説明

ガスタービン発電システム及びその運転方法

【課題】低コストかつコンパクトなシステム構成で、停電時に迅速に負荷設備に電力を供給することができるガスタービン発電システム及びその運転方法を提供する。
【解決手段】商用電力系統2と接続される交流母線3と、交流母線3に断続可能に接続されたガスタービン発電装置4と、交流母線3に接続された負荷設備5と、交流母線3に断続可能に接続されて商用電力系統2からの電力供給なしに起動可能な小容量発電装置6と、交流母線3に接続されてガスタービン発電装置4に圧縮燃料ガスCFを供給する電動式の燃料ガス圧縮機7と制御装置8を備え、制御装置8は、商用電力系統2の停電時に、小容量発電装置6と交流母線3とを接続して、小容量発電装置6から交流母線3を介して負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に電力を供給し、負荷設備5を作動させるとともに燃料ガス圧縮機7を作動させてガスタービン発電装置4を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統と接続される交流母線と、前記交流母線に断続可能に接続されたガスタービン発電装置と、前記交流母線に接続された負荷設備とを備えたガスタービン発電システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスタービン発電システムとして、例えば、特許文献1には、商用電力系統と接続される交流母線と、その交流母線に接続されたガスタービン発電装置および負荷設備と、そのガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給する電動式の燃料ガス圧縮機とを備えたガスタービン発電システムが開示されており、定常時にはガスタービン発電装置および商用電力系統から負荷設備に電力を供給し、停電時にはガスタービン発電装置から負荷設備に電力を供給するガスタービン発電システムが開示されている。
【0003】
このガスタービン発電システムでは、交流母線と燃料ガス圧縮機を接続する電力供給ラインに予備電源としてのUPS(無停電電源)が設けられており、商用電力系統およびガスタービン発電機からの給電が停止したときには、このUPSから燃料ガス圧縮機に電力が供給されるように構成されている。したがって、停電が起こった場合でも燃料ガス圧縮機への給電が確保されるので、ガスタービン発電装置の起動動作および運転継続を行うことができるとされる。
【0004】
また、交流母線から負荷設備に電力を供給する電力供給ラインにもUPSが接続されており、商用電力系統およびガスタービン発電機からの給電が停止したときには、このUPSから負荷設備に電力が供給されるようになっている。したがって、停電が起こって商用電力系統およびガスタービン発電装置のいずれからも電力の供給が途絶えた場合であっても、負荷設備に電力を供給し続けることができるとされる。
【0005】
上記のような構成に代えて、図6に示すガスタービン発電システムが構築されている。このガスタービン発電システムは、商用電力系統32に接続される交流母線33と、交流母線33に接続されたガスタービン発電装置34および負荷設備35と、交流母線33に電力供給線33aによって接続されたガスタービン発電装置34に圧縮燃料ガスCFを供給する燃料ガス圧縮機37とを備えている。
このガスタービン発電システムには、停電時に電力を燃料ガス圧縮機37に供給する非常用発電機38が備えられており、停電時に燃料ガス圧縮機37の電気的な接続を電力供給線33aから非常用発電機38に切り替える電力供給切換スイッチ36が設けられている。
【0006】
そして、停電時に交流母線33を介して商用電力系統32と接続される電力供給線33aから燃料ガス圧縮機37への電力供給が途絶えると、電力供給切換スイッチ36によって燃料ガス圧縮機37の接続先を電力供給線33aから非常用発電機38に切り替えられる。これにより、停電時においても燃料ガス圧縮機37へ電力が供給されて、ガスタービン発電装置34を起動させて、その発電電力を負荷設備35に供給することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−131694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示のガスタービン発電システムにおいては、停電時に燃料ガス圧縮機を働かせるための専用のUPS、即ち、交流母線と燃料ガス圧縮機とを接続する電力供給ラインに燃料ガス圧縮機専用のUPSを必要とする。従って、このガスタービン発電システムでは、実質的に、このUPSから負荷設備に電力の供給を行うことは、考慮されていない。
【0009】
一方、図6に示すガスタービン発電システムでは、停電時に、電力供給切換スイッチ36によって燃料ガス圧縮機37の接続先を電力供給線33aから非常用発電機38に切り替えて、燃料ガス圧縮機37に電力を供給して、燃料ガス圧縮機37を作動させることができるが、非常用発電機38から交流母線33に接続されている負荷設備35には電力を供給可能に構成されておらず、停電時に迅速に負荷設備に電力を供給することができないという問題がある。
【0010】
それに加えて、停電が回復したときに、ガス圧縮機37の接続先を、電力供給切換スイッチ36によって非常用発電機38から電力供給線33aに切り替える場合において、その切換操作時には、ガス圧縮機37へ電力が供給されない状態となって、圧縮ガス燃料がガスタービン発電装置34に供給されなくなり、ガスタービン発電装置34が停止することとなる。そのため、この切換操作中は、負荷設備への電力供給を一時的に停止せざるをえないという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストかつコンパクトなシステム構成とされて、停電時に迅速に負荷設備に電力を供給することができるガスタービン発電システム及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係るガスタービン発電システムは、
商用電力系統と接続される交流母線と、
前記交流母線に断続可能に接続されたガスタービン発電装置と、前記交流母線に接続された負荷設備とを備えたガスタービン発電システムであって、その特徴構成は、
前記交流母線に断続可能に接続されて前記商用電力系統からの電力供給なしに起動可能な小容量発電装置と、前記交流母線に接続されて前記ガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給する電動式の燃料ガス圧縮機と、
前記交流母線と前記商用電力系統、前記ガスタービン発電装置および前記小容量発電装置との接続状態と、前記ガスタービン発電装置、前記小容量発電装置および前記燃料ガス圧縮機の運転状態とを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記商用電力系統の停電時に、前記小容量発電装置と前記交流母線とを接続して、前記小容量発電装置から前記交流母線を介して少なくとも前記燃料ガス圧縮機に電力を供給し、当該燃料ガス圧縮機を作動させて前記ガスタービン発電装置に前記圧縮燃料ガスを供給して前記ガスタービン発電装置を起動する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、商用電力系統と接続された交流母線に、電力供給なしに起動可能な小容量発電装置が設けられ、制御装置が、商用電力系統の停電時に、小容量発電装置と交流母線とを接続して、小容量発電装置から交流母線を介して少なくとも燃料ガス圧縮機に電力を供給するので、商用電力系統からの電力の供給が受けられない停電時においても、小容量発電装置を起動して、この小容量発電装置により発電された電力を、同じく交流母線に接続された電動式の燃料ガス圧縮機に供給することができる。従って、停電時においても迅速に燃料ガス圧縮機を作動させてガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給してガスタービン発電装置を起動することができる。また、単一の小容量発電装置を交流母線に接続して設けるだけで、当該小容量発電装置の容量が許容する構成を採用しておくと、交流母線に接続された燃料ガス圧縮機と負荷設備との両方に電力を供給することができるので、システムを低コストかつコンパクトに構成することができる。
【0014】
本発明に係るガスタービン発電システムの更なる特徴構成は、
前記小容量発電装置は前記ガスタービン発電装置よりも小さい発電容量とされ、
前記制御装置は、前記ガスタービン発電装置の起動後に、前記小容量発電装置が接続された前記交流母線に前記ガスタービン発電装置を同期投入して、前記小容量発電装置を前記交流母線から切断し、前記ガスタービン発電装置から前記負荷設備および前記燃料ガス圧縮機に電力を供給する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、制御装置は、ガスタービン発電装置を小容量発電装置が接続された前記交流母線に同期投入するので、ガスタービン発電装置によって発電された電力を少なくとも燃料ガス圧縮機に供給することができる。また、制御装置は小容量発電装置を交流母線から切断するので、ガスタービン発電装置と小容量発電装置との同期ずれによってガスタービン発電システムの状態が不安定な状態となることを防止することができるとともに、交流母線に接続されている発電装置を、ガスタービン発電装置よりも小さい発電容量とされる小容量発電装置から発電容量の大きいガスタービン発電装置に変更して、少なくとも燃料ガス圧縮機により多くの電力を供給することができる。
【0016】
本発明に係るガスタービン発電システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記商用電力系統の停電回復時に、前記ガスタービン発電装置が接続された前記交流母線の電圧位相を前記商用電力系統の電圧位相に同期させた状態で、前記交流母線と前記商用電力系統とを接続し、前記小容量発電装置を前記商用電力系統と接続された前記交流母線に同期投入する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、制御装置は、商用電力系統の停電回復時に、ガスタービン発電装置が接続された交流母線の電圧位相を商用電力系統の電圧位相に同期させた状態で、交流母線と商用電力系統とを接続するので、ガスタービン発電装置を停止することなく負荷設備への電力供給を維持したまま、容易にガスタービン発電装置が接続されている交流母線を商用電力系統と接続することができる。これにより、ガスタービン発電装置に加えて商用電力系統からも負荷設備および燃料ガス圧縮機に電力を供給することが可能となる。また、制御装置は、小容量発電装置を商用電力系統と接続された交流母線に同期投入するので、ガスタービン発電装置および商用電力系統から供給される電力に加えて、小容量発電装置によって発電される電力も負荷設備および燃料ガス圧縮機に供給することができる。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係るガスタービン発電システムの運転方法は、
商用電力系統と接続される交流母線と、
前記交流母線に断続可能に接続されたガスタービン発電装置と、前記交流母線に接続された負荷設備とを備えたガスタービン発電システムの運転方法であって、
前記交流母線に断続可能に接続されて前記商用電力系統からの電力供給なしに起動可能な小容量発電装置と、前記交流母線に接続されて前記ガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給する電動式の燃料ガス圧縮機とを備え、
前記商用電力系統の停電時に前記ガスタービン発電装置を起動するにあたり、前記交流母線から前記商用電力系統と前記ガスタービン発電装置とを切断する交流母線切断工程と、前記小容量発電装置を起動する小容量発電装置起動工程と、前記小容量発電装置を前記交流母線に接続して電力を少なくとも前記燃料ガス圧縮機に供給する小容量発電装置接続工程と、前記燃料ガス圧縮機を作動させて前記ガスタービン発電装置に前記圧縮燃料ガスを供給する圧縮ガス供給工程と、供給された前記圧縮燃料ガスによって前記ガスタービン発電装置を起動するガスタービン発電装置起動工程とを備えた点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、上述の本発明に係るガスタービン発電システムと同様に、停電時においても、交流母線に接続される小容量発電装置を起動して、その発電電力を同じく交流母線に接続された燃料ガス圧縮機および負荷設備に供給することができる。従って、停電時においても迅速に少なくとも燃料ガス圧縮機を作動させてガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給してガスタービン発電装置を起動することができる。
【0020】
本発明に係るガスタービン発電システムの運転方法の更なる特徴構成は、
前記ガスタービン発電装置起動工程の後に、前記小容量発電装置が接続された前記交流母線に前記ガスタービン発電装置を同期投入するガスタービン発電装置同期投入工程と、前記小容量発電装置を前記交流母線から切断する小容量発電装置切断工程とを備え、前記ガスタービン発電装置から前記負荷設備および前記燃料ガス圧縮機に電力を供給する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、上述の本発明に係るガスタービン発電システムと同様に、ガスタービン発電装置と小容量発電装置との同期ずれによってガスタービン発電システムの状態が不安定な状態となることを防止することができるとともに、交流母線に接続されている発電装置を小容量発電装置から発電容量の大きいガスタービン発電装置に変更して、少なくとも燃料ガス圧縮機により多くの電力を供給することができる。
【0022】
本発明に係るガスタービン発電システムの運転方法の更なる特徴構成は、
前記商用電力系統の停電回復時に、前記ガスタービン発電装置が接続された前記交流母線の電圧位相を前記商用電力系統に電圧位相に同期させた状態として、前記商用電力系統と前記交流母線とを接続する系統接続工程と、前記小容量発電装置を前記商用電力系統と接続されている前記交流母線に同期投入する小容量発電装置同期投入工程とを備え、
前記商用電力系統、前記ガスタービン発電装置および前記小容量発電装置から前記負荷設備および前記燃料ガス圧縮機に電力を供給する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、上述の本発明に係るガスタービン発電システムと同様に、ガスタービン発電装置を停止することなく負荷設備への電力供給を維持したまま、容易にガスタービン発電装置が接続されている交流母線を商用電力系統と接続することができ、ガスタービン発電装置に加えて商用電力系統からも負荷設備および燃料ガス圧縮機に電力を供給することができる。そして、小容量発電装置をさらに同期投入することで、ガスタービン発電装置、商用電力系統および小容量発電装置から負荷設備および燃料ガス圧縮機に電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ガスタービン発電システムの構成図である。
【図2】ガスタービン発電装置の構成図(a)とガスエンジン発電装置の構成図(b)である。
【図3】ガスタービン発電装置の起動時の状態を示す図である。
【図4】ガスタービン発電装置を交流母線に接続した状態を示す図である。
【図5】交流母線を商用電力系統に接続した状態を示す図である。
【図6】従来のガスタービン発電システムの構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るガスタービン発電システムの実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン発電システム1の概略図である。
図1に示すように、ガスタービン発電システム1は、商用電力系統2と遮断器9により接続される交流母線3と、交流母線3に遮断器10により断続可能に接続された発電容量が大容量のガスタービン発電装置4と、交流母線3に接続された負荷設備5と、交流母線3に遮断器11により断続可能に接続されて商用電力系統2からの電力供給なしに起動可能なガスエンジン発電装置6(小容量発電装置に相当)と、交流母線3に接続されてガスタービン発電装置4に圧縮燃料ガスCFを供給する電動式の燃料ガス圧縮機7が設けられている。
この燃料ガス圧縮機7には、燃料ガス供給源12から燃料ガスFが供給されるように構成されて、燃料ガス圧縮機7によって圧縮された圧縮燃料ガスCFが、圧縮燃料ガス供給路13を介してガスタービン発電装置4に供給されるように構成されている。
【0026】
また、交流母線3と商用電力系統2、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6(小容量発電装置の一例)との接続状態を制御する制御装置8が設けられている。具体的には図1に示すように、交流母線3と商用電力系統2とは遮断器9によって断続自在に構成され、交流母線3とガスタービン発電装置4とは遮断器10によって断続自在に構成され、交流母線3とガスエンジン発電装置6とは遮断器11によって断続自在に構成されている。これらの遮断器9、10、11は、閉状態としたときには電気的に接続された状態となり、開状態としたときには電気的に切断された状態となるものであり、制御装置8によって開閉状態が制御されている。さらに、制御装置8は、ガスタービン発電装置4、ガスエンジン発電装置6および燃料ガス圧縮機7の運転状態についても制御するように構成されている。
この例では、交流母線3と負荷設備5(重要負荷設備:定常的な電力供給が望まれる負荷)とが常時接続されている例を示しており、ガスエンジン発電装置6で、負荷設備5(重要負荷設備)と燃料ガス圧縮機7に必要とされる電力を賄えるものとして、以下説明する。
同図には図示していないが、負荷設備(一般負荷設備:一時的に電力供給が断たれても問題のない負荷)は、前記遮断器9と商用電力系統2との間に接続されている。
【0027】
そして、この制御装置8は、図示しないバッテリーに接続されているので、停電時においても動作することができる。従って、制御装置8は、商用電力系統2の停電時に、ガスエンジン発電装置6を起動して、ガスエンジン発電装置6と交流母線3とを遮断器11を閉状態として接続して、ガスエンジン発電装置6から交流母線3を介して負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に電力を供給できるように構成されている。これにより、負荷設備5を作動させることができるとともに、燃料ガス圧縮機7を作動させてガスタービン発電装置4に圧縮燃料ガスCFを供給してガスタービン発電装置4を起動するように構成されている。
【0028】
以下に図2(a)に基づいてガスタービン発電装置4について説明する。
ガスタービン発電装置4は、空気を圧縮する空気圧縮機4aと、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる燃焼器4bと、燃焼器4bにおいて発生した燃焼ガスを受けて高速で回転する複数の回転翼を有するタービン4cと、タービン4cの回転により発電を行うガスタービン発電機4dとで構成されて、このタービン4c、空気圧縮機4a、及びガスタービン発電機4dは、回転軸4eを介して同軸上に配置されており、回転軸4eは、図示しない軸受により回転自在に支持されている。これにより、タービン4c、空気圧縮機4a、及びガスタービン発電機4dは一体に回転するようになっている。
このように、ガスタービン発電装置4が構成され、空気圧縮機4aから吐出された圧縮空気が燃焼器4bに導入され、ここで燃料ガス圧縮機7から供給される圧縮燃料ガスCFと混合される。この混合気が燃焼器4bの内部で燃焼することで高温・高圧の燃焼ガスが発生する。そして、燃焼器4bにおける燃焼により発生した燃焼ガスを受けてタービン4cが高速で回転し、タービン4cと回転軸4eによって連結されたガスタービン発電機4d及び空気圧縮機4aが高速で回転駆動され、ガスタービン発電機4dにて交流電力が生成されるとともに、空気圧縮機4aから圧縮空気は燃焼器4bに向けて吐出される。なお、燃料ガスFとしては、都市ガスや天然ガスなどが用いられる。
【0029】
そして、ガスタービン発電機4dはタービン4cと回転軸4eによって結合されて駆動されると共に、励磁装置4fが設けられた構造とされ、この励磁装置4fにより界磁電流を制御可能に構成された同期発電機であり、これによって発電される電力は遮断器10を介して交流母線3に供給されるように構成されている。
【0030】
また、図2(b)に基づいてガスエンジン発電装置6について説明する。
ガスエンジン発電装置6は、ガスエンジン6aとそのガスエンジン6aの出力軸に接続されたガスエンジン発電機6b(小容量発電機に相当)から構成されている。そして、ガスエンジン発電機6bは、励磁装置6cにより界磁電流を供給されるように構成された同期発電機であり、ガスエンジン発電機6bで発電される電力は遮断器11を介して交流母線3に供給されるように構成されている。また、ガスエンジン6aの始動はバッテリー6dから電力が供給されることにより行なわれるので、ガスエンジン発電装置6は商用電力系統2またはその他の外部電源からの電力の供給なしに起動させることができる。
【0031】
次に、図1にもどって、制御装置8について説明する。
遮断器10のガスタービン発電装置4側の端部には、ガスタービン発電機4dで発電される電力を計測する電力計測器(図示せず)が設置され、一方、遮断器10の交流母線3側の端部には、交流母線3に供給されている電力を計測する電力計測器(図示せず)が設置されている。また、これら遮断器10のそれぞれの端部に設けられた電力計測器の計測結果は、制御装置8に入力され、制御装置8は、その入力された計測結果から、遮断器10のそれぞれの端部における電力の電圧、更にはその周波数及び位相を検出することができるように構成されている。
また、同様に遮断器9、11の両端部にも、それぞれの端部の電力の電圧、更にはその周波数及び位相を検出することができる電力計測器が設けられており、それらの電力計測器の計測結果は、制御装置8に入力されるように構成されている。
【0032】
そして、制御装置8は、遮断器10において、ガスタービン発電装置4側に設けられた電力計測器で計測される発電電力の電圧を交流母線3が有する電力の電圧と略同じものとするように、ガスタービン発電機4dの励磁装置4fに流れる電流を制御する自動電圧調整装置(Automatic voltage regulator、AVR)としての機能を備えている。
また、同様に、制御装置8は、遮断器9において、交流母線3側に設けられた電力計測器で計測される供給電力の電圧を商用電力系統2側が有する電力の電圧と略同じものとなるように、ガスタービン発電機4dの励磁装置4fに流れる電流を制御する機能、および、遮断器11において、ガスエンジン発電装置6側に設けられた電力計測器で計測される発電電力の電圧を交流母線3側が有する電力の電圧と略同じ電圧値とするように、ガスエンジン発電機6bの励磁装置6cに流れる電流を制御する機能を備えている。
【0033】
さらに、制御装置8は、上述のように遮断器10の両端部の電圧を略同じ電圧値とした状態で、電力計測器によって測定された遮断器10のガスタービン発電装置4側の端部の位相と、交流母線3側の端部の位相とが略一致した時に、遮断器10を閉状態として電気的にガスタービン発電装置4と交流母線3とを接続状態とする同期投入を行う同期投入機能を備えている。
また、同様に、制御装置8は、電力計測器によって測定された遮断器11の両端部の電力の位相が略一致した時に、遮断器11を閉状態としてガスエンジン発電装置6と交流母線3を電気的に接続状態とする同期投入を行う機能、および、電力計測器によって測定された遮断器9の両端部の電力の位相が略一致した時に、遮断器9を閉状態として商用電力系統2と交流母線3を電気的に接続状態とする同期投入を行う機能を備えている。
【0034】
次に、本実施形態における停電が発生したときのガスタービン発電システム1の運転方法について説明する。停電が発生すると、電力負荷や周波数の変動が発生して、ガスタービン発電装置4が停止することがある。また、ガスタービン発電装置4が停止しているときに停電が起こる場合もある。このような場合において、ガスタービン発電装置4を起動して自立運転を開始する方法を以下に示す。
【0035】
まず、図1に示すように、商用電力系統2の停電時にガスタービン発電装置4を起動するにあたり、制御装置8は、遮断器9、遮断器10および遮断器11を開状態として、交流母線3から商用電力系統2、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6とを電気的に切断する(交流母線切断工程)。そして、バッテリー6dから供給される電力によりガスエンジン発電装置6を起動する(ガスエンジン発電装置起動工程)。
次に、図3に示すように、ガスエンジン発電装置6を、遮断器11を閉じて交流母線3に接続して、ガスエンジン発電装置6における発電電力を負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に供給する(ガスエンジン発電装置接続工程)。そして、燃料ガス圧縮機7を作動させてガスタービン発電装置4に圧縮燃料ガスCFを供給して(圧縮ガス供給工程)、その供給された圧縮燃料ガスCFによってガスタービン発電装置4を起動する(ガスタービン発電装置起動工程)。これにより、商用電力系統2の停電時において負荷設備5を作動させるとともに、ガスタービン発電システム1を起動することができる。
【0036】
上記ガスエンジン発電装置接続工程では、ガスエンジン発電装置6から出力される電力の電圧が確立された後、負荷設備5および燃料ガス圧縮機7を電気的に接続する。この状態では、交流母線3は商用電力系統2から切断されており、ガスエンジン発電装置6による発電電力が負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に供給される。ここで、ガスエンジン発電装置6の発電電力を負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に供給するにあたり、制御装置8はガスエンジン発電装置6を電圧制御方式による制御を行なっている。電圧制御方式とは、予め設定された電圧および周波数を維持するように制御しつつ、負荷設備5および燃料ガス圧縮機7の容量によって決定される電流をガスエンジン発電装置6から出力する制御方式である。
【0037】
さらに、図4に示すように、制御装置8は、ガスタービン発電装置起動工程の後に、ガスエンジン発電装置6が接続された交流母線3にガスタービン発電装置4を同期投入して(ガスタービン発電装置同期投入工程)、その後に、ガスエンジン発電装置6を交流母線3から切断する(ガスエンジン発電装置切断工程)。これにより、ガスタービン発電装置4から負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に電力が供給される。
【0038】
ここで、ガスエンジン発電装置6が接続された交流母線3にガスタービン発電装置4が同期投入されると(ガスタービン発電装置同期投入工程)、交流母線3においてガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6によって電力が供給される並行運転の状態となる。この並行運転の状態において、両発電装置4、6の周波数が異なるときは,発電装置4、6間に同期化力が働き、位相を一致させようとするが、回転軸を含む回転部の慣性の大きさによっては同期化力が周期的に変動して電力の動揺を繰り返す乱調が発生する。そして、この動揺が著しくなると同期はずれを生じて,両発電装置4、6が互いに正常に運転できなくなる。
【0039】
そこで、本実施形態においては、ガスタービン発電装置4よりも小さい発電容量とされるガスエンジン発電装置6を交流母線3から切断する(ガスエンジン発電装置切断工程)ことで、発電容量の大きいガスタービン発電装置4の発電状態を維持して十分な電力を負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に供給するとともに、乱調や同期はずれを予防して安定した発電状態を維持することができる。これによって、ガスタービン発電装置4が商用電力系統2と切断された状態で運転される自立運転状態となる。
【0040】
次に、ガスタービン発電装置4が自立運転状態とされる時に商用電力系統2の停電が回復したときのガスタービン発電システム1の動作について図5に基づいて説明する。
【0041】
制御装置8は、商用電力系統2の停電回復時に、ガスタービン発電装置4が接続された交流母線3の電圧位相を商用電力系統2の電圧位相に同期させた状態として、商用電力系統2と交流母線3とを接続し(系統接続工程)、その後に、ガスエンジン発電装置6(小容量発電装置)を商用電力系統2と接続されている交流母線3に同期投入する(小容量発電装置同期投入工程)。これにより、商用電力系統2、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6から負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に電力を供給することができる。
【0042】
上記系統接続工程においては、ガスタービン発電装置4が接続された交流母線3の電圧位相を制御装置8によって励磁装置4fに供給する電流の制御を行なって商用電力系統2の電圧位相に同期させた状態として、商用電力系統2と交流母線3とを遮断器10を閉状態として接続する。
このように、商用電力系統2と交流母線3とが接続されると、ガスタービン発電装置4の発電電力の周波数及び電圧は、巨大容量の商用電力系統2の供給電力の周波数及び電圧で決定されるので、制御装置8による励磁装置4fに供給する電流の制御は、同期発電機であるガスタービン発電機4dの無効電力および有効電力の制御に切り替えられる。これにより、出力電力の電圧、周波数、および位相を、商用電力系統2から供給される電力の電圧、周波数、および位相にそれぞれ同期させつつ、設定された出力電力を維持するように電流値が制御される。
【0043】
さらに、上記小容量発電装置同期投入工程において、ガスエンジン発電装置6の電圧位相を制御装置8によって励磁装置6cに供給する電流の制御を行なって商用電力系統2が接続されている交流母線3の電圧位相に同期させた状態として、ガスエンジン発電装置6と交流母線3とを遮断器11を閉状態として接続される。接続後は、ガスエンジン発電装置6は、上述のガスタービン発電機4dと同様に、無効電力および有効電力の制御に切り替えられる。これにより、商用電力系統2、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6から負荷設備5および燃料ガス圧縮機7に電力を供給することができる。
【0044】
また、商用電力系統2、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6が接続された状態では、商用電力系統2から電力が燃料ガス圧縮機7および負荷設備5に供給されると同時に、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6からも燃料ガス圧縮機7および負荷設備5に電力が供給される。このような場合、制御装置8は、ガスタービン発電装置4およびガスエンジン発電装置6からの発電電力は、商用電力系統2に逆流しないように制御する必要がある。したがって、制御装置8は、商用電力系統2からの受電量に応じて決定された出力電力設定値を維持するように出力電力の電流値を制御する。
【0045】
このように、本ガスタービン発電システム1においては、商用電力系統2の停電時において、ガスエンジン発電装置6を起動させて燃料ガス圧縮機7および負荷設備5に迅速に電力を供給することができ、さらに、ガスタービン発電装置4を起動させることで十分な電力を燃料ガス圧縮機7および負荷設備5に供給することができる。また、停電が回復したときにおいても、燃料ガス圧縮機7および負荷設備5への電力供給を維持したまま商用電力系統2と交流母線3を接続して燃料ガス圧縮機7および負荷設備5に商用電力系統2から電力が供給される停電前の状態に容易に復帰することができる。
【0046】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、小容量発電装置であるガスエンジン発電装置6が、重要負荷である負荷設備5と燃料ガス圧縮機37との両方を働かせるのに、十分な容量を有する場合に関して説明した。しかしながら、本願の目的は、ガスタービン発電設備4を起動するのに必要となる燃料ガス圧縮機7が運転できれば良いため、例えば、重要負荷に関してもその運転に優先順位を設けておき、或は、停止時間に余裕を持たせておき、ガスエンジン発電装置6から交流母線3を介して、燃料ガス圧縮機7に電力の供給が行える構成となっていれば良い。
一方、ガスエンジン発電装置6の起動時には、起動時にかかる負荷でできるだけ低下させる意味から、負荷設備5(重要負荷の一部又は全部)および燃料ガス圧縮機7を交流母線3から電気的に切り離した状態としておくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明したように、低コストかつコンパクトなシステム構成とされて、停電時に迅速に負荷設備に電力を供給することができるガスタービン発電システム及びその運転方法を提供することができた。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスタービン発電システム
2 商用電力系統
3 交流母線
4 ガスタービン発電装置
5 負荷設備
6 小容量発電装置
7 燃料ガス圧縮機
8 制御装置
CF 圧縮燃料ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統と接続される交流母線と、
前記交流母線に断続可能に接続されたガスタービン発電装置と、前記交流母線に接続された負荷設備とを備えたガスタービン発電システムであって、
前記交流母線に断続可能に接続されて前記商用電力系統からの電力供給なしに起動可能な小容量発電装置と、前記交流母線に接続されて前記ガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給する電動式の燃料ガス圧縮機と、
前記交流母線と前記商用電力系統、前記ガスタービン発電装置および前記小容量発電装置との接続状態と、前記ガスタービン発電装置、前記小容量発電装置および前記燃料ガス圧縮機の運転状態とを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記商用電力系統の停電時に、前記小容量発電装置と前記交流母線とを接続して、前記小容量発電装置から前記交流母線を介して少なくとも前記燃料ガス圧縮機に電力を供給し、当該燃料ガス圧縮機を作動させて前記ガスタービン発電装置に前記圧縮燃料ガスを供給して前記ガスタービン発電装置を起動するガスタービン発電システム。
【請求項2】
前記小容量発電装置は前記ガスタービン発電装置よりも小さい発電容量とされ、
前記制御装置は、前記ガスタービン発電装置の起動後に、前記小容量発電装置が接続された前記交流母線に前記ガスタービン発電装置を同期投入して、前記小容量発電装置を前記交流母線から切断し、前記ガスタービン発電装置から前記負荷設備および前記燃料ガス圧縮機に電力を供給する請求項1記載のガスタービン発電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記商用電力系統の停電回復時に、前記ガスタービン発電装置が接続された前記交流母線の電圧位相を前記商用電力系統の電圧位相に同期させた状態で、前記交流母線と前記商用電力系統とを接続し、前記小容量発電装置を前記商用電力系統と接続された前記交流母線に同期投入する請求項2に記載のガスタービン発電システム。
【請求項4】
商用電力系統と接続される交流母線と、
前記交流母線に断続可能に接続されたガスタービン発電装置と、前記交流母線に接続された負荷設備とを備えたガスタービン発電システムの運転方法であって、
前記交流母線に断続可能に接続されて前記商用電力系統からの電力供給なしに起動可能な小容量発電装置と、前記交流母線に接続されて前記ガスタービン発電装置に圧縮燃料ガスを供給する電動式の燃料ガス圧縮機とを備え、
前記商用電力系統の停電時に前記ガスタービン発電装置を起動するにあたり、前記交流母線から前記商用電力系統と前記ガスタービン発電装置とを切断する交流母線切断工程と、前記小容量発電装置を起動する小容量発電装置起動工程と、前記小容量発電装置を前記交流母線に接続して電力を少なくとも前記燃料ガス圧縮機に供給する小容量発電装置接続工程と、前記燃料ガス圧縮機を作動させて前記ガスタービン発電装置に前記圧縮燃料ガスを供給する圧縮ガス供給工程と、供給された前記圧縮燃料ガスによって前記ガスタービン発電装置を起動するガスタービン発電装置起動工程とを備えたガスタービン発電システムの運転方法。
【請求項5】
前記ガスタービン発電装置起動工程の後に、前記小容量発電装置が接続された前記交流母線に前記ガスタービン発電装置を同期投入するガスタービン発電装置同期投入工程と、前記小容量発電装置を前記交流母線から切断する小容量発電装置切断工程とを備え、前記ガスタービン発電装置から前記負荷設備および前記燃料ガス圧縮機に電力を供給する請求項4に記載のガスタービン発電システムの運転方法。
【請求項6】
前記商用電力系統の停電回復時に、前記ガスタービン発電装置が接続された前記交流母線の電圧位相を前記商用電力系統に電圧位相に同期させた状態として、前記商用電力系統と前記交流母線とを接続する系統接続工程と、前記小容量発電装置を前記商用電力系統と接続されている前記交流母線に同期投入する小容量発電装置同期投入工程とを備え、
前記商用電力系統、前記ガスタービン発電装置および前記小容量発電装置から前記負荷設備および前記燃料ガス圧縮機に電力を供給する請求項5に記載のガスタービン発電システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108410(P2013−108410A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253155(P2011−253155)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】