アクチュエータの製造方法及びアクチュエータ
【課題】可動部上にミラー等の反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造する。
【解決手段】
反射膜(170)が形成される可動部(120)と、可動部を取り囲む支持部(110)と、可動部が揺動可能なように可動部と支持部とを接続するトーションバー(130)とを備えるアクチュエータの製造方法は、基板(201)上に可動部、支持部及びトーションバーを形成する第1工程(S106)と、可動部上に、反射膜を形成する第2工程(S105)と、可動部のうち反射膜が形成される側に、(i)反射膜の表面から突き出る高さを有し且つ(ii)他の構造物が反射膜に接触することを抑制する突起部(180)を形成する第3工程(S103)とを備える。
【解決手段】
反射膜(170)が形成される可動部(120)と、可動部を取り囲む支持部(110)と、可動部が揺動可能なように可動部と支持部とを接続するトーションバー(130)とを備えるアクチュエータの製造方法は、基板(201)上に可動部、支持部及びトーションバーを形成する第1工程(S106)と、可動部上に、反射膜を形成する第2工程(S105)と、可動部のうち反射膜が形成される側に、(i)反射膜の表面から突き出る高さを有し且つ(ii)他の構造物が反射膜に接触することを抑制する突起部(180)を形成する第3工程(S103)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばミラー等が設けられた可動部を駆動するMEMSスキャナ等のアクチュエータ及び当該アクチュエータの製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディスプレイ、プリンティング装置、精密測定、精密加工、情報記録再生などの多様な技術分野において、半導体プロセス技術によって製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスについての研究が活発に進められている。このようなMEMSデバイスとして、レーザ光のスキャニングに用いられるMEMSスキャナが知られている。このようなMEMSスキャナは、可動板と、可動板を取り囲む枠状の支持枠と、可動板を支持枠に対して揺動可能に軸支するトーションバーとを備えている。
【0003】
ここで、一般的なMEMSスキャナでは、可動板の表面の中央にはミラーが形成され、当該ミラーの周囲に駆動用コイルが形成される。そして、駆動用コイルに対して静磁界を発生させるための1対の永久磁石が、支持枠に配置される。このように構成されたMEMSスキャナによれば、駆動用コイルに対して制御電流が供給されることで、駆動用コイルに電磁駆動力(ローレンツ力)が発生する。従って、駆動用コイルが形成されている可動板が遥動される。
【0004】
このようなMEMSスキャナを開示する先行技術として、特許文献1が一例としてあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−133145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなMEMSスキャナを製造する過程において、可動板の表面に形成されるミラーが、製造装置のステージ(或いは、治具等のその他の構造物)に接触してしまうおそれがある。特に、一部の製造工程では、製造途中のMEMSスキャナの冷却等のために積極的にミラー(或いは、ミラーを形成した可動板)を製造装置のステージ等に接触させることがある。この場合、ミラーと製造装置のステージとの接触に起因して、ミラーに傷やへこみが生じてしまうこともある。そうすると、ミラーの本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が損なわれてしまいかねないという技術的な問題点が生じ得る。
【0007】
尚、上述した技術的な問題点は、回転するように可動板(或いは、任意の可動部)を遥動させるMEMSスキャナのみならず、任意の態様で可動板(或いは、任意の可動部)を遥動させるMSMSアクチュエータに対しても同様に生じ得る。
【0008】
本発明は、例えば前述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば可動部上にミラー等の反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することが可能なアクチュエータの製造方法及びアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アクチュエータの製造方法は、上記課題を解決するために、(i)反射膜が形成される可動部と、(ii)当該可動部を取り囲む支持部と、(iii)前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備えるアクチュエータの製造方法であって、基板上に、前記可動部、前記支持部及び前記トーションバーを形成する第1工程と、前記可動部上に、前記反射膜を形成する第2工程と、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が他の構造物に対向している場合であっても、前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を形成する第3工程とを備える。
【0010】
アクチュエータは、上記課題を解決するために、反射膜が形成される可動部と、当該可動部を取り囲む支持部と、前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備え、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)対向する他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を備える。
【0011】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例のアクチュエータの構成の一例を示す平面図である。
【図2】突起部及び反射ミラーの詳細な構成を示す断面図である。
【図3】突起部の作用という側面から突起部を説明するための断面図である。
【図4】突起部によって反射ミラー上に形成される影の割合という側面から突起部を説明するための平面図及び断面図である。
【図5】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図7】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図8】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図9】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図10】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図11】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図12】突起部によって反射ミラーと他の構造物との接触が抑制される状態を示す断面図である。
【図13】第2実施例のアクチュエータの構成の一例を示す平面図である。
【図14】突起部の高さや2つの突起部の間の距離という観点から定められる条件を説明するためのアクチュエータの一部の断面図である。
【図15】3つ以上の突起部を形成する場合の条件を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、アクチュエータの製造方法及びアクチュエータの実施形態について順に説明する。
【0014】
(アクチュエータの製造方法の実施形態)
本実施形態のアクチュエータの製造方法は、(i)反射膜が形成される可動部と、(ii)当該可動部を取り囲む支持部と、(iii)前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備えるアクチュエータの製造方法であって、基板上に、前記可動部、前記支持部及び前記トーションバーを形成する第1工程と、前記可動部上に、前記反射膜を形成する第2工程と、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が他の構造物に対向している場合であっても、前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を形成する第3工程とを備える。
【0015】
本実施形態のアクチュエータの製造方法によれば、可動部と支持部とトーションバーとを備えるアクチュエータが製造される。このようなアクチュエータによれば、トーションバーによって懸架された可動部が遥動する。可動部は、例えば、トーションバーが伸長する方向を中心軸として回転するように遥動してもよいし、或いは、トーションバーが伸長する方向に沿って又はトーションバーが伸長する方向と交わる方向に沿って移動するように遥動してもよい。
【0016】
このとき、トーションバーは、可動部と支持部とを直接的に接続していてもよい。或いは、トーションバーは、可動部と支持部とを間接的に(言い換えれば、間に任意の部材を介在させた上で)接続してもよい。
【0017】
このようなアクチュエータを製造するために、本実施形態のアクチュエータの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを備えている。
【0018】
第1工程では、基板上に、可動部、支持部及びトーションバーが形成される。後に図面を用いて詳細に説明するが、第1工程では、例えば、半導体製造プロセス等を用いて基板の一部が取り除かれることで、可動部、支持部及びトーションバーが形成されてもよい。或いは、第1工程では、その他の製造プロセスを用いて、可動部、支持部及びトーションバーが形成されてもよい。
【0019】
第2工程では、可動部上に反射膜が形成される。例えば、可動部が板状の部材である場合には、可動部の相対向する2つの表面のうちの一方の表面に反射膜が形成される。この反射膜は、主として反射膜に照射される光を反射する。その結果、可動部の遥動に合わせて反射膜から光が反射されることで、光のスキャニングが行われる。尚、反射膜としては、典型的には、例えばアルミニウム等の金属膜が用いられるが、光を反射する任意の部材が用いられてもよい。
【0020】
尚、第1工程が先に行われた後に第2工程が行われてもよいし、第2工程が先に行われた後に第1工程が行われてもよい。第2工程が先に行われる場合には、反射膜は、後の第1工程において可動部が形成されることが予定されている基板上の所定の領域に形成される。
【0021】
第3工程では、可動部に突起部が形成される。このとき、突起部は、可動部のうち反射膜が形成される側(例えば、可動部の相対向する2つの表面のうち反射膜が形成される側の表面)に形成される。このとき、突起部は、可動部のうち反射膜が形成されている箇所(例えば、可動部の表面のうち反射膜が形成されている領域)に形成されてもよいし、可動部のうち反射膜が形成されてない箇所(例えば、可動部の表面のうち反射膜が形成されていない領域)に形成されてもよい。
【0022】
尚、第3工程は、第1工程及び第2工程の双方が先に行われた後に行われてもよい。或いは、第3工程は、第1工程及び第2工程のいずれか一方が行われた後であって且つ第1工程及び第2工程のいずれか他方が行われる前に行われてもよい。或いは、第3工程は、第1工程及び第2工程の双方が行われる前に行われてもよい。第1工程よりも先に第3工程が先に行われる場合には、突起部は、後の第1工程において可動部が形成されることが予定されている基板上の所定の領域に形成される。同様に、第2工程よりも先に第3工程が先に行われる場合には、突起部は、可動部(或いは、可動部が形成されることが予定されている基板上の所定の領域)のうち後の第2工程において反射膜が形成されることが予定されている側に形成される。
【0023】
突起部は、反射膜の表面から突き出る高さを有している。従って、可動部の厚み方向(或いは、反射膜の厚み方向)に沿った高さに着目すれば、突起部の高さは、反射膜の高さ(言い換えれば、反射膜の厚み)よりも高くなる。更に、突起部は、基板(特に、基板のうち反射膜が形成される側の表面)が他の構造物に対向している状況において、当該他の構造物に接触することで反射膜が他の構造物に接触することを抑制する。言い換えれば、突起部は、基板が他の構造物に対向している状況において基板と他の構造物とが接触する状況に置かれた場合であっても、当該他の構造物に接触することで反射膜が他の構造物に接触することを抑制する。例えば、突起部は、基板が他の構造物に対向している状況において、反射膜が他の構造物に接触するよりも先に他の構造物に接触することで、反射膜が他の構造物に接触することを抑制する。つまり、突起部が形成されることで、基板が他の構造物に対向している状況において、他の構造物が反射膜に接触することを好適に抑制する(或いは、防止する)ことができる。尚、突起部は、他の構造物に常に接触している必要はなく、少なくとも反射膜が他の構造物に接触することを抑制する場合に他の構造物に接触していれば足りる。また、他の構造物としては、例えば、アクチュエータを製造するための製造装置の各種部材(例えば、ステージ等)が一例となる。もちろん、基板に対向し得る任意の部材ないしは物体を他の構造物として取り扱ってもよいことは言うまでもない。
【0024】
尚、突起部は、突起部が形成されていない場合と比較して、他の構造物が反射膜に接触することを少しでも積極的に抑制する(言い換えれば、防止する)ことができる部材であればよい。つまり、突起部が形成されていない場合に他の構造物が反射膜に接触する程度(例えば、接触面積の大きさや、接触の衝撃の大きさや、接触の回数等)と比較して、突起部が形成されている場合に他の構造物が反射膜に接触する程度が少しでも積極的に抑制されれば(つまり、緩和されれば)足りる。但し、突起部が形成されていることで、他の構造物が反射膜に殆ど又は全く接触しなくなることが好ましい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータの製造方法によれば、可動部、支持部及びトーションバー並びに反射膜が形成される過程において、可動部上に突起部が形成される。従って、仮にアクチュエータを製造する過程において、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することが好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜と他の構造物との接触に起因して、反射膜に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができる。その結果、反射膜の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。つまり、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0026】
更に、突起部が形成されているアクチュエータであれば、製造完了後も、他の構造物が反射膜に接触することが好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、突起部が形成されているアクチュエータであれば、製造完了後も、反射膜に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができ、その結果、反射膜の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。但し、他の構造物が反射膜に接触する状況は、アクチュエータを製造している過程で多く発生する。一方で、突起部は、製造完了後のアクチュエータの本来の主たる機能には大きく寄与することはない。従って、突起部は、アクチュエータの製造完了と共に取り払われてもよい。
【0027】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部は、前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物の表面に対して傾いた状態で対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなる程度の高さを有する。
【0028】
この態様によれば、このような高さ(つまり、反射膜の表面を基準とする、反射膜の表面から突き出た高さ)を有する突起部により、基板が他の構造物に対向している(特に、基板の表面と他の構造物の表面とが非平行な状態で対向している)状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することが好適に抑制される。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0029】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記突起部を複数形成する。
【0030】
この態様によれば、複数の突起部により、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0031】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記複数の突起部の少なくとも一つは、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記複数の突起部の少なくとも一つが前記他の構造物の表面に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなる程度の高さを有するように構成してもよい。
【0032】
このように構成すれば、このような高さを有する突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0033】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記反射膜の表面の曲率半径がrであり、前記突起部の高さがhであり、且つ前記複数の突起部のうちのいずれか2つの突起部の間の間隔が2×Lであるとすると、前記第3工程は、数式1が示す条件を満たすように前記複数の突起部を形成するように構成してもよい。
【0034】
【数1】
【0035】
このように構成すれば、このような高さを有する突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0036】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の高さは、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の表面粗さよりも大きい。
【0037】
この態様によれば、突起部として作用することが困難な又は不可能な可動部ないしは反射膜の表面の粗さ(つまり、表面の極微細な凹凸)ではなく、いわば反射膜と他の構造物との接触を積極的に抑制するための意図的な突起部が可動部上に形成される。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0038】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の高さは、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下である。
【0039】
この態様によれば、反射膜に照射される光が突起部の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合には反射膜によって有効に反射されなかった光が、反射膜によって有効に反射される。このため、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合と比較して、反射膜に照射される光の利用効率(例えば、反射効率等)を増大させることができる。
【0040】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の前記反射膜の表面に沿った方向の幅は、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下である。
【0041】
この態様によれば、反射膜に照射される光が突起部の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合には反射膜によって有効に反射されなかった光が、反射膜によって有効に反射される。このため、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合と比較して、反射膜に照射される光の利用効率(例えば、反射効率等)を増大させることができる。
【0042】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記第3工程は、前記可動部内で離散的に分布する前記複数の突起部を形成するように構成してもよい。
【0043】
このように構成すれば、このような分布態様で形成される突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0044】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記第3工程は、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなるような配置位置に前記複数の突起部を形成するように構成してもよい。
【0045】
このように構成すれば、このような分布態様で形成される突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0046】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記第3工程は、3つ以上の前記突起部が同一直線上に配置される配置位置に前記3つ以上の突起部を形成する場合には、前記3つ以上の突起部が等間隔に配置されなくなる配置位置に前記3つ以上の突起部を形成するように構成してもよい。
【0047】
このように構成すれば、3つ以上の突起部が同一直線上において等間隔で配置されるように形成されなくなる。このため、突起部が形成されたアクチュエータの製造が完了した後に反射膜に対して光を照射した場合に、3つ以上の突起部での反射に起因した当該光の干渉が生ずることが殆ど又は全くなくなる。つまり、3つ以上の突起部での反射に起因した光の干渉によって、反射膜での光の反射に悪影響を及ぼすことが殆ど又は全くなくなる。従って、照射される光を適切に反射するという反射膜の本来の特性を損なうことなく、突起部を形成することができる。
【0048】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の中心付近又は中央付近に前記突起部を形成する。
【0049】
このように構成すれば、このような分布態様で形成される突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0050】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記反射膜上において光を反射する領域に対する前記反射膜上において前記突起部の影に起因して生ずる前記光を反射しない領域の割合が、所定の割合以下となるように、前記突起部を形成することを特徴とする。
【0051】
この態様によれば、突起部が形成されたアクチュエータの製造が完了した後に反射膜に対して光を照射した場合に、当該突起部によって生ずる影が占める割合を一定の許容範囲に収めることができる。従って、照射される光を反射するという反射膜の本来の特性を損なうことなく、突起部を形成することができる。
【0052】
上述の如く光を反射する領域に対する光を反射しない領域の割合が所定の割合以下となるように突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記所定の割合は1%であるように構成してもよい。
【0053】
このように構成すれば、突起部が形成されたアクチュエータの製造が完了した後に反射膜に対して光を照射した場合に、当該突起部によって生ずる影が占める割合を1%以下に収めることができる。従って、照射される光を反射するという反射膜の本来の特性を損なうことなく、突起部を形成することができる。
【0054】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記突起部の形成と同時に又は並行して、前記アクチュエータの動作に関連する所定の回路を前記基板上に形成する。
【0055】
この態様によれば、所定の回路(例えば、既存の回路)を形成する工程を流用(言い換えれば、共用)して、突起部を形成することができる。従って、突起部を新たに形成することに起因して新たな製造工程を追加しなくともよくなる。つまり、突起部を新たに形成するためだけに用いられる新たな製造工程を追加する場合と比較して、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0056】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の表面の反射率は、前記反射膜の表面の反射率よりも低い。
【0057】
この態様によれば、反射膜と比較して、反射膜に照射された光が突起部によって反射されにくくなる。つまり、突起部が反射膜として用いられにくくなる。このため、反射膜に照射された光が突起部によって意図せぬ方向で反射することで生じ得る不都合の発生を好適に抑制することができる。
【0058】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の光吸収率は、前記反射膜の光吸収率よりも高い。
【0059】
この態様によれば、反射膜と比較して、反射膜に照射された光が突起部によって反射されにくくなる。つまり、突起部が反射膜として用いられにくくなる。このため、反射膜に照射された光が突起部によって意図せぬ方向で反射することで生じ得る不都合の発生を好適に抑制することができる。
【0060】
(アクチュエータの実施形態)
本実施形態のアクチュエータは、反射膜が形成される可動部と、当該可動部を取り囲む支持部と、前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備え、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)対向する他の構造物に前記反射膜が接触する前に前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を備える。
【0061】
本実施形態のアクチュエータによれば、上述した本実施形態のアクチュエータの製造方法が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0062】
尚、上述した本実施形態のアクチュエータの製造方法が採用し得る各種態様(つまり、他の態様)に対応して、本実施形態のアクチュエータもまた各種態様を採用することができる。
【0063】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータの製造方法によれば、可動部、支持部及びトーションバーを形成する第1工程と、反射膜を形成する第2工程と、突起部を形成する第3工程とを備える。本実施形態のアクチュエータによれば、可動部と、支持部と、トーションバーとを備え、可動部上には突起部が形成される。従って、可動部上にミラー等の反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例について図を参照しつつ説明する。
【0066】
(1)第1実施例
はじめに、図1から図12を参照して、第1実施例のアクチュエータ101及び当該アクチュエータ101の製造方法について説明する。
【0067】
(1−1)アクチュエータの構成
はじめに、図1を参照して、第1実施例のアクチュエータ101の構成について説明する。図1は、第1実施例のアクチュエータ101の構成の一例を示す平面図及び断面図である。
【0068】
図1(a)及び図1(b)に示すように、第1実施例のアクチュエータ101は、例えばレーザ光のスキャニングに用いられるプレーナ型電磁駆動アクチュエータ(即ち、MEMSスキャナ)である。アクチュエータ101は、支持部110と、可動部120と、一対のトーションバー130と、駆動コイル140と、電源端子150と、一対の永久磁石160と、反射ミラー170と、突起部180とを備えている。
【0069】
支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130は、例えばシリコン基板等の非磁性基板から一体的に形成されている。即ち、支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130は、例えばシリコン基板等の非磁性基板の一部が除去されることにより間隙が形成されることで形成されている。このときの形成プロセスとして、MEMSプロセスが用いられることが好ましい。尚、シリコン基板に代えて、任意の弾性材料から、支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130が一体的に形成されてもよい。
【0070】
支持部110は、可動部120を取り囲むような枠形状を有しており、可動部120の両側に位置する(言い換えれば、可動部120の両側から当該可動部を挟み込む)一対のトーションバー130によって可動部120と接続されている。但し、支持部110の一部に切り欠きないしは開口部が形成されていてもよい。
【0071】
可動部120は、揺動可能なように一対のトーションバー130によって支持部110に軸支されている。可動部120の表面には、レーザ光を反射する反射ミラー170が形成される。反射ミラー170は、照射される光を反射する板状の又は膜状の部材である。
【0072】
可動部120の表面には、更に、駆動コイル140が形成されている。但し、駆動コイル140は、可動部120の内部に形成されてもよい。駆動コイル140は、例えば、可動部120の表面に形成される反射ミラー170を取り囲むように伸長するコイルである。駆動コイル140は、例えば相対的に導電率の高い材料(例えば、金や銅等)を用いて形成されてもよい。また、駆動コイル140は、めっきプロセスやスパッタリング法等の半導体製造プロセスを用いて形成されてもよい。或いは、駆動コイル140は、支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130を形成するためのシリコン基板に対してインプラント法を用いて埋め込まれてもよい。
【0073】
駆動コイル140には、支持部110上に形成されている電源端子150を介して、電源から制御電流が供給される。制御電流は、可動部120を遥動させるための制御電流であって、典型的には、可動部120が遥動する周波数と同期した周波数の信号成分を含む交流電流である。尚、電源は、アクチュエータ101自身が備えている電源であってもよいし、アクチュエータ101の外部に用意される電源であってもよい。
【0074】
一対のトーションバー130は、可動部120が支持部110に対して揺動可能なように、可動部120と支持部110とを接続する。一対のトーションバー130の弾性によって、可動部120は、一対のトーションバー130が伸長する方向に沿った軸を中心軸(言い換えれば、回転軸)として回転するように遥動する。つまり、可動部120は、図1(a)における左右の方向に沿った軸を中心軸として、当該中心軸の周りで回転するように遥動する。
【0075】
一対の永久磁石160は、支持部110の外部に取り付けられている。一対の永久磁石160は、駆動コイル140に対して所定の静磁界を印加することができるように、その磁極の向きが適切に設定されていることが好ましい。尚、一対の永久磁石160には、静磁界の強度を高めるために、ヨークが付加されていてもよい。
【0076】
このような第1実施例のアクチュエータ101が動作する(具体的には、可動部120が遥動する)場合には、まず、電源から、電源端子150を介して、駆動コイル140に対して制御電流が供給される。一方で、駆動コイル140には、一対の永久磁石160によって静磁界が印加されている。従って、駆動コイル140には、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因した力(つまり、ローレンツ力)が生ずる。その結果、駆動コイル140が形成されている可動部120は、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因したローレンツ力によって遥動する。つまり、可動部120は、図1(a)における左右の方向に沿った軸を中心軸として回転するように遥動する。
【0077】
第1実施例では特に、可動部120上には、突起部180が形成されている。このとき、突起部180は、可動部120の相対向する2つの面(例えば、図1(b)の上側の面及び下側の面)のうち反射ミラー170が形成される側の面上に形成される。更に、図1(a)及び図1(b)では、突起部180が、可動部120上であって且つ反射ミラー170上に形成される例を示している。しかしながら、突起部180は、反射ミラー170が形成されていない可動部120上の領域部分(例えば、図1(a)における反射ミラー170の周辺の領域部分)に形成されていてもよい。
【0078】
突起部180は、当該突起部180の周辺の反射ミラー170の表面(つまり、反射ミラー170の厚み方向に沿って位置する面であって且つ可動部120に面していない側の面)から突き出た形状を有している。つまり、突起部180は、当該突起部180の周辺の反射ミラー170と比較して、反射ミラー170の厚み方向における高さ(具体的には、図1(b)における上下方向の長さであって、反射ミラー170の表面からの高さ)が高くなっている。
【0079】
ここで、図2を参照して、第1実施例における突起部180の高さの定義について説明する。図2は、突起部180及び反射ミラー170の詳細な構成を示す断面図である。
【0080】
図2に示すように、第1実施例では、反射ミラー170は、アルミニウムやその他相対的に反射率が高い金属等を含む金属膜215と、当該金属膜215の表面を保護するための保護膜214とが積層された部材であってもよい。このような構造の反射ミラー170においては、上述した「反射ミラー170の表面」は、保護膜214の表面(つまり、保護膜214の厚み方向(具体的には、図2における上下方向)に沿って位置する面であって且つ金属膜215に面していない側の面)に相当する。尚、反射ミラー170に照射された光は、金属膜215と保護膜214との間の界面で反射する。この意味において、反射ミラー170に照射された光が反射する面を「反射ミラー170のミラー面」と表現するのであれば、「反射ミラー170のミラー面」は、金属膜215と保護膜214との間の界面に相当する。
【0081】
図2に示すように、「突起部180の高さ」とは、突起部180の周囲の反射ミラー170の表面(つまり、保護膜214の表面)からの高さを意味している。尚、参考までに、「突起部180の幅」とは、反射ミラー170の表面に沿った方向(つまり、図2の左右方向であり、可動部120の表面に沿った方向と同義)における長さを意味している。
【0082】
以下、このような突起部180について、図3及び図4を参照しながら更に詳細に説明する。図3は、突起部180の作用という側面から突起部180を説明するための断面図である。図4は、突起部180によって反射ミラー170上に形成される影の割合という側面から突起部180を説明するための平面図及び断面図である。
【0083】
図3(a)に示すように、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止するための部材である。このため、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の高さを有している。より具体的には、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している状況下で、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触するよりも先に他の構造物に接触することで、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の高さを有していることが好ましい。更には、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の幅や形状を有していることが好ましい。
【0084】
このとき、図3(b)に示すように、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、突起部180が他の構造物と接触することによって、反射ミラー170の表面の殆どは他の構造物と接触することはない。言い換えれば、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、突起部180が他の構造物と接触することによって、反射ミラー170のごく一部(例えば、反射ミラー170の外縁の極一部)が他の構造物と接触するに過ぎない。この観点から見れば、突起部180は、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態でアクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の高さを有していることが好ましい。
【0085】
尚、このような突起部180の作用は、反射ミラー170が他の構造物と対向する状況下で発揮される。反射ミラー170が他の構造物と対向する状況は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程で多く生じ得る。従って、後にも詳述するが、このような突起部180の作用は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程でより顕著に表れる。
【0086】
加えて、突起部180の高さは、反射ミラー170の表面の粗さ(具体的には、反射ミラー170の表面の極微細な凹凸であり、Ra、RzないしはRmax(Rzjis)という記号で示される表面粗さ)よりも大きいことが好ましい。というのも、仮に突起部180の高さが反射ミラー170の表面の粗さよりも小さければ、突起部180が上述した作用を実現する主たる要素となることが困難である又は不可能であるからである。従って、突起部180の高さは、上述した作用を実現することができる程度の高さを有しており、その結果、反射ミラー170の表面の粗さよりも大きいことが好ましいと言える。
【0087】
更に、図4(a)及び図4(b)に示すように、反射ミラー170に照射された光の少なくとも一部は、突起部180に影響を受けて反射ミラー170によって反射されなくなり得る。つまり、反射ミラー170上には、照射された光を反射することができる領域部分(つまり、突起部180の影にならない領域部分)と、照射された光を反射することができない領域部分(つまり、突起部180の影になる領域部分)とが存在することになる。第1実施例では、突起部180は、照射された光を反射することができる領域部分に対する照射された光を反射することができない領域部分の割合が所定の割合(例えば、1%)以下になるような高さを有することが好ましい。
【0088】
尚、突起部180は、反射ミラー170の表面から突き出ているという形状を有していることに起因して、反射ミラー170に照射される光を、反射ミラー170のミラー面が反射する態様とは異なる態様で反射しかねない。つまり、突起部180は、反射ミラー170が本来意図する態様とは異なる態様で(例えば、意図せぬ方向に向かって)光を反射しかねない。このため、照射される光を好適な態様で反射するという反射ミラー170の本来の作用を好適に維持するという観点から見れば、突起部180は、照射される光をあまり反射しないことが好ましい。従って、突起部180の反射率は、反射ミラー170の反射率よりも低いことが好ましい。このような相対的に反射率の低い突起部180を実現するための方法として、例えば、突起部180に金属膜215よりも反射率の低い部材(例えば、カーボン材料等)を塗布又は形成する方法や、金属膜215よりも反射率の低い部材から突起部180を形成する方法があげられる。或いは、突起部180の光吸収率は、反射ミラー170の光吸収率よりも高いことが好ましい。このようなこのような突起部180を実現するための方法として、例えば、突起部180に金属膜215や保護膜214よりも光吸収率の高い部材を塗布又は形成する方法や、金属膜215や保護膜214よりも光吸収率の高い部材から突起部180を形成する方法があげられる。
【0089】
更に、突起部180は、反射ミラー170に照射される光の波長以下の高さを有していることが好ましい。更に、突起部180は、反射ミラー170に照射される光の波長以下の幅を有していることが好ましい。
【0090】
加えて、突起部180は、可動部120ないしは反射ミラー170の中心付近又は中央付近に形成されることが好ましい。例えば、図1に示すように可動部120の形状が四角形である場合には、突起部180は、可動部120の対角線の交点付近に形成されることが好ましい。或いは、例えば、図1に示すように反射ミラー170の形状が円形ないしは楕円形である場合には、突起部180は、反射ミラー170の円形形状ないしは楕円形形状の中心付近に形成されることが好ましい。
【0091】
尚、突起部180が可動部120ないしは反射ミラー170の中心付近又は中央付近に形成されることが好ましい理由は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止するためである。従って、突起部180は、可動部120ないしは反射ミラー170の中心付近又は中央付近に加えて又は代えて、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる位置に形成されてもよい。
【0092】
(1−2)アクチュエータの製造方法
続いて、図5から図11を参照して、第1実施例のアクチュエータ101を製造するための製造方法について説明する。図5は、第1実施例のアクチュエータ101を製造するための製造方法の流れを示すフローチャートである。図6から図11は、夫々、第1実施例のアクチュエータ101を製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータ101の状態を示す断面図及び平面図である。尚、図6から図11では、各図(a)は、各図(b)の平面図の一点鎖線での断面図を示す。
【0093】
図5並びに図6(a)の断面図及び図6(b)の平面図に示すように、はじめに、アクチュエータ101の原材料となるシリコン基板201が用意される(ステップS101)。
【0094】
その後、図5並びに図7(a)の断面図及び図7(b)の平面図に示すように、パターニングやエッチングや蒸着法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法やイオン注入等の半導体製造プロセスを用いて、シリコン基板201上に処理回路211を形成する(ステップS102)。処理回路211としては、例えば、ピエゾ抵抗層を利用した可動部120の遥動状態を検出する検出回路等が一例としてあげられるが、任意の回路(或いは、任意の構造物)であってもよい。尚、処理回路211がアクチュエータ101にとって必要でなければ、図5のステップS102の動作は省略されてもよい。
【0095】
更に、処理回路211が形成された後、シリコン基板201上に、SiO2(二酸化ケイ素)等を含む絶縁膜202が形成される(ステップS102)。このとき、処理回路211の直上には、後述する工程で処理回路211と配線212とを電気的に接続するために用いられる開口が形成されている。
【0096】
その後、図5並びに図8(a)の断面図及び図8(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、絶縁膜202が形成されたシリコン基板201上に、処理回路211と電気的に接続される配線212が形成される(ステップS103)。配線212は、例えば銅等の導電率が相対的に高い金属をシリコン基板201上に蒸着することで形成される。
【0097】
更に、配線212の形成と同時に、絶縁膜202が形成されたシリコン基板201上に、上述した突起部180を形成するための基礎部材213が形成されることが好ましい(ステップS103)。つまり、図5のステップS103では、配線212及び基礎部材213が同時に形成されるようなパターニングやエッチングや蒸着等が行われることが好ましい。言い換えれば、図5のステップS103では、1回のパターニングやエッチングや蒸着等が行われることで、配線212及び基礎部材213が同時に形成されることが好ましい。但し、配線212と基礎部材213とは、別々に形成されてもよい。
【0098】
このとき、基礎部材213は、上述した突起部180のサイズや配置位置等を考慮した上で、適切なサイズ及び配置位置を有するようにシリコン基板201上に形成される。つまり、当該基礎部材213を起点に形成される突起部180が上述したサイズや配置位置等の条件を満たすように、適切なサイズを有する基礎部材213がシリコン基板201上の適切な位置に形成される。
【0099】
尚、上述したように処理回路211がアクチュエータ101にとって必要でなければ、処理回路211が形成されなくともよいため、必然的に処理回路211につながる配線212もまた形成されなくともよくなる。この場合は、図5のステップS103では、基礎部材213のみが形成されてもよい。但し、製造工程を増加させないという観点からは、基礎部材213は、他の何らかの構成部材(例えば、駆動コイル140等)と同時に形成されることが好ましい。
【0100】
その後、図5並びに図9(a)の断面図及び図9(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、配線212及び基礎部材213が形成されたシリコン基板201上に、SiO2(二酸化ケイ素)等を含む絶縁膜203が形成される(ステップS104)。尚、基礎部材213が形成されている領域部分においては、基礎部材213が存在することに起因して、絶縁膜203は、周囲の絶縁膜203(つまり、基礎部材213が形成されていない領域部分の絶縁膜203)から見て突き出た形状を有している。
【0101】
その後、図5並びに図10(a)の断面図及び図10(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、絶縁膜203が形成されたシリコン基板201上に、反射ミラー170(つまり、金属膜215及び保護膜214)が形成される(ステップS105)。尚、基礎部材213が形成されている領域部分においては、基礎部材213が存在することに起因して、反射ミラー170は、周囲の反射ミラー170(つまり、基礎部材213が形成されていない領域部分の反射ミラー170)から見て突き出た形状を有している。この突き出た形状が、上述した突起部170に相当する。
【0102】
その後、図5並びに図11(a)の断面図及び図11(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、反射ミラー170が形成されたシリコン基板201の一部が除去されることで、支持部110、可動部120及びトーションバー130が形成される(ステップS106)。その結果、上述したアクチュエータ101の製造が完了する。
【0103】
尚、突起部180による意図せぬ光の反射を防ぐために突起部180の反射率を相対的に低くする場合には、上述したステップS101からステップS106のいずれかの工程又は更に別の工程において、突起部180の反射率を相対的に低くするための処理が行われることが好ましい。同様に、突起部180による意図せぬ光の反射を防ぐために突起部180の光吸収率を相対的に高くする場合には、上述したステップS101からステップS106のいずれかの工程又は更に別の工程において、突起部180の光吸収率を相対的に高くするための処理が行われることが好ましい。
【0104】
以上説明したように、第1実施例によれば、アクチュエータ101を製造する過程で突起部180が形成される。このため、アクチュエータ101を製造する過程で、反射ミラー170が他の構造物に接触することが抑制される。この技術的効果について、図12を参照しながら詳細に説明する。図12は、突起部180によって反射ミラー170と他の構造物との接触が抑制される状態を示す断面図である。
【0105】
図12(a)に示すように、アクチュエータ101を製造する過程でアクチュエータ101が他の構造物(例えば、アクチュエータ101を製造する製造装置が備えるステージ等)と対向している場合であっても、まずは突起部180が他の構造物に接触するがゆえに、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することが抑制される又は防止される。従って、反射ミラー170と他の構造物との接触に起因して、反射ミラー170の表面に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができる。その結果、反射ミラー170の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。つまり、第1実施例の製造方法によれば、反射ミラー170が形成されるアクチュエータ101を、反射ミラー170の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0106】
更に、図12(b)に示すように、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、まずは突起部180が他の構造物と接触するがゆえに、反射ミラー170の表面の殆どは、他の構造物と接触することはない。言い換えれば、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、突起部180が他の構造物と接触することによって、反射ミラー170の外縁の一部が他の構造物と接触するに過ぎない。従って、反射ミラー170と他の構造物との接触に起因して、反射ミラー170の表面に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができる。その結果、反射ミラー170の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。つまり、第1実施例の製造方法によれば、反射ミラー170が形成されるアクチュエータ101を、反射ミラー170の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0107】
尚、反射ミラー170が他の構造物と対向する状況は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程で多く生じ得る。従って、このような突起部180によって実現される効果は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程でより顕著に表れる。但し、アクチュエータ101の製造が完了した場合であっても、突起部180が存在することによって、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することが抑制される又は防止される。従って、アクチュエータ101を製造している過程に限らず、アクチュエータ101の製造が完了した後であっても、突起部180によって実現される効果は相応に有効である。
【0108】
加えて、第1実施例によれば、突起部180の高さを、反射ミラー170に対して照射される光の波長の長さ以下にすることができる。このため、反射ミラー170に照射される光が突起部180の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部180の高さが光の波長の長さを超える場合と比較して、反射ミラー170に照射される光の利用効率を増大させることができる。
【0109】
加えて、第1実施例によれば、突起部180の幅を、反射ミラー170に対して照射される光の波長の長さ以下にすることができる。このため、反射ミラー170に照射される光が突起部180の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部180の幅が光の波長の長さを超える場合と比較して、反射ミラー170に照射される光の利用効率を増大させることができる。
【0110】
加えて、第1実施例によれば、突起部180の高さを、照射された光を反射することができる領域部分に対する照射された光を反射することができない領域部分の割合が所定の割合(例えば、1%)以下にすることができる。このため、突起部180が形成されたアクチュエータ101の製造が完了した後に反射ミラー170に対して光を照射した場合に、当該突起部180によって生ずる影が占める割合を一定の許容範囲に収めることができる。従って、照射される光を反射するという反射ミラー170の本来の特性を損なうことなく、突起部180を形成することができる。
【0111】
加えて、第1実施例によれば、配線212及び基礎部材213が同時に形成されるようなパターニングやエッチングや蒸着等が行われる。言い換えれば、つまり、1回のパターニングやエッチングや蒸着等が行われることで、配線212及び基礎部材213が同時に形成される。つまり、突起部180を形成するための専用の工程を新たに設けることなく、突起部180(言い換えれば、突起部180を形成するための基礎部材213を形成することができる。
【0112】
(2)第2実施例
続いて、図13を参照して、第2実施例のアクチュエータ102について説明する。図13は、第2実施例のアクチュエータ102の構成の一例を示す平面図である。尚、第1実施例のアクチュエータ101と同様の構成要素については同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0113】
図13に示すように、第2実施例のアクチュエータ102は、第1実施例のアクチュエータ101と比較して、複数の突起部180を備えているという点で異なっている。第2実施例のアクチュエータ102が備えるその他の構成要素については、第1実施例のアクチュエータ101と同一であってもよい。従って、第2実施例の製造方法についても、第1実施例の製造方法と比較して、複数の突起部180が形成されるという点で異なっている。第2実施例の製造方法におけるその他の工程については、第1実施例の製造方法と同一であってもよい。
【0114】
複数の突起部180の夫々は、上述した第1実施例における突起部180と同様であることが好ましい。
【0115】
加えて、複数の突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができるような分布態様で形成されることが好ましい。このため、例えば、複数の突起部180は、可動部120上において又は反射ミラー170上において、離散的に分布するように形成されてもよい。或いは、複数の突起部180は、他の構造物と全てが同一直線上に存在しない少なくとも3点で接触するように形成されてもよい。言い換えれば、複数の突起部180は、それらの全てが同一直線上に存在しないように形成されてもよい。
【0116】
更には、複数の突起部180の夫々は、突起部180の高さや2つの突起部180の間の距離という観点から定められる以下の条件を満たしていることが好ましい。この条件について、図14を参照しながら説明する。図14は、突起部180の高さや2つの突起部180の間の距離という観点から定められる条件を説明するためのアクチュエータ102の一部の断面図である。
【0117】
図14に示すように、突起部180の高さや2つの突起部180の間の距離という観点から定められる条件は、反射ミラー170の表面が何らかの要因で湾曲してしまった場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる突起部180を形成するために定められる。具体的には、反射ミラー170の表面の曲率半径がrであり、突起部180の高さがhであり、反射ミラー170の表面が湾曲している状態での2つの突起部180の間の距離を2×Lであるとすると、上記条件は、以下の数式2で示される。つまり、複数の突起部180は、以下の数式2に示す条件を満たすように形成されることが好ましい。
【0118】
【数2】
【0119】
加えて、3つ以上の突起部180が同一直線上に配置されるように形成される場合には、3つ以上の突起部180の夫々の間の間隔が以下の条件を満たしていることが好ましい。この条件について、図15を参照しながら説明する。図15は、3つ以上の突起部180を形成する場合の条件を説明するための平面図である。
【0120】
図15に示すように、例えば、3つの突起部180(具体的には、突起部180a、突起部180b及び突起部180c)が同一直線L上に配置されるように形成される場合を例にあげて説明する。この場合、互いに隣接する突起部180aと突起部180bとの間の間隔d1は、互いに隣接する突起部180bと突起部180cとの間の間隔d2とは異なることが好ましい。つまり、3つの突起部180が等間隔に配置されないことが好ましい。
【0121】
尚、4つ以上の突起部180が同一直線上に配置されるように形成される場合においても同様のことが言える。つまり、4つ以上の突起部180が等間隔に配置されないことが好ましい。或いは、4つ以上の突起部180のうち互いに隣接する2つの突起部180の間隔が、少なくとも2箇所以上で異なっていることが好ましい。
【0122】
このように構成すれば、反射ミラー170に照射される光が3つ以上の突起部180で反射する場合に、当該反射された光が互いに干渉することで意図せぬ位置において光点を結ぶことが殆ど或いは全くなくなる。つまり、3つ以上の突起部180での反射に起因した光の干渉によって、反射ミラー170での適切な光の反射に悪影響を及ぼすことが殆ど又は全くなくなる。従って、照射される光を適切に反射するという反射ミラー170の本来の特性を損なうことなく、3つ以上の突起部180を形成することができる。
【0123】
以上説明したように、第2実施例によれば、第1実施例が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。更には、第2実施例によれば、複数の突起部180が形成されるため、アクチュエータ102を製造する過程で又はアクチュエータ102の製造が完了した後に、反射ミラー170が他の構造物に接触することがより一層好適に抑制される。
【0124】
尚、上述の説明では、可動部120がトーションバー130の伸長する方向に沿った軸を中心軸として回転するMEMSスキャナに着目して説明を進めている。しかしながら、MEMSスキャナに限らず、任意のアクチュエータに対して上述した各種構成が適用されてもよい。例えば、可動部120がトーションバー130の遥動に従って平行移動するように遥動するMEMSアクチュエータに対して、上述した各種構成が適用されてもよい。この場合であっても、上述した各種効果は好適に享受される。
【0125】
本発明は、前述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うアクチュエータの製造方法及びアクチュエータもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
101、102 アクチュエータ
110 支持部
120 可動部
130 トーションバー
140 駆動コイル
150 電源端子
160 永久磁石
170 反射ミラー
180 突起部
213 基礎部材
214 保護膜
215 金属膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばミラー等が設けられた可動部を駆動するMEMSスキャナ等のアクチュエータ及び当該アクチュエータの製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディスプレイ、プリンティング装置、精密測定、精密加工、情報記録再生などの多様な技術分野において、半導体プロセス技術によって製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスについての研究が活発に進められている。このようなMEMSデバイスとして、レーザ光のスキャニングに用いられるMEMSスキャナが知られている。このようなMEMSスキャナは、可動板と、可動板を取り囲む枠状の支持枠と、可動板を支持枠に対して揺動可能に軸支するトーションバーとを備えている。
【0003】
ここで、一般的なMEMSスキャナでは、可動板の表面の中央にはミラーが形成され、当該ミラーの周囲に駆動用コイルが形成される。そして、駆動用コイルに対して静磁界を発生させるための1対の永久磁石が、支持枠に配置される。このように構成されたMEMSスキャナによれば、駆動用コイルに対して制御電流が供給されることで、駆動用コイルに電磁駆動力(ローレンツ力)が発生する。従って、駆動用コイルが形成されている可動板が遥動される。
【0004】
このようなMEMSスキャナを開示する先行技術として、特許文献1が一例としてあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−133145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなMEMSスキャナを製造する過程において、可動板の表面に形成されるミラーが、製造装置のステージ(或いは、治具等のその他の構造物)に接触してしまうおそれがある。特に、一部の製造工程では、製造途中のMEMSスキャナの冷却等のために積極的にミラー(或いは、ミラーを形成した可動板)を製造装置のステージ等に接触させることがある。この場合、ミラーと製造装置のステージとの接触に起因して、ミラーに傷やへこみが生じてしまうこともある。そうすると、ミラーの本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が損なわれてしまいかねないという技術的な問題点が生じ得る。
【0007】
尚、上述した技術的な問題点は、回転するように可動板(或いは、任意の可動部)を遥動させるMEMSスキャナのみならず、任意の態様で可動板(或いは、任意の可動部)を遥動させるMSMSアクチュエータに対しても同様に生じ得る。
【0008】
本発明は、例えば前述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば可動部上にミラー等の反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することが可能なアクチュエータの製造方法及びアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アクチュエータの製造方法は、上記課題を解決するために、(i)反射膜が形成される可動部と、(ii)当該可動部を取り囲む支持部と、(iii)前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備えるアクチュエータの製造方法であって、基板上に、前記可動部、前記支持部及び前記トーションバーを形成する第1工程と、前記可動部上に、前記反射膜を形成する第2工程と、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が他の構造物に対向している場合であっても、前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を形成する第3工程とを備える。
【0010】
アクチュエータは、上記課題を解決するために、反射膜が形成される可動部と、当該可動部を取り囲む支持部と、前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備え、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)対向する他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を備える。
【0011】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例のアクチュエータの構成の一例を示す平面図である。
【図2】突起部及び反射ミラーの詳細な構成を示す断面図である。
【図3】突起部の作用という側面から突起部を説明するための断面図である。
【図4】突起部によって反射ミラー上に形成される影の割合という側面から突起部を説明するための平面図及び断面図である。
【図5】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図7】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図8】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図9】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図10】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図11】第1実施例のアクチュエータを製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータの状態を示す断面図及び平面図である。
【図12】突起部によって反射ミラーと他の構造物との接触が抑制される状態を示す断面図である。
【図13】第2実施例のアクチュエータの構成の一例を示す平面図である。
【図14】突起部の高さや2つの突起部の間の距離という観点から定められる条件を説明するためのアクチュエータの一部の断面図である。
【図15】3つ以上の突起部を形成する場合の条件を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、アクチュエータの製造方法及びアクチュエータの実施形態について順に説明する。
【0014】
(アクチュエータの製造方法の実施形態)
本実施形態のアクチュエータの製造方法は、(i)反射膜が形成される可動部と、(ii)当該可動部を取り囲む支持部と、(iii)前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備えるアクチュエータの製造方法であって、基板上に、前記可動部、前記支持部及び前記トーションバーを形成する第1工程と、前記可動部上に、前記反射膜を形成する第2工程と、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が他の構造物に対向している場合であっても、前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を形成する第3工程とを備える。
【0015】
本実施形態のアクチュエータの製造方法によれば、可動部と支持部とトーションバーとを備えるアクチュエータが製造される。このようなアクチュエータによれば、トーションバーによって懸架された可動部が遥動する。可動部は、例えば、トーションバーが伸長する方向を中心軸として回転するように遥動してもよいし、或いは、トーションバーが伸長する方向に沿って又はトーションバーが伸長する方向と交わる方向に沿って移動するように遥動してもよい。
【0016】
このとき、トーションバーは、可動部と支持部とを直接的に接続していてもよい。或いは、トーションバーは、可動部と支持部とを間接的に(言い換えれば、間に任意の部材を介在させた上で)接続してもよい。
【0017】
このようなアクチュエータを製造するために、本実施形態のアクチュエータの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを備えている。
【0018】
第1工程では、基板上に、可動部、支持部及びトーションバーが形成される。後に図面を用いて詳細に説明するが、第1工程では、例えば、半導体製造プロセス等を用いて基板の一部が取り除かれることで、可動部、支持部及びトーションバーが形成されてもよい。或いは、第1工程では、その他の製造プロセスを用いて、可動部、支持部及びトーションバーが形成されてもよい。
【0019】
第2工程では、可動部上に反射膜が形成される。例えば、可動部が板状の部材である場合には、可動部の相対向する2つの表面のうちの一方の表面に反射膜が形成される。この反射膜は、主として反射膜に照射される光を反射する。その結果、可動部の遥動に合わせて反射膜から光が反射されることで、光のスキャニングが行われる。尚、反射膜としては、典型的には、例えばアルミニウム等の金属膜が用いられるが、光を反射する任意の部材が用いられてもよい。
【0020】
尚、第1工程が先に行われた後に第2工程が行われてもよいし、第2工程が先に行われた後に第1工程が行われてもよい。第2工程が先に行われる場合には、反射膜は、後の第1工程において可動部が形成されることが予定されている基板上の所定の領域に形成される。
【0021】
第3工程では、可動部に突起部が形成される。このとき、突起部は、可動部のうち反射膜が形成される側(例えば、可動部の相対向する2つの表面のうち反射膜が形成される側の表面)に形成される。このとき、突起部は、可動部のうち反射膜が形成されている箇所(例えば、可動部の表面のうち反射膜が形成されている領域)に形成されてもよいし、可動部のうち反射膜が形成されてない箇所(例えば、可動部の表面のうち反射膜が形成されていない領域)に形成されてもよい。
【0022】
尚、第3工程は、第1工程及び第2工程の双方が先に行われた後に行われてもよい。或いは、第3工程は、第1工程及び第2工程のいずれか一方が行われた後であって且つ第1工程及び第2工程のいずれか他方が行われる前に行われてもよい。或いは、第3工程は、第1工程及び第2工程の双方が行われる前に行われてもよい。第1工程よりも先に第3工程が先に行われる場合には、突起部は、後の第1工程において可動部が形成されることが予定されている基板上の所定の領域に形成される。同様に、第2工程よりも先に第3工程が先に行われる場合には、突起部は、可動部(或いは、可動部が形成されることが予定されている基板上の所定の領域)のうち後の第2工程において反射膜が形成されることが予定されている側に形成される。
【0023】
突起部は、反射膜の表面から突き出る高さを有している。従って、可動部の厚み方向(或いは、反射膜の厚み方向)に沿った高さに着目すれば、突起部の高さは、反射膜の高さ(言い換えれば、反射膜の厚み)よりも高くなる。更に、突起部は、基板(特に、基板のうち反射膜が形成される側の表面)が他の構造物に対向している状況において、当該他の構造物に接触することで反射膜が他の構造物に接触することを抑制する。言い換えれば、突起部は、基板が他の構造物に対向している状況において基板と他の構造物とが接触する状況に置かれた場合であっても、当該他の構造物に接触することで反射膜が他の構造物に接触することを抑制する。例えば、突起部は、基板が他の構造物に対向している状況において、反射膜が他の構造物に接触するよりも先に他の構造物に接触することで、反射膜が他の構造物に接触することを抑制する。つまり、突起部が形成されることで、基板が他の構造物に対向している状況において、他の構造物が反射膜に接触することを好適に抑制する(或いは、防止する)ことができる。尚、突起部は、他の構造物に常に接触している必要はなく、少なくとも反射膜が他の構造物に接触することを抑制する場合に他の構造物に接触していれば足りる。また、他の構造物としては、例えば、アクチュエータを製造するための製造装置の各種部材(例えば、ステージ等)が一例となる。もちろん、基板に対向し得る任意の部材ないしは物体を他の構造物として取り扱ってもよいことは言うまでもない。
【0024】
尚、突起部は、突起部が形成されていない場合と比較して、他の構造物が反射膜に接触することを少しでも積極的に抑制する(言い換えれば、防止する)ことができる部材であればよい。つまり、突起部が形成されていない場合に他の構造物が反射膜に接触する程度(例えば、接触面積の大きさや、接触の衝撃の大きさや、接触の回数等)と比較して、突起部が形成されている場合に他の構造物が反射膜に接触する程度が少しでも積極的に抑制されれば(つまり、緩和されれば)足りる。但し、突起部が形成されていることで、他の構造物が反射膜に殆ど又は全く接触しなくなることが好ましい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータの製造方法によれば、可動部、支持部及びトーションバー並びに反射膜が形成される過程において、可動部上に突起部が形成される。従って、仮にアクチュエータを製造する過程において、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することが好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜と他の構造物との接触に起因して、反射膜に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができる。その結果、反射膜の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。つまり、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0026】
更に、突起部が形成されているアクチュエータであれば、製造完了後も、他の構造物が反射膜に接触することが好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、突起部が形成されているアクチュエータであれば、製造完了後も、反射膜に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができ、その結果、反射膜の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。但し、他の構造物が反射膜に接触する状況は、アクチュエータを製造している過程で多く発生する。一方で、突起部は、製造完了後のアクチュエータの本来の主たる機能には大きく寄与することはない。従って、突起部は、アクチュエータの製造完了と共に取り払われてもよい。
【0027】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部は、前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物の表面に対して傾いた状態で対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなる程度の高さを有する。
【0028】
この態様によれば、このような高さ(つまり、反射膜の表面を基準とする、反射膜の表面から突き出た高さ)を有する突起部により、基板が他の構造物に対向している(特に、基板の表面と他の構造物の表面とが非平行な状態で対向している)状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することが好適に抑制される。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0029】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記突起部を複数形成する。
【0030】
この態様によれば、複数の突起部により、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0031】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記複数の突起部の少なくとも一つは、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記複数の突起部の少なくとも一つが前記他の構造物の表面に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなる程度の高さを有するように構成してもよい。
【0032】
このように構成すれば、このような高さを有する突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0033】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記反射膜の表面の曲率半径がrであり、前記突起部の高さがhであり、且つ前記複数の突起部のうちのいずれか2つの突起部の間の間隔が2×Lであるとすると、前記第3工程は、数式1が示す条件を満たすように前記複数の突起部を形成するように構成してもよい。
【0034】
【数1】
【0035】
このように構成すれば、このような高さを有する突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0036】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の高さは、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の表面粗さよりも大きい。
【0037】
この態様によれば、突起部として作用することが困難な又は不可能な可動部ないしは反射膜の表面の粗さ(つまり、表面の極微細な凹凸)ではなく、いわば反射膜と他の構造物との接触を積極的に抑制するための意図的な突起部が可動部上に形成される。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0038】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の高さは、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下である。
【0039】
この態様によれば、反射膜に照射される光が突起部の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合には反射膜によって有効に反射されなかった光が、反射膜によって有効に反射される。このため、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合と比較して、反射膜に照射される光の利用効率(例えば、反射効率等)を増大させることができる。
【0040】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の前記反射膜の表面に沿った方向の幅は、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下である。
【0041】
この態様によれば、反射膜に照射される光が突起部の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合には反射膜によって有効に反射されなかった光が、反射膜によって有効に反射される。このため、突起部の高さが光の波長の長さを超える場合と比較して、反射膜に照射される光の利用効率(例えば、反射効率等)を増大させることができる。
【0042】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記第3工程は、前記可動部内で離散的に分布する前記複数の突起部を形成するように構成してもよい。
【0043】
このように構成すれば、このような分布態様で形成される突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0044】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記第3工程は、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなるような配置位置に前記複数の突起部を形成するように構成してもよい。
【0045】
このように構成すれば、このような分布態様で形成される突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0046】
上述の如く複数の突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記第3工程は、3つ以上の前記突起部が同一直線上に配置される配置位置に前記3つ以上の突起部を形成する場合には、前記3つ以上の突起部が等間隔に配置されなくなる配置位置に前記3つ以上の突起部を形成するように構成してもよい。
【0047】
このように構成すれば、3つ以上の突起部が同一直線上において等間隔で配置されるように形成されなくなる。このため、突起部が形成されたアクチュエータの製造が完了した後に反射膜に対して光を照射した場合に、3つ以上の突起部での反射に起因した当該光の干渉が生ずることが殆ど又は全くなくなる。つまり、3つ以上の突起部での反射に起因した光の干渉によって、反射膜での光の反射に悪影響を及ぼすことが殆ど又は全くなくなる。従って、照射される光を適切に反射するという反射膜の本来の特性を損なうことなく、突起部を形成することができる。
【0048】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の中心付近又は中央付近に前記突起部を形成する。
【0049】
このように構成すれば、このような分布態様で形成される突起部により、基板が他の構造物に対向している状況が生ずることがあったとしても、他の構造物が反射膜に接触することがより一層好適に抑制される(言い換えれば、防止される)。従って、反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷をより一層適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0050】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記反射膜上において光を反射する領域に対する前記反射膜上において前記突起部の影に起因して生ずる前記光を反射しない領域の割合が、所定の割合以下となるように、前記突起部を形成することを特徴とする。
【0051】
この態様によれば、突起部が形成されたアクチュエータの製造が完了した後に反射膜に対して光を照射した場合に、当該突起部によって生ずる影が占める割合を一定の許容範囲に収めることができる。従って、照射される光を反射するという反射膜の本来の特性を損なうことなく、突起部を形成することができる。
【0052】
上述の如く光を反射する領域に対する光を反射しない領域の割合が所定の割合以下となるように突起部を形成するアクチュエータの製造方法の態様では、前記所定の割合は1%であるように構成してもよい。
【0053】
このように構成すれば、突起部が形成されたアクチュエータの製造が完了した後に反射膜に対して光を照射した場合に、当該突起部によって生ずる影が占める割合を1%以下に収めることができる。従って、照射される光を反射するという反射膜の本来の特性を損なうことなく、突起部を形成することができる。
【0054】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記第3工程は、前記突起部の形成と同時に又は並行して、前記アクチュエータの動作に関連する所定の回路を前記基板上に形成する。
【0055】
この態様によれば、所定の回路(例えば、既存の回路)を形成する工程を流用(言い換えれば、共用)して、突起部を形成することができる。従って、突起部を新たに形成することに起因して新たな製造工程を追加しなくともよくなる。つまり、突起部を新たに形成するためだけに用いられる新たな製造工程を追加する場合と比較して、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0056】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の表面の反射率は、前記反射膜の表面の反射率よりも低い。
【0057】
この態様によれば、反射膜と比較して、反射膜に照射された光が突起部によって反射されにくくなる。つまり、突起部が反射膜として用いられにくくなる。このため、反射膜に照射された光が突起部によって意図せぬ方向で反射することで生じ得る不都合の発生を好適に抑制することができる。
【0058】
本実施形態のアクチュエータの製造方法の他の態様では、前記突起部の光吸収率は、前記反射膜の光吸収率よりも高い。
【0059】
この態様によれば、反射膜と比較して、反射膜に照射された光が突起部によって反射されにくくなる。つまり、突起部が反射膜として用いられにくくなる。このため、反射膜に照射された光が突起部によって意図せぬ方向で反射することで生じ得る不都合の発生を好適に抑制することができる。
【0060】
(アクチュエータの実施形態)
本実施形態のアクチュエータは、反射膜が形成される可動部と、当該可動部を取り囲む支持部と、前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備え、前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)対向する他の構造物に前記反射膜が接触する前に前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を備える。
【0061】
本実施形態のアクチュエータによれば、上述した本実施形態のアクチュエータの製造方法が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0062】
尚、上述した本実施形態のアクチュエータの製造方法が採用し得る各種態様(つまり、他の態様)に対応して、本実施形態のアクチュエータもまた各種態様を採用することができる。
【0063】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータの製造方法によれば、可動部、支持部及びトーションバーを形成する第1工程と、反射膜を形成する第2工程と、突起部を形成する第3工程とを備える。本実施形態のアクチュエータによれば、可動部と、支持部と、トーションバーとを備え、可動部上には突起部が形成される。従って、可動部上にミラー等の反射膜が形成されるアクチュエータを、反射膜の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例について図を参照しつつ説明する。
【0066】
(1)第1実施例
はじめに、図1から図12を参照して、第1実施例のアクチュエータ101及び当該アクチュエータ101の製造方法について説明する。
【0067】
(1−1)アクチュエータの構成
はじめに、図1を参照して、第1実施例のアクチュエータ101の構成について説明する。図1は、第1実施例のアクチュエータ101の構成の一例を示す平面図及び断面図である。
【0068】
図1(a)及び図1(b)に示すように、第1実施例のアクチュエータ101は、例えばレーザ光のスキャニングに用いられるプレーナ型電磁駆動アクチュエータ(即ち、MEMSスキャナ)である。アクチュエータ101は、支持部110と、可動部120と、一対のトーションバー130と、駆動コイル140と、電源端子150と、一対の永久磁石160と、反射ミラー170と、突起部180とを備えている。
【0069】
支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130は、例えばシリコン基板等の非磁性基板から一体的に形成されている。即ち、支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130は、例えばシリコン基板等の非磁性基板の一部が除去されることにより間隙が形成されることで形成されている。このときの形成プロセスとして、MEMSプロセスが用いられることが好ましい。尚、シリコン基板に代えて、任意の弾性材料から、支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130が一体的に形成されてもよい。
【0070】
支持部110は、可動部120を取り囲むような枠形状を有しており、可動部120の両側に位置する(言い換えれば、可動部120の両側から当該可動部を挟み込む)一対のトーションバー130によって可動部120と接続されている。但し、支持部110の一部に切り欠きないしは開口部が形成されていてもよい。
【0071】
可動部120は、揺動可能なように一対のトーションバー130によって支持部110に軸支されている。可動部120の表面には、レーザ光を反射する反射ミラー170が形成される。反射ミラー170は、照射される光を反射する板状の又は膜状の部材である。
【0072】
可動部120の表面には、更に、駆動コイル140が形成されている。但し、駆動コイル140は、可動部120の内部に形成されてもよい。駆動コイル140は、例えば、可動部120の表面に形成される反射ミラー170を取り囲むように伸長するコイルである。駆動コイル140は、例えば相対的に導電率の高い材料(例えば、金や銅等)を用いて形成されてもよい。また、駆動コイル140は、めっきプロセスやスパッタリング法等の半導体製造プロセスを用いて形成されてもよい。或いは、駆動コイル140は、支持部110、可動部120及び一対のトーションバー130を形成するためのシリコン基板に対してインプラント法を用いて埋め込まれてもよい。
【0073】
駆動コイル140には、支持部110上に形成されている電源端子150を介して、電源から制御電流が供給される。制御電流は、可動部120を遥動させるための制御電流であって、典型的には、可動部120が遥動する周波数と同期した周波数の信号成分を含む交流電流である。尚、電源は、アクチュエータ101自身が備えている電源であってもよいし、アクチュエータ101の外部に用意される電源であってもよい。
【0074】
一対のトーションバー130は、可動部120が支持部110に対して揺動可能なように、可動部120と支持部110とを接続する。一対のトーションバー130の弾性によって、可動部120は、一対のトーションバー130が伸長する方向に沿った軸を中心軸(言い換えれば、回転軸)として回転するように遥動する。つまり、可動部120は、図1(a)における左右の方向に沿った軸を中心軸として、当該中心軸の周りで回転するように遥動する。
【0075】
一対の永久磁石160は、支持部110の外部に取り付けられている。一対の永久磁石160は、駆動コイル140に対して所定の静磁界を印加することができるように、その磁極の向きが適切に設定されていることが好ましい。尚、一対の永久磁石160には、静磁界の強度を高めるために、ヨークが付加されていてもよい。
【0076】
このような第1実施例のアクチュエータ101が動作する(具体的には、可動部120が遥動する)場合には、まず、電源から、電源端子150を介して、駆動コイル140に対して制御電流が供給される。一方で、駆動コイル140には、一対の永久磁石160によって静磁界が印加されている。従って、駆動コイル140には、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因した力(つまり、ローレンツ力)が生ずる。その結果、駆動コイル140が形成されている可動部120は、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因したローレンツ力によって遥動する。つまり、可動部120は、図1(a)における左右の方向に沿った軸を中心軸として回転するように遥動する。
【0077】
第1実施例では特に、可動部120上には、突起部180が形成されている。このとき、突起部180は、可動部120の相対向する2つの面(例えば、図1(b)の上側の面及び下側の面)のうち反射ミラー170が形成される側の面上に形成される。更に、図1(a)及び図1(b)では、突起部180が、可動部120上であって且つ反射ミラー170上に形成される例を示している。しかしながら、突起部180は、反射ミラー170が形成されていない可動部120上の領域部分(例えば、図1(a)における反射ミラー170の周辺の領域部分)に形成されていてもよい。
【0078】
突起部180は、当該突起部180の周辺の反射ミラー170の表面(つまり、反射ミラー170の厚み方向に沿って位置する面であって且つ可動部120に面していない側の面)から突き出た形状を有している。つまり、突起部180は、当該突起部180の周辺の反射ミラー170と比較して、反射ミラー170の厚み方向における高さ(具体的には、図1(b)における上下方向の長さであって、反射ミラー170の表面からの高さ)が高くなっている。
【0079】
ここで、図2を参照して、第1実施例における突起部180の高さの定義について説明する。図2は、突起部180及び反射ミラー170の詳細な構成を示す断面図である。
【0080】
図2に示すように、第1実施例では、反射ミラー170は、アルミニウムやその他相対的に反射率が高い金属等を含む金属膜215と、当該金属膜215の表面を保護するための保護膜214とが積層された部材であってもよい。このような構造の反射ミラー170においては、上述した「反射ミラー170の表面」は、保護膜214の表面(つまり、保護膜214の厚み方向(具体的には、図2における上下方向)に沿って位置する面であって且つ金属膜215に面していない側の面)に相当する。尚、反射ミラー170に照射された光は、金属膜215と保護膜214との間の界面で反射する。この意味において、反射ミラー170に照射された光が反射する面を「反射ミラー170のミラー面」と表現するのであれば、「反射ミラー170のミラー面」は、金属膜215と保護膜214との間の界面に相当する。
【0081】
図2に示すように、「突起部180の高さ」とは、突起部180の周囲の反射ミラー170の表面(つまり、保護膜214の表面)からの高さを意味している。尚、参考までに、「突起部180の幅」とは、反射ミラー170の表面に沿った方向(つまり、図2の左右方向であり、可動部120の表面に沿った方向と同義)における長さを意味している。
【0082】
以下、このような突起部180について、図3及び図4を参照しながら更に詳細に説明する。図3は、突起部180の作用という側面から突起部180を説明するための断面図である。図4は、突起部180によって反射ミラー170上に形成される影の割合という側面から突起部180を説明するための平面図及び断面図である。
【0083】
図3(a)に示すように、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止するための部材である。このため、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の高さを有している。より具体的には、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している状況下で、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触するよりも先に他の構造物に接触することで、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の高さを有していることが好ましい。更には、突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の幅や形状を有していることが好ましい。
【0084】
このとき、図3(b)に示すように、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、突起部180が他の構造物と接触することによって、反射ミラー170の表面の殆どは他の構造物と接触することはない。言い換えれば、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、突起部180が他の構造物と接触することによって、反射ミラー170のごく一部(例えば、反射ミラー170の外縁の極一部)が他の構造物と接触するに過ぎない。この観点から見れば、突起部180は、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態でアクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる程度の高さを有していることが好ましい。
【0085】
尚、このような突起部180の作用は、反射ミラー170が他の構造物と対向する状況下で発揮される。反射ミラー170が他の構造物と対向する状況は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程で多く生じ得る。従って、後にも詳述するが、このような突起部180の作用は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程でより顕著に表れる。
【0086】
加えて、突起部180の高さは、反射ミラー170の表面の粗さ(具体的には、反射ミラー170の表面の極微細な凹凸であり、Ra、RzないしはRmax(Rzjis)という記号で示される表面粗さ)よりも大きいことが好ましい。というのも、仮に突起部180の高さが反射ミラー170の表面の粗さよりも小さければ、突起部180が上述した作用を実現する主たる要素となることが困難である又は不可能であるからである。従って、突起部180の高さは、上述した作用を実現することができる程度の高さを有しており、その結果、反射ミラー170の表面の粗さよりも大きいことが好ましいと言える。
【0087】
更に、図4(a)及び図4(b)に示すように、反射ミラー170に照射された光の少なくとも一部は、突起部180に影響を受けて反射ミラー170によって反射されなくなり得る。つまり、反射ミラー170上には、照射された光を反射することができる領域部分(つまり、突起部180の影にならない領域部分)と、照射された光を反射することができない領域部分(つまり、突起部180の影になる領域部分)とが存在することになる。第1実施例では、突起部180は、照射された光を反射することができる領域部分に対する照射された光を反射することができない領域部分の割合が所定の割合(例えば、1%)以下になるような高さを有することが好ましい。
【0088】
尚、突起部180は、反射ミラー170の表面から突き出ているという形状を有していることに起因して、反射ミラー170に照射される光を、反射ミラー170のミラー面が反射する態様とは異なる態様で反射しかねない。つまり、突起部180は、反射ミラー170が本来意図する態様とは異なる態様で(例えば、意図せぬ方向に向かって)光を反射しかねない。このため、照射される光を好適な態様で反射するという反射ミラー170の本来の作用を好適に維持するという観点から見れば、突起部180は、照射される光をあまり反射しないことが好ましい。従って、突起部180の反射率は、反射ミラー170の反射率よりも低いことが好ましい。このような相対的に反射率の低い突起部180を実現するための方法として、例えば、突起部180に金属膜215よりも反射率の低い部材(例えば、カーボン材料等)を塗布又は形成する方法や、金属膜215よりも反射率の低い部材から突起部180を形成する方法があげられる。或いは、突起部180の光吸収率は、反射ミラー170の光吸収率よりも高いことが好ましい。このようなこのような突起部180を実現するための方法として、例えば、突起部180に金属膜215や保護膜214よりも光吸収率の高い部材を塗布又は形成する方法や、金属膜215や保護膜214よりも光吸収率の高い部材から突起部180を形成する方法があげられる。
【0089】
更に、突起部180は、反射ミラー170に照射される光の波長以下の高さを有していることが好ましい。更に、突起部180は、反射ミラー170に照射される光の波長以下の幅を有していることが好ましい。
【0090】
加えて、突起部180は、可動部120ないしは反射ミラー170の中心付近又は中央付近に形成されることが好ましい。例えば、図1に示すように可動部120の形状が四角形である場合には、突起部180は、可動部120の対角線の交点付近に形成されることが好ましい。或いは、例えば、図1に示すように反射ミラー170の形状が円形ないしは楕円形である場合には、突起部180は、反射ミラー170の円形形状ないしは楕円形形状の中心付近に形成されることが好ましい。
【0091】
尚、突起部180が可動部120ないしは反射ミラー170の中心付近又は中央付近に形成されることが好ましい理由は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止するためである。従って、突起部180は、可動部120ないしは反射ミラー170の中心付近又は中央付近に加えて又は代えて、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる位置に形成されてもよい。
【0092】
(1−2)アクチュエータの製造方法
続いて、図5から図11を参照して、第1実施例のアクチュエータ101を製造するための製造方法について説明する。図5は、第1実施例のアクチュエータ101を製造するための製造方法の流れを示すフローチャートである。図6から図11は、夫々、第1実施例のアクチュエータ101を製造するための製造方法の各工程が行われた場合のアクチュエータ101の状態を示す断面図及び平面図である。尚、図6から図11では、各図(a)は、各図(b)の平面図の一点鎖線での断面図を示す。
【0093】
図5並びに図6(a)の断面図及び図6(b)の平面図に示すように、はじめに、アクチュエータ101の原材料となるシリコン基板201が用意される(ステップS101)。
【0094】
その後、図5並びに図7(a)の断面図及び図7(b)の平面図に示すように、パターニングやエッチングや蒸着法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法やイオン注入等の半導体製造プロセスを用いて、シリコン基板201上に処理回路211を形成する(ステップS102)。処理回路211としては、例えば、ピエゾ抵抗層を利用した可動部120の遥動状態を検出する検出回路等が一例としてあげられるが、任意の回路(或いは、任意の構造物)であってもよい。尚、処理回路211がアクチュエータ101にとって必要でなければ、図5のステップS102の動作は省略されてもよい。
【0095】
更に、処理回路211が形成された後、シリコン基板201上に、SiO2(二酸化ケイ素)等を含む絶縁膜202が形成される(ステップS102)。このとき、処理回路211の直上には、後述する工程で処理回路211と配線212とを電気的に接続するために用いられる開口が形成されている。
【0096】
その後、図5並びに図8(a)の断面図及び図8(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、絶縁膜202が形成されたシリコン基板201上に、処理回路211と電気的に接続される配線212が形成される(ステップS103)。配線212は、例えば銅等の導電率が相対的に高い金属をシリコン基板201上に蒸着することで形成される。
【0097】
更に、配線212の形成と同時に、絶縁膜202が形成されたシリコン基板201上に、上述した突起部180を形成するための基礎部材213が形成されることが好ましい(ステップS103)。つまり、図5のステップS103では、配線212及び基礎部材213が同時に形成されるようなパターニングやエッチングや蒸着等が行われることが好ましい。言い換えれば、図5のステップS103では、1回のパターニングやエッチングや蒸着等が行われることで、配線212及び基礎部材213が同時に形成されることが好ましい。但し、配線212と基礎部材213とは、別々に形成されてもよい。
【0098】
このとき、基礎部材213は、上述した突起部180のサイズや配置位置等を考慮した上で、適切なサイズ及び配置位置を有するようにシリコン基板201上に形成される。つまり、当該基礎部材213を起点に形成される突起部180が上述したサイズや配置位置等の条件を満たすように、適切なサイズを有する基礎部材213がシリコン基板201上の適切な位置に形成される。
【0099】
尚、上述したように処理回路211がアクチュエータ101にとって必要でなければ、処理回路211が形成されなくともよいため、必然的に処理回路211につながる配線212もまた形成されなくともよくなる。この場合は、図5のステップS103では、基礎部材213のみが形成されてもよい。但し、製造工程を増加させないという観点からは、基礎部材213は、他の何らかの構成部材(例えば、駆動コイル140等)と同時に形成されることが好ましい。
【0100】
その後、図5並びに図9(a)の断面図及び図9(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、配線212及び基礎部材213が形成されたシリコン基板201上に、SiO2(二酸化ケイ素)等を含む絶縁膜203が形成される(ステップS104)。尚、基礎部材213が形成されている領域部分においては、基礎部材213が存在することに起因して、絶縁膜203は、周囲の絶縁膜203(つまり、基礎部材213が形成されていない領域部分の絶縁膜203)から見て突き出た形状を有している。
【0101】
その後、図5並びに図10(a)の断面図及び図10(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、絶縁膜203が形成されたシリコン基板201上に、反射ミラー170(つまり、金属膜215及び保護膜214)が形成される(ステップS105)。尚、基礎部材213が形成されている領域部分においては、基礎部材213が存在することに起因して、反射ミラー170は、周囲の反射ミラー170(つまり、基礎部材213が形成されていない領域部分の反射ミラー170)から見て突き出た形状を有している。この突き出た形状が、上述した突起部170に相当する。
【0102】
その後、図5並びに図11(a)の断面図及び図11(b)の平面図に示すように、半導体製造プロセスを用いて、反射ミラー170が形成されたシリコン基板201の一部が除去されることで、支持部110、可動部120及びトーションバー130が形成される(ステップS106)。その結果、上述したアクチュエータ101の製造が完了する。
【0103】
尚、突起部180による意図せぬ光の反射を防ぐために突起部180の反射率を相対的に低くする場合には、上述したステップS101からステップS106のいずれかの工程又は更に別の工程において、突起部180の反射率を相対的に低くするための処理が行われることが好ましい。同様に、突起部180による意図せぬ光の反射を防ぐために突起部180の光吸収率を相対的に高くする場合には、上述したステップS101からステップS106のいずれかの工程又は更に別の工程において、突起部180の光吸収率を相対的に高くするための処理が行われることが好ましい。
【0104】
以上説明したように、第1実施例によれば、アクチュエータ101を製造する過程で突起部180が形成される。このため、アクチュエータ101を製造する過程で、反射ミラー170が他の構造物に接触することが抑制される。この技術的効果について、図12を参照しながら詳細に説明する。図12は、突起部180によって反射ミラー170と他の構造物との接触が抑制される状態を示す断面図である。
【0105】
図12(a)に示すように、アクチュエータ101を製造する過程でアクチュエータ101が他の構造物(例えば、アクチュエータ101を製造する製造装置が備えるステージ等)と対向している場合であっても、まずは突起部180が他の構造物に接触するがゆえに、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することが抑制される又は防止される。従って、反射ミラー170と他の構造物との接触に起因して、反射ミラー170の表面に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができる。その結果、反射ミラー170の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。つまり、第1実施例の製造方法によれば、反射ミラー170が形成されるアクチュエータ101を、反射ミラー170の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0106】
更に、図12(b)に示すように、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、まずは突起部180が他の構造物と接触するがゆえに、反射ミラー170の表面の殆どは、他の構造物と接触することはない。言い換えれば、他の構造物の表面と反射ミラー170の表面とが非平行な状態で他の構造物とアクチュエータ101が対向している場合であっても、突起部180が他の構造物と接触することによって、反射ミラー170の外縁の一部が他の構造物と接触するに過ぎない。従って、反射ミラー170と他の構造物との接触に起因して、反射ミラー170の表面に傷やへこみが生じてしまう不都合を好適に抑制又は防止することができる。その結果、反射ミラー170の本来の特性(いわゆる、光反射特性等)が好適に維持される。つまり、第1実施例の製造方法によれば、反射ミラー170が形成されるアクチュエータ101を、反射ミラー170の損傷を適切に抑制又は防止しながら製造することができる。
【0107】
尚、反射ミラー170が他の構造物と対向する状況は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程で多く生じ得る。従って、このような突起部180によって実現される効果は、反射ミラー170を含むアクチュエータ101を製造する過程でより顕著に表れる。但し、アクチュエータ101の製造が完了した場合であっても、突起部180が存在することによって、反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することが抑制される又は防止される。従って、アクチュエータ101を製造している過程に限らず、アクチュエータ101の製造が完了した後であっても、突起部180によって実現される効果は相応に有効である。
【0108】
加えて、第1実施例によれば、突起部180の高さを、反射ミラー170に対して照射される光の波長の長さ以下にすることができる。このため、反射ミラー170に照射される光が突起部180の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部180の高さが光の波長の長さを超える場合と比較して、反射ミラー170に照射される光の利用効率を増大させることができる。
【0109】
加えて、第1実施例によれば、突起部180の幅を、反射ミラー170に対して照射される光の波長の長さ以下にすることができる。このため、反射ミラー170に照射される光が突起部180の背後(つまり、本来影になる箇所)に回り込むことになる。従って、突起部180の幅が光の波長の長さを超える場合と比較して、反射ミラー170に照射される光の利用効率を増大させることができる。
【0110】
加えて、第1実施例によれば、突起部180の高さを、照射された光を反射することができる領域部分に対する照射された光を反射することができない領域部分の割合が所定の割合(例えば、1%)以下にすることができる。このため、突起部180が形成されたアクチュエータ101の製造が完了した後に反射ミラー170に対して光を照射した場合に、当該突起部180によって生ずる影が占める割合を一定の許容範囲に収めることができる。従って、照射される光を反射するという反射ミラー170の本来の特性を損なうことなく、突起部180を形成することができる。
【0111】
加えて、第1実施例によれば、配線212及び基礎部材213が同時に形成されるようなパターニングやエッチングや蒸着等が行われる。言い換えれば、つまり、1回のパターニングやエッチングや蒸着等が行われることで、配線212及び基礎部材213が同時に形成される。つまり、突起部180を形成するための専用の工程を新たに設けることなく、突起部180(言い換えれば、突起部180を形成するための基礎部材213を形成することができる。
【0112】
(2)第2実施例
続いて、図13を参照して、第2実施例のアクチュエータ102について説明する。図13は、第2実施例のアクチュエータ102の構成の一例を示す平面図である。尚、第1実施例のアクチュエータ101と同様の構成要素については同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0113】
図13に示すように、第2実施例のアクチュエータ102は、第1実施例のアクチュエータ101と比較して、複数の突起部180を備えているという点で異なっている。第2実施例のアクチュエータ102が備えるその他の構成要素については、第1実施例のアクチュエータ101と同一であってもよい。従って、第2実施例の製造方法についても、第1実施例の製造方法と比較して、複数の突起部180が形成されるという点で異なっている。第2実施例の製造方法におけるその他の工程については、第1実施例の製造方法と同一であってもよい。
【0114】
複数の突起部180の夫々は、上述した第1実施例における突起部180と同様であることが好ましい。
【0115】
加えて、複数の突起部180は、アクチュエータ101が他の構造物と対向している場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができるような分布態様で形成されることが好ましい。このため、例えば、複数の突起部180は、可動部120上において又は反射ミラー170上において、離散的に分布するように形成されてもよい。或いは、複数の突起部180は、他の構造物と全てが同一直線上に存在しない少なくとも3点で接触するように形成されてもよい。言い換えれば、複数の突起部180は、それらの全てが同一直線上に存在しないように形成されてもよい。
【0116】
更には、複数の突起部180の夫々は、突起部180の高さや2つの突起部180の間の距離という観点から定められる以下の条件を満たしていることが好ましい。この条件について、図14を参照しながら説明する。図14は、突起部180の高さや2つの突起部180の間の距離という観点から定められる条件を説明するためのアクチュエータ102の一部の断面図である。
【0117】
図14に示すように、突起部180の高さや2つの突起部180の間の距離という観点から定められる条件は、反射ミラー170の表面が何らかの要因で湾曲してしまった場合であっても反射ミラー170の表面が他の構造物に接触することを抑制する又は防止することができる突起部180を形成するために定められる。具体的には、反射ミラー170の表面の曲率半径がrであり、突起部180の高さがhであり、反射ミラー170の表面が湾曲している状態での2つの突起部180の間の距離を2×Lであるとすると、上記条件は、以下の数式2で示される。つまり、複数の突起部180は、以下の数式2に示す条件を満たすように形成されることが好ましい。
【0118】
【数2】
【0119】
加えて、3つ以上の突起部180が同一直線上に配置されるように形成される場合には、3つ以上の突起部180の夫々の間の間隔が以下の条件を満たしていることが好ましい。この条件について、図15を参照しながら説明する。図15は、3つ以上の突起部180を形成する場合の条件を説明するための平面図である。
【0120】
図15に示すように、例えば、3つの突起部180(具体的には、突起部180a、突起部180b及び突起部180c)が同一直線L上に配置されるように形成される場合を例にあげて説明する。この場合、互いに隣接する突起部180aと突起部180bとの間の間隔d1は、互いに隣接する突起部180bと突起部180cとの間の間隔d2とは異なることが好ましい。つまり、3つの突起部180が等間隔に配置されないことが好ましい。
【0121】
尚、4つ以上の突起部180が同一直線上に配置されるように形成される場合においても同様のことが言える。つまり、4つ以上の突起部180が等間隔に配置されないことが好ましい。或いは、4つ以上の突起部180のうち互いに隣接する2つの突起部180の間隔が、少なくとも2箇所以上で異なっていることが好ましい。
【0122】
このように構成すれば、反射ミラー170に照射される光が3つ以上の突起部180で反射する場合に、当該反射された光が互いに干渉することで意図せぬ位置において光点を結ぶことが殆ど或いは全くなくなる。つまり、3つ以上の突起部180での反射に起因した光の干渉によって、反射ミラー170での適切な光の反射に悪影響を及ぼすことが殆ど又は全くなくなる。従って、照射される光を適切に反射するという反射ミラー170の本来の特性を損なうことなく、3つ以上の突起部180を形成することができる。
【0123】
以上説明したように、第2実施例によれば、第1実施例が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。更には、第2実施例によれば、複数の突起部180が形成されるため、アクチュエータ102を製造する過程で又はアクチュエータ102の製造が完了した後に、反射ミラー170が他の構造物に接触することがより一層好適に抑制される。
【0124】
尚、上述の説明では、可動部120がトーションバー130の伸長する方向に沿った軸を中心軸として回転するMEMSスキャナに着目して説明を進めている。しかしながら、MEMSスキャナに限らず、任意のアクチュエータに対して上述した各種構成が適用されてもよい。例えば、可動部120がトーションバー130の遥動に従って平行移動するように遥動するMEMSアクチュエータに対して、上述した各種構成が適用されてもよい。この場合であっても、上述した各種効果は好適に享受される。
【0125】
本発明は、前述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うアクチュエータの製造方法及びアクチュエータもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
101、102 アクチュエータ
110 支持部
120 可動部
130 トーションバー
140 駆動コイル
150 電源端子
160 永久磁石
170 反射ミラー
180 突起部
213 基礎部材
214 保護膜
215 金属膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)反射膜が形成される可動部と、(ii)当該可動部を取り囲む支持部と、(iii)前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備えるアクチュエータの製造方法であって、
基板上に、前記可動部、前記支持部及び前記トーションバーを形成する第1工程と、
前記可動部上に、前記反射膜を形成する第2工程と、
前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が他の構造物に対向している場合であっても、前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を形成する第3工程と
を備えることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項2】
前記突起部は、前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物の表面に対して傾いた状態で対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触することを抑制することができる程度の高さを有することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程は、前記突起部を複数形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項4】
前記複数の突起部の少なくとも一つは、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記複数の突起部の少なくとも一つが前記他の構造物の表面に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなる程度の高さを有することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項5】
前記反射膜の表面の曲率半径がrであり、前記突起部の高さがhであり、且つ前記複数の突起部のうちのいずれか2つの突起部の間の間隔が2×Lであるとすると、前記第3工程は、数式1が示す条件を満たすように前記複数の突起部を形成することを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータの製造方法。
【数1】
【請求項6】
前記突起部の高さは、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の表面粗さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記突起部の高さは、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項8】
前記突起部の前記反射膜の表面に沿った方向の幅は、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記第3工程は、前記可動部内で離散的に分布する前記複数の突起部を形成することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記第3工程は、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなるような配置位置に前記複数の突起部を形成することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記第3工程は、3つ以上の前記突起部が同一直線上に配置される配置位置に前記3つ以上の突起部を形成する場合には、前記3つ以上の突起部が等間隔に配置されなくなる配置位置に前記3つ以上の突起部を形成することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項12】
前記第3工程は、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の中心付近又は中央付近に前記突起部を形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項13】
前記第3工程は、前記反射膜上において光を反射する領域に対する前記反射膜上において前記突起部の影に起因して生ずる前記光を反射しない領域の割合が、所定の割合以下となるように、前記突起部を形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項14】
前記所定の割合は1%であることを特徴とする請求項13に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項15】
前記第3工程は、前記突起部の形成と同時に又は並行して、前記アクチュエータの動作に関連する所定の回路を前記基板上に形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項16】
前記突起部の表面の反射率は、前記反射膜の表面の反射率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項17】
前記突起部の光吸収率は、前記反射膜の光吸収率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項18】
反射膜が形成される可動部と、
当該可動部を取り囲む支持部と、
前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーと
を備え、
前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)対向する他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項1】
(i)反射膜が形成される可動部と、(ii)当該可動部を取り囲む支持部と、(iii)前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーとを備えるアクチュエータの製造方法であって、
基板上に、前記可動部、前記支持部及び前記トーションバーを形成する第1工程と、
前記可動部上に、前記反射膜を形成する第2工程と、
前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が他の構造物に対向している場合であっても、前記他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を形成する第3工程と
を備えることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項2】
前記突起部は、前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物の表面に対して傾いた状態で対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触することを抑制することができる程度の高さを有することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程は、前記突起部を複数形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項4】
前記複数の突起部の少なくとも一つは、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記複数の突起部の少なくとも一つが前記他の構造物の表面に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなる程度の高さを有することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項5】
前記反射膜の表面の曲率半径がrであり、前記突起部の高さがhであり、且つ前記複数の突起部のうちのいずれか2つの突起部の間の間隔が2×Lであるとすると、前記第3工程は、数式1が示す条件を満たすように前記複数の突起部を形成することを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータの製造方法。
【数1】
【請求項6】
前記突起部の高さは、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の表面粗さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記突起部の高さは、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項8】
前記突起部の前記反射膜の表面に沿った方向の幅は、前記反射膜に対して照射される光の波長の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記第3工程は、前記可動部内で離散的に分布する前記複数の突起部を形成することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記第3工程は、前記反射膜の表面が湾曲した状態で前記基板のうち前記反射膜が形成される側の表面が前記他の構造物に対向している場合であっても、前記突起部が前記他の構造物に接触することで前記反射膜が前記他の構造物に接触しなくなるような配置位置に前記複数の突起部を形成することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記第3工程は、3つ以上の前記突起部が同一直線上に配置される配置位置に前記3つ以上の突起部を形成する場合には、前記3つ以上の突起部が等間隔に配置されなくなる配置位置に前記3つ以上の突起部を形成することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項12】
前記第3工程は、前記可動部及び前記反射膜の少なくとも一方の中心付近又は中央付近に前記突起部を形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項13】
前記第3工程は、前記反射膜上において光を反射する領域に対する前記反射膜上において前記突起部の影に起因して生ずる前記光を反射しない領域の割合が、所定の割合以下となるように、前記突起部を形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項14】
前記所定の割合は1%であることを特徴とする請求項13に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項15】
前記第3工程は、前記突起部の形成と同時に又は並行して、前記アクチュエータの動作に関連する所定の回路を前記基板上に形成することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項16】
前記突起部の表面の反射率は、前記反射膜の表面の反射率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項17】
前記突起部の光吸収率は、前記反射膜の光吸収率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項18】
反射膜が形成される可動部と、
当該可動部を取り囲む支持部と、
前記可動部が揺動可能なように前記可動部と前記支持部とを接続するトーションバーと
を備え、
前記可動部のうち前記反射膜が形成される側に、(i)前記反射膜の表面から突き出る高さを有する突起部であって、且つ(ii)対向する他の構造物に接触することで前記他の構造物が前記反射膜に接触することを抑制する突起部を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−114258(P2013−114258A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113497(P2012−113497)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2012−518666(P2012−518666)の分割
【原出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(503213291)パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2012−518666(P2012−518666)の分割
【原出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(503213291)パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]