説明

ガス熱源機

【課題】商用電源からの電力供給が遮断され、容量が限定された補助電源から電力供給を受ける場合でも、長時間運転できるガス熱源機を提供する。
【解決手段】ガスバーナ13を備えた燃焼部11に、燃焼用酸素含有ガスを供給する送風ファン14と、給水を加熱する熱交換器12とを備え、且つ、要求される給湯量及び給湯温度に対応して、インプット関係指標に基づいて燃料ガス供給量及び送風ファン回転数を制御する燃焼制御部10を備え、通常時には外部交流電源8から受電するガス熱源機1において、外部交流電源8からの供給が断たれた遮断状態において、補助電源受電手段5と、補助電源受電状態を検知する補助電源受電検知手段を備え、補助電源受電状態において、燃焼制御部10が、インプット関係指標を満たし且つ送風ファン14による電力消費が少ない省電力インプット領域内で、燃焼部11の燃焼を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナを備えた燃焼部に、前記ガスバーナから供給される燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガスを供給する送風ファンと、前記燃焼部から発生する前記燃料ガスの保有する熱により、給湯水管内を流れる給水を加熱して湯水を発生する熱交換器とを備え、前記燃焼部に供給する燃料ガス供給量と前記燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する前記送風ファン回転数との関係であるインプット関係指標に基づいて、要求される給湯量及び給湯温度に対応して、前記燃焼部に供給する燃料ガス供給量及び前記送風ファンの回転数とを制御する燃焼制御部を備え、通常時には外部交流電源から作動に必要な電力の全てを受電して給湯作動するガス熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフラインの安定性向上の観点から、ガス利用機器は、停電等の非常時には、乾電池や車のバッテリー等の非常電源により運転できることが望ましい。そこで、従来技術において、通常時には商用電源から、非常時には補助電源から、電力供給を受けて作動するガスコンロが発明されている(例えば特許文献1参照)。例えば特許文献1のガスコンロは、停電時には乾電池式の補助電源から電力の供給を受けて作動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように補助電源を乾電池とする構成は、消費電力が小さいコンロに対しては十分な電力を供給可能であるとしても、消費電力が大きいガス熱源機では、コンロに比べて電力消費が激しいことから、短時間しか使用できず不便である。そこで、商用電源からの電力供給が遮断され、容量が限定された補助電源から電力供給を受ける場合でも、長時間運転できるガス熱源機が求められている。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、商用電源からの電力供給が遮断され、容量が限定された補助電源から電力供給を受ける場合でも、長時間運転できるガス熱源機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るガス熱源機は、
ガスバーナを備えた燃焼部に、前記ガスバーナから供給される燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガスを供給する送風ファンと、
前記燃焼部から発生する前記燃料ガスの保有する熱により、給湯水管内を流れる給水を加熱して湯水を発生する熱交換器とを備え、且つ、
要求される給湯量及び給湯温度に対応して、前記燃焼部に供給する燃料ガス供給量と前記燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する前記送風ファンの回転数との関係であるインプット関係指標に基づいて、前記燃焼部に供給する燃料ガス供給量及び前記送風ファンの回転数を制御する燃焼制御部を備え、
通常時には外部交流電源から作動に必要な電力の全てを受電して給湯作動するガス熱源機であって、その第1特徴構成は、
前記外部交流電源からの電力の供給が断たれた遮断状態において、限定された電力の供給が可能な補助電源から受電可能な補助電源受電手段と、前記補助電源受電手段から受電している補助電源受電状態を検知する補助電源受電検知手段を備え、
前記補助電源受電状態において、前記燃焼制御部が、前記インプット関係指標を満たし、且つ前記送風ファンによる電力消費が少ない省電力インプット領域内で、前記燃焼部の燃焼を制御する点にある。
【0007】
上記の特徴構成によれば、本発明に係るガス熱源機は、インプット関係指標に基づいて、要求される給湯量及び給湯温度に対応して、燃焼部に供給する燃料ガス供給量と、ガスバーナから供給される燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する送風ファンの回転数とを制御して、給湯水管内を流れる給水の加熱量を調整し、給湯量及び給湯温度を調整する。
ここで、本発明に係るガス熱源機は、通常時には外部交流電源から作動に必要な電力の全てを受電して給湯作動するが、外部交流電源からの電力の供給が断たれた遮断状態においては、補助電源受電手段により、限定された電力の供給が可能な補助電源から受電可能に構成されている。これにより、外部交流電源からの電力の供給が断たれる停電等の遮断状態においても、車のバッテリー等の補助電源からの電力の供給を受けて作動可能に構成されている。
【0008】
本発明に係るガス熱源機は、補助電源受電検知手段により、補助電源受電手段から受電している補助電源受電状態を検知する。そして、補助電源受電状態であることを検知すると、インプット関係指標を満たし、且つ送風ファンによる電力消費が少ない省電力インプット領域内で、燃焼部の燃焼を制御するように構成されている。これにより、補助電源から電力供給を受ける補助電源受電状態では、送風ファンによる電力消費が少ない省電力インプット領域内で、燃焼部の燃焼を制御する。即ち、送風ファンの回転数の増大による消費電力の増加を避け、所定の電力消費の範囲内で、燃焼部の燃焼を制御する。
【0009】
このようにして、本発明に係るガス熱源機は、商用電源からの電力供給が遮断され、容量が限定された補助電源から電力供給を受ける場合には、送風ファンによる消費電力を省電力インプット領域に抑えるように制御する。従って、商用電源からの電力供給が遮断され、容量が限定された補助電源から電力供給を受ける場合でも、長時間運転することが可能なガス熱源機を提供することができる。
【0010】
本発明に係るガス熱源機の第2特徴構成は、前記第1特徴構成において、
前記省電力インプット領域が、前記インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、所定の基準に基づいて設定される電力消費の上限値である上限電力消費指標点までの範囲内の領域とされている点にある。
【0011】
上記の特徴構成によれば、省電力インプット領域を、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、所定の基準に基づいて設定される電力消費の上限値である上限電力消費指標点までの範囲内の領域として設定する。これにより、使用者は、所定の基準に基づいて、電力消費の上限値を設定することができる。
例えば、所定の基準として、補助電源の供給電力量を設定することで、ガス熱源機の送風ファンで消費する電力量の上限値を、補助電源が供給する電力量に基づいて設定することができる。これにより、遮断状態におけるガス熱源機へのインプットである補助電源の供給電力量を基準とする、柔軟且つ適切な上限電力消費指標点の設定が可能となる。
【0012】
本発明に係るガス熱源機の第3特徴構成は、前記第1特徴構成において、
前記省電力インプット領域が、前記インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、前記最低電力消費指標点より所定の許容消費電力量だけ高い許容最高電力消費指標点までの範囲内の領域とされている点にある。
【0013】
上記の特徴構成によれば、省電力インプット領域を、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、前記最低電力消費指標点より所定の許容消費電力量だけ高い許容最高電力消費指標点までの範囲内の領域として、最低電力消費指標点を基点とする所定の許容範囲を持った領域として設定する。これにより、電力の消費を、最低電力消費指標点から所定の許容範囲内に収めることができる。
また、所定の許容範囲内では、通常時と同様にガス熱源機を使用できるため、使用者に省電力を過度に意識させることがない。従って、使用者が感じる不便を必要最小限に留めつつ、省電力を実現することができる。
なお、所定の許容範囲を規定する許容消費電力量は、割合や絶対量で設定するように構成できる。例えば、許容消費電力量を、最低電力消費指標点における消費電力量に対する割合で設定する構成としてもよいし、割合でなく絶対量としての消費電力量で設定する構成としてもよい。
【0014】
本発明に係るガス熱源機の第4特徴構成は、前記第1特徴構成において、
前記燃焼制御部が、前記インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点で、前記燃焼部の燃焼を制御する点にある。
【0015】
上記の特徴構成によれば、インプット関係指標により、省電力インプット領域を電力消費が最低値である最低電力消費指標点に設定する。これにより、電力の消費を最低限に抑えることができる。従って、限られた電力量の補助電源で、最大限に長時間運転することが可能なガス熱源機を提供することができる。
【0016】
本発明に係るガス熱源機の第5特徴構成は、前記第1〜4特徴構成の何れかにおいて、
前記ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能は複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成され、
各燃焼段において、前記インプット関係指標が設定され、
前記省電力インプット領域として、各燃焼段のインプット関係指標毎に省電力インプット領域が設定されている点にある。
【0017】
上記の特徴構成によれば、ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能な複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成されていることにより、給湯量に応じて加熱能力をバーナ部の個数倍に増加させることが可能なガス熱源機において、前記1〜4特徴構成で記した省電力制御を適用する。これにより、加熱能力が高く、所定の給湯温度のお湯を短時間で所定量供給することが可能な給湯能力の高いガス熱源機において、電力消費を抑制し、長時間運転を可能に構成することができる。
【0018】
本発明に係るガス熱源機の第6特徴構成は、前記第4特徴構成において、
前記ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能は複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成され、
各燃焼段において、前記インプット関係指標が設定され、
前記燃焼制御部が、各燃焼段の前記インプット関係指標における、電力消費が最低値である最低電力消費指標点の何れかで、前記燃焼部の燃焼を制御する点にある。
【0019】
上記の特徴構成によれば、複数のバーナ部を備え、複数の燃焼段を実現可能なガス熱源機において、電力消費を、選択された各燃焼段における最低値とする。従って、複数の燃焼段を備えることによる加熱能力(ひいては給湯能力)の高さを保持しつつ、各燃焼段における電力消費を最低限に抑え、できる限り長時間の運転を可能とするガス熱源機を提供することができる。
また、出湯中に燃焼段数を変化させると必要な燃料ガスの供給量(ひいては加熱能力)が急激に変化する場合は、給湯栓を閉じるまでの間は燃焼段数を固定にして加熱能力の急激な変化を避け、湯温を安定させるように構成してもよい。
【0020】
本発明に係るガス熱源機の第7特徴構成は、前記第1〜6特徴構成の何れかにおいて、
前記省電力インプット領域内で前記燃焼部の燃焼を制御した省電力モードにおいて、前記要求される給湯量及び給湯温度を実現できない場合に、前記給湯水管内を流れる水量を増減させて、前記給湯温度を実現する点にある。
【0021】
上記の特徴構成によれば、消費電力を抑制する省電力モードでは加熱能力が制限されるため、要求される給湯量及び給湯温度を同時には実現できない場合に、加熱対象となる水量を調整して、給湯温度を優先して給湯を行う。即ち、上記特徴構成のガス熱源機によれば、消費できる電力量が制限され、加熱能力に限界のある省電力モードにおいても、所望の給湯温度で湯水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ガス熱源機の構成図
【図2】ガス熱源機本体の構成図
【図3】通常時(受電状態)のガス熱源機における電力供給の様子を示す図
【図4】非常時(遮断状態)のガス熱源機における電力供給の様子を示す図
【図5】通常時の燃料ガス供給量と送風ファン回転数の関係を示すグラフ図
【図6】省電力モードの実施例1を示すグラフ図
【図7】省電力モードの実施例1を説明するグラフ図
【図8】省電力モードの実施例2を示すグラフ図
【図9】省電力モードの実施例2の変形例を示すグラフ図
【図10】省電力モードの実施例3を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るガス熱源機の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るガス熱源機1の構成図である。
【0024】
〔ガス熱源機の構成〕
図1に示すように、ガス熱源機1は、交流電流を供給する外部交流電源8に接続される熱源機本体2と、インバータ4を介して接続線6で熱源機本体2に接続されており、直流電流で作動する、熱源機本体2に作動を指令するためのリモコン装置3と、を備える。図1では、100Vの電圧で交流電流を供給する外部交流電源8が熱源機本体2に接続されている。
【0025】
リモコン装置3は、給湯水の目標温度を設定可能なコントローラとして作動する。図1に示すガス熱源機1では、リモコン装置3として、台所a、浴室b、居間cの夫々に、台所用リモコン3a、浴室用リモコン3b、床暖房用リモコン3cが設置され、接続線6(6a、6b、6c)を介して、熱源機本体2に接続されている。
【0026】
ガス熱源機1は、直流電流を供給する補助電源を着脱自在に接続するための接続端子5を、外部に露出している機器であるリモコン装置3に備えている。図1では、台所a、浴室b、居間cに設置されたリモコン装置3(台所用リモコン3a、浴室用リモコン3b、床暖房用リモコン3c)の夫々に接続端子5(5a、5b、5c)が備えられている。そして、補助電源として車のバッテリー9が、台所用リモコン3aに備えられた接続端子5aを通じて、使用者によりガス熱源機1に容易に接続可能に構成されている。
図1は、車のバッテリー9を実際に接続した状態を示しており、停電等の理由により、外部交流電源8から熱源機本体2への電力供給が断たれた状況では、補助電源である車のバッテリー9からの電力供給に頼ることとなる。
【0027】
また、図1において、ガス熱源機1は、熱源機本体2内の機器の始動に伴う補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段であるバイパスコンデンサ7を、接続端子5と熱源機本体2との間の接続線6に備えている。これにより、突入電流が大きい送風ファン等の熱源機本体内の機器の始動に伴い、電流の波形にいわゆる尖りやノイズ等の矩形を生じた場合でも、突入電流に起因するブレーカの切断や電源電圧の不安定化等の悪影響を抑え、安定した電力を供給することができる。
【0028】
また、図1に示すように、ガス熱源機1は、ガスバーナ13を備えた燃焼部11に、ガスバーナ13から供給される燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガスを供給する送風ファン14と、燃焼部11から発生する燃料ガスの保有する熱により、給湯水管内を流れる給水を加熱して湯水を発生する熱交換器12とを備えている。そして、リモコン装置3から設定入力される要求される給湯量及び給湯温度に対応して、燃焼部11に供給する燃料ガス供給量と燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する送風ファン14の回転数との関係であるインプット関係指標(例えば後述する図5に実線で示すインプットラインに対応する指標)に基づいて、燃焼部11に供給する燃料ガス供給量及び送風ファン14の回転数を制御する燃焼制御部10を備え、通常時には外部交流電源8から作動に必要な電力の全てを受電して給湯作動する(なお、燃料ガス供給量及び送風ファン回転数の制御の詳細については後述する)。
【0029】
〔熱源機本体の構成〕
図2に熱源機本体2の構成を示す。図2に示す熱源機本体2は、燃焼部11として、新たな湯水を供給するために、給水された水を加熱して湯水として供給する給湯系2Xの燃焼部11Xと、高低温暖房及び追焚きのために、暖房タンク31や浴槽42に貯蔵された湯水を循環させ、加熱して還流させる循環系2Yの燃焼部11Yとを備える、いわゆる2缶3水路方式の熱源機である。
【0030】
〔給湯系〕
熱源機本体2は、給湯系2Xに、上流から供給される水を燃焼部11Xで加熱し、湯水として下流の給湯水栓25に供給する給湯水管21と、給湯水管21を通流する水を加熱する熱交換器12X及びガスバーナ13Xからなる燃焼部11Xと、燃焼部11Xに送風する送風ファン14Xと、を備えている。図2では、給湯水栓25として、台所aの蛇口25aと浴室bのシャワー25bとを備えている。また、ガスバーナ13Xは、個々に燃料ガスの供給・遮断が可能な複数のバーナ部(図示省略)を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて、燃料ガス供給量(インプット量)が段階的に異なる複数の燃焼段(燃焼状態)を実現可能に構成されている。
【0031】
給湯系2Xでは、燃焼部11Xをバイパスするバイパス管23が、燃焼部11Xの上流でバイパス管23に通流させる水の流量を調整するミキシング弁22を介して分流するように、且つ、燃焼部11Xの下流で合流するように、給湯水管21に接続されている。また、給湯水管21とバイパス管23との合流箇所の下流に、給湯量を調整する水量サーボ24を備えている。また、給湯水栓25の上流に、給湯水栓25に供給される湯水の流量を計測する流量計26a及び温度を計測する温度計26bが設けられており、流量計26a及び温度計26bで測定された温度は、燃焼制御部10に伝達される。
【0032】
〔給湯系:加熱量の調整による給湯温度の調整〕
給湯系2Xでは、リモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に基づいて、給湯水管21を通流する湯水を燃焼部11Xで加熱し、給湯水栓25に給湯する。具体的には、燃焼制御部10が、リモコン装置3で設定された目標温度及び流量計26aで計測される湯水の量、温度計26bで計測される湯水の温度に基づいて、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量及び燃料ガス供給量に対応する燃焼用空気量(実際はファン回転数)を調整することで、燃焼部11Xにおける加熱量を調整し、給湯水栓25に供給される湯水の温度を調整する。
【0033】
即ち、燃焼制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に比べて低い場合は、給湯温度を上げるため、燃焼部11Xにおける加熱量を増加させるべく、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量を増加させる。また、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量に対応するように送風ファン14Xの回転数を制御する。
一方、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された目標温度に比べて高い場合は、給湯温度を下げるため、燃焼部11Xにおける加熱量を減少させるべく、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量を減少させる。また、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量の減少に対応するように送風ファン14Xの回転数を制御する。
このように、燃焼制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度と、リモコン装置3で設定された目標温度とに基づいて、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数を制御して、給湯水栓25に供給される湯水の給湯温度を調整する。
【0034】
このような燃料ガス供給量と送風ファン14Xの回転数の関係を図5に示す。図5は、ガスバーナ13Xが複数(図示する場合は4)のバーナ部から構成されており、使用するバーナ部の数を変更することで、複数段のインプット調整が可能な例を示している。図5において、Aで示す1段インプットラインが単一のバーナ部を使用するラインであり、Bで示す2段インプットラインが2つのバーナ部を使用するラインである。使用するバーナ部の数が増加するに従って、燃料ガス供給量を段階的に増加させることができる。
さらに、各段内で、使用するバーナ部に供給する燃料ガス供給量も所定の範囲内で調整することができる。
【0035】
また、ガスバーナに供給する燃料ガス供給量に従って、バーナにおける燃焼を最適な状態に保つように、その供給量に対応した燃焼用空気の供給量(換言すると送風ファン14Xの回転数)が予め決定されている。
これらが、図5に各実線で示すインプットラインである。
【0036】
なお、詳細な説明は省略するが、複数の需要箇所に設置した夫々の給湯水栓25(台所aの蛇口25a、浴室bのシャワー25b、等)において、上記した給湯系2Xから供給される給湯水と、上記で説明していない別の給水系から供給される水とを、例えば給湯系2Xの下流で混合可能に構成することで、夫々の給湯水栓25毎に、同時に、且つ、異なる給湯温度及び異なる給湯水量で、湯水を使用可能に構成することができる。
【0037】
〔給湯系:水量の調整による給湯温度の調整〕
燃焼制御部10は、外部交流電源8からの電力供給が正常に行われている第1運転状態では、カラン等の調整により決定される給湯量に従って、リモコン装置3で設定される目標温度でその給湯量の湯を得られるように、図5に示されるインプットラインを選択し、燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数を制御する。さらに、ミキシング弁22の作動も制御する。
一方、外部交流電源8からの電力供給が断たれ、リモコン装置3を介して制限された電力量の直流電力しか得られない第2運転状態では、上記のガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数、及びミキシング弁22の作動を特定した省電力モードでガス熱源機1を運転する。省電力モードでは、水量サーボ24或いは/及びミキシング弁22の作動を制御することで、給湯温度を優先した制御を行うことができる。
即ち、省電力モードにおいて、燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数の調整による加熱能力の調整だけでは要求される給湯量及び給湯温度を同時には実現できない場合には、水量サーボ24或いは/及びミキシング弁22の作動を制御し、給湯水管内を流れる水量を増減させて、給湯温度を優先した制御を行うことで、要求された給湯温度による給湯を実現できる。
【0038】
具体的には、第2運転状態において、燃焼制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に比べて低い場合は、水量サーボ24或いは/及びミキシング弁22の作動を制御し、燃焼部11Xに通流させる水量を減少させることで、燃焼部11Xを通流する水の単位体積当たりの加熱量を増加させ、給湯水栓25における湯水の給湯温度を上昇させることができる。
また、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に比べて高い場合は、水量サーボ24或いは/及びミキシング弁22の作動を制御し、燃焼部11Xに通流させる水量を増加させることで、燃焼部11Xを通流する水の単位体積当たりの加熱量を減少させ、給湯水栓25における湯水の給湯温度を低下させることができる。
なお、上記の制御は、給湯温度を給湯量に優先する制御である。従って、給湯量については、必ずしも使用者の要求した給湯量を供給できるとは限らない。
【0039】
〔循環系〕
循環系2Yは、暖房或いは追焚に使用される熱媒を貯蔵する暖房タンク31と、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を送出する暖房循環ポンプ32と、暖房循環ポンプ32により暖房タンク31から送出された熱媒を加熱し、暖房或いは追焚のための熱量を与える燃焼部11Yと、暖房タンク31と燃焼部11Yとを接続する熱媒往管33と、燃焼部11Yで加熱された熱媒を高温暖房設備41に供給する高温往管34と、高温暖房設備41で放熱し、温度の低下した熱媒を暖房タンク31に戻す熱媒戻管35とを備える。
このような構成により、循環系2Yでは、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を、燃焼部11Yで加熱して高温の熱媒とし、高温暖房に利用することができる。即ち、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を、熱媒往管33、燃焼部11Y、高温往管34、高温暖房設備41、熱媒戻管35、暖房タンク31、と循環させて、高温暖房に利用することができる。
なお、循環系の燃焼部11Yも、給湯系の燃焼部11Xと同様に、熱交換器12Y、ガスバーナ13Y、送風ファン14Yとを備えて構成されている。高温暖房設備41として、例えば、浴室乾燥暖房装置やファンコンベクター等が考えられる。
【0040】
また、循環系2Yでは、低温暖房設備43に熱媒を供給すべく、暖房タンク31から送出された熱媒を低温暖房設備43に供給する低温往管36が、暖房タンク31と燃焼部11Yとの間で熱媒往管33から分岐して、低温暖房設備43に連接されている。そして、低温暖房設備43で使用され、放熱により温度の低下した熱媒は、熱媒戻管35を通流して暖房タンク31に戻るように構成される。
このような構成により、循環系2Yでは、暖房タンク31に貯蔵された熱媒が持つ熱量を、低温暖房に利用することができる。即ち、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を、熱媒往管33、低温往管36、低温暖房設備43、熱媒戻管35、暖房タンク31と循環させて、低温暖房に利用することができる。
低温暖房設備43として、例えば、床暖房装置やパネルラジエータ等が考えられる。
【0041】
さらに、循環系2Yは、高温往管34から分岐し、熱媒戻管35に連接された高温バイパス管37と、高温バイパス管37を通流する熱媒の熱量により追焚される湯水を通流させる追焚循環管38と、追焚循環管38に湯水を循環させるための追焚循環ポンプ39と、高温バイパス管37を通流する熱媒の熱量により追焚循環管38を循環する湯水を追焚するための追焚熱交換部40とを備える。
このような構成により、循環系2Yでは、燃焼部11Yで加熱され、高温となった熱媒の一部を追焚に利用することができる。また、追焚に利用し温度が低下した熱媒を、熱媒戻管35を通じて暖房タンク31に戻らせ、暖房或いは追焚のために再利用することができる。
【0042】
〔電力供給の構成〕
ガス熱源機1は、外部交流電源から熱源機本体2及びインバータ4を経てリモコン装置3に電力が供給されて運転される第1運転状態と、接続端子5に接続された補助電源からリモコン装置3及び熱源機本体2に電力が供給されて運転される第2運転状態と、に切換可能に構成されている。
【0043】
ガス熱源機1は、外部交流電源からの電力供給の有無に基づいて第1運転状態と第2運転状態とを切換える。具体的には、ガス熱源機1は、外部交流電源から電力の供給を受けることが可能な受電状態では第1運転状態で運転され、外部交流電源からの電力の供給が遮断された遮断状態では第2運転状態で運転される。即ち、ガス熱源機1は、受電状態(通常時)では外部交流電源8から、遮断状態(非常時)では補助電源であるバッテリー9から、電力の供給を受けて給湯作動する。このような構成により、ガス熱源機1は、状況に応じた好適な電源から電力供給を受けて運転される。
【0044】
このような第1運転状態と第2運転状態との切換制御は、例えば、外部交流電源或いは補助電源からの電力供給の有無を計測する計測機器と、当該計測機器による計測結果を受信して、当該計測結果に応じて回路接続の切換制御を行う燃焼制御部で構成することができる。
即ち、ガス熱源機1は、外部交流電源8からの電力の供給が断たれた遮断状態において、限定された電力の供給が可能な補助電源であるバッテリー9から受電可能な補助電源受電手段と、補助電源受電手段から受電している補助電源受電状態を検知する補助電源受電検知手段を備えている。このような構成により、ガス熱源機1は、遮断状態においては、補助電源受電手段によりバッテリー9から電力の供給を受けるとともに、補助電源受電手段から受電している補助電源受電状態であることを補助電源受電検知手段により検知する。
図1では、リモコン装置3に備えられた接続端子5が補助電源受電手段に該当する。また、図示しない計測機器の計測結果から通電状態を検知して、補助電源受電手段から受電している補助電源受電状態を検知する燃焼制御部10が、補助電源受電検知手段に該当する。
燃焼制御部10は、図示しない計測機器の計測結果を受信し、外部交流電源或いは補助電源からの電力供給の有無(通電状態)を検知して、当該計測結果に応じて適切な回路接続の切換制御を行う。
以下では、第1運転状態、第2運転状態の夫々における電力供給の構成を説明する。
【0045】
〔第1運転状態における電力供給の構成〕
図3に、交流電源である外部交流電源8から電力供給を受けて作動する第1運転状態(受電状態)における電力供給の構成を示す。
燃焼制御部10は、計測機器(図示省略)の計測結果から、ガス熱源機1への電力の供給状態が外部交流電源8から電力の供給を受けることが可能な受電状態であることを検知すると、ガス熱源機1の運転状態を第1運転状態とし、外部交流電源8を熱源機本体2に接続する。これにより、熱源機本体2内の送風ファン等の機器は、交流電源である外部交流電源8から電力供給を受けて作動する。
【0046】
また、第1運転状態において、リモコン装置3は、接続線6を通じて、熱源機本体2を介して外部交流電源8から電力供給を受ける。リモコン装置3は直流電流で作動するため、この場合、リモコン装置3は、インバータ4を介して接続線6により熱源機本体2に接続される。このような構成により、ガス熱源機1は、外部交流電源8から供給された交流電流を、インバータ4により直流電流に変換した上でリモコン装置3に供給することができる。これにより、ガス熱源機1は、交流電源である外部交流電源8からの電力供給を受けて、熱源機本体2及びリモコン装置3を作動させることができる。
【0047】
〔第2運転状態における電力供給の構成〕
図4に、直流電源であるバッテリー9から電力供給を受けて作動する第2運転状態(遮断状態)における電力供給の構成を示す。
燃焼制御部10は、計測機器(図示省略)の計測結果から、ガス熱源機1への電力の供給状態が外部交流電源8からの電力の供給が断たれた遮断状態であることを検知すると、ガス熱源機1の運転状態を第2運転状態とし、バッテリー9を、リモコン装置3が備える接続端子5に接続する。これにより、直流電流で作動するリモコン装置3は、直流電源であるバッテリー9から電力供給を受けて作動する。
このように、ガス熱源機1は、外部交流電源8からの電力の供給が断たれた遮断状態では、補助電源受電手段である接続端子5を通じて、直流電源であるバッテリー9から電力供給を受けて作動する。また、燃焼制御部10は、図示しない計測機器の計測結果からこのような通電状態を検知して、補助電源受電手段を介して直流電源であるバッテリー9から受電している補助電源受電状態であることを検知して、ガス熱源機1が、第2運転状態として正常に作動していることを確認する。
【0048】
また、第2運転状態において、熱源機本体2は、接続線6を通じて、リモコン装置3を介してバッテリー9から電力供給を受ける。ここで、熱源機本体2は、熱源機本体2内の機器の始動に伴う補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段であるバイパスコンデンサ7を、接続端子5と熱源機本体2との間の接続線6に備えている。
このような構成により、ガス熱源機1は、バッテリー9から供給された直流電流について、送風ファン14等の突入電流が大きい熱源機本体2内のアクチュエータによる影響をバイパスコンデンサ7で緩和して安定させた状態で、熱源機本体2に電力を供給することができる。これにより、ガス熱源機1は、直流電源であるバッテリー9からの電力供給を受けて、熱源機本体2及びリモコン装置3を作動させることができる。
【0049】
〔第2運転状態における省電力モード〕
第2運転状態は外部交流電源8からの電力の供給が遮断された停電時等の遮断状態における運転状態であり、いわゆる非常時の運転状態である。このような第2運転状態では、ガス熱源機1は、電力量の限られた補助電源から受電する補助電源受電状態となるため、消費電力を抑えた省電力モードで作動するように構成されている。
【0050】
即ち、ガス熱源機1は、第2運転状態ひいては補助電源受電状態において、燃焼制御部10が、インプット関係指標を満たし、且つ送風ファン14による電力消費が少ない省電力インプット領域内で、燃焼部11の燃焼を制御するように構成されている。
なお、インプット関係指標とは、燃焼部11に供給する燃料ガス供給量Gと燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する送風ファン回転数Nとの関係を示す指標であり、図5のようなグラフを表す数式或いは数値情報として燃焼制御部10に記憶されている。
【0051】
先に説明したように図5は、外部交流電源8から電力供給を受ける通常時において、燃焼部11に供給する燃料ガス供給量Gと、燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する送風ファン回転数Nとの関係であるインプット関係指標を示すグラフである。図5に示される4本のグラフが、各燃焼段(図5の場合は、4段までの燃焼段)におけるインプットラインを示している。
通常の第1運転状態では、充分な電力供給を受けることが可能であるため、各インプットライン上の任意の点で運転することが可能となる、即ち、求められる給湯量の湯を目標温度として供給する。
これに対して、非常時である第2運転状態では、制限された電力供給しか受けることができないため、各インプットラインのうち、電力消費量が小さい制限された範囲で運転し、得ることが可能な電力量で実現できる範囲で給湯を行う。
【0052】
例えば、通常時である第1運転状態では、使用者がリモコン装置3により目標温度をTAに設定すると、燃焼制御部10は、給湯量、給湯温度及び内部的に保持する対応表(図示省略)に基づいて、燃料ガス供給量をGA、送風ファン回転数をNAに決定する。
【0053】
図5において、一の燃料ガス供給量Gに対して2つの送風ファン回転数Nを示すインプットラインが存在する範囲では、直近に採用していたインプットラインに基づいて、送風ファン回転数Nを決定する。
例えば、一の燃料ガス供給量Gに対して2つの送風ファン回転数Nを示すインプットラインが存在する範囲(ii)について、低温から高温への変更により範囲(ii)に属することとなった場合は、範囲(i)において採用していたインプットラインAに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。そして、範囲(iii)の温度となった場合に、インプットラインBに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。
また、高温から低温への変更により範囲(ii)に属することとなった場合は、範囲(iii)において採用していたインプットラインBに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。そして、範囲(i)の温度となった場合に、インプットラインAに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。
【0054】
一方、停電時等のいわゆる非常時である第2運転状態では、ガス熱源機1は消費電力を抑える省電力モードで作動し、送風ファン回転数Nを抑えるように制御される。送風ファン回転数Nは燃焼部11における消費電力量への影響が大きいことから、送風ファン回転数Nを抑えることで、ガス熱源機1において、省電力モードにおける消費電力量を抑えることができる。
省電力モードにおける送風ファン回転数Nは、以下の実施例で示すように、様々な基準に基づいて抑制することが考えられる。
【0055】
〔省電力モードの実施例1:所定の回転数以下〕
図6は、省電力モードにおける送風ファン回転数Nの設定の一実施例として、送風ファン回転数Nを上限値Ne以下に抑える範囲を省電力インプット領域として設定した場合の燃料ガス供給量Gと送風ファン回転数Nの関係を示すグラフ図である。
ここで、送風ファン回転数Nを上限値Ne以下に抑える範囲では、送風ファン回転数がNeの場合の電力消費量が電力消費の上限値となることから、図6は、省電力インプット領域が、インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、所定の基準に基づいて設定される電力消費の上限値である上限電力消費指標点までの範囲内の領域とされている場合の燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nの設定を示すグラフ図と言える。この場合、送風ファン回転数の上限値Neが「所定の基準」であり、送風ファン回転数がNeの場合の電力消費量が「所定の基準に基づいて設定される電力消費の上限値」に該当する。
このように設定することで、省電力モードにおける送風ファン14における電力消費を、所定の基準に基づいて設定される電力消費の上限値である上限電力消費指標点までの範囲内に抑えることができる。
【0056】
省電力インプット領域をこのように設定した場合、燃焼制御部10は、燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nを、インプットラインのg1、g2、g3、g4上の点で設定する。例えば、図6で示される省電力モードでは、燃焼制御部10は、燃焼段が2段の場合に、送風ファン回転数NがNe以下となる省電力インプット領域内の燃料ガス供給量GB、送風ファン回転数NBに設定することができる。
【0057】
一方、図6で示される省電力モードによれば、燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nを、送風ファン回転数NがNeを超える省電力インプット領域外の燃料ガス供給量GC、送風ファン回転数NCに設定することはできない。
このように、燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nをインプットラインのg1、g2、g3、g4上の点に限定すると、取り得る燃料ガス供給量Gが不連続となる。従って、図7における燃料ガス供給量GCのように、インプットライン上にない燃料ガス供給量Gを要する場合は、例えば、当該燃料ガス供給量Gに近いインプットラインのうち、燃料ガス供給量Gが大きい側のインプットライン(例えば図7における燃料ガス供給量GCに対するインプットラインg3)上の最小の燃料ガス供給量(例えば図7における燃料ガス供給量GCに対する燃料ガス供給量GC1)を燃料ガス供給量Gとし、送風ファン回転数Nを当該燃料ガス供給量GC1に対応する送風ファン回転数NC1に設定する。そして、これに加えて、先述した水量サーボ24或いは/及びミキシング弁22の作動制御による水量の調整を行うことで、消費電力量を所定の範囲内に抑えつつ、所望の給湯温度に制御するように、燃焼制御部10及びガス熱源機1を構成する。
或いは、当該燃料ガス供給量Gに近いインプットラインのうち、燃料ガス供給量Gが小さい側のインプットライン(例えば図7における燃料ガス供給量GCに対するインプットラインg2)上の最大の燃料ガス供給量(例えば図7における燃料ガス供給量GCに対する燃料ガス供給量GC2)を燃料ガス供給量Gとし、送風ファン回転数Nを当該燃料ガス供給量GC2に対応する送風ファン回転数NC2に設定する。そして、これに加えて、先述した水量の調整を行うことで、所望の給湯温度に制御するように、燃焼制御部10及びガス熱源機1を構成する。
なお、上記では簡単のため、燃料ガス供給量GCに代えてインプットラインg3上の最小の燃料ガス供給量GC1或いはインプットラインg2上の最大の燃料ガス供給量GC2を設定する構成を説明したが、これらの設定は例示に過ぎず、他の適切な値を設定する構成としてもよい。
【0058】
また、上記では、省電力インプット領域を送風ファン回転数Nの上限値Neに基づいて設定する構成としたが、送風ファン回転数Nに代えて、第2運転状態において得ることが可能な電力量(例えば補助電源から供給される電力量)を基準として、電力消費の上限値である上限電力消費指標点を、当該基準に基づいて設定する(例えば補助電源から供給される電力量の9割を上限電力消費指標点とする等)構成としてもよい。
このように、省電力インプット領域の上限を、第2運転状態において得ることが可能な電力量に基づいて設定する構成とすることで、ガス熱源機の送風ファンで消費する電力量を、第2運転状態において得ることが可能な電力量に対する所定の範囲に収めることが容易となる。
【0059】
〔省電力モードの実施例2:最低点から許容範囲〕
図8は、省電力モードにおける送風ファン回転数Nの設定の他の実施例として、各燃焼段のインプットラインg1、g2、g3、g4における送風ファン回転数Nの最小値から各燃焼段毎の所定の許容範囲α内を、省電力インプット領域として設定したグラフ図である。
即ち、図8は、ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能な複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成され、各燃焼段において、インプット関係指標が設定され、省電力インプット領域として、各燃焼段のインプット関係指標毎に省電力インプット領域が設定されている場合の燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nの設定を示すグラフ図である。図8の各燃焼段のインプットラインg1、g2、g3、g4における送風ファン回転数Nの最小値から各燃焼段毎の所定の許容範囲α内が、各燃焼段のインプット関係指標毎に設定された「省電力インプット領域」に該当する。許容範囲αは、例えば、消費電力量(許容消費電力量)や割合(例えば「送風ファン回転数Nの最小値の2割」)として設定することができる。
このように設定することで、省電力モードにおける送風ファン14における消費電力量を、所定の範囲内に抑えることができる。
【0060】
なお、上記では省電力インプット領域を各燃焼段に設定する構成を例示したが、省電力インプット領域は、必ずしも各燃焼段に設定する必要はない。別実施形態として、燃焼段に関わりなく、省電力インプット領域が、インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、最低電力消費指標点より所定の許容範囲分だけ高い最高電力消費指標点までの範囲内の領域として設定される構成としてもよい。
例えば図9では、インプットラインg3の最低電力消費指標点が、各燃焼段のインプットラインg1、g2、g3、g4の全ての中で、電力消費が最低値である最低電力消費指標点に該当するので、図9に示すように、燃焼段に関わりなく、インプットラインg3の最低電力消費指標点Nbから、最低電力消費指標点Nbより所定の許容範囲αの分だけ消費電力量が高い最高電力消費指標点Ntまでの範囲内の領域を、省電力インプット領域として設定する構成としてもよい。即ち、省電力インプット領域が、インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点Nbから、最低電力消費指標点Nbより所定の許容範囲αの分だけ消費電力量が高い最高電力消費指標点Ntまでの範囲内の領域とされる構成としてもよい。
【0061】
〔省電力モードの実施例3:最低点〕
図10は、省電力モードにおける送風ファン回転数Nの設定の他の実施例として、送風ファン回転数Nを、各燃焼段のインプットラインg1、g2、g3、g4において、送風ファン回転数が最小値となる点(燃料ガス供給量がG1、G2、G3、G4である点)に設定したグラフ図である。
即ち、図10は、ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能は複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成され、各燃焼段において、インプット関係指標が設定され、燃焼制御部が、各燃焼段のインプット関係指標における、電力消費が最低値である最低電力消費指標点の何れかで、燃焼部の燃焼を制御する場合の燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nの設定を示すグラフ図である。図10の各燃焼段のインプットラインにおける送風ファン回転数Nの最小値に対応する点が、「各燃焼段のインプット関係指標における、電力消費が最低値である最低電力消費指標点」に該当する。
【0062】
なお、省電力インプット領域をこのように設定した場合、上記省電力モードの実施例2と同様に、取り得る燃料ガス供給量Gが不連続となる。従って、インプットライン上にない燃料ガス供給量Gが要求された場合は、実施例2と同様に、例えば、通常時のインプットラインにおける最小の送風ファン回転数に対応する燃料ガス供給量を燃料ガス供給量として設定し、これに加えて、先述した水量サーボ24或いは/及びミキシング弁22の作動制御による水量の調整を行うことで、消費電力を抑えつつ、所望の給湯温度に制御する構成を実現できる。
なお、出湯中に燃焼段数を変化させると必要な燃料ガスの供給量(ひいては加熱能力)が急激に変化する場合は、給湯栓を閉じるまでの間は燃焼段数を固定にして加熱能力の急激な変化を避け、湯温を安定させるように構成してもよい。例えば、図10において、燃焼段数を2段から3段に変化させた場合には、G2とG3とで加熱能力に差が存在する。従って、湯温の安定を優先する場合は、給湯栓を閉じるまでの間は、燃焼段数を2段から3段(或いは3段から2段)には変化させず、燃焼段数を2段(或いは3段)で固定して、加熱能力の急激な変化を避けるように構成してもよい。
又は、加熱能力の変化の大きさに基づいて、燃焼段数の変化の可否を制御してもよい。例えば、図10において、燃焼段数を2段から3段に変化させた場合のG2とG3との加熱能力の差は、燃焼段数を1段から2段に変化させた場合のG1とG2の加熱能力の差に比べて大きい。このような場合に、加熱能力の変化の大きさに基づいて、加熱能力の変化が比較的小さい燃焼段数1段から2段(或いは2段から1段)への変化は認めるものの、加熱能力の変化が大きい燃焼段数2段から3段(或いは3段から2段)への変化は認めないように構成してもよい。
【0063】
また、上記では省電力インプット領域を各燃焼段に設定する構成を例示したが、省電力インプット領域は、必ずしも各燃焼段に設定する必要はない。即ち、燃焼段に関わりなく、インプット関係指標において電力消費が最低値である最低電力消費指標点(図10では燃料ガス供給量がG3の電力消費指標点)で、燃焼部の燃焼を制御する構成としてもよい。
【0064】
〔第2運転状態における容量切れの報知〕
第2運転状態において、補助電源であるバッテリー9からの供給電圧が所定値以下に低下した場合は、燃焼制御部10は、リモコン装置3に警告表示を行なうとともに、ガスバーナ13を停止し、水量サーボ24により給湯水量を制限するように作動を制御する。このように、ガス熱源機1は、リモコン装置3への警告表示と水量サーボ24による給湯量制限により、使用者にバッテリー9の容量切れを報知する。
【0065】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、台所用リモコン3a、浴室用リモコン3b、床暖房用リモコン3cとして、台所a、浴室b、居間cの夫々にリモコン装置3が設置され、複数のリモコン装置3が熱源機本体2に接続される構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、例えば、リモコン装置3は1つだけでもよく、台所a、浴室b、居間cの何れかにのみ設置される構成としてもよい。また、リモコン装置3は、台所a、浴室b、居間c以外の場所に設置されていてもよく、4台以上のリモコン装置3が熱源機本体に接続される構成としてもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、燃料ガス供給量Gを、使用者が設定した目標温度と、制御部が内部的に保持される対応表とに基づいて決定する構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、目標温度と所定の数式とに基づいて決定する構成としてもよい。或いは、制御部が、使用者が設定した目標温度と、給湯水栓の上流に設けられた温度計で計測される給湯温度とを比較して、燃料ガス供給量Gを増減させる構成としてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、計測機器の計測結果(外部交流電源からの電力供給の有無)に基づいて、制御部が第1運転状態と第2運転状態とを切換える構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、制御部による切換制御によることなく、或いは、制御部による切換制御と並行して、外部からの切換指令に基づいて第1運転状態と第2運転状態との間で運転状態を切換える切換手段を備える構成としてもよい。
切換手段は、例えばリモコン装置3に電源切換スイッチを備え、当該電源切換スイッチの切換えに基づいて、第1運転状態と第2運転状態とを切換える構成としてもよい。或いは、リモコン装置3とは別に、電源を切換える電源切換スイッチをガス熱源機に備え、当該電源切換スイッチの切換えにより、第1運転状態と第2運転状態とを切換える構成としてもよい。
このような構成により、外部交流電源からの電力供給状態に依ることなく、或いは、外部交流電源からの電力供給状態に基づく電源の切換制御と並行して、使用者が切換手段から切換を指令することで、運転状態(電源)を柔軟に切換えることが可能なガス熱源機1を提供することができる。
【0068】
(4)上記実施形態では、省電力モードにおいて、送風ファン回転数Nを抑えることで消費電力を抑える構成を示したが、別実施形態として、送風ファン回転数Nの抑制による消費電力の抑制に加え、リモコン装置3の表示を限定したり、リモコン装置3の輝度を落とすことで消費電力を抑える構成としてもよい。また、これらを組合せる構成としてもよい。さらに、これらによる消費電力量の抑制が、補助電源(上記実施形態ではバッテリー9)からの供給電力量に基づいて、所定量の消費電力量を抑制できるように、適宜組合せて制御される構成としてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態では、第2運転状態において、補助電源からの供給電圧が所定値以下に低下した場合には、リモコン装置3への警告表示と水量サーボ24による給湯水量制限により使用者にバッテリー9の容量切れを報知する構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、リモコン装置3への警告表示、水量サーボ24による給湯水量制限、の何れか一方により使用者に報知する構成としてもよい。
【0070】
(6)上記実施形態では、送風ファン回転数Nを、各燃焼段のインプットラインg1、g2、g3、g4において、送風ファン回転数が最小値となる点(燃料ガス供給量がG1、G2、G3、G4である点)に設定する実施例3において、給湯栓を閉じるまでの間は燃焼段数を固定にして加熱能力の急激な変化を避け、湯温を安定させる構成に言及したが、当該構成は一例に過ぎず、複数の燃焼段を実現可能なガスバーナを備える、他の構成のガス熱源機に対しても適用可能である。
例えば、送風ファン回転数Nを上限値Ne以下に抑える範囲を省電力インプット領域として設定する実施例1や、各燃焼段のインプットラインg1、g2、g3、g4における送風ファン回転数Nの最小値から各燃焼段毎の所定の許容範囲α内を省電力インプット領域として設定する実施例2に対しても、当該構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ガス熱源機
2 熱源機本体
5 接続端子(補助電源受電手段)
8 外部交流電源
9 補助電源(バッテリー)
10 燃焼制御部(補助電源受電検知手段)
11 燃焼部
12、12X、12Y 熱交換器
13、13X、13Y ガスバーナ
14、14X、14Y 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナを備えた燃焼部に、前記ガスバーナから供給される燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガスを供給する送風ファンと、
前記燃焼部から発生する前記燃料ガスの保有する熱により、給湯水管内を流れる給水を加熱して湯水を発生する熱交換器とを備え、且つ、
要求される給湯量及び給湯温度に対応して、前記燃焼部に供給する燃料ガス供給量と前記燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用酸素含有ガス供給量を決定する前記送風ファンの回転数との関係であるインプット関係指標に基づいて、前記燃焼部に供給する燃料ガス供給量及び前記送風ファンの回転数を制御する燃焼制御部を備え、
通常時には外部交流電源から作動に必要な電力の全てを受電して給湯作動するガス熱源機において、
前記外部交流電源からの電力の供給が断たれた遮断状態において、限定された電力の供給が可能な補助電源から受電可能な補助電源受電手段と、前記補助電源受電手段から受電している補助電源受電状態を検知する補助電源受電検知手段を備え、
前記補助電源受電状態において、前記燃焼制御部が、前記インプット関係指標を満たし、且つ前記送風ファンによる電力消費が少ない省電力インプット領域内で、前記燃焼部の燃焼を制御するガス熱源機。
【請求項2】
前記省電力インプット領域が、前記インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、所定の基準に基づいて設定される電力消費の上限値である上限電力消費指標点までの範囲内の領域とされている請求項1記載のガス熱源機。
【請求項3】
前記省電力インプット領域が、前記インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点から、前記最低電力消費指標点より所定の許容消費電力量だけ高い許容最高電力消費指標点までの範囲内の領域とされている請求項1記載のガス熱源機。
【請求項4】
前記燃焼制御部が、前記インプット関係指標において、電力消費が最低値である最低電力消費指標点で、前記燃焼部の燃焼を制御する請求項1記載のガス熱源機。
【請求項5】
前記ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能な複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成され、
各燃焼段において、前記インプット関係指標が設定され、
前記省電力インプット領域として、各燃焼段のインプット関係指標毎に省電力インプット領域が設定されている請求項1〜4の何れか一項記載のガス熱源機。
【請求項6】
前記ガスバーナが、個々に燃料ガスの供給・供給遮断が可能は複数のバーナ部を備えるとともに、給湯量に応じて、燃料ガスを供給するバーナ部の個数を増加若しくは減少させて複数の燃焼段を実現可能に構成され、
各燃焼段において、前記インプット関係指標が設定され、
前記燃焼制御部が、各燃焼段の前記インプット関係指標における、電力消費が最低値である最低電力消費指標点の何れかで、前記燃焼部の燃焼を制御する請求項4記載のガス熱源機。
【請求項7】
前記省電力インプット領域内で前記燃焼部の燃焼を制御した省電力モードにおいて、前記要求される給湯量及び給湯温度を実現できない場合に、前記給湯水管内を流れる水量を増減させて、前記給湯温度を実現する請求項1〜6の何れか一項記載のガス熱源機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−53779(P2013−53779A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190993(P2011−190993)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)