説明

パイロット式吐止水・流調弁装置

【課題】軽い操作で吐止水及び流量調節の何れをも行うことができ、しかも一旦流量調節を行った後はその後に止水を行っても次の吐水時に予め調節した所望の流量で吐水を行うことのできるパイロット式吐止水・流調弁装置を提供する。
【解決手段】パイロット式吐止水・流調弁装置10を、パイロット弁34を進退移動させて吐止水の切換えを行う吐止水切換機構と、流量調節を行う流調機構とを備えて構成する。
パイロット弁34は吐止水切換機構と流調機構とで共通とし、また流調機構は吐止水切換機構によるパイロット弁34の止水動作後の吐水動作時に、パイロット弁34の流調位置を前回調節した流調位置に維持するように構成し、またパイロット弁34は伸縮可能な駆動軸60に設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吐止水と流量調節とをパイロット水路の開度制御によって行うパイロット式吐止水・流調弁装置に関し、詳しくは吐止水動作を繰り返しても吐水時に予め調節した所望流量で吐水可能なパイロット式吐止水・流調弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より水栓として各種のものが用いられているが、これら水栓は主水路の開度を変化させる主弁を主弁座に対して接近離間方向に進退移動させる際に大きな力を要し、操作が重いといった問題があった。
そこで水栓における操作を軽くする手段として、かかる水栓をパイロット式吐止水・流調弁装置、即ちパイロット弁を進退移動させることによって主弁をこれに追従して進退移動させ、主水路の開度を変化させる方式のパイロット式吐止水・流調弁装置を内蔵した水栓とすることが考えられる。
【0003】
例えば下記特許文献1にこの種パイロット式吐止水・流調弁装置の構成が開示されている。図29はその具体例を示している。
同図において300,302は主水路を形成する1次側の流入水路,2次側の流出水路で、304はその主水路上に設けられたダイヤフラム弁から成る主弁である。
この主弁304は、主弁座306に対し接近離間方向に進退移動して主水路の開度を変化させ、その開度に応じて主水路における流量を調節する。
【0004】
308は主弁304の背後に形成された背圧室で、この背圧室308は、主弁304に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁304には、これを貫通して流入水路300と背圧室308とを連通させる導入小孔310が設けられている。
この導入小孔310は、流入水路300からの水を背圧室308に導いて背圧室308の圧力を増大させる。
主弁304にはまた、これを貫通して背圧室308と流出水路302とを連通させる水抜水路としてのパイロット水路312が設けられている。
このパイロット水路312は、背圧室308内の水を流出水路302に抜いて背圧室308の圧力を減少させる。
【0005】
314は駆動軸316に一体移動状態に設けられたパイロット弁で、このパイロット弁314が主弁304に設けられたパイロット弁座318に対し図中上下方向、即ち主弁304の進退方向と同方向に進退移動することでパイロット水路312の開度が制御される。
図29において、320はパイロット弁314を駆動軸316とともに進退駆動させる電気的駆動装置である。
【0006】
この図29に示すパイロット式吐止水・流調弁装置にあっては、パイロット弁314がパイロット弁座318に向かって前進移動すると、パイロット弁314とパイロット弁座318との隙間が小さくなってパイロット水路312の開度が小となり、背圧室308からパイロット水路312を通じて流出水路302に抜ける水の量が少なくなって背圧室308の圧力は増大する。
また一方パイロット弁314が図中上向きに後退移動すると、パイロット弁314とパイロット弁座318との隙間が大きくなってパイロット水路312の開度が大となり、ここにおいて背圧室308からパイロット水路312を通じて流出水路302に抜ける水の量が多くなって背圧室308の圧力が減少する。
そして主弁304は、その背圧室308の圧力と流入水路300の圧力とをバランスさせるようにして、パイロット弁314の進退移動に追従して図中上下方向に進退移動し、主水路の開度を変化させる。
そしてその主水路の開度の変化に応じて、流入水路300から流出水路302への水の流量が調節される。
【0007】
このパイロット式吐止水・流調弁装置ではまた、パイロット弁314がパイロット弁座318に着座してパイロット水路312を閉鎖し、またこれによって主弁304が主弁座306に着座して主水路を閉鎖することで止水を行う。
またパイロット弁314がパイロット水路312を開放し、これによって主弁304が主弁座306から離間して主水路を開くことで吐水を行い、且つその吐水量を主弁304による主水路の開度変化によって調節する。
【0008】
この図29に示すパイロット式吐止水・流調弁装置にあっては、背圧室308の圧力の増減に基づいて主弁304を進退移動させ、そしてその背圧室308の圧力の増減をパイロット弁314の進退移動により制御するようになしていることから、小さい力で主弁304を動作させることができ、軽い操作で吐止水及び流量調節を行うことができる。
【0009】
しかしながらこのパイロット式吐止水・流調弁装置の場合、吐止水を行う度にその都度流量調節も行わなければならず、操作が面倒であって使い勝手の点で問題のあるものである。
即ち、せっかく所望流量となるようにパイロット弁314の位置を調節したとしても、その後止水を行うと必然的にパイロット弁314の位置が移動してしまうため、次に吐水を行うとき再び所望流量となるようにパイロット弁314の位置を再調節しなければならないといった面倒がある。
本発明はこのような問題点を解決するために案出されたものである。
【0010】
尚、下記特許文献2にはパイロット弁の進退移動により吐止水を行い、またこれとは別途に流調機構を設けて吐水時における流量調節を行い得るようになしたものが開示されているが、この特許文献2に開示のものは流調機構によって直接主弁の開度を制御するものであって、流量調節の際の操作が重いといった問題があり本発明とは異なったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−302790号公報
【特許文献2】特開2001−98596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、軽い操作で吐止水及び流量調節の何れをも行うことができ、しかも一旦流量調節を行った後は、その後に止水を行っても次の吐水時に予め調節した所望の流量で吐水を行うことのできるパイロット式吐止水・流調弁装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、(イ)主弁座に対して接近離間方向に進退移動して主水路の開度を変化させる主弁と、(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)前記主水路における1次側の流入水路の水を該背圧室に導いて該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(ニ)該背圧室と前記主水路における2次側の流出水路とを連通させる状態に前記主弁を貫通して設けられ、該背圧室の水を該流出水路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット水路と、(ホ)該主弁の進退方向に進退移動して前記パイロット水路の開度を制御する流調パイロット弁と、(ヘ)該流調パイロット弁を進退移動させ、進退移動量に応じて流調位置を定めて流調を行う流調機構と、を備え、前記流調パイロット弁の進退移動に追従して前記主弁を進退移動させて、前記主水路の流量調節を行うパイロット式の弁装置であって、前記パイロット水路を開閉する吐止水パイロット弁と、該吐止水パイロット弁を該パイロット水路を閉鎖する止水位置と、該パイロット水路を開放する吐水位置との間で進退移動させて吐止水の切換えを行う吐止水切換機構とを備え、且つ前記流調機構は、該吐止水切換機構による該吐止水パイロット弁の止水動作後の吐水動作時に前記流調パイロット弁の流調位置を前回調節した流調位置に維持するものとなしてあり、前記流調パイロット弁と吐止水パイロット弁とは共通のパイロット弁にて構成されていて、前記流調機構が、前記調節した流調位置に応じて該共通のパイロット弁の止水位置を移動させるものとなしてあるとともに、前記吐止水切換機構は、該調節した流調位置を吐水位置として該吐水位置と該移動した止水位置との間で該共通のパイロット弁を進退移動させるものとなしてあり、前記共通のパイロット弁は伸縮可能な駆動軸に設けてあって、前記流調機構は該駆動軸を伸縮させることによって該共通のパイロット弁の位置を全体的に軸方向に移動させ、該共通のパイロット弁による流調位置と止水位置とを移動させるものとなしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記駆動軸が前記共通のパイロット弁が設けられた一方の分割軸と他方の分割軸とに軸方向に分割されていて各分割軸が螺合され、回転操作部材による前記他方の分割軸の回転により前記一方の分割軸がねじ送りで進退移動させられることで、該駆動軸が伸縮するようになしてあることを特徴とするパイロット式吐止水・流調弁装置。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記吐止水切換機構が、前記吐止水パイロット弁を吐水位置と止水位置とに交互に切換え且つ保持するロック機構を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項4のものは、請求項3において、前記吐止水切換機構が駆動リングを有しており、該駆動リングが前記ロック機構を介して前記駆動軸を進退移動させることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、流量調節を行う流調パイロット弁と、パイロット水路を開閉して吐止水を行うための吐止水パイロット弁とを設けて、その吐止水パイロット弁を吐止水切換機構により進退移動させるようにし、そして流調パイロット弁を進退移動させる流調機構を、吐止水切換機構による吐止水パイロット弁の吐止水動作に拘わらず流調パイロット弁の流調位置を、前回調節した流調位置に維持するものとなしたもので、本発明によれば、吐止水及び流量調節の何れをもパイロット水路の開度の制御により小さな操作力で軽やかに行うことができるとともに、吐止水切換機構により吐止水パイロット弁を吐止水動作させても、吐水時における流調パイロット弁の流調位置を前回調節した、即ち設定済みの流調位置に維持できることから、吐止水動作の度に吐水量を所望流量に再調節するといった面倒がなく、操作が簡単であって使い勝手が良好である。
【0018】
本発明では、流調パイロット弁と吐止水パイロット弁とを共通のパイロット弁にて構成し、そして流調機構を、調節後の流調位置に応じて共通のパイロット弁の止水位置を移動させるものとなし、また吐止水切換機構を、調節後の流調位置と移動した止水位置との間で共通のパイロット弁を進退移動させるものとなしておく。
【0019】
本発明では、共通のパイロット弁を流調パイロット弁としても、また吐止水パイロット弁としても働かせるようになしているため装置の構成を簡単化でき、またこれに伴って装置をコンパクト化することができる。
この場合において、主弁の側に且つ主弁の軸心若しくはこれと平行な軸心周りにパイロット弁座を環状に設けて、そのパイロット弁座に対し共通のパイロット弁をその軸心方向に相対移動可能に嵌合させるようになすことができる。
このようになした場合、共通のパイロット弁の止水位置を容易にその軸心方向に沿って移動させることができる。
【0020】
本発明ではまた、共通のパイロット弁を伸縮可能な駆動軸に設け、そして流調機構によりその駆動軸を伸縮させることによって共通のパイロット弁の位置を全体的に軸方向に移動させ、かかる共通のパイロット弁による流調位置と止水位置とを移動させるようにしている。
このようにすれば、共通のパイロット弁の止水位置を容易に移動させることができ、また併せて流調位置も容易にその駆動軸の軸心方向に沿って移動させることができる。即ち容易に吐水流量を調節することができる。
従ってまた装置の構造を簡素化でき、併せてこれをより小型化することができる。
【0021】
この場合において、駆動軸を共通のパイロット弁が設けられた一方の分割軸と他方の分割軸とに軸方向に分割してそれらを螺合し、回転操作部材による他方の分割軸の回転により一方の分割軸をねじ送り作用で進退移動させ、以って駆動軸を伸縮させるようになすことができる(請求項2)。
このようにすれば、ハンドル等の回転操作部材と駆動軸とを同軸状に設けることが可能であり、装置の構造を更にコンパクト化することができるとともに、その駆動軸を簡単な構造で容易に伸縮させることができる。
【0022】
本発明においてはまた、上記吐止水切換機構を、吐止水パイロット弁を吐水位置と止水位置とに交互に切り換え且つ保持するロック機構を備えたものとなしておくことができる(請求項3)。
このようにすれば、吐止水操作を簡単に行うことができ、しかも吐水操作,止水操作を行った後に操作力を除いても吐水状態,止水状態に保たれるため、吐止水の操作をし続けなくても良い利点が得られる。
【0023】
この場合において、吐止水切換機構には駆動リングを備えておき、その駆動リングがロック機構を介して駆動軸を進退移動させるようになしておくことができる(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態であるパイロット式吐止水・流調弁装置を水栓とともに示す断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】同パイロット式吐止水・流調弁装置の要部を分解して示す斜視図である。
【図4】同パイロット式吐止水・流調弁装置における吐止水切換機構のスラストロック機構の作用説明図である。
【図5】同実施形態における流量調節の際の作用説明図である。
【図6】図5に続く作用説明図である。
【図7】同パイロット式吐止水・流調弁装置の大流量での吐水状態を止水状態とともに示す断面図である。
【図8】同パイロット式吐止水・流調弁装置の小流量での吐水状態を止水状態とともに示す断面図である。
【図9】参考例を示す図である。
【図10】図9の要部を拡大して示す図である。
【図11】図9を開弁状態で示す図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態の要部断面図である。
【図13】図12のパイロット式吐止水・流調弁装置の要部を分解して示す斜視図である。
【図14】同実施形態の回転子を示す図である。
【図15】同実施形態のスリーブと強制回転リングとを示す図である。
【図16】同実施形態のOリング取付部の構造を、キャップを外した状態で示す斜視図である。
【図17】同実施形態の主弁ガイド172の作用説明図である。
【図18】同実施形態における図17とは異なる作用説明図である。
【図19】同実施形態における更に異なる作用説明図である。
【図20】主弁移動量と流量との関係を表すグラフである。
【図21】本発明の更に他の実施形態の要部断面図である。
【図22】図21の要部分解斜視図である。
【図23】同実施形態の各部品の取付状態を説明するための分解斜視図である。
【図24】図23とは異なる部分の取付状態の説明図である。
【図25】更に異なる部分の取付状態を説明するための断面図である。
【図26】同実施形態の作用説明図である。
【図27】本発明の更に他の実施形態の要部断面図である。
【図28】同実施形態の伝達部材を示す図である。
【図29】従来のパイロット式吐止水・流調弁装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はパイロット式吐止水・流調弁装置で、12はこのパイロット式吐止水・流調弁装置10を備えた水栓である。
14は水栓12における吐水管で先端に吐水口を有し、その吐水口から吐水を行うようになっている。
16,18はパイロット式吐止水・流調弁装置10における主水路、即ち水栓12における主水路を形成する1次側の流入水路,2次側の流出水路で、20はその主水路上に設けられたダイヤフラム弁から成る主弁である。
【0026】
主弁20は硬質の主弁本体22と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜24とから成っている。
この主弁20は、主弁座25に対して図中上下方向に進退移動して主水路を開閉し、また主水路の開度を変化させる。
詳しくは、主弁座25への着座によって主水路を遮断し、また主弁座25から図中上向きに離間することによって主水路を開放する。
また主弁座25からの離間量に応じて主水路の開度を大小変化させ、主水路を流れる水の流量即ち吐水管14先端の吐水口からの吐水流量を調節する。
【0027】
この主弁20の図中上側の背後には背圧室26が形成されている。
背圧室26は、内部の圧力を主弁20に対して図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁20には、これを貫通して1次側の流入水路16と背圧室26とを連通させる導入小孔28が設けられている。
この導入小孔28は、流入水路16からの水を背圧室26に導いて背圧室26の圧力を増大させる。
【0028】
主弁20にはまた、これを貫通して背圧室26と2次側の流出水路18とを連通させる水抜水路としてのパイロット水路30が設けられている。
このパイロット水路30は、背圧室26内の水を流出水路18に抜いて、背圧室26の圧力を減少させる。
【0029】
図2に示しているように、主弁20にはその中心部においてこれを軸心方向に貫通する貫通孔32が設けられており、そこに吐止水パイロット弁及び流調パイロット弁を兼ねた共通のパイロット弁34が挿通され、このパイロット弁34の外周面と貫通孔32の内周面との間に、通路幅が狭小な環状をなす上記パイロット水路30が形成されている。
この主弁20には、貫通孔32の内周面に沿って主弁20の軸心周りに環状をなすパイロット弁座36が一体に設けられている。
38はこのパイロット弁座36におけるシール部で、環状溝内部に環状をなす弾性シールリングとしてのOリング40を保持ししている。
【0030】
上記パイロット弁34はこのパイロット弁座36に対し、主弁20の軸心に沿って図中上下方向に進退移動可能に嵌合するようになっている。
詳しくは、このパイロット弁34は、断面円形をなし且つ図中上下方向即ち進退方向において外径が同径のシール部42と、その下側(図中下側)の環状の凹所44とを有している。
環状の凹所44の軸方向の各端部は、凹所44の最小径部に向かって漸次小径となるテーパ面46とされており、そのテーパ面46の大径側の各端部に径方向外向きの段付部48,50が形成されている。
【0031】
尚図2は、パイロット弁34の止水時の状態を表しており、このときパイロット弁34はシール部42をOリング40を介してパイロット弁座36に対し全周に亘って径方向に弾性接触させ、パイロット弁34とパイロット弁座36との間を水密にシールした状態にある。
またこのとき主弁20は主弁座25に着座した状態にあって、主水路は閉鎖された状態にある。
【0032】
図5,図6はパイロット弁34の移動による流調(流量調節)時の作用を表している。
この実施形態では、流調の際にパイロット弁34はパイロット水路30を閉鎖することはなく、その移動によってパイロット水路30の開度だけを変化させる。
後述のハンドル58の回転操作量がそのように規制されている。
【0033】
この実施形態では、図5(I)に示しているようにパイロット弁34が図中上向きに後退移動すると、パイロット弁34とパイロット弁座36との間の隙間が大となり、背圧室26内の水がパイロット水路30を通じて流出水路18側に多く抜け出して背圧室26の圧力が減少する。
そこで主弁20が流入水路16との圧力差により図中上向きに後退移動し、そして図5(II)に示しているように、流入水路16の圧力と背圧室26の圧力とがバランスする位置で主弁20の後退移動が停止する。
【0034】
この主弁20の後退移動によって主弁20と主弁座25との間の隙間が大となり、流入水路16から流出水路18への水の流入量が増大する。
【0035】
この状態からパイロット弁34が更に図中上向きに後退移動させられると、背圧室26の圧力と流入水路16との圧力をバランスさせるようにして、主弁20がパイロット弁34の後退移動に追従して後退移動し、主水路の開度を更に広くして主水路を流れる水の流量を増大させる(図5(III)参照)。
【0036】
一方パイロット弁34が、図6(I)に示しているように図中下向きに前進移動すると、パイロット弁34とパイロット弁座36との間、詳しくはパイロット弁34におけるシール部42とパイロット弁座36に保持されたOリング40との間の隙間が小さくなって、即ちパイロット水路30の開度が小さくなって、背圧室26から流出水路18に抜ける水の量が少なくなり背圧室26の圧力が増大する。
【0037】
このため、その増大した圧力により主弁20が今度は図中下向きに前進移動して、背圧室26の圧力と流入水路16との圧力をバランスさせる位置で停止する。
このとき主弁20と主弁座25との間の隙間は小さくなって、即ち主水路の開度が小さくなって、主水路を流れる水の流量が減少する(図6(II)参照)。
【0038】
そしてこの状態から更にパイロット弁34が図中下向きに前進移動すると主水路の開度が更に小さくなり、主水路を流れる水の流量が更に減少する(図6(III)参照)。
【0039】
図1において、52はパイロット式吐止水・流調弁装置10におけるハウジングで、その内部に背圧室形成部材54が組み込まれている。
この背圧室形成部材54は逆カップ状をなしており、その内側に背圧室26を形成している。
この背圧室形成部材54はまた主弁押えとしての働きもなしている。
このハウジング52の上側には、後述する押ボタン式のハンドル58を保持する保持部材56が固定状態に設けられている。
尚この保持部材56もまた、ハウジング52の一部と考えることもできる。
【0040】
図1において60は駆動軸で、この駆動軸60は一様な円形断面且つ一様な外径で軸方向に延びる制御軸部としての第1軸部62と、筒状をなす第2軸部64とに軸方向に2分割されている。
そしてその制御軸部としての働きをなす第1軸部62の先端部に上記のパイロット弁34が一体に構成されている。
この筒状の第2軸部64には、図3に示しているように内周面に雌ねじ66が設けられている。
一方第1軸部62には、その上端部に径方向に突出する突出部68が設けられており、その突出部68の外周面に雄ねじ70が設けられている。
そしてこの第1軸部62の雄ねじ70が第2軸部64の雌ねじ66に螺合されている。
この駆動軸60は、雌ねじ66と雄ねじ70とのねじ送り作用で第1軸部62が図中上下方向に進退移動する。
即ち、駆動軸60全体が雌ねじ66と雄ねじ70とのねじ送りによって全体的に伸縮するようになっている。
【0041】
尚、第1軸部62側の突出部68には互いに平行をなす平坦な係合面72が形成されており、この係合面72を回止め部材76の一対の挟持片74が挟持しており、これら挟持片74の挟持作用によって第1軸部62が回転防止されている。
即ちこの回止め部材76の回転防止作用によって、第2軸部64の回転により第1軸部62が図中上下方向に進退移動させられる。
【0042】
そしてこの第1軸部62の図中上下方向の進退移動に伴って、その先端部に一体に構成された上記のパイロット弁34が一体に図中上下方向に進退移動させられ、これによりパイロット弁34の位置が同方向に変化せしめられる。
尚、図2に示しているように第1軸部62と背圧室26との間はOリング77にて水密にシールされている。
また図3に示しているように、回止め部材76は円形の台座部78を有しており、この台座部78がその下側の背圧室形成部材54に固定されている。
【0043】
上記ハンドル58は、図中下方への押込操作と回転操作とが可能な部材であってこのハンドル58と上記駆動軸60、詳しくは第2軸部64との間に、ハンドル58の回転操作により、その操作量に応じて駆動軸60をねじ送りで伸縮させてパイロット弁34を図中上下方向に進退移動させ、その位置を変化させる流調機構と、一定のストロークで駆動軸60即ちその先端部のパイロット弁34を上下に進退移動させ、上昇位置である吐水位置と下降位置である止水位置との間でパイロット弁34を移動させ且つそれぞれの位置に位置保持する吐止水切換機構とが組み込まれている。
ここで吐止水切換機構は、パイロット弁34を吐水位置と止水位置とに切り換え、且つそれぞれの位置に位置保持するスラストロック機構を備えている。
【0044】
図3にそれら流調機構及び吐止水切換機構の具体的な構成が示してある。
同図において80は円筒状をなす駆動リング、82は駆動リング80を内側に保持するスリーブで、84は駆動リング80にて回転駆動される筒状の回転子である。
【0045】
駆動リング80は図中上端部に外向きのフランジ部を有していて、そのフランジ部に径方向外方に部分的に突出する係合凸部86を有しており、この係合凸部86が、逆カップ状をなす有底筒状のハンドル58の内側の係合凹部88に係合させられ、それらの係合作用により駆動リング80がハンドル58と一体に回転させられるようになっている。
尚このハンドル58の頂面には、吐水状態又は止水状態を表すための表示窓90が設けられている。
またハンドル58の下端部には抜止用の突起92が設けられている。
この抜止用の突起92は、図1,図2に示しているように保持部材56の上端部の内向きのフランジ部に係合してハンドル58を抜け防止する。
【0046】
この駆動リング80の外周面には凸条94が設けられており、この凸条94が、スリーブ82の内周面の凹条96に嵌合され、これにより駆動リング80がスリーブ82に対して回転方向に位置決めされている。
この駆動リング80の外周面にはまた、凸条94とは周方向の別の位置に凹条98が設けられており、この凹条98の底部がスリーブ82の上端部に内向きに突出状態に形成された爪97に係合することで、かかる駆動リング80がスリーブ82から図中上向きに抜け防止される。
駆動リング80にはまた、その下端部に鋸歯状の係合歯99が周方向に沿って設けられている。
この係合歯99の下面は、駆動リング80の上下動によって上記回転子84をカム作用で回転させるためのカム面100とされている。
【0047】
上記スリーブ82は、下端部に外向きのフランジ部102を有しており、このフランジ部102によってスリーブ82が図1及び図2に示しているようにハウジング52から図中上向きに抜け防止されている。
このスリーブ82には、図4(A)に示しているようにその上部内周面にガイド部104が内方に突出する状態で設けられている。
このガイド部104は、下部に係合歯106を有している。
この係合歯106の下面もまた、回転子84をカム作用で回転させるためのカム面108とされている。
このガイド部104にはまた、上下方向に延びる嵌入溝109が周方向に所定間隔で形成されている。
【0048】
図3に示しているように、スリーブ82には図中上下方向に延びる嵌入溝110が周方向に所定間隔で複数設けられている。
上記回転子84は、下端部に径方向外向きのフランジ部114を有しており、そのフランジ部114に沿って周方向複数箇所に突出部112が設けられている。
この突出部112を含むフランジ部114の上部は係合歯115とされている。
この係合歯115もまた、その上面が駆動リング80の上下動によって回転子84をカム作用で回転させるためのカム面116とされている。
【0049】
尚、この回転子84の上面には吐水状態,止水状態を表示するための表示部118が設けられている。
この表示部118は、吐水状態を表示するための表示118Aと止水状態を表示する表示118Bとから成っている。
表示部118は、表示118A又は118Bをハンドル58の頂面の表示窓90に位置させることで、吐水状態か止水状態かを表示する。
【0050】
尚回転子84は、突出部112が上記ガイド部104に形成された嵌入溝109に嵌入したときに上昇位置への上昇が可能となり、また突出部112が嵌入溝109から回転方向に外れたときに上昇が阻止される。
【0051】
図3に示しているように、上記駆動軸60における第2軸部64は下端部に大径部120を有していて、図2に示すようにその大径部120の上面の段付面を、回転子84の下面に当接させるようになっている。
またこの大径部120の内側にはスプリング122の上部が収容され、かかる第2軸部64に対してスプリング122の付勢力が上向きに及ぼされている。
この大径部120の外周面には、図3に示しているように周方向に所定間隔で複数の嵌入突起124が設けられている。
そしてこの嵌入突起124が上記スリーブ82の嵌入溝110内部に嵌入させられ、スリーブ82に対して第2軸部64が回転方向に位置決めされている。
即ち、第2軸部64がスリーブ82及び駆動リング80を介してハンドル58に対し一体回転状態に連結されている。
【0052】
本実施形態では、ハンドル58を回転操作すると、その回転運動が駆動リング80,スリーブ82を介して駆動軸60の第2軸部64に伝えられ、かかる第2軸部64が回転させられる。
すると第2軸部64の雌ねじ66と第1軸部62の雄ねじ70とのねじ送り作用で駆動軸60が伸縮させられ、第1軸部62が図中上下方向に進退移動させられる。
即ち第1軸部62の端部に一体に構成されたパイロット弁34が、ハンドル58の回転操作量に応じて進退移動させられ、その位置を上下方向に移動させる。
【0053】
また一方、ハンドル58を下向きに押込操作するごとに、駆動軸60が一定の伸縮状態を保ったまま一定ストローク分だけ上昇,下降運動、即ち軸方向に進退移動させられる。
そしてその上昇位置でパイロット水路30を開放し、また下降位置でパイロット水路30を閉鎖する。
即ちその上昇位置はパイロット弁34における吐水位置となり、また下降位置が止水位置となる。
【0054】
図4はそのパイロット弁34を、ハンドル58の1回の押込操作ごとに吐水位置と止水位置とに切り換え、且つそれぞれの位置に保持する本例のスラストロック機構の作用を表している。
先ず図4(B)(I)は、パイロット弁34が下降位置即ち止水位置にある状態を表している。
このとき、回転子84の突出部112はガイド部104の嵌入溝109から回転方向に外れた位置にあって、回転子84の係合歯115がガイド部104の係合歯106に噛み合った状態にある。
この状態でハンドル58を下向きに押込操作すると、これとともに駆動リング80及び回転子84が第2軸部64とともに下向きに押し下げられ、図4(B)(II)に示しているようにガイド部104の係合歯106に対する回転子84の係合歯115の噛合いが解除された状態となる。
【0055】
これと同時に回転子84は自身に形成されたカム面116と、駆動リング80のカム面100との作用で一定小角度図4(B)(III)の矢印で示す方向に回転移動させられる。
その後、押込操作したハンドル58に対する押込力を除くと、スプリング122の付勢力によって回転子84及び駆動リング80がハンドル58及び第2軸部64とともに上向きに微小距離移動させられ、そして回転子84の突出部112に設けた係合歯115がガイド部104の係合歯106に当接すると、それぞれのカム面116,108のカム作用で回転子84が更に同方向に回転させられる。そして図4(B)(IV)に示しているように突出部112がガイド部104の嵌入溝109に嵌入するに到る。
【0056】
ここにおいて回転子84がスプリング122の付勢力で第2軸部64,駆動リング80及びハンドル58とともに上昇位置まで上昇する。
このとき、駆動軸60は一定の収縮状態を保ったまま全体が上向きに上昇移動し、第1軸部62の先端部に一体に構成したパイロット弁34をその上昇位置、即ち吐水位置まで後退させる。
ここにおいて主弁20が開弁した状態となって、主水路に水の流れが生ずる。
【0057】
次に再び図4(B)(V)に示しているようにハンドル58を下向きに押込操作すると、駆動リング80,回転子84が第2軸部64とともに下向きに移動する。
そして回転子84の突出部112が、ガイド部104の嵌入溝109から下向きに外れたところで、駆動リング80のカム面100と回転子84のカム面116とのカム作用で、再び回転子84が図4(VI)に示している矢印方向に回転移動する。
そしてこの状態でハンドル58に加えていた操作力を除くと、図4(VII)に示すようにスプリング122の付勢力でハンドル58,駆動リング80,回転子84が第2軸部64とともに上向きに移動し、そしてある位置で回転子84の係合歯115がガイド部104の係合歯106に当接して、それらのカム面116,108の作用で再び回転子84が一定小角度回転移動し、回転子84の係合歯115がガイド部104の係合歯106に噛み合うに到って、ここに回転子84,駆動リング80及びハンドル58が押込位置即ち下降位置に保持される。
即ちパイロット弁34が、下降位置である止水位置に保持される。
【0058】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では駆動リング80,スリーブ82,駆動軸60を構成する第1軸部62,第2軸部64及びそれらに設けられた雄ねじ70,雌ねじ66が、ハンドル58の回転操作によって且つその操作量に応じてパイロット弁34を進退移動させる流調機構を成しており、また駆動リング80,スリーブ82,回転子84及び駆動軸60全体が、ハンドル58の押込操作ごとにパイロット弁34を吐水位置と止水位置とに切り換える吐止水切換機構を成している。
【0059】
本実施形態では、ハンドル58を押込操作するごとにパイロット弁34を吐止水切換機構によって前進後退移動させるにも拘わらず、吐水時に前回調節した所望流量で吐水を行わせることができる。
即ち、吐水位置でパイロット弁34を前回調節した流調位置に位置保持し、その流調位置に応じた所望適正流量で吐水口から吐水を行わせることができる。
これを実現可能としているのは、パイロット弁34の止水位置を前回調節した流調位置に応じて移動可能となしていることによる。
【0060】
図7(B)は、吐水流量が大流量となるようにパイロット弁34の流調位置を定めた時の状態を表している。
このとき、パイロット弁34は図中上向きに大きく後退した状態にあり、これに応じて主弁20もまた図中上向きに大きく後退して主弁座25との間に大きな隙間Sを形成し、主水路を大きく開いた状態にある。
【0061】
この状態でハンドル58を押込操作すると、図7(A)に示しているようにパイロット弁34は一定ストロークLだけ前進移動し、パイロット水路30を閉鎖した状態とする。
即ち、主弁20を主弁座25に着座させて主水路を閉鎖した状態とする。
このとき、パイロット弁34はシール部42が段付部48に近い位置でパイロット弁座36のOリング40に接触した状態となる。
【0062】
一方、図8(B)はハンドル58の回転操作によりパイロット弁34を図7(B)に示す位置よりも図中下向きに前進移動させ、即ちパイロット弁34の位置を主弁座25により近く位置させ、これにより主弁20の開度を小さくして、吐水流量を小流量としたときの状態を表している。
この状態でハンドル58を押込操作すると、図7(A)に示すのと同様にパイロット弁34は一定ストロークLだけ下向きに前進移動し、パイロット水路30を、更には主水路を閉鎖した状態とする。
【0063】
このとき、パイロット弁34はシール部42が図7(A)に示す位置よりも段付部48から図中上側に大きく離れた位置でパイロット弁座36のOリング40に弾性接触して、パイロット水路30を閉鎖した状態とする。
即ち、図7(B)から図8(B)へのパイロット弁34の流調位置の変化に応じて、パイロット弁34の止水位置が移動する。
従って、図7(A)及び図8(A)に示す止水状態からハンドル58を押込操作して、パイロット弁34を吐水位置に後退移動させたとき、即ち次に再び吐水状態としたとき、そのときのパイロット弁34の位置は、それぞれ図7(B),図8(B)に示す位置となって、吐水時におけるパイロット弁34の流調位置が、前回調節した流調位置に維持され、先に調整した流量で主水路に水の流れを生ぜしめて、吐水口から予め調節した所望流量で吐水を行わせることができる。
【0064】
以上のように本実施形態のパイロット式吐止水・流調弁装置10は、吐止水及び流量調節の何れをもパイロット水路30の開度の制御により、小さな操作力で軽やかに行うことができるとともに、吐止水切換機構によりパイロット弁34を吐止水動作させても、吐水時におけるパイロット弁34の流調位置を、設定済みの流調位置に維持することができ、吐止水動作の度に吐水量を所望流量に再調節するといった面倒がなく、操作が簡単であって使い勝手が良好である。
【0065】
本実施形態では、流調パイロット弁と吐止水パイロット弁とを共通のパイロット弁34にて構成し、そして流調機構を、調節後の流調位置に応じてパイロット弁34の止水位置を移動させるものとなし、また吐止水切換機構を、調節後の流調位置と移動した止水位置との間でパイロット弁34を進退移動させるものとなしてあることから、装置の構成を簡単化でき、またこれに伴って装置をコンパクト化することができる。
【0066】
また本実施形態では主弁20の軸心周りにパイロット弁座36を環状に設けて、そのパイロット弁座36に対しパイロット弁34をその軸心方向に相対移動可能に嵌合させるようになしていることから、パイロット弁34の止水位置を容易にその軸心方向に沿って移動させることができる。
更に本実施形態では、パイロット弁34を伸縮可能な駆動軸60に設け、そして駆動軸60の第1軸部62の雄ねじ70と第2軸部64の雌ねじ66とのねじ送り作用によってパイロット弁34の位置を全体的に軸方向に移動させるようになしていることから、パイロット弁34の止水位置を容易に移動させることができ、また併せて流調位置も容易にその駆動軸60の軸心方向に沿って移動させることができる。
従ってまたパイロット式吐止水・流調弁装置10の構造を簡素化でき、併せてこれをより小型化することができ、更にハンドル58と駆動軸60とを同軸状に設けることができる。
【0067】
本実施形態はまた、吐止水切換機構を、パイロット弁34を吐水位置と止水位置とに交互に切り換え且つ保持するスラストロック機構を備えたものとなしていることから、吐止水操作を簡単に行うことができ、しかも吐水操作,止水操作を行った後に操作力を除いても吐水状態,止水状態を保持することができ、吐止水の操作をし続けなくても良い利点を有する。
【0068】
図9〜図11は参考例を示している。
図9に示しているようにこの例では、流調パイロット弁126と、吐止水パイロット弁128とを別々に設けるとともに、流調用の回転ハンドル130と、吐止水用の押ボタン132とを別々に設けている。
ここで流調パイロット弁126はスリーブ134の先端部に一体に構成されている。
このスリーブ134は、図中上部に大径部136を有している。
大径部136の外周面には雄ねじ138が設けられ、この雄ねじ138が、回転ハンドル130の内周面の雌ねじ140に螺合されている。
尚、スリーブ134は図10(B)に示しているように六角形状をなしており、その外周面においてハウジング52の内周面の六角形状の内周面に回転不能に嵌合している。
【0069】
この例では、回転ハンドル130の回転操作により流調パイロット弁126が図中上下方向に進退移動させられ、主弁20の上面142から成るパイロット弁座131との間の隙間を増減させ、背圧室26から流出水路18に抜け出す水の量を制御する。即ちパイロット水路30の開度を制御する。
尚、回転ハンドル130は上下方向の位置が固定である。
【0070】
一方上記吐止水パイロット弁128は、駆動軸144の先端部に一体に構成されている。
この例では吐止水パイロット弁128にシール部材129が設けられており、このシール部材129が、主弁20に設けられたパイロット弁座131に水密に着座し又はこれから離間して、パイロット水路30を開閉する。
【0071】
駆動軸144は、下部軸146と上部軸148とに分れていて、それらがスプリング150によって互いに上下逆向きに弾発されている。
尚、下部軸146は上部軸148から下向きに抜け防止されており、また上部軸148に対してはスプリング150が上向きに弾発力を及ぼしている。
下部軸146の上部の周り及び下部軸146と上部軸148との連結部分の内側には、それぞれ背圧室26と連通した水室154,156が形成されている。
これら水室154,156は連通孔158を通じて互いに連通している。
【0072】
この駆動軸144詳しくは上部軸148と押ボタン132との間には、上記と同様の構成を有する駆動リング80,回転子84,スリーブ82を有し、押ボタン132を押込操作するごとに吐止水パイロット弁128を止水位置と吐水位置とに交互に切り換え且つそれぞれの位置に位置保持するスラストロック機構が設けられている。
ただしこの例では押ボタン132は回転操作されるものではなく、従ってまたスラストロック機構は、押ボタン132の回転により上部軸148を一体に回転させる機能は有していない。
【0073】
この例においては、押ボタン132を押込操作するごとに、図9及び図10に示す止水位置と図11に示す吐水位置との間で吐止水パイロット弁128を進退移動させ、そしてスラストロック機構の働きにより吐止水パイロット弁128を吐水位置と止水位置とにそれぞれ位置保持する。
【0074】
而して図11に示す吐水状態の下で、回転ハンドル130を回転操作すると、流調パイロット弁126が図中上下方向に進退移動し、そしてその回転操作量に応じて流調パイロット弁126の位置が変化してパイロット水路30の開度を変化させる。
主弁20は、背圧室26と流入水路16との圧力をバランスさせるようにして、流調パイロット弁126の進退移動に追従して進退移動し、これにより主水路の開度を変化させて主水路を流れる水の流量を調節する。
その際の作用は基本的に上記と同様である。
【0075】
尚、この例においても回転ハンドル130の回転操作量を規制するストッパ(図示省略)が設けられていて、流調パイロット弁126は、最も前進した位置においてもパイロット水路30を完全閉鎖することはない。
【0076】
本例では、流調パイロット弁126と吐止水パイロット弁128とを別々に設けて、回転ハンドル130と吐止水用の押ボタン132とにより各対応する流調パイロット弁126,吐止水パイロット弁128をそれぞれ独立して進退移動させるようになしていることから、押ボタン132により吐止水パイロット弁128を吐止水動作させても、吐水時における流調パイロット弁126の流調位置を前回調節した、即ち設定済みの流調位置に維持することができ、吐止水動作の度に吐水量を所望流量に再調節するといった面倒がなく、操作が簡単であって使い勝手が良好である。
【0077】
図12〜図20は本発明の他の実施形態を示している。
先ず図12において、160は駆動リングで、この実施形態では駆動リング160が逆カップ状の有底円筒形状をなしている。
この駆動リング160の働きは、第1の実施形態の駆動リング80と基本的に同様である。
即ちこの駆動リング160を下向きに1回押し込むごとに、後述のリング状をなす回転子170が回転方向に刻み送りされて、パイロット弁34が、その都度吐水位置と止水位置とに移動させられて、そこに保持される。
【0078】
この実施形態では、逆カップ状を成す駆動リング160がスリーブ82に内嵌されて、スリーブ82に対し軸方向即ち図中上下方向に移動可能とされている。
ここで駆動リング160の外周面には、図13に示しているように縦の突条174が周方向の複数個所に設けられていて、これら突条174が、スリーブ82の内面の縦の凹条176に嵌り込んでおり、駆動リング160がスリーブ82の回転とともに一体に回転するようになっている。
即ちスリーブ82の回転運動が駆動リング160に伝えられるようになっている。
尚この駆動リング160にはまた、その内周面に縦の凹条178が形成されていて、そこに雌ねじ部材として駆動軸60における第2軸部64の外周面に設けられた縦の突条180が嵌り込んでおり、第2軸部64が駆動リング160と一体に回転するようになっている。
即ちスリーブ82を回転させると、その回転運動が駆動リング160及び雌ねじ部材としての第2軸部64に伝えられて、それらがともに一体回転する。
尚、駆動リング160の外周面にはガイド突起222が設けられている。このガイド突起222は、スリーブ82の嵌入溝109に嵌入して、駆動リング160の上下方向の摺動時の案内をなす。
【0079】
この実施形態では、これら駆動リング160,スリーブ82を含む弁機構全体が、単一のユニットとして脱着可能なカートリッジとして構成されている。図12中162はそのカートリッジを表している。
図12中164は、そのカートリッジ162のカートリッジケースで、このカートリッジケース164は、上部164-1と下部164-2とに分割されており、そしてそれらが、カートリッジの中間部を成す背圧室形成部材54にて弾性的に連結されている。
カートリッジ162は、ハウジング166内部に挿入された状態で、ハウジング166への固定ナット168のねじ込みにより抜止状態に固定されている。
【0080】
この実施形態において、ダイヤフラム弁から成る主弁20の主弁本体22には、上端部に主弁座25を有する円筒部171の内部に嵌入して、主弁20の移動案内を成す主弁ガイド172が一体に形成されている。
この主弁ガイド172は軸方向,即ち上下方向に所定肉厚を有する円板状をなしていて、円筒部171への嵌入状態でその外周面と円筒部171の内周面との間に、所定の環状隙間を形成する。
【0081】
この主弁ガイド172は、主弁座25を乗り越えて下流側(2次側)へと流入する流入水に対する絞り弁として働く。
詳しくは、主弁20が主弁座25から上向きに大きく離間した状態では、主水路の1次側の流入水路16から2次側の流出水路18に流入する水量は、主弁20の主弁座25からの離間量によって決定されるが、主弁20が閉弁方向に移動して主弁ガイド172と主弁座25との間の隙間が小さくなってくると、次第に主弁ガイド172と主弁座25との間の隙間が水量を漸次絞るように働き出し、そして図17に示しているように主弁20が更に閉弁方向,即ち図中下方向に移動して、主弁ガイド172が円筒部171内部に僅かでも嵌入すると、その時点で主水路における開度が、この主弁ガイド172と円筒部171との間の微小な環状隙間によって決定される。
【0082】
この環状隙間は、主弁20の更なる閉弁運動によっても変化はなく、主弁20が主弁座25に着座するまで一定に保たれる。
その結果主水路の流量,即ち1次側の流入水路16から2次側の流出水路18に流入する水量はほぼ一定且つ微小水量に保持される。
【0083】
図20は、この絞り弁として働く主弁ガイド172による作用を、横軸に主弁20の移動量,即ち駆動軸60における第1軸部62の移動量(つまりパイロット弁34の移動量)を、また縦軸に流量をとってその関係を表したものである。
図に示す流量曲線Aのうち、勾配が小さく横に寝た部分A-1は、主弁ガイド172が円筒部171に嵌入しているときの流量変化を表した部分で、図に示しているようにこのように主弁ガイド172を設けておくことで、主弁20の閉弁直前或いは逆に開弁初期における流量の変化を可及的に少なくすることができる。
その結果として、後述の流量調節ハンドルの最小流量位置を定めた場合において、その流量調節ハンドルとパイロット弁34との間に位置する各種部品にばらつきがあっても、或いはそれらの組付けのばらつきがあっても、そのばらつきによって開弁初期の流量が大きく左右されてしまうといった不都合を是正することができる。
【0084】
図20中破線で示したBは、このような主弁ガイド172を設けない場合の流量特性曲線を表したもので、図に示しているようにこのような主弁ガイド172を設けていない場合には、閉弁状態から第1軸部62が僅かでも移動すると直ちに流量が大きく変化してしまう。
尚、このような主弁ガイド172を有する点については、第1の実施形態も同様である。第1の実施形態ではこの主弁ガイド172が同様の符号でもって表してある。
【0085】
この実施形態の弁装置はまた、上記のように主弁20が閉弁位置に近い状態で、流量の変化を少なくして安定化する特徴を有しているほか、長期間の使用を通じての経年変化も少なく、長期間に亘って、流量特性が安定している特徴も有する。
【0086】
具体的には、例えば図29に示す弁装置のようにパイロット弁314を主弁304のパイロット弁座318に対して、押し付けてパイロット弁314を閉弁し、またこれに伴って主弁304を閉弁させる形式とした場合、パイロット弁314のパイロット弁座318に当る部分が次第にへたり(永久歪みないし永久変形)を生じたり、磨耗したりして、パイロット弁314のパイロット弁座318への当り面即ち図中下面に、パイロット弁座318の形状に応じた凹みが生じ、またその凹みが次第に大きくなっていく。
その結果、パイロット弁314の移動動作が同じであっても調節水量が変化してしまう問題を生ずる。
【0087】
これに対して本実施形態では駆動軸60、詳しくは第1軸部62が主弁20を軸方向に貫通して、その軸方向にパイロット弁34が移動し、かかるパイロット弁34が主弁20のパイロット弁座38、詳しくはそこの保持されたOリング40に対して径方向に弾性接触してシールを行うものであることから、そういった不具合を生じず、長期に亘って安定した流量調節特性を有する。
【0088】
更に加えて、パイロット弁314をパイロット弁座318に対して、即ち主弁304に対して押し付ける形式の弁装置の場合、パイロット弁314の閉弁間際にパイロット弁314が静かに主弁304のパイロット弁座318に着座せず、パイロット水路312の内部の急激な水流変化に基づいてパイロット弁314が不規則且つ複雑な動きを生じつつ主弁304のパイロット弁座318に着座する、いわゆるビビリ振動を生じる可能性がある。特にパイロット弁314をスプリングの弾発力を用いて主弁304のパイロット弁座318に押し付けるようになした場合この傾向は顕著となる。
しかるにこの本実施形態ではパイロット弁34,パイロット弁座36からなるパイロット機構が異なっているために、こうした不都合を生じない。
尚この点については上記の第1の実施形態においても同様である。
【0089】
この実施形態では、第2軸部64の下側に、駆動リング160の押し込み時に回転子170を強制回転させる機能を備えた強制回転リング182が設けられている。
この強制回転リング182は、図12において回止め部材76の台座部78上に載置されている。
この強制回転リング182は、図13,図15に示しているように全体として円筒形状をなしているとともに,その下端には内向きのフランジ部184が設けられていて、このフランジ部184と、第2軸部64の外向きのフランジ部186との間にスプリング122が介装されている。
【0090】
この強制回転リング182はまた、そのフランジ部184がスリップワッシャとしての働きもなしており、スリーブ82の回転時,即ちこれと一体に回転する第2軸部64の回転時に、強制回転リング182が回止め部材76の台座部78上をスリップ回転して、第2軸部64の回転に伴ってスプリング122が捩れ変形するのを防止する。
その結果として、スプリング122の上向きの弾発力を、設定した適性な弾発力で作用させることができる。
【0091】
この強制回転リング182には、その上端に沿って周方向に所定間隔で複数の爪187が上向きに突出状態で一体に設けられている。これら爪187の上面は傾斜形状のカム面188とされている。
これらカム面188は、駆動リング160により回転子170に対して下向きの力が及ぼされたとき、図14に詳しく示す回転子170の突出部112の下面のコーナー部190に当接して、回転子170をそのカム作用で強制的に図14中反時計方向に回転させる働きをなす。
【0092】
ただし回転子170はその回転抵抗、即ち第2軸部64におけるフランジ部186の上面に対する摺動抵抗、及び駆動リング160のカム面100に対する摺動抵抗が小さいときには、スプリング122の付勢力に基づいて、強制回転リング182のカム面188に接する前に、駆動リング160のカム面100と、回転子170のカム面116-1(図14参照)とのカム作用で、強制回転リング182のカム面188に接する前に回転運動する。
【0093】
しかしながら回転子170は長期使用すると、摺動面で発生する磨耗粉などによって摺動抵抗が次第に増大するようになる。
そこで駆動リング160を下向きに押しても、回転子170が軽く円滑に回転しない恐れが生じてくる。
このとき、回転子170が円滑に回転しない場合であっても、駆動リング160を下向きに強く押し込むと、回転子170の突出部112のコーナー部190が、強制回転リング182のカム面188に当ることによって、回転子170が強制回転リング182のカム面188により強制的に回転駆動される。
【0094】
尚、図14に明らかに示しているようにこの実施形態では、回転子170の、駆動リング160のカム面100に当るカム面116-1と、突出部112の上面に形成されたカム面116-2とが、異なった傾きで設けられている。詳しくは、突出部112のカム面116-2の方が、カム面116-1のカム面よりも急角度で形成されている。
ここで突出部112のカム面116-2は、スリーブ82のガイド部104のカム面108と接触して、カム作用で回転子170を回転させる部分である。
【0095】
尚この強制回転リング182の外周面には、図15に示しているように嵌合突起192が設けられており、この嵌合突起192がスリーブ82の嵌合部194に嵌り込んでいて、スリーブ82の回転時に、かかる強制回転リング182が一体に回転するようになっている。
【0096】
図14に示しているように、回転子170の下面には周方向に沿って所定間隔でリブ196が設けられており、回転子170は、これらリブ196において第2軸部64のフランジ部186の上面に接触させられている。
ここで各リブ196は長手形状をなしており、その横断面形状が下向きの凸曲面とされていて、その曲面の先端でフランジ部186の上面に接触するようになしてある。
即ちここでは、回転子170をフランジ部186に対して面接触ではなく線接触するようになしてある。
その結果として、回転子170はフランジ部186の上面を小なる摺動抵抗で円滑に回転運動することができる。
【0097】
ここで各リブ196は、回転子170の周方向即ち回転方向に円弧状に形成しておくこと、或いはまた周方向に対して接線方向に直線状に形成しておくことも可能であるが、ここでは各リブ196は、内周側端から外周側端にかけて斜めに傾いた状態で設けられている。
詳しくは、ここでは回転子170が図14中矢印で示す方向に回転運動したときに、摺動面で発生した摺動粉をそれらリブ196にて内側から外側へと排除するような向きで設けられている。
従って各リブ196は、線接触によって回転子170の円滑な回転運動を確保すると同時に、摺動面で発生した摩耗粉による摺動抵抗の増大を防止する働きもなしている。
【0098】
この実施形態ではまた、第1軸部62における上部の突出部62-2と下部の軸部62-1とが、図13及び図19(C)に示しているように別体に構成されていて、それらがボールジョイント198にて3次元方向に相対回転可能に結合されている。
詳しくは、下部の軸部62-1の上端部にはボール部200が一体に形成されていて、このボール部200が、突出部62-2の凹球面202に3次元方向に回転可能に嵌合されている。
【0099】
この結果、図19(C)に示しているように外部からの力が第1軸部62に作用したとしても、軸部62-1とは別体に構成された突出部62-2が傾動するのみで、下部の軸部62-1は外力による影響を受けることなく垂直姿勢に保持される。
そのため、軸部62-1の傾動によってOリング40及び77によるシールへの悪影響が及ぶのが効果的に防止される。
【0100】
この実施形態では図12,図13,図17及び図18に示しているように、第1軸部62の上記凹所44よりも下側の下端部に環状溝204が形成されていて、そこに第1軸部62よりも大径の弾性止め輪206(ここではEリング)が装着されている。この弾性止め輪206は次のような働きをする。
【0101】
本実施形態の弁装置は、上記のようにパイロット弁34を図中上下方向に移動させ、背圧室26の圧力制御を行うことで、主弁20をパイロット弁34に追従して図中上下方向に移動させる(変位させる)。
この弁装置は、給水圧が通常の範囲内であれば、主弁20をパイロット弁34の移動に追従させて良好に開閉方向に移動させることができる。
ところが給水圧が所定給水圧よりも低い低圧時においては、必ずしもパイロット弁34の移動に対して、主弁20の追従した開閉方向の移動を確保することができない場合も生ずる。
即ち主弁20が閉弁状態或いは僅かに開いた状態のもとで、パイロット弁34を図中上向きに移動させても、主弁20がそのパイロット弁34の移動に追従して図中上向きに移動しない場合が生じ得る。
【0102】
このような場合、本実施形態ではパイロット弁34、即ち第1軸部62が図中上方に一定量移動すると、例え圧力バランスによって主弁20がこれに追従して上向きに持ち上がらなくても、パイロット弁34が一定量上向きに上昇したところで、第1軸部62の下端部に設けた弾性止め輪206が、図18(B)に示しているように主弁20の下面に当接し、その後更なるパイロット弁34の上昇移動により、主弁20を強制的にパイロット弁34の上昇移動とともに持ち上げる。
従ってこの実施形態では、給水圧が低くて、主弁20がパイロット弁34による背圧室26の圧力制御のもとで円滑に動作をしない場合であっても、第1軸部62を連続的に図中上向きに移動させていくことで、主弁20を物理的ないし機械的に第1軸部62によって持ち上げることができ、主弁20を確実に開弁させて吐水を行わせ、或いはその開度を大きくして吐水量を増大させることができる。
【0103】
以上のように弾性止め輪206は、パイロット弁34即ち第1軸部62があるストローク上昇したところで、主弁20の下面に当接してこれを強制開弁させる当接部材としての働きを有するもので、かかる当接部材として、上記弾性止め輪206以外に他の様々な形態のものを用い、或いは他の様々な構造でこれを第1軸部62の下端部に設けておくことができる。
【0104】
図12に示しているように、この実施形態では背圧室26と第1軸部62との間をシールするOリング77の他に、その直上位置に別途のOリング(環状の弾性シール部材)208が、第1軸部62の外周面に弾性接触する状態で設けられている。
このOリング208は次のような働きをする。
即ちこのOリング208は、直ぐ下のOリング77との間に、第1軸部62の円滑な摺動運動を確保するための潤滑材としてのグリースを保持するグリース溜を形成する働きをなしている。
【0105】
そしてこのOリング208によるグリース溜形成の効果によって、グリース溜のグリースが外部に、具体的には図中上方に漏出するのを効果的に防止することができる。
併せてこのOリング208は、ダストシールとしての働きもなし、外部からゴミ等がそのグリース溜に入り込んで第1軸部62の摺動面に付着するのを防止する働きもなす。
【0106】
尚、この実施形態ではOリング40,77及び208として、カーボンブラックに代えてホワイトカーボンを充填材として配合したものが用いられている。
具体的には、ここではこれらOリングとしてNOK社のEPDM製のE575の品番のものが用いられている。
【0107】
更にこの実施形態では、それらOリング40,77,208の取付構造として、次のような取付構造が用いられている。
即ちOリング40については、主弁20の主弁本体22に円形の内環状部210と外環状部212とが、その板面から突出する状態に設けられて、Oリング40がその内環状部210内部の凹所に嵌込状態に装着され、第1軸部62の外周面に弾性接触させられている。
この内環状部210の凹所に装着されたOリング40は、キャップ214にて凹所から抜け防止されている。
【0108】
キャップ214は、図16に示しているように浅い逆皿状をなしていて、そこに弾性爪216が形成されており、内環状部210を、その内部に収容したOリング40とともに上側から覆うように取り付けられ、そして弾性爪216が、外環状部212の付根の切欠部218に弾性係止されることで外れ防止されている。
尚図16において、219及び221はキャップ214と外環状部212との回転方向の位置決めのための突起及び切欠である。
【0109】
Oリング77についても、その取付けの向きが上下逆向きである点、また内環状部210及び外環状部212が、上記の背圧室形成部材54の下面に設けられている点を除いて、基本的にOリング40の取付構造と同様である。
【0110】
Oリング208についても基本的にその取付構造は上記と同様であるが、ここではキャップ214の代りに回止め部材76の台座部78に、キャップ214に代る閉鎖部220が一体に形成されている。
この取付構造によれば、Oリング40,77及び208を、第1軸部62に外嵌する状態に簡単に取り付けることができる。
またそれらOリング40,77及び208が損耗して取換えが必要となった場合においても、簡単にその取換えを行なうことができる。
【0111】
図21〜26は本実施形態における操作装置を示している。
この操作装置は、図21に示しているように回転式の流量調節ハンドル224と押ボタン式の吐止水操作部228を有している。
ここで吐止水操作部228の上面には、図22に示しているように表示230が施されている。
この吐止水操作部228は回転方向には固定で、図中上下方向にのみ移動可能とされている。
図21において回転式の流量調節ハンドル224は、全体として円形のリング状をなしており、その周方向所定個所に外向きに突出するつまみ226が設けられている。
尚この流量調節ハンドル224は、全体としてわずかにテーパ形状をなしている。
上記スリーブ82とこのリング形状の流量調節ハンドル224との間には、操作力を伝達する中間リングとしての内リング部材232と、外リング部材234とが介在させられている。
【0112】
内リング部材232は、図22及び図23に示しているように円筒形状をなしており、スリーブ82に対して上から下向きに被せられ、スリーブ82にて下側から支持されている。
この内リング232には、周方向所定個所に貫通の位置決孔236が設けられており、この位置決孔236に、スリーブ82の外周面に設けられた位置決突起238が嵌り込んでいる。そしてそれら位置決孔236と位置決突起238との係合作用で、内リング部材232がスリーブ82と一体回転するようになっている。
この内リング部材232にはまた、その外周面の周方向所定個所に、外向きに突出する位置決突起240が設けられている。
【0113】
一方外リング部材234は、図22にも示しているように円筒部242と、フランジ部244、及び下向きに突き出した弾性爪252とを有している。
この外リング部材234は、図21に示しているようにその支持部材となる円筒部材254に取り付けられている。
詳しくは、図23の底部245を円筒部材254のフランジ部256に着座させる状態に、弾性爪252が円筒部材254の上端外周部の環状の段付部258に弾性掛止され、円筒部材254により支持される状態に、かかる円筒部材254に回転可能に取り付けられている。
尚、円筒部材254は下端部に舌片状の固定部260を有していて、図21に示すように上記固定ナット168及びハウジング166の上部を覆う状態に、かかるハウジング166に取付固定されている。
【0114】
この外リング部材234には、図23の部分拡大図に示しているように、内周面の周方向所定個所に一対の突起246,248が微小な間隔を隔てて内向きに突出する形態で設けられている。
これら突起246と248との間には位置決溝250が形成されており、そこに図25にも示しているように上記内リング部材232における外向きの位置決突起240が嵌り込んでいる。そしてこれにより、内リング部材232と外リング部材234とが一体に回転するようになっている。
ここで一方の突起246は上下中間部で切り欠かれており、その切欠部249によって突起246が、上突起246-1と下突起246-2とに分かれている。
【0115】
図22において、上記外リング部材234にはまた、フランジ部244に位置決用の切欠262と、上向きに起立する弾性爪264とが互いに異なった位置で周方向の複数個所に設けられている。
更にまたこのフランジ部244には、わずかにテーパ形状をなす流量調節ハンドル224に対する嵌込ガイド266が、上向きに起立する形態で設けられている。
【0116】
他方流量調節ハンドル224には、図22に示しているようにリング内周面に、外リング部材234の切欠262に嵌り込む位置決突起としてのリブ268と、上向きの弾性爪264を弾性掛止させるための掛止突起270とが、周方向の複数個所に設けられている。
これら流量調節ハンドル224と外リング部材234とは、外リング部材234の切欠262と流量調節ハンドル224のリブ268との嵌合により一体回転運動させられ、また外リング部材234の上向きの弾性爪264と、流量調節ハンドル224の掛止突起270との掛止作用に基づいて、上下方向に組み付けられている。
即ち流量調節ハンドル224が、それら弾性爪264と掛止突起270との掛止作用により図中上向きに抜け防止されている。
【0117】
図24に示しているように、支持部材としての円筒部材254には、内向きのフランジ部256の上面から起立する円弧形状の立上り部272が設けられている。この立上り部272の内面には、周方向中間位置において縦の位置決溝274が設けられている。
【0118】
一方、上記吐止水操作部228には、その上壁282から立ち下がる円弧形状の立下り部276が設けられている。
この立下り部276には、周方向中間位置で下向きに突出する回転方向の位置決突起278が設けられている。
図25に示しているように吐止水操作部228は、これら立上り部272と立下り部276とを嵌合させる状態に組み付けられている。そして吐止水操作部228は、それら位置決溝274と位置決突起278との嵌合により回転方向に位置決めされている。即ちそれらの位置決作用によって、吐止水操作部228が回転方向に位置固定とされている。
【0119】
この吐止水操作部228には、円弧形状をなす立下り部276の周方向端に、径方向外向きに突出したストッパ突起280が一体に形成されている。
このストッパ突起280は、流量調節ハンドル224を小流量側に回転操作したときの終端位置を規定するものである。
詳しくは、流量調節ハンドル224と一体に回転する外リング部材234の上記突起246、詳しくは上突起246-1を回転方向に当接させることで、流量調節ハンドル224の更なる回転を規制する。
このストッパ突起280はまた、吐止水操作部228を止水状態にロックする、ロック用の突起としても働く。
【0120】
上記のように流量調節ハンドル224は、外リング部材234の上突起246-1が、吐止水操作部228のストッパ突起280に当ることによって最小流量位置に位置規制される。図25及び図26(II)はこのときの状態を表している。
この状態で、(III)に示しているように吐止水操作部228を下向きに押し下げると、上記スラストロック機構により押ボタン式の吐止水操作部228が押下げ位置に位置保持される。
このとき、ストッパ突起280もまた図26(II)に示す位置よりも下向きに下がった位置、詳しくは(III)に示すように突起246における上突起246-1と下突起246-2との間の切欠249と同じ高さ位置に位置した状態となる(図26(III)(B)参照)。
【0121】
この状態で流量調節ハンドル224、詳しくは外リング部材234は更に反時計方向に回転移動可能となる。
そこで流量調節ハンドル224を同方向に微小角度回転させると、(III)に示すようにそこでストッパ突起280が上突起246-1と下突起246-2との間の切欠249に入り込んだ状態となる。
この状態のもとでは、吐止水操作部228をオン(開)操作しても、ストッパ突起280と上突起246-1との当接作用によって、吐止水操作部228は上昇移動することができず、従って押下げ位置即ち止水位置に保持されてそこにロックされる。
尚流量調節ハンドル224は、図26(III)に示しているように突起246が円筒部材254の円弧形状の立上り部272の周方向端に当接することによって、それ以上の回転が阻止される。
【0122】
図24に示しているように、吐止水操作部228には上壁282の下面に、下向きに突出した円形の押圧部284が設けられている。
吐止水操作部228は、下向きの力が加えられると、この押圧部284で駆動リング160を下向きに押し込んで、第1軸部62に一体に構成されたパイロット弁34を下向きに移動させる。
押し込まれた吐止水操作部228は、上記のスラストロック機構により押下げ位置、即ち下降位置に位置保持される。
【0123】
吐止水操作部228には、外向きのフランジ部286が備えられている。このフランジ部286には、周方向の複数個所(ここでは4個所)に弾性片288が設けられている。これら弾性片288のそれぞれの先端部には、図21(B)に示しているように上向きと下向きの一対の突起290が設けられている。
ここで各突起290は外面形状が曲面形状とされている。
このフランジ286及び弾性片288、更にその先端部に設けられた突起290は次のように働く。
【0124】
即ち、図21において吐止水操作部228を下向きに押し込んだとき、フランジ部286が外リング部材234のフランジ部244に当ることによって、その押込端が規定される。
このとき、弾性片288の先端部に設けられた下向きの突起が、いち早くフランジ部244に当って弾性片288が弾性変形し、吐止水操作部228におけるフランジ部286の、外リング部材234のフランジ部244への当りを和らげる。即ち緩衝する。これによって吐止水操作部228を押し込んだときに発生する音を効果的に低減する。
【0125】
一方、再び吐止水操作部228に押込力を加えてこれを上昇させる際、吐止水操作部228のフランジ部286が、流量調節ハンドル224の内向きのフランジ部227に当って、その上昇端が規定される。
このときにも、吐止水操作部228の弾性片288の上向きの突起290がいち早く流量調節ハンドル224のフランジ部227に当接し、そしてその際の弾性片288の弾性変形に基づいて、吐止水操作部228におけるフランジ部286の、流量調節ハンドル224のフランジ部227に対する当りを和らげ、その際に発生する音を低減する。
【0126】
以上の操作装置は全体として次のような動きを行う。
図26(I)は、流量調節ハンドル224を最大流量まで回転させた状態を表している。この状態では、吐止水操作部228を開操作した状態で主水路に最大流量で水を流通する。
この状態から流量調節ハンドル224を図中反時計方向に回転させると、図26(II)に示す最小流量位置で、流量調節ハンドル224と一体に回転する外リング部材234の突起246、詳しくは上突起246-1が、吐止水操作部228のストッパ突起280に当接して、それ以上の回転が一旦阻止される。
この状態で吐止水操作部228を押し込んで、その押込位置に保持させた状態とすると、この時点で流量調節ハンドル224の更なる若干の回転が許容された状態となる。
そこで流量調節ハンドル224を反時計方向に更に回転させると、わずかに回転させたところで外リング部材234の突起246が、円筒部材254の立上り部272の周方向端に当接して、そこで更なる回転が阻止される。
【0127】
この状態のとき、押下位置に保持された吐止水操作部228のストッパ突起280が、外リング部材234の上突起246-1と下突起246-2との間の切欠249に入り込んだ状態となって、上下方向に移動禁止された状態となる。
即ちここにおいて吐止水操作部228がロックされた状態となる。従ってこの状態で吐止水操作部228に対して押込みの力を加えても、吐止水操作部228は上昇移動せず、従って吐止水操作部228の上昇に基づく吐水も行われない。
【0128】
この実施形態の操作装置では、止水時における押込状態で吐止水操作部228が、リング状をなす流量調節ハンドル224から実質的に上向きに突出しておらず、従って止水状態の下で非意図的な外力によって吐止水操作部228が操作されてしまって、意図せず吐水が行われてしまうといった不具合の発生を防止することができる。
即ちリング状をなす流量調節ハンドル224が、吐止水操作部228を外側から取り囲んで、ガードリングとしての働きをなしており、吐止水操作部228に対する意図しない誤操作を効果的に防止することができる。
【0129】
更にまたこの実施形態の操作装置は、止水状態においても流量調節ハンドル224の回転操作によって、流量を予め設定しておくことができる特徴を有する。即ち予め流量調節ハンドル224によって流量設定しておくことで、吐止水操作部228をオン操作して吐水させたときに、当初から望みの流量で吐水を行わせることができる。
またこの実施形態では、吐止水操作部228と流量調節ハンドル224とが独立に別々に設けられていて、それぞれが独立した動きを行うことから、その動きの相違を利用して、吐止水操作部228を止水状態にロックすることができる利点が得られる。
【0130】
図27及び28は他の実施形態を示している。
この実施形態では、駆動リング292が軸方向長の短いリング形状に構成されており、そして押ボタン式の吐止水操作部228からの押込みの力をこの駆動リング292に軸方向に伝達するためのものとして、逆カップ状をなす伝達部材294が駆動リング292と吐止水操作部228との間に介在させられている。
【0131】
ここで伝達部材294は、スリーブ82の回転とは切り離されていて、スリーブ82の回転によっては回転せず、伝達部材294が駆動リング292に対して自由に回転できるようになしてある。
即ちこの例では、押込力を加える部材と回転力を加える部材とがそれぞれ別々の部材で構成されている。
ここで伝達部材294は、その上壁の中央部が凹陥形状をなしており、その凹陥形状の底部に掛止孔296が設けられている。そしてそこに第1軸部62における突出部62-2に上向きに設けた弾性掛止爪298が掛止することで、伝達部材294が図中上向きに外れ防止されている。
【0132】
以上本発明の実施形態を参考例とともに詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では吐止水切換機構に備えられたロック機構、即ち吐止水パイロット弁を吐水位置と止水位置とに交互に切り換え且つ保持するロック機構がスラストロック機構とされているが、これをハートカム機構その他のロック機構として構成することも可能である。
その他本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0133】
16 流入水路
18 流出水路
20 主弁
25 主弁座
26 背圧室
28 導入小孔
30 パイロット水路
34 パイロット弁
60 駆動軸
62 第1軸部
64 第2軸部
66 雌ねじ
70 雄ねじ
80 駆動リング
82 スリーブ
84 回転子
126 流調パイロット弁
128 吐止水パイロット弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)主弁座に対して接近離間方向に進退移動して主水路の開度を変化させる主弁と
(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と
(ハ)前記主水路における1次側の流入水路の水を該背圧室に導いて該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と
(ニ)該背圧室と前記主水路における2次側の流出水路とを連通させる状態に前記主弁を貫通して設けられ、該背圧室の水を該流出水路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット水路と
(ホ)該主弁の進退方向に進退移動して前記パイロット水路の開度を制御する流調パイロット弁と
(ヘ)該流調パイロット弁を進退移動させ、進退移動量に応じて流調位置を定めて流調を行う流調機構と
を備え、前記流調パイロット弁の進退移動に追従して前記主弁を進退移動させて、前記主水路の流量調節を行うパイロット式の弁装置であって
前記パイロット水路を開閉する吐止水パイロット弁と、該吐止水パイロット弁を該パイロット水路を閉鎖する止水位置と、該パイロット水路を開放する吐水位置との間で進退移動させて吐止水の切換えを行う吐止水切換機構とを備え、且つ前記流調機構は、該吐止水切換機構による該吐止水パイロット弁の止水動作後の吐水動作時に前記流調パイロット弁の流調位置を前回調節した流調位置に維持するものとなしてあり、
前記流調パイロット弁と吐止水パイロット弁とは共通のパイロット弁にて構成されていて、前記流調機構が、前記調節した流調位置に応じて該共通のパイロット弁の止水位置を移動させるものとなしてあるとともに、前記吐止水切換機構は、該調節した流調位置を吐水位置として該吐水位置と該移動した止水位置との間で該共通のパイロット弁を進退移動させるものとなしてあり、
前記共通のパイロット弁は伸縮可能な駆動軸に設けてあって、前記流調機構は該駆動軸を伸縮させることによって該共通のパイロット弁の位置を全体的に軸方向に移動させ、該共通のパイロット弁による流調位置と止水位置とを移動させるものとなしてあることを特徴とするパイロット式吐止水・流調弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動軸が前記共通のパイロット弁が設けられた一方の分割軸と他方の分割軸とに軸方向に分割されていて各分割軸が螺合され、回転操作部材による前記他方の分割軸の回転により前記一方の分割軸がねじ送りで進退移動させられることで、該駆動軸が伸縮するようになしてあることを特徴とするパイロット式吐止水・流調弁装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記吐止水切換機構が、前記吐止水パイロット弁を吐水位置と止水位置とに交互に切換え且つ保持するロック機構を備えていることを特徴とするパイロット式吐止水・流調弁装置。
【請求項4】
請求項3において、前記吐止水切換機構が駆動リングを有しており、該駆動リングが前記ロック機構を介して前記駆動軸を進退移動させることを特徴とするパイロット式吐止水・流調弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−153714(P2011−153714A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102494(P2011−102494)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−100501(P2006−100501)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】