ボタン電池の収納構造
【課題】ボタン電池の挿し抜きが容易で、正電極面、負電極面の表裏の逆挿入を防止できるボタン電池の収納構造を提供することにある。
【解決手段】ボタン電池(10)の収納穴(2)と、該ボタン電池の上面の一部を係止する第1、第2の係止片(2b、2c)と、該ボタン電池を該係止片側へ付勢押圧する底面弾性切片(3)と、該ボタン電池を前記収納穴の側方へ付勢押圧する側面弾性切片(5)と、該側面弾性切片(5)と対向するように設けられた係止傾斜面(2e)と、収納穴底面の中心から前記係止片(2b、2c)の側に偏倚した底面に位置する回動支点(4)とを具備する。ボタン電池は、回動支点(4)より前記係止片(2b、2c)よりの天面部分を押圧されることにより、回動支点(4)を支点とした回動が起き、係止傾斜面(2e)とボタン電池周縁の係止めが解除されて該ボタン電池が取り外される。
【解決手段】ボタン電池(10)の収納穴(2)と、該ボタン電池の上面の一部を係止する第1、第2の係止片(2b、2c)と、該ボタン電池を該係止片側へ付勢押圧する底面弾性切片(3)と、該ボタン電池を前記収納穴の側方へ付勢押圧する側面弾性切片(5)と、該側面弾性切片(5)と対向するように設けられた係止傾斜面(2e)と、収納穴底面の中心から前記係止片(2b、2c)の側に偏倚した底面に位置する回動支点(4)とを具備する。ボタン電池は、回動支点(4)より前記係止片(2b、2c)よりの天面部分を押圧されることにより、回動支点(4)を支点とした回動が起き、係止傾斜面(2e)とボタン電池周縁の係止めが解除されて該ボタン電池が取り外される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボタン電池の収納構造に関し、特に電子機器等のボタン電池収納部から容易に取り外しができるボタン電池の収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボタン電池の収納構造の一例として、例えば下記の特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1には、図10に示すように、断面図で、両側のそれぞれに、第1の係止片31と第2の係止片32を有し、底面に板ばね片33を有するボタン電池の収納構造が示され、ボタン電池35は、第1、第2の係止片31、32の間に形成されている円形の電池収納穴に収納される。ボタン電池35を該電池収納穴に収納する場合には、まずボタン電池35を第2の係止片32に向けて傾斜させ、かつボタン電池全体を板ばね片33の弾発力に抗して上から下方に力P1で押し込むことで、その先端が側面弾性切片34に抗して第2の係止片32の下方に力P2で挿入され、その結果として、その後端が第1の係止片31に係止されて収納される。
【0003】
次に、ボタン電池35を電池収納穴から取り外す時には、図11に示されているように、指の腹で、押し下げる力P1と第2の係止片32方向にスライドする力P3(ただし、P3>P2)の2方向の力を同時にボタン電池の上側の面に加えて、該ボタン電池の先端を側面弾性切片34に抗して第2の係止片32の奥方向に深く押し込み、次いで押し下げる力P1を弱めることにより、該ボタン電池の後端が第1の係止片31からの係合を脱し、ボタン電池は電池収納穴から取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−185721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されたボタン電池の収納構造は、ボタン電池収納後にはこれを確実に保持するという利点があると考えられるが、ボタン電池を取り外す場合には、前記したように、押し下げる力P1と第2の係止片32方向にスライドする力P3の2方向の力を同時にボタン電池の上側の面に加えなければならず、該上側の面で指の腹が滑ったりして取り外しが容易でないという課題があった。また、ボタン電池の正、負の逆挿入が可能なため、逆挿入をした場合には、回路基板や電池収納部が破壊する恐れがあるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前記した課題を解決し、ボタン電池の挿し抜きが容易で、正電極面、負電極面の表裏の逆挿入を防止できるボタン電池の収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ボタン電池(10)の収納穴(2)と、該ボタン電池の上面周縁の一部を係止する第1、第2の係止片(2b、2c)と、該ボタン電池を該係止片側へ付勢押圧する底面弾性切片(3)と、該ボタン電池を前記収納穴の側方へ付勢押圧する側面弾性切片(5)とを備えたボタン電池の収納構造であって、前記側面弾性切片(5)と対向するように設けられた係止傾斜面(2e)と、前記収納穴底面の中心から前記係止片(2b、2c)の側に偏倚した底面に位置する回動支点(4)とを具備し、前記ボタン電池は、前記底面弾性切片と前記側面弾性切片の付勢押圧する力を受けて、前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記係止傾斜面(2e)とに押圧されることにより、収納穴(2)に収納保持され、前記回動支点(4)より前記係止片(2b、2c)よりの天面部分を押圧されることにより、前記回動支点(4)を支点とした回動が起き、前記係止傾斜面(2e)とボタン電池周縁の係止めが解除されて該ボタン電池が取り外されるようにした点に第1の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記係止傾斜面(2e)の両側に第1、第2の抑止側壁(2f、2g)を具備し、前記ボタン電池が正電極面、負電極面の表裏を逆にして挿入された場合に、ボタン電池の正電極面周縁に面取り(R)がないことにより、該ボタン電池が収納穴(2)の底面(2a)と前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記第1、第2の抑止側壁(2f、2g)とに係止されて、前記収納穴への収納が阻止されるようにした点に第2の特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収納穴に収納されているボタン電池の天面部分の一点を押圧するだけでボタン電池を収納穴から取り外すことができるので、従来装置のように、ボタン電池の上面を押し下げる力と該上面に平行な力の2方向の力を同時にボタン電池に印加する必要がなくなり、簡単に取り外すことができるようになる。
【0010】
また、誤って正電極面、負電極面の表裏を逆にして挿入がなされた場合には、ボタン電池は収納穴に入るのを阻止されるので、逆挿入を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明のボタン電池の収納構造の一実施形態の平面図である。
【図3】ボタン電池を収納穴に挿入する時のボタン電池と収納穴との関係を示す断面図である。
【図4】ボタン電池と収納穴の大きさとの関係を説明するための平面図である。
【図5】ボタン電池が収納穴に装着されている状態における図4のB−C線断面図である。
【図6】ボタン電池が収納穴に装着されている状態における図4のA−C線断面図である。
【図7】ボタン電池を収納穴から取り外す時のボタン電池と収納穴との関係を示す、図4のA−C線断面図である。
【図8】ボタン電池を正電極面、負電極面を逆にして収納穴に挿入した時の、図4のB−C線断面図である。
【図9】収納穴の底面に形成された回動支点の他の例を示す断面図である。
【図10】ボタン電池を収納穴に挿入する時の従来装置のボタン電池と収納穴との関係を示す断面図である。
【図11】ボタン電池を収納穴から取り外す時の従来装置のボタン電池と収納穴との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態のボタン電池の収納構造の斜視図を示し、電子機器のケース1の所定箇所にボタン電池の収納穴2が形成され、その底面2aには,底面弾性切片3および回動支点4、例えば突起が形成されている。また、前記収納穴2の周縁には、第1、第2の係止片2b、2c、凹部係止片2d、係止傾斜面2e、第1、第2の抑止側壁2f、2gが形成され、凹部係止片2d側の側面には、側面弾性切片5が配置されている。また、2hは収納穴2内の押下空間である。この押下空間2hの技術的意義は、図6、図7を参照して後述する。なお、図1の電子機器は、無線のキー端末を示すが、本発明はこれに限定されず、カメラ、自動車のキーなどであって、外径が厚みに対して大きい扁平形状のボタン電池を使用する物であれば、何でもよい。
【0013】
図2は、図1のボタン電池収納部のみの平面図(ボタン電池収納穴を上から見た図)を示し、図1と対応する符号は同一物を示す。
【0014】
図3は、ボタン電池10を収納穴2に収納する仕方を説明する図であり、図4は該収納時の平面図である。また、図5は、ボタン電池10が収納された状態を示す図である。ここに、図3、図5は、図4におけるB−C断面図を示し、図3、図4、図5中の図1、図2と対応する符号は同一物を示す。
【0015】
収納穴2の周縁を形成する前記第1、第2の抑止側壁2f、2g、係止傾斜面2eなどの収納穴中心点からの距離および周方向の寸法は、ボタン電池10をその先端が第1、第2の係止片2b、2c、および凹部係止片2dの下方空間に入るように傾斜して収納穴2に挿入した時に、図4に示すように、ボタン電池10の周縁が、第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'上に掛かり、係止傾斜面2eの上辺部2e'から少し外方にはみ出る程度の大きさになされている。
【0016】
ボタン電池10を収納穴2に収納する場合には、図3に示されているように、ボタン電池10の上面(または、天面)が正電極面10aになるようにし、かつその先端が第1、第2の係止片2b、2cの下部空間に入るように傾けて挿入する。そうすると、ボタン電池10の後方の周縁は、第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'に当接する。そこで、該ボタン電池10の後端が力P1で押圧されると、ボタン電池10が側面弾性切片5の弾力に抗して2点鎖線で示されているように前進し、ボタン電池10の負電極面10bの周縁の面取り形状10c(以下、R(アール)という)により第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'、および係止傾斜面2eの上辺部2e'の内側に滑り込んで、ボタン電池10の後端は滑らかに係止傾斜面2eの内面へと移動する。この結果、ボタン電池10は、図5に示されているように、収納穴2内にすっぽりと収まる。
【0017】
このとき、底面弾性切片3は、図5に示されているように、ボタン電池10の下面である負電極面10bの中央部を力F1で上方へ持ち上げるので、ボタン電池10の上面である正電極面10aの周辺部は第1、第2の係止片2b、2cと係止傾斜面2eの傾斜面とに係合して、ボタン電池10は収納穴2内に安定的に保持される。なお、このとき、ボタン電池10は、第1、第2の係止片2b、2cから下方に向かう力F2、側面弾性切片5から半径方向に向かう力F3、および係止傾斜面2eから該傾斜面に垂直な方向の力F4を受ける。前記係止傾斜面2eの内面は、図示から明らかなように、外方に向かうにつれて、収納穴2の径が狭まるように傾斜している。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、ボタン電池を傾けて収納穴2に入れ、その後端を押圧するだけでボタン電池を収納穴内に収納できるので、従来装置よりも簡単に収納することができるようになる。
【0019】
次に、ボタン電池10を収納穴2から取り外す場合について、図6,図7を参照して説明する。図6,図7は、図4をA−C線に沿って切った場合の断面図であり、図6、図7中の図1、図4と対応する符号は同一物を示す。なお、図6はボタン電池10が収納穴2内に収納されている状態を示し、図5とは切断線が違うだけで実質的に同じであるので、図6についての説明は省略する。
【0020】
さて、ボタン電池10を収納穴2から取り外す場合には、図6に示されているボタン電池10の先端(回動支点4より凹部係止片2d寄り)、つまり押下空間2h内に位置する先端を、力P1で押下する。そうすると、図7に示すように、ボタン電池10は回動支点4を支点として時計方向に回動し、かつ底面弾性切片3の反発力に支援されて、その後端は係止傾斜面2eを滑って係止傾斜面2eから外側へ飛び出すように脱出する。このようにして、ボタン電池10の後端が収納穴2から一旦脱出すれば、その後は、ボタン電池10の後端を指で摘んで完全に収納穴2から容易に取り出すことができる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、ボタン電池10の押下空間2hに位置する先端を小さな力P1で押下するだけでボタン電池10を取り外すことができるので、従来装置のように、ボタン電池の上面を押し下げる力と該上面に平行な力の2方向の力を同時にボタン電池に印加する必要がなくなり、ボタン電池を簡単に収納穴から取り出すことができるようになる。
【0022】
次に、本発明によれば、正電極面、負電極面の表裏の逆挿入を防止できる理由を、図8を参照して説明する。図8は図4のA−C線断面図であり、図8中の図1、図4と対応する符号は同一物を示す。
【0023】
図8は、ボタン電池の正電極面10aと負電極面10bの表裏を逆にして挿入した場合の図であり、逆挿入すると、正電極面10aと収納穴2の底面2aとが点K1で接触し、負電極面10bの先端が第1、第2の係止片2b、2cの下側辺、つまり点K2に当接し、かつ正電極面10aの後端側の面が第1、第2の抑止側壁2f、2gの上側辺、つまり点K3に当接して挿入が抑止され、ボタン電池10は図8に示す位置から動かなくなる。この結果、ユーザはボタン電池の正電極面と負電極面との表裏を誤って逆にして挿入しようとしたことが分かることになる。
【0024】
一方、ボタン電池10の正電極面と負電極面を正しくして挿入した場合には、図3で既に説明したように、ボタン電池10の負電極面10bの周縁にR(アール)10cが設けられているので、ボタン電池10の後端が力P1で押圧されると、R(アール)10cが第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'に接触する位置まで下がってボタン電池10の傾斜が緩やかになり、負電極面10bの先端のR(アール)10cは、収納穴2の底面2aと接触することなく、2点鎖線で示されているように、第1、第2の係止片2b、2cの下方の空間へと滑り込む。この結果、ボタン電池10の後端は第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'で抑止されることがなくなり、収納穴2中へと入り込む。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、ボタン電池の正電極面、負電極面の逆挿入を防止できるようになる。
【0026】
なお、前記回動支点4として突起に代えて、図9に示されているように、段部11を設けてもよい。また、他の構成であってもよい。要は、ボタン電池10を収納穴2から取り外す時にボタン電池の押下空間2h部位を押圧した時に、ボタン電池が支点または支軸を中心に回動するものであれば何でもよい。
【符号の説明】
【0027】
1・・・電子機器、2・・・ボタン電池収納穴、2a・・・底面、2b、2c・・・第1、第2の係止片、2e・・・係止傾斜面、2f、2g・・・第1、第2の抑止側壁、2h・・・押下空間、3・・・底面弾性切片、4・・・回動支点、5・・・側面弾性切片、10・・・ボタン電池。
【技術分野】
【0001】
本発明はボタン電池の収納構造に関し、特に電子機器等のボタン電池収納部から容易に取り外しができるボタン電池の収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボタン電池の収納構造の一例として、例えば下記の特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1には、図10に示すように、断面図で、両側のそれぞれに、第1の係止片31と第2の係止片32を有し、底面に板ばね片33を有するボタン電池の収納構造が示され、ボタン電池35は、第1、第2の係止片31、32の間に形成されている円形の電池収納穴に収納される。ボタン電池35を該電池収納穴に収納する場合には、まずボタン電池35を第2の係止片32に向けて傾斜させ、かつボタン電池全体を板ばね片33の弾発力に抗して上から下方に力P1で押し込むことで、その先端が側面弾性切片34に抗して第2の係止片32の下方に力P2で挿入され、その結果として、その後端が第1の係止片31に係止されて収納される。
【0003】
次に、ボタン電池35を電池収納穴から取り外す時には、図11に示されているように、指の腹で、押し下げる力P1と第2の係止片32方向にスライドする力P3(ただし、P3>P2)の2方向の力を同時にボタン電池の上側の面に加えて、該ボタン電池の先端を側面弾性切片34に抗して第2の係止片32の奥方向に深く押し込み、次いで押し下げる力P1を弱めることにより、該ボタン電池の後端が第1の係止片31からの係合を脱し、ボタン電池は電池収納穴から取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−185721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されたボタン電池の収納構造は、ボタン電池収納後にはこれを確実に保持するという利点があると考えられるが、ボタン電池を取り外す場合には、前記したように、押し下げる力P1と第2の係止片32方向にスライドする力P3の2方向の力を同時にボタン電池の上側の面に加えなければならず、該上側の面で指の腹が滑ったりして取り外しが容易でないという課題があった。また、ボタン電池の正、負の逆挿入が可能なため、逆挿入をした場合には、回路基板や電池収納部が破壊する恐れがあるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前記した課題を解決し、ボタン電池の挿し抜きが容易で、正電極面、負電極面の表裏の逆挿入を防止できるボタン電池の収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ボタン電池(10)の収納穴(2)と、該ボタン電池の上面周縁の一部を係止する第1、第2の係止片(2b、2c)と、該ボタン電池を該係止片側へ付勢押圧する底面弾性切片(3)と、該ボタン電池を前記収納穴の側方へ付勢押圧する側面弾性切片(5)とを備えたボタン電池の収納構造であって、前記側面弾性切片(5)と対向するように設けられた係止傾斜面(2e)と、前記収納穴底面の中心から前記係止片(2b、2c)の側に偏倚した底面に位置する回動支点(4)とを具備し、前記ボタン電池は、前記底面弾性切片と前記側面弾性切片の付勢押圧する力を受けて、前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記係止傾斜面(2e)とに押圧されることにより、収納穴(2)に収納保持され、前記回動支点(4)より前記係止片(2b、2c)よりの天面部分を押圧されることにより、前記回動支点(4)を支点とした回動が起き、前記係止傾斜面(2e)とボタン電池周縁の係止めが解除されて該ボタン電池が取り外されるようにした点に第1の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記係止傾斜面(2e)の両側に第1、第2の抑止側壁(2f、2g)を具備し、前記ボタン電池が正電極面、負電極面の表裏を逆にして挿入された場合に、ボタン電池の正電極面周縁に面取り(R)がないことにより、該ボタン電池が収納穴(2)の底面(2a)と前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記第1、第2の抑止側壁(2f、2g)とに係止されて、前記収納穴への収納が阻止されるようにした点に第2の特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収納穴に収納されているボタン電池の天面部分の一点を押圧するだけでボタン電池を収納穴から取り外すことができるので、従来装置のように、ボタン電池の上面を押し下げる力と該上面に平行な力の2方向の力を同時にボタン電池に印加する必要がなくなり、簡単に取り外すことができるようになる。
【0010】
また、誤って正電極面、負電極面の表裏を逆にして挿入がなされた場合には、ボタン電池は収納穴に入るのを阻止されるので、逆挿入を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明のボタン電池の収納構造の一実施形態の平面図である。
【図3】ボタン電池を収納穴に挿入する時のボタン電池と収納穴との関係を示す断面図である。
【図4】ボタン電池と収納穴の大きさとの関係を説明するための平面図である。
【図5】ボタン電池が収納穴に装着されている状態における図4のB−C線断面図である。
【図6】ボタン電池が収納穴に装着されている状態における図4のA−C線断面図である。
【図7】ボタン電池を収納穴から取り外す時のボタン電池と収納穴との関係を示す、図4のA−C線断面図である。
【図8】ボタン電池を正電極面、負電極面を逆にして収納穴に挿入した時の、図4のB−C線断面図である。
【図9】収納穴の底面に形成された回動支点の他の例を示す断面図である。
【図10】ボタン電池を収納穴に挿入する時の従来装置のボタン電池と収納穴との関係を示す断面図である。
【図11】ボタン電池を収納穴から取り外す時の従来装置のボタン電池と収納穴との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態のボタン電池の収納構造の斜視図を示し、電子機器のケース1の所定箇所にボタン電池の収納穴2が形成され、その底面2aには,底面弾性切片3および回動支点4、例えば突起が形成されている。また、前記収納穴2の周縁には、第1、第2の係止片2b、2c、凹部係止片2d、係止傾斜面2e、第1、第2の抑止側壁2f、2gが形成され、凹部係止片2d側の側面には、側面弾性切片5が配置されている。また、2hは収納穴2内の押下空間である。この押下空間2hの技術的意義は、図6、図7を参照して後述する。なお、図1の電子機器は、無線のキー端末を示すが、本発明はこれに限定されず、カメラ、自動車のキーなどであって、外径が厚みに対して大きい扁平形状のボタン電池を使用する物であれば、何でもよい。
【0013】
図2は、図1のボタン電池収納部のみの平面図(ボタン電池収納穴を上から見た図)を示し、図1と対応する符号は同一物を示す。
【0014】
図3は、ボタン電池10を収納穴2に収納する仕方を説明する図であり、図4は該収納時の平面図である。また、図5は、ボタン電池10が収納された状態を示す図である。ここに、図3、図5は、図4におけるB−C断面図を示し、図3、図4、図5中の図1、図2と対応する符号は同一物を示す。
【0015】
収納穴2の周縁を形成する前記第1、第2の抑止側壁2f、2g、係止傾斜面2eなどの収納穴中心点からの距離および周方向の寸法は、ボタン電池10をその先端が第1、第2の係止片2b、2c、および凹部係止片2dの下方空間に入るように傾斜して収納穴2に挿入した時に、図4に示すように、ボタン電池10の周縁が、第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'上に掛かり、係止傾斜面2eの上辺部2e'から少し外方にはみ出る程度の大きさになされている。
【0016】
ボタン電池10を収納穴2に収納する場合には、図3に示されているように、ボタン電池10の上面(または、天面)が正電極面10aになるようにし、かつその先端が第1、第2の係止片2b、2cの下部空間に入るように傾けて挿入する。そうすると、ボタン電池10の後方の周縁は、第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'に当接する。そこで、該ボタン電池10の後端が力P1で押圧されると、ボタン電池10が側面弾性切片5の弾力に抗して2点鎖線で示されているように前進し、ボタン電池10の負電極面10bの周縁の面取り形状10c(以下、R(アール)という)により第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'、および係止傾斜面2eの上辺部2e'の内側に滑り込んで、ボタン電池10の後端は滑らかに係止傾斜面2eの内面へと移動する。この結果、ボタン電池10は、図5に示されているように、収納穴2内にすっぽりと収まる。
【0017】
このとき、底面弾性切片3は、図5に示されているように、ボタン電池10の下面である負電極面10bの中央部を力F1で上方へ持ち上げるので、ボタン電池10の上面である正電極面10aの周辺部は第1、第2の係止片2b、2cと係止傾斜面2eの傾斜面とに係合して、ボタン電池10は収納穴2内に安定的に保持される。なお、このとき、ボタン電池10は、第1、第2の係止片2b、2cから下方に向かう力F2、側面弾性切片5から半径方向に向かう力F3、および係止傾斜面2eから該傾斜面に垂直な方向の力F4を受ける。前記係止傾斜面2eの内面は、図示から明らかなように、外方に向かうにつれて、収納穴2の径が狭まるように傾斜している。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、ボタン電池を傾けて収納穴2に入れ、その後端を押圧するだけでボタン電池を収納穴内に収納できるので、従来装置よりも簡単に収納することができるようになる。
【0019】
次に、ボタン電池10を収納穴2から取り外す場合について、図6,図7を参照して説明する。図6,図7は、図4をA−C線に沿って切った場合の断面図であり、図6、図7中の図1、図4と対応する符号は同一物を示す。なお、図6はボタン電池10が収納穴2内に収納されている状態を示し、図5とは切断線が違うだけで実質的に同じであるので、図6についての説明は省略する。
【0020】
さて、ボタン電池10を収納穴2から取り外す場合には、図6に示されているボタン電池10の先端(回動支点4より凹部係止片2d寄り)、つまり押下空間2h内に位置する先端を、力P1で押下する。そうすると、図7に示すように、ボタン電池10は回動支点4を支点として時計方向に回動し、かつ底面弾性切片3の反発力に支援されて、その後端は係止傾斜面2eを滑って係止傾斜面2eから外側へ飛び出すように脱出する。このようにして、ボタン電池10の後端が収納穴2から一旦脱出すれば、その後は、ボタン電池10の後端を指で摘んで完全に収納穴2から容易に取り出すことができる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、ボタン電池10の押下空間2hに位置する先端を小さな力P1で押下するだけでボタン電池10を取り外すことができるので、従来装置のように、ボタン電池の上面を押し下げる力と該上面に平行な力の2方向の力を同時にボタン電池に印加する必要がなくなり、ボタン電池を簡単に収納穴から取り出すことができるようになる。
【0022】
次に、本発明によれば、正電極面、負電極面の表裏の逆挿入を防止できる理由を、図8を参照して説明する。図8は図4のA−C線断面図であり、図8中の図1、図4と対応する符号は同一物を示す。
【0023】
図8は、ボタン電池の正電極面10aと負電極面10bの表裏を逆にして挿入した場合の図であり、逆挿入すると、正電極面10aと収納穴2の底面2aとが点K1で接触し、負電極面10bの先端が第1、第2の係止片2b、2cの下側辺、つまり点K2に当接し、かつ正電極面10aの後端側の面が第1、第2の抑止側壁2f、2gの上側辺、つまり点K3に当接して挿入が抑止され、ボタン電池10は図8に示す位置から動かなくなる。この結果、ユーザはボタン電池の正電極面と負電極面との表裏を誤って逆にして挿入しようとしたことが分かることになる。
【0024】
一方、ボタン電池10の正電極面と負電極面を正しくして挿入した場合には、図3で既に説明したように、ボタン電池10の負電極面10bの周縁にR(アール)10cが設けられているので、ボタン電池10の後端が力P1で押圧されると、R(アール)10cが第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'に接触する位置まで下がってボタン電池10の傾斜が緩やかになり、負電極面10bの先端のR(アール)10cは、収納穴2の底面2aと接触することなく、2点鎖線で示されているように、第1、第2の係止片2b、2cの下方の空間へと滑り込む。この結果、ボタン電池10の後端は第1、第2の抑止側壁2f、2gの上辺部2f'、2g'で抑止されることがなくなり、収納穴2中へと入り込む。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、ボタン電池の正電極面、負電極面の逆挿入を防止できるようになる。
【0026】
なお、前記回動支点4として突起に代えて、図9に示されているように、段部11を設けてもよい。また、他の構成であってもよい。要は、ボタン電池10を収納穴2から取り外す時にボタン電池の押下空間2h部位を押圧した時に、ボタン電池が支点または支軸を中心に回動するものであれば何でもよい。
【符号の説明】
【0027】
1・・・電子機器、2・・・ボタン電池収納穴、2a・・・底面、2b、2c・・・第1、第2の係止片、2e・・・係止傾斜面、2f、2g・・・第1、第2の抑止側壁、2h・・・押下空間、3・・・底面弾性切片、4・・・回動支点、5・・・側面弾性切片、10・・・ボタン電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン電池(10)の収納穴(2)と、該ボタン電池の上面の一部を係止する第1、第2の係止片(2b、2c)と、該ボタン電池を該係止片側へ付勢押圧する底面弾性切片(3)と、該ボタン電池を前記収納穴の側方へ付勢押圧する側面弾性切片(5)とを備えたボタン電池の収納構造であって、
前記側面弾性切片(5)と対向するように設けられた係止傾斜面(2e)と、
前記収納穴底面の中心から前記係止片(2b、2c)の側に偏倚した底面に位置する回動支点(4)とを具備し、
前記ボタン電池は、前記底面弾性切片と前記側面弾性切片の付勢押圧する力を受けて、前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記係止傾斜面(2e)とに押圧されることにより、収納穴(2)に収納保持され、前記回動支点(4)より前記係止片(2b、2c)よりの天面部分を押圧されることにより、前記回動支点(4)を支点とした回動が起き、前記係止傾斜面(2e)とボタン電池周縁の係止めが解除されて該ボタン電池が取り外されることを特徴とするボタン電池の収納構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボタン電池の収納構造において、
前記回動支点(4)が、突起または段差であることを特徴とするボタン電池の収納構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボタン電池の収納構造において、
前記係止傾斜面(2e)の両側に第1、第2の抑止側壁(2f、2g)を具備し、
前記ボタン電池が正電極面、負電極面の表裏を逆にして挿入された場合に、ボタン電池の正電極面周縁に面取り(R)がないことにより、該ボタン電池が収納穴(2)の底面(2a)と前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記第1、第2の抑止側壁(2f、2g)とに係止されて、前記収納穴への収納が阻止されることを特徴とするボタン電池の収納構造。
【請求項1】
ボタン電池(10)の収納穴(2)と、該ボタン電池の上面の一部を係止する第1、第2の係止片(2b、2c)と、該ボタン電池を該係止片側へ付勢押圧する底面弾性切片(3)と、該ボタン電池を前記収納穴の側方へ付勢押圧する側面弾性切片(5)とを備えたボタン電池の収納構造であって、
前記側面弾性切片(5)と対向するように設けられた係止傾斜面(2e)と、
前記収納穴底面の中心から前記係止片(2b、2c)の側に偏倚した底面に位置する回動支点(4)とを具備し、
前記ボタン電池は、前記底面弾性切片と前記側面弾性切片の付勢押圧する力を受けて、前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記係止傾斜面(2e)とに押圧されることにより、収納穴(2)に収納保持され、前記回動支点(4)より前記係止片(2b、2c)よりの天面部分を押圧されることにより、前記回動支点(4)を支点とした回動が起き、前記係止傾斜面(2e)とボタン電池周縁の係止めが解除されて該ボタン電池が取り外されることを特徴とするボタン電池の収納構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボタン電池の収納構造において、
前記回動支点(4)が、突起または段差であることを特徴とするボタン電池の収納構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボタン電池の収納構造において、
前記係止傾斜面(2e)の両側に第1、第2の抑止側壁(2f、2g)を具備し、
前記ボタン電池が正電極面、負電極面の表裏を逆にして挿入された場合に、ボタン電池の正電極面周縁に面取り(R)がないことにより、該ボタン電池が収納穴(2)の底面(2a)と前記第1、第2の係止片(2b、2c)と前記第1、第2の抑止側壁(2f、2g)とに係止されて、前記収納穴への収納が阻止されることを特徴とするボタン電池の収納構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−204158(P2012−204158A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68082(P2011−68082)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
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