説明

像ブレ補正装置

【課題】光軸周りの回転ブレ補正時のブレ量検出センサの誤差成分を含んだ出力を軽減するブレ量検出装置を提供し、傾斜補正をも可能とする。
【解決手段】撮像装置のブレ量検出装置を使用した像ブレ補正装置は、撮像素子を備える。撮像素子の撮像面に光学像を結像させる撮像光学系の光軸に垂直な第1、第2検出軸方向の重力加速度成分を検出出力する加速度センサACCを備える。加速度センサACCからの出力に基づいて、ローリングによる撮像装置の光軸周りの傾斜角度を算出する傾斜量算出部(差動演算部)61を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置におけるカメラ用像ブレ補正装置に関し、特に、光軸周りの回転ブレ補正や傾斜補正を行おうとしたときに、ジャイロセンサ等による手ブレ量検出センサの誤差特性による悪影響を軽減したカメラ用像ブレ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの撮像装置において撮像中に生じた手ブレ量に応じて、像ブレ補正レンズまたは撮像素子を光軸と垂直な平面上を移動させることにより結像面上での像ブレを抑制するカメラ用像ブレ補正装置が提案されている。
【0003】
特許文献1は、ピッチングジャイロセンサ、ローリングジャイロセンサ、ヨーイングジャイロセンサの3軸方向のジャイロセンサを用いて、ブレ量を検出し、xy平面上を、回転を含む移動可能な撮像素子を駆動するカメラ用像ブレ補正装置を開示する。
【特許文献1】特開2005−351917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば特許文献1の装置で、ローリングジャイロセンサを用いて光軸周りの回転ブレ補正を行おうとすると、ローリングジャイロセンサからのオフセット出力のため、光軸周りに画像が大きく傾く。特に、撮影前の構図を液晶モニタで観察中は、使用者が違和感を感じることになり、そのまま静止画撮影を行うと、傾いた撮影画像が得られてしまうことになる。同じように、動画を撮影した場合も、大きく傾いてしまう。またジャイロセンサ等の手ブレ検出センサにおいて、オフセット等の誤差を完全になくすことは技術的に難しい。
【0005】
したがって本発明の目的は、光軸周りの回転ブレ補正時のブレ量検出センサの誤差成分を含んだ出力を軽減するブレ量検出装置を提供し、傾斜補正をも可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置のブレ量検出装置を使用した像ブレ補正装置は、撮像素子と、撮像素子の撮像面に光学像を結像させる撮像光学系の光軸に垂直な第1、第2検出軸方向の重力加速度成分を検出出力する加速度センサと、加速度センサからの出力に基づいて、ローリングによる撮像装置の光軸周りの傾斜角度を算出する傾斜量算出部とを備える。
【0007】
好ましくは、撮像素子を有する可動部と、傾斜量算出部により算出された傾斜角度に基づいて、可動部を、撮像素子の撮像面の矩形を構成する辺の1つが水平になるように、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する制御部とを更に備える。
【0008】
また、好ましくは、ピッチングジャイロセンサと、ヨーイングジャイロセンサと、撮像素子を有する可動部と、像ブレ補正を行うために、ピッチングジャイロセンサからの出力に基づいて、ピッチングによるブレ量を算出し、ヨーイングジャイロセンサからの出力に基づいて、ヨーイングによるブレ量を算出し、ピッチングによるブレ量と、ヨーイングによるブレ量と、傾斜角度とに基づいて、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する制御部とを更に備える。
【0009】
さらに好ましくは、第1、第2検出軸は、互いに直交し、撮像装置が水平に保持された状態において、重力方向と45度をなす。
【0010】
さらに好ましくは、傾斜量算出部は、加速度センサからの第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力の絶対値の差異に基づいて傾斜角度を算出する。
【0011】
また、好ましくは、ピッチングジャイロセンサと、ヨーイングジャイロセンサと、撮像素子を有する可動部と、像ブレ補正を行うために、ピッチングジャイロセンサからの出力に基づいて、ピッチングによるブレ量を算出し、ヨーイングジャイロセンサからの出力に基づいて、ヨーイングによるブレ量を算出し、ピッチングによるブレ量と、ヨーイングによるブレ量と、傾斜角度とに基づいて、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する制御部とを更に備え、制御部は、加速度センサからの第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力の絶対値の差異の絶対値が、第1所定値を超えた場合は、像ブレ補正を行うために、ピッチングによるブレ量と、ヨーイングによるブレ量のみに基づいて、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する。
【0012】
また、好ましくは、制御部は、加速度センサからの第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力の絶対値の和が、第2所定値未満の場合は、像ブレ補正を行うために、ピッチングによるブレ量と、ヨーイングによるブレ量のみに基づいて、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する。
【0013】
また、好ましくは、加速度センサは、更に光軸に平行な第3検出軸方向の加速度を検出可能な加速度センサであり、第3検出軸方向の加速度出力が第3所定値を超えた場合は、像ブレ補正を行うために、ピッチングによるブレ量と、ヨーイングによるブレ量のみに基づいて、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する。
【0014】
また、好ましくは、フォーカルプレーンシャッタ、及び可動ミラーの少なくとも一方を備え、フォーカルプレーンシャッタ、及び可動ミラーの少なくとも一方が動作されて撮像素子に露光が行われている間は、制御部は、像ブレ補正を行うために、ピッチングによるブレ量と、ヨーイングによるブレ量と、フォーカルプレーンシャッタ及び可動ミラーが動作する直前の加速度センサからの第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力に基づく傾斜角度とに基づいて、光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する。
【0015】
また、好ましくは、制御部は、撮像装置に取り付けられたレンズの焦点距離に応じて、ヨーイング、ピッチングに対応する像ブレ補正のための可動部の移動範囲と、ローリングに対応する像ブレ補正のための可動部の移動範囲を制御する。
【0016】
また、好ましくは、加速度センサは、2軸または3軸の検出軸を有する加速度センサである。
【0017】
また、好ましくは、加速度センサは、1軸の検出軸を有する加速度センサを2個または3個使用する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、光軸周りの回転ブレ補正時のブレ量検出センサの誤差成分を含んだ出力を軽減するブレ量検出装置を提供し、傾斜補正をも可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。カメラ本体1はデジタルカメラであるとして説明する。なお、方向を説明するために、カメラ本体1において、レンズ鏡筒2内に収容されている撮影レンズ(不図示)の光軸Oと直交する方向を第1方向x、第1方向x及び光軸Oと直交する方向を第2方向y、光軸Oと平行な方向を第3方向zとして説明する。
【0020】
カメラ本体1は、レンズ鏡筒2、及び撮像素子ISを有する(図1参照)。カメラ本体1は、像ブレ補正部10、制御演算部13、表示部20、及び記憶部21を有する(図2参照)。
【0021】
被写体像は、CCDなどの撮像素子ISによって撮影レンズを介した光学像が電荷として蓄積され、蓄積された信号が転送されA/D変換された後、制御演算部13によって画像処理され、表示部20によって撮像された画像が表示される。また、撮像により得られた画像信号は、メモリーカードなどの記憶部21により記録される。
【0022】
レリーズボタン16は、半押しすることにより測光スイッチ17aがオン状態にされ測光や測距及び合焦動作が行われ、全押しすることによりレリーズスイッチ17bがオン状態にされ撮像が行われ、撮影像が記憶部21に記録される。
【0023】
像ブレ補正部10は、手ブレ量に対応して、可動部15aについて光軸Oに垂直な平面上の回転運動と直交2方向への直線運動による移動制御を行い、手ブレによって生じた被写体像の結像面におけるずれを無くし、被写体像と結像面位置を一定に保つことで、像ブレを補正する装置である。像ブレ補正部10は、手ブレ量を検出するブレ量検出部11と、手ブレ量に基づいて可動部15aを光軸Oに垂直な基準平面上(以下、xy平面上とする)の回転運動及び第1方向x及び第2方向yへの直線運動させる駆動部15とを有する。手ブレ量に基づく可動部15aの移動制御は、制御演算部13によって行われる。
【0024】
ブレ量検出部11は、ジャイロセンサなどの角速度センサ、及び加速度センサによるブレ量検出を行う。ブレ量検出部11のピッチングジャイロセンサGSY、ヨーイングジャイロセンサGSX、及び加速度センサACCは、カメラメイン基板7に取り付けられる。
【0025】
制御演算部13は、像ブレ補正制御を公知の制御方式であるPID制御方式で行うために、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63B、水平方向誤差増幅回路65、第1、第2鉛直方向PID(比例・積分・微分)演算回路66A、66B、水平方向PID演算回路68、第1、第2鉛直方向PWMドライバ69A、69B、及び水平方向PWMドライバ71を有する。
【0026】
駆動部15は、可動部15aと固定部15bとから構成される(図1、9〜11参照)。可動部15aは、カメラ本体1に固定された固定部15bに対して、xy平面上に移動可能である。可動部15aは、撮像素子ISが取り付けられた撮像板基板45、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXB、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYB、第1、第2鉛直方向ホールセンサSYA、SYB、及び水平方向ホールセンサSXを有する。固定部15bは、枠18、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYB、第1、第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXA、YXB、鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYY、第1、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXA、MXB、及び第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBを有する。駆動部15の固定部15bは、後ろ側はカメラメイン基板7に、前側はレンズ鏡筒2に取り付けられる。
【0027】
まず、ブレ量検出部11について説明する(図1〜8参照)。ブレ量検出部11は、ピッチングジャイロセンサGSY、ヨーイングジャイロセンサGSX、ピッチングADコンバータADY、ヨーイングADコンバータADX、ピッチングハイパスフィルタ回路HPY、ヨーイングハイパスフィルタ回路HPX、ピッチング積分回路60Y、ヨーイング積分回路60X、加速度センサACC(第1、第2検出軸ax1、ax2)、第1、第2ADコンバータAD1、AD2、及び傾斜量算出部としての差動演算部61を有する。
【0028】
ピッチングジャイロセンサGSYは、ジャイロセンサ軸GSYOが第1方向xと平行に配置され、カメラ本体1の第1方向x軸周りの回転運動(ピッチング)の角速度を検出する。ヨーイングジャイロセンサGSXは、ジャイロセンサ軸GSXOが第2方向yと平行に配置され、カメラ本体1の第2方向y軸周りの回転運動(ヨーイング)の角速度を検出する。
【0029】
ピッチングジャイロセンサGSY、及びヨーイングジャイロセンサGSXは、それぞれカメラメイン基板7上に取り付けられた、ピッチングジャイロセンサベース基板7Y、及びヨーイングジャイロセンサベース基板7Xに実装される。
【0030】
ピッチングジャイロセンサGSYからの角速度に関する信号は、ピッチングADコンバータADYでAD変換され、ピッチングハイパスフィルタ回路HPYでピッチングジャイロセンサGSYの低周波成分が除去(波形が中心から上下にずれるDCオフセット分が除去)され、ピッチング積分回路60Yで積分される。ピッチング積分回路60Yは、ピッチングに基づく角度ブレ量に対応した出力値として、ピッチング角度信号Pyhを出力する。
【0031】
ヨーイングジャイロセンサGSXからの角速度に関する信号は、ヨーイングADコンバータADXでAD変換され、ヨーイングハイパスフィルタ回路HPXでヨーイングジャイロセンサGSXの低周波成分が除去(波形が中心から上下にずれるDCオフセット分が除去)され、ヨーイング積分回路60Xで積分される。ヨーイング積分回路60Xは、ヨーイングに基づく角度ブレ量に対応した出力値として、ヨーイング角度信号Pxhを出力する。
【0032】
加速度センサACCは、検出軸(第1、第2検出軸ax1、ax2)方向の重力加速度成分(第1、第2加速度g1、g2)を検出するセンサで、カメラメイン基板7に実装される(図1参照)。第1、第2検出軸ax1、ax2は、第3方向zと垂直で且つ、互いに垂直な関係になるように配置される。第1、第2検出軸ax1、ax2の方向は、カメラ本体1の保持姿勢の変化に合わせて変動する。
【0033】
加速度センサACCの第1検出軸ax1は、カメラ本体1が水平保持状態(撮像素子ISの撮像面が水平方向に垂直で且つ可動部15aが移動制御されない状態で撮像面を構成する辺の1つが水平になる状態)において、第1方向x、及び第2方向yと45度の角度をなす状態(重力方向と45度の角度をなす状態)にあるのが望ましい(図4参照)。
【0034】
加速度センサACCの第2検出軸ax2は、カメラ本体1が水平保持状態において、第1方向x、及び第2方向yと45度の角度をなす状態(重力方向と45度の角度をなす状態)にあるのが望ましい。
【0035】
加速度センサACCからの第1検出軸ax1方向の加速度に関する信号(第1加速度g1)は、第1ADコンバータAD1でAD変換され、加速度センサACCからの第2検出軸ax2方向の加速度に関する信号(第2加速度g2)は、第2ADコンバータAD2でAD変換され、差動演算部61で、AD変換後の絶対値(|g1|、|g2|)の差異の絶対値(||g1|―|g2||)が算出される。差動演算部61は、算出結果に基づいて、カメラ本体1の第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)に基づく傾斜角度(角度ブレ量)に対応した出力値として、ローリング角度信号Prhを出力する。
【0036】
本実施形態では、ローリング角度信号Prhの算出に、積分演算は必要がないので用いられない。そのため、算出されたローリング角度信号Prhに、直流オフセット出力による影響がないため、ローリングによるブレ量検出を正確に行うことが可能になる。
【0037】
直流オフセット出力を積分演算することによる影響分が含まれると、ブレ量のローリング成分(第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)による手ブレ量、すなわち傾斜角度)がゼロであっても、ローリング角度信号Prhは不特定の値を有し、可動部15aは中心位置から変位する(傾く)。この変位は、撮像素子ISの傾きであるので、僅かな変位量(傾き)でも違和感を使用者が感ずることになるが、本実施形態では、直流オフセット出力による影響がないため、このような違和感を使用者が感ずることはない。
【0038】
例えば、カメラ本体1が正立横位置姿勢状態(水平保持状態で、カメラ本体1の上面部が上を向いた状態)(図4参照)から、正面から見て右回り(時計回り)にθだけ回転した場合(図5参照)の、第1、第2加速度g1、g2の差異は、g1−g2=G×{sin(π÷4+θ)−sin(π÷4―θ)}=2G×cos(π÷4)×sinθで求められ、θの関数である。傾斜角度θが±0.2rad(≒±11°)程度であれば、(g1−g2)と傾斜角度θとは比例関係にあると考えることが出来る。そのため、第1、第2加速度g1、g2それぞれの絶対値の差異に基づいて、傾斜角度(第3方向z軸周りの回転運動に基づく角度ブレ量)θを求めることが可能になる。
【0039】
なお、絶対値としているのは、カメラ本体1の姿勢により、第1、第2加速度g1、g2の値の符号が変動することに対応するものである。例えば、カメラ本体1が正立横位置姿勢状態にある場合(図4参照)は、第1、第2加速度g1、g2はいずれも正の値を示し、且つ同じ値を示す。
【0040】
カメラ本体1が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りにθだけ回転させた場合(図5参照)は、第1、第2加速度g1、g2ともに正の値で、第1加速度g1の絶対値ほうが、第2加速度g2の絶対値よりも大きい。カメラ本体1が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りに(90°+θ)だけ回転させた場合(第1縦位置姿勢状態(水平保持状態で、カメラ本体1の側面部の一方が上を向いた状態)から右回りにθだけ回転させた場合、図6参照)は、第1加速度g1の値が正、第2加速度g2の値が負を示し、第2加速度g2の絶対値のほうが、第1加速度g1の絶対値よりも大きい。
【0041】
カメラ本体1が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りに(180°+θ)だけ回転させた場合(倒立横位置姿勢状態(水平保持状態で、カメラ本体1の底面部が上を向いた状態)から右周りにθだけ回転させた場合、図7参照)は、第1、第2加速度g1、g2ともに負の値で、第1加速度g1の絶対値のほうが、第2加速度g2の絶対値よりも大きい。カメラ本体1が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りに(270°+θ)だけ回転させた場合(第2縦位置姿勢状態(水平保持状態で、カメラ本体1の側面部の他方が上を向いた状態)から右回りにθだけ回転させた場合、図8参照)は、第1加速度g1の値が負、第2加速度g2の値が正を示し、第2加速度g2の絶対値のほうが、第1加速度g1の絶対値よりも大きい。
【0042】
差動演算部61は、第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との差異の絶対値(||g1|―|g2||)の演算の他、第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との和(|g1|+|g2|)の演算を行う。
【0043】
第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との差異の絶対値(||g1|―|g2||)が第1所定値を超えた場合、第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との和(|g1|+|g2|)が第2所定値未満の場合には、差動演算部61からのローリング角度信号Prhの出力は行われない。
【0044】
第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との差異の絶対値(||g1|―|g2||)が第1所定値を超えた場合は、カメラ本体1のローリングによる傾斜を補正する必要がない場合を想定するもので、例えば、意識的にカメラ本体1を傾けて撮影する場合であり、またカメラ本体1のローリングによる傾斜や像ブレ量が正確に演算できないからである。
【0045】
第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との和(|g1|+|g2|)が第2所定値未満の場合は、カメラ本体1の光軸Oが、水平状態から離角している場合(カメラ本体1の正面が上や下を向いた状態)を想定するもので、カメラ本体1のローリングによる傾斜や像ブレ量が正確に演算できないからである。
【0046】
ピッチング角度信号Pyhは、第1方向x軸周りの回転運動(ピッチング)による手ブレ量を特定する信号として、ローリング角度信号Prhは、第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)による像ブレ量を特定する信号として、ヨーイング角度信号Pxhは、第2方向y軸周りの回転運動(ヨーイング)による像ブレ量を特定する信号として、後述する制御演算部13におけるブレ量に基づいて可動部15aの移動制御に使用される。
【0047】
次に、制御演算部13について説明する(図3参照)。なお、CPUで制御する場合は、積分回路、誤差増幅回路、PID演算回路、PWMドライバの動作はソフトウエアによっても実現可能である。
【0048】
ピッチング角度信号Pyh、ローリング角度信号Prhは、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63Aに入力される。第1鉛直方向誤差増幅回路63Aには、ピッチング角度信号Pyhとローリング角度信号Prhとの加算値、及び第1鉛直方向ホールセンサSYAの出力値とが入力され、第2鉛直方向誤差増幅回路63Bには、ピッチング角度信号Pyhからローリング角度信号Prhの減算値、及び第2鉛直方向ホールセンサSYBの出力値とが入力される。ヨーイング角度信号Pxhは、水平方向誤差増幅回路65に入力される。水平方向誤差増幅回路65には、ヨーイング角度信号Pxh、及び水平方向ホールセンサSXの出力値とが入力される。
【0049】
第1鉛直方向誤差増幅回路63Aは、ピッチング角度信号Pyhとローリング角度信号Prhとの加算値と、第1鉛直方向ホールセンサSYAの出力値とを比較する(差異を算出する)。第2鉛直方向誤差増幅回路63Bは、ピッチング角度信号Pyhからローリング角度信号Prhの減算値と、第2鉛直方向ホールセンサSYBの出力値とを比較する(差異を算出する)。水平方向誤差増幅回路65は、ヨーイング角度信号Pxhと、水平方向ホールセンサSXの出力値とを比較する(差異を算出する)。
【0050】
第1、第2鉛直方向PID演算回路66A、66Bは、第1、第2鉛直方向誤差増幅回路63A、63Bの出力値(差異値)に基づいて、PID演算を行う。具体的には、第1鉛直方向PID演算回路66Aは、ピッチング角度信号Pyhとローリング角度信号Prhの加算値と、第1鉛直方向ホールセンサSYAの出力値との差異が小さくなるように(第1鉛直方向誤差増幅回路63Aの出力値が小さくなるように)、第1鉛直方向駆動用コイルCYAに印加する電圧に関する値(PWMパルスのデューティ比など)を演算する。第2鉛直方向PID演算回路66Bは、ピッチング角度信号Pyhからローリング角度信号Prhの減算値と、第2鉛直方向ホールセンサSYBの出力値との差異が小さくなるように(第2鉛直方向誤差増幅回路63Bの出力値が小さくなるように)、第2鉛直方向駆動用コイルCYBに印加する電圧に関する値(PWMパルスのデューティ比など)を演算する。
【0051】
第1鉛直方向PWMドライバ69Aは、第1鉛直方向PID演算回路66Aの演算結果に基づくPWMパルスを、第1鉛直方向駆動用コイルCYAに印加する。第2鉛直方向PWMドライバ69Bは、第2鉛直方向PID演算回路66Aの演算結果に基づくPWMパルスを、第2鉛直方向駆動用コイルCYBに印加する。これにより、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYBには第2方向yに駆動力が発生し、この駆動力によって可動部15aのxy平面上に第2方向yへの移動が可能になる。第1鉛直方向駆動用コイルCYAと、第2鉛直方向駆動力CYBへの駆動力が異なる場合は、駆動力差に基づき可動部15aのxy平面上に回転移動が可能になる。
【0052】
第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との差異の絶対値(||g1|―|g2||)が第1所定値を超えた場合、第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との和(|g1|+|g2|)が第2所定値未満の場合には、差動演算部61からのローリング角度信号Prhの出力は行わないので、ローリング角度信号Prhがゼロ出力になり、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYBへの第2方向yの駆動力が同じになる。この時、可動部15aについてxy平面上の第2方向yへの直線移動が行われるが、回転移動は行われない。
【0053】
水平方向PID演算回路68は、水平方向誤差増幅回路65の出力値(差異値)に基づいて、PID演算を行う。具体的には、水平方向PID演算回路68は、ヨーイング角度信号Pxhと、水平方向ホールセンサSXとの差異が小さくなるように(水平方向誤差増幅回路65の出力値が小さくなるように)、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXBに印加する電圧に関する値(PWMパルスのデューティ比など)を演算する。
【0054】
水平方向PWMドライバ71は、水平方向PID演算回路68の演算結果に基づくPWMパルスを、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXBに印加する。これにより、第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXBには、第1方向xへの駆動力が発生し、この駆動力によって、可動部15aのxy平面上に第1方向xへの移動が可能になる。
【0055】
次に、駆動部15について説明する(図3、9〜11参照)。第1、第2水平方向駆動用コイルCXA、CXB、第1、第2鉛直方向駆動用コイルCYA、CYB、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、第1、第2鉛直方向ホールセンサSYA、SYB、及び水平方向ホールセンサSXは、撮像板基板45上に取り付けられる。
【0056】
枠18は、xy平面に垂直な薄板の帯で構成される口状の枠であり、弾性体で構成される。枠18は、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXBを介して撮像板基板45に取り付けられ(連結され)、第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBを介して固定部15b(レンズ鏡筒2)に取り付けられる(固定される)。枠18は、撮像素子ISを囲む位置関係にある。
【0057】
第1水平方向枠連結部FXAは、第1水平方向枠連結部用取付穴FXA1、FXA2を介して撮像板基板45にネジ止めされる。第2水平方向枠連結部FXBは、第2水平方向枠連結部用取付穴FXB1、FXB2を介して撮像板基板45にネジ止めされる。第1鉛直方向枠固定部FYAは、第1鉛直方向枠固定部用取付穴FYA1、FYA2を介してレンズ鏡筒2にネジ止めされる。第2鉛直方向枠固定部FYBは、第2鉛直方向枠固定部用取付穴FYB1、FYB2を介してレンズ鏡筒2にネジ止めされる。
【0058】
枠18は、第3方向zから見て、第1方向xに平行な2辺と第2方向yに平行な2辺を有する矩形形状を有するが、この矩形形状は撮像板基板45のxy平面上の移動に伴って、xy平面に沿って弾性変形する。これにより、撮像板基板45は、固定部15b、及びレンズ鏡筒2によって、枠18を介して、xy平面上を、回転を含めた移動可能な状態で保持される。
【0059】
第1水平方向枠連結部FXAは、枠18を構成する第2方向yに平行な1辺の中央近傍に、第2水平方向枠連結部FXBは、枠18を構成する第2方向yに平行な他の1辺の中央近傍に取り付けられる。第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXBは、第3方向zから見て、第1方向xで撮像素子ISを挟む位置関係にある。
【0060】
第1鉛直方向枠固定部FYAは、枠18を構成する第1方向xに平行な1辺の中央近傍に、第2鉛直方向枠固定部FYBは、枠18を構成する第1方向xに平行な他の1辺の中央近傍に取り付けられる。第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBは、第3方向zから見て、第2方向yで撮像素子ISを挟む位置関係にある。
【0061】
枠18は、金属で構成され、第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、及び第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBは、少なくとも一部が樹脂で構成される。枠18第1、第2水平方向枠連結部FXA、FXB、及び第1、第2鉛直方向枠固定部FYA、FYBは、インサート成形される。枠18が樹脂で構成される場合には、枠18、第1、第2水平方向矩形枠連結部FXA、FXB、及び第1、第2鉛直方向矩形枠固定部FYA、FYBは、一体成形されてもよい。
【0062】
第1水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXAは、板状の磁性金属部材で、第3方向zに垂直に並べられ、レンズ鏡筒2側から見て右側で、レンズ鏡筒2に取り付けられる(接着される)。第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXBは、板状の磁性金属部材で、第3方向zに垂直に並べられ、レンズ鏡筒2側から見て左側で、レンズ鏡筒2に取り付けられる(接着される)。鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYYは、板状の磁性金属部材で、第3方向zに垂直に並べられ、レンズ鏡筒2側から見て上側で、第1鉛直方向枠固定部FYAに取り付けられる(接着される)。
【0063】
第1、第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXA、YXBは、第3方向zから見て、第1方向xで、撮像素子ISを挟む位置関係にある。
【0064】
第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAは、第1水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXAに取り付けられる。第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBは、第2水平方向駆動及びIT検出用ヨークYXBに取り付けられる。第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBは、鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYYに取り付けられる。
【0065】
撮像板基板45は、重力の影響を受けない状態で、可動部15aが移動を開始する前の初期状態において、光軸Oが撮像素子ISの有効撮像領域の中心を通り、有効撮像領域の矩形を構成する辺が第1方向xまたは第2方向yに平行である位置関係に配置されるのが望ましい。枠18は、重力の影響を受けない状態で、可動部15aが移動を開始する前の初期状態において、弾性変形せず矩形形状を有する状態であるのが望ましい。撮像素子ISは、撮像板基板45上で且つレンズ鏡筒2と対向する側に配置される。
【0066】
第1水平方向駆動用コイルCXA、及び水平方向ホールセンサSXは、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAと第3方向z上で対向する位置関係にある。第2水平方向駆動用コイルCXBは、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBと第3方向z上で対向する位置関係にある。
【0067】
第1鉛直方向駆動用コイルCYA、及び第1鉛直方向ホールセンサSYAは、第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAと第3方向z上で対向する位置関係にある。第2鉛直方向駆動用コイルCYB、及び第2鉛直方向ホールセンサSYBは、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBと第3方向z上で対向する位置関係にある。
【0068】
第1、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXA、MXBは、厚み方向すなわち第3方向zに着磁されており、N極面とS極面とが、第1方向xに並べられる。第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAの第2方向yの長さは、可動部15aが第2方向yに移動した際に第1水平方向駆動用コイルCXA及び水平方向ホールセンサSXに及ぼす磁界が変化しない程度に、第1水平方向駆動用コイルCXAの第2方向yの有効長に比べて長めに設定される。第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBの第2方向yの長さは、可動部15aが第2方向yに移動した際に第2水平方向駆動用コイルCXBに及ぼす磁界が変化しない程度に、第2水平方向駆動用コイルCXBの第2方向yの有効長に比べて長めに設定される。
【0069】
第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBは、厚み方向すなわち第3方向zに着磁されており、N極面とS極面とが、第2方向yに並べられる。第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAの第1方向xの長さは、可動部15aが第1方向xに移動した際に第1鉛直方向駆動用コイルCYA及び第1鉛直方向ホールセンサSYAに及ぼす磁界が変化しない程度に、第1鉛直方向駆動用コイルCYAの第1方向xの有効長に比べて長めに設定される。第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBの第1方向xの長さは、可動部15aが第1方向xに移動した際に第2鉛直方向駆動用コイルCYB及び第2鉛直方向ホールセンサSYBに及ぼす磁界が変化しない程度に、第2鉛直方向駆動用コイルCYBの第1方向xの有効長に比べて長めに設定される。
【0070】
第1水平方向駆動用コイルCXAのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAの磁界から生ずる電磁力により、第1水平方向駆動用コイルCXAを含む可動部15aを第1方向xに移動させる駆動力を発生すべく、第2方向yに平行な線分を有する。第2水平方向駆動用コイルCXBのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBの磁界から生ずる電磁力により、第2水平方向駆動用コイルCXBを含む可動部15aを第1方向xに移動させる駆動力を発生すべく、第2方向yに平行な線分を有する。
【0071】
第1鉛直方向駆動用コイルCYAのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAの磁界から生ずる電磁力により、第1鉛直方向駆動用コイルCYAを含む可動部15aを第2方向yに移動させる駆動力を発生すべく、第1方向xに平行な線分を有する。第2鉛直方向駆動用コイルCYBのコイルパターンは、自身に流れる電流と、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBの磁界から生ずる電磁力により、第2鉛直方向駆動用コイルCYBを含む可動部15aを第2方向yに移動させる駆動力を発生すべく、第1方向xに平行な線分を有する。
【0072】
第1、第2鉛直方向ホールセンサSYA、SYBは、ホール効果を利用した磁電変換素子であるホール素子であり、可動部15aの第2方向yの位置変化に伴う第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBからの磁束密度変化を検出し、可動部15aの第2方向yの位置検出を行う。水平方向ホールセンサSXは、ホール効果を利用した磁電変換素子であるホール素子であり、可動部15aの第1方向xの位置変化に伴う第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAからの磁束密度変化を検出し、可動部15aの第1方向xの位置検出を行う。
【0073】
第1鉛直方向ホールセンサSYAは、第1鉛直方向駆動用コイルCYAの内側で且つ第2鉛直方向ホールセンサSYBから離れた位置に、第2鉛直方向ホールセンサSYBは、第2鉛直方向駆動用コイルCYBの内側で且つ第1鉛直方向ホールセンサSYAから離れた位置に、水平方向ホールセンサSXは、第1水平方向駆動用コイルCXAの内側に配置される。
【0074】
第1水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXAは、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAの磁界が周囲に漏れにくくし、第1水平方向駆動用コイルCXA及び水平方向ホールセンサSXと、第1水平方向駆動及び位置検出用磁石MXAとの間の磁束密度を高める役割を果たす。第2水平方向駆動及び位置検出用ヨークYXBは、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBの磁界が周囲に漏れにくくし、第2水平方向駆動用コイルCXBと、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石MXBとの間の磁束密度を高める役割を果たす。
【0075】
鉛直方向駆動及び位置検出用ヨークYYは、第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYA、MYBの磁界が周囲に漏れにくくし、第1鉛直方向駆動用コイルCYA及び第1鉛直方向ホールセンサSYAと、第1鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYAとの間の磁束密度を高め、第2鉛直方向駆動用コイルCYB及び第2鉛直方向ホールセンサSYBと、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石MYBとの間の磁束密度を高める役割を果たす。
【0076】
本実施形態では、可動部15aの移動の為の構造物としてガイド機構またはボールで挟み込む機構を必要とせず、枠18の弾性変形を介して可動部15aを移動可能な状態で保持することが可能になる。そのため、ガイド機構のクリアランスに起因するガタや摩擦を考慮する必要がないため、高精度で且つ安定性の高い手ブレ補正制御が可能である。また、複数の弾性手段を用いて保持する場合に比べて、構造が単純で一体成形やインサート成形が可能になるため、製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0077】
なお、本実施形態では、可動部15aの移動について枠18の弾性変形を利用するが、移動制御の際に、枠18の弾性力を考慮する必要はない。変位量をフィードバックして所望の変位量を得る制御方法(制御演算部13のPID制御)を使用するため、予め弾性力を考慮した複雑な演算を行う必要はないからである。
【0078】
なお、本実施形態では、磁界変化検出素子としてホール素子を利用したホールセンサによる位置検出を説明したが、磁界変化検出素子として別の検出素子を利用してもよい。具体的には、磁界の変化を検出することにより可動部の位置検出情報を求めることが可能なMIセンサ(高周波キャリア型磁界センサ)、または磁気共鳴型磁界検出素子、MR素子(磁気抵抗効果素子)であり、ホール素子を利用した本実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
また、可動部15aの移動のためのアクチュエータとして、磁石とコイルによる電磁力による駆動を説明したが、他のアクチュエータであってもよい。
【0080】
また、可動部15aを保持する機構として枠18を使用する形態を説明したが、ガイド機構またはボールで挟み込む機構であってもよい。
【0081】
本実施形態では、差動演算部61が、第1加速度g1の絶対値と、第2加速度g2の絶対値との和(|g1|+|g2|)の演算を行って、カメラ本体1の光軸Oが、水平状態から離角している場合の特定を行うとして説明したが、他の方法で特定を行っても良い。例えば、加速度センサACCとして、更に第3方向zに平行な第3検出軸方向の重力加速度成分を検出可能な加速度センサを採用し、第3検出軸方向の出力g3の絶対値が第3所定値を超えた場合には、カメラ本体1の光軸Oが、水平状態から離角している状態であると判断する(図12参照)。
【0082】
また、カメラ本体1の第3方向z軸周りの回転運動(ローリング)に基づく角度ブレ量に対応した出力値として出力したローリング角度信号Prhを使って、像ブレ補正を行う形態を説明したが、ローリング角度信号Prhの使用は、像ブレ補正以外に用いられても良い。例えば、ローリング角度信号Prhから、撮像素子ISの傾斜角度(撮像素子ISの撮像面を構成する矩形の長辺または短辺が水平線となす角)を特定し、長辺または短辺を水平にすべく可動部15aを駆動する形態が挙げられる。これにより、撮像面の矩形を構成する辺のいずれかを水平に保つことが可能になる。
【0083】
また、カメラ本体1が、一眼レフカメラのように、フォーカルプレーンシャッタや、可動ミラーの少なくとも一方を有する場合には、フォーカルプレーンシャッタや可動ミラーの動作による衝撃が加速度センサACCによる加速度検出に影響を与え、像ブレ補正の精度が極端に悪化するおそれがある。この場合には、フォーカルプレーンシャッタや可動ミラーの動作前、すなわち撮影動作開始直前に出力されたローリング角度信号Prhを使って像ブレ補正動作を行うことになるが、実際には撮影中はローリング角度信号Prhが一定のままなのでローリングによるブレは補正されずに、撮影動作開始直前における光軸周りの一定の傾斜が補正されることになる。
【0084】
また、カメラ本体1において、レンズ鏡筒2内に収容されている撮影レンズの焦点距離に応じてローリング角度信号Prhを用いた第3方向z軸周りの傾斜の補正を含む像ブレ補正の範囲を変更させてもよい。具体的には、撮影レンズの焦点距離が短い場合(広角レンズ)の場合は、ヨーイング、ピッチングに基づく像ブレ補正のための可動部15aの移動範囲を狭くすることが出来るため、ローリングに基づく像ブレ補正の為の可動部15aの移動範囲(回転範囲)を広くする。そのために、差動演算部61から出力されるローリング角度信号Prhの上限値、下限値を広めに設定し、上限値、下限値を超えた場合には、上限値または下限値を出力する。撮影レンズの焦点距離が長い場合(望遠レンズ)の場合は、ヨーイング、ピッチングに対応する像ブレ補正のための可動部15aの移動範囲を広くする必要があるため、ローリングに対応する像ブレ補正の為の可動部15aの移動範囲(回転範囲)を狭くする。そのために、差動演算部61から出力されるローリング角度信号Prhの上限値、下限値を狭めに設定し、上限値、下限値を超えた場合には、上限値または下限値を出力する。
【0085】
また、ローリングに基づく像ブレ補正の為のブレ検出センサとして、2軸又は3軸の検出軸を有する加速度センサを用いる例を説明したが、1軸の検出軸を有する加速度センサを2個または3個使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態におけるカメラ本体の斜視図である。
【図2】カメラ本体の構成図である。
【図3】カメラ本体の像ブレ補正部の回路構成図である。
【図4】ピッチング積分回路(又はヨーイング積分回路)の回路図である。
【図5】カメラ本体が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りにθだけ回転させた場合の、カメラ本体の正面図、及び加速度センサの正面から見た構成図である。
【図6】カメラ本体が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りに(90°+θ)だけ回転させた場合(第1縦位置姿勢状態から右回りにθだけ回転させた場合)の、カメラ本体の正面図、及び加速度センサの正面から見た構成図である。
【図7】カメラ本体が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りに(180°+θ)だけ回転させた場合(倒立横位置姿勢状態から右回りにθだけ回転させた場合)の、カメラ本体の正面図、及び加速度センサの正面から見た構成図である。
【図8】カメラ本体が正立横位置姿勢状態から正面から見て右回りに(270°+θ)だけ回転させた場合(第2縦位置姿勢状態から右回りにθだけ回転させた場合)の、カメラ本体の正面図、及び加速度センサの正面から見た構成図である。
【図9】像ブレ補正部の駆動部の正面図である。
【図10】駆動部の分解斜視図である。
【図11】駆動部の斜視図である。
【図12】第3検出軸を有する加速度センサを使った場合の、像ブレ補正部の回路構成図である。
【符号の説明】
【0087】
1 カメラ本体
2 レンズ鏡筒
7 カメラメイン基板
7X ヨーイングジャイロセンサベース基板
7Y ピッチングジャイロセンサベース基板
10 像ブレ補正部
11 ブレ量検出部
13 制御演算部
15 駆動部
15a、15b 可動部、固定部
18 枠
20 表示部
21 記憶部
45 撮像板基板
60Y ピッチング積分回路
60X ヨーイング積分回路
61 差動演算部
63A、63B 第1、第2鉛直方向駆動用誤差増幅回路
65 水平方向駆動用誤差増幅回路
66A、66B 第1、第2鉛直方向駆動用PID演算回路
68 水平方向駆動用PID演算回路
69A、69B 第1、第2鉛直方向駆動用PWMドライバ
71 水平方向駆動用PWMドライバ
ACC 加速度センサ
ax1、ax2 第1、第2検出軸
CXA、CXB 第1、第2水平方向駆動用コイル
CYA、CYB 第1、第2鉛直方向駆動用コイル
FXA、FXB 第1、第2水平方向枠連結部
FXA1、FXA2 第1水平方向枠連結部用取付穴
FXB1、FXB2 第2水平方向枠連結部用取付穴
FYA、FYB 第1、第2鉛直方向枠固定部
FYA1、FYA2 第1鉛直方向枠固定部用取付穴
FYB1、FYB2 第2鉛直方向枠固定部用取付穴
GSX ヨーイングジャイロセンサ
GSY ピッチングジャイロセンサ
GSXO、GSYO ジャイロセンサ軸
IS 撮像素子
MXA、MXB 第1、第2水平方向駆動及び位置検出用磁石
MYA、MYB 第1、第2鉛直方向駆動及び位置検出用磁石
O 光軸
Prh ローリング角度信号
Pxh ヨーイング角度信号
Pyh ピッチング角度信号
SX 水平方向ホールセンサ
SYA、SYB 第1、第2鉛直方向ホールセンサ
YXA、YXB 第1、第2水平方向駆動及び位置検出用ヨーク
YY 鉛直方向駆動及び位置検出用ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子の撮像面に光学像を結像させる撮像光学系の光軸に垂直な第1、第2検出軸方向の重力加速度成分を検出出力する加速度センサと、
前記加速度センサからの出力に基づいて、ローリングによる撮像装置の前記光軸周りの傾斜角度を算出する傾斜量算出部とを備えることを特徴とする前記撮像装置のブレ量検出装置を使用した像ブレ補正装置。
【請求項2】
前記撮像素子を有する可動部と、
前記傾斜量算出部により算出された前記傾斜角度に基づいて、前記可動部を、前記撮像素子の撮像面の矩形を構成する辺の1つが水平になるように、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する制御部とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の像ブレ補正装置。
【請求項3】
ピッチングジャイロセンサと、
ヨーイングジャイロセンサと、
前記撮像素子を有する可動部と、
像ブレ補正を行うために、前記ピッチングジャイロセンサからの出力に基づいて、ピッチングによるブレ量を算出し、前記ヨーイングジャイロセンサからの出力に基づいて、ヨーイングによるブレ量を算出し、前記ピッチングによるブレ量と、前記ヨーイングによるブレ量と、前記傾斜角度とに基づいて、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する制御部とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の像ブレ補正装置。
【請求項4】
前記第1、第2検出軸は、互いに直交し、前記撮像装置が水平に保持された状態において、重力方向と45度をなすことを特徴とする請求項1に記載の像ブレ補正装置。
【請求項5】
前記傾斜量算出部は、前記加速度センサからの前記第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力の絶対値の差異に基づいて前記傾斜角度を算出することを特徴とする請求項4に記載の像ブレ補正装置。
【請求項6】
ピッチングジャイロセンサと、
ヨーイングジャイロセンサと、
前記撮像素子を有する可動部と、
像ブレ補正を行うために、前記ピッチングジャイロセンサからの出力に基づいて、ピッチングによるブレ量を算出し、前記ヨーイングジャイロセンサからの出力に基づいて、ヨーイングによるブレ量を算出し、前記ピッチングによるブレ量と、前記ヨーイングによるブレ量と、前記傾斜角度とに基づいて、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御する制御部とを更に備え、
前記制御部は、前記加速度センサからの前記第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力の絶対値の差異の絶対値が、第1所定値を超えた場合は、前記像ブレ補正を行うために、前記ピッチングによるブレ量と、前記ヨーイングによるブレ量のみに基づいて、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御することを特徴とする請求項4に記載の像ブレ補正装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記加速度センサからの前記第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力の絶対値の和が、第2所定値未満の場合は、前記像ブレ補正を行うために、前記ピッチングによるブレ量と、前記ヨーイングによるブレ量のみに基づいて、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御することを特徴とする請求項3に記載の像ブレ補正装置。
【請求項8】
前記加速度センサは、更に前記光軸に平行な第3検出軸方向の加速度を検出可能な加速度センサであり、
前記第3検出軸方向の加速度出力が第3所定値を超えた場合は、前記像ブレ補正を行うために、前記ピッチングによるブレ量と、前記ヨーイングによるブレ量のみに基づいて、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御することを特徴とする請求項3に記載の像ブレ補正装置。
【請求項9】
フォーカルプレーンシャッタ、及び可動ミラーの少なくとも一方を備え、
前記フォーカルプレーンシャッタ、及び可動ミラーの少なくとも一方が動作されて前記撮像素子に露光が行われている間は、前記制御部は、前記像ブレ補正を行うために、前記ピッチングによるブレ量と、前記ヨーイングによるブレ量と、前記フォーカルプレーンシャッタ及び前記可動ミラーが動作する直前の前記加速度センサからの前記第1、第2検出軸方向の重力加速度成分の出力に基づく前記傾斜角度とに基づいて、前記光軸に垂直な平面上を移動可能に制御することを特徴とする請求項3に記載の像ブレ補正装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記撮像装置に取り付けられたレンズの焦点距離に応じて、前記ヨーイング、前記ピッチングに対応する前記像ブレ補正のための前記可動部の移動範囲と、前記ローリングに対応する前記像ブレ補正のための前記可動部の移動範囲を制御することを特徴とする請求項3に記載の像ブレ補正装置。
【請求項11】
前記加速度センサは、2軸または3軸の検出軸を有する加速度センサであることを特徴とする請求項1に記載の像ブレ補正装置。
【請求項12】
前記加速度センサは、1軸の検出軸を有する加速度センサを2個または3個使用することを特徴とする請求項1に記載の像ブレ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−151822(P2008−151822A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336547(P2006−336547)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】