説明

圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質から顆粒及び錠剤を製造する方法

【課題】できるだけ少量の結合剤を用いて、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質から高い硬度の錠剤を得ること。
【解決手段】圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質に対し、微細化された造粒用結合剤を均一に付着させる工程;及び造粒用結合剤を付着させた機能性物質の粒子同士を接触させることにより造粒を行う工程;を包含し、両工程は同時に行われてもよい、顆粒の製造方法であって、該造粒用結合剤が水溶性セルロース誘導体である顆粒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質から顆粒及び錠剤を製造する方法に関し、特に圧縮成形性に劣るグルコサミン粉末からその含有率及び錠剤硬度が流通に十分耐えうる錠剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や健康食品の有効成分である機能性物質を摂取する際の剤形としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等がある。このうち錠剤は、取扱いや服用が容易であり、もっともよく使用されている。
【0003】
一般に、錠剤は、機能性物質と、結合剤、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤等の任意成分とを配合した混合粉末(場合により、水および/または有機溶媒を加えて造粒し、造粒した顆粒)をホッパーからこれを打錠機の回転盤の臼中に定量的に流し、上杵、下杵で圧縮することにより製造される。
【0004】
錠剤はこのように圧縮して成形される。そのため、機能性物質の粉末が本来的に圧縮成形性に劣る性質を有する場合は、その比率が高くなればなるほど、適当な硬度の錠剤に成形することが困難であり、その為、結合剤を増量して圧縮成形性を補う必要がある。ここで、圧縮成形性とは、粉末に圧力をかけた際に粉末の粒子同士が相互に結合する性質を示し、無定形の粉末を特定の形状に押し固めることが可能な特性をいう。
【0005】
しかし、錠剤中に含まれる結合剤が増量されると、対応して錠剤中の機能性物質の含有率が減少してしまう。逆に、機能性物質の含有率を高めるために結合剤の使用量を減らすと、錠剤の硬度が所望の水準以下に低下する。
【0006】
特許文献1には、打錠加工に適さないグルコサミンの結晶粉体から、打錠加工に適した物性を有するグルコサミン顆粒を得ることができ、このグルコサミン顆粒を用いることにより、通常の圧縮成形によって、均質で適度に高い硬度を有するグルコサミン錠剤を得る技術が記載されている。
【0007】
しかし、この技術においても、グルコサミンの結晶粉体を顆粒化し、錠剤に成形する際に比較的多量の結合剤を用いなければならず、製造されているグルコサミン錠剤のグルコサミン含有率は65質量%程度に過ぎない。
【0008】
特許文献2には、プランルカスト水和物を流動化剤と混合して流動化した粉末に水溶性セルロースの水溶液を噴霧して造粒することにより、打錠に適した流動性を示す顆粒を製造する技術が記載されている。しかし、プランルカスト水和物の粉末は付着凝集性を有しており、圧縮成形性に劣るものではない。
【0009】
それゆえ、この技術では結合剤を増量して圧縮成形性を補う必要がなく、少量の結合剤で錠剤の高い硬度を達成する必要性が記載されていない。また、錠剤は実際に製造されておらず、錠剤の硬度や有効成分の含有率が高められたことが示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−36644
【特許文献2】特開2007−211005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、できるだけ少量の結合剤を用いて、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質から高い硬度の錠剤を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質に対し、微細化された造粒用結合剤を均一に付着させる工程;及び
造粒用結合剤を付着させた機能性物質の粒子同士を接触させることにより造粒を行う工程;
を包含し、両工程は同時に行われてもよい、顆粒の製造方法であって、
該造粒用結合剤が水溶性セルロース誘導体である顆粒の製造方法を提供する。
【0013】
ある一形態においては、前記水溶性セルロース誘導体はヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0014】
ある一形態においては、前記粉末状の機能性物質はグルコサミンである。
【0015】
ある一形態においては、前記粉末状の機能性物質は粗粒子、及び粗粒子の平均粒度に対して1/3以下の平均粒度を有する細粒子を混合したものである。
【0016】
ある一形態においては、前記粗粒子と細粒子との混合比は、粗粒子100質量部に対して細粒子50〜500質量部である。
【0017】
ある一形態においては、前記機能性物質はグルコサミンであり、粗粒子の平均粒度は180μm以上である。
【0018】
ある一形態においては、造粒用結合剤は、顆粒中の含有量が10質量%以下になるような量で用いられる。
【0019】
また、本発明は、上記いずれかの方法によって得られる顆粒を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記顆粒を含む打錠末を筒状の臼に充填する工程;及び
臼に充填された顆粒を上杵・下杵で圧縮する工程;
を包含する錠剤の製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、上記方法によって得られる錠剤を提供する。
【0022】
ある一形態においては、前記錠剤における、結合剤、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を合計した含有量が10質量%以下である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の錠剤は、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質を含むにもかかわらず、その含有率が高く硬度も高い。つまり、錠剤中の機能性物質以外のいわゆる添加剤の配合率を少なくできるために、機能性物質の含有率を高くすることが出来る。その結果、利用者にとっては錠剤剤形が同一の場合は一日目安量が減る、もしくは一日目安量が同一の場合は錠剤剤形を小さくできる利益が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の錠剤の硬度と打錠圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
顆粒の製造方法及び顆粒
機能性物質とは人体に摂取した後に、体内で意図される作用を奏する物質をいい、医薬品や健康食品でいう有効成分を含む概念である。本願発明の対象となる機能性物質は粉末状の機能性物質であり、特に圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質である。
【0026】
圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質とは、粉末の粒子そのものが相互に結合する性質が本来的に小さく、適当な硬度の錠剤に成形するためには、比較的高い割合で結合剤等を存在させなければならず、その結果、機能性物質自体の錠剤中の含有率を向上させることが困難であるものをいう。具体的には、例えば、従来の錠剤の製造方法では、単体で用いた場合でも錠剤中の含有率を、60%、70%又は75%を越えて増大させることができなかった粉末状機能性物質は圧縮成形性に劣るものに該当する。
【0027】
例えば、グルコサミンは錠剤中の含有率は70%程度が限界とされている。
【0028】
本発明の方法で錠剤化される機能性物質は、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質以外の成分を含んでいてもよい。
【0029】
かかる機能性物質(即ち、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質以外の成分)としては、例えば、カルシウム、キトサン、キチン、ヒアルロン酸、セラミド、コンドロイチン硫酸、N−アセチルグルコサミン、コラーゲン、MSM、赤しょうがエキス、西洋ヤナギ、各種ポリフェノール(りんご由来、茶由来、グァバ由来、松由来、ブドウ由来等)、アミノ酸として、アルギニン、タウリン、グルタミン酸、ヒスチジン、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)などが使用される。また、ヒスチジン、1−メチルヒスチジン、3―メチルヒスチジン、アンセリン、カルノシン、ホモカルノシン、バレニンのようなイミダゾール化合物も併用することができる。その他、オクタコサノール、クエン酸、酢酸、キチンダイマー、キチンペンタマー、キトサンヘキサマー、オリゴグルコサミン、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、トウガラシ、高麗人参、ビール酵母、パン酵母、酵母亜鉛、酵母セレンなどが挙げられる。
【0030】
しかし、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質は、錠剤化の対象となる機能性成分の主成分を構成する。ここでいう主成分とは錠剤化の対象となる機能性成分の60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上を構成している成分をいう。
【0031】
造粒用結合剤とは機能性物質の粒子を造粒する用途に用いられる結合剤をいう。造粒とは機能性物質の一次粒子を複数結合させて、凝集した二次粒子を形成することをいう。顆粒は二次粒子から構成され、その粒子寸法は一般に一次粒子の数十倍から数百倍である。
【0032】
造粒用結合剤は人体に対する安全性に優れ、粉末の粒子同士を結合する能力が高いものが好ましい。また、微細化して粉末の粒子に均一に付着し易いものが好ましい。そのような造粒用結合剤の具体例は水溶性セルロース誘導体である。
【0033】
水溶性セルロース誘導体とは、セルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基またはヒドロキシエチル基等で置換することにより、水素結合を消失させた水溶性高分子である。例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)等が挙げられ、これらを一種以上適宜配合して用いることができる。好ましい水溶性セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。特に好ましい水溶性セルロース誘導体はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0034】
造粒用結合剤は、例えば水又は水性媒体に溶解することにより水性液にして、この水溶液を噴霧することにより微細化する。また、噴霧した造粒用結合剤の水性液を機能性物質の粉末に散布することにより、その粉末の粒子に対して均一に付着させる。その際に、一般には、機能性物質の粉末は流動させて造粒用結合剤の水性液が均一に粒子と接触させられる。機能性物質の粉末は攪拌することにより流動させてよく、また同時に加熱して乾燥させてもよい。機能性物質の粉末に熱風を吹き込んで流動と乾燥を同時に行ってもよい。
【0035】
使用する造粒用結合剤の量は得られる顆粒に対して10質量%以下、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜6質量%、更に好ましくは3〜5質量%となるように調節される。造粒用結合剤の量がこれより多くなると錠剤中の機能性物質の含有率を十分に向上させることが困難になる。また、造粒時間が長くなり、製造には不向きである。
【0036】
次いで、造粒用結合剤を付着させた機能性物質の粒子同士を接触させることにより、これらを相互に付着させて造粒させる。例えば、造粒用結合剤の水溶液を散布しながら機能性物質の粉末を流動させると、造粒用結合剤が付着した機能性物質の粒子同士が接触して、造粒が生じる。この場合、機能性物質の粒子に対し、微細化された造粒用結合剤を均一に付着させることと、造粒用結合剤を付着させた機能性物質の粒子同士を接触させることが同時に行われることになる。
【0037】
粉末状の機能性物質は平均粒度が60〜200μm、好ましくは65〜185μm、より好ましくは70〜170μmである。機能性物質の平均粒度が60μm未満であると凝集性が強くなり粉末が大きな固まりになり易く、粉末が流動せず粒子同士の接触を妨げることになる。機能性物質の平均粒度が200μmを超えると、錠剤に成形する際に粒子間の隙間が大きくなり、錠剤中の機能性物質の含有率を十分に向上させることが困難になる。また、粒子同士の接触面積が小さくなるため、圧縮成形性に劣る顆粒となってしまう。
【0038】
粉末状の機能性物質は、成形された錠剤中にできるだけ密に充填されることが好ましい。錠剤中の機能性物質の含有率を向上させるのに有効だからである。そのためには、例えば、比較的寸法が大きい粗粒子間の隙間に、比較的寸法が小さい細粒子が細密充填されているような充填形態が好ましい。かかる場合、細粒子の粒子径は、理論的には粗粒子の粒子径に対して1/6〜1/3である。
【0039】
細密充填の充填形態を実現するために、粉末状の機能性物質は、粒子寸法が一般的なものよりも大きい粗粒子と、粒子寸法が上記粗粒子間の隙間に細密充填される程度の細粒子とを、混合して用いることが好ましい。細粒子の平均粒度は、好ましくは粗粒子の平均粒度に対して1/3以下、例えば1/6〜1/3、又は1/5〜1/4である。但し、細粒子の平均粒度の下限は特に制限されない。
【0040】
細粒子の平均粒度が粒子の平均粒度に対して1/3よりも大きいと細粒子は粗粒子の間の隙間に細密充填されず、錠剤中の機能性物質の含有率を十分に向上させることが困難になる。
【0041】
尚、細粒子の粒子寸法の精度は厳密である必要はない。例えば、細粒子の平均粒度が粗粒子の平均粒度に対して1/3以上であっても、顆粒を調製し、錠剤に成形する過程で粒子同士が摩擦、圧迫などして粒子寸法が変化し、結果として、細粒子が粗粒子間の隙間に細密充填される程度の大きさであれば許容される。
【0042】
粗粒子の平均粒度は、例えば180〜300μm、好ましくは200〜260μm、より好ましくは210〜240μmとする。粗粒子の平均粒度300μmを超えると細粒子とのバランスが崩れ、圧縮成形性に劣る顆粒となってしまう。また、細粒子の平均粒度は、例えば20〜100μm、好ましくは30〜90μm、より好ましくは40〜80μmとする。
【0043】
ここで、平均粒度とは、その一次粒子の体積平均粒子径(MV)を意味し、例えば一般に用いられているレーザー回折式の粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「マイクロトラック粒度分析計MT3300EX」)により求めることができる。
【0044】
機能性物質の粒子寸法をメッシュで表現すると、粗粒子は、例えば16〜50メッシュ、好ましくは20〜45メッシュ、より好ましくは30メッシュ〜40メッシュを通過した大きさである。また、細粒子は、例えば50〜180メッシュ、好ましくは60〜150メッシュ、より好ましくは80メッシュ〜100メッシュである。ここで、メッシュとは、ふるい網(JIS Z8801)の目の寸法及びこれを通過する粒子の寸法を表す単位である。数値の意味は、ふるい網1インチ当たりの網目の数である。
【0045】
粗粒子と細粒子との混合比は、両方の粒子径を考慮して、粗粒子間の隙間に細粒子が細密充填されるように適宜調整される。一般には、粗粒子100質量部に対して細粒子50〜500質量部、好ましくは100〜400質量部、より好ましくは200〜300質量部である。
【0046】
また、粉末状の機能性物質はかさ密度が0.45〜0.61g/ml、好ましくは0.46〜0.60g/ml、より好ましくは0.47〜0.59g/mlである。機能性物質のかさ密度が0.45g/ml未満であると凝集性が強くなり粉末が大きな固まりになり易く、粉末が流動せず粒子同士の接触を妨げることになる。機能性物質のかさ密度が0.61g/mlを超えると、錠剤に成形する際に粒子間の隙間が大きくなり、錠剤中の機能性物質の含有率を十分に向上させることが困難になる。また、粒子同士の接触面積が小さくなるため、圧縮成形性に劣る顆粒となってしまう。
【0047】
ここで、かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体質量を意味し、体積が既知の容器に粉体を充填して、その質量を測定することにより決定される。かさ密度の測定は、例えば、日本薬局方に説明されている操作に従って行えばよい。
【0048】
粉末状の機能性物質を造粒するのに使用される造粒機には特に制限はなく、例えば、流動層造粒機、撹拌造粒機、押出し造粒機等が使用できる。
【0049】
本発明の方法では、顆粒の物性、機能性物質の含有率に大きな影響を与えない範囲で造粒用副基材を配合してもよく、その場合、粉末状の機能性物質と造粒用副基材とを、造粒前に予め混合した後造粒加工してもよいし、造粒後に添加してもよい。その際、澱粉、デキストリンなどの澱粉分解物、カラギーナン、寒天、アルギン酸、グアーガム、キトサン、キサンタンガムなどの多糖類、砂糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖などの単糖、二糖類、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などのオリゴ糖、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコール、結晶セルロース等を、造粒用副基材として用いることができる。また、前記糖類以外でも、顆粒状製剤の調整に通常の用いられる、増粘剤、乳化剤等の成分を造粒用副基材として用いることができる。
【0050】
これらの造粒用副基材を適宜配合して造粒加工することで、造粒加工及び/又は打錠加工時の生産性を高めることができ、また、顆粒製品の形状安定性を更に改善することができる。造粒用副基材の使用量は特に規定されないが、機能性物質の含有率を低下させない程度に調節すればよい。一般には顆粒中の含有量が20質量%以下、好ましくは10質量%以下になるように、調節される
【0051】
このようにして得られた顆粒は、必要に応じて乾燥し、含有する水や有機溶媒を除去する。乾燥温度は、20〜90℃、好ましくは30〜85℃、より好ましくは65〜80℃である。
【0052】
得られた顆粒は、機能性物質以外の成分の含量が3〜10質量%であり、且つ、嵩比重が25〜40g/mlで、より好ましくは28〜35g/mlである。また、水分含量は3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。更に、顆粒は、16〜22メッシュに適宜整粒してもよい。
【0053】
錠剤の製造方法及び錠剤
乾燥した顆粒は、要すれば、整粒を行い、錠剤を製造するために必要な基材(例えば、結合剤、賦形剤、崩壊剤および滑沢剤等)を加えて打錠末を得、これを圧縮成形して錠剤とする。必要な基材としては、一般に顆粒や錠剤を作るために使用するものを使うことができる。具体的には、澱粉、デキストリンなどの澱粉分解物、カラギーナン、寒天、アルギン酸、グアーガム、キトサン、キサンタンガムなどの多糖類、砂糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖などの単糖、二糖類、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などのオリゴ糖、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、アラビアゴム、寒天、プルラン、微粒酸化ケイ素、α化デンプン、部分α化デンプン、CMC-Ca、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、植物油脂等が挙げられる。
【0054】
これらの基材は、一つまたは二つ以上組み合わせて使用されるが、その機能に応じて打錠用結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤に分けて使うことが望ましい。このように製造した錠剤には、フィルムコーティングまたは糖衣コーティングを施すコーティング工程を適宜設けてもよい。
【0055】
錠剤の製造は、例えば、打錠末を筒状の臼に充填し、臼に充填された顆粒をすりきり板
で一定量にすりきり、上下の杵で圧縮して行われる。打錠機は公知のものがなんらの制限もなく使用することができる。打錠圧は錠剤硬度が流通に十分耐えうる硬度になるように調整すればよい。
【0056】
このようにして得られた錠剤は、機能性物質以外の成分(例えば、結合剤、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤等)を合計した含有率が15質量%以下、より好ましくは例えば5〜10質量%であり、その場合の錠剤硬度が3〜10kgfである。尚、本明細書において、単に「結合剤」と言うときは、造粒用結合剤及び打錠用結合剤の両方を含むものとする。
【0057】
また、上記打錠末には錠剤の硬度を損なわない範囲で圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質以外の機能性物質を配合してもよい。圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質以外の機能性物質には、本発明の顆粒の製造方法を説明した際に例示したものが含まれる。かかる機能性物質の好ましい使用量は、上述の通り、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質が錠剤に含まれる機能性物質の主成分になる範囲である。
【0058】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に断らない限り、用いる材料の比率及び量は質量基準である。
【実施例】
【0059】
実施例1
顆粒の調製
粒子寸法が83メッシュ篩過のグルコサミン粉末(甲陽ケミカル(株)社製「コーヨーグルコサミン80」)及び粒子寸法が42メッシュ篩過のグルコサミン粉末(甲陽ケミカル(株)社製「コーヨーグルコサミン」)を質量比3/1で混合して、造粒用機能性物質とした。造粒用結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製「メトローズSE−06」)を準備し、その8%水溶液を調製して噴霧液を得た。
【0060】
流動造粒装置(株式会社パウレック社製「流動層造粒機MP−01」)を用いて、造粒用機能性物質に噴霧液を均一に散布しながら、常法に従い造粒加工した。その際、給気温度は75℃とし、噴霧液の噴霧速度は6〜10ml/minとした。また、各成分の量は、形成される錠剤を100%として、機能性物質が94.48%、造粒用結合剤が4.17%となるように調節した。
【0061】
得られた造粒物を水分が2%以下になるまで温度80℃にて乾燥し、乾燥後、16もしくは20メッシュ篩を用いて整粒を行いグルコサミン含有顆粒を得た。
【0062】
顆粒のかさ密度の測定
得られた顆粒のかさ密度の測定を行った。かさ密度は、顆粒を100mlの容器にすり切り一杯充填して、重量を測定後、次式によって算出した。
【0063】
嵩比重[g/ml]=グルコサミン顆粒重量[g]/100ml
結果を表1に示す。
【0064】
錠剤の調製
得られたグルコサミン含有顆粒に、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製「セオラスUF−F702」)及び滑沢剤としてステアリン酸カルシウム(堺化学社製)を混合して打錠末を得た。打錠機(畑鉄工所製「HT−AP12SS−U」)を用いて打錠末を打錠加工し、8mm丸φ250mgの錠剤を得た。その際、打錠圧は5〜15kNの範囲で変化させた。また、各成分の量は、形成される錠剤を100%として、結晶セルロースが0.55%、ステアリン酸カルシウムが0.80%となるように調節した。
【0065】
錠剤の硬度の測定
富山産業株式会社製「錠剤破壊強度測定器TH−303MP」を用いて得られた錠剤の硬度を測定した。結果を図1に示す。
【0066】
実施例2〜9
機能性物質(グルコサミン)の粒子構成を表1の「粒子の混合比」の欄に示したように変更すること以外は実施例1と同様にして錠剤を調製し、硬度を測定した。結果を図1に示す。
【0067】
比較例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの代わりに水を噴霧して行い、造粒部にヒドロキシプロピルメチルセルロースを4.72%添加して造粒すること以外は実施例1と同様にして錠剤を調製し、硬度を測定した。結果を図1に示す。
【0068】
比較例2
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの代わりにデキストリン(松谷化学工業株式会社製「パインデックス#100」)を用いること以外は実施例1と同様にして錠剤を調製し、硬度を測定した。結果を図1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1に示されている通り、比較例の錠剤は流通に耐えうる硬度が得られなかった。実施例1、3の錠剤は十分な硬度が得られた。その他の実施例は実施例1、3ほど高くないが流通に耐えうる硬度が得られた。実施例9は、粉末凝集性が強く、流動層造粒機内で流動しない等の製造上の問題があったが、最も高い錠剤硬度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質に対し、微細化された造粒用結合剤を均一に付着させる工程;及び
造粒用結合剤を付着させた機能性物質の粒子同士を接触させることにより造粒を行う工程;
を包含し、両工程は同時に行われてもよい、顆粒の製造方法であって、
該造粒用結合剤が水溶性セルロース誘導体である顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記粉末状の機能性物質がグルコサミンである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記粉末状の機能性物質が粗粒子、及び粗粒子の平均粒度に対して1/3以下の平均粒度を有する細粒子を混合したものである請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
前記粗粒子と細粒子との混合比が、粗粒子100質量部に対して細粒子50〜500質量部である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記機能性物質がグルコサミンであり、粗粒子の平均粒度が180μm以上である請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
造粒用結合剤は、顆粒中の含有量が10質量%以下になるような量で用いられる請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の方法によって得られる顆粒。
【請求項9】
請求項8記載の顆粒を含む打錠末を筒状の臼に充填する工程;及び
臼に充填された顆粒を上杵・下杵で圧縮する工程;
を包含する錠剤の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法によって得られる錠剤。
【請求項11】
結合剤、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を合計した含有量が10質量%以下である請求項10記載の錠剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−285381(P2010−285381A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141165(P2009−141165)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】