説明

上部胃腸管の安全性を高めるためのフィルムコーティング錠

【課題】安全かつ有効な量のから選択される活性成分と薬学的に許容しうる賦形剤とを含む、胃に送達される新規な経口剤形を提供する。
【解決手段】胃に送達される前記活性成分を、素早く食道を通過して口、口腔前庭、咽頭及び食道内の炎症を回避するために、その経口剤形を、特定の寸法を有する楕円形、かつ、特定の材料によりフィルムコーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口及び口腔前庭、咽頭、喉頭及び食道の上皮及び粘膜組織を、これらの組織と活性成分との直接接触により引き起こされるびらん、潰瘍形成、または他の同様の炎症から保護する新規な経口剤形に関する。錠剤は変形楕円形であり、フィルムコーティングされている。更に本発明は、本明細書に記載する新規なフィルムコーティング剤形を用いて、異常なカルシウム及びホスフェート代謝により特徴付けられる疾患を治療または防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の活性成分を経口投与すると、時として投薬後直ぐに患者の愁訴が起きる。この愁訴は胸やけ、食道やけ、飲み込み時の痛み及び/または困難さ、及び/または胸骨の後ろ及び/または中央に存在する痛みとして患者により通常特徴付けられる。これらの愁訴は上部胃腸管、一般的には口から胃の間、最も一般的には食道の上皮及び粘膜組織のびらん、潰瘍形成、または他の同様の炎症により引き起こされる食道炎または食道刺激に起因していると信じられている。前記炎症は活性成分がこれらの上皮及び粘膜組織と直接接触する結果、局所的な炎症がこの場所に発生することにより引き起こされると仮定されている。剤形が食道中に付着すると、活性成分が徐々に溶解して食道の粘膜表面で薬剤が高濃度に存在することになる。
【0003】
特に、溶解時にpHが2〜3未満である薬剤、細胞毒活性を有する薬剤(腐食剤)、及び/または粘膜乾燥を引き起こす高浸透圧性溶液を局所的に発生させる薬剤が問題のある薬剤である。これらの活性剤は、臭化エンペロニウム、ドキシサイクリン、及びその他のテトラサイクリン/抗生物質、鉄剤、キニジン、非ステロイド性抗炎症薬、アルプレノロール、アスコルビン酸、カプトプリル、テオフィリン、ジドブジン(AZT)、及びビスホスホネートを含むが、これらに限定されるものではない。
【0004】
上部胃厠管を通り過ぎるまで、及び場合によっては胃を通り過ぎるまで(即ち腸溶錠)、活性成分の放出を遅らせるように剤形が開発されてきた。しかし、ある種の場合、剤形の放出を遅らせることが治療にとって望ましくないかまたは不必要な場合がある。したがって、食道の通過を素早くし、上部胃腸管中での活性化合物の放出を最小限にするかまたは回避し、そして活性成分を胃へ送達する、新規な経口剤形を開発することが望まれてきた。前記新規経口剤形は、ほぼ楕円形の錠剤であり、楕円形、変形楕円形、及びキャプレット形錠剤を含むがこれらに限定されるものではなく、また食道の通過を素早くし胃内で活性剤を放出するためにフィルムコーティングして、これにより口、咽頭、及び食道の組織を保護する。最も好ましくはリゼドロネートまたはアレンドロネート等のビスホスホネートを含む新規な変形楕円形のフィルムコーティング経口剤形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,583,122号明細書
【特許文献2】米国特許第4,922,007号明細書
【特許文献3】米国特許第5,019,651号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「An American Conference, Bisphosphonates:Current Status and future Prospects」
【非特許文献2】「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版、1990年、1288〜1300頁
【非特許文献3】「Handbook of Pharmaceutical Excipients」第2版、1994年、126〜134頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は経口用のほぼ楕円形である医薬製剤に関し、これは楕円形、変形楕円形、及びキャプレット形錠剤を含むがこれらに限定されるものではない。剤形はフィルムでコーティングされ、安全かつ有効な量の活性成分及び薬学的に許容しうる賦形剤から構成されている。前記剤形は食道の通過時間を素早くし、これによって口腔前庭、咽頭及び食道中での活性成分の放出を防ぎ、びらん、潰瘍形成または他の同様の炎症からこれらの上皮及び粘膜組織を保護する。
【0008】
したがって、本明細書で記載されている新規な剤形は、安全かつ有効な量の活性成分を前記ヒトまたは他の哺乳動物の胃へと送達し、ある種の活性成分の経口投与に時として伴う食道炎または食道剌激を実質的に軽減させる。
【0009】
本発明は更に、異常なカルシウム及びホスフェート代謝により特徴付けられる疾患を治療する方法も含み、この方法はこの種の疾患にかかったヒトまたは他の哺乳動物に本明細書に記載するビスホスホネートを含有する新規な経口剤形を投与することを含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は安全かつ有効な量の活性成分及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む新規なほぼ楕円形のフィルムコーティング経口剤形に関する。前記剤形は食道の通過を素早くし、これによって口、咽頭及び食道中での活性成分の放出を防ぐかまたは最小限とし、びらん、潰瘍形成または他の同様の炎症からこれらの上皮及び粘膜組織を保護する。特に好ましくは変形楕円形のフィルムコーティング経口剤形である。
【0011】
したがって、前記剤形は安全かつ有効な量の活性成分を前記ヒトまたは他の哺乳動物の胃へと送達するのに有効であり、活性成分の経口投与に時として伴う食道炎または食道刺激を実質的に軽減する。
【0012】
本発明は更に、異常なカルシウム及びホスフェート代謝により特徴付けられる疾患を治療する方法も含み、この方法はこの種の疾患にかかったヒトまたは他の哺乳動物に本明細書に記載する新規な経口剤形を投与することを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】変形楕円形錠剤の平面図である。
【図2】この側面図である。
【図3】前記変形楕円形錠剤の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.活性成分
本発明における活性成分は、治療効果を有し、そして前記ヒトまたは他の哺乳動物の胃に送達する必要のある成分であれば何れでも良い。活性成分が胃に送達される前に放出されると、胸やけ、食道やけ、飲み込み時の痛み及び/または困難さ、及び/または胸骨の後ろ及び/または中央の痛み等の愁訴を患者が起こす時、本発明の有効性が特に実感される。このような活性成分は、溶解時のpHが2〜3未満である薬剤、細胞毒活性を有する薬剤(腐食剤)、及び/または粘膜乾燥を引き起こす高浸透圧性溶液を局所的に発生させる薬剤である。好ましい活性剤は臭化エンペロニウム、ドキシサイタリン、及びその他のテトラサイクリン/抗生物質、鉄剤、塩化カリウム、キニジン、非ステロイド性抗炎症薬、アルプレノロール、アスコルビン酸、カプトプリル、テオフィリン、ジドブジン(AZT)、及びビスホスホネートから成る群より選ばれる。より好ましい活性剤はリゼドロネート、アレンドロネート及びパミドロネートであり、最も好ましくはリゼドロネートである。
【0015】
本発明のビスホスホネートは下記ジェミナル基を有する種々の構造のものである。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明で用いられる用語「リゼドロネート」は、ビスホスホネート化合物である3−ピリジル−1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ビスホスホン酸を表し、下記構造を有する。
【0018】
【化2】

【0019】
化合物リゼドロネートは、1996年12月10日発行のthe Procter & Gamble Co.に譲渡されたBenedictらによる特許文献1、及びIBC Technical Services主催、1990年5月21〜22日のThe Royal College of Physicians(ロンドン、英国)の非特許文献1に更に記載されており、これら両者は参照として本発明に組込まれる。
【0020】
用語「リゼドロネート活性成分」はリゼドロネート、リゼドロネート塩、リゼドロネートエステル、またはこれらの何れかの混合物を含む。リゼドロネートの如何なる薬学上許容しうる非毒性の塩またはエステルも、本発明の新規な経口剤形にリゼドロネート活性成分として用いても良い。リゼドロネートの塩には酸付加塩、特に塩酸塩があるが、如何なる薬学的に許容しうる非毒性の有機または無機酸塩を用いても良い。加えて、ホスホン酸基とで形成される塩を用いることもでき、これらはアルカリ金属塩(K、Na)及びアルカリ土類金属塩(Ca、Mg)を含むがこれらに限定はされず、Ca及びNa塩が好ましい。
【0021】
特に本明細書における活性成分として用いるのに好適なリゼドロネートの他のエステルは、限定はされないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、及びステアリルを含む直鎖または分岐鎖のC1〜C18アルキルエステル;限定はされないがビニル、アルキル、ウンデセニル、及びリノレニルを含む直鎖または分岐のC2〜C18アルケニルエステル;限定はされないがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルを含むC3〜C8シクロアルキルエステル;限定はされないがフェニル、トルイル、キシリル、及びナフチルを含むアリールエステル;限定はされないがメンチルを含む脂環式エステル;及び限定はされないがベンジル及びフェネチルを含むアラルキルエステルである。
【0022】
本明細書において用いられる用語「アレンドロネート」は、ビスホスホネート化合物である4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ビスホスホン酸及びその薬学的に許容しうる塩、即ち−ナトリウム三水和物を表す。化合物アレンドロネートは、共にMerkに発行されている特許文献2及び特許文献3に更に記載されており、これら両者も参照として本発明に組み込む。
【0023】
一般的に言えば、活性成分の適切な選択は、選択された製剤タイプ、疾患パターン、特に疾患の部位とタイプ、及び活性成分の所望する放出に依存する。加えて、活性成分の物理的及び化学的特性も、活性成分を含有する新規な剤形に使用するのに適した薬学的に許容しうる賦形剤を選択する際に考慮しなければならない。
【0024】
活性成分の有効な経口用量は疾患の程度に依存する。例えば成人の場合、リゼドロネート量は通常1日約1mgから約40mgであり、好ましくは1日約1mgから約30mgである。用量が継続的に投与される場合には、好ましい用量は1日1〜15mg、更に好ましくは1日1〜10mgである。用量が周期的に投与される場合には、好ましい用量は1日5〜40mgからであり、更に好ましくは1日10〜30mgからである。
【0025】
B.活性成分の送達部位
種々の疾患または傷害に罹患したヒトまたは他の哺乳動物は、活性成分を含有する新規な剤形をそのヒトまたは他の哺乳動物の胃に送達することによりうまく治療することができる。本明細書に記載する新規な経口用のほぼ楕円形のフィルムコーティング剤形は、食道を素早く通過し、それゆえ剤形を胃に効率的に送達し、口、咽頭及び/または食道中へのリゼドロネートの所望しない放出を回避しまたは最小化して、これによりこれらの組織の上皮または粘膜層のびらん、潰瘍形成または他の同様の炎症を防御する。本明細書において用いられる用語「胃腸管」は消化管、即ち口から肛門まで続く長さが約30フィート(約9m)の筋結織膜管に関する。本明細書において用いられる用語「上部胃腸管」は口腔前庭、咽頭、食道及び胃を意味する。本明細書において用いられる用語「下部胃腸管」は小腸及び大腸を意味する。
【0026】
用語「口腔前庭」は口または口腔を意味し、これは唇の外皮及び咽頭の粘膜内層へと続く粘膜で内張りされている。
【0027】
用語「咽頭」は鼻、口及び喉頭の後方に位置する上部胃腸管の部分に関する。
これは長さが約4インチ(約10cm)の粘膜管であり、後ろに食道へと続き、粘膜層、繊維層及び筋層から構成されている。
【0028】
本明細書において用いられる用語「食道」は、咽頭から胃まで続く長さが約9インチ(約23cm)の筋肉管である。食道は3つの層、管腔のまわりの内部粘膜層、中間輪紋状層及び外部筋層を有する。
【0029】
本明細書において用いられる用語「胃」は、食道と小腸との間にある胃腸管の部分を意味する。
【0030】
C.フィルムコーティング
本明細書において用いられる用語「フィルムコーティング」とは、活性成分に施される、活性成分と組み合わされる、活性成分と混合される、または活性成分に添加される薬学的に許容しうる賦形剤の混合物に関する。圧縮錠剤、ビーズ剤、粒剤または圧縮して錠剤化される活性成分の粒子に前記コーティングを施すことができる。選択されるコーティングは、選択された特定の活性成分に適合するものでなければならない。
【0031】
したがって、前記フィルムコーティングは、活性成分の粒子または顆粒を含有する圧縮錠剤に施すことが好ましい。しかしながら、その粒子または顆粒自体が錠剤に圧縮される前にフィルムコーティングされている場合は、圧縮錠剤自体をフィルムコーティングするかどうかは任意である。これらのフィルムコーティングにより、これらの新規な剤形は、上部胃腸管、特に口、咽頭及び食道の、粘膜または上皮組織への活性成分の望ましくない送達を回避するであろう。前記コーティングは、活性剤を胃へ送達することもでき、これはコーティングを作る賦形剤、そのタイプ、及び/またはその厚さを選択することにより当業者が操作することができる。
【0032】
フィルムコーティング用の好ましいポリマーはpHが約1.2から約5で可溶である。特に好ましいポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)単独、及び/またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂及びポリビニルピロリドンと組み合わせて、及びゼラチン、またはDri−Klear(Crompton & Knowles Corp.製、Mahwah、ニュージャージー州)またはOpadry(Colorcon製、West Point、ペンシルバニア州)等の他の市販されているフィルムコーティング調製品から成る群より選ばれる。HPMC、HPC、Dri−Klear及びOpadryが特に好ましい。HPMCの低粘性グレードであるE−5及びE−15が好ましいグレードであり、最も好ましくはE−5グレードである。コーティング懸濁液中の好ましいポリマー濃度は、50〜250cpsの間の粘度になるよう制御される。
【0033】
錠剤に固着するコーティングは通常、質量増加が約2%から約5%の範囲であり、好ましくは約3%の質量増加である。コーティングは可塑剤を含むことができ、通常含んでいる。好ましい可塑剤はポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールであり、最も好ましい可塑剤はポリエチレングリコールである。
【0034】
好ましい可塑剤量は、フィルム形成ポリマーに関して約15%から約40%であり、最も好ましい量は約20%である。フィルムコーティングに不透明性や色合いを与えるために染料または顔料を加えてもよい。好ましい顔料の量はフィルム形成ポリマーに関して約10%から約40%であり、最も好ましい量は約20%から約30%である。発泡を最小化するため、または錠剤上に溶液を噴霧し易くするために他の添加剤を加えてもよい。
【0035】
D.活性成分含有剤形を胃に送達するための 新規なほぼ楕円形のフィルムコーティング経口用剤形
上述のように、本発明はヒトまたは他の哺乳動物の胃に活性成分を送達するのに効果がある新規なほぼ楕円形のフィルムコーティング経口用剤形に関する。新規なほぼ楕円形のフィルムコーティング剤形は、上部胃腸管を素早く通過し、個体の胃に到達するまで活性成分の送達を回避する。胃に到達すると、剤形は溶解し、小腸及び/または大腸を通して活性成分を吸収することができるようになる。それゆえ、上部胃腸管の組織、特に口腔前庭、咽頭及び食道の上皮及び粘膜層が活性成分と直接接触しないことになり、活性成分は適切な部位で吸収される。
【0036】
それゆえ、前記経口剤形は、ある種の活性成分を含有する医薬組成物を経口投与する場合に時として起こる食道炎または食道刺激を実質的に軽減する。
【0037】
したがって、本発明における使用に適切な経口剤形はほぼ楕円形であり、好ましくは変形楕円形であり、そしてフィルムコーティングされたものである。変形楕円形剤形を図1〜3に示す。下記に示すように当業者によく知られている適切な医薬賦形剤とともに活性成分を用いて剤形が製剤化され、当業者によく知られている装置及び/または方法を用いて適切な形状に成型される。ほぼ楕円形の錠剤は以下の好ましい寸法を有する。即ち、長さは約0.23から約0.85インチ(約0.58から約2.16cm)、好ましくは約0.25から約0.75インチ(約0.64から1.91cm)であり、幅は約0.11から約0.4インチ(約0.28から約1.02cm)、好ましくは約0.15から約0.35インチ(約0.38から約0.89cm)であり、厚みは約0.075から約0.3インチ(約0.19から約0.76cm)、好ましくは約0.10から約0.25インチ(約0.25から約0.64cm)である。図1〜3に示したように変形楕円形錠剤は、長さ約0.455インチ(約1.156cm)、幅約0.225インチ(約0.572cm)及び厚みおよそ0.157インチ(約0.399cm)の寸法を有することができる。
【0038】
用語「医薬組成物」は、安全かつ有効な量の活性成分及び薬学的に許容しうる賦形剤から構成される経口剤形を意味する。本明細書に記載されている医薬組成物は約0.1%から約99%、好ましくは約0.5%から約95%の活性成分と、約1%から約99.9%、好ましくは5.00%から約99.90%の薬学的に許容しうる賦形剤から構成されている。リゼドロネート用には、組成物は、好ましくは、0.25%から40%、好ましくは約0.5%から約30%のリゼドロネート活性成分と、約60%から約97%、好ましくは約70%から約99.5%の薬学的に許容しうる賦形剤を含む。
【0039】
本明細書において用いられる用語「安全かつ有効な量」は、健全な医学的判断の範囲内において、治療されるべき症状及び/または状態を有意な正方向に改善する上で充分高いが、しかし深刻な副作用を避ける上で充分に低い(合理的な利益/危険比の)化合物または組成物の量を意味する。本発明の方法で使用する際の活性成分の安全かつ有効な量は、治療される特有の状態、治療される患者の年齢及び肉体的条件、症状の程度、治療期間、併用療法の性質、用いられる特有の活性成分、利用される特有の薬学的に許容しうる賦形剤、及び担当医の知識や経験に関わる類似の要因に応じて異なる。
【0040】
本明細書において用いられる用語「薬学的に許容しうる賦形剤」は、本技術分野における習熟者によく知られているあらゆる生理学上不活性で薬理学上不活性な物質であり、使用上選択される特定の活性成分の物理的及び化学的特性と適合する物質を含む。薬学的に許容しうる賦形剤は、ポリマー、樹脂、可塑剤、充填剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、共溶剤、緩衝系、界面活性剤、保存剤、甘味剤、香味剤、医薬グレード色素及び顔料を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載した医薬組成物に含有される薬学的に許容しうる賦形剤の全部または一部は、本明細書に記載した新規経口剤形に利用されるフィルムコーティングを調製するために使用される。
【0041】
本明細書において用いられる用語「経口剤形」は、個体の口を通して個体の胃に投与されるように意図されたあらゆる医薬組成物を意味し、本発明の目的において、送達される形態は活性成分の顆粒または粒子を含む変形楕円形錠剤(好ましくはフィルムコーティングされたもの)の形態である。
【0042】
本明細書において用いられる「フィルムコーティング経口剤形」は、本明細書において記載された医薬組成物を含有する経口剤形に関しており、活性成分を胃中で放出するのに効果的であるフィルムコーティングを利用するものである。フィルムコーティング経口剤形は活性成分の顆粒または粒子を含む圧縮錠剤であり、コーティングされていてもされていなくてもよい。
【0043】
本明細書において用いられる用語「素早い食道通過」とは、錠剤が口腔咽頭から胃まで通過するのにかかる時間を意味する。素早い食道通過は約90秒未満、好ましくは約1から約60秒で通過することを含む。最も好ましくは水50mlとともに摂った時20秒未満である。
【0044】
上述のように、胃における局所送達の最終部位は、以下の一つまたはそれ以上を操作することにより、当業者により申し分なく制御することができる。
(a)適切な活性成分(b)コーティングのタイプとそれに付随する前記コーティングの所望する厚さ及び透過性(膨潤性)(c)コーティング自体及び/またはコーティングされた錠剤、粒予、ビーズまたは顆粒内の時間依存性条件、及び(d)顆粒化された活性成分の粒子径 上述のように、薬学的に許容しうる賦形剤は、ポリマー、樹脂、可塑剤、充填剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、共溶剤、界面活性剤、保存剤、甘味剤、香味剤、緩衝系、医薬グレード色素及び顔料を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい溶剤は水である。
【0045】
本発明において有用な香味剤は、Mack Publishing Companyの、非特許文献2に記載されているものを含み、これらは参照として本明細書に組込まれる。
本発明において有用な染料または顔料は、American Pharmaceutical Association & the Pharmaceutical Pressの、非特許文献3に記載されているものを含み、これらは参照として本発明に組込まれる。
【0046】
好ましい共溶剤は、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
好ましい緩衝系は、酢酸カリウム、ホウ酸、炭酸、リン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、安息香酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルタル酸及びグルタミン酸を含むが、これらに限定されるものではない。特に好ましくはリン酸、酒石酸、クエン酸及び酢酸カリウムである。
【0048】
好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、スクロースモノエステル、及びラノリンエステル及びエーテルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0049】
好ましい保存剤はフェノール、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、安息香酸及びその塩、ホウ酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、クロルブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、酢酸及び硝酸フェニル水銀、ニトロメルソール、塩化べンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン及びプロピルパラベンを含むが、これらに限定されるものではない。特に好ましくは安息香酸の塩、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン及びプロピルパラベンである。
【0050】
好ましい甘味剤はショ糖、ブドウ糖、サッカリン、及びアスパルテームを含むが、これらに限定されるものではない。特に好ましくはショ糖及びサッカリンである。
【0051】
好ましい結合剤は、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ポビドン、アカシア、グアールガム、キサンタンガム及びトラガントを含むが、これらに限定されるものではない。特に好ましくはメチルセルロース、カルボマー、キサンタンガム、グアールガム、ポビドン及びナトリウムカルボキシメチルセルロースである。
【0052】
好ましい充填剤は、乳糖、ショ糖、マルトデキストリン、マンニトール、デンプン、及び微結晶性セルロースを含むが、これらに限定されるものではない。
【0053】
好ましい可塑剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジブチル、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、及びトリアセチンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0054】
好ましい潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びタルクを含むが、これらに限定されるものではない。
【0055】
好ましい崩壊剤は、クロスポビドン、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、アルギン酸、クレー、及びイオン交換樹脂を含むが、これらに限定されるものではない。
【0056】
好ましいポリマーは、ヒドロキプロピルメチルセルロース(HPMC)単独及び/またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース、Eudragit(登録商標)RL30D(Rohnl Pharma GmbH製、Weiderstadt、西ドイツ)等のアクリル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、及びポリビニルピロリドンまたはDri−Klear(Crompton & Knowles Corp.製、Mahwah、ニュージャージー州)またはOpadry(Colorcon製、West Point、ペンシルバニア州)等の他の市販されているフィルムコーティング調製品との組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の新規な経口剤形を利用すると、活性成分を確実に胃に送達することができ、これにより口、咽頭及び/または食道の粘膜及び上皮組織の活性剤の所望しない暴露を回避することができる。前記剤形は活性成分を容易に胃から吸収するようにし、口、咽頭または食道の上皮及び粘膜組織には活性成分は実質的に接触しない。したがって、本発明の新規な変形楕円形のフィルムコーティング経口用剤形は、ある種の活性成分を含む医薬組成物を経口投与する際に時々発生する食道炎または食道剌激の症状を大いに軽減する。
【0058】
胃内容物pH1.2〜5に可溶な如何なるフィルムコーティングも本発明の方法に用いることができる。フィルムコーティングとして用いられる好ましいポリマーを、全コーティングが胃中で溶解するのに充分な厚さで、圧縮錠剤、ゼラチンカプセル及び/またはビーズ、活性成分の粒子または顆粒に施さなければならない。賦形剤コーティングの溶解または崩壊は、通常コーティングされた剤形が胃に侵入するまで起こらない。
【実施例】
【0059】
下記の非限定的実施例は本発明の新規な経口剤形を更に説明するのに役立つ。
【0060】
実施例I
変形楕円形のフィルムコーティングリゼドロネート錠剤 それぞれ質量240mgのリゼドロネートコア錠剤110Kgにフィルムコーティングを施す。
【0061】
成分 Kg/バッチ mg/錠剤
リゼドロネートナトリウム錠剤30mg 110 240
Dri−Klear 2.598 5.67
Chroma−Tone White 0.701 1.53
精製水 30.2kg 65.9
【0062】
Dri−Klear(Crompton & Knowles Corp.製、Marwah、ニュージャージー州)は、HPMC、HPC、ポリエチレングリコール及び二酸化ケイ素の混合物であり、Chroma−Tone White(Crompton & Knowles Corp.製、Marwah、ニュージャージー州)は、HPCと二酸化チタンとの混合物である。
【0063】
コーティング懸濁液は下記のように調製する。
1.Dri−Klearを攪拌しながら60〜80℃の温精製水に加える。
2.全てのDri−Klearが溶解するまで連続的に混合しながら、Dri−Klear溶液を40℃またはそれ以下まで冷却する。
3.Chroma−Tone Whiteを混合しながら精製水に加える。高剪断混合機を用いて10〜25分間分散させる。
4.顔料懸濁液(ステップ3)をポリマー溶液(ステップ2)に加えて混合する。使用するまで混合し続ける。
5.コア錠剤を48インチ(約122cm)側面通気式コーティングパンに装填する。
6.排気温度がおよそ35℃になるまで錠剤を前加熱し、噴霧を開始する。吸気温度40〜60℃、300〜400g/分の速度でコーティング懸濁液を塗布する。
7.錠剤を冷却し排出する。
【0064】
実施例II
キャプレット形のフィルムコーティングアレンドロネート錠剤 それぞれ質量200mgのアレンドロネートコア錠剤100Kgにフィルムコーティングを施す。
【0065】
成分 Kg/バッチ mg/錠剤
アレンドロネートナトリウム錠剤10mg 100 200.0
Opadry 5.0 10.0
赤色酸化第二鉄 0.1 0.2
精製水 50kg 100
【0066】
Opadry(Colorcon製、West Point、ペンシルバニア州)は市販されているフィルムコーティング混合物である。
【0067】
コーティング懸濁液は下記のように調製する。
1.Opadryを攪拌しながら室温で精製水に加える。
2.全てのOpadryが溶解するまで混合する。
3.赤色酸化第二鉄を混合しながら精製水に加える。高剪断混合機を用いて5分間分散させる。
4.赤色酸化第二鉄懸濁液(ステップ3)をポリマー溶液(ステップ2)に加えて混合する。使用するまで混合し続ける。
5.コア錠剤を48インチ(約122cm)側面通気式コーティングパンに装填する。
6.排気温度がおよそ40℃になるまで錠剤を前加熱し、噴霧を開始する。吸気温度40〜60℃、250〜350g/分の速度でコーティング懸濁液を塗布する。
7.錠剤を冷却し排出する。
【0068】
実施例III
楕円形のリゼドロネート錠剤 フィルムコーティングリゼドロネート錠剤は、活性剤を含有する顆粒を調製し、顆粒をコーティングし、錠剤に圧縮し、そして錠剤をフィルムコーティングすることにより製造される。
【0069】
A.リゼドロネートナトリウム顆粒212.5Kgの調製
成分 Kg/バッチ mg/g(乾燥品基準)
リゼドロネートナトリウム 2.5 11.7
乳糖、無水物 100 471
微結晶性セルロース 100 471
ポリビニルピロリドン 10 47.1
精製水 75kg −
【0070】
顆粒は下記のように調製される。
1.ポリビニルピロリドンを精製水に溶解させる。
2.リゼドロネートナトリウム、乳糖及び微結晶性セルロースを高剪断混合機中で3分間混合する。
3.5分間隔で混合しながらポリビニルピロリドン溶液との混合物を顆粒化する。
4.流動床乾燥機中で吸入温度60℃で湿った塊を乾燥する。
5.乾燥した物質をハンマーミルを用いて粉砕し、所望の顆粒径にする。
【0071】
B.顆粒のコーティングおよび、リゼドロネートナトリウム錠剤130.3Kgの調製
成分 Kg/バッチ mg/錠剤
リゼドロネートナトリウム顆粒 106.8 213.6
ヒドロキシプロピルメチルセルロースE−15 5 10.0
精製水 50 100
クロスポビドン 3 6.0
微結晶性セルロース 15 30.0
ステアリン酸マグネシウム 0.5 1.0
【0072】
顆粒は以下のようにコーティングされ、錠剤に圧縮される。
1.ヒドロキシプロピルメチルセルロースE−15を連続的混合により60℃で精製水に溶解させる。30℃に冷却し、溶解するまで混合する。
2.リゼドロネートナトリウム顆粒を適切なコーティングカラムに加える。
3.ヒドロキシプロピルメチルセルロースE−15を吸入温度50℃で噴霧する。コーティング後吸入温度60℃でコーティングされた顆粒を乾燥する。
4.コーティング顆粒をツインシェル配合機に移し、クロスポビドンと微結晶性セルロースを加えて5分間混合する。
5.ステアリン酸マグネシウムを加えて3分間混合し、回転式プレスで錠剤に圧縮する。
【0073】
C.フィルムコーティング
それぞれ質量260.6mgのリゼドロネートコア錠剤120Kgにコーティングを施す。
【0074】
成分 Kg/バッチ mg/錠剤
リゼドロネートナトリウム錠剤2.5mg 120 260.6
ヒドロキシプロピルメチルセルロースE−5 2.3 5.0
ポリエチレングリコール6000 0.92 2.0
FD&C Blue #1 Lake 0.05 0.1
二酸化ケイ素 0.05 0.1
精製水 50kg 109
【0075】
以下のようにしてコーティング懸濁液を調製する。
1.ヒドロキシプロピルメチルセルロースE−5を攪拌しながら80℃で一部の精製水に加える。残りの精製水を10℃で加え、溶解するまで混合する。
2.ポリエチレングリコール6000を混合しながら精製水に加える。
3.FD&C Blue #1 Lake及び二酸化ケイ素をポリエチレングリコール溶液に加える。高剪断混合機を用いて10〜25分間分散させる。
4.顔料懸濁液(ステップ3)をポリマー溶液(ステップ1)に加えて混合する。
5.コアの錠剤を48インチ(約122cm)側面通気式コーティングパンに装填する。
6.排気温度がおよそ40℃になるまで錠剤を前加熱し、噴霧を開始する。吸気温度40℃、250g/分の速度でコーティング懸濁液を塗布する。
7.錠剤を冷却し排出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃に送達される新規な経口剤形であって、前記剤形は、安全かつ有効な量のビスホスホネートより選ばれる活性成分と薬学的に許容しうる賦形剤とを含み、前記経口剤形は、長さ0.58から2.16cm(0.23から0.85インチ)、幅0.28から1.02cm(0.11から0.4インチ)、及び厚み0.19から0.76cm(0.075から0.3インチ)の寸法を有する楕円形で、食道を素早く通過することを容易にし、口、口腔前庭、咽頭及び食道内の炎症を回避するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンまたはこれらの混合物から成る群から選択されるpH1.2から5で溶解する材料により全コーティングが胃中で溶解するのに充分な厚さでフィルムコーティングされ、前記賦形剤は、ポリマー、樹脂、可塑剤、充填剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、共溶剤、緩衝系、界面活性剤、保存剤、甘味剤、香味剤、医薬グレード色素及び顔料からなる群から選択される、ことを特徴とする経口剤形。
【請求項2】
前記剤形が活性成分の粒子と薬学的に許容しうる賦形剤を含む圧縮錠剤であることを特徴とする前記請求項1に記載の新規な経口剤形。
【請求項3】
前記活性成分の粒子がそれ自体フィルムコーティングされていることを特徴とする前記請求項2に記載の新規な経口剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67642(P2013−67642A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265555(P2012−265555)
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2010−127107(P2010−127107)の分割
【原出願日】平成10年6月8日(1998.6.8)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】