説明

口臭抑制用組成物

【課題】口臭抑制効果の高い組成物を提供する。
【解決手段】有機酸とカルシウム化合物を含有する、口臭抑制用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口臭抑制用組成物に関し、特に錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物などの口腔用の口臭抑制用組成物する。
【背景技術】
【0002】
歯周病原因菌は代謝によってVSC(揮発性硫黄化合物)を産生することが知られている。口臭の主な原因はVSCと言われており、口臭の抑制にはマスキング(対症療法)と歯周病原因菌の静菌(原因療法)がある。歯周病原因菌を静菌して口臭を抑制する技術として、抗菌剤 (特許文献1〜3)、ビフィズス菌(特許文献4)、乳酸菌(特許文献5)を用いる方法が知られている。
【0003】
これまでの技術では、天然物由来の新規物質や新菌株による歯周病原因菌の静菌が殆どであるため、その安全性についての情報の蓄積が不十分である。また、菌叢が変化して口腔内環境のバランスが悪くなることや、我々にとって有用な口腔内細菌に対しても害を与えることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-215301
【特許文献2】特開2009-209065
【特許文献3】特開2009-137869
【特許文献4】特開2008-182931
【特許文献5】特開2007-14237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、歯周病菌の増殖を抑制し、口臭を抑制できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の口臭抑制用組成物を提供するものである。
項1. 有機酸とカルシウム化合物を含有する、口臭抑制用組成物。
項2. 歯周病菌の静菌作用を有する項1に記載の口臭抑制用組成物。
項3. 錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物の形態である項1または2に記載の口臭抑制用組成物。
項4. 有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、ケトグルコン酸、グリセリン酸、アスコルビン酸又はその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
項5. カルシウム化合物が、リン酸一水素カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1〜4のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
項6. ステビオサイド、サッカリンナトリウム、スクラロース、アスパルテーム、グリシン、ソーマチン、アセスルファムK、ネオテーム、ソルビトール、還元パラチノース、還元水飴、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール及びマルチトールからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料あるいは糖質を含む、項1〜5のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
項7. 人工唾液25mlに前記組成物1gを溶解したときのpHが3.8〜5.0である、項1〜6のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
項8. 人工唾液25mlに前記組成物1gを溶解したときのpH測定値とカルシウムイオン濃度の下限の関係が以下のいずれか
pH測定値4.5〜5で{3−(pH測定値−4.5)×3}mM、
pH測定値4.2〜4.5で{7−(pH測定値−4.2)×(40/3)}mM、
pH測定値4〜4.2で{10−(pH測定値−4)×15}mM、
pH測定値3.8〜4で{50−(pH測定値−3.8)×200}mM、
であり、かつ、カルシウムイオン濃度の上限が50mMである、項7に記載の口臭抑制用組成物。
項9. 人工唾液25mlに前記組成物1gを溶解したときのpHが4〜5であり、pH測定値とカルシウムイオン濃度の下限の関係が以下のいずれか
pH測定値4.5〜5で{3−(pH測定値−4.5)×3}mM、
pH測定値4.2〜4.5で{7−(pH測定値−4.2)×(40/3)}mM、
pH測定値4〜4.2で{10−(pH測定値−4)×15}mM、
であり、かつ、カルシウムイオン濃度の上限が10mMである、項8に記載の口臭抑制用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、口臭を効果的に抑制することができる。また、歯周病菌の増殖も併せて抑制できる。
【0008】
酸は、歯周病菌の増殖抑制作用があることは知られていたが、歯のエナメル質の脱灰作用があり、オーラルケアを目的とした口腔内で溶かして摂取する錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物には不向きであることが知られていた。
【0009】
本発明者は、酸によるエナメル質の脱灰作用は、一定濃度のカルシウムイオンを酸と同時に供給することで、エナメル質の脱灰を抑制しつつ、口臭を抑制できることを初めて見出した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】脱灰抑制に必要なカルシウムイオン濃度およびPg菌の生育阻害試験結果
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、有機酸とカルシウム化合物を含む。
【0012】
有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、ケトグルコン酸、グリセリン酸、アスコルビン酸が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。好ましい有機酸は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸であり、クエン酸が特に好ましい。
【0013】
有機酸の配合量は、組成物を溶解したときのpHが適切な範囲になる量である。
【0014】
カルシウム化合物は水に溶けてカルシウムを放出する化合物であり、pH3.8〜5の酸性水溶液に溶解性の化合物が好ましい。具体的には、リン酸一水素カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。好ましいカルシウム化合物は、リン酸一水素カルシウムである。
【0015】
カルシウム化合物の配合量は、口臭抑制用組成物のpHにより必要な量が変動し、その配合量は、図1または以下のカルシウムイオン濃度とpHの下限の関係を満足するように決定される。
【0016】
pH測定値4.5〜5で{3−(pH測定値−4.5)×3}mM、
pH測定値4.2〜4.5で{7−(pH測定値−4.2)×(40/3)}mM、
pH測定値4〜4.2で{10−(pH測定値−4)×15}mM、
pH測定値3.8〜4で{50−(pH測定値−3.8)×200}mM。
【0017】
カルシウムイオン濃度は100mMを超えると味質が損なわれるので、100mM以下、好ましくは50mM以下、より好ましくは10mM以下である。
【0018】
口臭抑制用組成物には、ステビオサイド、サッカリンナトリウム、スクラロース、アスパルテーム、グリシン、ソーマチン、アセスルファムK、ネオテームなどの高甘味度甘味料、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、還元パラチノース、還元水飴などの糖アルコールを配合することができる。砂糖を配合することも可能であるが、非う蝕性の糖類が好ましい。
【0019】
本発明で、pHの測定に使用される人工唾液(カルシウムイオン濃度1.5mM)の組成を以下に示す。
【0020】
単位(ml)
超純水 50
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
100 mM CaCl2 1.5
200 mM HEPES 10
【0021】
1N KOHでpH 6.5に調整した後、超純水で100 mlにメスアップして、人工唾液を得ることができる。
【0022】
上記組成の人工唾液25mlに本発明の口臭抑制用組成物(例えばタブレット)1gを溶解したときのpHは、3.8〜5.0程度、好ましくは4〜5、特に好ましくは4.2〜4.5である。このようなpH範囲で酸蝕(酸によるエナメル質の脱灰)を抑制できるカルシウムのイオン濃度の下限は、以下のようになる。
【0023】
pH測定値4.5〜5で{3−(pH測定値−4.5)×3}mM、
pH測定値4.2〜4.5で{7−(pH測定値−4.2)×(40/3)}mM、
pH測定値4〜4.2で{10−(pH測定値−4)×15}mM、
pH測定値3.8〜4で{50−(pH測定値−3.8)×200}mM。
【0024】
カルシウムにより歯のエナメル質の酸蝕を抑制できる範囲を図1に示す。カルシウムのイオン濃度の上限は、酸蝕の抑制の観点では特に設定されないが、組成物の味覚、処方の容易さなどの観点から100mM以下、好ましくは50mM以下、より好ましくは10mM以下である。
【0025】
錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物などの組成物をなめて溶解させる速度の個人差は少なくほぼ一定である。本発明の組成物は、酸と同時にカルシウムが供給されるので、エナメル質の脱灰を抑制しつつ、歯周病菌又はその他の口臭に関与する雑菌の増殖を抑制すると考えられ、口臭抑制作用を示す。本発明の組成物は即効性があり、錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物などをなめると速やかに口臭が抑制される。
【0026】
本発明組成物は、上記した成分以外に、香料、ビタミン類、骨代謝ビタミン類、抗酸化剤、賦形剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、着色料、保存剤、抗菌剤、殺菌剤、抗炎症剤等が適宜配合でき、これらの他、医薬組成物、口腔用組成物又は、食品処方設計に通常用いられるその他の添加物乃至食品素材等を適宜配合することができる。このような素材については、具体的には下記ものが含まれる。
【0027】
ビタミン類としては、本発明ビタミン類であるビタミンCまたはそれらの塩またはビタミンC誘導体、ビタミンE、ビタミンA、ベータカロチン、ビタミンD群、ビタミンK群、ビタミンP等を配合することができる。
【0028】
賦形剤としては、ショ糖、乳糖、デンプン、デキストリン、ブドウ糖、結晶性セルロース、マンニット、ソルビット、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、パラチノース、マルチトール、トレハロース、ラクチトール、環状オリゴ糖、還元澱粉糖、還元イソマルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ガムベース、アラビアガム、ゼラチン、セチルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルソース、メチルセルロース、プルラン、アミロース、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムが挙げられる。
【0029】
可溶化剤としては、アルコール、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類が挙げられる。
【0030】
粘結剤としては、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、キサンタンガム等が挙げられる。
【0031】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、硬化油等が挙げられる。
【0032】
懸濁剤又は湿潤剤としては、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、パセリ油、パセリ種子オイル、乳酸カルシウム、紅花油、大豆リン脂質、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
被膜形成物質としては、例えば、酢酸フタル酸セルロース等の炭水化物誘導体、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル等のアクリル酸系共重合体、メタアクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0034】
また、本発明組成物には、グラニュー糖、粉糖、水飴、食塩、オレンジ油、水溶性カンゾウエキス、メントール、ユーカリ油等の、香料、着色料、保存剤を含有させてもよい。
本発明組成物に配合できるその他の成分としてはリジン、マグネシウム塩、大豆イソフラボン類、グリチルリチン類、天然ポリフェノール類、が挙げられる。
【0035】
本発明組成物は、その形態に応じて上記したような種々の公知成分を配合して調製することができ、食品組成物、口腔用組成物、医薬組成物としての各種形態乃至剤型に調製することができる。
【0036】
食品組成物の形態としては、例えば、錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物、顆粒、粉末ジュース、などが挙げられる。
【0037】
本発明組成物は、安全性が高く、長期間使用することが可能である歯周病予防又は治療組成物として使用することができる。
【0038】
また、本発明組成物を食品組成物として使用する場合は、歯周病の予防又は治療効果を期待でき、健康食品、特定保健用食品として摂取することも可能である。
【0039】
本発明組成物は、優れた歯周病予防又は治療効果を期待でき、医薬部外品としても使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
【0041】
実施例で使用した人工唾液(A)、脱灰溶液(B)の処方を以下に示す。
【0042】
(A) 人工唾液の処方
単位(ml)
超純水 50
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
100 mM CaCl2 1.5
200 mM HEPES 10
【0043】
1N KOHでpH 6.5に調整した後、超純水で100 mlにメスアップした。
【0044】
(B) 酸蝕予防試験で使用した脱灰溶液(pH4.5,4.2,4.0,3.8,3.5)の処方
(1) pH 4.5+3 mM Ca
単位(ml)
超純水 50
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
100 mM CaCl2 3
200 mM HEPES 10
飽和クエン酸溶液でpH 4.5に調整した後、超純水で100 mlにメスアップ
【0045】
(2) pH 4.2+7 mM Ca
単位(ml)
超純水 50
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
100 mM CaCl2 7
200 mM HEPES 10
飽和クエン酸溶液でpH 4.2に調整した後、超純水で100 mlにメスアップ
【0046】
(3) pH 4.0+10 mM Ca
単位(ml)
超純水 50
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
100 mM CaCl2 10
200 mM HEPES 10
飽和クエン酸溶液でpH 4.0に調整した後、超純水で100 mlにメスアップ
【0047】
(4) pH 3.8+50 mM Ca
単位(ml)
超純水 20
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
100 mM CaCl2 50
200 mM HEPES 10
飽和クエン酸溶液でpH 3.8に調整した後、超純水で100 mlにメスアップ
【0048】
(5) pH 3.5+100 mM Ca
単位(ml)
超純水 50
200 mM KCl 5
1N HCl 0.05
100 mM KH2PO4 3.6
1M CaCl2 10
200 mM HEPES 10
飽和クエン酸溶液でpH 3.5に調整した後、超純水で100 mlにメスアップ
【0049】
実施例1
(1)カルシウムによる酸蝕抑制効果
ウシ歯エナメル質を鏡面研磨したものを、脱灰溶液に37℃で60分間浸漬した。浸漬した歯片をレーザー顕微鏡、微小表面粗さ計および原子間力顕微鏡で酸蝕を評価した。
【0050】
pH6.5の脱灰溶液は人工唾液(pH6.5)を使用し、pH6.0, 5.5, 5.0, 4.5, 4.2, 4.0, 3.8, 3.5の脱灰溶液は、人工唾液のpHを飽和クエン酸溶液を用いて調整することで、得た。したがって、pH6.0, 5.5, 5.0, 4.5, 4.2, 4.0, 3.8, 3.5の脱灰溶液のカルシウムイオン濃度は、最初1.5mMであった。pH6,5, 6.0, 5.5, 5.0の4種の脱灰溶液については、酸蝕(脱灰)が生じなかった。pH4.5,4.2,4.0,3.8,3.5の5種の脱灰溶液については、カルシウムイオン濃度が1.5mMのときに脱灰が生じたので、カルシウムイオン濃度を1.5mMから徐々に高くしていき、脱灰(酸蝕)が抑制されたときのカルシウムイオン濃度を決定した。脱灰が抑制されるカルシウムイオン濃度を含む脱灰溶液を上記(B)の(1)〜(5)に示し、各pHでの脱灰抑制に必要なカルシウムイオン濃度を表1に示す。
【0051】
表1に示されるように、脱灰が生じたpHにおける必要カルシウムイオン濃度は、pH 4.5では3 mM、pH 4.2では7 mM、pH 4.0では10 mM、pH 3.8では50 mM、pH 3.5では100 mMであった。
【0052】
【表1】

【0053】
2)クエン酸による歯周病原因菌の生育阻害効果
歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalis ATCC 33277株をクエン酸でpHを調整したTrypticase soy broth培地(pH 7.0, 6.5, 6.0, 5.5, 5.0, 4.5, 4.2, 4.0, 3.5)で37℃、48時間、嫌気条件下で培養した。得られた菌体の濁度を分光光度計で測定した(600 nm)。結果を図1に示す。
【0054】
培地pHが5.0以下になるとP. gingivalis(Pg)の生育が阻害された。
【0055】
3)カルシウムで歯エナメル質を守りながら酸で歯周病原因菌を静菌する領域の発見
上記1)と2)で得られた結果を図1にまとめた。口腔内の環境をメッシュ地の領域にすることにより、カルシウムで歯エナメル質を守りながら酸で歯周病原因菌を静菌して口臭の発生を抑制できる。
【0056】
実施例2:リン酸一水素カルシウム+クエン酸配合タブレットによる口臭抑制効果(1)
リン酸一水素カルシウムとクエン酸を配合したタブレットを作製し、タブレット摂取後に口臭が抑制されたかを口臭測定用GCで調べた。結果を表2に示す。タブレットの処方は、表3に示される。
【0057】
【表2】

【0058】
口臭抑制の評価は、以下の基準に従った
口臭抑制評価基準
「○」: 口臭の閾値以下(臭いを感じない)
「△」: 低下したが閾値以上
「×」: 変化が見られなかった
【0059】
実施例3:塩化カルシウム+クエン酸配合タブレットによる口臭抑制効果(2)
口臭抑制試験は、以下の方法により実施した。
【0060】
6 mM システイン溶液 5 mlを口に含み、30秒間うがいをして人工的に口臭を発生させた。口に含んだシステイン溶液を吐き出したら、テルモシリンジを60秒間咥えて呼気を採取した。その後、試験タブレットを60秒間舐めて再度、同様に呼気を採取した。
採取した呼気の硫化水素量をオーラルクロマ(ABIMEDICAL社製)で測定した。
試験タブレットの処方を表3に示し、口臭抑制試験の結果を表4に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
ショ糖脂肪酸エステルは、第一工業製薬株式会社製 「DKエステル F-20W」を使用
ソルビトールは、ロケット社製 「ネオソルブP60W」を使用
【0063】
【表4】

【0064】
上記表4の結果から、pHは5.5以下、特に5以下で硫化水素を大きく減少させることが明らかになった。
【0065】
表3、4の結果から、本発明の組成物は、優れた口臭抑制効果を示すことが示された。
以下に、本発明組成物の処方例を記載する。
【0066】
処方例1 錠菓、錠剤
ソルビトール 91.68
塩化カルシウム 3.12
クエン酸 2.10
ショ糖脂肪酸エステル 2.00
香料 1.00
アスパルテーム 0.10
【0067】
処方例2 ハードキャンデー
還元パラチノース 94.48
塩化カルシウム 3.12
クエン酸 2.10
香料 0.20
アスパルテーム 0.10
【0068】
処方例3 ソフトキャンデー
還元パラチノース 44.58
還元水飴 40.00
塩化カルシウム 3.12
クエン酸 2.10
香料 0.10
アスパルテーム 0.10
ゼラチン 1.50
植物油脂 8.00
乳化剤 0.50
【0069】
処方例4 グミキャンデー
マルチトール 60.00
還元パラチノース 13.58
塩化カルシウム 3.12
クエン酸 2.10
香料 0.10
アスパルテーム 0.10
ゼラチン 6.00
水 15
【0070】
処方例5 カプセル
ゼラチン 30.00
グリセリン 10.00
植物油脂 54.48
塩化カルシウム 3.12
クエン酸 2.10
香料 0.20
アスパルテーム 0.10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸とカルシウム化合物を含有する、口臭抑制用組成物。
【請求項2】
歯周病菌の静菌作用を有する請求項1に記載の口臭抑制用組成物。
【請求項3】
錠菓、錠剤、ハードキャンデー、ソフトキャンデー、グミキャンデー、カプセル、およびこれらの糖衣物の形態である請求項1または2に記載の口臭抑制用組成物。
【請求項4】
有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、ケトグルコン酸、グリセリン酸、アスコルビン酸又はその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
【請求項5】
カルシウム化合物が、リン酸一水素カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
【請求項6】
ステビオサイド、サッカリンナトリウム、スクラロース、アスパルテーム、グリシン、ソーマチン、アセスルファムK、ネオテーム、ソルビトール、還元パラチノース、還元水飴、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール及びマルチトールからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料あるいは糖質を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
【請求項7】
人工唾液25mlに前記組成物1gを溶解したときのpHが3.8〜5.0である、請求項1〜6のいずれかに記載の口臭抑制用組成物。
【請求項8】
人工唾液25mlに前記組成物1gを溶解したときのpH測定値とカルシウムイオン濃度の下限の関係が以下のいずれか
pH測定値4.5〜5で{3−(pH測定値−4.5)×3}mM、
pH測定値4.2〜4.5で{7−(pH測定値−4.2)×(40/3)}mM、
pH測定値4〜4.2で{10−(pH測定値−4)×15}mM、
pH測定値3.8〜4で{50−(pH測定値−3.8)×200}mM、
であり、かつ、カルシウムイオン濃度の上限が50mMである、請求項7に記載の口臭抑制用組成物。
【請求項9】
人工唾液25mlに前記組成物1gを溶解したときのpHが4〜5であり、pH測定値とカルシウムイオン濃度の下限の関係が以下のいずれか
pH測定値4.5〜5で{3−(pH測定値−4.5)×3}mM、
pH測定値4.2〜4.5で{7−(pH測定値−4.2)×(40/3)}mM、
pH測定値4〜4.2で{10−(pH測定値−4)×15}mM、
であり、かつ、カルシウムイオン濃度の上限が10mMである、請求項8に記載の口臭抑制用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−211104(P2012−211104A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77569(P2011−77569)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】