説明

ポータブルトイレの肘掛け構造

【課題】簡単な構造で、肘掛けの回動規制の解除を使用者が容易に行い得るポータブルトイレの肘掛け構造を提供する。
【解決手段】ポータブルトイレの肘掛け10のレバー11は操作部111と作用部112を有する。ワイヤ12は作用部112に連結され、ロックピン13は肘掛け10の後部でワイヤ12に連結される。框側取付具はロックピン13の回動を規制する。ねじりばね15はロックピン13を框側取付具に向かって付勢する。レバーストッパ16は、レバー11の回動範囲を規制する。被固定部182は、肘掛け10が水平に延びているときに固定台17に当接する。レバー11は、作用部112に及ぼされる力の方向を框7の前後方向に沿った方向に転換させ、ワイヤ12を引っ張り、框側取付具によるロックピン13の回動規制を解除する。固定台17は肘掛け10の回動軸181よりも前方側において肘掛け10の下方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には肘掛け構造に関し、特定的にはポータブルトイレの肘掛け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルトイレには、使用者の腰掛け動作や立ち上がり動作の負担を軽減するために、肘掛けが設けられているものがある。肘掛けがポータブルトイレ本体に固定されていると、使用者が肘掛けに手を置いて腰掛け動作や立ち上がり動作をしても肘掛けがぐらつかない一方で、使用者がポータブルトイレの側方からポータブルトイレの便座に移乗することができない。そこで、従来、必要に応じて肘掛けを跳ね上げて、ポータブルトイレの側方を開放することのできる肘掛け構造が提案されている。
【0003】
例えば、特開2005−137873号公報(特許文献1)には、肘掛けのアームのガイド穴にロックピンを嵌入して嵌合穴にストッパピンを嵌合することによってアームの回動を規制し、ロックピンとガイド穴とをずらして嵌合穴からストッパピンを離脱させることによってアームを回動可能とする、椅子の肘掛け構造が記載されている。
【0004】
また、特開2005−58567号公報(特許文献2)には、肘掛け本体の下面に固定されたアームに回動自在に軸支されたレバーおよびフックと、レバーおよびフックにわたって連結された連結バーとからなる椅子の肘掛け構造が記載されている。特許文献2の椅子の肘掛け構造では、フックを係合可能な係合部が肘掛けのホルダに係合され、フックに設けた弾性部材の付勢力により、フックが係合部に係合する方向に付勢されている。肘掛けを跳ね上げて側方を開放するには、レバーを把握し、肘掛け本体との間隔を小さくするように、ねじりコイルバネの付勢力に抗して引き上げれば、連結バーを介してフックをその軸支部について時計回り方向に回動させることができ、フックをホルダの係合部から離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−137873号公報
【特許文献2】特開2005−58567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の椅子の肘掛け構造では、使用者はロックピンをガイド穴に嵌入させたり、ロックピンを嵌合穴からずらしたりして、アームの回動を操作する必要がある。ロックピンと嵌合穴は、アームの回動軸、すなわち、使用者よりも後方の框に配置されている。そのため、アームを跳ね上げるときには、使用者が体をねじって框の方向を向いてロックピンを操作したり、介護者に頼る必要がある。このように、特許文献1の肘掛け構造では、使用者が便座に腰かけた状態で、手元で肘掛けを跳ね上げる操作をすることができない。
【0007】
また、特許文献2の椅子の肘掛け構造では、使用者が手元で、アームの回動規制を解除する操作をすることができるものの、構造が複雑であり、部品点数も多い。
【0008】
そこで、この発明の目的は、簡単な構造で、肘掛けの回動規制の解除を使用者が容易に行うことが可能なポータブルトイレの肘掛け構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一つの局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造は、肘掛けと、操作部材と、連結部材と、被連結部材と、框側取付具と、付勢部材と、規制手段と、支持部と、被支持部とを備える。
【0010】
肘掛けは、背もたれを支持する框に回動可能に取り付けられるものである。操作部材は、使用者が肘掛けの回動を操作するために、肘掛けに回動可能に取り付けられるものであり、使用者が力を加える操作部と操作部に加えられる力が作用する作用部とを有する。連結部材は、作用部に連結されるものである。被連結部材は、肘掛けの後部に取り付けられ、連結部材に連結されるものである。框側取付具は、框に取り付けられ、被連結部材の回動を規制するものである。付勢部材は、被連結部材を框側取付具に向かって付勢するものである。規制手段は、操作部材の回動範囲を規制するものである。支持部は、框に固定され、肘掛けを水平に支持するためのものである。被支持部は、肘掛けが水平に延びているときに支持部に当接するように肘掛けに配置される。
【0011】
操作部材は、使用者によって操作部に力が加えられたとき、作用部に及ぼされる力の方向を框の前後方向に沿った方向に転換させ、かつ、連結部材を引っ張ることにより、框側取付具による被連結部材の回動規制を解除するように構成されている。支持部は肘掛けの回動軸よりも前方側において肘掛けの下方に配置されている。
【0012】
使用者が操作部材の操作部に力を加えると、作用部には框の前後方向に沿った方向に力が及ぼされ、かつ、作用部に連結される連結部材が引っ張られる。連結部材にはピン形状の被連結部材が連結されている。被連結部材は框側取付具に向かって付勢部材によって付勢されているが、連結部材が引っ張られることによって、被連結部材が付勢部材による付勢と逆の向きに引っ張られて、被連結部材が框側取付具から遠ざけられる。被連結部材が框側取付具から遠ざかることによって、框側取付具による被連結部材の回動規制が解除される。
【0013】
こうして、使用者は、肘掛けを回動させることができるようになる。連結部材が引っ張られることによって被連結部材の回動規制が解除されるので、連結部材としては例えばワイヤを用いることもできる。
【0014】
一方、使用者が操作部材を操作しない場合には、被連結部材は付勢部材によって框側取付具に向かって付勢され、被連結部材の回動が規制される。
【0015】
このように、簡単な構造で、肘掛けの操作部材を操作することによって、肘掛けの回動規制の解除を使用者が容易に行うことが可能なポータブルトイレの肘掛け構造を提供することができる。
【0016】
また、肘掛けに固定される被支持部が、框に固定される支持部によって、肘掛けの回動軸よりも前方において下方から水平に保持されるので、使用者が便座から立ち上がるとき、肘掛けを保持してもぐらつきにくい。
【0017】
さらに、操作部材の回動範囲は規制手段によって規制されているので、使用者が操作部材を必要以上に回動させることを防ぎ、操作部材や連結部材、被連結部材の損傷を防ぐことができる。
【0018】
この発明の一つの局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、被連結部材は肘掛けの回動軸よりも後方側において肘掛けに取り付けられ、框側取付具は、肘掛けの回動軸の後方側において被連結部材の下方に配置される壁部を有し、付勢部材は被連結部材を後方に向かって付勢していることが好ましい。
【0019】
このようにすることにより、簡単な構成の框側取付具によって被連結部材の回動を規制することができる。また、操作部に力が加えられたときに連結部材が前方向に引っ張られるようにして、被連結部材の回動規制を解除させるように構成することができる。
【0020】
この発明の一つの局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、壁部の下面には、框の前後方向において、壁部の中央側で低く、壁部の端部側で高い傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0021】
被連結部材は肘掛けの回動軸よりも後方側において肘掛けに取り付けられているので、肘掛けが略鉛直に延びる状態から略水平に延びる状態に、上方から下方向きに回動するとき、被連結部材は下方から上方に向かって回動する。このとき、被連結部材は壁部の下面の傾斜面に沿って移動し、壁部の上面に戻る。このようにすることにより、使用者が肘掛けの回動を規制するために操作部材を操作する必要がなくなる。
【0022】
この発明の一つの局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、被連結部材はピン形状であることが好ましい。さらに、操作部材は、使用者が操作部に力を加えたときに作用部が上方から下方に向かって、かつ、後方から前方に向かって回動するように構成され、框側取付具は、付勢部材によって付勢される被連結部材を収容する凹部を有し、凹部は、前方側において開口し、凹部の内側下面は、開口側が相対的に低い傾斜面であることが好ましい。
【0023】
ピン形状の被連結部材が框側取付具の凹部に収容されることによって、簡単な構成の框側取付具と被連結部材で肘掛けの回動を規制することができる。
【0024】
また、使用者が操作部に力を加えたときに作用部が上方から下方に向かって回動するので、同時に、連結部材を介して作用部に連結されている被連結部材も上方から下方に向かって移動される。被連結部材を収容する凹部は前方側で開口し、凹部の内側下面は開口側が相対的に低い傾斜面であるから、被連結部材が上方から下方に向かって移動されるとき、すなわち、使用者が操作部に力を加えたとき、被連結部材が滑らかに移動する。
【0025】
このようにすることにより、簡単な構成で、使用者が容易に肘掛けの回動規制を解除することが可能になる。また、肘掛けが跳ね上げられた状態から略水平に延びる状態に戻されるとき、被連結部材が凹部の外部から凹部の内側底面に接近し易くなり、肘掛けの上下方向のガタツキが低減する。
【0026】
この発明の一つの局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、被連結部材は框の側面に向けて突出するように配置されていることが好ましい。
【0027】
このようにすることにより、被連結部材と框側取付具とを強固に係止させることができ、肘掛け構造全体の強度を高めることができる。また、框の側面上で被連結部材と框側取付具を係止することによって、他の位置で係止させる場合と比較して、肘掛け構造全体の構成を簡素にし、部品点数を少なくさせることができる。
【0028】
この発明の一つの局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、付勢部材はねじりバネであり、ねじりバネの一方の端部は被連結部材に接触するように配置されていることが好ましい。
【0029】
このようにすることにより、例えば、付勢部材が直線状のバネであり、ピン形状の被連結部材が直線状のバネの一方の端部によって付勢されている場合と比較して、被連結部材と付勢部材との接触部分が大きくなる。そのため、付勢部材に対する被連結部材の位置が変化しても被連結部材を付勢しやすくなる。
【0030】
この発明の別の局面に従ったポータブルトイレの肘掛け構造は、肘掛けと、操作部材と、連結部材と、フックと、ピン形状の框側係合具と、付勢部材と、規制手段と、支持部と、被支持部とを備える。
【0031】
肘掛けは、背もたれを支持する框に回動可能に取り付けられるものである。操作部材は、使用者が肘掛けの回動を操作するために肘掛けに回動可能に取り付けられるものであり、使用者が力を加える操作部と操作部に加えられる力が作用する作用部とを有する。連結部材は、作用部に連結されるものである。フックは、肘掛けの後部に取り付けられ、連結部材に連結されるものである。框側係合具は、フックと係合可能に框に取り付けられ、フックの回動を規制するものである。付勢部材は、フックを框側係合具に向かって付勢するものである。規制手段は、操作部材の回動範囲を規制するものである。支持部は、框に固定され、肘掛けを水平に支持するためのものである。被支持部は、肘掛けが水平に延びているときに支持部に当接するように肘掛けに配置される。
【0032】
操作部材は、使用者によって操作部に力が加えられたとき、作用部に及ぼされる力の方向を框の前後方向に沿った方向に転換させ、かつ、連結部材を引っ張ることにより、フックと框側係合具との係合を解除するように構成されている。支持部は肘掛けの回動軸よりも前方側において肘掛けの下方に配置されている。
【0033】
使用者が操作部材の操作部に力を加えると、作用部には框の前後方向に沿った方向に力が及ぼされ、かつ、作用部に連結される連結部材が引っ張られる。連結部材にはフックが連結されている。フックはピン形状の框側係合具に向かって付勢部材によって付勢されているが、連結部材が引っ張られることによって、フックが付勢部材による付勢と逆の向きに引っ張られて、フックが框側係合具から遠ざけられる。フックが框側係合具から遠ざかることによって、框側係合具によるフックの回動規制が解除される。
【0034】
こうして、使用者は、肘掛けを回動させることができるようになる。連結部材が引っ張られることによってフックの回動規制が解除されるので、連結部材としては例えばワイヤを用いることもできる。
【0035】
一方、使用者が操作部材を操作しない場合には、フックは付勢部材によって框側係合具に向かって付勢され、フックの回動が規制される。
【0036】
このように、簡単な構造で、肘掛けの操作部材を操作することによって、肘掛けの回動規制の解除を使用者が容易に行うことが可能なポータブルトイレの肘掛け構造を提供することができる。
【0037】
また、肘掛けに固定される被支持部が、框に固定される支持部によって、肘掛けの回動軸よりも前方において下方から水平に保持されるので、使用者が便座から立ち上がるとき、肘掛けを保持してもぐらつきにくい。
【0038】
さらに、操作部材の回動範囲は規制手段によって規制されているので、使用者が操作部材を必要以上に回動させることを防ぎ、操作部材や連結部材、フックの損傷を防ぐことができる。
【0039】
この発明に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、操作部と作用部は、操作部と操作部材の回動軸とを結ぶ線が作用部と操作部材の回動軸とを結ぶ線と略直交するように配置されていることが好ましい。
【0040】
このようにすることにより、使用者によって操作部に力が加えられたとき、作用部に及ぼされる力の方向を框の前後方向に沿った方向に転換させることが容易にできる。
【0041】
この発明に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、操作部材は、操作部が肘掛けの下方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0042】
このようにすることにより、使用者にとって、操作部に力を加えることが容易になる。
【0043】
この発明に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、支持部は、肘掛けが鉛直に延びるように回動されたときに肘掛けに当接する側面を有することが好ましい。
【0044】
このようにすることにより、跳ね上げられた肘掛けが回動し過ぎることを防ぐことができる。
【0045】
この発明に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、支持部は、框の側面に平行に延在し、肘掛けが水平に延びているときに肘掛けの側面に当接する壁部を有することが好ましい。
【0046】
このようにすることにより、肘掛けが略水平状態にされているとき、肘掛けの左右方向のがたつきを防ぐことができる。
【0047】
この発明に従ったポータブルトイレの肘掛け構造においては、回動軸には、軸方向に沿って弾性変形可能なウェーブワッシャーが配置されていることが好ましい。
【0048】
このようにすることにより、肘掛けの回動に勢いがつき過ぎたり、回動に大きな力が必要になったりすることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0049】
以上のように、この発明によれば、取り扱いが簡単な連結構造と、それを備える浴槽用手摺りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態のポータブルトイレの全体を示す左側面図である。
【図2】ベースと肘掛けの全体を示す左側面図である。
【図3】肘掛けの内部の構造を示す断面図である。
【図4】ベースと、ベースに固定された部材と、ロックピンとを示す図である。
【図5】レバーが握られたときの肘掛けの内部の構造を示す断面図である。
【図6】レバーが握られたときのベースと、ベースに固定された部材と、ロックピンとを示す図である。
【図7】肘掛けが跳ね上げられた状態の肘掛けの内部の構造を示す断面図である。
【図8】肘掛けが跳ね上げられた状態のベースと、ベースに固定された部材と、ロックピンとを示す図である。。
【図9】本発明の第2実施形態の肘掛けのベースと、ベースに固定された部材と、ロックピンとを示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の肘掛けのレバーが握られたときのベースと、ベースに固定された部材と、ロックピンとを示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の肘掛けの内部の構造を示す断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の肘掛けのベースと、ベースに固定された部材と、フックとを示す図である。
【図13】本発明の第3実施形態の肘掛けのレバーが握られたときのベースと、ベースに固定された部材と、フックとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0052】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態のトイレ100は、主に、便器1と、便器1の上面に取り付けられる便座2と、便座2と便器1の上面を覆う蓋3と、便器1を床面上に支持する脚4と、洗浄装置5と、使用者の背中が当接される背もたれ6と、背もたれ6の左右に配置される框7と、框7に固定される短肘掛け8と、框7に固定されたベース9を介して框7に取り付けられる肘掛け10とを備える。以下の説明において、背もたれ6が配置されている側をトイレ100の後方側、背もたれ6が配置されている側と反対側をトイレ100の前方側とする。
【0053】
便座2は、ボルト等によって便器1の上面に、鉛直面内で回動可能であるように取り付けられている。蓋3は、折りたたまれて背もたれ6の下方に立てかけられるように構成されている。洗浄装置5は、便器1の内部を洗浄するための水を収容するタンクや便器1内への水の供給等を制御する制御部や使用者が操作する操作ボタン等を含む。
【0054】
框7の左右側面には、一対の短肘掛け8が固定されている。短肘掛け8の上面は略水平に、前後方向に沿って延びている。框7の左右側面において短肘掛け8の上方には、例えば金属製のベース9が固定されている。ベース9には肘掛け10が回動可能に取り付けられている。肘掛け10は、上部の木製の肘掛け本体19と、下部の金属製のフレーム18とを含む。肘掛け本体19はフレーム18に固定されている。肘掛け10の上面は略水平に、前後方向に沿って延びている。肘掛け10の前方端部は、短肘掛け8の前方端部よりも前方に突出している。肘掛け10の前方端部の下面には、使用者が肘掛け10の回動を操作するためのレバー11が突出している。レバー11は操作部材の一例である。なお、肘掛け10と短肘掛け8は、左右の框7の両方に設けられていてもよく、左右のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0055】
図2に示すように、肘掛け10はフレーム18の後部の回動軸181を中心にして回動するように、ベース9に取り付けられている。回動軸181には、軸方向に沿って弾性変形可能なウェーブワッシャー(図示しない)が配置されている。
【0056】
ベース9において肘掛け10の回動軸181の前方には、肘掛け10のフレーム18を下方から支持する固定台17が固定されている。この実施形態においては、固定台17は金属によって形成され、樹脂製のカバーによって上面と後面とが被覆されているが、他の材質によって形成されていてもよい。固定台17は上面171と後壁172と横壁173とを含む。固定台17の上面171は水平に延びている。固定台17の後壁172は上面171の後端部から鉛直下向きに延びている。横壁173は、フレーム18を框7と横壁173との間に挟むように、框7と平行に配置され、固定台17の上面171から鉛直上向きに延びている。肘掛け10のフレーム18に設けられた被固定部182は、固定台17の上面171に接触する。なお、被固定部182は、フレーム18と一体的に形成されていてもよいし、フレーム18と別個に形成されてフレーム18に取り付けられてもよい。
【0057】
図3に示すように、フレーム18の前方端部にはレバー11が取り付けられている。レバー11は、操作部111と、作用部112と、レバー11の回動軸114とを含む。操作部111はフレーム18の下方に突出している。作用部112とレバー11の回動軸114とは、フレーム18の内部に収容されている。作用部112は、レバー11の回動軸114よりも上方に配置されている。レバー11の回動軸114は、操作部111よりも前方側に配置されている。図中の線Aは、操作部111、すなわち、使用者がレバー11を操作するときに使用者によって最も大きな力が加えられる位置とレバー11の回動軸114とを結ぶ方向に沿った線であり、図中の線Bは、作用部112、すなわち、後述するワイヤ12が取り付けられている位置とレバー11の回動軸114とを結ぶ方向に沿った線である。操作部111と作用部112は、線Aが線Bと略直交するように配置されている。
【0058】
レバー11の前方にはレバーストッパ16が配置されている。レバーストッパ16は、レバー11を収容するケースの内壁面によって形成されている。なお、レバーストッパ16は、例えばフレーム18の内壁面によって形成されていてもよい。レバー11とレバーストッパ16とは、レバーユニットとしてケースに収められ、ケースを介して肘掛け10に装着されてもよいし、レバー11とレバーストッパ16とが別々に肘掛け10に装着されてもよい。
【0059】
このように、レバー11は、操作部111が肘掛け10の下方に位置するように配置されている。このようにすることにより、使用者にとって、操作部111に力を加えることが容易になる。
【0060】
作用部112にはワイヤ12が取り付けられている。ワイヤ12はフレーム18の内部を通って、フレーム18の後方端部おいてロックピン13に連結されている。ロックピン13は、ピン形状であり、接続部材131を介してフレーム18に取り付けられて、框7の側面に向かって突出するように延びている。接続部材131は剛性の材質によって伸び縮みしないように形成されており、接続部材131の回動軸(図示しない)を中心にして回動可能であるようにフレーム18に取り付けられている。このようにすることにより、接続部材131の回動軸からロックピン13までの距離が固定されている。
【0061】
ロックピン13は、フレーム18の後端部に取り付けられているねじりばね15によって、前方側から後方側へ向かって付勢されている。ねじりばね15は、鉛直辺151と水平辺152とを有する。ねじりばね15の水平辺152は略水平方向に延び、フレーム18の内側底面143に接触している。ねじりばね15の鉛直辺151は略鉛直方向に延び、端部がロックピン13に接触している。
【0062】
図4に示すように、ベース9と肘掛け10(図3)との間において、ベース9には框側取付具14が溶接されている。框側取付具14には、前方側に開口した凹部141が形成されている。凹部141の下部142は、ロックピン13を下方から支持する。凹部141の下部142の上面、すなわち、凹部141の内側底面143は、前方の開口側で低く、後方側で高い傾斜面を形成している。凹部141の外側下面には戻り斜面144が形成されている。戻り斜面144は、前方側で高く、後方側で低い傾斜面である。なお、框側取付具14は、ベース9と別個に形成されてベース9を介して框7に取り付けられていてもよいし、ベース9と一体的に形成されていてもよい。
【0063】
図5に示すように、使用者がレバー11の操作部111を保持して、レバー11が下方から上向きに押されると、レバー11は回動軸114を中心に回動し、レバー11の作用部112は、図3の位置と比較して前方側に、下方側に、移動する。レバー11の作用部112が比較的前方側に移動することによって、レバー11に連結されているワイヤ12が前方側に引っ張られ、ワイヤ12に取り付けられているロックピン13が、ねじりばね15の付勢に逆らって前方側に引っ張られる。レバー11は、前方側の端面113がレバーストッパ16に接触するまで回動させられ得る。
【0064】
上述のように、操作部111と作用部112は、操作部111とレバー11の回動軸114とを結ぶ線Aが作用部112とレバー11の回動軸114とを結ぶ線Bと略直交するように配置されている。このようにすることにより、使用者によって操作部111に力が加えられたとき、作用部112に及ぼされる力の方向を框7の前後方向に沿った方向に転換させることが容易にできる。
【0065】
図6に示すように、前方側に引っ張られたロックピン13は、凹部141から抜け出る。
【0066】
以上のように構成されるポータブルトイレ100の肘掛け10構造の動作について説明する。
【0067】
肘掛け10が略水平方向に延びているとき、使用者が肘掛け10の前側端部を持ち上げようとすると、肘掛け10の前側端部には下から上向きの力が加わり、一方、肘掛け10の回動軸181よりも後方においては、上から下向きの力が加わる。図1から図4に示すように、レバー11がフレーム18の内部に押し込まれていないときには、肘掛け10の後端部のロックピン13はねじりばね15によって凹部141の内部に向かって付勢され、凹部141の内部に収容されて下方から凹部141の下部142によって支持されている。そのため、上から下向きの力が肘掛け10の後端部に加わっても、ロックピン13は下向きに回動されず、したがって、ロックピン13が取り付けられているフレーム18も回動されない。このように、使用者がレバー11を操作しない場合には、ロックピン13はねじりばね15によって框側取付具14に向かって付勢され、ロックピン13の回動が規制される。
【0068】
次に、使用者がレバー11の操作部111に力を加えると、作用部112には框7の前後方向に沿った方向に力が及ぼされ、かつ、作用部112に連結されるワイヤ12が引っ張られる。ワイヤ12にはピン形状のロックピン13が連結されている。ロックピン13は框側取付具14に向かってねじりばね15によって付勢されているが、ワイヤ12が引っ張られることによって、ロックピン13がねじりばね15による付勢と逆の向きに引っ張られて、ロックピン13が框側取付具14から遠ざけられる。ロックピン13が框側取付具14から遠ざかることによって、框側取付具14によるロックピン13の回動規制が解除される。
【0069】
こうして、使用者は、肘掛け10を回動させることができるようになる。ワイヤ12が引っ張られることによってロックピン13の回動規制が解除されるので、連結部材としてワイヤ12を用いることができる。
【0070】
また、肘掛け10に固定される被固定部182が、框7に固定される固定部17によって、肘掛け10の回動軸181よりも前方において下方から水平に保持されるので、使用者が便座2から立ち上がるとき、肘掛け10を保持してもぐらつきにくい。
【0071】
さらに、レバー11の回動範囲は規制手段によって規制されているので、使用者がレバー11を必要以上に回動させることを防ぎ、レバー11やワイヤ12、ロックピン13の損傷を防ぐことができる。
【0072】
図7と図8に示すように、肘掛け10は略鉛直方向に延びる状態まで跳ね上げられる。肘掛け10が跳ね上げられた状態では、肘掛け10の被固定部182が固定台17の後壁172に接触する。後壁172は被固定部182の前方側に配置されている。使用者が、肘掛け10をさらに回動させようとしても、被固定部182が後壁172に押しつけられて、肘掛け10が回動し過ぎることがない。
【0073】
このように、支持部は、肘掛け10が鉛直に延びるように回動されたときに肘掛け10に当接する後壁172を有する。このようにすることにより、跳ね上げられた肘掛け10が回動し過ぎることを防ぐことができる。
【0074】
次に、略鉛直方向に延びるように跳ね上げられた肘掛け10を略水平方向に延びる状態に戻すときの動作について説明する。
【0075】
跳ね上げられた肘掛け10を略水平方向に延びる状態に戻すときには、使用者は、レバー11を握らずに、肘掛け10の前方端部を保持して、肘掛け10の前方端部をゆっくりと下向きに回動させる。肘掛け10の前方端部が下向きに回動されると、肘掛け10の後方端部は上向きに回動される。このとき、ロックピン13は、図8に矢印Pで示す方向に動く。ロックピン13は、框側取付具14の下面の戻り斜面144に接触し、戻り斜面144に沿って、図中に矢印Qで示す方向に動く。肘掛け10が略水平に延びる状態にされると、ロックピン13はねじりばね15によって後方に向かって付勢されて、図中に矢印Rで示す方向に動き、凹部141内に収容される。
【0076】
このように、下部142の下面には、框7の前後方向において、下部142の中央側で低く、下部142の前方端部側で高い傾斜面が形成されている。
【0077】
ロックピン13は肘掛け10の回動軸181よりも後方側において肘掛け10に取り付けられているので、肘掛け10が略鉛直に延びる状態から略水平に延びる状態に、上方から下方向きに回動するとき、ロックピン13は下方から上方に向かって回動する。このとき、ロックピン13は下部142の下面の戻り斜面144に沿って移動し、下部142の上面に戻る。このようにすることにより、使用者が肘掛け10の回動を規制するためにレバー11を操作する必要がなくなる。
【0078】
また、ロックピン13は接続部材131を介してフレーム18に取り付けられており、接続部材131の回動軸からロックピン13までの距離が固定されている。このようにすることにより、肘掛け10を跳ね上げられた状態から略水平方向に延びる状態に戻すときに、下方向から上方向に回動するロックピン13が、上方へ跳ね上がることを防ぐことができる。このようにすることにより、肘掛け10のガタツキを低減することができる。なお、ロックピン13を接続部材131を介してフレーム18に取り付ける代わりに、凹部141の内側の上面の高さを調整するなどして、ロックピン13の上方向への移動を規制することによっても同様の効果が得られる。
【0079】
以上のように、第1実施形態のポータブルトイレ100の肘掛け10の構造は、肘掛け10と、レバー11と、ワイヤ12と、ロックピン13と、框側取付具14と、ねじりばね15と、レバーストッパ16と、固定台17と、被固定部182とを備える。
【0080】
肘掛け10は、背もたれ6を支持する框7に回動可能に取り付けられるものである。レバー11は、使用者が肘掛け10の回動を操作するために、肘掛け10に回動可能に取り付けられるものであり、使用者が力を加える操作部111と、操作部111に加えられる力が作用する作用部112とを有する。ワイヤ12は、作用部112に連結されるものである。ロックピン13は、肘掛け10の後部に取り付けられ、ワイヤ12に連結されるものである。框側取付具14は、框7に取り付けられ、ロックピン13の回動を規制するものである。ねじりばね15は、ロックピン13を框側取付具14に向かって付勢するものである。レバーストッパ16は、レバー11の回動範囲を規制するものである。固定台17は、框7に固定され、肘掛け10を水平に支持するためのものである。被固定部182は、肘掛け10が水平に延びているときに固定台17に当接するように肘掛け10に配置される。
【0081】
レバー11は、使用者によって操作部111に力が加えられたとき、作用部112に及ぼされる力の方向を框7の前後方向に沿った方向に転換させ、かつ、ワイヤ12を引っ張ることにより、框側取付具14によるロックピン13の回動規制を解除するように構成されている。固定台17は肘掛け10の回動軸181よりも前方側において肘掛け10の下方に配置されている。
【0082】
このようにすることにより、簡単な構造で、肘掛け10のレバー11を操作することによって、肘掛け10の回動規制の解除を使用者が容易に行うことが可能なポータブルトイレの肘掛け構造を提供することができる。
【0083】
また、ポータブルトイレ100の肘掛け10の構造においては、ロックピン13は肘掛け10の回動軸181よりも後方側において肘掛け10に取り付けられ、框側取付具14は、肘掛け10の回動軸181の後方側においてロックピン13の下方に配置される下部142を有し、ねじりばね15はロックピン13を後方に向かって付勢している。
【0084】
このようにすることにより、簡単な構成の框側取付具14によってロックピン13の回動を規制することができる。また、操作部111に力が加えられたときにワイヤ12が前方向に引っ張られるようにして、ロックピン13の回動規制を解除させるように構成することができる。
【0085】
また、ポータブルトイレ100の肘掛け10の構造においては、ロックピン13はピン形状である。さらに、レバー11は、使用者が操作部111に力を加えたときに作用部112が上方から下方に向かって、かつ、後方から前方に向かって回動するように構成され、框側取付具14は、ねじりばね15によって付勢されるロックピン13を収容する凹部141を有し、凹部141は、前方側において開口し、凹部141の内側底面143は、開口側が相対的に低い傾斜面である。
【0086】
ピン形状のロックピン13が框側取付具14の凹部141に収容されることによって、簡単な構成の框側取付具14とロックピン13で肘掛け10の回動を規制することができる。また、肘掛け10が跳ね上げられた状態から略水平に延びる状態に戻されるとき、ロックピン13が凹部141の外部から凹部141の内側底面143に接近し易くなり、肘掛け10の上下方向のガタツキが低減する。
【0087】
また、使用者が操作部111に力を加えたときに作用部112が上方から下方に向かって回動するので、同時に、ワイヤ12を介して作用部112に連結されているロックピン13も上方から下方に向かって移動される。ロックピン13を収容する凹部141は前方側で開口し、凹部141の内側底面143は開口側が相対的に低い傾斜面であるから、ロックピン13が上方から下方に向かって移動されるとき、すなわち、使用者が操作部111に力を加えたとき、ロックピン13が滑らかに移動する。
【0088】
このようにすることにより、簡単な構成で、使用者が容易に肘掛け10の回動規制を解除することが可能になる。
【0089】
また、ポータブルトイレ100の肘掛け10構造においては、ロックピン13は框7の側面に向けて突出するように配置されている。
【0090】
このようにすることにより、ロックピン13と框側取付具14とを強固に係止させることができ、肘掛け10の構造全体の強度を高めることができる。また、框7の側面上でロックピン13と框側取付具14を係止することによって、他の位置で係止させる場合と比較して、肘掛け10の構造全体の構成を簡素にし、部品点数を少なくさせることができる。
【0091】
また、ポータブルトイレ100の肘掛け10の構造においては、付勢部材はねじりばね15であり、ねじりばね15の一方の端部はロックピン13に接触するように配置されている。
【0092】
このようにすることにより、例えば、付勢部材が直線状のバネであり、ピン形状のロックピン13が直線状のバネの一方の端部によって付勢されている場合と比較して、ロックピン13とねじりばね15との接触部分が大きくなる。そのため、ねじりばね15に対するロックピン13の位置が変化してもロックピン13を付勢しやすくなる。
【0093】
また、ポータブルトイレ100の肘掛け10の構造においては、固定台17は、框7の側面に平行に延在し、肘掛け10が水平に延びているときに肘掛け10の側面に当接する横壁173を有する。
【0094】
このようにすることにより、肘掛け10が略水平状態にされているとき、肘掛け10の左右方向のがたつきを防ぐことができる。
【0095】
また、ポータブルトイレ100の肘掛け10の構造においては、回動軸181には、軸方向に沿って弾性変形可能なウェーブワッシャーが配置されている。
【0096】
このようにすることにより、肘掛け10の回動に勢いがつき過ぎたり、回動に大きな力が必要になったりすることを防ぐことができる。
【0097】
(第2実施形態)
第2実施形態のポータブルトイレは、第1実施形態のポータブルトイレ100(図1〜図8)とほぼ同様の構成を備える。第2実施形態のポータブルトイレが第1実施形態と異なる点は、框側取付具の形状である。以下、図1〜図8に示す参照符号と同一の参照符号によって示される部材については説明を省略する。
【0098】
図9に示すように、第2実施形態のポータブルトイレのベース9には、框側取付具として、板24が固定されている。板24は、略水平に延びており、肘掛け本体19が略水平方向に延びているときに、ねじりばね15によって付勢されたロックピン13を下方向から支持する。
【0099】
使用者がレバー11を握らないときには、第1実施形態と同様、ロックピン13はねじりばね15によって、板24の上に配置されるように付勢される。ロックピン13が板24によって下から支持されているので、使用者が肘掛け本体19の前方端部を上向きに回動させようとしても、ロックピン13が配置されている肘掛け10の後方端部は下向きに回動されない。このようにして、簡単な構成で、肘掛け10の回動を規制することができる。
【0100】
図10に示すように、使用者がレバー11を握ると、レバー11の作用部112に連結されているワイヤ12が前方に引っ張られ、ワイヤ12の後端部に連結されているロックピン13が前方に引っ張られる。ロックピン13が板24上の領域から外れるまで前方に引っ張られると、板24による回動の規制が解除される。
【0101】
このように、使用者は手元のレバー11を握って、肘掛け10の回動の規制を解除し、肘掛け10を跳ね上げることができる。
【0102】
なお、板24の下面には、第1実施形態の框側取付具14の戻り斜面144のような、前方側で高く後方側で低い傾斜面が形成されていない。そこで、跳ね上げられた肘掛け10を戻すときには、使用者は、レバー11を握る必要がある。
【0103】
第2実施形態のポータブルトイレの肘掛け構造のその他の構成と効果は、第1実施形態と同様である。
【0104】
(第3実施形態)
第3実施形態のポータブルトイレは、第1実施形態のポータブルトイレ100(図1〜図8)とほぼ同様の構成を備える。第3実施形態のポータブルトイレが第1実施形態と異なる点は、框側取付具14の代わりに突起が形成されている点と、ロックピン13の代わりにフックを備える点である。以下、図1〜図8に示す参照符号と同一の参照符号によって示される部材については説明を省略する。
【0105】
図11と図12に示すように、第3実施形態のポータブルトイレの肘掛け30においては、レバー11の作用部112に連結されたワイヤ12の後端部に、フック33が連結されている。フック33は、例えばV字形状に形成されており、棒状の上辺331と下辺332とから形成されている。上辺331と下辺332とは、一方の端部において連結され、他方の端部は離隔されてV字形状に形成されており、開口部と屈曲部とを有する。フック33は、開口部を後方側に向けて、屈曲部においてワイヤ12に連結されている。フック33はねじりばね15の鉛直辺151に接触し、ねじりばね15によって後方に向かって付勢されている。
【0106】
ベース9には、框側係合具として突起34が形成されている。ねじりばね15によって後方に向かって付勢されたフック33は、突起34に係合する。フック33が突起34に係合しているとき、フック33の上辺331は下から突起34によって支持されている。
【0107】
使用者がレバー11を握らないときには、フック33は突起34によって下から支持されているので、使用者が肘掛け本体19の前方端部を上向きに回動させようとしても、フック33が配置されている肘掛け10の後方端部は下向きに回動されない。このようにして、肘掛け10の回動を規制することができる。
【0108】
図13に示すように、使用者がレバー11を握ると、レバー11の作用部112に連結されているワイヤ12が前方に引っ張られ、ワイヤ12の後端部に連結されているフック33が前方に引っ張られる。フック33の上辺331が突起34から外れるまで前方に引っ張られると、突起34による回動の規制が解除される。
【0109】
このように、使用者は手元のレバー11を握って、肘掛け10の回動の規制を解除し、肘掛け10を跳ね上げることができる。
【0110】
なお、跳ね上げられた肘掛け10を戻すときには、フック33の上辺331が突起34に接触して肘掛け10の回動を妨げられないよう、使用者はレバー11を握る必要がある。
【0111】
以上のように、第3実施形態のポータブルトイレの肘掛け30の構造は、肘掛け30と、レバー11と、ワイヤ12と、フック33と、ピン形状の突起34と、ねじりばね15と、レバーストッパ16と、固定台17と、被固定部182とを備える。
【0112】
肘掛け30は、背もたれ6を支持する框7に回動可能に取り付けられるものである。レバー11は、使用者が肘掛け30の回動を操作するために肘掛け30に回動可能に取り付けられるものであり、使用者が力を加える操作部111と、操作部111に加えられる力が作用する作用部112とを有する。ワイヤ12は、作用部112に連結されるものである。フック33は、肘掛け30の後部に取り付けられ、ワイヤ12に連結されるものである。突起34は、フック33と係合可能に框7に取り付けられ、フック33の回動を規制するものである。ねじりばね15は、フック33を突起34に向かって付勢するものである。レバーストッパ16は、レバー11の回動範囲を規制するものである。固定台17は、框7に固定され、肘掛け30を水平に支持するためのものである。被固定部182は、肘掛け30が水平に延びているときに固定台17に当接するように肘掛け30に配置される。
【0113】
レバー11は、使用者によって操作部111に力が加えられたとき、作用部112に及ぼされる力の方向を框7の前後方向に沿った方向に転換させ、かつ、ワイヤ12を引っ張ることにより、フック33と突起34との係合を解除するように構成されている。固定台17は肘掛け30の回動軸181よりも前方側において肘掛け30の下方に配置されている。
【0114】
使用者がレバー11の操作部111に力を加えると、作用部112には框7の前後方向に沿った方向に力が及ぼされ、かつ、作用部112に連結されるワイヤ12が引っ張られる。ワイヤ12にはフック33が連結されている。フック33はピン形状の突起34に向かってねじりばね15によって付勢されているが、ワイヤ12が引っ張られることによって、フック33がねじりばね15による付勢と逆の向きに引っ張られて、フック33が突起34から遠ざけられる。フック33が突起34から遠ざかることによって、突起34によるフック33の回動規制が解除される。
【0115】
こうして、使用者は、肘掛け30を回動させることができるようになる。ワイヤ12が引っ張られることによってフック33の回動規制が解除されるので、連結部材としては例えばワイヤ12を用いることができる。
【0116】
一方、使用者がレバー11を操作しない場合には、フック33はねじりばね15によって突起34に向かって付勢され、フック33の回動が規制される。
【0117】
このように、簡単な構造で、肘掛け30のレバー11を操作することによって、肘掛け30の回動規制の解除を使用者が容易に行うことが可能なポータブルトイレの肘掛け構造を提供することができる。
【0118】
また、肘掛け30に固定される被固定部182が、框7に固定される固定台17によって、肘掛け30の回動軸181よりも前方において下方から水平に保持されるので、使用者が便座2から立ち上がるとき、肘掛け30を保持してもぐらつきにくい。
【0119】
さらに、レバー11の回動範囲はレバーストッパ16によって規制されているので、使用者がレバー11を必要以上に回動させることを防ぎ、レバー11やワイヤ12、フック33の損傷を防ぐことができる。
【0120】
第3実施形態のポータブルトイレの肘掛け30構造のその他の構成と効果は、第1実施形態と同様である。
【0121】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。
【符号の説明】
【0122】
100:トイレ、6:背もたれ、7:框、10,30:肘掛け、11:レバー、111:操作部、112:作用部、114:レバーの回動軸、12:ワイヤ、13:ロックピン、14:框側取付具、141:凹部、142:凹部の下部、143:凹部の内側底面、144:戻り斜面、15:ねじりばね、16:レバーストッパ、17:固定台、172:後壁、173:横壁、181:肘掛けの回動軸、182:被固定部、24:板,33:フック、34:突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれを支持する框に回動可能に取り付けられる肘掛けと、
前記肘掛けに回動可能に取り付けられ、使用者が力を加える操作部と前記操作部に加えられる力が作用する作用部とを有して使用者が前記肘掛けの回動を操作するための操作部材と、
前記作用部に連結される連結部材と、
前記肘掛けの後部に取り付けられ、前記連結部材に連結される被連結部材と、
框に取り付けられ、前記被連結部材の回動を規制する框側取付具と、
前記被連結部材を前記框側取付具に向かって付勢する付勢部材と、
前記操作部材の回動範囲を規制する規制手段と、
框に固定され、前記肘掛けを水平に支持するための支持部と、
前記肘掛けが水平に延びているときに前記支持部に当接するように前記肘掛けに配置される被支持部とを備え、
前記操作部材は、使用者によって前記操作部に力が加えられたとき、前記作用部に及ぼされる力の方向を框の前後方向に沿った方向に転換させ、かつ、前記連結部材を引っ張ることにより、前記框側取付具による前記被連結部材の回動規制を解除するように構成され、
前記支持部は前記肘掛けの回動軸よりも前方側において前記肘掛けの下方に配置されている、ポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項2】
前記被連結部材は前記肘掛けの回動軸よりも後方側において前記肘掛けに取り付けられ、
前記框側取付具は、前記肘掛けの回動軸の後方側において前記被連結部材の下方に配置される壁部を有し、
前記付勢部材は前記被連結部材を後方に向かって付勢している、請求項1に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項3】
前記壁部の下面には、框の前後方向において、前記壁部の中央側で低く、前記壁部の端部側で高い傾斜面が形成されている、請求項2に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項4】
前記被連結部材はピン形状である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項5】
前記操作部材は、使用者が前記操作部に力を加えたときに前記作用部が上方から下方に向かって、かつ、後方から前方に向かって回動するように構成され、
前記框側取付具は、前記付勢部材によって付勢される前記被連結部材を収容する凹部を有し、
前記凹部は、前方側において開口し、
前記凹部の内側下面は、開口側が相対的に低い傾斜面である、請求項4に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項6】
前記被連結部材は框の側面に向けて突出するように配置されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項7】
前記付勢部材はねじりバネであり、
前記ねじりバネの一方の端部は前記被連結部材に接触するように配置されている、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項8】
背もたれを支持する框に回動可能に取り付けられる肘掛けと、
前記肘掛けに回動可能に取り付けられ、使用者が力を加える操作部と前記操作部に加えられる力が作用する作用部とを有して使用者が前記肘掛けの回動を操作するための操作部材と、
前記作用部に連結される連結部材と、
前記肘掛けの後部に取り付けられ、前記連結部材に連結されるフックと、
前記フックと係合可能に框に取り付けられ、前記フックの回動を規制するピン形状の框側係合具と、
前記フックを前記框側係合具に向かって付勢する付勢部材と、
前記操作部材の回動範囲を規制する規制手段と、
框に固定され、前記肘掛けを水平に支持するための支持部と、
前記肘掛けが水平に延びているときに前記支持部に当接するように前記肘掛けに配置される被支持部とを備え、
前記操作部材は、使用者によって前記操作部に力が加えられたとき、前記作用部に及ぼされる力の方向を框の前後方向に沿った方向に転換させ、かつ、前記連結部材を引っ張ることにより、前記フックと前記框側係合具との係合を解除するように構成され、
前記支持部は前記肘掛けの回動軸よりも前方側において前記肘掛けの下方に配置されている、ポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項9】
前記操作部と前記作用部は、前記操作部と前記操作部材の回動軸とを結ぶ線が前記作用部と前記操作部材の回動軸とを結ぶ線と略直交するように配置されている、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項10】
前記操作部材は、前記操作部が前記肘掛けの下方に位置するように配置されている、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項11】
前記支持部は、前記肘掛けが鉛直に延びるように回動されたときに前記肘掛けに当接する側面を有する、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項12】
前記支持部は、框の側面に平行に延在し、前記肘掛けが水平に延びているときに前記肘掛けの側面に当接する壁部を有する、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。
【請求項13】
前記回動軸には、軸方向に沿って弾性変形可能なウェーブワッシャーが配置されている、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載のポータブルトイレの肘掛け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−94179(P2013−94179A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236588(P2011−236588)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】