、四角環状の剛性枠32の全周に渡って網目に十分に接着樹脂が入り込むように樹脂接着された弾性網30が、張設されてなる弾性補助部材31を、座枠19に内接するように取り付けられている。その弾性網30の上に弾性多孔体よりなる厚さ約50mmの座クッション37が設置されている。この弾性補助部材31の上面には1人掛座席1の左右方向に平行の2本の面ファスナー38(例えば、商品名ベルクロテープ)の一方の面が、剛性枠32に弾性網30が張架される前に縫い付けられており、他方の面は座クッション37の下面の対応する箇所に配置されている。
【0028】
座枠19に対する弾性補助部材31の取り付け方は、まず、座枠19の後部枠の上面に設けられ、座枠19の内方に突出している断面下向き鉤状の第一取付部33と、座枠19の後部枠の下面に設けられ、座枠19の内方に突出している一対の第二取付部34との間に、弾性補助部材31の剛性枠32の後部枠31aを嵌合構造により係着する。その後、座枠19の前部枠の側面に設けられ、座枠19の内方に突出している一対の第三取付部35の上に、剛性枠32の対辺の前部枠31bを設置する。最後に、弾性補助部材31の上部から、座枠19の前部枠の上面にネジ止めする留め金具36を座枠19の内方に突出し、弾性補助部材31の剛性枠32の上面を押さえつけるように取り付けて、弾性補助部材31の前部枠31bが第三取付部35と留め金具36とで狭持され、弾性補助部材31が座枠19に取り付けられる。
【0029】
以上のように構成された車両用座席によれば、以下の(1)(2)(3)(4)の効果が得られる。
(1)ヒップポイント23、背当支軸21、座支軸22及び連結点27の位置関係と付勢部材24の付勢力を最適化することで、リクライニングした際に、着席者の座部の着座感、背当枠の復帰力、座枠の前端の上がり、座面傾斜角等が好ましい状態となり、安定した座り心地を保てる。
(2)弾性補助部材31を座部4の内部に設置することで、その上部に設ける座クッション37を薄く軽量化することができる。また、弾性補助部材31の上面と座クッション37の下面とに対応する2対の面ファスナー38を設けることで、着席者の着席・立席、リクライニングの際の着席者の動作等による弾性補助部材31とクッション37とのずれを防止している。
(3)弾性補助部材31が、嵌合による係着とネジ止めによって、簡単に座枠19に取り付けられることができる。
(4)2台が並設されている1人掛座席1が、前後に列設されている場合において、1人掛座席1毎の軸で回転可能に構成し、2台を基台内でギアとチェーンで連携させることで、前後に列設されている座席同士が干渉せず、並設された1人掛座席1を連動して効率的に、回転させることができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)1人掛座席ではなく、2人掛座席のそれぞれの座席の内部枠の構成に用いられること。
(2)付勢部材を電動式にすること。その際、ヒップポイント、背当支軸、座支軸及び連結点の位置関係は同様である。
(3)3台の1人掛座席が同じ基台に並設されている場合に、一台の1人掛座席を回転させると、基台内に設けられたギアとチェーンを用いて、残りの2台の1人掛座席が連動して回転する回転装置を備えること。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を具体化した実施形態の座席において、背当リクライニング前の背当枠、座枠、連結部材等を示す部分側面図である。
【図2】同じく背当リクライニング後の背当枠、座枠、連結部材等を示す部分側面図である。
【図3】同座席を構成している基枠、背当枠、座枠等の分解斜視図である。
【図4】同座枠に対する弾性補助部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【図5】同座席(1人掛座席)を2台連結した例の分解斜視図である。
【図6】同座席において、着席者のヒップポイントを通る鉛直線から前方へ測った背当支軸までの距離に対する着座感の関係、また背当の復帰力の関係について示したグラフである。
【図7】同座席において、背当支軸を通る鉛直線から前方へ測った座支軸までの距離に対する座枠の前部上昇の関係、また背当の復帰力の関係について示したグラフである。
【図8】同座席において、背当支軸を通る鉛直線から後方へ測った連結点までの距離に対する座面傾斜角の関係、また背当の復帰力の関係について示したグラフである。
【図9】従来例に係る座席の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 1人掛座席
3 基台
4 座部
5 背当
10 ギア
11 チェーン
17 基枠
18 背当枠
19 座枠
20 連結部材
21 背当支軸
22 座支軸
23 ヒップポイント
24 付勢部材
27 連結点
30 弾性網
31 弾性補助部材
32 剛性枠
37 座クッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角環状の剛性枠に弾性網が張設されてなる弾性補助部材を座枠に取り付け、前記弾性網の上に弾性多孔体よりなる座クッションを設置した座席。
【請求項2】
前記弾性補助部材は、前記剛性枠の一辺を前記座枠の一辺に嵌合構造により係着した後、前記剛性枠の対辺を前記座枠の対辺にネジ止めすることにより、前記座枠に取り付けた請求項1記載の座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−183429(P2008−183429A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115185(P2008−115185)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【分割の表示】特願2002−269544(P2002−269544)の分割
【原出願日】平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願人】(000003517)天龍工業株式会社 (17)